その男、貧弱につき。   作:ジョン・ドウズ

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2nd.新しい日常

  浦路雪次、15歳。どこにでもいるような平凡な奴────とは、自分のことを思ってはいない。

 

  何故なら、自分は花粉症・偏頭痛・喘息の持病持ち。ついでに言えば、病弱だ。人に迷惑をかけて生きていることくらい自覚している。そもそも誰にも迷惑をかけずに生きれる訳がない。

 

  まず、毎年インフルエンザになる。クラスの誰より、学年の誰より早く熱が出る。そして治りも誰よりも遅い。誰が言ったか、中学の頃に『インフルレーダー』との異名を頂戴したこともある。不名誉。

 

  花粉症とは言ったが、ハウスダストも駄目だ。春と秋の花粉も駄目だ。夏冬にも鼻がぐずつく。年がら年中くしゃみしているし、大掃除の時にはとても戦力になれない。毎日箱ティッシュと、ゴミ箱代わりにコンビニのレジ袋を持ち歩いている。更に制服のあちこちにポケットティッシュ仕込んである。総勢8袋は伊達じゃない。

 

  あと思い出したように風邪を引く。お陰で成績はまるで問題なかったが、出席日数の少なさで留年しかけた。危なかった中二の経験。それと休み過ぎてボッチだった中三の思い出。クラスの女子が合同で配ってたバレンタインの義理チョコすら貰い損ねた。僕の青春はこれからだと信じたい。

 

  そして、何とか中学卒業が決まり、数少ない友人と同じ高校への入学を決意。受験当日のこと、

 

「お前IS起動試験行った?会場近いし一緒に行こうぜ」

 

「うん、いいねそれ」

 

  と軽いノリで、筆記試験の帰りに、IS起動試験の会場へ向かい────

 

「動いちゃった」

 

「マジで!?」

 

  その日のうちに帰れたのは友人だけ。僕はどっかの研究機関に緊急護送され、データ取りをさせられたので、自由なんて無かった。

 

  ただし、無理矢理身体検査をさせられて喘息発症どころか喀血。周囲ドン引き+ドクターストップが掛かって、以後の検証はかなり優しくなった。嬉しいけど嬉しくねぇ。病院が来い。

 

  んで三日してからやっと解放され、自宅に戻ってみれば、今度は家の前に待機していたマスコミに囲まれた。       

 

 

 

 

  ─────カメラのフラッシュが原因で失神、二日間寝込んだ。

 

  起きたらそれが記事になってた。 僕の恥を晒し回るのはやめれ。

 

 

 

 

 

 

  ホームルームも終わり、暫しの休息が訪れる。10分の後、早速授業が始まる。その僅かな間に、一夏は雪次に話し掛ける。

 

「俺は織斑一夏。よろしくな、雪次」

 

  それに気付いた雪次。次の時間のための教科書やノートを取り出す手を止め、一夏に向き直る。

 

「こちらこそ。よろしく織斑」

 

「いいよ一夏で。ほら、千冬ね────織斑先生と被るだろ?」

 

「そんなの気にしなくて良くない?先生にはちゃんと先生って付けるし」

 

「断られた!?」

 

  まさかのイチカキャンセルに、表情に出るほどへこむ一夏。彼にとって、友人とは名前で呼び会うもの。雪次からバッサリ切り捨てられ、若干距離を感じてしまう。一方の雪次は、名字で呼ぼうとしただけで傷付いている一夏の予想外な反応に驚き、慌ててフォローを入れた。

 

「というか、名前呼びなんて僕の回りじゃほぼ無かったから、そっちの方が僕は慣れない」

 

「へぇーー、環境の違いか。じゃあ、俺から名前呼びしてみないか!?」

 

「気が向いたら。僕は織斑の響きが気に入ったから、当面はこれでいいや」

 

「何でだよ雪次ィーー」

 

「止めろ揺するな吐くゥェェェップ」

 

「雪次ィイイイイィィィッ!?」

 

  フォロー入れた割に譲らない雪次を、これまで付き合ってきた男友達と同じ感覚で揺さぶる一夏。途端に雪次の顔が青くなり、一夏まで青くなっていた。

 

「ちょっといいか?」

 

  二人の会話に割って入ってきたのは、ポニーテールを揺らす美少女:篠ノ之箒。一夏のファースト幼馴染み。数年ぶりの再開に緊張し、固い表情に拍車が掛かって仏頂面になっていた。

 

「ちょっと良くない。悪ぃ、大丈夫か!?」

 

「だい、じょぉぉお……ぶ…………。織斑、僕に構わず、先に行け…………」

 

「………何だこれは」

 

  しかし、間が悪いとしか言えなかった。悲壮なガッツで無理矢理笑みを作り、震えながらサムズアップする雪次。心配する一夏。まあ本人が大丈夫と言うならそうなのだろう。多分そうではないが。

 

「少しこの男を借りたい。浦路、構わないか?」

 

「いいよぉ………その間休んでるから………」

 

「何かスマン、雪次………」

 

  やっぱり駄目だったようで机に突っ伏す雪次を残し、二人は教室を後にする。

 

 

 

  ─────五分後、一夏が戻ってきた所で、雪次は変わらぬ姿勢でそこにいた。

 

 

 

 

 

 

  織斑一夏は限界だった。

 

  授業で何を説明されているかがまるで分からない。

 

「はぁい、ここまでで分からないことはありますかー?」

 

  真耶の語る、全てが分からない。

 

「織斑くん、どこか分からないところはありませんでしたか?」

 

「………全部です」

 

「ええっ!?」

 

  余りに付いていけず、逆に知恵熱が起きなかった。右から左に受け流すと言うべきか。途中で考えるのを止めたと言うべきか。

 

  浦路雪次も限界だった。

 

「織斑!!ティッシュ持ってないか!?箱ティッシュが空になっちゃった!!」

 

「そんなに持ってねぇよ!!」

 

  学校から渡された参考書を五周程は読んでおり、また元々ISに興味があって調べていたため、授業そのものにはギリギリ食らい付いていた。が、今日に限って持ってきたティッシュの量が少なく、一限目にして無くなってしまったのだ。

 

「織斑先生!!購買に………購買に行かせて下さい!!五連箱ティッシュを買わせてください!!」

 

「気合いで止めろ」

 

「出来たら一箱とポケットティッシュ6つ潰してないですよ!!」

 

「……休み時間まで待て」

 

「そんな殺生な!?ゲホッゴホッ、ガフッ」

 

「騒ぐな、喘息の症状が出ているぞ」

 

  男子生徒二名のせいで、一年一組の授業は微妙に静かにならずに進んでいく。

 

 

 

 

 

「織斑!!頼む!!僕を購買に連れていってくれ!!僕じゃ休み時間中に教室に戻れない!!」

 

「これお前の私物だったのかよ!?」

 

  授業終了と共に、台車に雪次を乗せて購買に急ぐ一夏の姿があった。教室の隅で、のほほんとした空気を漂わせる少女がドナドナを歌っていたとか、何とか。

 

「実はこれさ、IS搬入用の台車なんだよ。頑丈だろ?ほら、車輪のここにサスペンションが付いてて────」

 

「どこにこだわってんだよ、どこに!!」

 

 

 

 




我ながらこいつ卒業出来んのかと不安になってきた。
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