1話目
「ミヤビーン」
「それの続きはないぞ」
休日のある日。ボクはミヤビンの背中にもたれながら漫画を読む。もうすぐ読み終るから続きがどこか聞きたかったけど、予想してたのか先にないと答えられた。ちぇっ。
「……なあ」
「んー?」
「どうした?」
勉強しにここに来てたミヤビンの友人、
「2人って、付き合って」
「「ない」」
「さいですか……」
声を揃えて否定する。よく疑われるし間違われるけど付き合ってはないんだよねー。
「付き合ってもないのにそんなべったりなのか?」
「まあ、家族みたいなもんだし慣れたし」
「昔のミヤビンはテンパってたよねー」
あれ?そういえばボクらっていつからの付き合いだっけ?そのことをミヤビンに聞いてみると、
「初等部の頃からじゃなかったっけ?」
「あれ、そだっけ?もっと前じゃない?」
「確かアルバムに……ああ、あった。ほら」
立ち上がったミヤビンがアルバムを持ってきて、ボクと肩を組んでる写真を見せる。日付は、今から11年前。この頃はまだ一人暮らしなんかしてなくて、ミヤビンとは出会ったばかりだったね。
「折角だし、話してやるよ当時のこと」
「あ、ちょっと聞きたいかも」
「ま、そんな大したことじゃないけどね」
そう前置きしてから、当時のことを振り返る。入学して間もない、初めてミヤビンと出会った頃。
――――――
「ねえ、一緒に遊ばない?」
「……は?」
退屈だけどすることもなく、教室の窓から外を見てると、1人の男子が話しかけてきた。黒髪黒目で、一見害のなさそうなやつ。ただ、ボクみたいなのに構うようなやつには見えない。大方先生に頼まれたから話しかけてきたとかそんなだろ。
「嫌だね。なんで知らないやつと」
「木林雅」
「は?」
「俺の名前。木林雅っていうんだ。これで、知らないやつじゃない」
そういってこいつは笑いかけてくる。つられて笑いそうになったけど、ボクは慌てて表情を硬くする。
「それでも、遊ばない。どうせボクを哀れんでの行動だろ?」
「そんなつもりはないけど。でも、迷惑なら今日は諦めるよ」
まるで明日もこうして話しかけてくるみたいじゃないか。まったくなんなんだこいつは。
次の日も、そのまた次の日も、ボクが何度突き放しても、雅は諦めずに話しかけてくる。最終的にはボクの方が諦めて、雅と話すようになった。話してみれば、割と面白いやつだったし。それで、そこそこ仲良くなれたんじゃないかと思った頃、
「なーミヤビン」
「ん?って、ミヤビンって何?」
「オマエのあだ名。いいだろ?」
「あだ名の方が文字数多くないかな」
「いいじゃん。で、思ったんだけどさ」
「うん」
「友達、だよな。ボク達」
ミヤビンはボクがそう言うとちょっとショックを受けた表情で、
「もしかして、レイちゃんにとって友達じゃなかった?」
「い、いや、そんなわけないだろ!?」
「よかったぁ!」
慌てて否定すると、すぐ嬉しそうにしてボクの手を握る。こうして見ると犬っぽくてかわいいんだけど、教室だから恥ずかしい。すると、周りからひそひそと何か聞こえる。
「あの東雲さんが照れてる……」
「木林君てああいう子が好きなのかな」
「あいつら仲良いな。……ひゅーひゅー」
「う、うるさいぞオマエらー!」
ひそひそ話はどんどん広がり、最後はクラス中からはやし立てられた。それで、ボクは思わず大声を上げる。それにびっくりしたのか蜘蛛の子を散らすように逃げるけど、どいつもこいつも笑ってる辺り、絶対懲りていないはずだ。しかもミヤビンがまだ手を握ってるから、またからかわれそうだ。
「み、ミヤビン……」
「それじゃ、帰ろっか」
「あ…うん……」
手を繋いだまま、ミヤビンとボクは下校する。ミヤビンのやつ、気にしてないのかな。なんか、意識しまくってるボクが馬鹿みたい。それでもミヤビンの手をしっかり握り、離さないようにする。この、ボクの初めての友達を。
――――――
「とまあ、そうしてボクらは友達になったんだよ」
「へー、雅って意外とぐいぐい行くタイプだったんだな」
「若気の至りだ……」
忘れてくれと、ミヤビンはテーブルに顔を伏せる。残念だけどボクは忘れられないなー。
「でも、ボクは結構感謝してるんだよ?ミヤビンのお陰で、いっぱい楽しめたし」
「そ、そうか?それなら、いいんだけど……」
ボクは照れてそっぽ向くミヤビンの手に手を重ね、そのままゆっくり顔を近付け、
「ミヤビン……」
「れ、レイ……?」
「おーいお2人さーん。いちゃつくなら他所でやれよ」
「っ!?いいいいやこれはそのだな……!」
もうちょっとでミヤビンをからかえるところで、邪魔が入った。ミヤビンは真っ赤になって慌てふためいて飛びのき、壁に頭をぶつけてうずくまる。面白いもの見れたから、これはこれでいいかな。もちろん、スマホで録画済み。
「あっはっはっは、ミヤビンテンパり過ぎ!」
「っ……!お前、さっきのからかってやがったな!?」
「いい画撮らせてもらったよー」
「お前らとっとと付き合えよ……」
にしし、と笑いながらその証拠を見せてやる。いやー、これだからミヤビンと一緒にいるのは楽しいんだよねー。真っ赤になってるミヤビンとそれをからかうボクを見て、榎本は苦笑いだ。ただ余計なことは言わないでほしいかな。
さて、ボクらが出会った頃の話はしたし、次はいつ頃の話をしようかなー。
どうも、クロウズです。
レイちゃんが語る初等部編第1話でした。多分あと2回くらい初等部編が続きます。
話してる頃はまだ5月頃なんで2人は付き合ってません。付き合ってないのにべったりしてます。主にレイちゃんがからかう為に。
今日はこの辺で。さあ、お前の罪を数えろ!