どうぞ~( ´ ▽ ` )
ミラジェーン=ヴィクトリアが目覚めて2週間。その間、
ミラはほかのナースが病室に入ってくると自分の周りにあるものを投げつけ、
ノックもしないで病室のドアが突然開くと赤い髪のナース、桐船梓がごはんの乗ったトレーを持ち、歌うようにして病室に入ってくる。
「ミラちゃ~ん♥ おっ昼ご飯の時間でっすよ! おっ手々を拭いて♪ めっしあがれ~!」
「……いただきます」
ミラはわずかに頷いて桐船の声に応える。これが毎回の食事の風景であり、こうしてミラの食事は始まる。
(相変わらず偉いわね。いつもは無口なのにご飯食べる前と後にはちゃんといただきますとごちそうさまが言えるんだから)
感心しながら桐船はミラにご飯を食べさせていく。ミラの右腕には肘から先が切断されているので彼女は桐船からご飯を食べさせて貰っていた。
だが、桐船が聞いた話では現在
(こうしてこの子にご飯食べさせてあげるのも、もうできなくなっちゃうのか。ミラちゃんの新しい腕ができるって思うと嬉しいけど、なんだか寂しいかも)
「…………」
「あっ、ごめんね。考え事してて手が止まってたみたいね。じゃあ、次はトマトを食べましょうね」
自分をジッと見ているミラに気がつき桐船は自分の動きが止まっていることを自覚したようだ。というのも桐船はミラにご飯を食べさせている時間が気に入っていたのだ。食事は普段は喋ってくれないミラとの唯一のコミュニケーション。なので桐船にはその時間がなくなってしまうことが少し寂しかった。
「……ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした。最初の頃は全然食べられなかったのに全部食べられて偉いわね。この分なら退院も近いわよ」
「…………」
「うぅ、少しぐらいお話してくれてもいいのに。いくらなんでもこの二週間で聞いたミラちゃんの声がいただきますとごちそうさまだけっていうのはお姉さん的にちょっとショックかも。笑顔も見せてくれないし。少しぐらいはお話ししてよ~」
桐船が一方的にミラに話しかけている。するとドアをノックする音が聞こえてきた。
「桐船クン、入っても大丈夫かな?」
「あ、はーい。どうぞ」
桐船はミラに許可を取ることもしないで返事をしてしまう。するとドアを開けて
「失礼するよ?桐船クン、ミラさん?」
「っ、」
「あっ、しまった。ごめんね、ミラちゃん。でも、いい加減先生にぐらい慣れてもいいのに。退院したあと他の人とコミュニケーション取れないと苦労するわよ」
これが桐船以外のミラの対応だった。ミラの顔はかなり嫌そうで、その顔は歯医者で待たされる子供のようだ。一方の
「ふぅ、君に嫌がられるのも慣れてきたんだけどね。まぁそれは置いておいて、桐船クン。すぐに食器を片付けてくれるかい?」
「あ、すいません。すぐに片付けますので。そのモニター何に使うんですか?」
「あぁ、前に彼女には話したんだけど彼女の身元を知っている人がいてね、その人と話すためだよ? ……だけど、僕はあまり話して欲しくはないだけどね」
(そうは言ってもアレイスターと彼女を話させない訳にもいかないんだが)
「? ……そんな話聞いてないんですけど」
「君には言ってないからね。片付けが終わったら席を外してくれるかい?彼女には君がいなくても少し我慢してもらわないといけないんだけど」
流石に桐船をモニター越しとは言えアレイスターと会わせるわけには行かない。確かにミラは桐船が近くにいないと情緒不安定になってしまうがそれはしょうがないだろう。
「えー、私も聞きたいんですけど。まぁ、しょうがないですか。それじゃあミラちゃん電話が終わったらまたいっぱいお話しましょうね」
「……はい、桐船さん」
「……えっ、ミラちゃんが喋った?」
桐船は普段喋ってくれないミラが喋ってくれたことに驚いて、うまく返事を返すことができなかった。そのミラの表情はほんの少しではあったものの笑顔だ。どうやらミラは少しずつではあるが桐船に心を開いてきている。
「じゃあまた後でね」
少しだけ戸惑いながらも嬉しそうにそう言って桐船はトレーを持って病室から出ていく。二人がそんなやりとりをしているあいだに
「ふぅ、普通は映像はいらないんだが向こうが顔を見ながら話したいと言ってきてね。まったく、わがままで困るよ。それじゃあ、つなげるけど大丈夫かな?」
「…………」
ミラは無言で頷くと
◆
「もしもし、アレイスター。今彼女に変わるよ?」
「ありがとう、
ミラが見ているモニターに映ったのは赤い液体に満たされた巨大な円筒器に逆さまで浸かっている、男にも女にも、子供にも老人にも、聖人にも囚人にも見える人間。アレイスター=クロウリー。
「…………あなたは?」
「あぁ、自己紹介がまだだったな。私の名前はアレイスター=クロウリー、この学園都市の統括理事長だ」
「ア、アレイスター=クロウリー?」
ミラが驚いたような声をあげる。なぜならアレイスター=クロウリーとは世界で最高の魔術師でありながら、魔術を裏切り科学へと鞍替えをした人間なのだ。加えて言えば、彼は何年も前に死んだとされている。そんな人間の名前を聞けば驚くのは当然なのだ。
「ふふっ、驚くのも無理はないかな? まぁ、君が私をどう認識しようが大した問題ではない。私が話したいことはそんなことではない。それに君が聞きたいことも私が何者か、ということではないだろう?」
「なぜ……私のことを知っているんですか?」
「それでいい。なぜ私が君のことを知っているかだが、まず君は自分が有名人だという自覚があるのか? 魔術を知る者ならば君を知らない方が珍しいだろうな。幼いながらも治療することができない人間などいないとまで言われた医療魔術のスペシャリスト、
「……知っていることはそれだけですか?」
アレイスターの言葉を聞きいた彼女の返答する声にはそうであってほしいと望むような声だった。しかし、現実はそこまで甘くなかった。いや、ミラにとっては厳しすぎるものだった。
「いいや、それだけじゃない。そうだな……君が組織を裏切って殺されかけ、この街に逃げ込んだとかか?」
「ぁ」
「それだけじゃない。裏切った理由は
アレイスターは一旦言葉を区切り、若干の笑みを浮かべながら言う。
「
「えっ?」
アレイスターの言った言葉を聞くとミラは右目をすぐに抑える。しかし、その色はモニターの向こうにいる彼にもはっきり見えていた。ありえないことに、もともとは緑色のはずの右目は銀色に変わり、さらに紅い十字の模様が入っているのだ。
「自分の目をえぐり出してまでそれが欲しかったのか?」
「っ……」
「どうやら気に障ったようだな。……正直言えば、私がどれほど君を知ってるかなんてどうでもいい事だ。本当に大切なことは君のこれからの身の振り方だ」
「……」
ミラはアレイスターの言葉を黙って聞くしかない。その表情には焦りと恐怖。本人も気がつかないうちに顔は汗でびっしょりだった。
「君は今とても微妙な位置にいることは自覚しているな? 君を追っていた者たちは君が死んだと思っているだろう。だが、君は今生きている。……私は君の生存を向こう側に伝えることもできる。が、それは君の選択次第だな」
「選……択?」
「一つはまた逃亡するか、もう一つは魔術を捨ててこの街で生きるかだ」
「……魔術を捨てる?」
この街の特色とも呼べる超能力開発をしてしまえば魔術は使えなくなり、無理して使おうとすれば良くても重傷、最悪ならば死ぬことになる。魔術師であるミラからすれば魔術を捨てる事は自分自身のアイデンティティに加えて存在価値を捨てるようなものだ。
「なら……ここを出ます」
ミラは悟ったようにそう言った。追っ手がいない今の状態ならば、この街を出たとしても医療魔術の使い手の彼女なら死ぬ危険性はそれほどないし、さらに言えば魔術を失った自分を匿うだけの理由がアレイスターにあるとは思えなかった。
「やはりそちらを選ぶか。だが、君にとってここにいることにはそれほど悪いことではない」
アレイスターは予想していたように答える。そしてこれまでで最大の笑みを浮かべて話を続ける。
「君には命を捨ててまでも救うべき人がいるのではないのか?」
「な…………ん……で?」
ミラにとってはその言葉を聞いたことによる衝撃はこれまでの会話の中で最大だった。そのせいで彼女の呼吸は一瞬ではあるが止まる。なんとか絞り出した声は今にも消えそうだ。
「そんなに驚くことだったか? 今すぐに、とはいかないがここに留まるのなら救うための方法を教えてやることもできる」
「…………例えそうだったとしてもあなたにはメリットが無い……」
「私のメリット? 君に言う必要はないし、聞いているのはこちら側だ。さて、さっきの問いに戻るとしよう。どっちだ?」
アレイスターはミラの言葉なんてどうでもいいように、彼女の解答を急かす。
「……なぜ、」
ここまで自分にこだわるのか疑問に思う。アレイスターほどの人物ならば監禁してでも自分をこの街に縛り付けることもできるし、魔術のない自分をかくまう理由も彼にはない。この短い会話だけで善意で動く人間だとは思えない。ミラには彼がここまでする理由がわからない。それ故に頷くことができなかった。
「答える必要はない」
アレイスターは最後まで言葉を聞かずに一刀両断すると、少し呆れたようにしてさらに言葉を続ける。
「君の魔法名はなんだった?」
「……Proelii753」
魔法名とは魔術師としての通り名だ。魔法名には名乗る魔術師の信念や願いを一つの単語に込め、自分の魂に刻み付ける。つまり魔法名はその魔術師そのものを表すことになるのだ。
「…………」
自分の魔法名を口に出したミラの表情が明らかに変わる。もうミラの顔に焦りや恐怖はない。彼女の顔には強い決意、意志が宿っていた。
「分かりました。でも、」
「わかっている。君をこの街に歓迎しよう」
「ようこそ、学園都市へ」
こうして
◆
時は少し遡る。これはミラが学園都市の住人になること決める一ヶ月前、彼女が学園都市にたどり着いた日であり、魔術サイドから死んだと思われた日。
ここは日本から遠く離れたイギリス、イングランド地方にある世界遺産、聖オーガスティン修道院
この修道院は過去に廃墟になりすでに修道院としての機能を果たしていない。しかしそれは一般人から見た場合だ。見る者が見れば廃墟となったはずの場所には立派な教会が存在し、この聖堂は今も機能している。
建物の名前は聖アウグスティヌス大聖堂。ここは現在、とある組織の活動拠点となっていた。
この聖堂の最上階の一室。そこで、一人の魔術師が窓から空を見上げていた。その人物は背が高く、長い顎鬚と銀色の髪をした年老いた魔術師だ。彼の名はアルバス=ダンブルドア。彼は神話の動物である不死鳥を従えたほどの人物であり、数えられないほどの偉業をなした最高クラスの魔術師だ。
そんな彼は一人の少女の顔を思い浮かべている。その表情は誰にも読むことができないほど、複雑な表情だった。
そんな時部屋の扉が叩かれる。ノックの音が部屋の中に響き渡るとドアが自動で開くとそこに立っているのは一人の女性。彼女は厳格な雰囲気を漂わせる老いた人物、名前をミネルバ=マクゴナガルという。ダンブルドアと同じ魔術師であり、この聖堂の人間である。
部屋に入った彼女はダンブルドアに声をかける。その顔は厳しい表情をしていながらどこか悲しみをおびていた。
「アルバス、ミラが、」
「……悪い知らせかのようじゃな」
ダンブルドアは報告された内容をある程度は予想していたようだ。が、さっきまでの複雑な表情から一変して悲しみに染まっている。
「あの子を追っていた部隊から連絡が……、ミラが……死んだと」
「そう……か。ミラはもうすぐ……帰ってきてくれるのかの?」
「それが……、遺体は右腕一本のみで、あとは……っ、」
話をするマクゴナガルは何とか平静を保とうとしている。だが、その目には涙が浮かんでいた。
「もうよいミネルバ、……ミラはどこで?」
「っ……あの子は日本の学園都市の近くで。……そこに逃げ込めば助かると思ったのでしょうか?」
「そうじゃろうな。学園都市に魔術師はそう簡単には入れぬ」
「しかし、」
「なぜミラが裏切ったのか、かの?」
ダンブルドアはマクゴナガルの声を遮って声を出した。ミラが裏切った理由を知る者は組織の中で知る者はおらず、誰もがそのことを疑問に思っていた。この二人であってもそれは例外ではなかったようだ。
「っ、はい」
「おそらく
その時、急に部屋の中にある火のついていない暖炉がゴウッという音をたてて燃え上がる。そこから現れたのは孔雀ぐらいの大きさをした一匹の赤い鳥だ。
「おかえり、フォークス」
赤い鳥はフォークスという名をした不死鳥だ。フォークスはダンブルドアの使い魔であり、その存在は神話に匹敵する。また、不死鳥は様々な能力を持っており今現れたのはその内の一つ、瞬間移動の能力だ。
「首尾はどうじゃった?」
フォークスはクァァと言う鳴き声とともに返事をする。その声を聞くからにうまくいったようだった。
「そうか、ご苦労じゃったな。よくやってくれた」
「フォークスは何を?」
「わしのちょっとした私用じゃ。これからわしも下へ行って詳しい話を聞きに行くとしよう。……それにあの子の弔らわねばならぬ」
「アルバス、それは……」
魔術組織というものは裏切り者を弔うほど優しくはできていない。残った腕の一本でさえ辱められて消されてしまう。それでもダンブルドアは力強い声を出して言う。
「分かっておる。だがの、あの子がどうなろうともわしはあの子の師なのじゃよ」
「アルバス、……行きましょう。あの子のもとへ」
ダンブルドアの声を聞き、マクゴナガルは決心したような声を出す。そう言うとマクゴナガルはドアへと向かっていく。そのあとにはダンブルドアも続くが、部屋を出るときにダンブルドアは呟いた。
「ミラよ。……わしは正しかったのじゃろうか」
その声を聞いたのはフォークスのみ。それを聞いたフォークスは主人を元気づけるように力強く鳴いた。
クロスというよりはキャラを出しただけですね、はい。
クレームはやめてほしいですが、ダメなようなら感想に書いてください。出来るだけ自重はします。
ありがとうございました。次回はできるだけ早くするので・・・できれば。
現在原作18巻。超電磁砲も買わねば