ダンまちの世界に転生したので 作:黒うさぎ
「…はっ」
俺は目を覚ました。無理やり意識を浮上させたような感覚がして目眩を覚えたが、何とか堪えて立ち止まる。
「…ここは…」
左右を遮る湿った壁に、長方形に切られた青空。水っ気の多い空気が頬を撫でる。
「路地裏…つかあのロリコン野郎め、どこに飛ばすか位言っとけや」
俺はぶーたれつつ、取り敢えず外に出ることにした。いつまでもここにいない奴の文句を垂れてても何も変わりゃしねえからな。
「ってか今時系列的にどの辺よ。説明不足スギィ」
今度会ったらあのロリコン神の顔面に右ハイキックを食らわせてやろう。
「うーん、やっぱり冒険者にならなきゃいかんのかな…まあ、それ位しか稼ぎ口が見つかりそうもねえんだが」
俺はアニメエンジョイ勢だったからな。世界観を完全に持ってるわけじゃねえんだぜ…。
「とりあえずベル君を見習ってファミリアに特攻かましますか」
目の前に広がった中世ヨーロッパの町並みを眺めながら、俺は両頬に平手打ちを入れて気合を入れた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「二度と来んなこの腐れ坊主!死んじまえ!」
「黙れこの糞ゴリラこっちこそてめえのファミリアに入るのなんざお断りなんだよそもそもなんでお前俺と出会うまで死んでなかったの出会う前に死んでやろうとかいう優しさは無かったのああそうかそういう気遣いが出来なかったから女にモテてないんだっけかじゃあな糞ゴリラいつか良いことあるって」
「慰めてんじゃねえぞぉ…!ぐすっ、てめえロクな死に方しねえからな!!」
ゴリラがぶわっと泣き始めてしまったのが気持ち悪くてすぐに離れる事にした。
「はあ…これで15個目だぞ。なんか入る前に相手が泣き出しちまうんだよなぁ。全く、ガキばかりで嫌になるぜ」
「いや、あれは流石にキミの所為だと思うんだけどね…」
「んお、あんただれ?」
いつの間に近くに寄ってきていたのか、可愛らしい声が降ってきたので視線をそちらに…
「って、でけえ!?」
「おいおい、人の顔を見ていきなりなにを…」
「うわっ、ちっせえ!?」
「んな!?」
でかい胸に小さい身長。謎の紐を胸に掛け、身体のラインのよく出る服をきた美少女…ダンまちの登場キャラでヒロインの1人である神・ヘスティアの怒りに頬を膨らませた姿がそこにはあった。
「キミ、初対面の人に随分と失礼じゃないかなあ…?」
「はあ、あんまりにもびっくりしたんで…すまん」
「むぅ、なんだか納得できないが、まあいいだろう。所でキミかい?ここら辺でずっとファミリアを回ってるっていう冒険者志望の少年と言うのは」
「まあ、その通りだが」
「なんでもその暴言で大の男を10人以上も泣かせてしまう鬼の様な少年だと聞いてたんだけど…なんだ、案外可愛い顔をしているじゃないか」
ジロジロと値踏みするように見られる。っていうか誰だよ、人の事を鬼呼ばわりしやがったやつは。俺のような心の広い人間を捕まえておいて失礼な奴だぜ。
ちなみに俺の今の容姿は恐らく前世の俺の中学生時代の身体を整えて磨いたみたいな感じの格好となっている。イケメンとは言えないがブサイクとも言えない、そんな中途半端な感じだった。まあ自分の容姿なんざどうでも良いから文句は言わんが、イケメンにするならするで最後まで行けよな、あのロリコン野郎。
「…よし、キミ!」
「おう?」
「僕の名前はヘスティア。神ヘスティアさ!冒険者になりたいんだろう?なら僕のファミリアに入らないかい?今は小さい所だけど、これからどんどん大きくなっていく予定さ!」
そういってヘスティアは大きく胸を逸らした。
馬鹿な…まだ大きくなる、だと…!?
「よし、入るぞ俺は」
「まあ、最初はそうだよねえ…だけど僕の話を聞いたらきっと考えが変わると思うんだ…って、え?今なんだって?」
「入る入る。正直冒険者になれるんならどこでもいいやもう」
これだけ回ってダメなんだから、もうぼろっちい教会で妥協するしかないだろう。
あんまりストーリーに介入するのは避けたかったのもあるし、生きる為にスタートラインは出来るだけ整わせたかったのだが…そもそも冒険者になれないのなら本末転倒だしな。
「…〜っや…」
「や?」
「やったああああああ!僕はやったよ、ベルくうぅぅん!」
「…うるっせえ」
目の前で万歳しまくる神様に、俺は耳を抑えながら小さくそう吐き出した。