【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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更新です。


標的85 鬼に芽生えた心の芽はやがて木となり花を咲かす

 

此処で時系列は少し時間を巻き戻す。

 

 

~sideギンガ~

 

 

ノーヴェと共にクラナガンへと侵攻していたギンガは突如、その侵攻速度を落とし、その場に立ち止まった。

 

「‥‥」

 

「ん?おい、どうしたんだよ?ファースト」

 

突然立ち止まったギンガに対してノーヴェは訝しみ彼女自身もその場に立ち止まる。

 

「‥‥いる」

 

「あん?」

 

ギンガは一言そう呟くと突如、予定されていた侵攻ルートから外れて1人で何処かへと行ってしまった。

 

「ちょっ、おい!!ファースト!!お前、どこ行くんだよ!?おい!!テメェ、何勝手な事をしてんだよ!!おい!!」

 

ノーヴェはギンガを呼び止めるが、ギンガはノーヴェの方を見る事無く足早に何処かへと行ってしまった。

 

「‥‥ちっ、勝手にしやがれ」

 

元々スカリエッティや上の姉達に押し付けられたギンガのお守役であったが、こうして管理局との決戦が始まった以上、自分に与えられた任務の方が最優先となる。

もうギンガがどうなろうとノーヴェにとってそれはもう知った事ではない。

それにギンガと模擬戦をしたノーヴェは今のギンガの実力を十分に知っている。

あの強さがあれば1人でも十分に管理局の魔導師相手には負けないと思っていた。

ギンガのお守はもう此処でお役御免だと判断したノーヴェは当初の予定通りの行動をとり、別ルートから侵攻している他のナンバーズと合流を図った。

合流した姉からお小言を言われてもルートを勝手に離れたギンガが悪いし、ギンガを追いかけるよりも今は管理局との戦いが優先される筈だ。

ノーヴェは、『自分は悪くない』と自分に言い聞かせてその場から去った。

 

その当初の行動をいきなり変更したギンガは市街地のある区画にてまるで人を待っているかのように静かに佇んでいた。

この宿主の身体が妙にざわつく‥‥

ギンガ‥いや、紅桜は本能的に何かを感じ取ったのだ。

この方向‥そして此処で待てば強者がやって来る‥‥

 

やがて‥‥

 

「よぉ、ギンガ。来てやったぜ」

 

「‥‥」

 

口に煙草を咥え、腰には日本刀を帯びた黒服に黒髪の男がギンガの前に姿を現した。

 

「へぇ~袴姿もなかなか似合うじゃねぇか‥」

 

その男は今の自分の服装を不敵な笑みを浮かべて褒める。

 

「‥‥」

 

「だが、お前にその腰のモノは似合わねぇ‥‥」

 

すると男は腰の日本刀を抜き、自分に迫って来るが此方も刀を抜き迫りくる男を迎え撃つ。

 

ガキーン!!

 

辺りに金属音が響く。

 

「はぁ~色男はあれやこれやと言葉でやるんだろうが、だめだ‥何も思いつかねぇ。だからよぉ‥ギンガ、見せてやるよ‥今までの俺を‥此処(ミッドチルダ)での俺じゃない。真選組副長、土方十四郎の全てをな!!」

 

男は覚悟を決めた顔で言い放つ。

 

「俺も‥‥そしてまがいなりにも今のお前も侍なんだ。剣に生き剣で語るのが侍の流儀だ。ならば、お前も全力でかかって来い!!ギンガ!!いや、妖刀紅桜!!」

 

この男の顔は見覚えがあった。

確かこの肉体を得たその時に心臓を貫いて殺した筈の男だ。

それが何故、今自分の目の前に居るのか?

殺した筈の男が生きている事が理解できない。

でも何となくだが察しはつく。

恐らくこの肉体の本来の人格意識があの時はまだほんの僅かに残っており、手加減でもしたのだろう。

あの時はまだこの肉体を得たばかりなので、完全な制御が出来なかった。

しかし、今は違う。

今度こそ確実にこの男を地獄に叩き落としてやる。

刀身があの男の熱い血を浴びたがっている。

だからこそ、自分はあの男の気配を感じ、此処へ来たのだ。

誇り高き侍の熱きその血を身体に浴び、そして刀身に吸わせて貰う為に!!

気がかりなのはこの身体の持ち主の意識である。

いずれはこの紅桜に食われ、消滅するだろうが、やはり、日がまだ必要だったのかこの肉体の本来の人格意識はまだ完全には消滅していない。

今は深層意識の中で眠らせている。

あの男と戦っている最中にこの肉体の本来の人格が起きないかだが、たかが人間如きがどう足搔こうが、この身体の本来の主の意識を起こすことなど不可能だ。

貧弱な人間の身体ではなく、戦闘機人と呼ばれる強靭な肉体に魔力、機動力、そしてこの手に握られている紅桜がある限り、この紅桜の勝利に揺るぎはない。

 

「でりゃぁぁぁぁ!!」

 

「‥‥」

 

ガキーン!!

 

大きな叫び声と共に刀と刀がぶつかり合う。

土方と紅桜によって身体を乗っ取られたギンガの戦いが始まった。

土方の刀が上から振り降ろされたらギンガは紅桜でガードする。

ギンガの方が、力が強いのか受け流すために後ろに飛び近くのコンクリートの破片を弾き飛ばした。

ギンガはそれを紅桜で斬り伏せていると、

 

「ギンガぁ!」

 

土方が突撃してきてギンガと交差すると。

 

シュ

 

真選組の制服に切れ目が入り、ギンガは肩から少し血が垂れる。

両者は腰をひねりお互い向き直して先に先手を取ったのは土方だ。

 

「貰った!!」

 

だが、ギンガは紅桜を持ってない方の手で‥‥リボルバーナックルが装備されている左手で土方の刀をはじき飛ばして紅桜を懐に入れようとすると、

 

「ふっ!!」

 

咄嗟に鞘で上にそらして上空一回転でギンガの顎に蹴りを入れて距離を取ろうとするがギンガはすぐに距離を詰めてきて、

 

「しまっ!!?」

 

完全にギンガの間合いに入り過ぎ、土方は腹に強烈な1発を決められビルにまで突っ込んでいった。

 

「がはっ‥‥」

 

土方はビルの壁を突き破りビルの中にまで追いやられ、ギンガも慎重に中に入り土方を探すが中にはもう影も形も見えない。

当たりを見ながら中を歩いていると柱から突如刀が伸びてきてそれを躱すと、

 

「ちぃっ、こいつでも当たんねぇのかよ‥‥」

 

土方はそのまま刀をふり抜きビルの柱を切り裂く。

対するギンガも柱を土方ごと斬ろうとするも刀のリーチが届かない。

土方もそれは分かっていたがこれは只の刀ではない紅桜だ。

普通とは違うからくり兵器であり妖刀だと言う事を‥‥

だが、この時だけは土方はそれをすっかり忘れていた。

 

「なっ!?伸びただと!?」

 

ブシュ!

 

突如、刃が伸びた紅桜の斬撃を受け、胸に大きな切り傷を負ってしまう。だが足を止めたらその時点で自分の死が確定する。すぐに立ち上がりギンガに斬り掛かる。

今の紅桜は伸びているためにこの狭い空間では不利の筈だ。

 

「ギンガぁぁ戻ってこい!!!」

 

しかし、ギンガはそんな事お構い無しに紅桜で自分軸に回転して辺りの障害物関係なく振り回した。

さながら彼女の攻撃は小規模な竜巻の様でビルの石柱など土方が居ようが居なかろうがお構い無しで斬れていた。

竜巻が止むと綺麗になった一帯を見たが土方はどこにも上下左右各種方向を見たが彼はいないだが感じる彼のこの人を突き刺す殺気が迫る。

 

「っ!?」

 

まさかと思い背後に回っていた紅桜の剣先を見るとそこには片膝をついた土方が刀を首から後ろに持って構えていた。

 

「ふっ!!」

 

すぐさま真上にやり、突き刺そうとするとギンガの腕を触手が覆って完全に突き刺さらなかった。

 

「ちっ、紅桜のヤロウ、どんどんとギンガの身体を侵食してやがる。おい、ギンガ聞こえてんなら返事をしやがれ!!お前は本当に強ぇんだ!!こんな妖刀に負けんじゃねぇ!!」

 

だが、その声も聞こえず彼の乗ったまま紅桜を壁にぶつけようとしたので一旦降りて土方はビルの2階に登った。ギンガも付いていくように上へと上がり、

 

「なぁ、ギンガ‥病院でテメェの妹に会ったぜ‥お前と違って妹の方はまだまだガキだな、精神的にも未熟で直ぐにでもぽっきり折れそうなぐらい弱そうに見えた‥‥ただ、お前に似て優しいんだろうな‥テメェの心配ばっかしていたぜ。ゲンヤのおやっさんもそうだ!!近藤さんも、総悟も、お前の帰りを首長くして待ってんだぜ!!」

 

ガン!

 

刀同士がぶつかるも今度は触手が土方を飲み込もうとしてきた。

土方はその触手に捕まり首を絞められる。

そのまま窒息死させるのかと思ったら触手は、

 

「ぐわぁ」

 

土方を放り投げた。

紅桜がどういった意思があって土方を絞殺さずに放り投げたのかは不明だが、土方を一思いに殺さずにじわじわといたぶって殺したかったのか?

それとも今度こそ、心臓に刃を突き立てて殺したかったのか?

はたまたその両方か?

真相は残念ながら不明である。

そして投げ飛ばされた土方は壁に激突した。ギンガはすぐに彼を追うがこれまでの戦闘でどうやら1階も相当ガタがきているらしい。

まぁ、無理もない。元々ここら辺にある建物は全て再開発地区にある為、廃墟となり、風雨にさらされ続け、更には土方とギンガがビルの内の柱をほとんど斬り倒してしまったのだから‥‥

ビルの崩壊にギンガは巻き込まれ床が砕けて落ちそうになる。

 

「っ!?」

 

「ギンガぁ!!」

 

ガシッ!

 

土方が彼女の腕を取り、ギンガは何とか落ちずに済んだ。

今までの土方十四郎からは考えられない土方らしい行動‥否‥以前も一度あった。

それは真選組内部に攘夷志士との繋がりがある反土方派のグループが真選組内で謀反を起こし近藤の殺害を計画して真選組を乗っ取ろうとした時だ。

この時の主犯、伊東鴨太郎にも彼は情けをかけ仲間として助けようとした。

でもそれは自分の大将である近藤が彼を斬ろうとしなかった事、最後は武士らしく剣によって斃れるべきだという情けも少なからずある行動だったのだろう。

だが今回の場合、ギンガは自分に敵意が向いていようと彼が己の意思だけで彼女を助けようとしている。

そんな事をつゆ知らないギンガは紅桜で突き刺そうとしてきたがその攻撃は土方の頬と肩をかすり土方は、

 

「でりゃぁぁぁ」

 

引っ張りあげて投げ飛ばして自分の刀を拾い上げ、

 

「本当、何で俺が‥‥くそっ、こんな所、他の隊士に見られりゃ士道不覚悟で切腹もんだぜ」

 

息を切らしながらそう言う彼の顔は笑っていた。

 

両者は別々の方向に走り出して石柱を挟みながら斬り合い火花を散らしてギンガが大きく振りかぶると土方は転がりながら躱して背後に回り込んで斬り掛かると背面跳びで躱して背中を斬る。

 

「ちぃ!」

 

背中を抑えて座り込んでいると、

土方は次のギンガの行動に戸惑うなぜならギンガは下に降りていった。

 

「何だ?いきなり下に降りて‥‥?」

 

だが、次の瞬間大きな音がしてギンガがやりたいことが分かった。

 

「あの野郎、このビルごとやるのかよ!?」

 

そう彼女はあと数本の支えでぎりぎり立っていたこのビルの石柱を切り落としてビル諸共、土方を亡きものにしようとしていた。

ギンガはすぐさま外に出て被害の受けない場所まで下がり崩壊していくビルを眺めていた。

ビルが完全に崩壊していき、ただの瓦礫の山になったのを確認して彼の生死の確認、または瀕死の土方にトドメを刺そうとして瓦礫の山に行こうとすると、

 

タッタッタッタッタッ‥‥

 

キン!!カン!!カン!!キン!!

 

「っ!?」

 

横を向くと土方が飛び出してきて彼の連続の太刀を受けきり両者はザザっと地面をすりながら後ろに下がる。

土方はどうやらギンガの目的がわかった瞬間に2階から飛び降りてビルの崩壊に巻き込まれず、尚且つギンガに見つからないようにとその場から離れギンガに奇襲をかけたようだ。

だが、その奇襲もギンガには致命打を与える事は出来なかった。

 

(ちっ、ギンガの奴、俺の動きに対処しやがった‥ギンガ相手に模擬戦をした時同様、コイツの反射神経は相変わらず抜群だな)

 

ギンガの斬撃を皮一枚掠らせて避けながら、土方は心の中で悪態を吐く。

ここまで土方が追いつめられている原因は、間違いなくギンガ本人だ。

ミッドに流れついて、ギンガとパートナーを組んでから土方はギンガとは何度も模擬戦をしていた。

紅桜はギンガの身体を乗っ取るだけではなく、ギンガがこれまで経験して来た土方との模擬戦の記憶さえも読み取り、土方の行動パターンを学習し始めた。

今避けられているのは、土方が模擬戦でギンガの相手をしてきて、彼女の癖をなんとなく掴んでいる事とこれまで攘夷志士相手に潜って来た修羅場で経験して来た侍としての本能と勘によるものだ。

しかし、それもいつまでも長く続きはしない。

土方の受けるダメージは徐々に‥そして確実に彼の事を蝕んでいき、体力は消耗されていく。

 

「ちっ、滅茶苦茶やりやがる。おい、ギンガ!!んな事やってどんだけ始末書を書かねぇと行けねぇと思ってんだ!?いい加減、さっさと戻ってこい!!これ以上、始末書の量を増やそうとすんなよ!!」

 

(くそっ、マジでやばいぞこりゃ‥早くしねぇとギンガの身体が完全に紅桜に乗っ取られちまうかもしれねぇ‥‥)

 

あとどれくらいのタイムリミットがあるのか分からない為、焦る土方。

ギンガが紅桜に身体を乗っ取られてからそれなりの時間が経っている。

あまり悠長に時間をかけているとギンガの意識が完全に消えて身体は紅桜に乗っ取られて、紅桜本体を壊してもギンガが元に戻らない可能性もある。

事実、紅桜は先程の土方の奇襲に関してもギンガの記憶を読み取って難なく対処していた。

もし、ギンガの身体、意識が紅桜に完全に乗っ取られてしまい、その後で紅桜を破壊した場合、ギンガは精神崩壊を起こして廃人になってしまうかもしれない。

だが、土方の焦りなど知る筈もなく彼女は気にせずに刀を振るう。

 

「おい、ギンガ!!いつまでお前の大事な身体を妖刀なんかに貸しているつもりだ!?いい加減に早く戻って来い!!ギンガァァァ!!」

 

土方は刀を振りつつ必死にギンガを呼び続けた。

その頃、ギンガの深層意識の中では‥‥

ギンガの身体には幾つもの黒い紐状のモヤが彼女の身体を十字に縛り付けていた。

黒いモヤに縛られているギンガはぐったりとして意識を失っていたが‥‥

 

うっ‥‥

 

此処は‥‥何処‥‥なの‥‥

 

私は‥‥確か‥‥

 

ギンガが自らの記憶の最後の出来事を思い出そうとしていると、

 

「‥‥ガ!!」

 

ギンガの意識がうっすらと覚醒すると、外から声が聞こえて来た。

 

「ギ‥‥ン‥‥ギンガァァァ!!」

 

誰‥‥?

 

私を呼ぶのは‥‥誰‥‥?

 

「ギンガ!!戻って来い!!」

 

‥‥トシ‥さん?

 

ギンガは重い瞼を開けると、自分と戦っている土方の姿が目に映った。

それはまるでテレビの画面を見ているかのような感覚であるが、残念ながらそれはまぎれもない現実で、土方は必死に自分に声をかけながら戦っている。

自分の身体なのに言う事をきかず、自分の身体は土方を傷つけている。

 

トシさん!!

 

自分の斬撃で傷つく土方の姿を見て、覚醒するギンガの意識。

しかし、黒いモヤは強力なバインドの様に自分の身体をきつく縛りつけており身動きが取れない。

 

うっ‥くっ‥‥このっ‥‥

 

ギンガは身体をよじらせ、黒いモヤの呪縛から逃れようと必死にもがく。

 

トシさん!!トシさん!!

 

何度も土方の事を呼び続けながら身体を縛っている黒いモヤのバインドを解こうともがくギンガ。

ギンガの意識が覚醒し、紅桜の呪縛から逃れようともがき始めた時、外で行われているギンガと土方の戦いでも変化があった。

先程まで鋭い攻撃をしていたギンガの動きが最初と比べると動きも攻撃も鈍くなり始めた。

土方はギンガのこの動きを見逃さなかった。

 

(ふっ、どうやら、ギンガの奴が漸く起きたようだな‥‥ったく、寝すぎだっつぅの‥あの寝坊助が‥‥)

 

動きが鈍くなったギンガを見て、やはりギンガはまだしぶとく生きていた事、

そしてそのギンガの深層意識の中で彼女の意識が覚醒し始めた事に確信を持つ土方。

だが、いつまた紅桜がギンガの意識を乗っ取るかわからない。

ギンガの意識が戻り始めたこの時が絶好のチャンス。

 

「悪ぃなギンガ、余裕も時間も無いから此処からは加減はできねーぞ!!」

 

多少、荒事やゴリ押しになってでもギンガを元に戻す。

土方にとってギンガを取り戻す最後の戦いが始まった。

 

「いくぞ!!ギンガァァァ!!」

 

刀を構えてギンガへと向かっていく土方。

一方で、ギンガの方も深層意識の中で必死に戦っていた。

黒いモヤはギンガの意識を再び眠らせようと、ギンガがもがく度に彼女の身体に深くめり込み身体は底なし沼に沈むかのように黒いモヤの海に沈み始める。

血は出ないが、黒いモヤのバインドがめり込む度にギンガの身体に電流を流されたかのような激しい痛みが体中に走り、思わず意識を失いそうになるが、土方が外で自分の身体と必死に戦いながら、意識の中に居る自分に必死に呼び掛けて、自分の帰りを待っている。

此処で意識を失う訳にはいかない。

意識を失えばもう二度と元には戻れず、目を覚ます事はない。

土方やスバル、ゲンヤ達の下へ戻れなくなる。

 

うっ‥‥くっ‥‥うぅ‥‥う…あ……ああああああああああああああああっ!!

 

苦しむ声をあげ黒いモヤを無理矢理振りほどこうとするギンガ。

やがて、左腕がモヤからの拘束を脱する。

 

外の戦いはギンガが意識を取り戻した事、そして左腕をモヤから脱した事で、完全に土方に傾きつつある。

殺人兵器だったギンガの剣撃は真選組の新米隊士並に衰えており、後は完全にギンガの意識が戻ったら、紅桜をヘシ折るだけだ。

 

「ギンガ!!戻れ!!戻って来い!!」

 

うっ‥‥ああああああっ!!‥‥出ていけ!!

 

私の中から‥‥‥出ていけぇぇぇ!!

 

自由になった左手でギンガは右手に絡みつくモヤを引き剥がし、両手で身体に絡みついている黒いモヤを引き剥がす。

 

「ギンガァァァ!!」

 

「うっ‥くっ‥‥トシ‥‥さん‥‥い、いまの‥‥うち‥です‥‥」

 

土方に声をかけられるくらいギンガの意識が漸く表に出てきた。

金色だった筈のギンガの目は左目がギンガ本来のエメラルドグリーン色の目になっている。

そしてギンガはあの時の市街戦同様、左手で紅桜を持つ右手を抑え、紅桜の動きを牽制する。

だが、紅桜もこのままギンガに意識を取り戻されるのを防ぐため、触手を左手に絡ませて引き剥がそうとするのと同時に首にも巻き付けて締め付ける。

ギンガは触手で首を絞められている事と紅桜に意識を再び乗っ取られまいと苦痛で顔を歪めながらもこのチャンスを逃さない為にも左手でグッと紅桜を抑える。

土方はギンガが必死の思いで作り出してくれたこのチャンスを見逃す事無く、

 

「うおりゃぁぁぁぁぁー!!」

 

土方の渾身の一撃を紅桜の刀身へと当てると、

 

ベキン!!

 

と、音を立てて紅桜は折れ、その瞬間、ギンガの身体から黒い瘴気が抜けていき、触手はまるで氷が溶けるようにドロドロと溶け出し、ギンガの首と左手は解放される。

そして瘴気が完全に抜け切ると、糸が切れたように崩れ落ちるギンガ。

 

「ギンガ!!」

 

土方はそんな彼女に駆け寄って彼女の体をそっと抱き止める。

 

「ギンガ!!おい、しっかりしろ!!」

 

「うっ‥トシ‥さん‥‥?」

 

「ギンガ!!大丈夫か!?」

 

「なんか‥‥からだ‥‥じゅうが‥‥いたい‥です‥‥それに‥あたまも‥‥ぼぉっと‥‥して‥‥なんだか‥‥とても‥‥ねむい‥‥です‥‥」

 

ギンガは目を開けているのもやっとの感じで土方に自分の状況を伝える。

 

「もういい、ギンガ‥少し休め‥‥お前が起きるまで俺が傍に居てやるから」

 

「‥‥はい‥すみませんが‥‥そうさせて‥も‥‥らい‥‥ます‥‥」

 

土方にそう言われ、ギンガは安心したかのように静かに目を閉じた。

ギンガは目を閉じているようだが、胸はちゃんとゆっくりと上下しているところを見る限り心配する様な事態にはなっておらず、彼女はただ単に眠っているだけの様だった。

土方は眠るギンガの姿に安堵の息を漏らし、右手でギンガの頬をそっと撫でる。

 

「ったく、心配させやがって」

 

土方の頬は自然と小さく緩んだ。

 

それから暫くして‥‥

 

「うっ‥‥うーん‥‥」

 

ギンガが目を覚ました時、彼女は土方の背中に背負われていた。

 

「と、トシさん!?」

 

「ん?おう、やっと起きたか?ギンガ」

 

「えっ‥‥あ、あの‥‥」

 

何故自分が土方に背負われているのか状況が掴めない。

 

「今、救護所に向かっている最中だ‥‥それまで大人しくしていろ‥‥」

 

土方は振り返る事無くジッと前を見ながらギンガに状況を説明する。

 

「‥‥トシさん」

 

「ん?」

 

ギンガは土方の背中に顔をうずめて土方に声をかける。

 

「私‥‥覚えているんです‥‥おぼろげながらも‥‥トシさんに酷い事をしたことを‥‥」

 

恐らくギンガは紅桜に乗っ取られた直後の事を言っているのだろう。

 

「‥‥そうか」

 

「意識は薄っすらあるのに、自分の身体なのに、何かをすることができなくて。私の意思とは関係なく身体が動いて、自分の身体なのに自分のじゃないみたいで‥‥すごく怖かったです‥‥」

 

ギンガは身体を震わせながら、紅桜に体を乗っ取られて居た時の事を語る。

 

「だが、お前のその意識が残っていたからこそ、俺はこうして生きている‥‥そして紅桜をへし折る事も出来たし、お前を救う事が出来た‥‥やっぱ、お前は大した女だよ‥‥」

 

「‥‥」

 

土方がギンガに見えない様に前をジッと見つつフッと思わず口元を小さく緩め笑みを零す。

しかし、ギンガはそんな土方の様子に気づかず、思いつめた顔である。

 

「‥‥トシさん」

 

そして、ギンガは意を決した様な表情で土方に再び声をかける。

 

「ん?」

 

「‥‥こんな状況ですけど、聞いてくれますか?」

 

ギンガは土方をギュッと強く抱き付いて彼の耳元で囁く。

 

「ん?なんだ?」

 

「‥‥私‥トシさんの事が好きです‥‥1人の男の人として‥‥」

 

「‥‥」

 

ギンガは勇気を振り絞って土方に告白をする。

それを土方は黙って聞いている。

そして、ギンガは土方に異性として好きだと言う事を告白するのと同時にもう1つ、自分の正体について告白し始める。

 

「‥でも‥‥私‥‥本当は‥‥人間じゃないんです‥‥私‥‥私の正体は‥‥」

 

「関係ねぇよ‥‥」

 

「えっ?」

 

土方はギンガが自分の正体が普通の人間ではなく戦闘機人である事を伝える前にギンガの言葉を封じる。

事前に知っていたとはいえ、自分が普通の人間ではない存在だと告白するギンガの表情は窺えないが、声からして沈痛な思いが伝わってくる。

だからこそこれ以上、ギンガを傷つけたくはない。

その思いが土方を突き動かす。

 

「関係ねぇよ、そんな事‥生まれがどうとか気にすることなんかねぇ。ギンガ‥‥俺を見てみろ、大した学もなく、ただ剣を振り回しているだけのロクデナシだ‥‥それに比べてお前はどうだ?ちゃんと学もある、魔法だって使える‥‥お前は十分に誇れる人間だよ。それにお前は強くて‥‥イイ女だ‥‥」

 

「トシさん‥‥でも‥‥私なんかとじゃ、釣り合いません‥よね?」

 

「フッ、俺から言わせてみりゃ、俺の方がお前さんと釣り合わねぇよ‥‥こんな田舎侍なんかと‥」

 

「‥‥」

 

ギンガは告白が失敗したのかと思い黙り込みグッと唇をかみしめる。

だが、ギンガの予想に反して土方は、

 

「でもなぁ‥それでも良いって言うなら、ギンガ‥‥」

 

先程、ギンガは自分に勇気をもって告白したのだ。

ならば、自分もギンガのその思いに応えなければならない。

土方も覚悟を決めてギンガに伝える。

自分がギンガに抱いた思いを‥‥

土方は振り向き、

 

「は、はい」

 

「俺の所に来い‥ギンガ‥‥俺にお前の全てを寄こせ」

 

土方の真剣な表情と先程の彼の言葉の意味を理解したギンガの目からは涙が流れ始め、

 

「はい!!私、トシさんの所に行きます!!それに私の全部を貴方にあげます!!」

 

ギンガはギュッと土方を抱きしめた。

土方もギンガには顔を見られまいと、ギンガの方には顔を向けずに口元をフッと緩めた。

 

(ミツバ‥‥こんな俺でも幸せになっていいか?)

 

(こんな俺でも、もう一度、この最高の女に恋をしてもいいか?)

 

ギンガを無事に取り戻せた事と同時に今まで意識しない様にして来たギンガに対する思いをかつて自分が愛した女‥沖田ミツバに許しを乞うかのように心の中で問う土方。

許しを乞わずともミツバならばきっと惚れた男の事を祝福してくれるだろう。

 

 

土方はギンガを背負って市街地に設けられた救護所へと向かう。

その際、土方は背中に背負ったギンガを落とさない様に片手で上手く上着のポケットからタバコを取り出しその内、1本を口に咥えるとタバコを再び上着のポケットにしまい、次にジッポライターを取り出してタバコに火をつける。

土方がタバコをふかしながらギンガを背負って歩いていると、

 

「‥‥トシさん」

 

ギンガが再び土方に声をかけた。

 

「あん?」

 

「‥‥タバコ‥けむいです」

 

土方の背中に居るギンガがタバコの煙が当たり煙たいと言う。

 

「それぐらい我慢してくれ‥‥戦いが終わった後の一服はクセだからな‥この瞬間こそが俺にとっては、至福の時間だ‥‥それに今日のタバコは‥‥なんだか、今までのモノとは違って一段と美味く感じるんだ‥‥」

 

「もう、しょうがないですね‥‥」

 

ギンガは土方の背中でクスリと笑ったが、この嗅ぎ慣れたタバコの匂いこそが、自分が土方の下に帰って来たのだと言う何よりの証明となった。

彼女はそれが嬉しくもあり、ギンガは土方の背中に顔をうずめながら、土方の温もりと彼の愛煙しているタバコの香りに包まれながらもう一度、目を静かに閉じた。

 

 

~side~スバル~

 

市街地に設けられた救護所‥‥

そこにはガジェットとの戦闘で負傷した局員が大勢担ぎ込まれている。

その中には、戦闘機人と戦った六課の局員も含まれている。

そして救護所にある救護テントの中で、

 

「うっ‥‥」

 

ノーヴェと激戦をしたスバルがストレッチャーの上で目を覚ました。

 

「‥うっ‥‥こ、此処は‥‥?」

 

「気がついた?スバル」

 

「ティア‥‥」

 

スバルの目には自分の顔を覗き込んでいるティアナの顔が映る。

 

「ティア、無事だったんだ‥‥」

 

「当たり前でしょう。そう簡単にやられてたまりますか」

 

ティアナの顔を見てホッとするスバルであったが、

 

「‥‥っ!?」

 

スバルがバッと上半身を起こして、

 

「此処は何処!?」

 

「市街地に設けられた救護所よ」

 

「ノーヴェは!?」

 

「ノーヴェ?」

 

スバルは自分と戦ったノ―ヴェがどうなったのかをティアナに尋ねた。

 

「私と戦った戦闘機人‥赤い髪の子なんだけど‥‥」

 

「その子なら、アンタの隣で寝ているわよ」

 

「えっ?」

 

ティアナがスバルの隣を指さすと、スバルもティアナの指先の先へと視線を向ける。

そこには、静かに眠っているノ―ヴェの姿があった。

ただ、敵の戦闘機人と言う事でノ―ヴェが眠っているストレッチャーにはバインドがかけられていた。

 

「他の皆は!?」

 

ノーヴェの安否を確認した後、ティアナ以外のメンバーの事を尋ねた。

 

「キャロはルーテシアっていう召喚師の女の子の面倒を見ているわ。山本もディードって言う戦闘機人と一緒でその子の面倒を見ている。エリオはフリードでフェイトさんの援軍にスカリエッティの所に行ったって‥‥」

 

「神楽と新八君‥それにギン姉は?」

 

「‥‥まだ、戻って来ていないわ‥助けに行きたくても皆、魔力もなくボロボロでとても他の所へ援軍に行ける状態じゃないわね‥‥」

 

そう言うティアナ自身も身体の彼方此方に包帯やガーゼをつけている。

 

「じゃあ、私が‥‥うっ‥‥」

 

スバルはティアナの話を聞いて起き上がろうとするが、身体に力は入らず、上手く起き上がれない。

そして、スバルはバランスを崩してストレッチャーから転がり落ちてしまう。

 

「いっつぅ~‥‥」

 

ノーヴェとの戦闘で負った傷とストレッチャーから転がり落ちた事による痛みがスバルの身体に走り、思わず顔を歪める。

 

「ほら、言わんこっちゃない‥スバル、アンタだってボロボロなのよ」

 

「‥‥」

 

最愛の姉を助けに行きたくても助けに行けない。

この状況にスバルは歯痒い気持ちとなる。

もしかしたら、この戦場の何処かに姉が居るかもしれない。

あの人ならきっと姉を助け出してくれると信じているが、やはり心配にはなる。

そこへ、

 

「すまないが、シャマルって奴は此処にいるか?」

 

ギンガを背負った土方が救護所にやって来た。

 

土方は救護所に向かっている中、背中のギンガがまた眠っている事に気づいてそのまま眠らせていたのだが、救護所が近くに来た時、自分は嘱託(バイト)、しかも着ている服は局員の制服ではなく真選組の幹部服なので、108部隊の局員以外の局員から不審者扱いされるのを防ぐために自分の身元を証明してもらう為、背中で眠っているギンガを起こして自分の身分を証明してもらい、救護所へと入ったのだ。

機動六課のメンバーも戦っていると言う事で救護所には八神シャマルと言う人が居る筈だとギンガから聞いてその人を探す土方。

ギンガ曰く、その人とは知り合いであり、凄腕の治癒師でもあるらしい。

そして、救護所のとある救護テントの1つを尋ねた時、そこには見知った顔があった。

 

「えっ?‥‥ギン‥‥ねぇ?」

 

突然救護テントの中に入って来た男の人は背中に姉を背負っていた。

そんな光景に目を疑うスバル。

姉を助けてくれると父が絶大な信頼を置いていたとしても今目の前にその人物と姉が現れ自分は夢を見ているのではないだろうか?

または怪我のせいで質の悪い幻影を見せられているんじゃないだろうか?

目をこするのも忘れて自分の目の前の姉を見ていると、

 

「スバル?」

 

優しく声をかけられ意識せずに声を返すスバル。

 

「ギン姉‥なの‥‥?本当にギン姉なの!?」

 

「うん、ただいま‥スバル‥‥」

 

ギンガは微笑みながらスバルに声を掛ける。

間違えない、決して見間違えたりしない、聞き間違えたりしない。

帰ってきてくれた。

無事に自分の下に戻ってきてくれた。

スバルは自分の頭が考えるより先に、

 

「ギン姉ぇぇぇぇぇ!!」

 

「えっ?ちょっ‥おまっ‥‥ふごっ‥‥」

 

土方は自分に迫るスバルに落ち着くように言おうとしたが、スバルの目に土方の姿なぞ映ってはおらず、今スバルの目に映るのは姉のギンガのみである。

先程まで怪我の為、動けなかった筈のスバルなのだが、愛しの姉を抱きしめに行き、土方の背中に居る彼女もまた妹を土方の肩越しに優しく抱き締め返していた。

 

「ギン姉、ギン姉、ギン姉!!良かった!!無事だった‥帰ってきてくれたぁ!!アタシ、物凄く心配したんだからね!!」

 

目から優しい雨のように涙が流れギンガもまたスバル程ではないが涙を流していた。

 

「スバル‥ごめんね‥‥ごめんね‥心配かけて‥‥」

 

「ううん‥こうして無事に帰って来てくれただけでアタシは満足だから‥‥」

 

姉妹感動の対面にティアナも思わずもらい泣きする程の感動をしていたがふと途中で思った。

 

「あっ‥‥」

 

多分読者の方々も分かるだろう。

ナカジマ姉妹の間に現在も彼が挟まれているままの状態である事を‥‥

例え疲労が溜まっていても戦闘機人であるナカジマ姉妹が互いに力一杯抱きしめあっているのだ。

その間にいたらたまったもんじゃない。

前後からの豊乳プレス‥‥ある意味では天国な状態なのだが、実際は前後からプレス機でプレスされている様な地獄だった。

 

「スバル‥ギンガさんも‥‥間‥間‥」

 

「間?あっ‥‥」

 

「えっ?」

 

ここでようやくスバルとギンガは土方の存在に気づいた様で、怪我をしていた為、万力程ではないにせよ最初にギンガを抱きしめに行った時に丁度鳩尾に頭突きされその後絞められ窒息にまで追いやられた。

彼はこれが今日の最大ダメージだと思えるぐらい苦しかったようだ。

 

「ゴホッ‥‥ヴ‥ゲホッゴホッゴホッ‥‥」

 

土方はやっと息ができてその顔に生気が戻ってきた。

 

「あぁ~死ぬかと思った‥‥」

 

「あっ、そのごめんなさい」

 

「すみませんトシさん」

 

スバルがぺこりぺこりと頭を下げ、土方の背中のギンガは謝罪する。

土方は独り言を呟くように、

 

「姉妹揃ってどんな馬鹿力何だよ。くそっ‥」

 

スバルには聞こえなかったが土方とほぼ密着状態な背中に居るギンガにはちゃんと彼のボヤキは、はっきりと聞こえたようでスルッと土方の首に腕を回して首を絞めた。

 

「それってどういう意味ですか?トシさん」

 

「ちょっ、やめろ‥ギンガ‥‥」

 

笑顔で聞いているものの腕の力は緩めない。

いや、緩める気配すらないギンガ。

ティアナとスバルはしばし土方とギンガのじゃれ合いを唖然とした表情で見ていた。

そしてギンガからのお仕置きが終わり、土方はギンガを近くのストレッチャーの上に乗せる。

 

「えっと‥‥病院で会った‥‥確かギンガの妹だったな」

 

「はい。スバル‥‥スバル・ナカジマです」

 

土方に名前を名乗るスバル。

 

「ゲンヤのおやっさんから聞いているかもしれないが、俺は土方‥土方十四郎だ。で?そっちのオレンジ髪のアンタは?」

 

実際土方はスバルにまだ自分の名を名乗っていなかった。

 

「スバルの同僚のティアナ・ランスターです」

 

ティアナも土方に名を名乗る。

互いに自己紹介が終わり、シャマルが着て早速ギンガの診察を行う。

しかし、その診察を行うシャマルでさえ、身体の彼方此方に包帯を巻いている事から、今回のこの戦いの激しさを物語っている。

勿論、ギンガの診察が終わると、土方も強制的にシャマルの治療を受けた。

 

「すまねぇが、お前らギンガの事を頼めるか?」

 

診察と治療が終わると土方はスバルとティアナにギンガを託す。

シャマルは他にも治療する患者がいるのか土方の治療が終わると次の現場に向かっている。

 

「えっ?それはまぁ‥‥」

 

「いいですけど‥土方さんは何処へ?」

 

土方の言葉からこの後、彼が何処かに行こうとしている事が窺える。

 

「どうしてもケリをつけなきゃならない奴がいるんでな‥‥」

 

「トシさん‥‥」

 

そんな土方を心配そうに見るギンガ。

 

「心配すんな、お前の仇は俺がとってやる」

 

そう言い残し土方はギンガの頭を撫でるとそそくさと救護テントから出ていった。

土方は救護所を歩きながら、

 

(あの野郎にはちゃんと落とし前をつけさせてやる!!)

 

彼はギンガに紅桜を持たせた張本人である朧を探しに市街地へと向かった。

 

 

土方が出て行った後、救護テントでは‥‥

 

「ねぇ、ギン姉」

 

「なに?」

 

ストレッチャーに横になるギンガに対してスバルはストレッチャーの上に腰掛けながらギンガに声をかける。

 

「もしかして、ギン姉が好きな人って‥土方さん?」

 

「っ!?」

 

スバルの問いにギンガは思わずビクッと身体を震わせて頬を赤らめてしまう。

 

「その反応‥やっぱり、ギン姉が好きなのは、土方さんなんだ!!」

 

スバルは以前行われた健康診断でギンガに想い人が居る事は知っていた。

でも、それが誰なのかをギンガは教えてくれなかった。

そして、スバルが病院で土方と会った時、『もしかして』と思ったが、今のギンガの反応を見て確信を得たスバル。

 

「いやぁ~土方さんがお義兄さんかぁ~これからは土方さんを『トシ兄』って呼んだ方が良いかな?」

 

にやけ顔でギンガを茶化すスバル。

ティアナもほんのりと頬を赤く染めてギンガを羨ましそうに見ている。

そんなスバルを尻目にギンガはあの時の土方の言葉が脳裏を過ぎる。

 

(トシさんのあの言葉ってもしかして、プロポーズの言葉‥‥なのかな‥‥?)

 

土方の言葉を思い出し、意識してしまったギンガの顔はすっかり茹で蟹状態となる‥‥

そんな自分の姿を妹のスバルや後輩のティナアに見られまいと、毛布で顔を覆うギンガ。

 

(トシさん‥‥絶対に戻って来てくださいね‥‥)

 

そして、ギンガは想い人の帰りを信じて待った。

 

 

 

・・・・続く




ふぅ。一人目のカップリング成立した。長かった主に自分のせいだが長かった。

この調子でガンガンいちゃLOVEさせるぜコノヤロー!(もう半分変なテンション!!)

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