楽しい夜ご飯が終わり、2人で食器を片付けていた。俺が食器を洗い、うまるちゃんが洗い終えた食器を拭く。達生はあることを思う。
やっぱり、俺が泊まるのは可笑しいじゃないんだろうか
普通は恋人でもなく、深い事情がなければ、女の子の家に2人っきりで泊まることは絶対に可笑しい。ラブコメや恋愛小説ならわかるが……ここは現実世界。今更、そんなことを考えても無駄だ。うまるちゃんから誘ってきたんだし、今更、「やっぱり、帰るわ」なんて言ったら、うまるちゃんが悲しむだろう。
そうだ。悲しんでしまうに間違いない。
考えながら、食器を洗っていると、いつの間にか食器を全て洗い終えていた。
うまるちゃんを見てみると、真剣に食器を拭いている。食器の数からうまるちゃんは食器をもう少しで拭き終えるだろう。ご飯が終わると言うことは、次は……
お風呂!!
うまるちゃんに先に入られて困る。俺から入らないと……
「先にシャワー浴びてくるわ」
達生がお風呂へ向かおうとした時……
「別にお風呂に浸かっても私は大丈夫だよ」
……
……
俺にはそんな勇気はない。
うまるちゃんが良くても俺には無理だ。
「いや…良いよ。今日はシャワーだけで終わらしたい気持ちなんだ」
それって、何の気持ちなんだ俺?フラレた時の気持ち?テストがダメだった時の気持ち?不幸なことがあった時の気持ち?
そんなことはどうでもいい。今はこの状況を乗り越えたら、O.K.なはず……
「わかったよ。上がってくるまで待ってるね」
うまるちゃんは微笑みながら、言ってきた。
そうだ。あれの存在忘れてた。
「うまるちゃん。ちょっと来てくれない?」
「うん?」
達生はうまるちゃんを自分のバックが置いてある所へ呼ぶ。
うまるちゃん。これを見たら、絶対に驚くだろうな。何せ俺も、あの時は何が起きているのかわからなかったから。
「聞いて驚くなよ……多分驚くと思うけど」
「うん。それで達生くん。何?早く知りたいよー」
うまるちゃんは早く知りたいようだ。
まぁまぁ、そう慌てないで
では、召喚をしようではないか
「じゃあ……召喚!!」
達生はある物をバックから取り出した。それを見たうまるちゃんの目の色が変わった。そして、それを凝視している。
「そ…それは……あの…」
そう。あの…入手困難だった…
「VR!?」
「そうだよ。やっぱり、驚くよね」
そう。ある物の正体はVRだった。
「達生くん!?どうやって、ゲットしたの!?」
うまるちゃんはさっきより、興奮している。興奮する気持ちもわかる。俺も、あの時を理解してから夜は眠れなかったから。
「それはね…たまたま何の応募か忘れたけど、それで当たったんだよ」
「えぇ!?達生くん……それって奇跡だよね」
普通に奇跡以上だよ。今でも、当たったことに驚きを隠せないぐらいだから。確か、1名様だけだったから……確率的には宝くじに当たる確率のほんの少しだけ高いぐらいだと思う。
「そうだね。奇跡だね」
「私もインターネットでVRの限定販売の時に、販売スタートしてからすぐに購入ボタンを押したけど、無理だったよ」
「あぁ…俺もあの時は、無理だったよ」
VRがインターネットで販売された時、販売スタートするのを待って、購入ボタンを押す準備をしていたが…俺も無理だった。
「やっぱり、達生くんは凄いよ。私…羨ましい限りだよ」
「ありがとう。うまるちゃん」
VRを取り出したのは、VRを自慢するためではない。
「それで、俺がシャワーでゆっくりしている時にVRしていても良いよ」
「えぇ!?いいの?私、一度は体験したかったんだ」
うまるちゃんの目はとてつもなく、輝いている。
誰だって、いつかVRを体験したいと思っている。後何年後かにVRも流行ると俺は思う。経済の歴史を見てみると、ガラケーを持つことなんて昔はなかった。それから時が流れ…大人はガラケーを持つことは当たり前となり、次はスマホを持つ人は少なかった。そして、今…。高校生はスマホを持つことは当たり前となり、大人でスマホを持っている人もほとんどだろう。VRが流行るのは何年後だろうか…?
「じゃあ、プレ4起動してくれない?」
「私…こんなにワクワクすることは久しぶりかも」
うまるちゃんはテレビをつけて、プレ4を起動する。起動を確認して、VRをプレ4に接続する。
「後はVRをはめて、コントローラーでやっていく感じだから、頑張ってね」
「うん。でも…VRでバイオハザードをするのは…何だか私…怖いな」
うん。正直に言うと…俺も結構怖かった。もう、一人で家で叫んでしまったことを思い出す。
「じゃあ、今はやめとく?」
達生が言うと…うまるちゃんは
「やるよ!」
うまるちゃんはやる気だ。今の彼女はやる気に満ち溢れている。
「じゃあ、入ってくるわ」
「うん。ごゆっくり」
うまるちゃんも頑張ってね。世界観が変わるだろうから。
達生が服を脱いで、浴室に入る。浴室には、お湯がためてあった。達生は多分これから起こることを想像していた。
多分…うまるちゃんは…この後…
そんなことを想像しつつ、シャワーに手を伸ばした時……
「キャーーー」
やっぱり…か
うまるちゃんの叫び声が浴室にも聞こえた。最初はそうなるのが、当たり前だと思う。これで叫ばなかった人はプロレスラーか怖いもの知らずの人だと思う。プロレスラーも叫ぶかもしれない。達生はシャワーでゆっくりくつろいでいた。
シャワーでくつろぎ、体を洗っていると、達生は気になることがあった。最初の叫び声以降の叫び声が一切聞こえてこない。
1回体験したら、次は叫ばないと言うことは絶対にない。
それなら、何故叫び声が聞こえないんだ。
そのことが気になり、もう少し、くつろごうと思ったが、少し早めにお風呂を上がった。服を着て、うまるちゃんの所へ向かう。部屋に入ると…テレビの前にはコントローラーとVRしか置いていない。
あれっ?うまるちゃんは?
辺りを見渡しても、うまるちゃんの姿はない。しかし、かすかにしくしくと何かの音が聞こえてくる。耳を澄ますと…音の方向にはベッドの上に毛布でくるまっている何かがあった。
これはヤバイな。大丈夫だろうか?
「うまるちゃん。大丈夫か?」
達生が声をかけて、毛布にくるまっているうまるちゃんに手を伸ばすと…
いきなり、うまるちゃんが俺に向かって飛び込んで来た。
「うわー」
うまるちゃんの飛び込みで達生はうまるちゃんに押し潰される。痛た…
今…何が起きているんだ。
「いきなり、何?」
達生は何故うまるちゃんが飛び込んで来たのか、わからなかった。逆に腰が痛いことの方が気にさわる。
うまるちゃんを見ても、俺のズボンの上でしくしくしてる。うまるちゃんの表情は伺えない。
もしかして…泣いている!?
「大丈夫?」
何の言葉をかけていいのか、わからず、さっきと同じ言葉をかけることしか出来なかった。
「うぅ……怖かったよー」
うまるちゃんは泣いていた。今も達生のズボンの上で泣いていた。ズボンを伝わって、涙の冷たさが足に感じる。
泣くほど…怖かったとは…
まず、バイオハザードを女の子がやることじたいが可笑しい。しかも、今回は7のグロテスクバージョン。それに加えて、VRも装着していた。うまるちゃんが怖さで泣いてしまうのも、わかるっちゃわかる。
「そんなに怖かったの…まぁまぁ一旦…落ち着いて」
とりあえず、落ち着いてもらいたい。このままズボンが濡れてしまうことはしょうがないとしても、うまるちゃんが泣いたままだと、何か息苦しくなる。女の子が泣くなんて、男が絶対にやってはならないことだ。
「このまま、少し…居させて」
うまるちゃんは達生にお願いをした。このまま、居させてって…
もう…しょうがないか。好きにすればいい。
達生はうまるちゃんが落ち着くまで待ってあげることにした。
1つ思うことは…
やっぱり、息苦しい
明日から、修学旅行なので、更新は土曜日か日曜日を予定してます。