戦国†恋姫~織田の美丈夫~   作:玄猫

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オリキャラ(名前は原作にも出てきてます)登場します。
苦手な方はご注意を!


9話 褒美と屋敷と宴

 次の日、蘭丸と剣丞は久遠に評定の間に呼ばれる。中に入るや否や、久遠は蘭丸に抱きつく。

 

「お蘭!よくぞ……よくぞやってのけてくれた!」

「く、久遠さまっ!?」

 

 久遠に抱きしめられて動揺する蘭丸を剣丞が少し面白そうに眺める。……内心に若干うらやましいという気持ちがあったのは男であるから仕方がないことであろう。

 

「あはは……久遠、嬉しいのは分かるけどそのままじゃ蘭ちゃんが倒れちゃいそうだから一度放してあげたら?」

「む、そうか?」

 

 剣丞に言われ、渋々といった様子ではあるが久遠が蘭丸を解放する。放された蘭丸はほっとしたような残念なようななんとも言えない表情であった。

 

「……久遠さま、今回の功は剣丞さまにあります。私は最後に少しお手伝いをしただけで……」

「いや、蘭ちゃんがいなかったら俺だって無事で帰ってこれたかどうかは分からないし、ひよやころちゃんがいなかったら……」

「いや、二人とも無事に帰ってきてくれて嬉しいぞ。なんと感謝すれば良いのか、我は言葉が思い浮かばん。……とにかくありがとうだ、二人とも」

「これはみんなの力を合わせた結果だよ。それに……討ち死するまで戦ってくれた十人の人たちの、ね」

 

 剣丞の表情が曇る。それをちらと見た蘭丸が。

 

「……久遠さま、失礼な願いかもしれませんが……」

「うむ。我に任せておけ」

「え……?」

 

 全てを語らずに蘭丸の言いたいことを理解した久遠が力強く頷く。

 

「討ち死した者たちの供養と遺族に褒美を、ということであろう?……お蘭がそういったことを頼んでくるのは珍しいが。……剣丞、全て我に任せておけ」

 

 気が抜けたのか、一瞬ふらつく剣丞を蘭丸が支える。

 

「大丈夫ですか?」

「う、うん。ちょっと緊張が解けたみたいで」

「無理もない。剣丞にとっては初陣であろう?」

 

 初陣。久遠からそういわれてはは、と頭をかく。

 

「言われてみたらそうだ。……これで俺も織田家の一員になるのかなって」

「ふふ、剣丞さまは既に織田の一員ですよ」

「うむ。……お蘭にも認められたようで安心だな。……今後は、お蘭の部隊をお蘭の留守中、守っていくように頼むぞ剣丞」

「あぁ。俺に出来ることは全力でさせてもらうよ」

「久遠さま、ころ……蜂須賀のことですが」

「それならすでに使者を出して本人に伝えてある。今回の褒美の一部だ、これで祝ってやれ」

 

 そういって久遠は小袋を蘭丸に渡す。

 

「ありがとうございます。……それでは」

「うむ。……あ、お蘭。近いうちにまた屋敷に来い。結菜が待っているぞ」

「はいっ!」

 

 

「あ!蘭丸さーん!」

「剣丞さまも!」

 

 前から手を振りながら走ってくるのはひよ子と転子の二人。

 

「おはようございます。ひよ、ころ。……ころ、織田家への仕官、おめでとうございます。余計なことではありませんでしたか?」

「いえっ、そんな!!久遠さまより、蘭丸さまと剣丞さまのお二人から進言があったと聞いて……どのようにお礼をしたら良いか……!」

「お礼なんていらないよ。俺も蘭ちゃんも、ころはそれだけのことをやってくれたと思ったからそうしただけだよ」

「えぇ。……ふふ、それにしてもひよは自分のことのように喜んでいるのですね」

「えへへ、これでころちゃんといつも一緒に居られるから……」

 

 本当に嬉しそうに笑うひよ子を見て、蘭丸は優しく微笑む。

 

「え、一緒??」

「はい!久遠さまからのご命令で、正式に蘭丸隊に所属することになったんです!」

「そうだったの!?……あれ、その顔、蘭ちゃん知ってたの?」

「ふふ、はい。剣丞さまをびっくりさせようと思いまして」

「知らなかったの俺だけ!?」

 

 剣丞の反応に笑う三人。

 

「だから、ころちゃんも長屋に引っ越してきたんです!これでころちゃんのお鍋が食べ放題ぃ~……じゅるる」

「あははっ、いつでも作ってあげるけど、ひよもちゃんと手伝ってよ?」

「勿論!……あの、蘭丸さま!これからころちゃんのためにお祝いとか……しませんか!」

「えぇ、私は構いません」

「いいね!じゃあどこかで豪勢にパーッとやりますか!」

「あぅぅ、豪勢にパーッとやりたいのは山々なんですけどぉ……そこまでおぜぜがありません~」

「おぜぜ?お小遣いならさっき久遠から貰ったよね?」

「えぇ。……私は必要ありませんので、ひよところと剣丞さまとで分けてください」

 

 そういって小袋を受け取ったときのままひよ子に差し出す。

 

「……ひぃぃぃ!?」

 

 小袋を覗いたひよ子が悲鳴を上げる。

 

「ど、どうした!?何か変なものでも入ってた!?」

「こ、ころちゃ……」

「何?巾着の中身がどうかし……ひぃぃ!?」

 

 剣丞も小袋の中を覗き込む。その中には多くの小粒金が。

 

「?久遠さまはいつも褒美に下さるのですが……今回はいつもよりちょっと奮発してますね」

「ちょっと!?さ、流石は織田家……」

「これってどれくらいあるの?」

「小粒金一粒で、たぶん一月ぐらいは余裕で飲み食いできちゃいます」

「……そんなにか」

 

 ひよ子の説明に少し驚いた様子の剣丞。

 

「……ふむ。蘭ちゃんは俺たち三人でって言ってたけど、そういうことなら俺からのプレゼント……ご祝儀ってことで二人にあげるよ」

「えぇっ!?」

「さ、さすがにこんなのもらえませんよぉ~」

「でも俺が持ってても使い道が無いしなぁ」

「ふふ、どうしても貰うのが……と思うのであれば、隊の共有財産にしておきましょう。管理はひよ、お任せしますね?」

「わ、分かりました!」

「うん、ひよ任せた!」

「ちょ、ちょっと剣丞さま!いい加減すぎです!」

「いやぁ、分からないことを考えても、分からないんだから仕方ないよ、ははは」

 

 そんな剣丞を見て三人は苦笑いを浮かべる。

 

「はぁ……剣丞さまがお頭だったら、私たちまで貧乏になっちゃうところでした」

「あら、蘭丸隊のお頭代理は剣丞さまですよ?」

「……こ、ころちゃん!私たちがしっかりしないと!」

「だ、だね!」

「ちょっと皆ひどくない!?」

 

 

「ふふふ……再び新たな外史が開かれた、か」

 

 かつて、この地の支配を目論んだ数多の者たちの一人。ある外史では北郷の血を引く者に破れ。またある外史では水野の荒武者によって討ち滅ぼされたその者は再び己が野望を果たす為に動き始める。

 

「此度は朕も容赦はせぬぞ、荒加賀が裔よ。あらゆる策謀を巡らせ、追い込んでゆくぞ」

 

 だが、吉野の方と呼ばれるこの男は気付いていない。この外史にも新田剣丞と同じく……天敵と為り得る存在がいるということを……。

 

 

「そうだ、今日のお祝いは私の屋敷でやりませんか?」

 

 ぽん、と手を叩き蘭丸が提案する。

 

「蘭丸さまのお屋敷ですか!?」

「ふふ、ころも仲間になったのですからもっと気軽に私のことを呼んでくれていいんですよ?」

「えっ!?……え、えっと、ら、蘭丸……さん」

「初めはそれでいいですよ。いつかはもっと気軽に呼んでくださいね」

 

 

 そして、蘭丸の屋敷を訪れた剣丞たち。……目前に現れた大きな屋敷にポカンと口をあけてしまっていた。

 

「?どうしました?」

「は、はは。蘭ちゃんってホントに凄かったんだなって思って」

「おっきなお屋敷です~!」

「流石は森家のお嬢様……あれ、お嬢様じゃないか」

 

 わいわいと話しながら屋敷に入る。門をくぐった先で、割烹着を着た女性が箒を手に地面を掃いていた。長い黒髪を頭の天辺で纏めており、優しげな表情を浮かべている。その女性は蘭丸を見ると優しい微笑を浮かべる。

 

「お帰りなさい、蘭ちゃん」

春香(はるか)さん!お久しぶりです!」

 

 各務元正。通称を春香という。見た目は大和撫子を体現したかのような女性であるが、その実森一家に相応しい人物だったりする。周囲から避けられている森一家の中でも数少ない……蘭丸を除けば唯一といってもいいまともな存在でもある。森一家の実質的な雑務の全てや蘭丸の屋敷の手入れなど……恐ろしい業務量を一人で行える優秀な人であるが、可愛いものに目が無く(特に蘭丸)育て方について桐琴と争った……と嘘か真か分からない噂がある。……実際に蘭丸の教育については大きく関わっていることから、事実っぽいというのは壬月や麦穂の言だ。お陰で常識を持った子として育ったわけだが。

 

「あら、そちらの方々は……」

「紹介しますね!」

 

 蘭丸から一人ひとり紹介された後、春香は丁寧に頭を下げ。

 

「はじめまして、蘭ちゃん……成利どのがお世話になっております。私は森一家の一員で各務元正と申します。通称は春香ですので、お気軽に春香とお呼びください」

「よろしく、春香さん」

 

 剣丞が手を差し出し、握手を交わす。

 

「貴方が天人、新田剣丞どのですか。……ふふ、桐琴さんが興味を持ったのも少し分かる気がします」

「え……!?け、剣丞さま、森一家に気に入られているんですか……?」

 

 ひよ子と転子が若干距離をとる。

 

「ちょっと!?春香さんも蘭ちゃんも森一家なんだけど!?」

「蘭丸さんはいいんです!」

「ふふ、盛り上がっているところ悪いんだけど……もうすぐ、桐琴さんたちが来ますよ?」

「「「えっ」」」

 

 

「ははっ!クソども!今日はお蘭が功を挙げた祝いじゃ!好きに騒げぃ!」

「「おぉっ!!」」

「ひゃっはー!!食べ尽くせぇ!」

「ふふ、母さまも姉さまも楽しそう」

「……うん、まぁ楽しそう、だね」

「うぅ……ころちゃん、この空気怖いよ……」

「安心して、ひよ。私も結構びびってるから」

 

 騒ぐ森一家を微笑ましく見ている蘭丸と、頬を引き攣らせている剣丞、ひよ子、転子の三人。

 

「「お嬢!!御勤めご苦労様です!!」」

「皆も元気そうでなによりです」

 

 数人の男が蘭丸の元へ挨拶に来る。剣丞は昔こんな光景、テレビで見たなーなどと遠い目をしている。

 

「あんたらがお嬢の部下か?」

「「ひぃっ!!」」

「は、はい!俺、新田……」

 

 ずいっと剣丞に顔を近づける男。傷だらけの顔の迫力に押される剣丞。

 

「……お嬢を頼むぞ。もしお嬢を傷物にでもしてみろ。……そのときは……」

 

 腹巻のようなものの中からすっと小刀のようなものを取り出そうとして。

 

「あら、何をやっているのかしら?」

 

 春香が声をかけるとびくりと背中を震わせる。

 

「い、いえっ!!失礼いたしやした!!」

 

 たった一言で男は大急ぎで逃げ出す様に立ち去った。

 

「は、春香さん凄い……!」

「うん、凄いね!」

 

 そんな光景に羨望の目を向けるひよ子と転子。よほど怖かったのか、抱き合うような形になっていた。

 

「ふふ、でも。……本当に蘭ちゃんのこと、お願いしますね。あの子は優秀なんですけれど……殿の為であれば自らを省みないことも多いので」

「はい、俺に出来る限りのことはするつもりです」

「お願いします。……何かあれば私に一報いただけると。後」

 

 チラッと剣丞を見る春香。剣丞は軽く小首をかしげる。

 

「お二人のこと、頼みますね」

「は?」

 

 春香のこの言葉の意味を理解するのはそう遠くない未来の話であった。




各務さん登場でした!
通称の春香は元正さんの戒名である鐡梅長春禅定門の中の春の文字と合わせて作りました。
他の文字からあまりいいものが思い浮かばなかったので……。

各務さんはちょこちょこと登場しますので宜しくお願いします!
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