【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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お久しぶりの更新です。


標的84 モブ達の戦いは邪魔に見えて意外と重要な伏線を引いてたりもするがやはりくどくて鬱陶しい

 

 

 

獄寺が病室を出て行った後、少し遅れて病院を脱走‥‥もとい、病院から外出して戦場へと向かったヴァイス。

クラナガンの市街地と再開発地区の境目の彼方此方ではガジェットと管理局員との戦闘が繰り広げられている。

それは地上だけではなく、上空では『空』の首都防空隊と飛行型のガジェットⅡ型が戦っており空中では数多くの空戦魔導師による魔法弾と被弾して爆発したガジェットⅡ型の爆炎がまるで花火の様にクラナガンの空の彼方此方で見られる。

都市中心部には避難警報が出され、市民は地下のシェルターへと避難するように指示が出される。

ミッドが戦闘と避難する市民で混乱している中、ヴァイスは乗り捨ててあったバイクを走らせて戦場へ‥‥機動六課の仲間が戦っているであろう戦場へと急ぐ。

六課のメンバーはきっとガジェットではなく戦闘機人と戦っている筈。

奴等の実力はこれまでの戦闘データの記録と隊舎襲撃の際に経験済みである。

その為、連中との戦闘は十中八九、苦戦は必至の筈‥‥ならば、今は1人でも多くの戦力が少しでも必要な時‥‥

それに自分の得意分野は狙撃‥‥。

狙撃手ならばそこまで激しい動きはしないので、怪我に大きく響く事はない筈である。

何よりも自分より若い者や子供達が戦場で必死になって戦っている中で、これしきの傷如きで大人しく病院のベッドで大人しく寝ている訳にはいかなかった。

そしてバイクで戦場へと向かっている中、ヴァイスが抱いている不安‥‥

自分はちゃんと撃てるのか?

また妹の時の様に味方に誤射してしまうのではないか?

そんな不安は不思議にも戦場が近づくにつれ徐々に薄れていった。

ヴァイスがバイクを飛ばして戦場へと向かっている中、

 

「ヴァイスさん!?」

 

ヴァイスは突如、声を掛けられてバイクを止める。

声がした方向にはシャマルが立って居た。

 

「ヴァイスさん!?どうして此処に!?貴方、確かケガで入院していた筈じゃあ‥‥」

 

シャマルが病院に居る筈のヴァイスを見つけて駆け寄って来る。

 

「しゃ、シャマル先生‥‥あの‥ですね‥‥えっと‥その‥‥これは‥‥」

 

まさか、此処で医務官のシャマルに見つかってしまうとはヴァイスとしては何かと都合が悪かった。

この場からバイクで逃げてもシャマル程の魔導師ならばすぐに捕捉されてしまい、病院へ連れ戻されるかもしれない。

ヴァイスがどう説明したらいいかとあたふたしていると、

 

「まさか、ヴァイスさん‥‥貴方、病院を脱走してきたんじゃないでしょうね‥‥?」

 

シャマルに図星を指されてギクッと身体を震わせるヴァイス。

そして、そんなヴァイスをジト目で見るシャマル。

 

「全く何を考えているんですか!?貴方は本来怪我人なんですよ!!」

 

ヴァイスのその態度を見て十中八九、彼が病院を脱走して来たと判断したシャマルはヴァイスに説教をする。

 

「で、でも、シャマル先生。俺らよりも若い奴等が今、必死になって戦っている中、呑気に病院のベッドでおねんねしている訳にはいかないッスよ。相手はマジでヤバく危険な連中なのはシャマル先生も知っているでしょう!?」

 

「それは‥そうですけど‥‥」

 

「シャマル先生と怪我人(俺)の2人を足して1.5人‥敵1人には十分勝てるでしょう?今は少しでもコッチの戦力が必要な大事な時ですから、今回だけは大目に見てもらえませんか?」

 

「まったく‥‥ホントに今回だけですからね‥‥」

 

シャマルはヴァイスの言葉に呆れはしたが、確かにヴァイスの言う通り、今は1人でも味方の戦力が欲しい所であった。

 

「あまり無茶はいけませんよ。貴方は怪我人なんですからね。その事を忘れないでください。いいですね?」

 

医務官としては心苦しいがシャマルは渋々と言った様子であるが、ヴァイスの戦線復帰を一時的に認めた。

 

「りょ、了解です。さっ、乗って下さい」

 

ヴァイスはシャマルをバイクの後ろに乗せて六課のFW陣が戦っている戦場へと向かった。

そして、再開発地区において1棟のビル全体が不自然に結界に包まれているのを目撃した。

 

「あれは‥‥!?」

 

「多分、敵の仕業ですね‥‥」

 

「それじゃあ、あのビルの中に六課の誰かが‥‥」

 

「恐らく‥‥それと敵もね‥‥」

 

あれだけの大規模な結界を無人のビルに張る訳がなく、六課のFW陣であそこまで大規模な結界を張れる者も居ない。

となれば、ビルの中には敵の戦闘機人と六課の誰かがおり、ビルの中で戦っている筈だ。

あの結界は恐らく逃走防止の為に張られたものだろう。

敵に気づかれない様にもう少し現状を確認できる位置へと移動するヴァイスとシャマル。

そして、他のビルから結界が張られたビルを見ると、そのビルの屋上に1人の戦闘機人の姿を確認できた。

 

「あれは確か、オットーとか言う戦闘機人」

 

以前六課のミーティングの時に議題に上がり獄寺が男の子と間違え銀時が、下ネタが含まれるが初見で女子と見破った戦闘機人だったので2人は印象に残っていた。

 

「周りに護衛のガジェットや他の戦闘機人がいない‥‥妙ね‥‥」

 

シャマルはオットーの傍に他の戦闘機人やガジェットが居ない事に不自然を感じた。

議題ではオットーは後方支援型の戦闘機人であると推察されたので、ああしてビル1棟に結界を張っているのであれば、集中力はかなり使うはずでありオットー自身もそう簡単にはあの場からは動けず、素早く攻撃手段には移れない筈。

それにも関わらず自分の傍に護衛を立てないとは、此方側を舐めているのか?

それとも何か罠があるのだろうか?

シャマルがそう思っていると、

 

「いや、シャマル先生‥奴にはちゃんと護衛がいますぜ‥‥」

 

「えっ?」

 

ヴァイスは狙撃手として匂いを感じていた。

同じ狙撃手の匂いを‥‥

オットーの護衛をしているのはあの時‥隊舎襲撃時に自分と戦ったあのディエチとか言う戦闘機人。

シャマルも探知魔法を使うと確かにヴァイスの言う通り、もう1人の戦闘機人の反応を確認した。

のこのことオットーの前に姿を見せて彼女に攻撃を仕掛けようものなら忽ちディエチの狙撃の的になる。

オットーを倒し、ビルの中の味方を助けるにはまず、オットーの護衛をしているディエチを倒すか彼女の持つ武器を破壊しなければならない。

 

「シャマル先生、狙撃手(ディエチ)の相手は同じ狙撃手である俺に任せて下さい」

 

「でも‥ヴァイスさん‥‥貴方は‥‥」

 

シャマルはシグナム経由でヴァイスのトラウマを知っていたし、その経緯から彼のカウンセリングをした事もある。

 

「大丈夫です‥‥」

 

ヴァイスは愛機であるストームレイダーをグッと握りしめてシャマルに言う。

 

「わかりました‥‥では、貴方を信じましょう。でも、無茶はいけませんよ」

 

「了解っス」

 

シャマルはヴァイスを信じ、作戦を伝えた。

そして、作戦を実行した。

オットーが結界を張っているビルの中でティアナ、チンク、ウェンディの戦闘が行われている中、

 

 

~ミッドチルダ 再開発地区 とあるビルの屋上~

 

 

「ん?」

 

ビルの結界を維持しているオットーの前に、

 

「管理局です。大人しく投降してください」

 

シャマルが姿を現した。

 

「投降?‥‥すると思っているの?」

 

オットーは無表情ながらも余裕の様子だ。

ディエチがオットーの前に立つシャマルにイノーメスカノンの銃口を向けた時、別方向から魔法弾が飛んできてイノーメスカノンの砲身に当たった。

 

「っ!?」

 

ディエチが、魔法弾が飛んできた方を見ると其処にはストームレイダーを構えているヴァイスの姿があった。

シャマルとヴァイスの作戦はシャマルが囮となりオットーの前に姿を現し、シャマルを狙ったディエチの武器をヴァイスが使用不能にしてオットーを捕まえる。

その後、2人でディエチを捕らえると言う作戦だった。

 

「アイツはあの時、ルーテシアお嬢様のガリューにやられた筈じゃあ‥‥」

 

ディエチとしては六課襲撃の際、ガリューによって重傷を負ったと思っていたヴァイスが戦線に出ていた事はディエチにとってはあまりにも予想外な事だった。

イノーメスカノンが壊れ、ディエチからの援護がなくなったオットーであるが、オットー自身、まるっきり戦えない訳ではない。

 

(ディエチ姉さまからの援護が来ない‥‥まさか、別の局員と接敵したのか‥‥)

 

(くっ、此処はやむを得ない‥‥結界を一時解くしかない)

 

オットーはディエチからの援護がなくなった為、自身でシャマルの相手をする事になり、ビルを覆っていた結界を一時解くことにした。

しかし、オットーのこの行動がビルの中で戦っていた姉妹達の戦況に大きな影響を与えてしまった事をこの時の彼女は知る由もなく、彼女がそれを知ったのはもっと後になってからの事だった。

結界を解いた後、ビルの中で何かが崩れる様な音がしたが、オットーはビルの中で戦っているのがチンクとウェンディである事から特に気にする様子はなかった。

ティアナを片付けるためにチンクがISを作動させたのか、それともウェンディが中で砲撃でもしたのだろうと思っていたのだ。

もし、この時オットーがビルの中のチンクとウェンディに自分の置かれた状況を説明したら戦況は変わっていたのかもしれない。

だが、チンクならばたかが魔導師1人相手に負ける筈が無いと言う思い込みがビルの中の戦況に大きな影響を与えていた。

 

「IS・レイストーム」

 

オットーがシャマルに向かって風の一陣・レイストームを放った。

それに晒されてシャマルは大きく吹き飛ばされそうになる。

両手で防御するシャマルの腕に突如、鋭い痛みが生じる。

 

「っ!?」

 

シャマルのバリアジャケットが深く切り裂かれ、腕からは血が流れ出ている。

 

「ドクターの協力者の中に『カマイタチ』とか言う風の技を使う人が居てね‥‥その人の技を真似てみたんだけど、なかなか使えるね」

 

オットーはシノビと同じかまいたちをシャマルにぶつけて来た。

しかし、本来のかまいたちは刃物で切られたような鋭い傷を受けるが、痛みはなく、傷からは血も出ないものなので、オットーのかまいたちは雑なかまいたちと言える。

 

「くっ‥‥」

 

シャマルはオットーのまさかの攻撃に驚きつつも後方支援型と思って油断した自分を恥じた。

その頃、ディエチを相手にしていたヴァイスは‥‥

 

「おいおい、マジかよ‥‥アイツ、とんでもねぇモノを持ち出しやがって‥‥」

 

ディエチの装備を見て顔を引き攣らせていた。

イノーメスカノンが壊されディエチにはもう武器が無いと思っていたが、彼女はもう1つの武器を用意していた。

 

「隠れても無駄だよ。諦めて出てきたら?」

 

ディエチはバックから回転式機関銃(チェーンガン)、バルカンスマッシャーを取り出してソレを構えながらヴァイスを探していた。

ディエチはギンガやスバル、ノーヴェの様にローラーブーツを穿いている訳でもなく、ウェンディの様にライディングボードに乗っている訳でもないが、やはり戦闘機人であり、あの重そうな回転式機関銃を持ちながらも動きは俊敏である。

それにヴァイスと同じ狙撃手と言うだけあってこっちの狙撃ポイントを見抜く力がある為、ヴァイスは狙撃でディエチをなかなか仕留めきれずに接近を許してしまった。

ディエチのバルカンスマッシャーはその見かけから分かる様に弾の発射速度が半端ない。

しかもイノーメスカノンと同じく魔力と実弾の両方を使用できるため、弾切れもあまり期待できない。

 

「こりゃあ、ちょっとやべぇかもな‥‥」

 

顔を引き攣らせたヴァイスの頬を一筋の冷や汗が流れた。

ヴァイスは一か八かの賭けでオットーが結界の張っていたビルの中へと逃げ込む。

このビルには敵がいるが、味方もいる。

うまくすればその味方と合流して敵を倒せるかもしれない。

だが、このビルの味方が既に負けていたら‥‥

まだ、交戦中だったら‥‥

その場合、此方が不利になる可能性が大きかった。

ヴァイスがその辺に落ちている小石を拾い、遠くへと放り投げる。

すると、小石はカツンと音を立てて地面にぶつかる。

小石の落ちる音を聞いて、

 

「其処だ!!」

 

ディエチがバルカンスマッシャーを乱射する。

辺りには回転式機関銃の回転音と轟音、破壊音、薬莢の排出音が辺りに響く。

 

「怖ぇ‥‥あいつ、トリガーハッピーかよ‥‥」

 

バルカンスマッシャーを乱射するディエチを見てヴァイスは思わず身震いする。

ヴァイスはバルカンスマッシャーを乱射するディエチに向け、ストームレイダーを向けディエチを討ち取ろうとしたが、あの轟音の中、僅かな物音を聞きつけたディエチは小石が囮だと気づき、バルカンスマッシャーの銃口をヴァイスへと向ける。

 

「そこっ!!見つけたぁ!!」

 

「やべっ!!」

 

ヴァイスは急いでその場から離れ、床に空いていた穴の中へと飛び込む。

その直後、さっきまでヴァイスが居た場所には何十、何百発のバルカンスマッシャーの弾が撃ち込まれた。

穴から下の階に逃げたヴァイスは直ぐにその場から離れる。

 

「っ!?」

 

ただ、その時の衝撃でヴァイスの傷口が開いてしまった。

ヴァイスが穴から下の階に降りてから直ぐに、

 

ジャリッ‥‥スタッ‥‥

 

ディエチも降りてきた。

 

「ん?血の跡‥‥」

 

床にはヴァイスの傷口から落ちた血の跡が残っていた。

ディエチは床に落ちている血の跡でヴァイスを追いかけた。

 

「ハァ‥‥ハァ‥‥くっ‥‥やべぇな‥‥まさか、こんな時に傷口が開くなんて‥‥」

 

壁に寄りかかりながら、手で自分の傷口を抑えるヴァイス。

彼の手には真っ赤な血が付いていた。

傷口を抑えていた包帯にジワリと彼の赤い血が滲みだす。

 

「くそっ、こりゃ早いうちに決着をつけねぇと‥‥」

 

しかし、自分は手負いで相手は無傷。

隠れてやり過ごそうにもディエチは血の跡で自分の位置を割り出してくる。

絶対的に不利なヴァイスと絶対的に有利なディエチ。

 

「何か‥‥何か手は‥‥何か‥‥」

 

ヴァイスが何か逆転する手はないかと辺りを見回しながら作戦を考えていると、

 

「ん?アレは‥‥」

 

彼は床に落ちている何かを見つけた‥‥。

 

 

 

 

ヴァイスはあるフロアの柱の影からそのままディエチを狙撃しようとする。

彼はこのフロアでディエチと決着をつけるつもりだったが、ストームレイダーの銃身が長く、柱からその銃身が出てしまう。

その隙をディエチは見逃す事無く、ヴァイスが隠れている柱に向け、バルカンスマッシャーを乱射する。

その内の1発がストームレイダーの銃身に当たり、ヴァイスの手からストームレイダーが弾き飛ばされてしまう。

 

「くっ‥‥」

 

「もう、武器は無いみたいだし、降参したら?下手に動いても傷口が開いて苦しいだけだよ」

 

「ちっ‥‥」

 

ヴァイスがストームレイダーを拾いに出ると、ディエチはバルカンスマッシャーを撃つ。

しかし、それはほとんど牽制でヴァイスには掠り傷程度の傷しか負わせていない。

ヴァイスはストームレイダーを拾うのを断念して掠り傷の傷口を押えながら柱の陰に再び隠れる。

明らかにディエチは自分の絶対的有利な立場からヴァイスをじわじわといたぶっている。

 

「傷口はどんなだ?貴方は此処までよく戦ったよ。あまり苦しませるのも可哀想だから、1発で眉間をぶち抜いて楽にしてあげるよ」

 

「だったら、こっちへ来て確かめてみたらどうだ?」

 

ヴァイスの言葉に何か裏があるのではないかと警戒するディエチ。

しかし、相手は手傷を負っているし武器も弾き飛ばした。

ヴァイスが自分に勝てる筈がない。

そう思っていたのに‥‥絶対的に有利なのは自分なのに‥‥

それなのに何故、彼は降参もせず、あんな挑発的な言葉を口に出せるのか?

ヴァイスの行動が理解できず、ディエチの中にこれは何かの罠なのではないかと言う不安が過ぎり始めた。

 

「さあ、どうした?怖いのか?」

 

「っ!?」

 

「恐れを知らぬ奴かと思っていたら、戦闘機人の癖に随分と怖がりなんだな?そのデッカイ銃は見せかけか?」

 

「いいよ、やってあげる。私は戦闘機人‥‥私に恐怖なんか無い!」

 

ヴァイスに挑発されて彼に近づくディエチ。

そして柱に寄りかかっているヴァイスにバルカンスマッシャーの銃口を向ける。

 

「さぁ、最後のお祈りは済んだ?それじゃあね、バイバイ」

 

ディエチは勝利を確信して引き金に指をかける。

その時、

 

「‥‥くっくっくっ」

 

ヴァイスは俯きながら突然笑い出した。

 

「恐怖で可笑しくなった?」

 

「いや、ディエチ‥お前は狙撃手失格だよ」

 

「むっ!?」

 

「お前は、余裕ぶちかましてまんまと俺の罠にはまっちまったんだからな!!」

 

「減らず口を!!」

 

ディエチが引き金を引くその瞬間、

 

ガシッ

 

「なっ!?」

 

ヴァイスは左手でバルカンスマッシャーの銃身を掴み、右手にティアナのクロスミラージュをディエチの額に突きつけ、ゼロ距離からディエチを撃った。

当然、非殺傷設定だったので、クロスミラージュのヘッドショットを受けてもディエチは死んではいない。

 

「ど、どうして‥‥お前の武器は‥‥確かに‥‥」

 

ディエチはヴァイスが何故、ティアナのクロスミラージュを持っているのかを理解する前に意識を失った。

 

「ふぅ~‥‥まさか、あの場にティアナ嬢ちゃんのコレが落ちていなかったらヤバかったな‥‥でも、これが落ちていった事はこのビルのどこかにティアナ嬢ちゃんが居るって事か‥‥」

 

ヴァイスはあの時、このビルの床に落ちていたティアナのクロスミラージュを見つけて、それを拾っていたのだ。

ディエチを倒したヴァイスはクロスミラージュをポケットにしまい、ストームレイダーを待機モードにして、ディエチを担ぐとティアナを探しに行った。

 

 

ヴァイスがディエチを倒したその頃、ビルの屋上では‥‥

 

「くっ‥‥」

 

シャマルがオットーの手によってボロボロになっていた。

オットーのかまいたちによりバリアジャケットは悉く切り裂かれ、身体は傷だらけで彼方此方から出血している。

 

「いいかげん飽きたから、今度はその首を飛ばして一気に終わりにしてあげる」

 

オットーは両腕に風を纏い、シャマルへと迫る。

その時、オットーとシャマルの間のビルの床が陥没し、粉塵が巻き上がる。

突然の出来事にオットーは進撃を止めて、後方へと飛ぶ。

 

「大丈夫ですか?シャマルさん?」

 

「えっ?え、炎真君?」

 

其処には白蘭との戦いを終え、はやての下へ向かっていた筈の炎真がシャマルの前に立っていた。

 

「ど、どうして此処に?」

 

「敵を倒してはやての所に行こうとしていたんですが、急にここから戦闘音がしたから駆けつけたんです。僕は、シグナムさん達のお陰で余力を残していましたので‥‥」

 

「そう、シグナムが‥‥」

 

余力があると言う炎真だが、全くの無傷と言う訳ではない。

身体の彼方此方には白蘭との戦闘によって負った傷や怪我がある。

 

「今更、怪我人が1人来て、何が‥‥」

 

オットーは怪我をしているシャマルと炎真が来ても何も戦況には影響しないと言う。

しかし、

 

「いや、例え怪我人でも1人対2人じゃ、ちょっと訳が違うぞ‥‥オットー」

 

「くっ、負け惜しみを‥‥そんな下手な挑発で僕が狼狽えると思ったの?」

 

炎真は、自分達は決して不利ではなく、むしろ不利なのはオットーの方だと言い放つ。

彼の言葉にオットーは思わず顔を歪める。

 

「君の言う事がただの負け惜しみである事を証明してやる。そして、僕が2人ともあの世へ送ってあげるよ」

 

オットーは再び両腕に風を纏うと炎真とシャマルへと迫っていった。

炎真もまた大地の炎を灯してオットーとぶつけ合う。押し合う風と炎が混じり合い弾け合う。

オットーは力じゃ押し切れないと分かったらすぐにレイストームで生成した魔法弾を時間差で発射させた。

 

「くっ」

 

炎真は躱すことができずにモロに食らってしまった。

砂塵が舞いビルの屋上が崩れ炎真とオットーが落ちてしまう。

 

「炎真君。大丈夫!?」

 

シャマルは炎真を心配で下を覗き込んだ。下では炎真は瓦礫の上に仰向けに倒れ反対にオットーは綺麗に着地していた。

 

「だ、大丈夫‥‥です」

 

口では大丈夫と言っているが、正直大丈夫ではないだろう。先程の白蘭との戦いで死ぬ気の炎は殆ど使ってしまい、それだけでもピンチなのに今にも倒れそうなぐらいダメージも溜まっていた。

そんな炎真の状態をシャマルはおろかオットーも気づいている。

 

「貴方、立っているのもやっとなんでしょう?今ここで降参してくれるなら楽に殺してあげる。僕は君達、管理局ほど非道ではないからね」

 

非道ではないと言っているにも関わらず「殺す」と言う時点でかなり酷いと思う。

 

「無駄に力を誇示して自分の感性を押しつける人間、敵である僕達より強い人が現れれば僕達なんて眼中に無い。そんな貴方達があの子を追い込んで別人の様にした‥‥お前達のせいで、あの子は‥‥あの子は‥‥」

 

「あの子?一体誰の事を‥‥?」

 

炎真にはオットーが誰の事を言っているのか分からないけど、ほぼ無表情だったオットーの表情が崩れ、心境が滲み出た彼女の態度で、どれ位「あの子」が彼女にとって大事な人かは分かった。

更にISで炎真を縛ろうとしてきたので炎真も力を振り絞りながら重力をかける。

 

「お、重い‥‥」

 

いつもの炎真ならこんなビルを貫通させるぐらいの重力をかけられるのだが炎の限界なのかオットーはなかなか膝をつかない。

だがそれで十分だ。

炎真は上にいるシャマルに、

 

「シャマルさん今です。」

 

「クラールヴィント!縛って!!」

 

シャマルは炎真の合図をしてバインドでオットーを縛り上げた。

 

「し、しまった!!」

 

更に炎真はその虚をつき、オットーの背後に回り込んで首筋を叩いて意識を落とさせた。

 

 

シャマル、炎真がオットーを倒したその頃、ディエチを肩に担ぎながらビルの中でクロスミラージュの反応を頼りにティアナを探しているヴァイスは、床で倒れているティアナを見つけた。

ティアナは意識を失っているが、呼吸はしているので生きている事が分かる。

そして、ティアナの傍には戦闘機人らしき2人の少女が倒れているのも見つけた。

 

(ティアナの嬢ちゃんは2人も相手にしていたのかよ‥‥)

 

起き上がってはいないが、この場にティナアと戦闘機人2人が倒れている事からティアナが2人の戦闘機人を相手にしていた事が窺えた。

此処にはティアナを含め、3人倒れている。

しかも今自分は肩にはディエチを担いでいる状態‥‥。

しかし、今の自分が無理をしてでも担げるのはあと1人‥‥

ヴァイスはシャマルに念話で現状を伝えた。

すると、炎真が向かうと言う返信が来たので、ヴァイスは炎真が来るのを待った。

そして、炎真が来ると彼はティアナとチンクを肩に担ぎ、ヴァイスはウェンディを担いでシャマルの下へ戻った。

担ぎ方は雑だが、この際仕方がない。

それに当人達は意識を失っているので文句が来る事は無いだろう。

ヴァイスと炎真がシャマルの元に向かっている最中、

 

「ヴァイスさん血が‥‥」

 

炎真はヴァイスから出血している事に気づく。

 

「ああ、ちょっとドジっちまってな‥‥」

 

ヴァイスは小さな笑みを浮かべるがそれがやせ我慢である事はすぐに分かった。

 

「なんでそんな無茶を!?」

 

「お前ら、ガキ共がこうして頑張っているんだ‥‥大人の俺達もそれ以上の事をしねぇと示しがつかねぇだろう?」

 

「だからって‥‥」

 

「まっ、どの道この後シャマル先生のお説教が待っているんだ‥‥大目に見てくれ」

 

「‥‥」

 

炎真はウェンディとディエチを担ぐヴァイスを心配そうに見守りながらティアナとチンクを担ぎシャマルの元へと向かった。

 

 

暫くしてオットーはバインドで縛られてはいたがそこまで不自由のない状態で目が覚めた。

炎真はもうそこにはおらず代わりにザフィーラが座り込んでオットーの頭を乗せて枕代わりとなっていた。

 

「うっ‥‥」

 

オットーが目を覚ましたらシャマルが声をかける。

 

「あら?起きた?」

 

オットーはまだ頭が朦朧としているが、ただ此処が敵中である事に気づき無理に起き上がろうとする。

 

「あっ、まだ起きちゃダメよ。あまり目立った外傷はないけど意識がはっきりしないんでしょう?」

 

優しく声をかけるシャマルに対してオットーは反抗する様に無理にでも起き上がろうとする。

 

「敵に‥‥情など‥‥」

 

「戦えなくなった人を敵になんて認識しないわよ。」

 

「先程の男は‥‥?」

 

「炎真君はザフィーラと入れ替わりで仲間の救助に向かったわ」

 

炎真はダメージとスタミナ消費が激しかったためにシャマルが休んでいてと言ったので渋々シャマルの護衛も兼ねて一緒にいた。

だけどザフィーラが来たためにそれも御役御免になったかと思いきや、其処にヴァイスから連絡があったのでビルの中で伸びているティアナ達の救助に向かったのだ。

 

「ねぇ、炎真君が言っていた貴女の大事な人の事なんだけど‥‥」

 

オットーがシャマルの言葉にピクッと微かに反応した。

更にオットーは殺気立ってシャマルを睨みつけた。先程までの朦朧とした目だったが今は獲物を見つけた猛禽類のように睨みつける。

感情に疎い筈のオットーが此処まで『怒』の感情を露わにしたのはもしかしてコレがはじめてなのかもしれない。

 

「ディードに何かしたの!?ディードに何かしたのなら‥‥」

 

例え紅桜の力で別人の様になってしまったディードであったが、オットーにとってはスカリエッティや他のナンバーズよりもディードに対しては強い絆と信頼を抱いていた為に、ディードが酷い目に遭っていると言うのであれば、オットーは自分の命を懸けてでも報復する気満々であった。

 

「さっき私達の仲間が救護所に運んだって連絡が入ったわよ。身体の疲労が激しく衰弱しきっているけど命に別状はないみたい。多分他の人よりも身体が丈夫なんでしょうね」

 

シャマルからディードの様子を聞いたオットーから殺意が薄れていく。

 

「本‥当に‥‥?本当にディードは無事なの‥‥?」

 

「ええ」

 

幸いシャマルはディードの名前も姿も知っていた。なぜならフェイトとツナが遭遇した戦闘機人であり、六課襲撃の時にも相見えた。だからシャマルはディードの事を山本からオットーの話を炎真から聞いたらすぐにピンときた。

 

「‥‥分かった‥貴女を信じる‥‥」

 

オットーは大人しくシャマルに投降した。

やがて、ビルの中からティアナ達を肩に担いだヴァイス達が戻ってきた。

意識を失っているチンクとウェンディ、ディエチの姿を見て、オットーは、

 

(チンク姉様達までもが負けるなんて‥‥この戦い、ドクター‥いや、僕達の負けかな‥‥)

 

ディードの状況と姉達の敗北した姿を見て、自分達の陣営の敗北を悟った。

 

負傷者達は早速シャマルが診ると皆、負傷はしているが命には別条はない様子だ。

だが、

 

「だから、あれほど無茶をしてはダメだって言ったのに!!」

 

「す、すみません。シャマル先生‥‥って、イテテテテ‥‥もう少し優しくして下さいよぉ~シャマル先生」

 

「自業自得です」

 

ヴァイスは案の定シャマルに治療されながらお説教をされていた。

そこへ、管理局の災害ヘリが差し掛かる。

ヘリはビルの屋上に居るヴァイス達を確認すると屋上へと着陸する。

 

「アルト!?」

 

ヴァイスがヘリを操縦しているパイロットを見て思わず声をあげる。

ヘリを操縦していたのは六課にてヴァイスの助手を務めていたヘリパイロット見習いのアルトだった。

アルトもヴァイス同様、人員が足りない中、自分も何かできる事はないかと思った結果、こうして災害ヘリのパイロットを買って出たのだった。

アルトの操縦するヘリにティアナ達を乗せていると、ティナアが目を覚ます。

 

「こ、此処は‥‥」

 

「管理局の災害ヘリの中だ」

 

炎真がティナアに此処が何処なのかを伝える。

 

「っ!?戦闘機人達は!?」

 

横になっていたティアナがガバッと上半身を起こしてチンクとウェンディの行方を尋ねる。

 

「大丈夫‥念の為拘束しているが、命に別状はない」

 

「そう‥‥良かった‥‥あっ、スバルは!?それに山本やキャロやエリオ、それに神楽や新八達も‥‥」

 

チンクとウェンディの事を聞いたティアナは一瞬ホッとした顔をしたが、この場に逸れた山本、エリオ、キャロ、スバルや神楽、新八が居ない事に気づき、彼らの事も尋ねる。

 

「山本とキャロちゃんは市街地に設けられた救護所にいるらしい‥エリオ君はフェイトさんの応援に‥‥スバルちゃん達は‥‥」

 

炎真はチラッとシャマルの方を見る。

すると、シャマルは頷き、スバル達の居所を探る。

スバルは戦闘機人とは言え、魔力があるので、シャマルは何とか探知する事が出来た。

彼女はこの近くで反応があったが動いていない為、倒れているモノと推測で来た。

スバルは何とか探知で来たが神楽と新八は非魔導師故か、シャマルの探知魔法では居場所を探知する事が出来なかった。

一先ずスバルは居場所が判明しているので、スバルの様子を見て、連れてくることになった。

 

「私が行こう‥‥」

 

ザフィーラが一言そう呟くと、彼は獣形態から人獣形態へと変わる。

人獣形態へと変わったザフィーラは筋肉モリモリマッチョマンのへんた‥‥男性となった。

それからほどなく、ザフィーラはスバルと彼女のすぐ傍で倒れていたノーヴェを肩に担いで戻ってきた。

神楽と新八の事が気になるが、これ以上ヘリには人員を乗せる事が出来ない為、心苦しく思うがヘリは発進して、市街地に設けられた救護所へと向かった。

 




ではまた次回。
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