とある科学の元魔術師   作:珠風船

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第13曲:蜂の巣に手を出したら☆

 学舎の園内、常盤台中学学生寮

 

「むー」

 

 あの事件の日から既に数日が経過していた。あの後、銀行内で赤ちゃんは産まれた。駆けつけた警備員(アンチスキル)や救急隊員、その場にいた一般人など多くの人に囲まれながら。

 救急隊員をはじめとする大人たちは、中学生が分娩の手伝いをするなど論外だ、と言うようにミラを止めようとした。が、ミラの手際の良さは勿論、大人たちが目を離した隙にミラが能力を使って大人に化けた事もあり、結局はミラが最後まで医療行為を行った。

 その場で流産の可能性もあった。が、母子どちらも特にこれといった問題はなく、普通よりも数日だけ入院期間が延びる程度で済んだらしい。ひとえにミラの手腕によるものだろう。

 

 だが、問題があったのはミラのほうだ。実はあの日から寮の自分の部屋で引き篭っていた。

 寝室に篭ってベッドに寝そべりながらむーむー唸っているミラを見る食蜂は、ベッドに腰掛けてミラの頭をペチペチ叩きながら話しかける。

 

「みぃーらぁー、いつまで部屋に篭ってる気ぃ? いい加減外に出ない?」

 

「むー」

 

 ミラは枕に顔を埋めながら、足を泳ぐようにバタバタとベッドに打ちつけて、喉を鳴らして返答する。必要最低限の家事をこなす以外は毎日こんな感じだ。こんなミラをルームメイトの食蜂が何とか外に引っ張り出そうとするも応じる事はなかった。

 

「……ここ数日それしか聞いてないんだけどぉ。身体検査(システムスキャン)中に御坂さんから電話が掛かってきたと思ったらすぐに来いって言われるしぃ」

 

「うっ」

 

 枕に顔を押さえつけながらもミラの体はびくんと反応する。そんなミラを横目に見ながら食蜂は容赦なく言葉を続けていく。

 

「いくら怒ると見境力がなくなるって言ってもぉ、普通あそこまで、廃人確定まではやらないわよねぇ」

 

「はうっ」

 

「前の時と同じぐらいの改竄力が必要だったしぃ、むしろあそこまでグッチャグチャにできる破壊力を教えてもらいたいぐらいよぉ☆」

 

「うぐっ」

 

「しかも、その日初めて会ったコの前で盛大に虐殺したみたいだしぃ。ミラに容赦力がないのは元々だけどぉ、新しくできた友達の前であれはまずかったでしょう☆」

 

「けほっ」

 

 常盤台中学内でのミラは、優しさの塊、童話の中の姫、お嬢様ofお嬢様のようなイメージで通っている。美琴と食蜂以外の常盤台中学生から。いや、ミラが優しいのは事実なのだが、どんな事にも例外というものはあるのだ。

 

 実際、ミラは敵対者に対しては無慈悲である。本気で怒った時だけ前回のような過激なやり方で潰すが、それ以外でも基本的に容赦ない。情け無用でとことん制裁を加える。ミラ自身、こういう面があるから姫とか呼ばれるのをあまり好ましく思っていなかった。

 

「せっかくお友達になったコに嫌われたー、とか思ってるんでしょう?」

 

「……むー」

 

 ここでミラはゆっくりと顔を上げて食蜂の目を見る。ミラが何よりも気にしているのはここなのだ。

 強盗を精神的にフルボッコにしたことは大して気にしていない。が、白井たちの前で魔術師時代の自分の殺気を見せたこと、目隠しをしてても友人の前で虐殺(フリ)したことが一番の大問題だった。

 

「ぜーんぶ図星みたいねぇ。ミラは優しくても甘くはないからぁ、そういう性分だと苦労力が高いわよぉ。

 でもさぁ、赤ちゃん助けるコトができたんだから、それはそれでよかったじゃない☆」

 

「……うん、そうだけど」

 

「もぉー、いつまでくよくよしてるつもりぃ?」

 

 いつまでもネガティブなミラを見ている食蜂は不満が溜まったように頬を膨らませる。そして、ミラのほっぺたを活を入れるかのようにぐにぐに、ムニムニと思い切り抓る。

 

「いひゃい、いひゃいよ、みしゃひ」

 

「あ、やっぱりミラのほっぺはぷにぷに、柔らかーい☆

 っと、じゃなくてぇ、ミラらしくないのよぉ。いつまでもグチグチ言ってぇ」

 

 そう言って思いっきり伸ばしたミラのほっぺたを一気に放す。真っ赤になってしまった自分の頬を手で抑えるミラの目は涙目だ。

 

「はぅ、いたい…………今の私、らしくない、かな?」

 

「うんうん、とっても☆ いいじゃない。あの程度のことでミラのコト嫌いになるんならぁ、その程度のヒトたちだったってことでしょう? 謝ってダメだったら思いっきり慰めてあげるわよぉ☆

 だぁーかぁーらぁー、ちゃーんと白黒はっきりさせなさい!」

 

(まぁ、ミラを泣かせるようなら記憶全消し、代わりに一生悪夢に悩んでもらうコトになるけどねぇ。あ、でもぉ、弱りきったミラを慰めるのもアリかなぁ。わざと変なコト言わせる? んー、無理かぁ。ミラには他人を洗脳したコトすぐバレるしぃ。いや、まだまだ方法はぁ、―――――)

 

 食蜂がなんとも危険な思考に走りかけていると、ミラはさっきまでの憂鬱さを感じるさせることのない満面の笑みを見せる。

 

「……うん、そうする。ちゃんと会って謝るわ! ありがとね、操祈」

 

「ないわねぇ」

 

「何か言った?」

 

「ううん、なんでもないゾ☆ よしよし、ミラはいい子いい子ぉ」

 

 言いながら食蜂はミラの頭を子供にするかのように優しく撫でる。サラサラのミラの髪を撫でる食蜂はかなり楽しそうだが、心の中では恐ろしい思考が張り巡らされていたり。

 

(やっぱり、ミラには笑顔が一番似合ってる。でもまぁ、これでミラを泣かすようなコトすればぁ、それ相応のバツが必要よねぇ。やっぱり記憶全消しはかぁーくてーい☆)

 

「もう、子供扱いしないで」

 

 楽しそうに髪を撫でる食蜂を何とか退けようと奮闘するミラだが、傍から見てしまえばミラも楽しんでるようにしか見えなかったりする。

 

「いつものお返しよぉ。ゴハン作ってもらってるしぃ、膝枕は気持ちいいしぃ。私からの日頃のお礼とでも思ってやられてなさいよぉ。

 ほらほらぁ、よいではないかぁ、よいではないかぁー☆」

 

「ううぅ、…………あったかい」

 

 食蜂はミラを抱きしめるようにして、ミラの頭をゆっくり、優しく撫でていく。ミラのさっきまでの抵抗しようとする心構えはどこかへ消え去った。目はとろーんとして今にも眠りに落ちてしまいそうだ。

 普段ならやる方とやられる方が逆なのだが、たまにはこういうのもいいのだろう。なにせ食蜂の目はいつも以上にキラキラと輝いている。

 

「こっちもいいのよねぇ。捨てられた子猫みたいでぇ☆ よぉしよし、あぁ、癒されるぅ」

 

 もはやアニマルセラピーの域まで達していた。

 

「ふにゅうぅ、…………ってこんなことしてる場合じゃないわ! 早く行かなきゃ」

 

 そう言ってミラは勢いよく立ち上がると外出の準備を始めようとする。が、ミラが立ち上がった時の反動で食蜂がベッドに顔面からダイブしていた。

 

「ぶふっ、……ミラぁ、痛いわよぉ。

 それにぃ、行くって言ってもどこ行く気ぃ? 待ち合わせの約束も何にもしてないじゃない☆」

 

「……あ」

 

 食蜂の言葉を聞いてミラの動きがピタリと止まる。そんなミラを見る食蜂は呆れたようにため息を吐く。

 

「全くぅ、ミラの天然さんは相っ変わらずよねぇ。(まぁ、そこが可愛いんだけど☆)

 御坂さんにはもう連絡取ってあるわよぉ」

 

「ホントに? ありがとう、操祈!」

 

 食蜂の両手を自身の両手で握って、子供のようにぴょんぴょん跳ねながらミラは言う。

 食蜂はミラの寝室に来る前には既に美琴に連絡をしておいたのだ。今日にはミラが立ち直るであろうと予想して。

 

「どういたしましてぇ。じゃあ、準備が出来次第行きましょう☆」

 

「あれ、操祈も行くの?」

 

「ええ、ミラのお友達にも会ってみたいしぃ☆ 迷惑かしらぁ?」(どんな子か楽しみねぇ。記憶全消しになっちゃうのかなぁ)

 

 とんでもない副音声が聞こえたのは気のせいなのだろう。そうであると信じたいものである。でも、これだってミラのためを思っての事だろう。ミラの事を好きなのは美琴だけではないのだ。あくまで友愛だが。

 

「ううん、全然。早く準備しないとね」

 

 そう言ってミラと食蜂は身だしなみを整えて外出の支度をする。ミラは右腕にいつものリボン――今日は緑――を巻き、前髪をゴムで縛る。食蜂は星型の模様のバックに複数のリモコンを入れて肩から下げ、いつもの蜘蛛の巣を連想させるレース入りの手袋を手馴れたように身につけていく。

 

 こんな感じで二人が準備しているとミラが食蜂に問いかける。

 

「そういえばどこで待ち合わせしてるの?」

 

「洋服屋よぉ、セブンスミストだってぇ」

 

 

 

  ◆

 

 

 第七学区Seventh mist

 

 セブンスミストは第七学区にあるごく普通の洋服屋だ。学園都市にある一般の学校の生徒からのニーズはあるが、常盤台中学のお嬢様には縁があまり無いところ。実際ミラも食蜂も来るのは初めてだ。

 

「やっと着いたわねぇ、あぁ涼しい。もぅ、タクシー使わせてくれてもいいじゃない!」

 

 食蜂は頬を膨らませてブーブー文句を垂らす。

 夏の暑さというものはいつ浴びても辛いものである。超能力者(レベル5)であろうがそれは例外ではないようだ。まだ七月だがうだるような暑さの中、ここまで来た食蜂は心なしかぐったりしている。

 運動嫌いの食蜂は真夏の炎天下の中歩くのすら嫌がっていたので、食蜂はタクシーでここまで来ようとした。が、ミラがそれを止めバスと徒歩でここまで来ていたのだ。

 

「ダメよー、普段から全然運動しないくせに。派閥の子からも言われるのよ、甘やかしすぎないで、って。みんないい子よね」

 

「あの子達ぃ、今度お仕置――」

 

「お仕置きしたら、お仕置きだから。ふふふ、この前のすけすけ見る見るじゃ足りなかったようね。今度は何がいい?」

 

 先日の身体検査(システムスキャン)の日のお仕置きはすけすけ見る見るだった。どこぞの幼女教師の目隠しポーカーではない。ミラの能力ですけすけにするのだ。何を、とまでは言わないが。

 

「か、完全に復活したようねぇ。まぁ、こっちの方がずぅっとミラらしいけどー☆」

 

 冷や汗を垂らしながらミラを見る食蜂だが、嬉しそうなのは元のミラが戻っきたからだろう。この感じのミラが食蜂にとって一番落ち着くようだ。

 

 

 待ち合わせをしたといってもまだ時間があったため、近くのアクセサリー店を覗く。洋服屋とは言っても規模が大きいためこういった小物店も並んでいたりする。

 ミラと食蜂が近くにあるアクセサリーを見ていると、美琴が手を振りながら走ってやってくる。後ろに佐天と初春がついて来ていたのだが、その二人を置いてけぼりにして。

 

「おーい、ミラー! …………げ」

 

「みぃーさぁーかぁーさぁーん。私を見るたびに、げって言うのやめてくれないかしらぁ? 傷ついちゃうゾ☆」

 

「うっさい! 思ってもない事言ってんじゃないわよ! つーかなんでアンタがいんの!?」

 

「えー、それはぁ――――」

 

「ミラ、元気になってよかったわ。もう心配かけさせて!」

 

 だが美琴は自分で聞いておきながら食蜂を無視して、ミラの方に嬉しそうに顔を向ける。そんな美琴を見る食蜂は額に青筋を立てるがそれすら美琴は無視していた。

 

「本当にごめんね」

 

「御坂さぁん、自分で聞いておきながらぁ無視――――」

 

「御坂さーん、早すぎですよー」

 

 ここで美琴に置いてけぼりにされていた初春と佐天がやって来る。またしても言葉を遮られた食蜂の顔は相当引き攣っている。

 

「初春ちゃん、佐天ちゃん……」

 

「ミラさん」

 

 初春と佐天の目とミラの目が合うと食蜂はスっと、誰にも気づかれることもなく星型模様のバックの中に手を突っ込んでリモコンの感触を確かめる。そして、二人のことを値踏みするような目で見ている。

 

「あの、ごめんなさ――――」

 

「かっこよかったですよ、この前のミラさん! ねえ、初春」

 

「はい! 大人の人に指示を出したり、妊婦さんを励ましたり! 赤ちゃんが生まれるところって初めて見ましたけど、私感動しちゃいましたよ」

 

「え?」

 

「確かにあの時のミラさんは怖かったです。けど、それ以上に妊婦さんを助けるミラさんがとってもかっこよかったです!」

 

「それに御坂さんの言葉にも感動しちゃって、あんな風に信頼しあえてるっていいなーって思いました」

 

「……美琴の言葉?」

 

「あ、それは――――」

 

「わーわー、何でもない! 何でもない! 私は何も言ってなーい!」

 

 美琴は顔を真っ赤にして何とか取り繕おうとする。流石にミラ本人にあれだけの事を聞かれるのは恥ずかしいのだろう。

 そんな美琴をよそにミラは改めて初春と佐天に向き直る。

 

「ありがとう、初春ちゃん、佐天ちゃん」

 

「えー、お礼を言われることなんてしてないですよ」「はい、そうですよ」

 

「ううん、それでも、ね」

 

 どうやらうまく仲直りできたようだ。

 バックに突っ込んでいた手をいつの間にやら引き抜いていた食蜂はミラの肩を軽くたたく。

 ちなみに美琴は真っ赤になって一人で呻いている。

 

「アハハ、ミラの杞憂だったみたいねぇ」

 

「えっと、あなたは?」

 

「はじめましてぇ☆ 私はミラと御坂さんの親友(・・)でぇ、同級生(・・・)の食蜂操祈っていいますぅ、ヨロシクね♡」

 

 きゅるるーんという効果音が聞こえてくるような、いつも以上にハイテンションな自己紹介をする食蜂。

 

「「……」」

 

 初春と佐天が口をポカーンと開け、唖然とする。そして、お互いに顔を見合わせてから食蜂、ミラ、美琴の順番で顔を向ける。

 

「同」

 

 初春が言う。食蜂の顔から約三十センチほど下を見ながら。

 

「級」

 

 佐天が言う。ミラの顔から約三十センチほど下を見ながら。

 

「「生?」」

 

 最後に二人が声を揃えて言う。美琴の顔から約三十センチほど下を見ながら。

 そんな二人を見ているミラは苦笑い、食蜂は口とお腹を抑えながら声を押し殺して大爆笑、美琴は笑顔のつもりなのだろうが相当眉間に皺が寄っている。

 

「私ミラさんが御坂さんより年上だったのかと思ってました」「食蜂さんもです」

 

「佐天さん、初春さん、ちょっと路地裏まで行こうか」

 

「ちょっとぉ、御坂さぁん。年下の子を虐めるってどうなのぉ? それでも私の同級生(・・・)?」

 

 食蜂が妙に同級生のあたりを強調しながら、佐天と初春を庇うように前へ出る。佐天と初春の目から見れば今の食蜂は優しいお姉さんにしか見えない。が、あくまでそれは顔が見えてないから言えることだろう。

 食蜂と対峙している美琴には分かる。食蜂の今の表情は他人、美琴で遊ぶことしか考えてない、歪みきった笑顔だ。

 

「アンタが言える口か! 腹ん中真っ黒を通り越して暗黒のくせに!」

 

「あらぁ、そぉんな幼稚力なコト言ってるからお子様(・・・)だと思われちゃうのよぉ?」

 

「ミラはいいとして、アンタがおかしいだけよ、年齢詐称洗脳女王! 私はいたって普通よ!」

 

「残念でしたぁ。私にはぁ、大人びてるっていうマジックワードが使えるんだゾ☆ 御坂さんはなぁに? 子供っぽい? 未成熟? 永久に発展しない発展途上?」

 

「私だって未来有望で――――」

 

 なんとも低脳な戦いを始めた食蜂と美琴。二人がワーワー、ギャーギャーとバトルを開始させるのを見ている初春と佐天。なんとか止めようとするのが普通の行動なのだろう。最低でも二人はそう思ったのだろう。

 

「あ、あのー喧嘩は……」

 

「二人なら大丈夫よ」

 

 が、ミラがやんわりと初春と佐天を止める。その目は微笑ましい物を見る目だ。それが幼い子供の喧嘩を見る親のようでもあるのは気のせいなのか。

 

「大丈夫って、」

 

「うん、大丈夫。二人共仲は良くないんだけど、お互いの事が大好きなのよ。お互いを認めてるからこそ喧嘩しちゃう、こういうのをライバルっていうのかしらね。喧嘩するほど仲がいいって言うでしょ。

 それに二人共とっても似てる――――」

 

「「似てないし、好きじゃない!」」

 

「あはは、ほらね、そっくりでしょ?」

 

 口に手を当て笑いを堪えながらなんとも楽しそうに言うミラを見て、佐天と初春はこの三人の立ち位置を理解できるような気がした。

 美琴と食蜂が手のかかる子供、それを見守るミラが姉か母親か、そんな感じなんだと。まあ、三人とも一応は同い年のはずなのだが。

 

 

 

  ◆

 

 

 白熱していたバトルも結局はミラのほんわかオーラに負けて鎮火した。

 その後、食蜂が自身の能力を明かしたことで佐天と初春が驚きに包まれたのもつい先ほど。ある種、二人はとんでもない所にいたりする。常盤台の超能力者(レベル5)三人と同時にに会えるなんて学舎の園にいても確率はほぼ皆無だ。

 だが、一方でその三人はなんともマイペース。美琴は探している物を見つけるためにキョロキョロ。食蜂は初春の頭の花飾りに興味を持ったようで、歩きながらツンツン。そして、ミラはいつものようにニコニコ。

 

「みんなは何を見に来たの?」

 

「私はパジャマ」「私たちは水着を見に」「私は特にないわよぉ」

 

 ミラの問いかけに、美琴、佐天、食蜂の順番で答える。

 

「それじゃあ、美琴のから行こうか。一番近いし」

 

 

 そうしてたどり着いたのはパジャマ売り場。真っ先に反応したのは美琴だった。

 

「ほぁ~」

 

 美琴の前にあったのはパジャマを着たマネキン。花柄をあしらった模様にフリルがついたそのパジャマは美琴にとって、どストライクだったようだ。

 

「ね、ねえ、これカワイ――――」

 

 が、

 

「うっわー見てよこのパジャマ! こんな子供っぽいの着る人いるのかな」

 

 佐天が言う。

 

「小学生の時にはこういうの着てましたけど、さすがに今は」

 

 初春が言う。

 

「こんなの着るのなんてぇ、お子様(・・・)しかありえないわよねぇ。ねぇ、みぃーさぁーかぁーさぁーん?」

 

 止めと言わんばかりに食蜂が言う。初春、佐天が言う度に美琴がどんどん沈んでいくのをしっかりと見やり。明らかに確信犯だ。最後のはかなり白々しい。

 

「そうよね! ありえないわよね!」

 

 さっきと同じように、真っ赤になって自分を否定する。

 だが、ミラだけは違った。

 

「そう? 結構可愛いと思うけど」

 

「えー、ミラさんってこういうの着るんですか?」

 

「なんか意外ですね。もっと落ち着いた感じのをきてるのかと思いました」

 

「んー、私はあんまり服に興味もつタイプじゃないわ。気に入ったのがあれば着るからあんまり統一感はないのよ」

 

「そうよねぇ。部屋にある服は子供っぽい柄のもあれば大人らしいワンピースもあるしぃ。まぁ、ミラは着こなし力高いから何着ても似合うしね☆」

 

 いくら常盤台中学が普段から制服着用を義務付けているとはいえ、私服を持っていないわけではないのだ。が、極論言えばミラは能力を使ってしまえば服なんて無地でも問題なかったりする。

 一方で美琴は沈みに沈んでいた。言った言葉は取り消すことができない。覆水盆に返らず、と言ったところか。自分に正直になれる所、美琴が一番欲しいものであろう。

 そんな美琴を見たミラは少し微笑み、

 

「じゃあ次は佐天ちゃんたちの水着を見に行きましょう。美琴はまだ見てる?」

 

「う、うん。みんな行ってきていいわよ!」

 

 慌てながらもなんとか返答する美琴。そして美琴以外の四人で移動する際、ミラが振り返って美琴にウインク。

 

(試着するなら今のうちにね)

 

「……か、神ぃ」

 

 美琴が呟いた言葉は誰にも聞かれることは無かった。そして、美琴の目からひと雫の涙が垂れたとか垂れなかったとか。

 

 

 

  ◆

 

 

「おっ待たせー!」

 

 ミラたちが水着売り場に移動してからしばらく経ってから、美琴が手に紙袋を持って帰ってくる。しかも嬉しそうに年甲斐もなくスキップしながら。以前のゲコ太と一緒なのは気にしない。

 

「ふふふ、ちゃんと買えたみたいね」

 

「一体どんなのを買ったか見せてくれないかしらぁ?」

 

「いいでしょ、そんなの!」

 

 なんというか、非常に微笑ましい。

 

「あ、これいいかも――――」

 

 佐天が水着を手に取ったと同時、初春の携帯に電話がかかってくる。しかも相手の声がかなり大きく直接電話に出ていないミラたちにも声が聞こえくる。

 

「もしも――――」

 

「初春! 今どこにいるんですの!!? 例の虚空爆破(グラビトン)事件の続報ですの! 衛星が重力子(グラビトン)の爆発的加速を観測しましてよ! あなたもすぐに現場へ向かいなさい!」

 

「観測地点は!?」

 

「第七学区の洋服店『セブンスミスト』ですの!」

 

 ……ミラたちの現在地、セブンスミスト。

 

「私今ちょうどそこにいます! 」

 

「何ですって!?初は――――」

 

 白井の言葉を最後まで聞かないで、初春は電話を切ってしまう。

 

「皆さん! カクカクシカジカでこういう状況なんです!」

 

「この店がターゲットに!?」

 

「はい、ですから避難誘導に協りょ――――」

 

「私はパースぅ。めんどくさいもの☆」

 

 食蜂はうっとおしそうに手を振って否定の意思を初春に伝える。

 

「そんな、食蜂さん!」

 

「私もパスかなー」

 

 食蜂に並んでミラまでもが初春の協力要請を却下する。

 

「ミ、ミラさんまで!」

 

 が、別に一般人を見捨てたわけではない。

 

「ふふふ、よろしく操祈」

 

「感謝して欲しいものねぇ。ま、ミラがいなかったらやらないけど☆

 私の洗脳力でどうとでもなっちゃえ☆」

 

 そう言って食蜂はバックの中からリモコンを一つ取り出し、ボタンの一つを押す。

 ピッという機械音が鳴ったその瞬間、時間が止まった。

 

「え?」

 

「ったく、やることがありえないわ」

 

 美琴が呆れるのも無理はない。食蜂はこの建物にいる人間全てを自分の支配下においた。先ほどの時間が止まったというのは語弊があったかもしれない。正確には人間の行動を止めたのだ。その証拠に周囲にいる人達の動きはピタリと停止している。

 

「こっちの方がパニックは起きないしぃ、時間もかからないから安全だゾ☆

 ほらほらぁ、さっさとココから出て行きなさぁい」

 

 食蜂がそう言ったと同時に建物の中にいる人物はすぐに外へと繋がる階段へ雪崩のように急行する。もはや女王バチに命令されるがままに動く働きバチだ。

 

「すっげ」

 

「これで第一段階は終了ね」

 

 さっきまで客で賑わっていたのはどこへやら、ミラ達がいるフロアからは完全に人の気配が消えていた。ゴーストタウンのようにシーンと静まり返っている。もはやここに残っているのはミラ達だけだ。

 

「第一段階ですか?」

 

「ええ。これで避難は完了したでしょ。次は――――」

 

「爆弾探しだゾ☆ じゃ、ミラちゃんヨロシクー♡」

 

「はーい。それじゃあ、美琴も準備お願いね」

 

「わかってるわ」

 

「……えーっと?」

 

 佐天がミラ達の会話についていけなくなったようで混乱している。そんな佐天を見て美琴がフォローを入れる。

 

「ただ役割分担してるだけよ。食蜂が強制退去、ミラが爆弾捜索、私が爆弾撤去、ってね」

 

 食蜂の能力は先ほど見せた通り。ミラの能力は透視ができるので、例え爆弾が天井に隠されていようが発見できる。美琴の能力があれば爆弾なんて恐るるに足らず。さすがは天下の常盤台トップスリーだ。

 

「初春ちゃん、爆弾の形状とか種類、詳しく教えてくれる?」

 

「あ、はい。それは――――」

 

 初春の言葉を遮って一人の少年と女の子がミラ達の元へとやって来る。少年はツンツン頭の高校生ぐらいの男子。女の子は小学校低学年ぐらいで、腕に収まりきらないほど大きな人形を抱えて走ってくる。

 

「おーい! ビリビリ!」

 

「なんでアンタがここに残ってんの!?」

 

「急に他の客がいなくなっちまたんだが、何かあったのか!?」

 

「そうか、アンタ能力が効かないから……」

 

 少年は能力を打ち消す能力を持っている。そのために食蜂の洗脳が効かず、少女の方は人形を抱えていたために早く行動できなかったのだろう。たまたま少年が触れてしまったことで洗脳が解けてしまったのだろう。

 

 一方でミラたちは少年が来たために一時中断してしまった会話を再開させる。爆弾の捜索は早いに越したことはない。

 

「初春ちゃん、さっきの続きなんだけど」

 

「はい、犯人の能力はアルミを爆弾に―――」

 

「…………」

 

 初春から情報を聞いたミラはすぐさま能力を使う。ミラの透視能力の視界は360度の全方位。さらには望遠鏡のように遠方を見るようにできれば、顕微鏡のように極小の物を見るようにできる。それも切り替えは自由自在。

 

「それと子供用のバックとかぬいぐるみを爆弾にして――――」

 

 そして見つける。不自然に設置されたアルミ製のスプーン。

 

風紀委員(ジャッジメント)のお姉ちゃん。このお人形を――――」

 

「早くその人形を放しなさい!」

 

「え?」

 

 ミラが見つけた場所は少女が抱える人形。人形にカモフラージュさせて少女に運ばせていたのだ。

 突然の叱責に少女が反応できるはずもなく、動きを止めて固まってしまう。そして無情にも少女が抱える人形が握りつぶされたかのように圧縮していく。

 

「っ……、操祈! 美琴!」

 

「「!!」」

 

「……あとはよろしくね」

 

 そう言いながらミラは全力でダッシュして少女の手から人形を弾き落として遠くに蹴り飛ばす。そして、自分の体で少女の体を包み込むようにして少女を庇う。

 ミラがスプーンを見つけてからここまでやるのに約二秒。しかし、タイムアップだ。

 

 限界まで圧縮された人形はついに爆発した。とてつもない爆風により周囲にあった物はひとつ残さず吹き飛ばされ、ミラたちがいたフロアは爆炎に包まれる。そして爆音が辺りに鳴り響いた。

 

 

 

  ◆

 

 

「スゴイ! 素晴らしすぎる! 徐々に強い力を使いこなせるようになってきたぁ! アハハ、無能な風紀委員(ジャッジメント)どももゴミもぉ! 全部吹っ飛ばしてやる!」

 

 ここはセブンスミストから少し離れた路地裏。少年が一人、自分に心酔している。少年の名は介旅 初矢(かいたびはつや)。先ほどの爆弾の犯人だ。彼は風紀委員(ジャッジメント)を逆恨みしており、何回かこういった事件を起こしていた。今回はそのターゲットは初春になっていたのだ。

 

「ははは! 待ってろよ――――」

 

 一人で騒いでいる彼の後ろに、二人(・・)の鬼が立っていた。

 

「え?…………ぼぎゃぁ!」

 

 美琴が彼を後ろから思いっきり蹴り飛ばす。蹴り飛ばされた少年は地面を数回バウンドして、近くにあったゴミ捨て場に頭から突っ込んだ。

 

「こんにちはぁ、要件は言わなくっても分かるわよねぇ? 爆弾魔さん☆」

 

「な、何のことだ!」

 

「威力は大したもんだけど残念ね。誰もカスリ傷一つついてないわよ」

 

「ば、馬鹿な! 僕の最大出力だぞ!」

 

「へぇ~、自白してくれるんだぁ」

 

「!?」

 

 もはやこれは自分から、自分がやりました、といったのも同然だろう。それを見ている食蜂が嬉しそうに、残虐に微笑む。

 

「しょ、証拠はどこにあるんだい?」

 

「……証拠、ね」

 

 茶髪の方が自分の言葉に反応したのを見て、少年はしめた! というふうに口角をつり上げ、自分のかばんの中に手を突っ込む。その中には大量のスプーン。

 

「それに外から見ててすごい爆発だったし…………がっ、体が!?」

 

「あんまり調子に乗らないでくれるかしらぁ?」

 

 食蜂の手には自身のバックから取り出したリモコンが握られている。食蜂が能力で少年の行動を完全に掌握しているのだ。彼は手をかばんに突っ込んだまま動きが止まっている。

 

「証拠が見たかったら自分の背中を見てみなさいよ」

 

「せ、背中!? うわぁ、いつの間に!?」

 

 食蜂が能力で無理矢理後ろを向かせると、彼の背中には派手な赤い色で「爆弾魔」とデカデカと書いてあるのだ。 

 

「まぁ、運がなかったってことねぇ。ホント、ミラの能力は便利だゾ☆」

 

「常盤台の超能力者(レベル5)なめんじゃないわよ」

 

 ミラは爆発の直前、美琴と食蜂にメッセージを送っていた。それはミラだけが使える方法で。

 実はぬいぐるみの中のスプーンを見つける前、大量のスプーンをかばんに入れた介旅を既に見つけていたのだ。だが、その直後に少女を助けるために動いたので、美琴たちにすべてを託した。

 メッセージを送った方法はいたって簡単。美琴たちの目に直接情報を映すのだ。介旅の容姿に居場所、スプーンをかばんの中に大量に入れている事。さらには彼の背中に能力で着色してマーキングするという徹底ぶりだ。逃げられるはずもない。

 

「……超能力者(レベル5)?」

 

「そうよぉ、心理掌握(メンタルアウト)色彩調節(コーディネーター)、ついでに超電磁砲(レールガン)もねぇ」

 

「はっ、いっつもこうだ! 何をやってもねじ伏せられる! 殺してやるよ!お前らみたいのが悪いんだ、力がある奴はこう、ごふっ」

 

 吐き捨てるように自分勝手なことを言う介旅。が、手に掴んでいたスプーンを突然口に突っ込んだ。誰が原因かなんて考えなくてもわかるだろう。

 

「ちょっと黙りなさいよぉ。力があるやつがぁ、弱者を潰すのなんて当たり前のコトだゾ☆ 弱肉強食って言葉を知らないのかしらぁ。その程度のコトで何騒いじゃってるのぉ?

 それにぃ、その口に刺さっててるモノで頭吹っ飛ばしてあげようかしらぁ? 威力は実証済みだしねぇ」

 

 どこかで見たような光景だが、ミラと食蜂の大きな違いはハッタリかそうでないかだろう。食蜂だとマジでやりかねないから怖い。が、

 

「やめときなさいよ」

 

「ジャマしないでくれるかしらぁ、御坂さん?」

 

「やりすぎよ。それを爆発させればこいつは確実に死ぬわ」

 

 美琴が食蜂のリモコンを掴んで待ったをかける。口調だけならば普段とそう変わらない食蜂だが、美琴には雰囲気だけでかなりキレてることがわかっていた。

 そして、二人ともお互いを静かに睨み合う。

 

「あー、はいはい、わかってますよぉ。別にここでスプラッタを見たいわけじゃないしねぇ。

 でぇもぉ、蜂の巣(私の大切)に手を出したらぁ、ただではすまないっていう……ね?」

 

 そう言って食蜂はリモコンに触れている美琴の手を払いのけてボタンを押す。その瞬間、介旅の体が糸の切れた操り人形のように力が抜ける。完全に気絶していた。

 

「…………偶然、なわけないわよねぇ」

 

「あ?」

 

「べっつにぃ、御坂さんには関係ないコトだゾ☆

 それじゃあ、後始末はヨロシクねぇ。私ぃ、今日はもう疲れちゃったしミラに癒されに行ってくるわぁ」

 

「ちょ、待て! アンタがやったほうが明らかに楽だろ!」

 

 そんな美琴の叫び声を無視して食蜂はフリフリと手を振りながら、自分たちがさっきまでいたセブンスミストへ戻っていく。食蜂の顔はすっきりしているものの、少しだけ何かが引っかかったかのような顔をしていた。

 

 

 

  ◆

 

 

 時は少し遡り、爆発の直後

 

「……?」

 

 爆発はした。さっきまで周囲にあった洋服は軒並み吹っ飛ばされている。が、ミラ達の前に立ち、爆心地に向けて手を突き出す少年の後方のみが爆発の被害から逃れていた。

 そんな中、佐天が我に返ったように言う。

 

「……あ」

 

「どうしたんですか、佐天さん」

 

「ミラさん……ヤバいんじゃ」

 

「……ひぃ」

 

 初春と佐天の脳裏に映ったのは先日の悪夢。もはやミラがキレるだけの条件は十二分に揃っていた。初春たちにはこのあとの展開がありありと想像できてしまう。

 「潰す」と。

 

「「ひいぃぃぃ」」

 

 が、それはいい意味で覆される事となるのだが。

 

 そして、佐天たちでなく他の人達もやっとこの状況を掴めてきたようだ。それは先程ぬいぐるみを抱えていた、ミラに抱きしめられている少女も例外ではなかった。

 

「う、うう、うわあああああああああああん」

 

 女の子は突然泣き出してしまう。それもそうだ。一歩間違えれば怪我ではすまない、最悪死んでいたかもしれないのだから。今になってその恐怖がぶり返してきたのだろう。

 それを見たミラは少女を強く、そして優しく抱きしめる。

 

「もう、大丈夫よ。怖かったわよね。でも、もう怖くないわ。大丈夫、大丈夫」

 

 ミラは抱きしめながら優しく少女の頭を撫で、少女を包む恐怖を優しく取り除くように慰める。それはもはや絵画のような神々しささえ感じられていた。ミラはこういうことができるからこそ姫と呼ばれ、慕われているのだろう。

 

「ミラさん……」 

 

 佐天は理由もわからず涙を流していた。……が、一瞬でそれが止まってしまうほどのショックに出会う。初春も例外なく。その原因とは、

 

「御坂さぁん。あなたは休んでいていいわよぉ」

 

「こっちのセリフよ、私が潰すわ」

 

 鬼がいた。紛れもない存在感を放つ。ミラがいる場所と、美琴たちがいる場所、明らかに世界が異なっている。ミラがいるのが天国ならばこちらは地獄か。

 

「えーっと、御坂さん?」

 

「何かしら、佐天さん?」

 

「……いえ、何でもないです」 

 

 佐天が美琴に問いかける。が、それをやめてしまいたくなってしまうほど、美琴の笑顔が清々しく怖い。

 そして、こっちも例外でない。

 

「あのー、食蜂さん?」

 

「何かしらぁ、お花ちゃん?」

 

「花、……いえ、何でもないです」

 

 初春たちが出した結論、超能力者(レベル5)が怒ると例外なく恐ろしい。一人ならば先日のミラよりかは怖くは無いのだが、二人いる分その怖さはミラに匹敵していた。佐天、初春が先日のデジャヴを感じているのは気のせいのなのだろうか。

 

 そして、そうこうしているうちに美琴たちは外へと出て行く。 

 取り残された佐天と初春は、

 

「佐天さん」

 

「何、初春?」

 

「平和って、素晴らしいですよね」

 

「うん、そうだね」

 

 二人は遠い目をし、その目は虚空を泳いでいた。

 

 

 

  ◆

 

 

 ちょっとしたおまけ。今から数日前、事件当日。美琴と食蜂の会話から抜粋

 

「ちょっといい?」

 

「あらぁ、どうかしたのぉ御坂さん☆」

 

「……アンタの事だから事の顛末はもう把握してるわよね?」

 

「そうよぉ。今修復してきたところ。前の時と同じくらいメチャクチャだったわぁ。全くホレボレするわよぉ。私の能力並なんだもの☆」

 

「茶化してんじゃないわよ!」

 

「みぃーさぁーかぁーさぁーん、何か勘違いしてないかしらぁ。私が単なる善意力であんなのを助けてるとでも思ってるのぉ? 助けた理由なんてぇ、私の改竄力がなかったらミラが過剰防衛で補導されかねないからよぉ。ミラのコトだからそうなったらしょうがないって言いそうだしねぇ」

 

「……否定できないわ。そんなことよりも今日のは、私以外にもミラの事見ちゃった人たちがいるのよ」

 

「へぇー、前の小学生みたいの? そのヒトたちの記憶力も消して欲しいのかしらぁ?」

 

「……ただの通行人じゃないわ。今日ミラと知り合った子」

 

「あらあらぁ、それはご愁傷様ねぇ。私はあの状態のミラは別段恐ろしくはないけどぉ、相当なトラウマになったんじゃないかしら☆」

 

「案外平気そうだったけど、問題は――――」

 

「あら、意外☆ でも問題はミラの方かしらぁ。前の時は寮にも帰ってこなかったものねぇ。けどねぇ、安心していいわよぉ。ミラのお世話はしておくから☆」

 

「……ねえ、一つ聞いていい?」

 

「するだけならご自由に」

 

「なら遠慮なく聞くわよ。

 私はアンタと付き合いが長いわけじゃないけどこれだけは言えるわ」

 

「何かしらぁ?」

 

「アンタが他の人間に対する行動とミラに対する行動の差は異常よ。ミラを特別視してるって言えばそれまでだけど、アンタなんか企んでるんじゃないの?」

 

「……御坂さん、ひっどーい。じゃあ、逆に聞くけどぉ、あなたがミラと一緒にいたい理由は何ぃ?」

 

「別に理由なんてないわよ。一緒にいたいからいる、それだけよ」

 

「私もそれと一緒じゃダメなのぉ?」

 

「……別に。私はもう帰るわ。ミラの事よろしく」

 

「……私のこの気持ちは誰かに仕組まれたものかもしれないのに。

 ……勝手なコト言ってるんじゃないわよ」

 

「何か言った?」

 

「べっつにぃ。じゃぁーねぇー、御坂さぁん☆」

 




えー、今回初めて活動報告書いてみました。そこにはアンケートにキャラ投稿のお願い、初春のお手紙などいろいろあるので、よかったら見に行ってみてください。キャラの投稿はしばらく受け付けますのでお願いします。
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