【大空】と【白夜叉】のミッドチルダの出会い~改~   作:ただの名のないジャンプファン

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こーしーんーでーすー。


標的87 重い拳に詰まっているもの

 

〜said神威〜

 

突如視界はオレンジ一色に包まれた。

暖かく、優しくほんのり懐かしいと感じさせてくれる炎の中、自分はこの中で眠ってもよいと感じてしまう。

だが、そんな炎の中で自分は心地良さとは裏腹に嫌悪感を抱いてくる。

虫酸の走る暖かさと吐き気のする優しさが神威の意識を無理矢理に覚醒させた。

それと同時に神威の中にある者も呼び覚ます結果となった。

それは者と言ってもよいものなのか?

ただこれだけは言えるこれは誰の中にも必ず居る者、人に限らず生物皆全てに共通し、人はこの者を本能の片隅に理性の中に封印しているモノ‥‥

それは決して目覚めさせてはいけない。

目覚めてしまえばそれは人と獣の境界線を消し去ってしまう。

これは邪気とは違い狂気よりも純粋である。

 

神威の中のソレはこれまでの彼の人生の中でずっと彼の真相意識の奥底に潜んでいた。

狩人を餌とする獣のそれはまた目覚める時をただ待っていた。

 

今はそれを必要としなかっただけだ。

だが、

 

 

 

 

 

(今のお前じゃ無理だ。)

 

 

 

低く重低音のような声はまるで夜の森に潜む獣のようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(優しさだの愛だの、下らないあの頃を思い出してきたお前じゃ何も出来ない。)

 

 

 

(アイツには勝てない‥‥)

 

 

聞いたことがある声だが聞いたこともない気がする声だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(だが知っているはずだ。それでは何も出来やしないという事を...そして教えてやれ、最後に勝つのは偽善に満ちた下らない理想論ではなく、圧倒的な暴力による力であると言う事を!!)

 

 

 

そうだ、それではあの頃と何も変わらない。

 

 

本当に勝つのは‥‥

 

 

 

 

「(それすらも食い破る本能だと)」

 

 

 

 

その時、神威の視界は曇り‥ただ一点のものしか見えなくなっていた。

 

 

 

 

「まずいな。」

 

訝しげに見るリボーンから見てもわかる。今最も時間が無いのに最も最悪な状況になってしまったという事を‥‥

 

「リボーン、わかるのか?今の神威を‥‥?」

 

その非常事態を生み出したのは他ならぬ彼自身だ。

だが今の彼からは先程のような覇気やオーラの様なものは一切感じない。

ツナに告げる超直感がこう言っている‥‥あれはただの血に飢えた獣だと‥‥

 

「あぁ、あれはお前じゃ戦ったことのない敵だ。一切の感情はなく、思考もない。本能に飲み込まれ、敵を喰い殺すだけの獣に成り下がっちまった。あれを止めるのは骨が折れるだけじゃすまねぇな‥‥アイツ、理性を捨てやがった」

 

そう言ってリボーンは崩壊し始めた天井に目をやり微かに聞こえる爆発音に身を済ませた。

嫌に広いこの基地と言えどこのペースで爆発してきたら20分間もしない内に此処まで到着するだろう。

 

 

 

〜said外〜

 

「まぁ、心配しなくてももう死んだということは無い。これはゲームだ。」

 

「ゲーム?」

 

泥水が溢れ出たような邪気を混じったスカリエッティの顔に、鋭い眼光で睨みつけて聞き返すエリオ。

今、フェイトは悲しみと喪失感入り交じり絶望に膝をつけている中、エリオはただ眼前の敵を見据え冷静にツナを救う方法を考えている。

 

「もう1人のFの遺産‥エリオ・モンディアルか…なかなか、いい顔をしているな。」

 

「答えろ!?ツナさんを助ける方法があるのならすぐに言え!!」

 

エリオにしては珍しく荒々しい咆哮にスカリエッティはますます顔を歪めて笑顔を見せる。

 

「そんなに焦らなくても教えてあげるさ。私は君達と違い寛大なんだ。1つ1つ親切かつ丁寧に教えてあげるよ。この基地は都合上、幾つもの出入口がある。でもまぁ外からではわからないようカモフラージュはしているけどね。つまりここ以外にも出口はある。爆発する場所はランダムだ。ただ、決まっているのは最後があのコロシアムだと言うことだけ。沢田綱吉の命運は爆発箇所を上手く避けたら時間内に出てこられるというわけだ。もっともその前にあの兎男に勝つことが前提だがね」

 

嘲笑するかの様な口振りで挑発しスカリエッティは楽しんでいる。

ツナ達を鼠と見て脱出する事をゲームとして悦に浸りっている。

そんな彼を見ると言わずもがなフェイトは激昂する。

 

「巫山戯るな!!?お前は人の命をなんだと思っているんだ!?」

 

「ふふ、そう怒らないでくれたまえ。これはゲームと言っただろう?そんなに心配なら入って伝えればいいではないか。彼の身が心配なのだろう?フェイト・テスタロッサ。この入口は、今は爆発していない。何なら私が親切丁寧に案内してあげようか?フフフ‥‥」

 

これは明らかにスカリエッティの挑発である。

それに先程彼はランダムと言った。

爆発は自分にもわからないと言った。

そんな訳ないだろう。

彼は恐ろしい程に計算をしつくし策略網を張り巡らしてはそれで漁をするかのように相手を手中に捕獲し弄ぶ。

正直今現在優位に立っているのはフェイト達だが、これすらも彼は計算しているように思えてくる。

何故ならこの言動の真髄はこうだろう。

フェイトを基地に入れて、彼女諸共に爆発させる。

シンプルだがこんなものだろう。

そしてスカリエッティは知っている。

フェイトには突入するしか選択肢が無いことを...例え魔力が無くなろうとも例え足が切断されようとも、彼女は知っているのだ。

愛する者を喪う気持ちを...そしてそれが永遠に心に突き刺さる杭となる。

大切な人を二度も目の前で喪えばフェイトの心にはそれ以上の棘となり深く突き刺さるだろう。

 

一度目は自らの生みの親であるプレシア・テスタロッサがアリシア・テスタロッサと共に虚数空間へと墜ちて行った時の事だ。

あんな気持ちになるのは嫌だ‥‥

こんな所で自分の不甲斐なさでまた誰かを失うのは嫌だ‥‥

もう離したくない‥‥

ずっと居たい‥‥

手放すぐらいならここで彼と共に私は眠ることも厭わない。

フェイトは前進しようとする。

死の道を歩もうと口を開く。

足には力が入り今にも駆け出しそうだ。

 

それにはエリオ達も気がついたこのままでは彼女は間違いなく死を選択する。

 

「皆は先に逃げて‥ツナは私が‥「いえ、私が行きましょう。」」

 

突如聞こえた第三者の声。

 

「シャッハ、貴女‥‥」

 

「私の魔法なら例え爆発で道が塞がれても進めますし、自由自在にあの中を行けるのなら、幾つかの脱出ルートを調べて彼を助けられる。」

 

「‥‥分かった。シャッハ、ツナをよろしく」

 

「はい」

 

フェイトはシャッハにツナの事を託した。

 

 

 

 

〜saidツナ〜

 

さてと、場面はこの局面に戻る。

獣と化した神威、その様子を静かに伺うツナとリボーン。

 

ここでツナは決断した。

今回は多分死ぬかもしれない。

自分は別にいい...何て言うつもりはないがツナはここで死んでもいいと不思議とそんな気持ちになっていた。

何故なら彼を見捨てて置いては行けない。

約束をした、必ず想いを伝えると、勝手に決めた。

神威が次に神楽と会う時それは兄弟として、兄と妹として再開を果たさせると...それなのに、何もなさえない、勝利の報告しか持って帰られない中途半端な状態なんて自分にとっては死よりも重いものに感じる。

だがもし、自分が違う立場なら‥‥例えば外にいるのが自分で此処に立って居るのがフェイトなら...なんて事を考えてしまった。

彼女なら必ず俺と同じ選択をしているに違いない。

それでは駄目だ。

自分すら助かる確率が低いのに彼女まで来てしまったら...

 

「リボーン、頼みがある。」

 

じっくり静かに頼むツナと同じでリボーンも静かに返した。

 

「なんだ?言うだけ言ってみろ。」

 

「俺と神威との戦いでドアが壊れてズレていた。お前ならあの隙間から外に出られるはずだ。外に出たらフェイトに伝えてくれ‥「巫山戯るな、バカツナ」」

 

ここでリボーン激怒したかのようにツナの頼みを激しく拒否した。

まるであの時のように...

 

「お前は何の為に戦っていると思っているんだ?また皆で花火見るんだ!雪合戦するんだ!だから戦うんだ!!だから強くなるんだ!!!また皆で笑いたいのにお前が死んだら意味が無いだろ!!!!」

 

それは嘗て自分の仲間が自分のために命を犠牲にしようとした馬鹿な守護者を叱った言葉だ。

 

「お前は自分の部下に言った言葉をもう忘れちまったのか?お前は失う事が怖かったんだろう?失う怖さをお前はフェイトに味あわせるつもりか?此処はお前の死に場所じゃない。お前の越えないといけない道の1つだ。」

 

「リボーン‥‥だが、このままじゃ俺もお前も...」

 

「いつも言ってんだろうが、バカツナが!!死ぬ気にできないことなんてない。お前の死ぬ気はいつも死地を乗り越えさせてきた。それはここでも同じだ。」

 

ツナがこれまで潜り抜けてきた修羅場の数々‥‥そうだツナは死んでもおかしくない状況を‥‥リボーンすらも乗り越えられないと思った大きな壁でさえツナは死ぬ気になりこれまで乗り越えてきたんだ。

 

「ツナ、やるぞ。死ぬ気で生きて帰るんだ。皆でな‥‥」

 

リボーンのいつもの矛盾な無茶振り。

彼の言葉に迷っていた目は前を向き緩くなった眼光は引き締まり、ツナの覚悟が決まった。

 

「あぁ、あいつを元に戻して俺はここを出る。死ぬ気で生き残る!!」

 

「お前のその覚悟がホンモンならもう切っ掛け(死ぬ気弾)はいらねぇな。大事なもんを守ると決めた時のお前の覚悟はホンモンだってのは分かっている。お前はこれ迄の戦いで培った経験が体に染み付いている。だからこそ、お前の細胞全てが死を覚悟したのなら行けるはずだ。この俺が直々に何度も特訓してやったんだからな。これで負けるようなら、お前、此処で責任をとって死ね」

 

「‥‥」

 

ツナは黙って頷く。

武器を置き人の起源に立ち返る。

意識は自分の奥底に沈んでいき自分の最初を思い出す。

ツナは人の奥底にある本能に‥‥生存本能に呼びかける。

 

(死ぬ気とは覚悟の強さ、俺の覚悟は仲間を守ること、俺の誇りとは仲間の存在。)

 

振り返れ‥そして、思い出せ呼び覚ませ‥今までなってきた死ぬ気を細胞1つ1つに刻み込んだ手の指の数の死闘、手には収まりきれない死闘を‥戦いを思い出す度に帰ってくる‥‥理不尽という凶器に振り回されてどうしようもない運命に翻弄されてここまで来た。

 

悔いとか後悔があるかと聞かれれば首を縦に振るしかない運命がどれだけ自分を変えたか、平凡を望む中学生にとって受け止めきれないぐらい大きな事柄。

 

でも、運命がくれたのはそれの引き換えに絶対の絆‥‥

今までの生き方なら手に入ることは無かったし受け入れるかもわからない。

 

ツナの覚悟とはこれを捨てないこと...失わせない事。

 

 

 

『死ぬ気の到達点』

 

 

「神威、お前を連れて帰るために俺は命をかける。俺の全身全霊の覚悟の炎にかけて絶対に此処から生きてお前を連れて帰るぞ!!!神威!!!!」

 

 

 

 

 

 

〜saidリボーン〜

 

自発的な死ぬ気の到達点の発動を目にしたリボーン。

生徒の成長したその先を目にしたリボーンは少し目尻が熱くなっているのを感じた。

教師として少しほんの少しだけ感動という奴をツナに感じている。

そんな中で彼には少し後悔もあった。

 

(すまねぇなツナ‥お前の頼みを聞いてやった方がお前の心の負担は少なかったし、その方が良かったのかもしれねぇ‥‥でもなぁ、俺は見たくなっちまったんだ。お前は常に限界も俺の想像も超えて今の今まで修羅場を生き抜いたんだ。だからこそ、俺に見せてくれ‥‥この死地をも軽く退ける奇跡ってヤツをよ‥‥)

 

生徒の頼みを聞き入れるか、

生徒の成長を最後まで見てやるか、

この2つの教師の要素でリボーンは後者をとった。

 

 

 

ツナは地面を蹴り砕き自分に飛びかかってくる獣の顔面に拳を入れる。

だがそれはあちらも同じ、神威もまたツナの懐に足をねじ込んでいた。

 

「っ!?」

 

2人は二人の力を受け止めきれずに吹っ飛ぶが、ここでツナは神威に違和感を感じた。

それは先程よりも明らかに力が上がっている事だ。

戦いも明らかに終盤を迎え、お互いに出し切るものは出し切ったはずだ。

神威は特殊な一族であるが、フェイトの様な魔力がある魔導師やトレディの様な戦闘機人みたいな特殊な力はない。

ましてや自分の様な死ぬ気の炎も無いはずだ。

それなのに追い込まれた人間が出せる最後の‥火事場の馬鹿力にしては明らかに大きすぎる。

 

「ツナ、まずいぞ。あいつは‥‥自分体の事を全く気にしていない。」

 

突如耳に入ってくるリボーンの声をきっかけにツナは神威の体を見ると...蹴りを入れた足、特に膝の関節付近なんて見るに堪えないぐらい血が流れていた。

 

そういう事だ。

神威は自分の体を壊してでもツナを殺すつもりだ。

リミッターを外し、人が本来出し切れない力を出しているのだ。

だがそんな都合よく引き出せるわけがない。

力に耐えきれず体が壊れている。

無意識に行う体への気遣いも神威の獣の本能が消し飛ばしている。

自分の事を完全に見失うぐらい彼は力と本能に呑まれていた。

リボーンが先程、「理性を捨てた」と言ったのはこの事だった。

まるで流れる血が涙なように見えるぐらい痛々しいその姿、それすら何も感じずにただ獲物を捉え、仕留める事しかない狂気の目付き。

理性のタガが外れて痛感が麻痺したのか、どれだけダメージを受けても倒れる事もない。

このままではツナをここで倒したとしても相打ち‥長引いたら彼の体が持たないし、自分もヤバい。

ツナの思考がどうやって彼を押さえつけるかを考えている間に彼はまた飛び出してくる。

 

「まずいっ!?」

 

ツナは咄嗟に神威の腕をつかみ彼を放り投げて地面に叩きつける。

それからツナは手を離そうとしたのだが、

 

「っ!?」

 

ツナの手は離れずに神威にガシッと強く握られたままとなり、今度はツナが神威に地面に叩きつけられた。

 

「がはぁっ!」

 

それからも神威は手を離すことはなくツナの腕を握り潰すかのような力で掴みながらまるで布切れのようにツナを振り回して投げ飛ばした。

 

「くそっ!!」

 

ツナは空中で体勢を立て直して地面を剃りながら勢いを殺した。

それからツナは精神統一をするように目を瞑り意識を集中させていく。

その様子を一瞬伺う様子を見せた神威だがすぐに飛び出してきた。

神威の振り上げた拳をツナはそのまま喰らう。

 

「っ!?」

 

神威は今度、ツナの右肩へ向けて蹴りを入れる。

ツナはそれを黙って受け止めた。

神威はそれを不思議がったが止めることは無かった。

腹に拳を入れて、顎を蹴り上げて、右肩に貫手を突き刺し、左肩に回し蹴りを入れこまれてもツナは黙って受け止めた。それはまるで地に根をはりそびえ立つ大樹のようだった。

動きはしない、だが折れることも倒すこともできそうにないように思えてくる。

 

「バカツナが、無茶をしやがる。」

 

そうツナは自分の身体を犠牲にして彼が彼に受けるダメージを軽減させていた。

これはツナの力が目覚めるきっかけとなった戦い『六道骸との戦い』で行ったことだ。

この時はツナの大事な仲間の体を敵に乗っ取られて仲間の体でツナに攻撃をするという卑劣な手で戦っていた。

だが力の目覚めがツナの超直感を覚醒させてツナはそれと共に格段に上がった格闘センスにより相手の負担を自分の体で軽減させる戦いを身につけた。

今、ツナは躱しても防いでもダメージを受ける神威の体に自分の体をクッションとしてダメージを軽減させていた。

 

「ツナ、そんな事をしていても長くは持たないぞ。」

 

「分かっている!!」

 

ツナは流れるように防御から神威の神経を麻痺させる攻撃へと移り変わる。

 

「神威、これで終わりにしよう。」

 

ツナは腹に一瞬だけ力を込めた拳で意識を奪おうとしたが神威はそれを両手で絡めた拳のハンマーを振り下ろして攻撃を妨げる。

だが、ツナは即座に後に回り込み首に手刀を叩き込もうとしたが神威は回し蹴りでツナを蹴り飛ばす。

ツナは今の攻撃で完全に神威を熟知した。

細胞1つ1つが死を覚悟するこの奥義は通常よりも身体は動き体は覚え、頭よりも先に反応させている。

 

神威のどんなラッシュもツナは難なく受け止め躱していた。

 

神威の拳を受け止めツナは神威を弾くように肘で神威の額を突く。

更にツナは神威を蹴り上げ状態を崩した所を地面に押さえつけた。

それでも暴れ出す神威にツナは自分の頭を力の限り振り下ろした。

そこからツナは距離を話さずに神威に話しかける。

語りかけた。

 

「神威!!いい加減に目を覚ませ!!このままじゃ俺もお前も一緒に死ぬぞ!!」

 

ツナの問いかけでも獣は止まらない。

理性を失った神威には前にも増して死への恐怖は消え、恐れ、怯み、戸惑いという感情は一切ない。

彼は追い込まれた動物とは違う。

追い込まれた動物はその命の危機の元に足掻くが、神威は自分の命そのものに目を向けていない。

 

「お前のやりたい戦いというのはこんなことか!?お前という人間を消して動物の様に暴れることか!!お前のゴールはこんな所か!!!こんな所で命を捨てて無駄死にすることがお前のやる事なのか?違うだろ!!?」

 

神威は自分の体の上に乗っかっているツナの両腕をがっしりと掴んで自分が上になるように転がり状態を逆転させる。

そして今度は神威がツナの上になった。

 

「うがぁぁぁー!!」

 

そこから神威はツナの顔を何度も何度も殴りつけた。

獣のような彼だったのだが..今ツナを殴っている神威は見たくもないものを壊しているように見えてくる。

そんな彼を見たツナの目は更に引き締まり地面を自分から溢れ出す炎で砕き空間を作った。

そして、そこから彼は空いた空間で体を動かし巴投するようにツナは神威を引き剥がした。

 

更にツナはすかさず神威の懐に潜り込むために地を蹴り走り込み、彼の懐に入り込んだ。

しかも今までよりも数段早く、神威はツナのその動きに反応出来なかった。

そしてツナは神威を突き刺す。

それは今までと同じ手をしっかりと握りしめできるだけ傷をつけないようにと思う心からできた彼の拳だったがそれは深く彼の意識にまで突き刺さるように深く突き刺した。

 

「神威‥俺は自分の事を弱いと思っている。」

 

その言葉はもうそこにはいない彼を僅かに反応させた。

 

「俺は、仲間がいないと武器を持つ勇気もない。誰よりも弱いと思っているし、戦いの中でも甘い事を考えてしまう。仲間は傷ついて欲しくないし、敵は死んで欲しくない。リボーンからはよく甘いなと叱られても無くならない。」

 

ぽつりぽつりと零れる雨の様な言葉は神威の心に染み渡り彼の意識に届かせた。

 

巫山戯るな!?

 

何が弱いだ!?

 

俺の届かない所まで突き詰めたその強さを持ってなんの嫌味だ。

 

 

(何でだ!?何で、俺とこいつはここまで‥‥?)

 

(俺は戦闘民族夜兎で、アイツはひ弱な地球人の筈なのに!?)

 

(何故!?)

 

蓋を開ければパカばかりだ。

ツナの奥義であるこの状態になると今までの倍以上の距離が離れた。

夜兎の本能に身を委ね、肉食獣の如く暴れ回る獣まで堕ちても、彼は落ちる所まで落ちることは無かった。

寧ろ彼は本能とは真逆の何かを力に変えて俺と戦っている。

何でこんなに差がでるんだ?

何でこんなに埋まらないんだ?

何でそこまで行けたんだ。

何で、

何で、

何で、

何で!?

 

 

何で俺はそこに行けないんだ!?

 

 

何で!?

 

 

 

 

「自分の弱さを認めたからこそ、俺は強くなれたんだ!!」

 

靄の中に図りが入り込み視野が広がった気がした。

ツナは神威を捉え、思いっきり顔面に拳を叩き込む。

だが、神威も足腰に力を入れその場にとどまり真正面からツナの顔に拳をねじ込む。

 

「強くなりたいなら背けるな!どんなに苦しくても、どんなに痛くても、それから目を背けて何が最強だ!!」

 

が、ツナは優しく神威の腕を掴んで手を下ろさせた。

その諭す様な目に敵意なんて今の神威でも見当たらない。その柔らかな瞳に、神威の狂気の境目の底にあるバカ兄貴(神威)が見えてきた。

 

 

「言っただろう?軽いんだよ、お前の拳は...そんな軽い拳で倒しきれないぐらい重たいものに俺は支えてもらっている。お前にもあるんだろう?それ程になっても捨てられない最強への執着となった動機が?」

 

見透かす瞳が、神威を神楽が求めた神威捉えることができた。

そしてその中にある思い出に神威は手を伸ばす。

父親と妹、その2人の先にいる今は亡き母。

暖かなその手に何度心を癒されたことか、

 

「.....俺には」

 

「大丈夫だ。捨てたのならまた拾える。これから拾えばいいだろう?生きていればきっとお前が捨てたモノだって拾える」

 

拾う?

俺にはそんな事をやっている暇なんて...いや、そうやって俺が今まで目を背けて言い訳を繕って選択肢から除外して走った結果、俺の選べなかった選択で俺は自分をここまで追い込んだ。

 

おい、その道には何も無いだろう。

 

黙れ、今更そんなものを選んでなんの意味があるんだ?

 

あぁ、遅すぎたかもな‥でも、今がいい時期なんだ?

 

巫山戯るな、お前が‥俺が、何故あんな奴に‥‥あんなひ弱な奴なんかに‥‥

 

お前を負かした時点で俺の道の先は見る事が出来た。

だからこそ俺は立ち止まり振り返る。

そして、戻り、拾う。

 

バカな!?昔の戻るつもりか!?

昔の弱い自分に戻るつもりか!?

 

ちげぇよ‥‥戻って拾って、見つめ直して、今よりも強くなるんだよ‥‥

真の最強になる為にな‥‥

じゃあな‥眠れ‥‥もう1人の俺‥‥。

 

 

 

 

「フッ...最後に聞かせろ。お前の名前を‥‥」

 

「沢田...綱吉」

 

「そうか‥ツナヨシ。覚えたぞ‥俺を負かした男の名をそして覚えておけ.....次は負けないからな。」

 

神威は最後に振り絞りツナの胸中を叩く。

誰からを見てもその力は弱々しく、パンチというには余りにも力無かった。

でもその拳はツナの中に深くに押し込まれた再戦の意思。

これまでの様な殺し合いではない。

ただ純粋な勝負の申し込み。

 

その最後の一撃で神威はついに力尽きた。

 

この勝負の分かれ目、それは力の強さでも、技量の差でもまして死ぬ気の炎でもない。

 

ただどんな凶風に見舞われても倒すことの出来ない位強いものに支えられているか、その支えがないか...

 

それが分かれ目となったとツナは思った。

 

 

 

 

 

「やったな、ツナ」

 

2度の死闘でも着くことのなかった決着は今ようやく着いた。

そして1つのケリが着いた今だが、もう1つ問題は残っている。

戦いの中も雨のように降り続ける天井と、雷のようになる爆音がどんどん近づいてきている。

近づく度にツナもリボーンも心象に焦りが混じってくる。それだけでないツナはもう既に底がつきそうな位スタミナが無い。

死ぬ気の到達点を発動したからだろうしかも自発的な為に殆どのスタミナを持っていかれた。

飛ぶことすらもツナにはできそうにない。

まぁ、飛べたとしても道がわからないために行く宛もなく瓦礫を避けながら飛んでも待っているのは死だけ...

 

「さて、どうやって戻るか?流石にこのままだと本当に死んじまうぞ」

 

「はぁはぁ、リボーンあっちのドアの隙間から光が見えた。多分あっちなら...」

 

「わかった。」

 

もうドアの隙間から見えた光を蜘蛛の糸の様に縋るしかツナ達が助かる道はない。

リボーンが銃弾でドアを弾き飛ばした。道は周りに土砂が崩れなだれ込んでいるが通れないわけではなかった。

 

「急ぐぞ!」

 

リボーンが先に銃で少し大きめな岩などがあれば撃ち抜いていきその後をツナが進む...

 

「どうしたツナ?」

 

「すまない、あいつを置いていけない。」

 

ツナは倒れている神威を拾い肩にかけて行く。ついでにXグローブと神威の傘も拾い走っていく。

 

「いいから急ぐぞ、何故か爆発の影響が少ない。」

 

土砂が多いだけで通れないことのない道だがそれでも時間が喰われている事は事実。

歩きにくい通路と蝋燭の炎状態の死ぬ気の炎と比例しているスタミナのツナ。

 

「ツナ、でかい部屋に出るぞ!」

 

リボーンはバズーカでドアを破壊して部屋に突入するとそこには人が入った水槽のようなものがいくつも並んでいる。

そして、その中に居る人達は死んでいる事が培養槽に取り付けられている心電図から見て取れる。

 

「な、何だ?この部屋は‥‥?」

 

「どうやら、あのマッドの研究室みたいだな」

 

ツナがこの異様な光景に絶句しているなかリボーンは冷静にこの場がなんなのか状況分析をする。

此処はまるで理科室でよく見かけるホルマリン漬けの生物の標本の陳列棚の様だ。

それも最も悪趣味で胸糞が悪く思わず吐き気を催す様な‥‥

そんな中、ツナが正面にある培養槽に近づく。

その培養槽の中には純紫の髪をした成人女性が入っていた。

 

「っ!?この人!!」

 

「ああ、生きてるっぽいな。」

 

リボーンが視感での判断だが生きている可能性が‥生きているというより他の培養槽の中の人と違い心電図が反応していることから生きていると判断した方がいいかもしれない。

ツナはリボーンの判断をそう聞くと培養槽を叩き割った。

普段のツナならば、助ける事はするだろうが、少しは躊躇する。

なぜならば、培養槽の中に居た女性は一糸纏わぬ姿だったからだ。

しかし、今は少しでも時間が惜しい状況下の為、そんな事を気にしている余裕はなかった。

 

「おい、何してんだ?」

 

「見捨てられないよ。このままじゃ、この人も死んじまうからな」

 

「だが、そいつまで連れていったら俺達の助かる可能性はいよいよゼロになり此処で全員お陀仏だぞ。」

 

ツナはスタミナがきれてそんな中ギリギリで神威を運んでいるのにもう1人なんて...当然赤ん坊姿のリボーンでは大人1人なんて背負えるわけがない。

 

そんな時、奇跡の兆しが声をかけてくれる。

 

「見つけました。貴方が沢田綱吉ですね。私は聖王教会のシャッハと申します。私の魔法で外に連れ出します」

 

ここで希望が1つ繋がれた。

彼女なら何とか

 

「お願いします。彼女をできれば彼とリボーンも」

 

切羽詰まっているツナはその勢いでシャッハに迫ったためシャッハはそれに両手をあげて落ち着けと言う。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。聞いていたより人が多くありませんか!?」

 

ツナはこれまでの経緯を話した。

 

「成程、難しいですね。正直私が運べるのは大人1人が限界です。」

 

シャッハも戦闘機人との戦いで魔力が元に戻っていないそんな中でもツナとリボーン位なら運べると思っていたのだがこれは流石に無理があった。

 

「なら、この人だけでも」

 

ツナは先程助けた女性を救ってくれとせがんだ。

シャッハはその行動に胸を打たれる。

聞いた限りその女性は偶然助けただけの人で縁もゆかりもない他人にも関わらず、目の前の少年は自分よりも他人を優先させることなんてこんな事をするのは局員でも少ない。

 

(何て純粋で真っ直ぐで優しい人なんでしょう?フェイトさんが惹かれるわけですね)

 

(だからこそ自分はこの子の願いを無にするわけには行かない。)

 

「分かりました。私が彼女を助けます。」

 

「宜しく。」

 

「ならそこの子も」

 

そしてシャッハの目線はリボーンに移る。

するとリボーンは壁を自前の銃で撃ち抜く。

 

「俺はツナと残るぞ。ツナといた方が幾分かコイツの生存率が上がるからな。」

 

リボーンはツナの隣にいた方がツナの生存率を少しでも上げられる事をアピールした。

 

(この人もまたまだ生きる事を諦めていないみたいですね)

 

「分かりました...沢田さんをお願いします。」

 

「おう、任せておけ」

 

シャッハは助け出した女の人と共に先に外へと出た。

 

「さあ、俺達も急ぐぞ」

 

「ああ」

 

ツナは神威を担いで脱出口を探した。

 

 

〜side外〜

 

外ではツナを連れ戻しに行ったシャッハが来るのを今か今かと待っているフェイト。

速まる鼓動を抑えることも出来ず両手の指を絡めながら待ち続けるフェイトの姿は何と美しいだろうか?

あぁ早く見てみたい彼女がまた目の前で大切な人を失った時の絶望した顔を...絶対が期待を越える位綺麗な顔をしてくれるだろう。

 

「おやおや、誰か来たみたいだね。」

 

スカリエッティの顔は口角を少し上げ歪んだ笑みと瞳で来た魔力を感じ取って誰かが来たことがわかった。

やがて出入り口からは一人の成人女性を抱えたシャッハが戻ってきたが、ツナの姿は見えなかった。

 

「シャッハ!ツナは!?ツナは一緒じゃないの!?」

 

「すいません。」

 

俯くシャッハはただそう告げるだけだった。

 

 

 

・・・・続く




で〜はまたじかーい。
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