とある科学の元魔術師   作:珠風船

6 / 18
 えー、3週間ほどおまたせしました。書いてたら普段の5倍になりましたが3話同時投稿で行きます。前回書いたのもタイトルちょっといじりました。ご了承ください。あとがきは8話に書きます。
 ではどうぞ( ´ ▽ ` )


第6話:5年前秋,料理得意なので、4年前夏,レベル5の仲間入りで~す!

 原作開始5年前秋、料理得意なので

 

 第七学区とある病院の駐車場にて

 

「今までお世話になりました、先生」

 

「退院するとはいってもきちんと通院はしてもらうけどね? それでも退院おめでとう」

 

「それじゃあ、行きましょうか」

 

 ミラが学園都市に到着してから既に2ヶ月以上が経過した。そしてこの日、ミラは病院を退院することとなった。冥土帰し(ヘブンキャンセラー)に見送られながら桐船が車を出発させる。

 

 冥土帰し(ヘブンキャンセラー)が持つ医療技術ならば、患者を2ヶ月以上も入院させることはまずありえなかった。しかしミラは彼が診てきた患者の中でもトップクラスの大怪我を負った患者だった。意識不明で二週間。ちゃんと会話できるようになるまでもう二週間。リハビリやその他諸々の理由でさらに一ヶ月。そんな理由もあり、ミラの退院は遅れてしまったのだ。まあ、まだ通院する必要もあるのだが。

 

 

「早く着かないかな~?」

 

 そんなこんなで今日からミラは桐船の家で生活することになる。実はミラは桐船の家がどんな様子なのかまだ知らなかった。好きなオカズを後にとっておくように、どんな家なのか知るのは家についてから、そう考えていたのだ。

 

 だがミラはまだまだ甘い。リハビリ施設でいちごおでんを桐船に飲ませる(食べさせる?)ことには成功した。だがそれまでだ。ミラは知らなかった。桐船がどういう人間かを。桐船の同居人である超能力者(レベル5)が、世間から人格破綻者と呼ばれていることを。

 

 

「さあ、着いたわよ。このマンションの3階が私の家、これからミラちゃんが住む家になるわ」

 

「はい。立派なマンションですね」

 

 桐船の家はかなり大きなマンションだった。エントランスを見るだけで最新設備が整っているのがわかる。ちなみにこのマンションはある団体の実験のために作られたものであり、実験協力という形で桐船は住んでいる。そのため家賃も格安だったりする。

 

「はい、ここが私の家よ」

 

 桐船がセキュリティを解除してドアを開ける。とりあえず玄関は普通のようだ。玄関には置いてあるのはサンダルだけだ。

 

「あの子は出かけてるみたいね」

 

 あの子というのは同居人の超能力者(レベル5)。桐船は玄関に靴がなかったのでそう判断した。そして二人は家の中に入っていく。ちなみにミラはもう車椅子に乗っていない。リハビリの成果により、支えなしでも普通に歩くことができた。とはいっても長時間の運動はまだまだ辛いものがあるが。

 

 まずたどり着いたのはリビング。ミラはまずここで違和感を感じた。いや、違和感ではない。感じたのは不快感。

 

「あの、何ですかこれ?」

 

 リビングには脱いだ服がそこらじゅうに散乱している。それこそ足を踏む場もないくらいに。さらに言うならば服に紛れて様々な紙も散らばっている。不自然なのは玄関は綺麗なのに、リビングが恐ろしい程に散らかっている事だ。

 

「なんで玄関は綺麗なのにここはこんなに汚いんですか?」

 

「あはは、昔っからこっちのほうが落ち着くのよね。綺麗すぎるとなんかそわそわしちゃって……。玄関はあの子が散らかすなって言って、一回全部吹き飛ばされちゃったから?」

 

「……」

 

 ミラは絶句していた。この状態で普通に生活できる桐船にも、この惨状に注意すらしない超能力者(レベル5)にも。ここでミラは嫌な予感がひしひしと感じられてきた。それにちょっとした怒りも。

 

「まさかとは思いますけど、ほかもこんな感じだったりします?」

 

「あれ、ミラちゃん怒ってる? ほかの場所は普通のはずよ、……うん普通」

 

 だが、この家はそこまで甘くは出来ていなかった。

 

 キッチン。冷蔵庫に入っているのは飲み物に酒とつまみ。ただそれだけ。桐船曰く、自炊しないし。ゴミ箱には空き缶がちょっとした塔を作っている。

 

 洗面所。ここもまた服が散乱しており、ひどいことになっている。ここでも洗濯って面倒じゃん?の一言。

 

 バスルーム。いろいろなものが混ざりに混ざって混沌としている。なんとも危険なことに酸性洗剤とアルカリ性洗剤が共同生活。このあたりでミラは桐船の言葉が聞き取りづらくなってきた。

 

 ベランダ。ミラは目を閉じた。彼女は何も見ていない。

 

 トイレ。意識が遠くなった。意識が消える前に思ったことはただ一つ。

 

 とある人は言った。人生は重要な選択肢の連続だと。…………あれっ、選択肢間違えた?

 

 

 

  ◆

 

 

 

「……あれ、ここは?」

 

 ミラが意識を失ってからどれだけ時間がかかったのだろう。この家に来た時はまだ明るかったのに、今では外は暗くなり始めていた。しかしここで違和感を覚える。部屋がきれいになっていた。あれほど汚かったのにだ。近くには桐船がおり、何故か泣きながら床を雑巾でこすっていた。

 

「あの、梓さん。何かあったんですか?」

 

「ひぃぃぃぃっ、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさいぃぃぃ」

 

「?」

 

 そういって、桐船は床をこするスピードを上げる。ミラは何がなんだかわからなかった。意識がなかったのだから当然といえば当然。だが、意識がなかっただけで気絶はしていなかった。ここが重要である。

 

「あの梓さん?」

 

「はい! なんでしょうか!?」

 

(なんで敬語?)

「梓さんって料理できないんですよね? これからは私が料理を作ってもいいですか? 私、料理得意なので」

 

「そんな失礼なことさせるわけには、……はい? ミラちゃん料理できるの?」

 

 ここでまさかのカミングアウト。ミラはとっても家庭的だった。その言葉を聞いて桐船は元に戻った。そしていつものように飛びかかる。が、ミラはそれを回避。それでも桐船はくじけない。

 

「ミラちゃんさすが。これからよろしくね!」

 

 そんな感じで二人が話していると、玄関が開く音がする。もう一人の住人が帰って来た。あまりに綺麗になっている家にかなり驚いているようだが、ミラたちは何もなかったように声をかける。

 

「「おかえり」」

 

 

 こんな感じでミラが桐船の家に来て最初の一日が過ぎていく。余談になるが、この家の食卓を管理することになったミラに他の二人は頭が上がらなくなった。

 

 

 とある看護師(ナース)懺悔日記(リペントページ)

 

『今日からミラちゃんが、家で住むこととなる。あんなことやこんなことをしてやろうと思っていたがすべてが間違いだったミラちゃんは怒らせてはならない。それが今日、私が学んだことだ。

 

 今思い出しただけでも、体が震える。念のためもう一度言う。ミラちゃんは怒らせてはいけない。この言葉を心に刻みつけ、明日からまた頑張ろう。

 

 ミラちゃんは今でも暗い顔をすることがたまにだがある。おそらく自分でも意識していないのだろう。私は彼女の心の支えとなれるだろうか? けど、ならなくちゃならない。私はもう、あの子の親でもあるのだから』

 

 

 原作開始5年前秋fin

 

 

 

  ◆

 

 

 

 原作開始4年前夏、レベル5の仲間入りで~す!

 

 第七学区とある研究所、実験室にて

 

 

 この研究所には学校の体育館のように広いスペースがある部屋がある。主にその部屋は学生たちの身体検査(システムスキャン)に使われている。

 

 身体検査(システムスキャン)とは学園都市に所属している学生すべてに課せられた義務のような制度であり、この検査で学生ひとりひとりのレベルを決める。この検査で決められるレベルは進学などに大きく影響する、学生にとってはある意味で学校の試験よりも大事だったりする。

 

 

 そんな検査を受けるのはひとりの少女、ミラジェーン=ヴィクトリア。学園都市に来てから既に半年以上経過し、魔術師だった彼女も今では科学サイドの能力者の一人となっていた。

 

 リハビリが必要になるほどの大怪我を負った彼女の怪我はとっくに治っている。無くなってしまった右腕には、本物と大差ないほど精巧に作られた義手がついていた。最初は缶を開けることすらできなかった義手も、今では元の手のように自由に動いた。それは義手を制作した冥土帰し(ヘブンキャンセラー)はもちろんのこと、彼女の努力も大きく影響しているだろう。

 

 やせ細っていた体も今ではしっかりと回復しており、体中にあった傷も冥土帰し(ヘブンキャンセラー)の治療のおかげで、傷はどこにも見当たらない。最近は膨らみ始めた胸に少し悩み始めたほどだ。(友人である美琴に相談したら、美琴は自分のを見た後どこかに走り去った)

 

 髪の毛は相変わらず真っ白だが、欧米出身の彼女にはあまり違和感がない。むしろ似合っていると言えるだろう。義手と腕の境目である右肘には、今日は大きな黄色いリボンが巻いてある。これは桐船と同居人から貰った大切なものだ。

 

 

「ミラジェーン=ヴィクトリアさん。準備は大丈夫ですか?」

 

「はい。よろしくお願いします」

 

 声をかけてきたのは今回の測定を担当している研究者。その周りにも数多くの研究者がおり、ミラの身体検査(システムスキャン)が始まるのを待っていた。

 

 そして、ミラの身体検査(システムスキャン)が開始する。

 

「それでは、始めてください」

 

 研究者がそう言うとミラは能力を使用する体制に入る。最初の変化はミラの目の色だ。これは能力を使用するたびに起きていた。右目だけが銀色に変化、さらに赤い十字模様が刻まれる。

 

 このことはどんな研究者であっても解明することができなかった。能力の使用に影響があるわけではないので、ミラも研究者たちも完全にスルーしていたのだが。補足するならば、この目は魔術的な霊装であるため、学園都市の研究者にはわかるはずもない。

 

 パチンッ

 

 ミラが指を鳴らす音だ。その音と同時にミラの体がぐにゃりとブレる。一瞬でミラが変化し、彼女が立っていた場所には別の人物が現れている。ミラの友人である御坂美琴だ。

 

 それを見て、周りの研究者たちから歓声が上がる。そして担当している研究者はさらにミラに指示を促す。

 

「次をお願いします。今度は出来るだけ連続で」

 

 美琴に化けたミラは、その言葉に笑顔で返事をして、また指を鳴らす。

 

 パチン

 

 今度は冥土帰し(ヘブンキャンセラー)に。

 

 パチン

 

 その次は今回の身体検査(システムスキャン)を担当している研究者に。

 

 パチン

 

 そのまた次は、現在ミラが通っている小学校の先生に。

 

 

 ミラが指を鳴らすたびにどんどんと姿を変えていく。最終的には変化する候補が見つからくなったのか、これまで変身していた人物たちのモンタージュを作っていたりした。

 

「変化速度……

 

              

           ……総合評価超能力者(レベル5)!」

 

 この結果を聞いて周りにいる研究者たちがこれまでで最大の歓声を上げる。それも当然である。自分たちが担当した能力者が、学園都市にまだ数人しかいない超能力者(レベル5)の一人になったのである。彼らは少なからず名声を得られるだろう。

 

「やったぞ!」「統括理事会への報告を急げ!」「序列、序列は何番だ!?」

 

 もはや、上へ下へのお祭り騒ぎ。超能力者(レベル5)になったミラなど既にお構いなしで騒いでいる。ちなみに序列とは、個々の能力研究における工業分野や学術分野などの応用による価値から生まれる順位である。さらに言えば純粋な戦闘能力は関係なかったりする。

 

 現在、学園都市にいる超能力者(レベル5)は、ミラを含めると七人。

 

 ミラは何位に入るのか? そう研究者たちは勝手に議論しているが、当の本人は

 

(うーん。美琴より先に、超能力者(レベル5)になれてよかった。序列なんてどうでもいいから、早く帰りたいな。昨日はパスタだったから、今日はハンバーグにでもするか)

 

 本当にどうでもよさげである。ミラはそもそも順位を気にするタイプではない。頑張って超能力者(レベル5)になれた。その結果があれば良かったのだ。だがミラは勝負事においてはかなりの負けず嫌いだったりする。

 

 

 

  ◆

 

 

 

 第七学区とある研究所、エントランスにて

 

 

「ヴィクトリアさん、お疲れ様です。理事会への報告等は我々が行いますので、今日はこれで終わりです。家までお送りいたしましょうか?」

 

「歩いて帰りたいので大丈夫です。今日はありがとうございました」

 

 研究者に別れを告げて徒歩で家へと帰る。途中でハンバーグを作るための食材を買うためにスーパーに寄ろうとするが、ミラはここで一つ思い出す。

 

「あっ、美琴たちに連絡してないや」

 

 今日の身体検査(システムスキャン)は美琴や桐船、同居人など、みんなが知っていた。ミラが超能力者(レベル5)になれるだけの素質を持っているだろう、ということも。

 

 桐船は「ミラちゃん、超能力者(レベル5)だろうから、わざわざ連絡入れなくても大丈夫よ」とどこか確信めいたことを言っていた。

 

 美琴からはどっちが先に超能力者(レベル5)になるか勝負をしているため(美琴から一方的に)「結果がでたらすぐに連絡しなさい!」と言われた。

 

 超能力者(レベル5)の方は美琴ほどではないが、結果を気にしているようだった。主に序列を。

 

 

「もしもし、美琴? 私だけど。さっき身体検査(システムスキャン)が終わったわよ」

 

 まずは美琴へ電話をかけた。一番結果を気にしていたのは美琴だったからだ。

 

「もしもしミラ!? 結果は? 結果はどうなったの!?」

 

 ミラを一方的にライバル視している美琴はかなり焦っている。ちなみにだが、素直だった美琴はミラが胸のことを相談したその日からツンデレ少女にクラスチェンジした。

 

「その事なんだけどね、……私も超能力者(レベル5)の仲間入りで~す! 序列はまだ決まってないんだけど」

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ま、負けたぁぁぁぁ!! 私より能力開発を受けたの遅いくせに!」

 

 美琴は女をやめたかのような奇声をあげて悔しがっている。胸でも負けて、能力でも負けて。なんとも可哀想だ。

 

「美琴うるさいわよー。美琴だって超能力者(レベル5)になるまで、もうすぐでしょ? 成長速度がはやいんだーって自慢してたじゃない」

 

「きぃぃぃぃぃ! う、上から目線!? どうせ私は強能力者(レベル3)のビリビリ女ですよ!」

 

 ミラに悪気はないため、もちろん上から目線で言っていない。美琴の過大解釈である。それでも仲がいいのはお互いのことをしっかり認めているからだ。

 

「はあはあ、と、とりあえずはおめでとうって言っておくわ。でも私は負けたとは思ってないから! 私が超能力者(レベル5)になった時には序列で上に行ってやる!」

 

「うん、ありがとう。でも序列のことは大丈夫だと思うわよ? 私の能力は戦闘に向いてないし、応用力でも美琴には勝てないだろうし」

 

「何言ってんのよ。ミラの能力、かなりえげつないじゃない。この前、私を散々な目に合わせたの忘れたの?」

 

「えげつないってひどいな~。私は結構気に入ってるのに」

 

 友達である美琴からえげつないとまで言われるミラの能力。ちなみにだが、ミラは美琴が大好きなゲコ太に化けて色々とやっちゃったのである。ミラはもちろん善意から。悪意のない善意は恐ろしい。重度のゲコラー(ゲコ太ファン)である美琴は数日間、悪夢に苦しめられたのである。

 

「まあ、いいや。また今度あった時にお祝いするわ。じゃあね」

 

「うん、バイバイ」

 

 そう言って、二人は電話を切る。なんだかんだ言っても二人の仲は良好だ。それこそ親友といってもいいほどに。

 

「さーてと、買い物して帰りますか!」

 

 

『学園都市統括理事会から学園都市統括理事長への報告

 

 本日、ミラジェーン=ヴィクトリアを学園都市七人目の超能力者(レベル5)へ正式に認定するものとする。また、超能力者(レベル5)における彼女の序列は第七位と決定するものとする。

 

         

 以上を持って統括理事会からの報告とする。

         学園都市統括理事会』

 

 

 原作開始4年前夏fin

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。