ヤバイヤバイャバイヤバいィ!!!
喉元に鋭利な刃物を突きつけられ、逃げようにも手足を椅子に縛り付けられている状況、俺達を捕らえている【アーク様】……いや、もうこいつは【様】つけなくていいだろ…、は平然とした顔でむしろ嬉々としながら俺たちに質問を投げかけてくる
「___で、なんだ?この世界のことが分からないって??君達の方がよく分かんないよ、その成りでこの世界の事が分かんないとかさ、記憶滑落してんのかなぁ?って思っちゃうほど意味分かんないって。」
「ひぅ……ぃ……、あの、俺達もこの状況がよく分かってないんですが……」
なんでこんな状況になってる!?俺たちはメティアさんにこの人から情報を聞いてね、と言われてここに居るだけだってのに、それがどうして死と直面してんの?いきなりすぎない?!
「___だってさー、よく考えてみなよ、君達、勇者のスパイって線もなくはない…だろ?」
どうだ?図星だろ?みたいな顔で俺たちの眼光を鋭く睨むアーク
だが、残念だったな、俺達は正真正銘の悪魔だ、勇者になるか迷ったけど悪魔になった異世界人だよ!
と、内心は思うが、到底異世界から来ました〜!へぇー!で終わるような空気じゃない。多分異世界なんて単語もっとよく分かんなくしちゃうだろうし下手に地球とか女神とか言わない方が賢明だろう。
「いや、すいません…、悪魔です。しかも下位18級の…底辺悪魔です。この歳でこの世界のこと分かんない新参者悪魔です……。勇者とかまじ滅べばいいとか思ってます、なのでスパイじゃな……ぅあ」
勇者じゃないと俺は悪魔だと、そう説明してる最中に喉元に突きつけられていたナイフをぐぐぐっと喉下にやられ、息が詰まる
「___っあぁう……あの、本当です、信じてくださいって……あの…まじ、洒落になんないくらいィッ…息が、息がァァァ」
息ができない____ヤバイ、小学校の頃海ではしゃぎすぎて足をつって波に呑まれて溺れたあの時を少し思い出しながら……あ…死ぬ…
「______ぁ__ぅ」
「タイチ!タイチ!!!アーク様、本当です!俺達は正真正銘悪魔です!!本当ですっっ!!タイチも僕も勇者なんかじゃないです!だからタイチを離してください!!!」
意識が遠のきかけたその時、ふっと喉元が解放されようやく
「___っあはあぁあーーーーー!!!」
息ができた、空気って素晴らしい!!空気のありがたみが久しぶりに知れた気がす__って違う、こいつ、平気で俺を殺そうと…やっぱりアーク、ヤバイ奴だ!助けを呼ばないと
「メティアさあああああああああああん!!!」
カーテンの奥のメティアさんに助けを求めるべく名前を叫ぶ
「_」
が、しばし待っても反応はない…、駄目だ、もう一回!
叫ぼうとして…、口を手で覆われる
「___やめろ、分かった、分かったからやめろ、お前達は悪魔なんだよな?」
「〜〜!!」
息が…また……うは……
「____っぷはぁ…っと、…そうです!俺達は勇者なんかじゃありません!」
「なら何故、下位18級悪魔の君達がエクストラジョブなんて覚えてるんだ?その辺の説明は?」
「っ、それは___」
女神に授かったエクストラジョブ、本来は上位6級から授かれるものらしいものを最底辺の下位18級から授かっているんだ、確かに不自然だろう、だが説明しようにもなんて説明したらいいか分からない…
「説明出来ない__か?ならまだ完全に勇者のスパイ説を拭いきれたわけじゃないな」
「いや、勇者じゃないですって!!」
「だが、勇者でエクストラジョブを授かって、こっちへスパイとしてきた、だが悪魔じゃなく勇者なのだから下位18級悪魔、と説明がつくじゃないか…」
あ、………、
「___だろう?」
仕方ない、勇者じゃないと説明するにはややこしくなっちゃうかもだけど、女神とか色々話さなきゃダメみたいだ、それを信じてくれるかは別の話だけど___。
「アークさん、あの…信じてもらえるか分かんないんですけど、俺達、異世界人で、実はこの世界の住人じゃなくて…つい先程転生されたばっかなんですよ…」
拙い言葉ではあるが、分かっていること、分からないこととかを詳しく説明してみることにする…、このままだとまじで転生されて1時間と満たずに死亡(俺に限ってはゾンビなので死なないが)てなことになりかねない…コイツヤバイから…
「__ん?〜?」
どかっと、立っているのに疲れたのか俺たちの目の前のソファーに座り、頭上からクエスチョンマークが沢山出ている気がする。
「__興味深いね、聞きなれない単語だ。聞かせてもらおうか」
どこから取り出したのか手にはペンと使い古されたメモ帳を持ち、先程までの威圧感はさほどなく、普通の質問コーナーみたいになった
「俺達は、地球っていう所からこの夢の国に来たんです…どうやって来たかって言われるといわゆる瞬間移動的なやつだと思います。エクストラジョブがなんでこんな下位悪魔が使えんだ?!って話ですけど、ぶっちゃけいうと全部女神に聞いてくれって言いたいところです。」
「____女神?」
サラサラサラーッと、メモ帳に記していた手を止め、こちらに顔を向ける
「ミカエルってやつです、そいつによって俺はこの世界に来ましたし、てか来てからまだ一時間も経ってないはず……、エクストラジョブを授かったのもそいつにです…悪魔と勇者どっちになりたいか?と道中聞かれましたが、俺は悪魔と答え、俺の横に拘束されてるライトも道連れで悪魔になってます。_____以上!」
とりあえず分かることを簡潔に話した、__話せてるよね?
さて、信じてくれるか?
コト、とペンを置き、その横にノートを開いたまま伏せる。
そして立ち上がりこっちに近寄ってきて__
「事情は分かった…なるほどねえ、だから君達は何も分からない、下位悪魔なのにエクストラジョブが使えるってわけだ。なるほどなるほど。」
あれ?あっさり信じてくれた……あれ…?案外あっさりだな…
「___」
プシューー…と音がして、椅子から解放される…意外ときつく絞められていたのでまだ跡が痛む。
「実は俺、嘘ついてるかを見てたんだよ。眼光を見てた、嘘ついてる時の目と、嘘ついてない時の目で、判断してた、ハッキリいうとよく分からない話だったけど実に興味深かったよ、それで不思議なことに嘘はついていないみたいだった…、うん。これなら平気だ」
「えぇ…?何が平気なんですか…?僕達結構ビビりましたよ」
「ん?ここで働いてもいいってこと…、君達が勇者のスパイじゃないって分かったし、さて…と、じゃあここからは君達の質問に答えようじゃないか。この世界について俺が分かることを話そう。」
そう言うとアークは伏せておいたメモ帳をパラパラと捲り、語るように話し始める
「___時は遥か昔、まだこの世界に争いなんて概念がなかった時代…、平穏溢れる日々、皆愉快に楽しく平和に暮らしていた…、だが時が少し過ぎ、事件は起きる、皆が平和に過ごしてところにこの世界が真っ二つに割れるほどの地揺れが起きたのだ、そして天候もあれ、まさに天災と言うところだった___」
「今までは作物などを作り自給自足の生活を送っていた家族が殆どであった、しかしその天災により、作物は枯れ、作る場所もなくなり、僅かな作物しか採れなくなっていった____すると、生きるために作物の奪い合いになり、死者が出始める……これが終わらない今の戦いの起源だ。」
「死者の数は一体どれほどになっただろうか…、それでも尚、戦いは終わらなかった____そんな時に生まれたのが2人の双子、この2人は実に対照的な性格に育っていく。1人は名を【アーサー】と名乗り、1人は【サタン】と名乗っていた…【アーサー】は皆で皆で少しずつ、少しずつ分け合って暮らしていきましょう!と説いた。【サタン】は日にち交代で食っていく者を変えるのだ。と説いた___」
「【アーサー】の意見は少しずつではあるが毎日食べられる…というもの____【サタン】の意見は一気に食えるが、それ以降は次の番が来るまで耐えねばならないというもの___当然ながら人は別れた。_____そして、月日は流れ、【アーサー】と【サタン】は大ゲンカを始める。喧嘩の原因は俺でも調べられなかった___そして2人は戦いの末に死んだ。」
「そして、2人の信者達が弔い合戦を始める__これが今尚続く戦いだ。今名乗っている【アーサー】と【サタン】は代々受け継がれてきた軍のキャプテン的な存在で、勇者軍は【サタン】を、悪魔軍は【アーサー】を討ち取ろうとしている。今では平穏とはかけ離れてしまったこの世界だが、作物には困っていない、むしろ発展しているくらいだ____まあ天災が起きてもう数千年と経つから当然か……。とまぁ、これが俺に分かる情報だ。長くなってしまったな。」
パタン、とメモ帳を閉じ、ギィ…と椅子に深く腰掛ける。
「……ぁ」
一方俺たちは口が開いたまま塞がらない__話のスケールがデカすぎて全くついていけなかった!!
「____ま、今は全てを理解せずとも、アーサーを討つ、とだけ考えてれば良いよ。」
「_えっと、その、貴重なお話ありがとうございました」
ぺこり、と頭を下げるライトに
「あー、良いよ。俺も君たちのことを試しちゃったし。」
と軽く笑い、手を振る。
「おーい、メティアぁ!」
そうアークが名前を呼ぶとカーテンの奥からひょい!と顔を出したメティア…おい、俺もさっき名前呼んだのに…反応が違いすぎるだろ
「あ!終わりました?面接と説明。」
「ああ、終わった。この子達はきっと将来有望だな。」
「え?面接?」
「ええ、いつもここで働くことになる方にはアーク様に面接をしていただいてますの…怪我はしてません?」
引きつった顔で笑い。
「はは……してないです…息ができなくて死にかけたけど。」
「あら、アーク様、今回は珍しく外的死傷は負わせてないんですね?」
「ああ、エクストラジョブ持ちだ、下手に手は出せなかった。__それに、勇者のスパイって最初は考えていたからな。」
そんな時だった
「うおおおおぉおおおぉおぉ!!!」
そんな咆哮がギルドの外から聞こえてきた
「あぁ…あの問題児が帰ってきたんですね…アーク様、お願いします。」
「はぁ…ったくあいつはいつになったら辞めてくれるんだか…」
入口から出て、ギルド前で立ち止まり、手を前に突き出すアーク
「うおおおおおぉぉぉっっッ!!」
ひとまず…俺達はここで働けるみたいだ、ここから、情報を集め、最終的にはアーサーを倒すぞ。
ここから頑張るぞ、と決めたタイチの目には迫り来る生物の姿が映っていた。