その無限なる時の旅路~無限の空~   作:黒水 晶

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第61話:誰呼んだ?え?マジで?

「すまんな、更識が近づいてきてるの分かってたんだからバレないように細工をしておくべきだった」

 

アリーナから出て九桜は頭を下げ、謝った。探知術式は常に発動させていて織斑たちが接近していることは気づいていた。万が一を考え楯無に気づかれない程度の細工を行うことは十分可能だった。そんな自責の念からのものだった。

 

そんな九桜にデュノアは彼の肩に手を置き

 

「これからお弁当、一夏の特訓に参加できるようになるまでね」

 

そんなデュノアの言葉に九桜は頭を上げ、心底楽しそうに

 

「了解、そんぐらいなら楽なもんだ」

 

その言葉にデュノアはガッツポーズをし破顔する。

 

「やった、これから楽しみが増える」

 

「一つ減ったけどな」

 

むっとした顔で九桜を見るデュノアだが、ケタケタと笑っている九桜にため息をつき、ふと思いついた疑問を彼にぶつける

 

「だけど、なんで生徒会長さんはいきなり襲い掛かってきたんだろ?」

 

ふむ、と顎を右手で一撫でし、思い当たることを思い出しあっけらかんと

 

「あーここ最近小規模な式神による襲撃が続いてるからな、たぶんそれで気が立ってたんだろ」

 

「へ?」

 

「まぁ気づいた時にはアイツが処理しに向かってるからシカト決め込んでたが、それの内通者かなんかと勘違いしたってのが考えられるな」

 

「それって結構な大事件なんじゃ……」

 

ハハハと笑いながら九桜はそれを否定する

 

「いや、お前が来る前にティンダロスの猟犬が送り込まれたことがあったからこの程度はなぁ……まぁ流石にそっちは俺が出張ったが」

 

3秒ほど無言になったデュノアだが、一つうなずき

 

「うん、そう聞くと何ともないね」

 

「だろ?まぁあれも馬鹿じゃないからしばらくしたら謝りに来るだろ。そうなったら織斑の教官役に戻ってもいいだろ。さっきのアレはあの馬鹿の頭冷やすためのもんだし」

 

格納領域にしまっておいた制服をISスーツの上に展開し首を回している九桜をデュノアが首をかしげているので

 

「どした?」

 

と声をかけると

 

「大十字君は生徒会長さんのことよく知ってるみたいだけど……どういう関係?」

 

「んー……じゃれつかれる奴と子犬?まぁ、そんなとこだろ。アイツとは何度か仕事が一緒になったりしてなぁ」

 

「それにしてはずいぶん親しげだったけど?」

 

「まぁじゃれついてくるたびにちょっとずつ鍛えてやってるからな。弟子というほどじゃないが」

 

色々とあるんだよと言い話を切り上げ

 

「んじゃ俺はこの後接客班用の衣装作るからこの辺で帰るわ。また明日」

 

手を振りながら歩き出す。そんな九桜の後ろ姿に

 

「カワイイの期待してるよー」

 

「ほいよー」

 

そうやる気のない返事が返ってくるのであった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

学園祭3日前

 

今日から通常授業が無くなり、学園祭の準備一色に代わるなか、大きな段ボールをクラスに運び込んできた九桜は手近な机の上にそれを置き

 

「衣装完成しました」

 

おおーと寄ってくるクラスメートに段ボールを開け、完成したメイド服を取り出してみせる。それを見た彼女等(男一人混じり)はしんと静まり返る。

 

意を決した一人が手をあげ

 

「えっと大十字君、これ既製品を買ってきたとか、どこかにオーダーメイドで作ってもらったとかそんなんじゃないんだよね?」

 

震えた声でそう尋ねた。その言葉に少しムッとした声で

 

「失敬な、毎日夜遅くまでかけで作ったものですよ」

 

そう言ってからはひどく姦しいものだった

 

「うっそ、パッと見既製品と見分けつかないよ」

 

「お店に置いてあっても不思議じゃないよね」

 

「うんうん、すごい綺麗に作ってある」

 

わいわいと騒ぎ続ける中段ボールの中からビニール袋を取り出し、その中に入っていた物を隣の机に出していく。

 

「ところで……息抜きでコースターを作ったのですが、使いますよね?」

 

1枚1枚別々の花が刺繍され、中にはレースを使い装飾されている物もある。同じ作業の繰り返しだとどうしても飽きが来るため、時々別の作業をするようにしていた結果、今回の喫茶店の全席分出来上がってしまい、せっかくだからと持ってきた物だ。

 

「え?これ……息抜き?」

 

「ええ、息抜きですが……どうかしました?」

 

キョトンとした声を上げる九桜だが、彼女等は

 

「いや、だって、ねぇ」

 

「一つ一つ違う種類の花だし」

 

「職人が時間をかけて作りましたって言われても信じちゃうようなレベルだし」

 

「そういった物を息抜きと言われても……ねぇ?」

 

と半信半疑な状態に陥ってるが九桜がこれを持ってきたのはコースターを使うか使わないかなので

 

「褒めていただいてるのは分かるのですが……使わないなら処分してしまいますが」

 

その言葉に即座に

 

「いや、使う!使うよっ!!」

 

返答が返ってきた。九桜はホッとした声で

 

「そうですか、なら作ったかいがあったというものです」

 

そして手を一つ叩き

 

「さて、接客班の人は試着お願いします。直す必要があったら今ならまだ間に合いますので早めにお願いします」

 

指示を飛ばしていく。近づいてきた接客班の人々にメイド服を手渡ししていく中、隣から声がかかる

 

「あ、ところで大十字君は学祭誰呼んだの?彼女?」

 

「いえ、彼女はとても人見知りなのでこういった賑やかなイベントに出たがらないので……うちの母様を」

 

その言葉に燕尾服を受け取った織斑が恐る恐るといった声で

 

「えっと大十字、もしかして」

 

その質問を途中で遮り、笑顔で

 

「ええ、(うつろ)の方ですよ」

 

そう答えた。バタバタバタッと音がし

 

「大十字君!!、織斑君とか箒ちゃんとか色々倒れたよ、ねぇ!?」

 

「ははは、どうしてでしょうねぇ」

 

フランス旅行中に少しだけ虚のことを聞いたメンバーのことごとくが倒れたのでった。

 

 

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