ムスクス公益国と、
エフェメールは、
連合国として、
まずは、ヴァールハイト帝国を、
迎え撃ち、
反撃の狼煙をあげようとしていた。
その中心に、
砕月は居た。
もう、二度と戻れない日本に、
“日本人として、恥じないように”
強く、あろうとした。
「急げぇ!!敵は待ってはくれない!!」
あちこち、罵声と激、
大量の資材が組み立てられていく。
砕月
「ご苦労、突貫とは言え、
こんなに形になるなんて。」
「サイゲツ総大将殿!!」
砕月
「適度に休息を取ってくれ、
ここで怪我をされても、困るからな。」
「はっ!!ありがたきお言葉です!!」
城壁とは言えない、
精々2~3mの壁では心もとない、
近隣の森林を伐採、
鋭角に切り出した丸太を、斜めに突き刺し、
何十にも締め上げたロープで固定する、
もちろん、外側に向かって。
砕月
「鋼鉄の糸の生産は進んでるか?」
「あ!サイゲツ殿!!
すこし手間取ってますが、
あと二日!!いや、
一日でなんとか形にしてみせます!!」
砕月
「気を緩めず、慎重に作業してくれ、
下手をすれば、
この施設ごと吹っ飛ぶからな、
必ず決めた時間で休息を取ってくれ。」
「了解です!!」
洋風の騎士甲冑が作れる以上、
ある程度の製鉄技術があった、
しかし、精々の甲冑止まりで、
バネや、鋼鉄の盾を精錬するには、
超高温の炉が必要だったが、
今までの技術では
“赤い炎”が限界だった、
幸い、川が近くにあり、
粘土が産出されていた、
陶芸家達が精錬士と協力し、
超高温、“紫、白い炎を”
あと一歩までこぎつけていた。
砕月
「・・・ふぅ。」
ふと見回すと、あちこちに簡易監視塔が立ち並び、
鋭角に切り出された丸太が、
所狭しと外側を向いて、獲物を待っている、
連射はできなかったが、
同時に発射できる数は増やす事ができた、
改良型弓矢発射装置、
横長に配置され、一度に12本発射できる。
砕月
「次発発射までは、バラつきがあるけど、
脅威に見せられればそれでいい。」
それで、すこしでも足を止められれば、
切り伏せる時間はある。
ナハト
『サイゲツ様!』
あぁ、そう言えば、一応、恋人になったっけ?
砕月
「ナハト、どうした?」
ナハト
『クシェ姉さんが。』
頭が痛い、
クシェは、持ち前の剣術こそ発揮するものの、
それ以外は壊滅的にダメ、困ったものだ。
砕月
「今度はなにやらかしたんだ?」
ナハト
「クローマさんを怒らせてしまって・・・。」
よりにもよって、料理か。
砕月
「ナハト、
後でクシェに試験場に来るように伝えてくれないか?」
この状況でクローマさんに見つかると、
俺に被害が拡大する。
ナハト
「はい、あ!
わ・た・し・も!行きますからね!!」
砕月
「あぁ、わかったよ、後でな?」
ナハト
「はい!」
気が重い、次の防衛戦は、
ナハトが指揮する隊もあるからだ、
偵察の早馬が、
エフェメールに大量の軍勢が到着したと、
報告して来た、街道には、
一度きりのトラップを大量に仕掛けてある、
踏めば最後、
研ぎ澄まされた枝を複数円形に配置したものが、
顔面めがけ突き刺さるのだ、
それも、丁度、
膝下に掛かるぐらいの草原に、隠してある。
砕月
「なりふり構ってらんないか。」
▽
試験場
砕月
「どうだ?火薬は使えそうか?」
「ダメですね、どうしても湿気にやられてしまいます。」
魔法があるから、化学は遅れてる、
その概念は“良い意味で”覆された、
どうやら、魔術師は科学者でもあるようだ、
いや、医者か、このムスクスにも魔術師はいたが、
攻撃用魔法を使える人間?は、いなかった。
砕月
「かといって、湿気だけを除去するにも、
魔術師の長時間集中する空間が必要だし、
負担も大きい、今回は見送るしかないか、
鋼鉄の糸を、剣に浸透させる方は進んでいるか?」
「はい、そちらは滞りなく進んでいます、
しかし、赤い炎の鋼鉄の糸を剣に浸透、
切れ味を上げるなんて、
すごいです!!どうしてそんな事を?」
砕月
「ごめん、これに関しては。」
「失礼しました!!
そうですよね、人殺しの武器を作る、
良いわけ、ないですよね。」
砕月
「それと、
直接ヴァールハイトに向かった早馬からの連絡は?」
「それが、途中の川で断念、
つい先ほど戻って来たばかりです、
川の色が変色し、
橋は腐り墜ち、異臭が立ち込めていたそうです。」
砕月
「その異臭に心当たりは?」
「疫病でしょうか?
その疫病で死んだ死体は、
発酵し、強烈な異臭を発するらしいです。」
砕月
「その疫病の原因は?」
「わかりません、
ただ、川の上流に何かが起こっただろう、と。」
砕月
「その早馬には悪いけど、
上流の調査、お願いできるかな?」
「構いませんが、今からですか?」
砕月
「下手をすればこちらの川にも
影響が出るかも知れない、
急ぎ調査隊を捻出、向かわせてくれ。」
「了解。」
クシェ
「あ、サイゲツ!」
砕月
「遅いぞ、これが試作品の
“太刀(たち)”だ、とりあえず、
持ってみてくれないか?」
クシェ
「へ~・・・では。」
ほぼ抵抗無く抜かれた真新しい刃は、
この世界では最高級の切れ味だと、
その後の防衛戦で広まる事となる。