とある科学の元魔術師   作:珠風船

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第7話:2年前冬,最終報告書、1年前春,どっちからお仕置きして欲しいかしら?

 原作開始2年前冬、最終報告書

 

 第十学区とある研究所跡にて

 

 

 第十学区は学園都市唯一の墓地がある学区にして、原子力開発などの危険な研究を行う施設が集中する学区である。よって一般人がこの学区に来ることはかなり珍しいと言えるだろう。現在雨が降っているが、降りしきる雨が第十学区の寂しさをさらに強調しているように思える。

 

 だが、今この第十学区を一人の少女が歩いている。ゴシックロリータ調の服を着た、中学生か高校生ぐらいの少女だ。そしてジト目がなんとも特徴的である。

 

 彼女はとある研究所を目指していた。研究所とは言っても今はただの廃墟だが。周囲の建物は地震で倒壊したかのように全て瓦礫の山となっていたが、この研究所たちもつい最近、一週間前までは機能していた。

 

 そして少女は目的の研究所にたどり着いた。

 

「……ひどいものね。昔の人はよく言ったわ。夏草や 兵どもが 夢の跡、本当にその通り。But今は冬だけどね。……樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)も案外あてにならないのかしら」

 

 そう言って彼女はあたりを見渡す。この研究所は第十学区でもかなりの大きさを誇っていたが、今ではただの瓦礫の山である。よく見れば、瓦礫には所々に雨が降っても落ないほどに血がこびり付いている。

 

 ちなみに樹形図の設計者(ツリーダイヤグラム)とは学園都市が世界に誇る超高度並列演算処理器(アブソリュートシュミレーター)である。要するにものすごい演算をできる装置である。学園都市ではこの装置を使って実験の予測を行ったりもする。

 

「……あら? これは、」

 

 彼女が見つけたのは携帯端末。画面にはかなりヒビが入っており水にも濡れているが、それでも電源が生きているのは学園都市の技術力の高さ故か。

 

「こんな重要なものを忘れてくなんて相当慌てていたようね。althoughそれもしょうがないか」

 

 彼女が拾った端末にはヒビがそこらじゅうに入っているので、所々見えない場所もある。だが一部だけ文字が読める。どうやら何かの報告書のようだ。

 

 

『……絶対能力者進化計画 最終報告書

 

 妹達(シスターズ)を運用した絶対能力者(レベル6)

 

 学園都市に…………超能力者(レベル5)が存在する……予測演算の結果、まだ見ぬ絶対能力者(レベル6)辿り着ける……、第一位一方通行(アクセラレータ)…………判明した。

 

 この被験者……の時間割り(カリキュラム)を施した場合、絶対能力者(レベル6)に到達するに・・・年もの歳月を要する。よって、……この二五〇年法を保留とし、実践によ……促進を検討した。

 

 特定の戦場を用意し、シナリ……進めることで成長の方向……操作する。予測演算の結果、一二八種類……用意し、超電磁砲(レールガン)を一二八回殺害することで絶対能力者(レベル6)に進……と判明した。

 

 しかし、超電磁砲(レールガン)を複数確……は不可能であるため、過去に凍結……計画の妹達(シスターズ)を流用して、これ事とする。武装した妹達(シスターズ)を大量……で性能差を埋める事とし、

 

 二万体の妹達(シスターズ)と戦闘シナリオをもって絶対能力者(レベル6)への進化を達成する。

 

 我々は第一位一方通行(アクセラレータ)を今回の実験…………使うことを決定した。

 

 実験に必要な設備……全て整い、第一次実験が開始。……順調に進んだと思われた。しかし実験終了時、使用個体000……の活動停止とと……の能力の暴走を確認。実験施設を破壊……スタッフの8割強を殺害した。

 

 その後も能力の暴走は収まらず、周辺の実験施設を破壊する……居合わせた同じく超能力者(レベル5)序列第七位削板軍覇と戦闘……。戦闘の結……暴走は止まるもの……脳にダメージを負い、演算能力の一部を喪失。よって、被験……超能力者(レベル5)認定を撤回。統括理事会より序列・・・空席にすると通達を受ける。

 

 以上の理由により、本計画を永久凍結にすると決定した。

 

 今回の結、』

 

「あら?」

 

 ここで端末の電源が落ちた。画面が割れ、雨に濡れ、冬の寒さに放り出されたにしては本当によく頑張っただろう。続きがまだあったようだがこうなってしまってはしょうがない。少女は端末を地面に落とした。

 

「        」

 

 雷が落ちる音、端末を踏み潰して壊す音がかぶり、少女が何を言ったかは分からない。しかし、明らかに少女の顔は不快な様子だった。

 

 少女はもう一度施設を見渡すと来た道を戻っていく。あとに残ったのは瓦礫の山と粉々になった端末、そして不気味に残る研究者たちの血の跡。

 

 この場所で何があったのか。知る者はここには誰もいない。雨が降る中でこの場所だけが世界から切り離されたようだった。

 

 

 原作開始2年前冬fin

 

 

 

  ◆

 

 

 

 原作開始1年前春

 

 第七学区学舎の園、常盤台中学内カフェテラスにて

 

 

 常盤台中学、第七学区に存在する超お嬢様学校だ。給食一食が何万円もするという超リッチな学校である。また、在籍する生徒全員が強能力者(レベル3)以上という学園都市でも五指の中に入る超エリート校でもある。学校の特色として、在籍する生徒たちは派閥というものを結成し、各々の力を高めていたりもする。

 

 ここはそんな常盤台中学のあるカフェテリア。そこにいるのは二人の学生である。

 

「天下の常盤台って言ってもぉ、それほど大したことはないみたいねぇ」

 

 憂鬱そうにぼやいているのは金髪のロングヘアに中学生とは思えないほどのプロポーションをした少女。彼女の名前は食蜂操祈。学園都市に8人、常盤台中学に3人いる超能力者(レベル5)の一人。序列第五位、精神系能力者最強と言われる心理掌握(メンタルアウト)だ。

 

「そう?けっこういい学校だと思うんだけど。こういうカフェテラスとかあっていいじゃない」

 

 食蜂の言葉に返すのは成長したミラ。以前悩んでいた胸は食蜂同様かなり成長していた。そんなミラも既に中学生。白い髪は今ではロングヘアーになっており、前髪を縛っている。今日は右腕に赤いリボンを巻いている。

 

 ミラと食蜂は出会ったその日にに意気投合、現在はルームメイトだったりする。

 

「別に施設には問題はないんだけどぉ、生徒がねぇ……」

 

 そう、食蜂が憂鬱なのは周りの生徒からの目線なのである。ただでさえ、学園都市に八人しかいない超能力者(レベル5)。そのうちの三人が同じ学校、同じ学年にいれば自然と注目を集めるのだ。

 

 もちろん別の理由もある。というかその別の理由の方が最大の原因だったりする。

 

「私はそんなに気にならないけどな。あっ、これ美味しい。すいませ~ん、これもう一つください」

 

「ミラはいいわねぇ。どんだけ食べても太らないし、周りのこともなーんも気にしてないしぃ」

 

 実際、食蜂がここまで言うのも無理はない。太らないこともそうだが、今の状態が状態なのだ。ミラたちの周りに人がいない。カフェテラスの中に人はいるが、見事に2人の周りだけ人がいないのだ。さらに周りにいる生徒たちは食蜂が言ったようにチラチラと2人を見ている。

 

「イライラするわねぇ。ならぁ、」

 

「ダメよ、操祈。能力使っちゃ」

 

「うっ……」

 

 ミラが言った言葉を聞いて、食蜂はバックに突っ込んでいた手の動きを止める。食蜂は周りの生徒からの目線をなくすために生徒たちを能力を使って洗脳しようとしたのだ。これが食蜂操祈の能力、心理掌握(メンタルアウト)、精神に関することなら何でもできるので、彼女にとっての洗脳は赤子の手を捻る事と大差ない。

 

「だいたい、こうなったのってあなたのせいでもあるでしょ?」

 

「べ、別に私のせいじゃ……」

 

 ミラが何故こう言うのか?それは常盤台中学の入学式の日まで遡る。

 

 

 

  ◆

 

 

 

 1年前春,どっちからお仕置きして欲しいかしら?

 

 常盤台中学入学式当日、とあるクラスの教室内にて

 

 入学式は既に終わっており、あとは担任からの諸連絡を待つのみ。この教室は食蜂とミラの教室であり、美琴のみが違う教室だった。他の生徒たちは女子特有のコミュ力の高さで既に会話を弾ませている。そんな生徒たちの会話のネタはただ一つ。

 

 常盤台中学に超能力者(レベル5)の能力者が三人来た。

 

 という噂だ。常盤台中学の生徒は全員強能力者(レベル3)以上の能力者。小学校にいた頃は学校で一番の能力者であったことは珍しくない。当然、自分より上の能力者のことは気になるのだろう。そして噂の本人たちはというと

 

「さっさと終わらせてくれないかしらぁ」

 

「もう少しの辛抱じゃない」

 

 噂話なんてなんのその。超能力者(レベル5)であるはずの二人は一切気にしていない。こんな感じで二人が暇を持て余していると、

 

「ミラー、そっちのクラスはもう終わったー?」

 

「ううん、まだ先生が来てないのよ」

 

 自分のクラスでやることを終わらせた美琴がやってきた。そこで美琴のことを知らない食蜂がミラに問う。

 

「もしかしてぇ、この人が第三位の超電磁砲(レールガン)?」

 

 食蜂がそう言った瞬間、周りにいる生徒たちの目線が三人に集中する。全員が全員、素晴らしいほどのガン見。

 

「ええ、そうよ。この子は御坂美琴。序列第三位の超電磁砲(レールガン)よ」

 

 ミラは笑顔で食蜂に美琴のことを紹介する。ミラは美琴のことを食蜂に紹介したがっていた。ちなみにだが、美琴は去年の秋頃に超能力者(レベル5)になっていたのだ。

 

「それで、こっちは食蜂操祈。私達と同じ超能力者(レベル5)の第五位、心理掌握(メンタルアウト)なの」

 

 ミラからお互いの紹介をされた二人は相手のことをジロジロと見ている。教室の周りには人垣が出来ていた。超能力者(レベル5)を一目見ようとやって来た野次馬である。

 

「へー、第三位、五位、八位が同じ教室に集まるなんてねぇ。でもでもぉ、これが第三位かぁ」

 

「……だったら何だって言うの?」

 

「ミラから話は聞いてたんだけどぉ、第三位の超電磁砲(レールガン)がこんなにお子様だとは思ってなくて☆」

 

 食蜂は美琴を見ながら喋る。主に見ているのは胸のあたり。ミラたち三人が横に並んだとしたら美琴だけがなんとも可哀想になるだろう。ばーん、ばーん、すとーん。そんな擬音語がぴったりだった。

 

「おこっ、あ、あんた何様よ!? 喧嘩売ってんの!?」

 

「べっつにぃ。まぁ何様かって聞かれたらぁ、第五位の心理掌握(メンタルアウト)様だけどぉ?」

 

 一気にその場の空気が険悪になっていく。食蜂からの明らかな挑発を受けて美琴がいきり立つ。美琴の頭上では自身の怒りを表すかのように、電気による火花がバチバチ音を立てて飛び散っている。

 

 それを見ていた生徒たちは一斉に三人から離れていく。超能力者(レベル5)は軍隊と単身で張り合えると言われている。超能力者(レベル5)同士の争いに首を突っ込みたいと思う人間は学園都市でもほとんどいないだろう。それはエリート校の常盤台中学でも例外ではない。

 

「あんた第五位のくせにいい度胸してるじゃない。真っ黒焦げになりたいの?」

 

「御坂さん怖いー♡ でもぉ――――」

 

 そう言いながらバッグに手を突っ込む。取り出したのはテレビに使うようなリモコンである。食蜂はこのリモコンを使い、能力を発動するのだ。

 

 ちなみにミラは「二人共もう仲良しね」という、どう見たってありえないことを言ってたりする。周りの生徒たちは「どこが!?」と至極当然の感想を心の中で叫んでいた。

 

「私の改竄力でどうとでもなっちゃうものねぇ」

 

 ピッというリモコンの音を立てて食蜂が能力を発動させる。通常ならばこれで美琴は洗脳される。だが、

 

「ッ!?」

 

 バヂィッという大きな音を立てて美琴が大きく仰け反る。

 

「あらぁ、洗脳が効かない? ……そっか、そっかぁ。御坂さん電撃使い(エレクトロマスター)だものねぇ。電磁バリアーにでも防がれちゃったか☆」

 

 食蜂の分析通りである。高位の電撃使い(エレクトロマスター)である美琴には、電波を飛ばす食蜂の能力がうまく通じないのだ。

 

 そして、さすがの美琴もここでブチギレた。

 

「あんたねぇ! ミラの友達だからって容赦しないわよ!!」

 

 そう言って、美琴は威嚇のために近くにあった机に電撃を流す。電撃を浴びせられた机は一瞬で炭になり黒い煙と物が焼ける匂いを出している。

 

「ちょっと二人共、いいかげんにしなさい。これ以上やるなら私も入るわよ?」

 

 ここで、事態を重く見たのか、ミラが二人の間に入り仲裁に入る。ミラの右目の色が変化していく。だが食蜂も美琴も超能力者(レベル5)。この程度で止まるほど生易しい性格はしていない。

 

「ミラは下がってて! こいつは一回吹っ飛ばさなきゃ気がすまないわ」

 

「あらぁ、それはこっちのセリフよぉ。こんなのが私の上にいるなんて我慢できないゾ☆」

 

「口で言って分からないならしょうがないわね」

 

 常盤台中学に在籍する超能力者(レベル5)3人による三つ巴の戦いが始まろうとしていた。野次馬は全員廊下に避難。皆がドアの窓から中を覗いている。誰もが心の中で叫んでいた。「誰か止めて!」と。

 

 最悪、今日で常盤台中学の歴史は終わるかもしれない。本気で生徒たちがそう思い始めていたとき、救世主が舞い降りた。その救世主は大きな音を立ててドアを開け放つ。

 

「ここに超能力者(レベル5)が三人いるって聞いて来たんだけど、あなたたち?」

 

「あんた誰よ! こっちは今取り込み中だから後にしてくんない!?」

 

 美琴が思いっきり言い放つ。

 

「乳臭いガキが言ってくれるわね。私はこの常盤台中学最大の派閥のトップ、常盤台最強の大能力者(レベル4)、……」

 

「はぁい、さようならぁ。邪魔だからどっか行ってなさい♡」

 

 そう言って、食蜂が能力を使って名も無きトップを洗脳する。常盤台最強といっても所詮大能力者(レベル4)超能力者(レベル5)からすれば全然弱い。結果、

 

「承リマシタ」

 

 哀れな救世主は能力を披露する間もなく退場していった。生徒たちは合掌していた。哀れな救世主に対して。彼女の派閥に所属している生徒も含めて。

 

 誰もが終わったと思った。生徒たちは我先にと逃げ出す。実は教師たちも集まってきていたが超能力者(レベル5)三人相手に仲裁に入れる勇者はいなかったようだ。

 

「さーてと、どっちからお仕置きして欲しいかしら?」

 

「其れは私のセリフだがな」

 

「「「……えっ?」」」

 

 だが、しかし、今度こそ、本当の救世主がやって来た。その人物は音も無く教室に侵入していた。超能力者(レベル5)3人に気づくかれることなく。その人物はメガネをかけ、ぴっちりとしたスーツを着た鋭い眼光の女性。美琴はその人物に心当たりがあった。

 

「……り、寮監?」

 

 常盤台中学には二つの寮がある。学舎の園の外と中。彼女は外の寮で寮監をしているのだ。ちなみにミラと食蜂は中、美琴は外であった。美琴も最初はミラと同じ中の寮を希望していたが何故か外だった。

 

「寮監ごときが邪魔をしないでくれるかしらぁ」

 

 めんどくさそうにそう言って食蜂は寮監を洗脳しようとする。だが、

 

「えっ?」

 

 食蜂が能力を使うまもなく、寮監は食蜂の背後に回り込み、食蜂の首を絞め上げる。

 

 ゴキっ、という威勢のいい音を立てて食蜂の意識が吹っ飛んだ。素晴らしいまでに鮮やかに、滑らかに。寮監は気絶した食蜂をそこらへんに、ぽいっと投げ捨てる。

 

「まったく、入学式だから学校に来てみれば超能力者(レベル5)どもの喧嘩とはな。お前たちは他の生徒たちの模範となるべき存在ではないのか?」

 

 美琴とミラを包んだのは驚愕。直接的な戦闘力を持たないが超能力者(レベル5)である食蜂を一瞬でひねり上げたこいつは何だ? もはや正常な思考が働いていない。黙っていればまだ救いがあったかもしれないが、美琴がタブーを犯す。

 

「そ、それはあいつが、」

 

 ゴキッ

 

 一瞬で美琴も食蜂のあとを追って天に召された。そして寮監は残ったミラになんとも恐ろしい笑顔で話しかける。

 

「それで? お前は何か言いたいことはあるか? ん?」

 

 ミラの思考がほぼ止まった。体中から汗がダラダラ出ているのも気がつかない。僅かな思考力で考えられたことは、また選択肢間違え、…………ゴキッ

 

 

 

  ◆         

 

 

 

 再び、第七学区学舎の園、常盤台中学内カフェテラスにて

 

「……ごめんね、私も悪かったわ」

 

「……ミラ、大丈夫?」

 

 ミラが手で顔を抑えて泣き出した。寮監はそれほど怖かったのである。あの後、3人で罰則をやらされてたりする。寮監の監視のもとで。さすがの食蜂でも寮監に逆らうことはしなかった。だって、すごい怖いんだもの(食蜂談)

 

 その後常盤台の教師陣の中で、3人を寮監の監視下に置くために外の寮にミラと食蜂を移すか、という議論が本気で繰り広げられたが、食蜂の本気の改竄によりなんとか免れた。

 

 生徒たちからは「超能力者(レベル5)を怒らせたら命はない」と本気で思われてたりする。なまじ、自分たちが強能力者(レベル3)以上であるため一段階、二段階上がどれだけ恐ろしいのか分かってしまうのだ。

 

 寮監に一瞬でのされたことは誰も知らないが、去年までの最強が一瞬で潰されたのだ。そんなこともあって3人は明らかに孤立していた。

 

 つまり、今の状況は完全に自業自得だったのだ。

 

「…………」

 

「…………」

 

 二人はもう何も言えない。入学式から既に一ヶ月経ったが寮監の恐怖はまだ抜けていなかった。ちなみに美琴と食蜂はかなり仲が悪い。お互い第一印象が最悪だったのに加えて、初対面が酷すぎたのが原因だろう。そんな彼女は現在、ゲコ太ショーへ。

 

 そんな感じで二人が鬱モードになっていると、

 

「あ、あの、ヴィクトリア様、し、食蜂様。す、少しよろしいでしょうか?」

 

「あら、あなたは?」

 

「何か用かしらぁ?」

 

 二人のところに来たのは一人の常盤台生。明らかに怯えており、声が震えている。加えて少し涙目。様付は少しでも二人の機嫌を損なわないようにするためだろう。

 

「お、お二人にお願いが、あ、ありまして」

 

「とりあえず座って。紅茶煎れるわ」

 

「すいませ、……えっ、よろしいんですか?」

 

 ミラは笑顔で返答したが、少女からは驚きの声が上がる。怒らせたら殺されると本気で思っているのだから仕方がないだろう。

 

「どうぞ。操祈もいいわよね?」

 

「ミラがいいって言うならねぇ」

 

 ミラと食蜂と名も無き生徒。一人だけ明らかに立場が違うが、お茶会が始まった。そんな少女の願い事とは、

 

 

「派閥を立ち上げて欲しい?」

 

「は、はい。そ、そうなんです」

 

「なんで私たちなのかしらぁ?」

 

 実は今、常盤台中学の派閥の状況は荒れに荒れていた。これまでは一番だった派閥のリーダーが、超能力者(レベル5)ではあるが新入生に瞬殺されたことで権威が失墜。その後釜を狙おうと水面下での争いが耐えないのである。ちなみに超能力者(レベル5)である3人を派閥に誘おうとする勇者はいなかった。

 

 名も無き少女は派閥には所属していないが、今の常盤台中学の状況をなんとかしようと考えた。その結果、超能力者(レベル5)が派閥を立てるのが一番平和になるのでは、という結論にたどり着いたのだった。

 

「なるほどぉ。それで私たちに派閥を立てて欲しいってわけねぇ」

 

 食蜂は地の文を読んだわけではない。能力による読心術だ。ミラはもう慣れていたし、少女の方は驚くことより恐怖に支配されていたので誰も突っ込まなかった。

 

「ど、どうでしょうか。や、やって頂けませんか?」

 

「私はやってもいいわよぉ。なかなか面白そうだし☆」

 

「本当ですか!?あ、ありがとうございます!」

 

 食蜂の返答に驚くも感謝する名も無き少女。彼女は正直、二人が了承してくれるなんて思っていなかった。良くても学校の笑いものになることを覚悟していたのだ。だが、それでもこの結果を生んだのは彼女の勇気によるものだろう。

 

 さらにミラも案外乗り気だった。

 

「あら、操祈がやるの?それじゃあ私も操祈の派閥に入れてもらおうかしら?」

 

「…………ダーメーよぉ。ミラは私の派閥には入れてあげなーい☆ それじゃあ、私は早速行動に移すとするわねぇ」

 

 そう言って、食蜂は席を立つと校舎の中に入っていく。そんな彼女を二人は黙って見送る。

 

「あらら、嫌われちゃったかな?」

 

 ミラはそう言うが別に傷ついた様子はない。むしろ笑っていたりする。

 

「あ、あの食蜂様はなぜヴィクトリア様を?」

 

 派閥に入れないのか、彼女は疑問に思っていた。超能力者(レベル5)が二人いれば間違いなく常盤台一の派閥になるだろう。

 

「そうね。操祈には操祈の考えがあるんでしょう。私ができることは操祈を応援することね」

 

 そうミラは笑いながら言う。これは食蜂のことを本当に信頼しているからこそ言えることだろう。そう言うミラの顔はとても優しいものだった。

 

 この時に名も無き少女は超能力者(レベル5)も一人の人間だということを初めて知ったことは余談である。この日を境にミラたちが生徒たちに慕われるようになったこともまた余談である。

 

 

 この一ヶ月後、見事食蜂は常盤台の派閥の頂点に立つことに成功。結果、派閥間での抗争は停止。食蜂は派閥のメンバーから女王とも呼ばれるようになる。そして、ミラと食蜂の仲は今でも良好である。

 

 

 とある女王の活動日記(アクティブページ)

『4月上旬

 今日は入学式があったがひどい目にあった。第三位の御坂さんがあそこまでお子様だとは思ってもみなかったが、問題力はあの寮監である。次の日に罰則を受けたが、サボろうにもヤツが監督をしていては逃げられない。

 

 さらにあろうことか、ヤツの監視下に置かれそうになるもなんとか撤回した。あそこまで必死で能力を使ったのは二回目くらいかもしれない。

 

 

 5月中旬

 周りの生徒からの視線にイライラする今日この頃。せっかくのミラとのお茶会も台無しにされた感じだった。あれから一ヶ月経ったがヤツの恐怖はまだ抜けない。

 

 でも、面白いこともあった。今日から派閥を立てることとする。私の改竄力でどうとでもなるだろう。

 

 ミラを派閥に入れなかった理由。それは、私はミラと対等でありたいからだ。序列のことは置いておいて。派閥で一緒になってしまえばどうしても上下の差が出てしまう。私たちがそう思っていなくても、周りがそう思ってしまうかもしれない。それは嫌だった。ミラは私を初めて認めてくれて、私の親友になってくれた。だから私はミラを派閥に入れなかった。

 

 

 6月下旬

 派閥を立ち上げて一ヶ月。既に私の派閥は常盤台最大となった。このことで周りから不快な視線力がなくなったことはよかった。メンバーは私を女王と呼ぶ。最初はどうかと思ったが慣れれば案外どうということはない。

 

 派閥を立ち上げたことで心配だったのはミラとの関係だった。もしかしたら怒ったかもしれない。派閥に入れなかったことで嫌われてしまうかも、と考えなかったわけじゃない。でも、ミラは怒ってなんていなくて、むしろ応援してれた。とっても嬉しかった。私とずっと一緒にいて、親友でいてよね。

 

 それとね、ミラ

 

           ありがとう』

 

 

 原作開始1年前春fin

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