いつか・・・   作:扶桑畝傍

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お父さん、お母さん、

僕、生きて帰れそうにありません、

目の前に、漆黒の巨大な壁があるからです。




クレーストの使者

 

ココン

『こ、怖い。』

 

それが、最初の感想です、

 

僕、ココン・ショセットは、

 

第二大隊の小隊長でした、

 

しかし、元老院から召集され、

 

ムスクス公益国に会談の要求をする為に、

 

使者として、派遣されました。

 

ココン

『全然、話に聞いていた街じゃない。』

 

話によれば、低い壁、住民も優しい人達で、

 

だけど、お金には五月蝿いって。

 

ココン

『これじゃぁ、要塞だ。』

 

鋭角に突き出た丸太が何十にも張り巡らされ、

 

“切り口の綺麗な死体がいくつか”

 

ココン

『・・・酷い。』

 

目は開いたまま、

 

そのまま・・・そう、

 

豚肉をスライスしたような死体ばかり。

 

ココン

『ぉお~い!!

 だれかいませんかぁあぁあ~。』

 

だ、だめだ、声が震えて。

 

「誰かっ!!」

 

いた!!人がいた!!

 

ココン

『僕は、ココン・ショセット!!

 隣国、

 クレースト国の使者としてここまできました~。』

 

あ・・・足が・・・。

 

「っ!?いいか!!そこから絶対動くなよ!!

 その死体と同じになってしまうからな!!

 直ぐに行く!!動くなよ!!」

 

ココン

『は!はいぃ~・・・。』

 

足に、力が入らない、

 

怖い、助けて・・・。

 

 

正直、あれが地獄なのかと・・・、

 

漆黒の壁に招き入れられ、驚きました、

 

何層にも高い建物、堅牢な作り、

 

大型馬車がひっきりなしに動いていて・・・、

 

なにか、大きな生き物に見えました。

 

ココン

『たっ、助かりましたぁ~・・・。』

 

「いいってことよ、

 しっかし、よく生きてあんな近くまで来れたな?

 そっちの街道にも、

 アレとおんなじの、けっこうあるんだぞ?」

 

え?

 

「お・・・おい?大丈夫かい?」

 

ココン

『・・・下手をすれば?』

 

「あぁ、サイゲツ様が作った鋼鉄の糸で、

 スライスされてたろうな!あはははははは!!」

 

ぜったい!!

 

笑い事ではないですよぉおおおおっ!?

 

ココン

『と、ところで、サイゲツ殿とは?』

 

「あぁ、知らないのか?

 この、ムスクス、エフェメール、ヴァールハイトを

 連合国にした最高責任者様だぜ?

 今や軍備の真っ最中、

 どっから攻められても、打ち倒せるぜ!!」

 

・・・攻められても?攻め入るのではなくて?

 

ココン

『あの!お会いになる事は可能でしょうか!?』

 

「ん?あぁ、このままついて来なよ、

 丁度、精錬所にいらっしゃるから。」

 

は?なんで?精錬所に?

 

 

精錬所

 

「サイゲツ様~!!

 

 隣国!!

 

 クレースト国の使者様をお連れしましたぜ~!!」

 

砕月

「悪い!!日が落ちてからにしてくれ!!

 今、手が離せない!!使者の方!!

 もうしわけない!!

 本日中にはお伺いしますので!!

 街の観光でも楽しんでください!!

 お前ら!!ここからだ!!

 火を絶やすな!!紫の炎を決して絶やすな!!」

「『「はいっ!!」』」

 

目の前に広がる熱波の中に、

 

異色な人間がいました、

 

あぁ、彼が、サイゲツ殿なんだろう、と。

 

「あちゃ~、

 タイミング悪かったっすね。」

 

砕月

「クリミア!!連れてきた責任だ!!

 お前が案内しろ!!客間にも案内しろ!!

 滞在中は、お前が相手してくれ!!

 見張りの交代は俺からの命令だと!

 伝えておいてくれ!!」

 

クリミア

「ちょっ!?サイゲツ様っ!?」

 

は?

 

クリミア

「あぁ、こりゃ駄目だ、絶対聞こえない・・・。」

 

顔つきが・・・皆も、なんて鋭い顔なんだ・・・。

 

クリミア

「んじゃぁ、行きますか、

 ようこそ、連合国、ムスクス自治区へ。」

 

ココン

『え?あ!はい!よろしくお願いします!!』

 

 

ココン

『なんて言うか・・・活気が凄いですね。』

 

森から切り出したであろう丸太を、

 

大型馬車に積み込んで、正に出発しようとしている。

 

クリミア

「あれは、ヴァールハイト自治区行きですな。」

 

ココン

『ヴァールハイト自治区?』

 

クリミア

「あぁ、連合国内では、国境がないんですよ、

 それで、旧国境線を自治区の境界にして、

 それぞれで統治をしているんです。」

 

ココン

『そんな事が・・・。』

 

クリミア

「これぐらいで驚いてたら、

 心臓がいくつあっても足りませんぜ?」

 

ココン

『はぁ?』

 

どうしよう、既に限界を感じてるのに。

 

クリミア

「サイゲツ様はな?一般人なんだ。」

 

ココン

『はぁああああああああっ!?』

 

クリミア

「だから、言ったでしょうに、

 それにここを守備する兵士は、皆、一般人、

 元国王は、そのまま自治地区長をお勤めになって、

 どんどん要塞化を進めてますぜ?」

 

ココン

『いっ!?一般人の命令を受け入れてるんですかっ!?』

 

クリミア

「命令じゃねえんだこれが、

 お願いして、納得したからやってるんだぜ?」

 

し・・・信じられない!!

 

クリミア

「ちなみに、

 第一王女様のクローマ様、

 エフェメール国のナハト様、クシェ様、

 ヴァールハイト帝国のルーペス様が、

 サイゲツ様の側室なんだぜ?

 ちなみに、ナハト様が第一婦人だ。」

 

長・・・ここはとんでもない国です・・・。

 

クリミア

「んで、どうするこれから?

 観光って言っても、

 ここは精錬所やら、実験場、試験場だらけで、

 あんま面白みがあるわけじゃないんだが。」

 

ココン

『と・・・とりあえず、休める所に。』

 

クリミア

「おっと、こいつは失礼、

 すぐ、ご案内いたしまさぁ!」

 

 

もう・・・無理です。

 

クリミア

「クローマ様・・・。」

 

クローマ

『なんだい?あんまりジロジロ見ないでくれ、

 その、恥ずかしい。』

 

ルーペス

『ん?クリミアか、サイゲツはいないのか?

 アイツめ、デザインばかりばんばん作りおって、

 綺麗に見せつつ、機能を充実しろだの、

 見えすぎない美を突き詰めろだの、

 意外と五月蝿い奴でな、おい?聞いているのか?』

 

クリミア

「すいません、このクレースト国の使者の方でして、

 しばらく滞在するので、客室へ、と、

 サイゲツ様から、お達しがありましてね。」

 

あわわわわわ!?

 

素晴らしい実りがたゆんたゆんと・・・。

 

ルーペス

『そうだったか、ようこそお出でなされた、

 ゆっくりして行かれよ。』

 

ココン

『は・・・ひ。』

 

むり・・・です。

 

 

ココン

『いつつ・・・あれ?ここは?』

 

砕月

「気づかれましたか?」

 

ココン

『っ!?』

 

え?え?なんでっ!?

 

砕月

「こんな服装でもうしわけない、

 一息つこうとしたとたん、

 使者の方が倒れられたと一報が入りまして、

 こちらに参った次第で。」

 

ココン

『いっ!?いえっ!?あれはですねっ!?』

 

砕月

「ルーペスから、聞いています、

 家のメイド達が粗相をしたようで。」

 

ココン

『いっ!?してませんしてません!!

 むっ・・・むしろ・・・。』

 

砕月

「まぁ、みんな美女ばかりですからね・・・、

 男は肩身が狭いですよ。」

 

ココン

『あ・・・あはははぁ・・・、

 しっ、しかし、あのお召し物は?』

 

砕月

「あぁ、デザインは俺が書いて、

 実寸、調整、コストを全てルーペスに任せている、

 一般人向けのおしゃれ着ですよ、

 価格も、

 この国の金、銀、銅、全てにラインナップをそろえ、

 バリエーションを増やし、

 デザイナー、仕立て屋の雇用を増やしています。」

 

ココン

『なんと・・・まさか、

 クローマ様が着ていたアレも?』

 

砕月

「あ~・・・アレはですね?

 水着、と、言いまして、

 揮発性、撥水性、伸縮性を重視、

 川遊びに着ていける服ですよ。」

 

ココン

『・・・なんと・・・まぁ・・・、

 すごかったです・・・はい。』

 

砕月

「デスヨネー。」

 

 

この何日か、いろいろ案内されました、

 

精錬所、試験場、実験場は、危ないので断念、

 

近くの川へ案内されて驚きました、

 

川はまっすぐ伸び、

 

くの字の港湾設備が整いつつありました、

 

巨大な帆船の造船ドックも完備されていて、

 

一度に、大木を30本運べる代物だそうです、

 

恐ろしい・・・、

 

元老院はこんなにも強力な連合国に、

 

戦争を吹っかけようとしていたなんて・・・。

 

ココン

『ん?』

 

砕月

「どうされました?」

 

ココン

『あの奥の施設は?』

 

砕月

「あぁ、病院です、名前だけですけどね。」

 

ココン

『見学しても?』

 

砕月

「・・・その前に、戦場へは何度か?」

 

ココン

『え?まぁ、紛争程度なら。』

 

砕月

「・・・覚悟、してくだいさいね?」

 

頷きました、決して笑顔を崩されない顔が、

 

泣きそうなお顔になってしまわれたから。

 

 

入口は綺麗でした。

 

砕月

「すまない、少し、

 使者の方が視察をしたいと申されてな、

 大丈夫かな?」

 

『それは、貴方様です、ただ、

 手術中の患者も

 いらっしゃいますので、お覚悟を。』

 

砕月

「・・・了解。」

 

ココン

『手術?』

 

若干、後悔しました。

 

ベットには多種多様の怪我をされた方々、

 

疫病にかかってしまった方々も・・・、

 

ガラスの扉で、何重にも、区切られていました。

 

ココン

『助かるのですか?』

 

砕月

「わかりません、

 魔術師達は、日々、全力で立ち向かっています。」

 

それしか言いませんでした、

 

もう、お顔には・・・涙が浮かんでいたのです。

 

砕月

「いやなら、

、耳を塞いでください、でも、

 聞こえますけどね。」

 

酷(むご)い、激痛に耐えながら、

 

引きちぎられた足を、

 

“縫い合わせているのですから”

 

砕月

「麻酔があれば、違うんでしょうけど、

 まだ、人間に使うには猛毒です。」

 

ますい?

 

砕月

「人間を強制的に眠らせ、

 痛みを和らげるのです、

 しかし、それに必要な植物は、

 極少量しかありませんでした、

 今、増産の為の設備を整えている最中です、

 それに、使用する量を間違えれば、

 それは死に直結します、

 だから、激痛に耐えてもらう意外・・・。」

 

悔しさに溢れていました・・・、

 

知っていても、どうする事も出来ない、

 

その悔しさが・・・

 

涙を絶え間なく流していたのです。

 

砕月

「行きましょう・・・。」

 

その場所を後にし、

 

ある、扉へたどり着きました。

 

砕月

「・・・どうぞ。」

 

・・・これは。

 

砕月

「ここでは、

 戦争、事件、事故、魔物に襲われ、

 四肢欠損の重症を負ってでも、

 生きておられる方々の施設です。」

 

「サイゲツさま!」

 

「サイゲツ殿!!」

 

砕月

「皆、ありがとう、

 生きていてくれて、ありがとう。」

 

あぁ・・・この人は死なせてはならない、

 

こんなにも命を大切にするお方なんて・・・。

 

砕月

「皆、辛いだろうが、“手足をそこの御仁に”

 見せてはくれないだろうか?」

 

ココン

『こ・・・これはっ!?』

 

砕月

「義手、義足です、

 まだ、掴むには程遠いですが、

 魔術師の魔法陣のおかげで、

 握手はできます、歩けます、

 できれば、この事を、一番、正確に、

 クレースト国に、お伝え下さい。」

 

ココン

『・・・はぃ・・・必ず!!必ず!!』

 

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