「・・・始まったか。」
生徒指導室で書類仕事をしていた男性教諭は放送器具から聞こえる何かを咀嚼する音を聞きながら冷静に言葉えお紡ぐ。
「さて、俺も動くか。」
そう言って男性は立ち上がり指導室の扉を開けて出て行く。
―――――――――――
「孝!麗をいったいどうするつもりだ!」
「永!」
「校門で殺人事件だ、ヤバいぜ」
「ッ!? 本当なのか?」
「こんな時に嘘をついて得があんのか?」
孝と呼ばれた男子生徒が麗と呼ばれる女生徒に永と呼ばれた男子生徒に説明している時、麗の腕を掴んでいた孝の力が緩んだ所で麗はその手を振りほどく。
「ちょっと待ってよ! ちゃんとした説明をしない限り、私は・・・」
その瞬間、麗の言葉が終わる前に孝が麗の頬を叩く。永と叩かれた本人は驚いた表情をする。
「「ッ!?」」
「いいから言う事を聞け!!!」
制止の声を上げる教師の声を無視し、教室を後にする三人は移動しながら事の始まりを聞く。孝は野球部のロッカーから金属バットを拝借し、麗は永が用意した先端を強引にねじ切った先端の尖った掃除用モップを持つ。
「お前は武器は良いのか?」
「俺はこれでも空手の有段者だぜ?」
永は自身は空手の有段者だから大丈夫と笑って言う。永の言葉に孝は呆れたような表情をして苦笑する。二人はこの異常な状況に移り変わろうとしている中で未だに楽観視していた。 そして、その時、スピーカーから放送が入る。
『全職員、全生徒にお知らせします。現在、学園内で暴力事件が発生中です! 繰り返します。現在、学園内で暴力事件が発生中です! 生徒はッ!?』
突然放送が途切れる。 次の瞬間
『ッ!? やめてくれ! 助けて! 痛い! あぁあぁぁぁぁ!?』
悲鳴と共に何かを咀嚼する音と共に放送が強制的に途切れた。そこからは校内は混乱に陥る。我先にと飛び出して来る生徒は押し合いながら廊下に出る。 転倒する者、階段から転げ落ちる者と様々である。孝と永はお互いに顔を見合わせて他の生徒が行き交う中で別の出入り口に向かう。 そして別棟に向かう為の連絡橋で様子が可笑しい現国の男性教師が現れる。 姿は頭から血を流し、片足を引きずり目は虚ろでありまるでどこかB級映画に出て来る奴に酷似していた。
「な、脇坂先生!?」
「待て、何か様子がおかしい」
驚く麗の言葉に対して永は現れた脇坂の様子を伺う。
「アァアァアアア」
異様な姿を現した教師は呻き声を上げながら麗に詰め寄る。
「きゃあッ!?」
「麗!?」
驚きつつもモップを盾にして掴みかかって来た脇坂だったモノの手を逃れた麗はその手に持った鋭利な先端を心臓目掛けて串刺しにした・・・が
「なんで!? 心臓を刺したのに!?」
「このッ!?」
「永!」
「なんて力だ!?」
羽交い絞めにしたままの状態で永は教師の思いの他強い力に驚愕する。 外見の年齢に似合わない力を見せ、拘束から逃れる素振りも見せずに永の腕に噛み付く。
「ぐあっ!?」
「「永っ!?」」
腕を噛まれた永だが、噛み付いた脇坂の歯は永の腕を食い千切らんとするかのように更に食い込み、永は苦悶の表情で呻き声を上げる。 孝と麗はそんな永を助ける為にバットやモップで殴り、刺す等をするが一向に倒れる様子を見せない。
「くそッ! どうすれば」
「この手の輩は頭を潰すのが鉄板ですよ、小室君。」
「あんたは」
「黒逸先生!」
二人の後ろ声を掛けながら近付いてスーツに身を包んだ男性は麗に黒逸と呼ばれていた。
「二人とも無事で何よりですが、井豪君の方を優先しないとですね。」
そう言って男性教諭は普通に脇坂の頭部に手を当てて
「その汚い口を離しなさい」
そう告げるのと同時に脇坂は重機に当たったかのような音を立てて永の後方へと吹っ飛んで行く。
「「「へ?」」」
あまりの事に三人は異様な雰囲気の漂う中で呆けたような声を洩らす。
「はぁ、何を呆けているのですか? 迅速に動いて非難しないとあなた達もアレの仲間入りですよ?」
呆けている三人に分かるように脇坂の飛んで行った方を示せば三人は絶句する。 向かい側の棟から腕や腹部、果てには足等が食い千切られた生徒や教師がこちらに向かって来る所であった。
「取り敢えず屋上に避難しよう。 あそこならある程度は時間を稼いで情報の整理が出来るでしょうからね。」
そうして一向は屋上へと歩を進めるのであった。