リリカルガンナー伝   作:紅乃暁

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Chapter1-1「弾丸のスタートライン」

自己紹介を兼ねて、私の今について語ろうと思う。

私こと、桜城絢乃(さくらぎあやの)高校2年生は、映画の真似事をして違法魔術師集団という奴らのアジトらしきところにとっ捕まってしまい、脱出の為に奴らが持っていた銃をお借りして只今全速力で走ってる最中なのである。

銃弾と爆音、叫び声が交わる中突っ走るのは中々勇気の要る事だが、割と普通に走れているのを思うに私は思ったより度胸があるらしい。安心した。

 

「んで!?その管理局員ってどこ?」

 

『その通路を右に曲がったところに管理局の魔力反応があるから、そこにーー待って!左から奴らが来てる!今出ると鉢合わせしてしちゃう!』

 

それは嫌だ。鉢合わせした後に蜂の巣は勘弁願いたい。

直後に目の前の十字路が多種多様な色の球が飛び回った。中には銃声も混じっていたし、いよいよ危険なところに自分が立っている事を認識しはじめてきた。

 

「どうしよう」

 

『戻って別の道を探したほうがいいかもね。そこから管理局員を探そう』

 

目の前にいるのに、手が出せない。歯痒いが死ぬ可能性がある死なない可能性に行きたい。

私は回れ右をして、元来た道を再び駆け出した。しかし、厄介な事は連続して起こるらしい。

 

『まずい、向こうからも敵が来てる!』

 

「このままだとサンドイッチのハムじゃん……」

 

いざ戦う覚悟ができても、この状況は流石に命の危機を感じた。恐怖心がようやく溢れてきた。

でも、それを克服しなきゃいけない。どうにかしなきゃいけない。

 

 

考えろ。

 

思考を止めるな。

 

考える事を捨てるな。

 

カードを選ぶんだ。

 

 

「いや詰んでない?」

 

『嘘でしょ。そこは普通どうにかする場面だよ?』

 

「この人数相手に、こっちは銃一丁だよ?流石にーー」

 

 

 

「いたぞ!女だ!!」

 

 

 

女?

 

「私じゃんか!?」

 

『早くそこの扉の中に!』

 

言われるまま、すぐ横に扉を蹴破って中に転がり込む。

どうやら食堂だったらしく、中には長テーブルなどが並んであり、転がり込んだ勢いでテーブルを倒して壁を作り、その中に身を隠す。

しかし中に入ってきた7、8人が一斉に弾丸と魔力弾の雨を降らせた。

 

「いやいやいやいや!ちょっと!!こっち女の子1人だよ!?そんなのあり!?」

 

「うるせえ!局にチクったのはてめえだろうが!もう許さねえからな!!」

 

チクってねえ。適当な事言いやがってあの野郎。

そんな事よりも、これは本当にまずい。反撃をしようにもテーブルから顔を出すと間違いなく、さぞ風通しの良い顔になるだろう。聞こえはいいが見かけは最悪だと思う。

どうにかしようと辺りを見渡す。と、コンクリートの天井に埋め込まれた電球が目にとまった。

 

「ねえ、目を塞がれても敵の位置の把握はできる?」

 

『魔力センサーさえ潰されなきゃ、問題ないよ』

 

「上等!」

 

天井の照明にパイソンを構えて、引き金を引いた。

ある程度は頑張ったつもりだが、素人の私がそんな一瞬で照準を合わせられるはずがない。のだが。

そこはこの首元の相棒の弾道補正により、銃口から噴き出した赤色の弾丸は、照明へと吸い込まれていった。

続けざまにあちこちにある照明に弾丸を放ち、照明は全て粉々に砕け、食堂内は一瞬で暗闇に包まれた。

 

「くそ、小賢しい真似を……」

 

『今だ、マスター!』

 

言われるまま、テーブルから飛び出しとりあえず奴らがいたであろう場所に向けて引き金を引く。

暗闇の中で、男たちのうめき声が上がる。先ほどの照明といい、どうやら首の相棒の実力は本物のようらしい。

 

『そのまままっすぐ行けば扉だ!』

 

「はいよぉ!」

 

言われるまま真っ直ぐに走った後、合図とともに扉を蹴破り、廊下を再び駆け出した。

階段を降り、1Fと書かれたプレートの踊り場まで来たのち、鉄製の扉を開けると、広大なホールに出た。

 

「ここ、エントランスホール!?」

 

『あそこに管理局員がいる!』

 

確かに、それらしき人たちが長細い杖のようなものを抱えてホールに入ってきた。見たことのない銃を抱えている人もいた。

と、その中の1人が私の存在に気づいたらしく、こちらに慌てた様子で駆け出してくる。

 

「貴女が奴らに拐われた民間人ですね!?お怪我は!?」

 

「私は大丈夫です!ちょっと疲れましたけど!」

 

あれ、なんで私のこと知ってるんだろう。

 

「もう大丈夫です。すぐに安全な場所へお送りします。おい、彼女を車へ!」

 

「ハッ。さあ、こちらです!」

 

一応、パイソンを制服のブレザーで隠して、案内してくれるらしきその人の後ろに続いて走った。

ホールから出て、何となく建物を見上げてみた。やはりそこは私が入ったビルではなかった。

 

「……ねえ、私、マジで魔法の世界に来ちゃったの?」

 

『ミッドチルダ。これが、この世界の名前さ』

 

魔法の世界のわりに、喋る妖精さんが1人も出てこなかった。

私の中の魔法の世界という概念が音を立てて崩れていくのを感じながら、先ほどの隊員さんの後を追った。

 

 

 

車に乗った後、これまでの疲れがどっと出てきて、そのまま睡魔に一気に襲われ、敗北してしまった。

そして意識が覚めると、真っ先にアルコールの匂いが鼻についた。どうやら、医務室か病院かどこかに運ばれてたらしい。

 

「気がつかれましたか」

 

横に、顔立ちのいいイケメンがいた。爽やか系ともいうべき彼は、私に歩み寄ってくる。

あ、今思うとイケメンに優しくされたの初めてだわ。私今めっちゃ貴重な体験してる。

 

「ここは……?」

 

寝起きだからか、イマイチ声がちゃんと出ない。恥ずかしい。

 

「クラナガンの病院です。今、先生を呼んできます」

 

「あ、はい」

 

日頃からイケメンと話す訓練をするべきだったと深く後悔した瞬間だった。ところでクラナガンってどこよ。

数分後に、先ほどのイケメンが医者らしきおじさんを連れて戻ってきた。おじさんは別に普通の人だった。我ながら結構失礼である。

特に身体に異常はないが、念のために1日ここで休むように言われるだけだった。その後先生と入れ替わるように部屋に入ってきたのは、真面目な顔つきのお兄さんと、どこかで見た顔のお兄さんだった。

 

「……って、えっ!?あなたあいつらの仲間の!?」

 

「スパイだよ。潜入捜査してたんだ」

 

ちなみに扉を開けてやったのも俺だ、何て言いながらベッドの横にあったパイプ椅子に座る。が。

 

「取り調べは俺がする。お前は立ってろ」

 

「お言葉ですが中尉殿、私は先の任務で非常に疲れているのであります」

 

「なら楽な姿勢で立ってろ」

 

やな奴、と言いながらスパイお兄さんは立ち上がり、代わりに真面目お兄さんが席に座った。この人も座りたかっただけなんじゃなかろうか。

 

「管理局対違法魔導師対策部隊『F.E.A.R』所属、コウ・アレドです。お疲れのところ申し訳有りませんが、幾つかの質問に答えていただけますか」

 

「あ、俺はエドワード・ノイン。よろしく」

 

「……黙ってろ」

 

「へいへい」

 

ふむ、2人の仲が良好なのはとてもよくわかった。

 

「まずは、お名前と年齢、ご職業を」

 

「桜城絢乃です。年齢は16、高校2年生です」

 

「聞いたかよ16だって。中尉殿のドストライクだ」

 

「おいカーク。こいつを部屋から叩き出せ」

 

「ま、まあまあコウさん落ち着いて。ほら、エドワードさんも!」

 

コウさんは私ぐらいの年齢の子が好みなようだ。多分あのテンションを見るに、エドワードさんも同じだと思う。いや、あれは女だったら良いってアレかもしれない。

 

「コホン……失礼しました。では桜城さん。あなたは、自分の住む世界、地球で奴らの仲間に捕まった、という事ですね?」

 

「はい。奴らの仲間の1人が、銃を持っているのを見て気になって」

 

「気づいたのなら、まずはそちらの警察組織に通報してください。命がいくつあっても足りませんよ」

 

「返す言葉もございません」

 

「そして、捕まったあなたはのちにエドワード准尉による手引きで脱出、エントランスホールまで逃げ切り保護……間違いないですね?」

 

「は、はい」

 

途中の事は黙っていた方がいいかもしれない。……が。

 

「食堂で暴れてたの、お前じゃないのか?」

 

「ごめんなさい私です」

 

「……エドワード、質問は俺がすると言っただろう。まあいい。桜城さん、あなたは彼らと戦闘行為を行った、間違いないですね?」

 

「はい。ただ、非殺傷?設定って奴で気絶させただけだと思いますけど」

 

「確かに気絶だけでした。……あなた、奴らの違法改造デバイスを使用しましたね?」

 

「ごめんなさいやりました」

 

なんだろう。罪人ってみんなこんな気持ちなんだろうか。結構心に重い物を抱えてる感じがある。所謂罪の十字架とやらが重いのかもしれない。

 

「今回は非常事態とはいえ仕方ありませんが、事件の証拠品となる物です。気をつけてください」

 

一時のテンションでやってしまった事を深く反省したいと思います。

 

「……あれ、貰えたりできないですか?」

 

「……こことは違うところで取調を受けたいなら構わないが?」

 

「エンリョシトキマス」

 

さよならコルトパイソン。

 

「ところで君が持っていたあのチョーカー型のデバイス、あれは君のなのか?」

 

「まあ多分そうなんでしょうけど、正直よくわからないです。気づいたら付けられてたんで」

 

「……となると、やはり逃げた科学者の仕業か?」

 

小声で呟いていた事を、私は聞き逃さなかった。

話を掘り下げてみようとした時、ノックの音が聞こえ、扉が開いた。

その人が入ってきた瞬間、そこにいた全員がその人のほうを向き、一斉に敬礼した。私も反射的にしかけた。

 

「隊長、お疲れ様です」

 

「ご苦労。奴らに捕まっていたというのは、君の事か?」

 

隊長と呼ばれた人は、30後半から40代前半のように見え、渋いイケメンという印象だった。というかなんでさっきからイケメンしかいないの?何ここパラダイス?

 

「え、ええ」

 

「銃片手に暴れ回るとは、やるじゃないか」

 

そして次に紡がれた一言には、流石に驚きを隠せなかったし、茶化す余裕も失われてしまった。

 

「単刀直入に言う。うちの部隊に来ないか?」

 

所謂、人生の分岐点に私は立たされたのだと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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