鉄血のオルフェンズ 黒狼   作:妖牙

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 二話でありながらいきなりの戦闘シーン&8000字越え・・・。

 至らぬ所はあるかと思われますが、読んでいただければ幸いです。




第二話

第二話『黒狼』の牙

 

 とある暗礁宙域。スペースデブリが多く漂流しているせいで誰も通行しようとはしないそんな宙域に、二隻の戦艦―――――より正確に言えば装甲強襲艦だが―――――が、日の光から逃れるようにひっそりと佇んでいた。

 

 勿論、彼らとてこんな誰も通り掛かることのない辺鄙な場所に好き好んで佇んでいるのではない。では彼らがこの宙域に滞在している理由とは一体何なのだろうか?

 

 観光?いやいや、こんな場所で観光に洒落込もうなんて思う人間はまず居ない。では、長い船旅の中で設備が故障して立ち往生している真っ最中?それこそ論外だ。何処かの設備が壊れているどころか、何時でも戦闘状態に突入しても問題無い程によく整備がされている。

 

 観光でも、故障による立ち往生でもない。ならば一体どんな理由があるというのだろうか?もうお分かり頂けているのではないだろうか。

 

 そう彼らはお天道様の下では到底繰り広げることが出来ないであろう『裏』の稼業を生業としているのだ。目の前に動く物があれば、何にでも襲い掛かっては何もかもを奪い去る、所謂『宇宙海賊』的な所業だ。そんな暴力、略奪は当たり前の『無法者』達の集団が活動するには、正にこの宙域は打って付けだった。

 

 あらゆる組織の目を欺きながら活動を続けてきたのだ。当然、その存在を知っている人間は極僅かだ。となれば、この場所にそんな奴等が住み着いているなどとは一般人が知ることなど到底出来る筈がない。その結果として、不用意に近付いた一般人が襲撃され、その多くが命を奪われてしまうといった事態を招いてしまっている。

 

 さて、そんなこんなで色々と悪行を働いてきた彼らではあるが、当然それ相応の『報い』というものはどんな場所に居ようとも等しく降りかかってくる。

 

 ―――――――赤く輝く瞳(メインカメラ)に睨まれながら、今宵もまた『報い』の牙が悪へと突き立てられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「怪しい影は無いな?」

 

「ああ、俺達以外は誰も居やしねぇ。大丈夫だ。」

 

 艦のブリッジ内で、顎髭を蓄えた筋骨隆々の大男とスキンヘッドが特徴的な男がそんな会話を行っていた。この二人こそ、この『お尋ね者』達の集団を率いるトップとNo2である。

 

 元々は傭兵として様々な戦場を転々としていた二人だが、何の因果かこのような稼業に身を窶してしまうことになってしまった。

 

 だがこの二人、このような稼業に身を窶してしまったことを決して後悔はしていない。寧ろこれが天職だったのだろうと、水を得た魚のように生き生きとし出す始末である。

 

「しっかし、俺達も運が良いよな。まさかこれ程の規模にまでなれるとは思ってもみなかった。」

 

 そう言いながら顎髭を扱く大男。流石にギャラルホルンなどといった大戦力を有する組織と真正面からぶつかり合うのは厳しいが、それでも戦艦二隻を保有し、更には虎の子とも言うべきMSも数機だが確保することに成功しているのだ。少なくともそこら辺の連中が相手になったとしても、そう易々と負けることはないだろう。

 

「何言ってんだよ。これからもっと大きくして、それで行く行くはあのギャラルホルンすら凌ぐくらいの組織にしてやるんだ!」

 

 大男の言葉を聞いたスキンヘッドは、その大男の言った台詞に反論するかのように自らが思い抱く野望を声高々に宣言する。スキンヘッドの目にはギラギラとした野望の炎が灯っており、その宣言した野望を本気で実現するつもりであるということがよく分かる。

 

「お前って奴は相変わらず・・・。まあ、組織の規模をデカくするっていうのには同意・・・!?」

 

 大男はスキンヘッドの言葉に若干呆れを感じながら同意しようと口を開いていた途中でブリッジを激しい振動が襲った。

 

(襲撃か!?)

 

 いきなりの襲撃に戸惑いつつも、頭の中では状況の整理を進めていく大男。やはり幾多の戦場を駆け抜けたのは伊達ではない。

 

「損害は!?」

 

「主砲一門大破!それ以外の損傷はありません!」

 

 思ったよりも少ない損害で済んだことに内心で安堵の溜息を零す大男。だがその安堵もすぐに引っ込んでいくことになる。

 

「エイハブ・ウェーブの反応を探知!数は3、MSです!」

 

「MSだと!ま、まさか・・・!」

 

 オペレーターから齎された情報から、一つの予想を立てる。出来ることなら当たって欲しくはない予想を。

 

 だが、そんな大男の思いとは裏腹に、その予想は現実のものとなる。

 

「グレイズ・・・間違いない!ギャラルホルンだ!」

 

 ブリッジからは、グレイズが三機此方へ高速で接近してくる様子が肉眼で目視出来た。だが、その三機のグレイズの中でも一際目を引くのは先頭に立っている恐らく指揮官用と思しき黒い機体だ。

 

 所々に赤色のアクセントが加えられた、黒を基調としたカラーリングをしており、本来ならば黄色に発光する筈のセンサー部も赤く発光している。右腕には他の二機が装備しているライフルとは比べ物にならない程に大きい、アンチマテリアルライフルをMS用に大きくした――――――正確には『対艦ライフル』と言うのだが――――――ような武装が装備されている。

 

 そして何よりも目立つのは、左肩に白い塗料でペイントされた口を開いて牙を見せつける狼の横顔を象ったパーソナルマーク。

 

「あ、あの色とマーク、間違いない・・・『黒狼』だ。」

 

 大男が呟いたその言葉に、ブリッジに居る他のメンバー達の全員が凍り付いた。当然だ。このような稼業に身を投じている人間からしてみれば、真っ先に出会いたくないと思っていた相手なのだから。

 

 『黒狼』――――――この世の治安を乱す『悪』を片っ端から排除していく容赦のなさと、常に黒い塗装と『狼の横顔』のパーソナルマークが施された機体を駆ることからそう呼ばれるようになった、ギャラルホルンのエースパイロット。

 

 この『黒狼』に仕留められた連中はかなりの数であり、一度目を付けられたら二度と逃げることは出来ないとされる。そんな人物と遭遇してしまう羽目になってしまったのだ。

 

『所属不明艦に告ぐ。直ちに武装を解除し投降せよ。繰り返す、武装を解除し投降せよ。』

 

 ブリッジ内部に響く、威圧感が存分に込められた若い男の声。誰の声か、など詮索するまでもない。

 

(何てこった!まさかここでギャラルホルンの『黒狼』とやり合う羽目になるとはな!)

 

 どう答えを返せばいいのか頭の中で思考を巡らせる大男。最初から戦うという選択肢は存在しないし、かといって大人しく投降するつもりも毛頭ない。何とかして上手く逃げられる策を考える必要がある。

 

(幸い敵は三機だけ。それに引き換え、こっちは戦艦二隻に戦闘可能なMSも四機ある。)

 

 これなら乗り切れる、そう判断した大男はジェスチャーでMSの発進を急がせるように合図をしつつ、近くにある通信を開いた。

 

『いきなりそっちから撃ってきておいて、大人しく投降しろはないんじゃないか?なあ、『黒狼』さんよぉ。』

 

 まずは様子見を兼ねて話でも振ってみる。どちらにせよ、MSを発進させるまでの時間稼ぎもしなければならない以上、少しでも向こうの注意を此方に引き付けておかねばならない。

 

『いきなり撃ったことについては詫びよう。』

 

 大男の言葉に対する返答はまさかの謝罪。しかも先程まで声に込められていた威圧感が抑えられ、少しだけだが雰囲気も軽くなっていた。これには流石の大男も肩透かしを食らった気分になった。

 

『意外だな。てっきり色々と御託を並べてくるのかと思ったんだがな。』

 

『通告もなくいきなり撃ったのは事実だ、俺はそれを認めたに過ぎない。まあ、だからと言ってお前達を見逃すつもりはないがな。』

 

『ハハハ、謝っておきながら見逃すつもりはないと来たか。まあ、逃がして貰えるとは思っちゃいなかったがよ。』

 

『寧ろ見逃して貰えるような稼業をしている人間なら、こんな辺鄙な所に来る訳がないだろうに。』

 

『違いねえ。』

 

 戦闘状態に突入する寸前とは思えないような会話を交わす二人。ギャラルホルンに所属している兵士とは思えない程の気さくな雰囲気と会話につい話し込んでしまった様子の大男。

 

(まさかあの『黒狼』がこれ程にお喋りだったとはな。)

 

 やっぱり一度は実物を拝んでおくもんだな、と内心で呟きながら再び通信を繋ぐ。既にMSの発進準備は完了した。これ以上時間を稼ぐ必要もない。

 

『ギャラルホルンなんぞクソ食らえと思っていたが、アンタとは馬が合いそうだ。』

 

『・・・そうか。』

 

 それを機に会話が途切れ、周囲に沈黙が訪れる。最後に『黒狼』が呟いた一言には一体どんな思いが込められていたのか。それを知るのは本人のみだ。

 

『・・・さて、時間は十分に与えただろう。返答を聞こう。』

 

 沈黙を破ったのは再び威圧感の込められた『黒狼』の声だった。だが、大男からの返答はすぐには帰っては来なかった。

 

 再びの沈黙。だが、その沈黙は長くは続かなかった。

 

『はっ!投降なんぞ誰がするものか!』

 

 先程と全く変わらない声色でそう叫ぶ大男。そしてその大男の言葉に呼応するように、戦艦の周囲にMS四機が展開し始める。

 

『投降はせず、か。ならば望み通りにしてやる!』

 

 一方で、大男が投降しないと大声で宣言したのを聞いた『黒狼』は自らが搭乗する黒い機体―――――シュヴァルベグレイズのスラスターを噴射し、二隻の戦艦へと一気に接近していく。

 

『小隊各機に通達!交戦を許可する!食い散らかせ!』

 

『了解!』

 

 そして、『黒狼』の言葉に呼応して後方に控えていた二機のグレイズも、スラスターを噴射させながら戦艦へと接近し始める。

 

『野郎共!相手はあの『黒狼』だ!気ぃ引き締めて掛かれ!』

 

『おう!やってやんぜ!』

 

 戦艦の周囲に展開していてMS達も護衛の為の一機のみを残して、順次グレイズに向かって突進していく。

 

 海賊側が使用するのは、通称『ヘヴィ・ロディ』と呼ばれる厄災戦後に放棄されていたロディ・フレームを回収し、改造を施したもの。通常のロディ・フレームを採用した機体よりも重装甲で、防御力の高さが特徴的な機体である。その防御力の高さは折り紙付きだが、反面機動性が低いため速さを求められる戦術には不向きという欠点も併せ持つ。

 

 さて、そんな機体が汎用性の高さが売りのグレイズとそのグレイズを高出力化させたシュヴァルベグレイズとぶつかれば果たしてまともな戦いになるだろうか?

 

『くたばれ!ギャラルホルンの犬が!』

 

 そう言いながら突進してくる一機のヘヴィ・ロディ。その先にいるのは黒いシュヴァルベグレイズ、つまりは『黒狼』だ。

 

 ヘヴィ・ロディが右手に持ったマシンガンを掃射しながら牽制していくが、その掃射を何事も無かったかのようにあっさりと持ち前の機動性を生かしながら回避していく『黒狼』のシュヴァルベ。殆ど身動ぎすらせず、機動もほぼ一直線のままでありながら全く当たる気配がないのを感じたヘヴィ・ロディのパイロットは、マシンガンをかなぐり捨てて、腰に装備されているマチェットを右手に持たせてから接近戦を挑みに行く。

 

『うおぉぉぉぉぉぉぉ!』

 

 『黒狼』のシュヴァルベが至近距離に近づいて来るのと同時に、カウンターを入れるようにマチェットを振り下ろそうと操縦桿を操作するヘヴィ・ロディのパイロット。しかし、ヘヴィ・ロディがマチェットを振り下ろすよりも早くシュヴァルベの左腕から射出されたワイヤークローが、ヘヴィ・ロディの頭部にあるメインカメラを貫通する。

 

 本来ならば拘束用の装備であるワイヤークローだが、頭部のメインカメラなどの比較的防御の薄い箇所をピンポイントで狙えばこのような武器にもなるのだ。尤も、狙いが定めにくい上に、普通に武器を使ったほうが早い為にこのようなことは『黒狼』以外は誰もやらないが。

 

『なっ、モニターが!?』

 

 いきなりメインカメラを潰されて混乱するヘヴィ・ロディのパイロット。そんなパイロットをよそに、動きの止まったヘヴィ・ロディの四肢の関節を対艦ライフルで一つずつ迅速に撃ち抜いて破壊していく『黒狼』。まだ戦闘が始まってから一分も経っていないにも関わらず、早くも一機を戦闘不能にしてしまった。

 

『まずは一機。』

 

 そう呟いてから、自らが戦闘不能にしたヘヴィ・ロディを追い越していく『黒狼』。その活躍を見た他のヘヴィ・ロディのパイロット達は動揺しつつも、『黒狼』を最優先で片付けるべきだと結論付けて、『黒狼』へと群がるように向かっていく。

 

『アイツを止めるぞ!アイツだけは行かせるな!』

 

『あ、ああ!』

 

 そのような会話を交わした後、『黒狼』の行く手を遮るように展開する二機のヘヴィ・ロディ。だが、この時の彼等は『黒狼』に意識を集中し過ぎていた為に、他にもグレイズが居たことを失念していた。

 

『隊長の邪魔はさせん!』

 

『三佐の所には行かせない!』

 

 二機のヘヴィ・ロディへとライフルによる射撃を行う二機のグレイズ。『黒狼』のシュヴァルベに意識を割いていたことによって、グレイズからの銃撃をまともに食らってしまい、体勢を崩されることになったヘヴィ・ロディ。

 

 グレイズの銃撃によって体勢を崩した二機のヘヴィ・ロディの間を、先程までのスピードを殺さぬまま一気に通過していくシュヴァルベ。一機は沈み、二機は足止めを食らっているこの状況では、最早『黒狼』の足を止められるものなど有りはしない。二隻の戦艦に向けて、一気に機体を加速させていく。

 

『う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!こっちに来るぅぅぅぅ!』

 

『狼狽えるな!相手はたったの一機だ!戦艦二隻の対空防御は流石に突破できまい!』

 

 一気に近づいて来るシュヴァルベに半狂乱になりかけている護衛に残ったヘヴィ・ロディのパイロットとそれを宥めるように口を開く大男。

 

『全砲門開け!兎に角撃って撃って撃ちまくれぇぇぇ!』

 

『了解だぜ!』

 

 大男の号令と共に、二隻の戦艦から激しい砲撃の嵐が襲い掛かってくる。普通のMS乗りであったならば、取り付くことはおろか近付くのでさえ困難な程の苛烈な砲撃だ。

 

『これはまた随分と手荒い歓迎だな!』

 

 だが、今この場にいるのはあの『黒狼』なのだ。少なくとも『たったの』戦艦二隻程度の砲撃では、彼を撃ち落とすどころか掠り傷一つすら与えることは出来ない。

 

 それを体現するかのように、砲撃の雨の中を常軌を逸する戦闘機動で潜り抜けていく『黒狼』。時には直角に進路変更を行ったり、ある時には滑らかな曲線を描くような優雅さすら感じられる移動を見せたりといったような戦闘機動の数々。そのような戦闘機動を見せる彼の技量、そしてその体に掛かる負荷は一体どれ程のものなのだろうか。考えるだけでも筆舌に尽くしがたいものであるのは間違いないだろう。

 

 そして、そのような機動を繰り返しながら敵戦艦からの砲撃を躱しつつ、シュヴァルベの右手に装備されている対艦ライフルで一つ一つ敵戦艦に備え付けられた主砲などの火器を潰していく。その甲斐あってか、少しずつだが確実に砲撃の雨が沈静化していく。

 

『ええい、何故だ!何故当たらん!?』

 

 大男の焦りが籠った声が外部スピーカー越しに聞こえてくるが、そんなものはお構いなしに対艦ライフルでの狙撃を続ける『黒狼』。殆どの武装は破壊され、戦艦は丸裸同然の状態にされつつあった。

 

 そんな中で、『黒狼』からの狙撃が突然止んだ。何事かと思って注目してみれば、右腕に装備されていた対艦ライフルが宇宙空間に廃棄されている。

 

 弾切れ。それを察知した大男は急いで残ったヘヴィ・ロディへと通信を繋ぐ。

 

『奴め、弾が切れたらしい。今がチャンスだ!首を取って来い!』

 

 あれ程に目立つライフルを獲物にしているのだ、きっとあの武器を使った狙撃や銃撃戦には滅法強いのだろうが、接近戦は不得手なのだろうと予想していた大男はヘヴィ・ロディのパイロットに戦うように指示を出す。

 

『お、おう!』

 

 大男の言葉を聞いたパイロットは、自らが搭乗するヘヴィ・ロディをシュヴァルベに向けて突進させる。確かにあの機動力と狙撃能力は大したものではあった。だが、その戦法の要である対艦ライフルが使えなくなった以上、奴は丸腰になったも同然。今の奴なら自分にも勝てる、と心の中で自分に言い聞かせるように呟くパイロット。

 

 実際、パイロットと大男の予想は間違ってはいなかった。『黒狼』の機体はどちらかと言えば射撃戦に特化したチューニングが施されており、高い機動力と射撃能力を生かした一撃離脱戦法を得意とする。だからこそ、右腕には戦艦との戦闘を見越した対艦ライフルが装備されているのだ。だからこそのそれが無くなってしまえば戦闘力は大幅に低下してしまうという予想は決して間違ってはいない。

 

『後先考えずにバカスカ撃ってるから丸腰になんかなるんだよバァカァァァ!』

 

(勝った!俺は勝ったぞ!)  

 

 ただ、彼等の予想には一つ間違いがあった。それは―――――――

 

『誰が丸腰だって?』

 

 マチェットを振り下ろそうとしてきたヘヴィ・ロディの腕を左手のワイヤークローで挟み込むようにして受け止め、すかさず右手で左腰に装備してあったショートソードを引き抜いてそのままヘヴィ・ロディの右肩の関節へと突き刺す。動かなくなったヘヴィ・ロディの右手からマチェットをワイヤークローを操作して素早く奪い取ると、そのマチェットを右手に持ち替えてから今度は左肩へと振り下ろして左腕を使い物にならなくさせる。

 

 両腕が使えなくなったヘヴィ・ロディは後退しようとするが、それよりも早くシュヴァルベが後方に回り込んでヘヴィ・ロディの背面にあるバックパックに向けてそこら辺に漂っていたヘヴィ・ロディのマシンガンを掃射。バックパックも破壊して、完全に戦闘が出来ない状態にした。

 

 彼等が立てた予想の間違い。それは、『黒狼』が接近戦もこなせる―――――というか接近戦の方が強い狙撃手であったことだった。

 

『そんな・・・嘘だろ・・・。』

 

 信じられない、いや信じたくないと言わんばかりにそう呟くパイロット。無理もない、勝ったと思っていたら気が付けば行動不能にさせられていたのだ。そう言いたくなる気持ちも分かる。

 

『相手を一方的に過小評価しないことだ。』

 

 それだけ言い残すと、『黒狼』は戦艦に向けて機体を移動させる。

 

『三佐!ご無事で!?』

 

『すまない隊長。思いの外時間が掛かった。』

 

 そんな『黒狼』の元に、二機のグレイズが合流してくる。それが何を意味しているのかは言わなくとも分かるだろう。

 

『心配ない。損傷は?』

 

『損傷は軽微、戦闘に支障はありません。』

 

『此方も同じだ。』

 

 『黒狼』の呼び掛けにそう応じる二機のパイロット。それを聞いた『黒狼』は内心で安堵しつつ、彼等に再び戦闘の指示を下す。

 

『そうか。なら、もう一隻の方を頼む。武装だけ破壊してくれればそれで良い。』

 

『了解。』

 

『了解した。』

 

 『黒狼』の指示にそれだけの反応を示すと、もう一隻の方へと向かっていく二機のグレイズ。武装の大半は『黒狼』が片付けてしまった以上、完全に丸裸にされてしまうのは時間の問題だろう。

 

 そして、残されたもう一方の戦艦にシュヴァルベが取り付く。右手に持ったマシンガンをブリッジに向けて構えながら通信を開く。

 

『其方の戦力はほぼ殲滅した。これ以上の抵抗は無意味だ、大人しく投降せよ。』

 

 返事はない。ただ沈黙だけがその場に訪れる。

 

『・・・頼む、投降してくれ。これ以上撃ちたくはない。』

 

 本当に悲痛そうな声で己の心情を吐露するようにそう通信機越しに話す『黒狼』。その言葉を聞いて、ブリッジ越しにただ『黒狼』の乗るシュヴァルベの赤色に輝くメインカメラを見つめ続ける大男。

 

『・・・俺達はどうなる?』

 

 沈黙を破ったのは大男の絞り出すような疑問の声だ。

 

『罪状によるが、実刑は免れないだろう。下手をすれば極刑も有り得る。』

 

 そう告げた『黒狼』の声を聞いて、瞼を閉じて黙考する大男。

 

(全く、運がねえよなぁ俺も。)

 

「お前等、俺にまだ着いて来る気はあるか?」

 

 その大男の言葉に、ブリッジに居るメンバーの全員が無言で首を縦に振り肯定の意を示す。それを確認した大男は、肩を竦めながら溜め息を吐いた後、再び通信を開く。

 

『俺達の負けだ。投降する。』

 

『受諾する。』

 

 大男の投降の宣言と、それを受諾する『黒狼』の声が宙域に居る全ての人間の耳に届いた。

 

 こうして戦いは終わり、また一つの『悪』の芽が摘み取られた。だが、それでもまだ『悪』は消えない―――――――




~今回登場した機体について~

『ヘヴィ・ロディ』
 早い話がマン・ロディ。但し、マン・ロディとは違い地上での活動も視野に入れた改修が施されており、地上でも一応活動可能。(それを踏まえると、どちらかと言えばガルム・ロディに近い機体だと言える。)

 武装はマチェットとマシンガンが基本だが、状況に応じて換装する。


『シュヴァルベグレイズ(レオナルド機)』
 『黒狼』の異名を冠するレオナルド・ラインベルガー三佐専用のシュヴァルベグレイズ。高い機動力を生かした高機動射撃戦と遠距離からの狙撃戦を想定した調整が施されており、右腕には専用装備として『対艦ライフル』が装備されている。『対艦ライフル』の威力は凄まじく、遠距離からでもMSの装甲を貫くことも可能。だがその火力の都合上反動が強い為扱いが難しく、特に連射時の命中精度は極端に下がる。これをまともに扱えるのはレオナルド・ラインベルガー三佐を含めた極一部の人間のみ。(対艦ライフルについては、ヅダの対艦ライフルをイメージして下さい。)

 また、黒い機体色と赤く発光するセンサ部以外で他のシュヴァルベには見られない特徴として、背面のフライトユニットがX字(若しくはH字状)に配置されている、つまり四つになっている点が挙げられ、これによって他のシュヴァルベを凌駕する機動性を獲得している。反面、パイロットに掛かる負担と求められる操縦技量も大きくなる筈なのだが、レオナルド・ラインベルガー三佐は手足のように使いこなしている。

 武装は対艦ライフルとショートソード。

 ・・・土曜日か日曜日に投降したいと言っていたらまさかの一週間明けてからの投降だったでござる。(白目)

 次回も出来るだけ早く投降出来るように努力致します。 
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