注意・一部独自解釈が出ます。そして、原作を意識して描いていますが、今回のお話でキャラクターの性格が変わったまたは歪められていると感じられる方がいらっしゃるかもしれません。苦手な方はご注意下さい。
第五話雌伏
俺の専用機の修理が完了するまでの間だけ出されていた休暇が終わり、俺は自分の職場である『月外縁軌道統合艦隊』(又の名を『アリアンロッド艦隊』とも言う)へと久々に出勤していた。
まあ、出勤すると言っても、『アリアンロッド艦隊』は各コロニー群に艦艇を駐留させているため、基本的に自分が配属された地域(宙域か?)を担当している艦艇に直接出向くという形となっている。だが、今俺が居るのは普段駐留している艦艇ではない。
そう、今俺が居るのは『アリアンロッド艦隊』の旗艦であるスキップジャック級戦艦である。えっ、スキップジャック級って何ぞ?と思う人もいると思うから一応説明しておくと、『鉄血のオルフェンズ』の本編の中で『アリアンロッド艦隊』の視点に移る時にふっくらとした大きい戦艦が画面に映ったりしているだろ?要はあれのことだ。
さて、何故俺がそんな超弩級戦艦に居るのかについてだが、その理由はもうお分かり頂けているのではないだろうか。俺がこのスキップジャック級に居る理由、それはこの艦艇に居る『ある御方』に呼び出されたからだ。『アリアンロッド艦隊』に所属していて、更に旗艦とも言うべきスキップジャック級に常日頃から乗艦している人物となれば、俺を呼び出した人物は最早『あの人』しかいない。
そう、『セブンスターズ』の一家である『エリオン家』の現当主にして、『アリアンロッド艦隊』総司令。『ラスタル・エリオン』其の人である。『鉄血のオルフェンズ』を見たことがある人々からは『肉おじ』なんて言われていた御仁でもある。何の因果か俺がこの人の部下として日々働くことになるとは思わなかったが、一個人として見てみれば非常に付き合い易い人物ではあった。尤も、本編でやっていた所業を思うと決して油断は出来ない。これからも、隙を見せないように気を付けなければいけない。
おっと、そんな事を言っている内にラスタル様が居るだろう部屋に通じるドアの前へと到着したようだ。制服の襟を正した後、真面目な表情を作りながら、自動ドアの近くにあったインターホンらしきものを操作して口を開く。
「レオナルド・ラインベルガー三佐、只今参上致しました。」
『入れ。』
「はっ!失礼致します。」
ドアの前で俺が『ちゃんと呼ばれた通り来ましたよ』という意思表示をした後、ドア越しに入室を許可する声が聞こえてきたのでゆっくりと室内へと入っていく。
開いたドアの中から、調度品の少ない実用性重視の内装と奥の方に座っているラスタル様が見えた。ラスタル様の位置を確認した俺は迷うことなくラスタル様が座っている机へと歩き、机の前に来ると同時に足を止めてギャラルホルン式の敬礼をする。
「久し振りだな、レオナルド。」
「お久し振りです、ラスタル様。」
目の前に居るラスタル様から当たり障りのない言葉を掛けられ、それに対して此方も当たり障りのない言葉を返しておく。
「早速で悪いが、先日の件について話をさせてくれ。」
挨拶もそこそこに、早速仕事の話に入るようだ。そう言うと同時に、資料が入っていると思われるファイルを此方へと差し出してくる。
「拝見致します。」
ラスタル様から差し出されたファイルを受け取ると、すぐに開いて中身を確認する。中身は今回俺が参加することになった任務の概要やその行き先等についてだ。この任務を『アリアンロッド艦隊』へと回してきたのは『監査局』所属の特務三佐二名。行き先は火星支部で、行きと帰りの護衛を行ってもらいたいという内容だ。期間は移動期間と火星支部での業務期間を合わせて最長数カ月程度、最短で数週間を予定しているとのことだ。
『特務三佐二名』という単語と『火星支部』という単語を見れば、もうこの任務がどのような物なのかはお分かり頂けるだろう。そう、『鉄血のオルフェンズ』の本編の中で描写されていた、火星支部『アーレス』へと『監査局』から『マクギリス・ファリド』と『ガエリオ・ボードウィン』の二人が向かうシーンへと繋がる任務となっているのだ。
「内容については、概ね把握しました。」
全ての資料に目を通し終え、内容を確認したという事実をラスタル様へと告げる。
「何か質問はあるか?」
此方に視線を向けながら、質問はないのかと問いかけてくるラスタル様。質問なら山程あるさ。何で俺なんかにこんな任務が舞い込んで来たんだとか、もっと他に適任者がいただろうとかさ。まあ、それをラスタル様にぶつけるのは御門違いだろうけど。
まあ、俺なんかにこんな任務が舞い込んできた理由は大体想像が出来るさ。どうせ、アイツ等と同期の中で俺位しか適任者が居なかったんだろうよ。
「移動手段はビスコーですか?それと俺以外の人員は連れていっても大丈夫でしょうか?」
ビスコーというのは、早い話がマクギリスのシュヴァルベグレイズが発進するシーンで登場した小型の宇宙艇のことだ。『ビスコー級』とも言った気がする。まあ、もし俺一人だけだというのならビスコーだけで十分だしな。
「人員についてだが、お前の率いている小隊と合わせて何名か連れていくと良い。移動手段については、ハーフビーク級を一隻持っていけ。」
そう言ったラスタル様からの言葉に、正直驚いた。まさか『ハーフビーク級』を持ち出しても構わないと言い出すとは思わなかったな。尤も、アインとクランクも一緒に連れて行って構わないというのなら、MSをより多く積載出来る『ハーフビーク級』の方が適任だろうが。
「宜しいのですか?ハーフビーク級まで持ち出して。」
俺がそう問うと、ラスタル様はあっさりとした態度で口を開いた。
「構わん。今回の護衛対象が『セブンスターズ』の関係者である以上、万全の態勢で臨む必要がある。僅かな人員と戦力だけを派遣して護衛対象に何かあれば、笑い者にされるのは明らかだからな。」
まあ、お前が居る以上万が一など起こりようがないがな。と付け加えた後で微笑するラスタル様。最後の一文必要だったのか?と今でも思う。何か、知らない内に過大評価されてる気がする。
「それで、他に質問はあるか?」
一通り俺からの質問に答え終わったラスタル様から再び疑問があるかを聞かれる。他に聞きたいことか。ふむ、特にないな。
・・・言いたいことは山ほどあるけど。
「いえ、特にありません。」
「そうか。」
俺からの返答を聞いたラスタル様は、返事を返した後右手で顎を擦りはじめた。何か考え事をしているのは分かるんだが、一体何を考えているのやら。
まあ、ラスタル様のことだ。きっととんでもないこととか考えてるんだろ。(錯乱)
「そういえば。」
どうやら考え事が終わったらしいラスタル様が突然口を開き始める。突然どうしたんですかねぇ?まあ、意図が分からない俺は疑問に満ちた表情をラスタル様に向けておく。
俺の表情を見た後、口元に微笑を浮かべながら再度口を開いた。
「例の『アレ』はどうするつもりだ?」
その一言でラスタル様が言いたいことの全てを察した。一応表情も察しが付いたような表情を作っておく。えっ?『アレ』って何のことか分からないって?ヒントは俺の専用機だよ。これでもう分かるよな?
「『アイツ』のことですか?そうですね、もう動かせますから問題がなければ持っていこうかと思っています。」
俺からの返答を聞いて何処か感心したような表情を浮かべるラスタル様。何故そのような表情を浮かべるんだろうか。
「ほう、もう実戦投入出来るのか。相変わらず見事だな、『フォルセティ』の仕事振りは。」
ああ、何かと思えば『実家』の仕事を評価してたのか。それなら納得した。因みに、『フォルセティ』っていうのが俺の実家である『ラインベルガー家』が立ち上げた会社のことね。北欧神話絡みの名前だという所がまたこの世界の世界観に影響を受けているように感じられるよ。
えっ?規模?まあ・・・名前負けしない程度の規模はあるとだけ言っておくよ。
「とはいえ、ロールアウトしたのは本体だけですけどね。」
結局整備が完了したのは本体のみで、武装とかはまだ整備が必要な状態だ。つまり、今俺が使えるのは飽く迄も装備を取っ払った素体のみなのだ。まあ、『アイツ』の装備は整備に手間が掛かるって言ってたし、何よりもOSと本体の完成を急がせた俺のせいなんですけどね・・・。
俺の言葉を聞いたラスタル様は、少しだけ意外そうな顔をした後、再び口を開いた。
「本体だけか。装備はどうする?」
「一応『実家』が製作した装備を幾つか持ってきました。それらと一緒にシュヴァルベで使っていた装備をそのまま流用しようかと思います。」
ラスタル様からの疑問に対し、そう返す。俺からの返答を聞いたラスタル様は合点がいったらしく、納得したような表情を浮かべた。
「それなら持って行っても問題無いな。では、『アレ』の搬入が完了し次第出発ということで問題はないな?」
「はい、問題ありません。」
ラスタル様からの問いかけに対して、しっかりと意思表示を行う。ラスタル様は、俺から確認を取れた後一息の間を置いてから口を開いた。
「そうか。では頼んだぞ。」
「はっ!それでは失礼させて頂きます。」
ラスタル様からの言葉を聞いた後、ギャラルホルン式の敬礼をしてから部屋を退出する。部屋から出るその瞬間まで、気を抜かずにしっかりとした姿勢で歩く。
そしてドアから出た直後に回れ右をして、もう一度ギャラルホルン式の敬礼をする。笑みを浮かべていたラスタル様の顔を一瞬確認した後にドアが閉まった。
ふう、やっと一息つけるぜ。まあ、やることは山のようにあるんだけどね・・・任務の準備とかさ。全く、やってられんよ。
「さてと、早速準備に取り掛かるか。」
内心で現状に愚痴を零しながら、準備を行う為に俺は動き出した。さてさて、まずは何から取り掛かりましょうかねぇ?
「貴方が此処に居るとは珍しいですね。ラインベルガー三佐。」
「ん?」
早速準備に取り掛かろうと移動していた途中で誰かに呼び止められた。声で女性だと分かったし、声に聞き覚えがあったから何となく誰なのかは分かった。分かってしまった。
振り返りたくないでござる。(某剣客コラ風)
正直、準備とかで忙しいから今は構いたくない。普段なら何時でも構ってあげるのだが・・・まあ、そんなこと彼女からすれば関係ないか。一度反応してしまった以上、何時までも無視するというのは失礼だ。時間が全くない訳でもないし・・・まあ、是非もないネ!(某ノッブ感)
意を決して振り返ると、そこにはまあ予想通りの人物が佇んでいた。短めな金色に近い色合いの髪が特徴的な、近い将来に蝶々でもパクりしてしまいそうな人物。
もう言わなくても分かるよな?
「ああ、ジュリエッタか。何か用か?」
そう、あの『ジュリエッタ・ジュリス』だ。第二期でレギンレイズを乗り回すことを許された技量はこの目で何度か見せられたが、まあ凄かった。流石だと言わざるを得なかったよ。
まっ、負ける気はサラサラないがね!
「模擬戦をお願いしたかったのですが・・・如何やら、お忙しいようですね。」
表情こそ乏しかったが、何処かしょんぼりしたような声で話し掛けてくるジュリエッタ。何の用かと思えば模擬戦の誘いか。この娘も飽きずに良くやるよ、本当に。まあ、強くなることに貪欲だってのは俺も同じだから気持ちは分かるんだけどね。
まあ、平時であれば付き合うのだが、今は忙しいのだ。心苦しいが断らせてもらおう。
「ああ、色々と準備があってな。済まんが模擬戦はまた今度な。」
「いえ、此方こそ無理を言ってしまって申し訳ありませんでした。」
俺が断りの言葉を入れると、ジュリエッタは気にしていないという気持ちが多少込められた声で返事をしてくれた。ラスタル様に関連のある話題があったら突っかかって来るんだけど、それ以外だと基本的に良い娘だからね。ちゃんと敬語も使えるし、普通に話す分には問題ないんだよね。
・・・どっかの御曹司は面倒だが。誰の事かは察してくれ。
「それじゃあ、俺はそろそろ行くわ。また今度な。」
それだけ告げて、俺は準備の為に足を進めようとしたが。
「ラインベルガー三佐。」
「ん?まだ何かあるのか?」
まだ何か言いたいことがあるのか、ジュリエッタに呼び止められる。一体何を言いたいのかね?
俺が再び振り返ると、意を決したような表情でジュリエッタが口を開き始めた。
「私は貴方の実力を知っています。だからこそ私は貴方を尊敬しています。」
まあ、ラスタル様程ではありませんが。と付け加えた後で一旦言葉を区切るジュリエッタ。えっ?俺って尊敬されてたの!?やったぜ!(歓喜)
まあ、最後に付け加えられた一文については然程気にしていない。知ってたからね。でもさ、それ今言う必要あるの?
「ああ、それはありがとう。」
一応素直に感謝の言葉を返しておく。俺からの言葉を聞いたジュリエッタは少し面食らったような表情をした後で再び口を開いた。
「ですが、いずれは貴方を越えてみせます。そしてラスタル様からの信頼を貴方から勝ち取ってみせます。」
決意に満ちた表情でそう言い切ったジュリエッタ。目には炎が映っているのではないかと言わんばかりの闘志が込められていた。何故、今言ったのか。そして、ジュリエッタよ。俺はラスタル様に信頼されているんじゃない。使い倒されているだけなんだ。(震え声)
まあ、そういう決意を持つのはいい事だ。人間は決意があればその分だけ成長するからな。成長しない奴も中にはいたけどね・・・。
「成程、そういうことか。」
眼を細めながら言った俺からの言葉を聞いたジュリエッタの顔には緊張の色があった。恐らく俺が気分を害したとでも思っているのだろう。そう思ってくれていると良いなぁ・・・。
間を置かずに、口元に不敵な笑みを浮かべながら俺は口を開く。
「俺で良ければ越えていけ。お前になら何時か出来るだろうさ。」
それだけ言うと、振り返ってまた歩き始める。そして、歩きつつ空いている右腕を掲げてもう一度口を開く。
「但し、そう簡単に越えられるとは思わないことだ。精々励めよ。」
右手を適当に振った後、右腕を下げてそのまま歩くことに専念する。ふっ、これで話を程々に切り上げつつも、いい感じに締めることが出来たぜ。
「ラインベルガー三佐!」
あれ?何だか聞き覚えのある声が聞こえるな。振り返ってみると、やはりそこには見慣れたアイン・ダルトンの顔があった。
「アイン?お前も来てたのか?」
可笑しいな、少なくとも俺は小隊員を『スキップジャック級』に連れてきてないぞ。何で居るんだ?
「はい、三佐が率いる小隊員全員に総司令官から召集がかかりました。」
成程、ラスタル様の仕業か。それなら納得したが、やることがちょっと大仰過ぎませんかねラスタル様。
「成程ね、じゃあクランク達も?」
「はい、全員居ます。」
俺からの問い掛けに、快く返事を返してくれるアイン。うん、やっぱり良い部下だわ。
「ところで三佐。」
「ん?」
アインが俺の後方に視線を向けながら何やら疑問の声を上げる。はて?何かあるのかい?
「また絡まれたのですか?」
「へ?」
絡まれた?何を言って・・・あっ!いっけね!ジュリエッタが居たんだった!
「アイン、別に俺は―――――――って居ねえ!」
少し考え事してた瞬間にアインがどっかに行ったぞ!?何時の間に瞬間移動なんか覚えやがった!?
「また貴女でしたか。いい加減ラインベルガー三佐に多大な迷惑を掛けていることを自覚して下さい。」
「私がラインベルガー三佐の手を煩わせている、と?そうおっしゃりたいんですか?ダルトン三尉。」
「実際その通りでしょう。再三に亘る模擬戦の申し出に、三佐がどれ程迷惑していることか。」
後ろから聞こえてくる口論。それが繰り広げられているであろう方角に振り返ってみると、やはりアインとジュリエッタが口論を繰り広げていた。
いかん、こうなることをすっかり忘れていた!何故だか知らんが、アインはジュリエッタに突っかかっていくようになったんだよね。最初の方はこんなことにはならなかったのに・・・一体何があってこうなったんだ?
兎に角、今はこの口論を止めねば!
「いや、アイン?別に俺は苦労なんてして―――――――」
「それを言うのであれば、ダルトン三尉もラインベルガー三佐と模擬戦をしているではないですか。自分の事を棚に上げて、私だけを責めるというのは如何なものかと思いますが?」
「自分は三佐に迷惑の掛からないように節度は弁えています。無暗矢鱈に模擬戦を申し出てくる貴女に比べれば、遥かに良心的かと思いますが?」
互いに目線で火花を散らしながら無表情で睨み合う二人を見ていると、少し頭痛がしてきた。これは長引くパターンだわ、トホホ・・・。
「取り敢えず、二人共落ち着こう、な?」
右手で目頭を一折揉んだ後、無難な言葉を掛けつつ二人の会話の中へと入り込んでいく。さっさと準備もしなけりゃならんのに、これで大丈夫かね・・・。
今回はこれまでとなります。今回のお話に不快感を感じた方もいらっしゃるかと思いますが、何卒ご了承下さい。次回こそ、必ずや火星に行かせたいと思います。
それと、一カ月前のことなんですが、父親の仕事を手伝っていた合間にこの小説の評価バーが赤色になっているのを確認しまして、目が飛び出そうになりました。(人生初のレッドバーに変な笑い声が出て、隣で作業してた父親に変人を見るような目を向けられましたが・・・。)
評価をして下さった皆様にはこの場を借りて心からの感謝を述べさせて頂きます。本当に有難うございます。
次回も早めに投稿出来るよう努力致しますので、これからもこの作品を見守って頂けると幸いです。