【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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標的51 女心と秋の空

 

 

~side108部隊隊舎~

 

「おい、ギンガ」

 

この日、108部隊隊舎にて部隊長のゲンヤがギンガを呼び出す。

 

「なんでしょうか?」

 

「すまねぇが、此奴を六課の豆狸はやての所に持って行ってくれねぇか?」

 

ゲンヤはギンガに大きめの茶封筒を手渡す。

 

「いいですけど、FAXかメールじゃ送れないモノなんですか?」

 

「重要な要件が書いてある書類なんでな、直接手渡しをしてもらえてぇ」

 

「わかりました」

 

こうしてギンガは機動六課へお使いに行く事になった。

準備が出来、六課へと向かう途中、隊舎の通路にてギンガは土方と出会った。

 

「ん?ギンガ、何処かに出掛けるのか?」

 

土方がギンガに声をかけた。

ギンガは管理局の制服姿であるが、肩にショルダーバッグを下げていたので、これから何処かに出掛けようとしているのが直ぐに分かった。

 

「はい、ちょっと機動六課にお使いに」

 

「付き合うか?」

 

土方が自分も一緒に行くかと尋ねると、

 

「大丈夫です。直ぐに終わる用件なので、お昼前には戻りますから」

 

「そうか」

 

ギンガは土方に大丈夫だと言って一礼し、108部隊の隊舎を後にし、機動六課へと向かった。

 

ギンガが機動六課にお使いへ向かってから時間が経ち‥‥

 

キンコーンカンコーン

 

隊舎にお昼を告げるチャイムが鳴る。

 

「うーん‥‥トシ、総悟、昼飯に行くぞ」

 

デスクワークしていた近藤が背伸びをした後、土方と沖田を昼食に誘う。

沖田は立ち上がったのだが、土方はデスクに座ったままだった。

 

「うぃーす‥‥ん?土方さん、どうしたんですかい?昼飯、行かないんですか?」

 

沖田は立ち上がらない土方に声をかける。

 

「いや、俺はもうちょっとやる事があるんで、昼飯はいい」

 

と、土方はパソコンの画面を見ながら近藤と沖田に今日は昼ご飯を食べないと言う。

 

「むっ?そうか?まぁ、あんまり無理をするなよ、トシ」

 

近藤は沖田と共に食堂へと向かった。

オフィスに食事で人が少なくなった後も土方はひたすらパソコンの画面を見ていたが、チラチラとギンガのデスクや時計を見て、集中しているとは言えなかった。

それから昼休憩が終わり、オフィスに人が戻って来たが、ギンガが戻って来る気配はない。

 

「ちっ」

 

どうにもギンガが気になり、仕事に集中できない土方は、

 

「すまん、ちょっと巡察に行ってくる。」

 

と、一言断りを入れて、オフィスを後にした。

 

そして、機動六課の隊舎の受付にてギンガが帰ったかの確認をすると、ギンガはまだ帰っていないと言う。

呼び出しますか?と聞かれ、土方は、

 

「いや、大丈夫だ。ただ、確認しに来ただけだからな」

 

そう言って隊舎から出て、隊舎の出入り口にて、ギンガを待った。

そして、ギンガが出てくると、彼女に声をかけた。

 

「よぉ、お使いにしては随分と長かったな」

 

タバコを吸う一人の人物がおり、その人は隊舎を出たギンガに声をかけた。

 

「と、トシさん!どうしたんですか?」

 

「ゲンヤのおやっさんに頼まれたんだよ。お前の帰りが遅いから向かいに行ってくれってな。帰ったら、おやっさんの説教ぐらいは覚悟しておけ」

 

「そうでしたか、すいません。ご迷惑おかけして‥‥」

 

ギンガは遅くなる連絡をゲンヤに入れるのを忘れて居た事を思いだし、わざわざ自分を迎えに来てくれた土方に頭を下げ謝る。

 

「別に構わねぇよ‥ほら、帰るぞ。」

 

「はい」

 

ギンガは土方の隣に立ち108部隊の隊舎へと帰っていった。

そして、隊舎に戻ったギンガは土方の言う通り、父親でもあり、108部隊の部隊長であるゲンヤから厳重注意を受けた。

その日の夜、父と娘との関係に戻ったギンガはゲンヤに、

 

「でも、お父さん。わざわざトシさんを迎えに寄こさなくてもちゃんと1人で帰れましたよ」

 

ギンガはゲンヤにわざわざ迎えを寄こす必要は無いと言う。しかし、その反面、土方と2人っきりの時間が出来て嬉しかったりもした。

すると、

 

「へぇ~アイツ、ギンガのところへ迎えに行ったのか」

 

ゲンヤはギンガの言葉を聞き、クックックッと笑みを零しながら言う。

 

「えっ?どういう事?」

 

「アイツ、お前が予定時間になっても戻らないから心配そうにお前のデスクや時計をチラチラ見ていてな、そんで急に立ち上がったと思ったら、『巡察に行ってきます』って言って1人で出ていっちまいやがったんだからな」

 

「トシさんが‥‥」

 

土方としてはまさかギンガがゲンヤに今日の事を尋ねるとは思ってもおらず、土方はゲンヤとギンガ双方に異なった言い分をしていた。

 

「アイツ、普段はお前にぶっきらぼうな態度をとっているが、何かとお前の事を思っている奴だよ」

 

「‥‥」

 

「なぁ、ギンガ」

 

「なに?」

 

「アイツなら、お前の事を受け入れてくれるんじゃねぇか?」

 

「‥‥」

 

「お前だって、アイツの事、何だかんだ言っても気に入っているんだろう?」

 

「‥‥」

 

「余計なことかもしれないが、俺から見てもアイツは良い奴だ。ちょっとぶっきらぼうで不器用な所があるが、アイツは真面目で馬鹿正直で‥‥ホント良い奴だよ‥‥アイツになら、お前を嫁に出しても良いと俺はそう思っている‥‥」

 

これまで、ギンガと土方‥男女が共にコンビを組んで仕事をしている為かギンガの彼氏は土方で、土方の彼女はギンガではないかと108部隊で噂にはなったが、いずれも本人達が否定し、噂はすぐに鎮静化している。

尚、ギンガは照れ隠しで否定していた。

 

「ちょっ、お父さん!!余計なことはしないで!!//////」

 

ギンガは声を上げ、顔を赤くして部屋に戻って行った。

 

部屋の戻ったギンガはベッドに飛び込むと枕に顔をうずめた。

ギンガの脳裏には土方の姿が浮かぶ。

ぶっきらぼうで、常に煙草の臭いを漂わせて、食事の時はマヨネーズばかりを食べて、それでいて仕事に関しては実直で‥‥あの人は、摘発の際、真っ先に先頭をきって切り込んでいく。

そんな彼の姿勢を見て、部隊の隊員達も自然と彼に信用を寄せている。

でも、ちょっと危ういところもある。

この前の摘発の時、土方は自分を庇って傷ついた。

にも関わらず、彼は最後まで離脱することなく、現場に居続け、摘発が終わり、隊舎に戻った後、医務室に運び込まれ、医務官に治療されながら、叱られていた。

そんな彼を見ていていつしか自分は彼を支えたいと思い始めていた。

その思いをいつ抱いたのかはギンガ自身にも分からない。

敢えて答えるならば、いつの間にか、だろうか。

気付けば視線は彼を追い、胸の中には彼への想いが満ちていった。

そして、少女が自分の中に芽生えた、甘く、淡く、切ない気持ちが恋だと気付いたのはつい最近の事だった。

 

「トシさん‥‥//////」

 

ギンガは土方への思いを抱きながら、その日も眠りについた。

 

それから数日後‥‥

 

「ふぅ~‥‥」

 

夕刻の茜の光が差し込む陸士108部隊のオフィスで、彼女の口から疲労を孕んだ息が漏れた。

今日の仕事を終えたギンガはオフィスチェアの上で、うーん、と背を伸ばし、身をしならせる。

デスク上で人工光を放つディスプレイの電源を落とし、ギンガは周囲を見渡した。

窓から差し込む光は既に陽光から月光に移りつつあり、同僚の姿はほとんど見当たらない。

もう残っているのは自分だけだろうか?

そう思った彼女の思慮は、だがすぐに裏切られた。

 

「あっ、トシさん」

 

ギンガの腰掛けた位置から数メートル先には集中した面持ちで机上のディスプレイを見つめ、キーを叩いている土方の姿があった。

ギンガの呟きを聞いたのか、彼は視線を上げた。

 

「おう、ギンガまだいたのか」

 

「あ、はい」

 

土方の言葉に、ギンガはやや口ごもりつつ答える。

 

「あ、あの……良かったら一緒に帰りませんか? その……たまには一緒に夕食でも……」

 

ギンガは土方を夕食へと誘った。

 

「わりぃ、まだ仕事が残ってんだ。先に帰っていいぞ、ギンガ」

 

咥え煙草のまま、目の前の画面しか見ぬ土方に、ギンガは何度か声を掛けようと口を開く。

 

「‥‥」

 

しかし、ギンガは何度か声を掛けようと口を開こうとするが、紡ごうとした声は出でる事無く。

 

「じゃあ‥‥お先に失礼します。お疲れ様です」

 

ギンガは蚊の鳴くような声でそう告げてオフィスを後にした。

 

「おう、お疲れ‥‥」

 

土方はギンガの方に視線をむけず、片手をあげて、ギンガを見送った。

 

「「‥‥」」

 

そんな二人の様子を近藤と沖田は物陰から見ていた。

ギンガは近藤と沖田の存在には気づかなかったが、土方は気づいていた。

 

「おい、いつまで其処で盗み見ている?」

 

土方が声をかけると物陰から近藤と沖田が出てきて、

 

「おい、トシ。ありゃねぇだろう?ギンガちゃん、どう見てもお前さんに気があるだろう!?恋する乙女だろう!?今時、ギンガちゃんみたいな純情な娘は絶滅危惧種だぞ!!」

 

「そうですぜ、土方さん。いらないなら俺が貰っちまいますぜ、そんで調教して、俺に従順な雌犬にしてあげまさぁ」

 

沖田がそう言うと土方は殺気の籠った目で沖田を睨む。

 

「総悟、テメェそんな事をしてみろ、ぶった切るぞ」

 

「おぉ~こわぁ~男の嫉妬は見苦しいですぜぇ、土方さん」

 

「ちげぇよ。俺達に居場所を与えてくれたゲンヤのおやっさんに迷惑をかけるなって言ってんだよ!!」

 

「だがな、トシ。ギンガちゃんの気持ちも察してやれ。それにお前さんもそろそろ身を固めても良い頃だろう?自分に素直になれ」

 

「‥‥俺には、人を好きになる資格なんてねぇよ近藤さん」

 

土方は哀愁が漂う空気で近藤に呟く。

 

「‥‥まさかと思うが、トシ。お前、まだミツバ殿の事を引きずっているのか?」

 

「‥‥」

 

土方は気まずそうに近藤と沖田から視線を逸らす。

そんな土方の態度に沖田は不機嫌‥と言うより、少し怒っている様子で、

 

「土方さん、姉上を言い訳に逃げんのはやめてくれませんか?正直、不愉快でさぁ。あの人はあんたに惚れてんのは、勘の良いアンタもわかってんでしょう?アンタもしっかりとあの人に向き合ってくだせぇ。少しでも姉上にすまねぇと思うなら‥‥姉上もきっとそれを望んでますぜぇ‥‥」

 

と、土方に言い寄る。

 

「‥‥さて、仕事も終わったし帰るか」

 

しかし、土方はそんな沖田の言葉なんぞ何処吹く風な様子で、オフィスを後にした。

 

「ちっ、気に入らねぇ‥‥」

 

オフィスから去って行く土方の後姿を見て、沖田は忌々しそうに呟く。

 

「まぁ、総悟。トシの事も少しは分かってやれ」

 

「何がですかい?近藤さん?あんな卑怯で腰抜けな奴の何処を理解しろと!?」

 

「そう言うな、ミツバ殿の事で、トシはお前に負い目を感じているのだ‥‥自分だけ好きな女子と一緒になってもいいのかとな‥‥」

 

「フン、格好つけやがって、あの人のそんな所が嫌いなんでさぁ‥‥俺は‥‥」

 

「しかし、珍しいな。お前がトシに肩入れするなんて」

 

「別にヤロウに肩入れするつもりはありませんぜぇ、近藤さん。ただ‥あの人は姉上に似ている‥素直で真面目で面倒見が良くて、誰にもでも優しい所が‥だからこそ、あの人には姉上の分まで幸せになって欲しいだけでさぁ~」

 

「そうか‥‥」

 

近藤と沖田は土方が去って行った通路をジッと見つめていた。

 

そして通路すぐに

 

「クッ!」

 

殺気が飛んできて半戦闘体勢をとるが

 

「何だ、お前か?」

 

うっすら光る暗闇から出てきたのは

 

「また相手して欲しいのか?」

 

「そうしてもらおうと思ったけどね」

 

雲雀だ。夜遅くまでこんなところで何してるのかはわからないが、こいつが人に会う時はだいたい同じ理由だな。

 

「ソレならこんな時間じゃなくて、明日にでも‥‥「いや」」

 

「?」

 

土方が言う前に雲雀の方から、断って来た。

 

「今の君はつまらない。」

 

「あ?」

 

(コイツ何言ってんだ?)

 

雲雀の言葉の意味が分からず、顔をしかめる土方。

 

「何に迷っているか知らないけど‥‥」

 

少し少し歩きすれ違いざまに

 

「僕に咬み殺される前にその迷いは断ち切っといてね。腑抜けた奴を咬み殺しても、殺り甲斐がないから」

 

「なっ!?」

 

雲雀は、それ以外何も言わずに歩いていった。

 

「ったく、なんだ?」

 

土方が108部隊の隊舎のロビーへと出ると今度は

 

「よぉ、お疲れさん」

 

「‥‥あっ、どうも」

 

土方をまるで待っていたかのようにゲンヤが土方に声をかけて来た。

そんなゲンヤに土方は一礼する。

 

「土方、お前さん今日の夜は暇か?」

 

「ん?あぁ、まぁ‥‥」

 

「だったら、ちょっと付き合え」

 

ゲンヤは片手でクイッと手を動かして、飲みに行こうと言う仕草をとった。

 

「う、うっす」

 

別に夜の予定は何もないし、上司からの誘いなので、土方は、ゲンヤの誘いを受けた。それに今日は昼飯抜きだったので、早く腹に何かを入れたかった。

 

そして、ゲンヤの誘いでやって来た居酒屋。

ゲンヤが酒とおつまみを注文し、おしぼりで手をふく。

土方もゲンヤ同様、おしぼりで手をふく。

そして、まず酒が2人の下に届いた。

 

「まっ、今日もお疲れさん」

 

「どうも‥‥」

 

ゲンヤは土方のグラスに酒を注ぐ。

 

「おやっさんも‥‥」

 

「おっ、悪いな」

 

土方もゲンヤのグラスに酒を注ぐ。

 

「それじゃあ、乾杯」

 

2人はグラスをぶつけ合い、今日の仕事を互いに労う。

ゲンヤも土方もグラスに注がれた酒を一気に煽る。

やがて、注文したつまみが来ると、

 

「すみません。マヨネーズもお願いします」

 

と、土方は店員にマヨネーズを頼む。

そして、マヨネーズが来ると、焼き鳥の上からマヨネーズをこれでもかって言う量をかけて食べる。

 

「‥‥」

 

その様子を見たゲンヤは顔を引き攣らせるが、早速今日、土方を呑みに誘った本題に入る。

 

「なぁ、土方」

 

「なんだ?」

 

「お前さん、今、好きな女とか付き合っている女はいるか?」

 

「またその話かよ?」

 

「酒の席ですまねぇがこちとら真剣に聞いているんだ。答えろ‥‥」

 

ゲンヤの目はまさに猛禽類を思わせる鋭い目であった。

 

「いねぇよ‥それに俺には女を好きになる資格なんざ、ねぇしな‥‥」

 

そう言って、土方は二本目のマヨネーズをかけた焼き鳥を食べ始める。

 

「‥‥だがな、お前さんはもう気づいているんだろう?ギンガの事を」

 

「‥‥」

 

「親父の俺が言うのもなんだが、アイツは良い娘に育った‥‥男手一つで育ったとも思えねぇ程だ‥‥それこそ、何処の家に嫁に出しても恥ずかしくないぐらいの自慢の娘にな‥‥」

 

ゲンヤはギンガの成長を懐かしむかのように目を細める。

 

「そんな大事な娘をお前さんになら、本気で嫁に出しも良いと思っている。お前さんなら、きっとギンガを幸せにしてくれると俺はそう信じている。なぁ、この話、受けてくれねえぇか?」

 

「おやっさん、ギンガはまだ20歳(はたち)にもなってねぇんだぜ、この先、俺よりも良い男が現れるだろうさ‥‥それにあの容姿と器量だ。貰い手は引く手数多じゃねぇのか?」

 

「‥確かに、これまで色んな部署から見合い話が来た。どれもこれも将来が約束されたようなエリートばかりの男共からな‥‥だが、全部ギンガ本人が蹴っちまった」

 

「蹴った?」

 

土方は玉の輿かもしれない見合い話をギンガ本人が蹴った事に驚いた。

 

「ああ、どいつもこいつも皆、ギンガの顔と体目当てのろくでもねぇ奴だったからな、アイツはそう言うのには敏感な奴だ。まぁ、俺としてもそんな野郎にギンガを渡したくはなかったから丁度よかったんだがな‥‥そんなギンガが初めて惚れた男がお前だ‥土方‥だから‥‥」

 

「‥‥おやっさん‥少し、昔話を聞いちゃくれねぇか?」

 

土方はゲンヤの言葉を遮って、話し始めた。

 

「此奴は、俺の知り合いのロクデナシの男の話なんだがな‥‥」

 

土方はグイッとグラスの中に残っていた酒を一気に煽った後、かつての自分とミツバの話をゲンヤにした。

勿論自分とミツバの名前を隠して‥‥

しかし、ゲンヤは土方の言うロクデナシの男が土方を指している事は直ぐに察しがついた。

 

「‥それで、ソイツは、仕事にかまけて、その惚れた女の婚約者をぶった切って、挙句の果てその女の死に目にも立ち会えなかったどうしようもねぇロクデナシだった‥‥だからよ、そんなロクデナシが人を好きになる資格なんざねぇんだよ」

 

最後はもはや、正体を隠す事無く話を終える土方。

 

「‥‥」

 

「さあ、この話はこれで終いだ。折角の酒が不味くなるからな」

 

そう言って土方は空になっていたゲンヤのグラスに酒を注いだ。

 

 

「ひ~じ~か~た~ウチのギンガじゃ~不満かぁ~」

 

「ああもう、しっかりしろ!!飲み過だ!!おやっさん!!」

 

居酒屋を出た時にはゲンヤはベロンベロンに酔っており、土方はゲンヤに肩を貸しながら、ナカジマ家を目指した。

そのナカジマ家では、ギンガが自室のベッドの上に物憂げな顔をしていた。

 

「はぁ~‥‥やっぱり今日も駄目だったかぁ~‥‥トシさんったら、私の気持ちも知らないで‥‥」

 

そして、誰にでもなく、独り言を呟く。

 

「今度は休日に買い物でも誘ってみようかな‥‥あっ、でもいきなり2人でなんて‥‥それに、私の正体を知ったら‥‥」

 

顎先に指を当て、ギンガは歩みながら思慮を巡らせた。

どうしたら彼と一緒の時間を作れるか、どうしたら彼に自分の事を意識させられるか、どうしたらこの想いを実らせられるか、そればかりを思っていた。

しかし、それと同時に浮かんでくるのは自らの出生にまつわる秘密‥‥。

この秘密を土方が知った時、彼は自分を受け入れてくれるだろうか?

そんな思いと不安が交差している中、

 

ピンポーン

 

と、来客を告げるインターホンが鳴る。

 

「はーい」

 

ギンガは急いで部屋から出ると、

 

「ギンガか?」

 

「と、トシさん!?」

 

思いもよらない人物の来客に思わず声が裏返るギンガ。

 

「すまねぇギンガ、開けてくれ!!ゲンヤのおやっさんが酔い潰れちまって」

 

「なにぉ~、ひ~じ~か~た~、俺は酔ってなんかいねぇぞ~」

 

直ぐ近くから酔った父の声がする。

 

「い、今すぐに開けますから」

 

ギンガは玄関のドアを開けて、土方を招き入れ入る。

 

「ほら、おやっさん、しっかり歩け!!」

 

「おぉ~マイホーム~そして、愛しの愛娘ギンガちゃぁぁぁん~」

 

「‥‥完全に酔っていますね」

 

ギンガも酔った父の姿にドン引きしている。

 

「ギンガちゃぁぁぁん~、ほら、お帰りのチューは?チュ~」

 

ゲンヤがギンガにキスを迫ると、

 

「フン!!」

 

ギンガはゲンヤの頭に拳骨をくらわした。

 

「ちょっ、おまっ!!」

 

ギンガの拳骨をくらったゲンヤは1発でノックアウトされた。

 

「すみません、トシさんわざわざ」

 

「い、いや‥‥」

 

実の父親に拳骨をして沈めたギンガにちょっと引く土方。

 

「あっ、ロビーで待っていて下さい。お礼にお茶でも淹れますから」

 

「いや、俺はこれで‥‥」

 

「トシさんも飲んでいるのでしょう?だったら、少し休んで行って下さい」

 

ギンガはノックアウトしたゲンヤに肩を貸して、彼を寝室へと運んで行く。

 

「‥‥」

 

なんか妙な事になりつつもギンガの言っている事も最もであり、ナカジマ家のロビーで休ませてもらう事にした土方。

 

「お待たせしました。どうぞ」

 

「おう」

 

土方はギンガから差し出されたお茶を飲む。

 

「どうも、父がご迷惑をお掛けしました」

 

「いや、こういうのは慣れている」

 

土方は淡々と答え、茶をすする。

江戸に居た頃は上司の松平片栗虎の接待に近藤と共によくつき合わされ、酔った片栗虎や近藤の面倒をさせられていた彼にとって酔っ払いの相手は慣れたモノだった。

 

「それじゃあ、ごちそうさん」

 

茶を飲み終え、席を立つ土方。

 

「あっ、じゃあ玄関までお見送りします」

 

ギンガも席を立ち、土方に近寄る。

 

「わざわざそこまでしなくても大丈夫だ」

 

土方は玄関に向かって歩くが、やはり彼も飲んでおり、ゲンヤを届けた事への安堵感から酔いが回り、足がもつれた。

 

「おっ?」

 

「えっ?」

 

バタン‥‥チュッ‥‥

 

「「んっ?」」

 

土方は足がもつれ、そのまま倒れると、其処に運悪く?ギンガが居り、ギンガを押し倒す形となり、しかも倒れた土方とギンガの唇が重なり合った。

 

「す、すまねぇ!!//////」

 

事故とはいえ、ギンガとキスしてしまった事実に土方は一気に酔いが醒めた。

土方はギンガからバッと離れ、

 

「じゃ、じゃあな、ギンガ//////」

 

慌ててナカジマ家を後にした。

 

「‥‥//////」

 

ギンガはその場で放心しつつ自らの唇を指で触れる。

 

(キス‥‥キスしちゃった‥‥トシさんと‥‥//////)

 

ギンガのファーストキスは酒と煙草の味がした。




ではまた次回。
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