とある科学の元魔術師   作:珠風船

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祝! アニメ超電磁砲オリジナルストーリー開始!


第11曲:誰かを好きになるっていうのはとっても素敵な事

 第七学区とあるファミレス、josePh'sにて

 

 サンサンと降り注ぐ真夏の太陽とアスファルトの照り返しによって屋外は灼熱の地と化した。しかも今は正午から少し経過した時間、要するに一番暑い時間帯だ。こんなクソ暑い日に外にいるのは正気の沙汰とは言えなかった。よって、住民たちはファミレスや喫茶店のような冷房の効いた建物に殺到した。

 

 ここjosePh'sも例外では無いようで暑さから逃げてきた大勢の客で賑わい席はほぼ満席だ。また、常盤台のエースたちであってもこの暑さには勝てないようで、美琴と白井は待ち合わせがてらにここで涼んでいた。

 

 

「あ、あんた大丈夫? 目が据わっちゃてるんだけど」

 

「何も問題ありませんわよ」 

 

 本人はそう言っているが白井の目には何も映しておらず虚空を泳いでいる。シャワールームでの一件でから白井の様子はこんな感じだ。突然笑い出したと思えば無表情になったり、そしてまた笑い出したり。

 

 そんな彼女の思考回路では、

 

(さあさあ、ミラジェーンさん。来るのなら早く来るといいですのに。この白井黒子。たとえ相手が常盤台の姫様であろうが、お姉様に対する愛で負けるはずはありませんの! 私を愛するお姉様を見て絶望に打ちひしがれるといいですのに! あは、あはは、)

 

「ぐふ、ぐふふ、ぐふふふふ」

 

 こんな感じでまだ彼女はミラと美琴が相思相愛だと思い込んでいる。先ほど怒られたのはすでに何処かへ行ったようだ。さらにミラの事を推し量るとか言っていたが、何故だかそれはミラから美琴を奪い取るような思考へと変化した。変態とは何とも難しい生物のようだ。

 

「……黒子が壊れた」

 

「うひょひひひひ」

 

(ミラー、早く私を助けに来てー)

 

 気色悪く笑いだしたり、黙ったりしたりする白井を見ている美琴からすればたまったものではない。美琴は白井の事をドン引きしながら見ていた。もはや美琴の精神力は限界ギリギリである。

 

 本来であればここまでミラも一緒に来るはずであったが、ミラは食蜂へお仕置きするために後から行く事となっていたのだ。もはや今の美琴の心境は塔に閉じ込められたお姫様のようになりつつあった。

 

 

「ごめーん、美琴。ちょっと待たせちゃった?」

 

 そんな中、美琴にとっての王子様、もといこの状況を打破してくれる救世主、ミラがやって来てくれた。食蜂へのお仕置きをしっかり終わらせて。

 

「あ、ミラー! こっちこっちー!」

 

「!!」

 

 やっと来てくれたミラを手を思いっきり振りながら、嬉しそうにミラを入口まで行って出迎える美琴。その姿は尻尾を振りながら主人を迎える犬にそっくりだ。

 

 その一方で白井は席に着いたままだが、目が獲物を見つけた肉食獣のようにギラついている。だが、その事にミラと美琴は全然気がついていない。

 

「操祈へのお仕置きはきっちり終わらせてた、ううん、まだ継続中かな」

 

「まったくひどいわよ。能力まで使って私のパンツ覗くなんて。まあ、アイツに制裁加えてくれたから少しは気が晴れたけどさ。今度きっちり埋め合わせしてもらうんだからね!」

 

「はいはい、わかってるわよ。ほんとにごめんね」

 

 二人はそんな事を話しながら白井が待っている席に戻っていく。美琴はミラに文句を言っているがかなり楽しそうだ。ミラもまた、美琴の文句を聞きながらも楽しそうである。

 

 そして自分たちの席まで戻ってくるとミラが美琴に問いかける。

 

「この子が白井黒子ちゃん?」

 

「うん。黒子ー、ミラが来たわよー」

 

「はじめましてですの、ミラジェーンさん。私、白井黒子といいますの」

 

 そこには一匹のケダモノがいた。それの声はなんとか平静を保っている。だが、それの目はこれでもかというほどに見開かれており、見るものが見れば体中から黒い影が吹き出しているようにも見えてくる。そして口からは白い煙のような物が漏れ出していた。その姿はまさしく獲物に飛びかかるケダモノ、否化物だ。

 

「ちょ、黒子」

 

 あまりの白井の迫力に驚いた美琴が声をかける。さすがにこれは初対面の人間に向けるような顔ではない。人によってはこれだけで第一印象を悪くする、というかビビって逃げる。それほどまでに白井は醜悪なオーラをその身に纏っていた。

 

 そんな白井を見たミラはというと、

 

「こんにちは、白井ちゃん。美琴から聞いてると思うけど私はミラジェーン=ヴィクトリア。ミラって呼んでね。よろしく」

 

「……へっ」

 

 そう言ってミラは満面の笑顔で白井に左手を差し出す。ミラは白井の異常な雰囲気など全く意に返していない。気づいていないのか、気にしていないのか、それは定かではないがミラがいつもと変わることはない。

 

 そんなミラに出鼻を挫かれた白井は声を発することも身動きを取ることもできずに固まってしまっていた。

 

「おーい、白井ちゃーん。大丈夫ー?」

 

「……も、申し訳ありませんの。少しぼーっとしていましたもので」

 

 白井は慌てながらミラの手を握る。白井はある程度の修羅場になる事を予想していたようだ。が、笑顔で迎えられることになるなんて想定の範囲外であったようだ。呆気に取られた事でさっきの暗黒オーラはどこかへ消えたように消え去っていた。

 

「ぼーっと? 大丈夫かしら。夏風邪とかじゃなきゃいいんだけど」

 

「ミラ、何しようとしてんの?」

 

 白井の言葉を聞いたミラは心配そうな声を出し、美琴の声などお構いなしで左手で白井の前髪をサッとかきあげて優しく押さえる。そして、

 

「ん」

 

 コツン

 

「うーん、熱はないみたいね。あっ、熱中症かしら! 水分補給はしっかりしてる?」

 

「はぁ、いつも通りか」

 

 額と額で相手の熱を測る。そんな芸当をミラは初対面の白井に対して当然のことのようにやってのけた。実はこんなこと、またはこれに近いことは常盤台中学では頻繁にあることだ。

 

 お弁当の時間にあーん、体調が悪くなった時には膝枕、慰めるときには優しくハグ。やられれば赤面確実になるようなことをミラは普通にこなしてしまうのだ。ミラに隠れた思惑があるはずもなくもちろん善意である。天然というものはなんとも恐ろしい。

 

 これらの行為にお世話になっているのは主に食蜂や美琴だ。が、その他の一般生徒にもこの恩恵にあやかれる人もいる。人として、能力者として、憧れの姫様からこのようなことをされてしまえばどんなお嬢様でも一撃で陥落した。

 

「あ、ああ、あの、ミミ、ミラさん。いい、一体何を、」

 

「今は暑いから熱中症には注意しなきゃダメよ」

 

「ミラ、気づいてないと思うけど完全に黒子がおいてけぼりになってるから。それと黒子、これがミラの普通だからあんまり気にしちゃダメよ」

 

 ミラは笑顔で話を進めるものの白井は完全に動揺して動きが止まっていた。敵だと認識していた人物にこんなことをされた人物の心境を考えて欲しい。完全武装で突入した警察をヤクザが笑顔で歓迎するようなものだ。

 

(わ、私は一体何を……、ま、まずは状況整理から。私はミラさんをお姉様さまをたぶらかす敵として自己紹介をしました。そのあとあちらも自己紹介をして、そ、そしたら額と額で、……!!)

 

「わっ、やっぱりこうなるのか」

 

「顔が真っ赤! やっぱり夏風邪かしら?」

 

 やっと今の状況を掴めたようで白井はミラが言うように突然顔を真っ赤にしてワタワタと慌てだした。

 

 常盤台のお嬢様たちの大抵のリアクションはこんな感じであるために、美琴の方はなんというかもう手馴れたような感じだ。頭に手を当ててため息を吐いている。

 

 そして何よりもミラは天然である。

 

(なんてことですの!? 先手を打たれるとは。で、でもなんですの? あれだけミラさんを敵視していたというのに、今では何とも思っていませんし。そ、それに何故だかとってもドキドキしていま…………)

 

「イヤァァァ!! 黒子のバカ! 黒子のバカァ! 黒子のバカァァァアアア!!」

 

 さっきのシャワールームでの一件と同じように、今度はテーブルにガンガン頭を打ち付け始めた白井。テーブルの上のグラスがガチャガチャ音を立てているが、本人はそんなことを気にするはずがない。

 

 絶叫しながら頭を打ち付ける白井を見ている美琴はというと、

 

「……私はもうついていけないわ」

 

 先程からずっと白井の奇怪な行動に付き合わされていた美琴はついにここでリタイア。頭痛がした時のように手で頭を抑えてテーブルに沈みこんだ。

 

(もう少し、黒子には優しくしてあげよう)

 

 可哀想なものを見る目で白井を見つめる美琴の目には光が宿っていなかった。今日の白井に比べて、普段の変態な白井の方が一体どれだけマシだったことか。

 

 その一方でミラは優しく白井の頭突きを止めると、聖母のように微笑みながら白井に話しかける。

 

「どうしたの? 何か悩みがあるなら私に話してみて?」

 

(その悩みの元凶が何をおっしゃてますのぉぉぉ!?

 

 ……い、いや、落ち着きなさい白井黒子。ここは本来の目的を果たすべきでは!)

 

 白井が心の中でそう絶叫する。白井はさっきのミラの行為で不覚にもミラにときめいてしまった。それが美琴一筋の白井にとってどれだけ悔しいものであったことか。しかも、相手は己の敵――――思い込みだが――――だというのに。

 

「ミ、ミラさんは美琴お姉様のことを愛していますの?」

 

「ええ、そうね。美琴のことは大好きよ」

 

「ミ、ミラぁ」

 

 ミラの一言で一瞬にして美琴の目に生気が戻った。千切れんばかりに振るわれる尻尾は先ほどよりもさらに元気だ。

 

 そんな美琴を視線の端に捉えながら、かなり辛そうに、内心ではもう勝ち目は無いと悟っているがそれでも白井は言葉を続ける。

 

「で、では、お、お姉様とお付き合いをなさっているのですか!?」

 

「……あんた何言ってんの?私とミラはただの友達だけど」

 

 尋常じゃないほどに冷めた表情で美琴が白井に宣告する。

 

「……と、友達? お姉様とミラさんはお付き合いをしているのではありませんの?」

 

「ふふふ、なんだか照れちゃうわね」

 

 やっとここで白井の誤解が解けたようだ。美琴は白井の言葉を聞いて呆れ返っているが、ミラは苦笑しながらも満更でもないようだ。もちろんいつものような天然パワーであるが。

 

 一方で白井は二人の言葉を何度か反芻して、やっとその言葉の意味を理解できたようだ。そして俯きながら体をフルフルと震わせ始めた。

 

「も、ももももも、」

 

「「?」」

 

「申し訳ありませんでした!!

 

 私誤解していました。お姉様とミラさんがお付き合いしているものだと思い込んで……。内心では勝手にミラさんに対して敵意を向けたり、嘲ったりと! どう詫びていいかもわかりませんが、煮るなり焼くなり好きになさってください!」

 

 そう言って白井はテーブルに頭を打ち付けるほど勢いをつけて頭を下げる。

 

「ねえ、白井ちゃん」

 

「は、はい」

 

「白井ちゃんは……美琴のことが好きなのかしら?」

 

「え、あ、は、はいですの! 」

 

「それならなんにも気にする必要ないわよ。誰かを好きになる事に悪い事なんて何もないわ。誰かを好きになるっていうのはとっても素敵な事。

 

 だからね、白井ちゃんが謝る必要なんてどこにもないわ。むしろ美琴の事をもっともっと好きでいていいのよ。

 

 ふふふ、白井ちゃんは偉いわね。悪いことをしたらちゃんと謝れるんだから」

 

 ミラはそう言ってウインクすると、優しく白井の頭を撫でる。するとどうだろう。白井は目をウルウルとさせるとミラの両手を自身の両手で掴む。

 

「ミ、ミラさん、こんな不甲斐ない私にそのようなお言葉を掛けていただけるなんて! この白井黒子、恐悦至極の極みですの!」

 

「だから言ったでしょうが。ミラは悪い人じゃないって」

 

「はいですの。そ、それにミラさん公認になったわけですからー、」

 

 そう言って白井は目をギラギラと光らせて、手をワキワキと動かして

 

「あんた何す、」

 

「お姉様ー!!」

 

 例のごとく、そしていつものように美琴に飛び掛った。しかも能力まで使用してだ。そして白井は思いっきり美琴に頬ずりしている。そんな二人を見ているミラはというと

 

「わあ、すごいわね空間移動(テレポート)! それに白井ちゃんはほんとに美琴の事が大好きなのね」

 

「ちょ、ミラ助け、いい加減のしろぉ!」

 

 のほほんと見ているミラに助けを求める美琴だが救援が来ないことがわかるといつものように白井をぶっ飛ばす。

 

 しかし和気藹々と騒いでいる時間にも終わりが来る。

 

「あの、ほかのお客様のご迷惑となりますので、申し訳ありませんがご退席をお願いします」

 

 おどおどしながらも店員はミラたちにそう声をかける。ついに追い出された。というか、よく今まで追い出されなかったか疑問に思うほど騒いでいた(主に白井)のだが。

 

 追い出されてしまった三人はというと。ミラはあらあら、と笑顔のまま。美琴は白井を思い切り睨みつけながら。そして白井はまだ美琴に飛びかかろうとしている。なんともマイペースな三人だ。

 

 窓の外にはそんな三人を見ている三人組がいた。

 

 

 

  ◆

 

 

 josePh's入口前にて

 

 ファミレスを追い出されてしまったミラたちだが、待ち合わせをしていた初春たちがちょうど到着。外はまだまだ暑いのだが、こうなってしまっては仕方がないだろう。このまま外にいることにしたようだ。

 

 こんな感じでミラたちは現在、向き合って自己紹介の真っ最中だ。

 

「えー、とりあえずご紹介しますわ。こちら風紀委員(ジャッジメント)で私の後方支援を担当してくれている初春飾利さんですの」

 

「ど、どうも」

 

 念願叶って美琴に会うことが出来た初春は、恥ずかしそうに顔を赤くしてお辞儀をした。その後も彼女はほわーっとした目で美琴のことを見ている。

 

 それを確認すると、白井は次に千歳の紹介へと移る。

 

「そしてこちらが、」

 

風紀委員(ジャッジメント)で白井嬢と初春と働いてる枝先千歳だ」

 

 千歳は初春と異なり白井の言葉を遮って自分で自己紹介を行う。行いながら軽く会釈した。その後彼は興味深そうな顔をしながらミラと美琴を見ている。

 

「それから、」

 

「どうもー、千歳さんと初春の友達の佐天涙子でーす。無能力者(レベル0)ですけど、なんかついて来ちゃいましたー」

 

 佐天は自虐的な笑みを浮かべながら、無理矢理明るい声を出して言う。その声には超能力者(レベル5)である美琴へのある種の挑発の意味が込められえいた。無能力者(レベル0)だけど馬鹿にするならすれば? そんな感じである。

 

 そんな佐天の様子を見ていた初春はワタワタと慌てだし、千歳の方は呆れたようにしてため息を吐いている。

 

 一方でミラと美琴はというと、

 

「私は御坂美琴。よろしくね」

 

「よろしくね、初春ちゃん、佐天ちゃん、枝先君。私はミラジェーン=ヴィクトリアよ。ミラって呼んでね」

 

 ミラと美琴は笑顔で自己紹介する。二人共レベルで他人を判断するような人間ではない。そのため佐天の皮肉など大して気にしていなかった。

 

 そんな二人の対応を見て佐天は唖然としていた。超能力者(レベル5)という学園都市で最高の能力者が無能力者(レベル0)を馬鹿にしないはずがない。佐天はそう思っていたために美琴の自己紹介が意外すぎたのだろう。

 

 そんな佐天の様子を知ってか知らずか千歳はミラと美琴に問いかける。

 

「御坂嬢は超能力者(レベル5)の第三位、超電磁砲(レールガン)なのだろう? それではミラジェーン嬢は能力どんな能力を持っているんだ?」

 

「私? 私は最下位だけど一応超能力者(レベル5)色彩調節(コーディネーター)よ」

 

「「ええっ!?」」

 

 ミラの言葉を聞いた初春達は驚きの表情を見せる。一人会えただけでも奇跡なのに、まさか二人も会えるとは思っていなかったようだ。しかしただ一人、千歳だけは驚きながらも眉をひそめている。だがそんな表情も一瞬だけだったために誰も気がつかなった。

 

「……それじゃあ、女性陣はこのまま話しているといい。俺はあそこでクレープでも買ってくる」

 

 そう言って彼は近くにあるクレープ屋を指差す。そのクレープ屋は車を使った移動販売のようだが、少なくない行列が出来ている。なかなか繁盛しているようだ。

 

「じゃあ、私も行きます」

 

「あ、私も」

 

 初春と佐天が手伝いをするために千歳に着いていこうとする。だが、

 

「せっかく、御坂嬢やミラジェーン嬢に会えたんだ。俺に気遣いなんてしないでこのまま話してるといいさ」

 

「でも一人じゃ持てませんわよ」

 

 確かに白井が言うように一人で人数分のクレープを持つことは無理だろう。だが千歳からすればこの状態はなんとも気まずいようだった。男子一人に対して女子五人。いつも飄々としている彼でも流石に辛い物があったようだ。

 

 ここでミラが案を出す。

 

「それじゃあ、美琴を連れて行って」

 

「なんで私?」

 

「ほら、あれ見て」

 

 ミラが指差す先には宣伝用の幟がある。その旗に書いてあったのは、

 

「ゲコ太フェア!?」

 

 どうやらクレープを買うとゲコ太ストラップをもらえるようだ。美琴の目がキュピーンという効果音を出して輝き出し、頬が異様に緩む。なぜなら自身のケータイをゲコ太フォルムにするほどに美琴はゲコ太が大好きなのだ。彼女にとっては見逃せるはずがない。

 

 そんな美琴を見る白井は頭に手を当てて盛大にため息を吐いた。ミラはいつものようにニコニコしている。そして美琴の意外な一面を見てしまった三人は唖然としていた。特に初春と佐天はにはショックが大きかったようだ。

 

 クレープ屋、いやゲコ太に目が釘付けだった美琴は我に返ったようで、

 

「ば、馬鹿にしないでよねミラ! あんなのただのカエルじゃない! 両生類よ!? あんなのに釣られる歳じゃないわよ!」

 

「ふふふ、それじゃあそれは何かしら?」

 

 ミラが指差したのは鞄についているストラップ。もちろんゲコ太である。もはや取り繕う隙もない。

 

「……」

 

「……あー、御坂嬢。もしよかったら手伝ってくれないか? もちろん無理強いはしないが……」

 

 黙ってしまった美琴を気遣うようにして千歳は言う。美琴はそれに黙って頷くと、クレープ屋のところまで何とも危なげにフラフラと歩いていく。そんな美琴を他の全員が生暖かく見ていた。

 

「それじゃあ私たちはあそこの日陰のベンチで待ってるわ」

 

 千歳が頷くのを確認すると買いに行かなかった組はそこを目指して歩いていく。

 

 

 ベンチに着くと初春は急に目をキラキラと輝かせてミラに問いかける。

 

「あ、あのミラさんは常盤台で女王とかって呼ばれてるんですか!?」

 

「女王? ああ、それは私じゃなくて操祈ね。超能力者(レベル5)の第五位。今はいないんだけど今からでよかったら呼ぼうかしら」

 

「……それはやめておいたほうがよろしいかと」

 

 白井は申し訳なさそうにそう言う。ミラは何とも残念そうな表情をするが、美琴のことを考えれば仕方がない。美琴とルームメイトである白井は毎日のように食蜂の愚痴を聞いている。食蜂を呼んだら確実に美琴が嫌がるだろう。

 

 ミラは美琴と食蜂がお互いの事を認めつつも仲が良くないことはよく知っている。だが、ミラとしてはそれでも二人には仲良くして欲しかったのだ。だがそうはいかないのが美琴と食蜂である。

 

 そんな白井の返答に疑問を持ちながらも佐天は質問する。

 

「? ミラさんにもそういう二つ名みたいなのってあるんですか?」

 

「ミラさんは常盤台では姫と呼ばれていますのよ」

 

「おおっ!!」

 

 白井の言葉を言葉を聞いて初春が歓声を上げる。お嬢様に憧れる初春からしてみればなんとも嬉しいサプライズだったようだ。常盤台の超電磁砲(レールガン)ほどにないにしてもその名は学舎の園の外にも知られていた。ミラの本名までは知られてはいなかったが。

 

「その呼び方はあんまり好きじゃないんだけどね。ほら、全然似合わないでしょ?」

 

「そうなんですか? とっても似合ってると思いますけど」

 

 初春が不思議そうな声を出す。それに初春だけでなく佐天や白井も不思議そうな顔をしていた。ただ、ミラが姫と呼ばれることを好ましく思っていない理由を知っているのは食蜂と美琴のみだ。

 

 

「みんなー、買ってきたわよー!」

 

 そんな感じでミラたちが談笑していると、満面の笑みを浮かべた美琴と若干疲れたような顔をした千歳が帰ってきた。さらに美琴は年甲斐もなくスキップで戻ってくる。

 

「ありがとう、二人共。美琴はちゃんと貰えたみたね」

 

「べ、別にゲコ太なんてただのオマケよ! 私はクレープを食べたかっただけなんだから!」

 

「ふふふ、そうだったわね。いただきまーす」

 

 顔を真っ赤にしながらクレープを渡す美琴の手にはしっかりとゲコ太が握られている。それを見た初春と佐天はもう気にするのをやめていた。

 

 ミラとの会話でだいぶ緊張がほぐれていた初春と特に佐天ははこれで完全にリラックスしたようで、超能力者(レベル5)である美琴たちが思っていたほどに、いや全然悪い人じゃない事が分かったようだ。今ではクレープを食べながら和気藹々と話している。

 

 

 

 ただ、彼女たちはこの後に知ることとなる。超能力者(レベル5)の力、彼女らが人格破綻者と呼ばれる理由、そして何よりも恐ろしさ。憧れ程度でその力を手に入れようとする事が如何に愚かしいかを。




 ほんと進まない。うん。いくらなんでもやばいかもしれない。次ので一話は頑張って終わらせよう。途中まで書いてるけど何とか終わるかな。主人公がぶっ壊れてるけど。

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