ダンまちの世界に転生したので 作:黒うさぎ
「ようこそ、死後の世界へ」
「…へ?」
突然広がった端正に整ったイケメンの面を呆然と見上げながら、俺はそんな変な声を飛び出させた。
「…あれ、ここ、どこ?」
「ここは死後の世界。貴方はとっても残念なことにお亡くなりになられました」
「…え、じょ、冗談だよな…?」
「いえいえ、けして冗談などでは」
にこやかに俺の言葉を否定するそのイケメンから俺はとりあえず距離を取って、辺りを見渡した。
真っ白な空間が、どこまでも広がっていた。地面も天井も壁もない。だから地平線すらない。俺は猛然と眩暈を覚えて、手を頭にやってふらついた。
「な、なんだよここ…」
「だぁから死後の世界ですってば。そろそろご理解のほどよろしくお願いしたいのですが」
「し、死後の世界ってなぁ、俺は死んでねえぞこら!」
「いいえいいえ。死んでますってヴぁ。ほら」
「…な、なにを」
むぎゅ、とイケメンに『腹』をつままれて、何すんだと文句を言おうとして、言い様のない違和感にすぐに言いとどまる。そして、恐る恐るそのつままれた場所に視線を下ろした。
俺のお腹の中身がでろんと飛び出ていた。
「な、何じゃあこりゃあああああ!?」
「いやぁ、社会の窓全開的な恥ずかしさを感じますねぇ」
「内臓飛び出てんのを社会の窓と同列視してんじゃねえぞ!?っていうかお前は一体いつまで俺の内臓をつまんでんだこら!」
「まあまあ、そう慌てない。痛くないでしょ?」
そう言われて俺はやっと痛みが全くないことに気が付いた。
「…いや、でもやっぱり内臓から手を離せよ」
「なんか感触が癖になってきまして」
「はずいから離せごら。親にも見せたことねえんだぞ!」
「私が初めての相手…と、いう事ですね…」
「ぶっ殺すぞ!?」
気色悪っ!?イケメンの照れ顔を間近に見せられてもうなんというか気色悪っ!
つーかそろそろマジで内臓から手を離せよマジでえええ!
「さて、そういうわけであなたはトラックに引かれて死んでしまわれたわけですが」
え?俺トラックに引かれて死んだの?
「いや、っていうか普通に話を続けようとしてんじゃねえぜ!?いいか、そっとだぞ、まずはそっとその手をだな…!」
「死した魂は天界にて平和に暮らすのが定石なのですが、実は定員がオーバー気味でして…誰かほかの世界に転生してくれそうな魂さんを募集中なのですよねぇ…」
「普通に話を続けんなマジで…って、定員オーバー?何その悲しい理由」
「あれですよ。『二人組作ってー。残ったやつは先生と組もうなー』的なノリですよね」
「やめろぉ!」
全国のボッチさんのトラウマスイッチを刺激すんじゃねえ!
「つーか、俺は転生するつもりはねえな。普通に天界でゆっくり暮らしてえ」
「何々?『俺は転生してチートで異世界ハーレムを形成したい』だって?こっちの口は正直ですねぇ」
「俺の腹の穴から出た内臓で一人芝居しないでくれる…?」
「というわけで異世界行きけってーい。わーわーどんどんぱふぱふ」
「てめえ、そろそろ本気でぶん殴るぞ…!」
こいつ、そもそも俺の話を聞くつもりがねえな…!
「っていうかお前は何者なんだよ…」
「私はロリコンです。ついでに神様をやっています。よろしくお願いします」
「こいつ性癖を先に暴露してきやがった…!」
こいつロリコンなのかよ。イケメンの癖に残念なやつだな…。
「ちなみに私のお嫁さんは130人います。全員が幼女です」
「うわぁ…」
流石に言葉を失った。
「さて、私のユニークなジョークで貴方も大分落ち着いてきたようですね。そろそろ転生しましょうか」
「ちなみに天界へは…」
「転生する世界は申し訳ありませんがこちらで勝手に決めさせていただきました。貴方が転生する世界は『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』に決まりました。いやぁ、よかったですねえ」
「ダンまちとか…いやいや、行きたくねえわ普通に。天界でゆったり暮らしたいわ」
「だぁめ」
「コロス」
ウィンクしているその顔面に右ストレートをたたき込みたい。
「大丈夫大丈夫。貴方の魂ならベル・クラネルと同じくらいには強くなりますって。神様の私が言うんだから間違いないですよ」
「特典とかはないのか?」
「そんなインチキお父さん認めませんよ」
「誰がお父さんじゃい」
「それじゃあ本当にそろそろ言って来てください。次死んだときはちゃんと天界にお招きしますので」
「じゃあ別に今すぐ天界に行ってもいいんじゃ…」
「いってらっさーい」
「アイルビーバック、アンドキルユー」
こうして俺はダンまちの世界に転生する事になったのだった。