--あと200メートル--
朱崎の目と鼻の先には金色と赤色に輝く龍。そして、闇の光弾が互いに拮抗しあっていた。
「あれか。」
闇の光を放っているのは仮面ライダーオーズの世界で全てのメダルを壊す力を持つ「無」のグリード。ギル・グリードであることは情報と目ですぐに分かった。
「ちょっと急がなきゃまずいか・・・。」
"Ganba driver stand by ready."
「変身!!」
ガンバドライバーにICカードを入れた瞬間、朱崎の周囲を炎が纏い、彼をガンバライダーの姿「セイオウ」へと変化させた。
「さあ、ミッション開始だ!」
セイオウは背中の羽の推進力を高め、戦いの場へと足を急がせた。
リオは双龍円舞によって呼び出した龍と共に黒を纏ったギル・グリードと激しい攻防を繰り広げていた。
「これほどの子供がいようとは・・・。」
「まだまだですよ!!」
リオは剣を振りかざし、ギルへと剣先を掠らせた。
「ちっ!!」
ギルはあからさまな舌打ちを鳴らすと、リオの剣を蹴り飛ばし、光弾をいくつも放った。
「うわっ!!」
黒と紫を纏った光はリオの腹に直撃し、そのまま彼女を地面へと叩きつけた。
「あなたは終わりを見たいとは思いませんか?」
「えっ・・・?」
リオはその言葉に呆然とする。
「この世界の終末。それはとても美しいものです。」
その声は淡々としていて色はない。だが、その声の強さにリオは後ずさりをした。
「でも・・・。」
リオは震える足を必死に止めてギルへと目を向けた。
「今ある世界だって美しくて綺麗で、それを皆守ろうとしてるんです!だから私は・・・!!」
「あなたも・・・「彼」と同じですか。」
ギルは遮るように言葉を放った。その「彼」を説明することなく、低い高さを飛び、リオへと迫った。
「だから私は!!」
ギルは拳を突き出し、リオへと拳をぶつけた。
「なっ!!」
リオはギルの攻撃をまともに受けた。しかし、彼女の片手には電撃のような黄色い光を纏っていた。
「雷光拳!!」
リオはそのままギルを殴り飛ばした。まともに食らったギルはそのまま少し遠くに飛ばされた後、受け身を取るように空中で一回転した。
「私はこの世界を守ります。それが、今の私たちに出来ることだから!!」
ギルは少しため息をついて手に黒い闇を持った。
「ならば私が終わらせます。この世界を。」
ギルは幾多もの光弾を一気にリオに放った。その数は凄まじく、リオは防ぐことすら不可能だった。
「うわああああああああ!!」
叫び声と共に無数の爆風と炎が彼女を覆った。爆風と炎が止んだ先には倒れ込むリオの姿があった。
「これで・・・終わりです。」
ギルは大きな闇をリオへと放った。リオは目を瞑り、自らの終わりを悟った。
"レモンエナジー"
その刹那、闇と同時のタイミングでリオの横を細い光が通った。その光は少し淡い黄色で、その闇を吹き飛ばすほどの力だった。
「ガンバライダー・・・ですか。」
リオの前にいたのは赤く、孔雀のような羽を持ったガンバライダーだった。
「大丈夫かい?リオちゃん・・・だっけ?」
「は・・・はい。」
男の差し伸べた手をリオは掴み、名前を呼ばれたことへの困惑を隠そうとした。
「俺は朱崎勇気。ガンバライダーの名は「セイオウ」だ。」
セイオウは優しくリオを立たせると、すぐさまギルの方向を向いた。
「その羽根・・・アンクくんの力ですか。」
「さすがはオーズの世界のグリード。よくご存知だ。」
セイオウは仮面ライダー鎧武の世界の武器である「ソニックアロー」の光の先をギルへと向けた。
「いくよ!リオちゃん!」
「はい!」
リオは再び剣を構え走り出した。それと同時にセイオウもソニックアローを構え走り出した。
ギルはそれを見はからうように空へと飛び、空から光弾を放った。
「フェザーピット!!」
「雷龍!!」
セイオウはリオの放った龍に続くように背中の羽根をギルへと飛ばした。
「っ!!」
放たれた光弾は龍によって掻き消され、続くように無数の羽根がギルへと直撃した。
「やりますね。ですが・・・。」
ギルは大きな闇を作り出し、それを小さく固めた。
「何をするつもりだ・・・!!」
ギルは淡々とした声でその言葉に返答した。
「かつて私を消し去ったアンクくんとオーズの力。あれは恐竜のメダルの力を凝縮して作られたもの。つまり同じ原理を利用すれば・・・。」
セイオウはハッとして突撃するリオを止めた。
「リオちゃん!待って!!」
リオが振り向いたその瞬間だった。ギルは凝縮した闇を放ち、小さなブラックホールを作り上げた。
「うわあああああああああ!!!」
「リオちゃん!!」
リオは飲み込まれていき、セイオウは助けようとしたが遅かった。その手は少し届かず、彼女が吸い込まれる瞬間だけが目に残った。
「さあ・・・あとはあなただけです。ガンバライダー。」
セイオウは羽根の推進力を高め、ギルへと刃を向けた。
「貴様あああああああああ!!」
それに呼応するようにギルもまたセイオウの元へと飛ぶのだった。
暗い・・・。闇の中にいるような感覚だ・・・。
「!?」
リオが目を開けると、そこは様々な残骸が転がった空間の中だった。先ほどまでことなど何も覚えてなどいない。
「皆は!?戦いはどうなったの!?」
彼女が誰かに問おうとしても何も返ってこない。響くこともない声がただ遠くに飛んでいくだけだった。
「そっか・・・。私・・・独りだったんだ。」
リオはそう呟いた。誰かが手を差し伸べてくれるわけじゃない。孤独な闇の中でずっと潜むのかもしれない。
「もう・・・ダメなのかな。」
きっと皆は戦ってる。ヴィヴィオやコロナ、アインハルトやフーカやノーヴェ。そしてリンネも。でも自分は・・・。
「ゴメンね・・・。皆。」
「本当にそうかな?」
涙声のリオに声をかけたのは一人の男だった。男は三枚のメダルを手に彼女に話しかけた。
「本当に君に手を差し伸べてくれる人が・・・いないと思うかい?」
「私は・・・。」
リオは男を強い目で見つめた。男は派手な柄の服の裾を直しながら、話を続けた。
「きっと君には手を差し伸べてくれる人がいる。そして君も、誰かに手を差し伸ばしてる。」
リオは自分の手を見つめた。知らず知らずの間に集まった絆。彼女が差し伸べた手を握ってくれた人たちがたくさんいた。
「私に・・・まだチャンスはありますか?」
男は首を縦に振った。
「君がそれを望むなら・・・。望めば必ず手に入る。だから君は前に進むんだ。」
リオは立ち上がり男の横を通り過ぎていく。リオには聞こえた。通り過ぎ様に男が「頑張ってね。」と言ったことを。
セイオウとギルは激しい空中戦を繰り広げていた。
「あなたに変えられると思いますか?彼女の終わりを。」
「ああ変えてやる!!貴様をぶっ潰した後にな!!」
ソニックアローからは幾多もの光の矢が放たれ、ギルはそれを華麗にかわしていく。そして、ギルはセイオウの首を掴んだ。
「ならば送ってあげましょう。同じところに・・・!!」
ギルは地面へ投げ飛ばすと、もう一度闇を溜め始めた。
「まだだ!まだ終われるか!!」
「絶招!炎雷砲!!」
ギルへと二色を纏った蹴りが飛び、ギルはそのまま地面へ叩きつけられた。
「まさか・・・。」
「どういうことだ・・・!?」
セイオウとギルは開いた口が塞がらなかった。そこにいたのはブラックホールへ飛ばされたリオだった。
「大丈夫ですか?朱崎さん!」
リオが手を伸ばすと、セイオウは優しくその手を取った。
「まさか君にこうされるとはね。」
少し照れ顔を見せたのち、すぐにギルの方を向いた。
「さあ!いきましょう!!」
「あぁ!さっさと終わらせよう!」
リオは剣を持ち、セイオウはソニックアローを構え同時に走り出した。
「何度でも同じことです。」
ギルは冷淡な声で幾多もの光弾を放った。リオとセイオウはその光弾をいくつも弾いていく。
「はぁ!!」
二人の同時にはなった斬撃がギルに直撃し、ギルはその場で倒れこんだ。
「さあ、決めるか。」
リオは小さく頷き、二体の龍を再び召喚した。
「バーストチェンジ!!」
セイオウは消し飛ばしカードを反転させると、先ほどよりもさらに大きな羽根が彼に宿った。
「雷神装!」
リオは周囲に雷を纏わせた。
「行くぞ!!」
ギルの光弾を弾き飛ばし、二人は空へと飛んだ。
「プロミネンスドロップ!!」
大きな羽根を広げた炎の爪は、闇を吸収しギルを掴んだ。
「バージョン・・・ロストブレイズ!!」
セイオウの爪はギルの両腕を引き裂き、そのまま上空へと飛んだ。
「雷神砲!!」
雷撃を纏ったリオの一撃がギルを貫いた。そのまま貫いたリオはセイオウと共に地面に着地した。
「私は・・・。」
リオはギルへと近づいた。
「絶対あなたが望んだ世界にはなりませんよ。終わりなんてないですから。」
ギルは少しほくそ笑み、リオの手を握った。
「ならば見せてもらいましょう。この世界の「未来」を。」
その握った手は消えていき、果ては灰色のカスとなって消え去った。
「じゃあ行こうか。リオちゃん。」
「はい。行きましょう。」
見ててください。その想いを奥底にしまい、朱崎と共に空へと飛び立った。
そして消滅した場所からは、幾つものメダルが空を飛び去って行った。