少年と少女の心のバグ   作:クロウズ

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〈中等部編〉
4話目


「行ってきまーす」

 

 

 4月。この春から中等部に上がった俺は、朝早くに家を出て学園に向かう。普段ならこんな早くに出る必要はないけど、風紀委員である俺は今日、校門前で服装点検をするため早めに学園に着いておく必要があった。風紀委員の仕事は主に今日みたいな服装点検に校内の見回り。地味だけどやりがいはあると俺は思う。

 

 

「おはよーございまーす」

「おはよう木林くん」

「おはよーごぜーます。今日はよろしくおねげーしますね」

 

 

 今日の当番は五月雨(さみだれ)一姫(いつき)先輩と委員長である常陸(ひたち)陽菜(ひな)先輩と俺の3人だ。しかしこの常陸先輩、風紀委員長なのに第一第二ボタンが外されてたりへそ出しだったりと服装がだらしない。曰く、この方がやる気のないと判断して油断した生徒を捕まえられるからとか。だからって風紀委員が服装乱すなよ……。

 

 

「常陸先輩、委員長なんすからちゃんとしてほしいっす」

「いーんですよウチはこれで」

「………。五月雨先輩もなんとか言ってくれないっすか?」

「んー、言っても仕方ないからね。諦めたら?」

「服装点検で真っ先に注意すべきは常陸先輩っすね……」

 

 

 いずれ先輩の服装も正すと決意し、登校してきた生徒達の服装をチェックしていく。服装が乱れてる生徒はそんなにいなかったけど、ネクタイやリボンを忘れた先輩がいたりスカートを規定より短くしてる女子なんかが、中にはちらほらいた。

 

 

 

 

 

 点検も終ると、先輩達と別れて教室に入る。教室内はいつも通り駄弁っているクラスメイトで賑やかだ。俺は自分の席に座って一息吐いてると、前の席に幼馴染が座ってくる。

 

 

「お、やっと来たねミヤビン」

「ああ、おはよーレイちゃん」

 

 

 この幼馴染、東雲レイとは初等部の頃退屈そうにしてたから声をかけたのが始まりで、最初は何度遊びに誘っても断られてたけど、今では大切な親友の1人だ。そんなレイちゃんは未だちゃん付けで呼ばれることに照れてるのか、顔が少し赤い。

 

 

「……ちゃん付けは恥ずかしいからやめてくんない?」

「俺は呼び捨てにするの照れくさいんだけど………レイ?」

 

 

 顔を見ながら言って、恥ずかしくなる。やっぱりレイちゃんの方がまだいいかもしれない。そう思ってると、レイちゃんも徐々に顔を赤くして、

 

 

「みみ、苗字で呼べばい、いいいんじゃないか?」

 

 

 と、上擦った声で言ってきた。東雲……東雲かぁ。確かに、恥ずかしさはない。ないんだけども、

 

 

「東雲。うーん、すっごくよそよそしいな……」

「まあ、その内慣れるよ、ミヤビン」

「って、お前はそのままかよ」

「いいじゃん。これはボクの特権だよ」

 

 

 というわけで、俺はこの幼馴染を苗字で呼ぶことになった。でもなんかむかつくから休日とか2人の時はレイちゃんって呼んでやる。恥ずかしがってもやめる気はない。

 

 

「お2人共、おはようごじゃいマース!」

「よー暮橋(くれはし)。相変わらず能天気そうだな」

「暮橋、お前遅刻ギリギリだぞ」

「実は寝坊しまシテ。レイはともかく、ミヤビは朝強そうデスネ」

「ボクはともかくってなんだよ。喧嘩売ってる?」

 

 

 レイちゃん曰く能天気そうな金髪少女の暮橋ユーキは、イギリス生まれのハーフで去年まではイギリスで暮らしていたいわゆる帰国子女らしい。イギリス生まれイギリス育ちのハーフって、来日は帰国になるんだろうか?

 

 

「それデ、ミヤビは朝強いデスカ?」

「まあ、風紀委員の仕事で朝早かったりするし」

「日曜は絶対7時半には起きるしね」

 

 

 特撮は見逃せないからな。

 そうこう話してるうちに予鈴が鳴って、授業を受ける。受けるんだけど、4時間目の英語が何を言ってるのかさっぱり解らない。先生発音良すぎ。こういうのは本場イギリス出身の暮橋の独壇場かと思ってると、

 

 

「それでは、次の英文を……暮橋さん」

「うぇ!?えーとえーと……。でぃ、ディス、イズ、ア、ペン?」

「This is a pen.です。さあ、もう一度」

 

 

 駄目そうだった。イギリスって英語圏だよ、な?

 

 

 

 

 

「ユーキちゃん、英語苦手だったの?」

「向こうニいた時はそこそこ話せたのデスが、こっちニ来てからハ日本語ばかりデ」

「母国語忘れちゃうほど染まったのね」

「しっかりしなよ英語圏出身者……」

 

 

 授業終了後の昼休み、暮橋の周りには女子が集まってさっきの話で盛り上がってる。暮橋は俺の目の前の席だから必然的に会話が聞こえてしまう。

 

 

「家にいテモ、日本語で話すこと多いデスカラ」

「じゃあ向こうの友達から手紙来たりした時はどうしてるの?」

「あ、それハ大丈夫デス。ちゃんと書けマス!」

「喋るのだけが苦手?」

「というより、授業だトどうしても緊張シテ」

「へー、なるほど」

 

 

 つまり緊張さえしなければ授業でもまともに話せるってことなんだろうな。………授業で緊張するか?

 

 

「おーい雅、飯食うぞ飯」

「はいはい」

 

 

 友人に誘われたから弁当を持って席を立ち、移動する。この友人は霧島(きりしま)良太郎(りょうたろう)。中等部に入っての初めての友人だ。ネーミングセンスがなかったりとてつもなく不運な感じのする名前だ。移動した先には良太郎の他に1人、(さかい)(いさむ)がいる。こいつは良太郎の悪友らしく、2人でよくやんちゃしてたとかなんとか。

 

 

「さあ良太郎、昨日の約束覚えてるだろ?」

「解ってるよ、好きなの持ってけ」

「約束?」

「昨日こいつと勝負してな。昼のおかず1品賭けて」

「んで、オレが勝ったからこのミニハンバーグを貰うと」

 

 

 そう言って勇は箸で良太郎のミニハンバーグを一突き。まったく、何をやってるんだかこいつらは。

 昼休みが終りその後待ち構える午後の授業を乗り切り(ただ暮橋は寝ていたから先生に怒られてた)、放課後。風紀委員の仕事もないからさっさと帰る。

 

 

「明日は数学で当てられる可能性があるから予習しておいて、体育があったからサボろうとするレイちゃんをどうにか説得して……」

 

 

 体操着忘れたとか言いそうだから迎えに行くべきか?あ、確か委員会が昼休みにあるんだっけ。無駄だとは思うけど一応常陸先輩に服装正すよう言って。あー、忙しそう。とりあえず帰ってゆっくり考えよう。

 

 

――――――

 

「ふーん、木林君て中等部から風紀委員だったのね」

 

 

 話を聞き終えた霧生(きりゅう)は缶コーヒーを一口飲む。校内見回り中に急に昔の俺がどんなのか知りたいって言うからびっくりしたが、隠すことでもないし休憩を兼ねてさっきまで話してた。

 

 

「それに東雲さんとは幼馴染。だから扱い上手なのね」

「そうか?そうは思わないけど」

「これからも東雲さんは任せるわね。さ、見回りの続きしましょ」

「はいはい」

 

 

 空になった缶を捨てて先を歩く霧生の後を、ゆっくり追う。後日この事を誤解したレイに色々問い詰められることを、俺はまだ知らない。




 3月ですね、クロウズです。
 今回からは中等部編です。そして次回はクラス対抗ライダー大戦勃発編です。雅達がライダーに変身して生き残りをかけた戦いを繰り広げます。嘘です。聖櫻生の何人くらいが中等部にいたんでしょうね。気になります。



 人物紹介は高等部に入るまでお預けだ!
 今日はこの辺で。ひとっ走り付き合えよ!
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