気付いたらお気に入りが激増してて驚きました。
日間にものせていただいてたみたいで、ありがたいです。
これをモチベーションにして、書き続けていきたいと思います。
それではご覧下さい。
訓練戦が終わったあと、良次は太刀川と嵐山隊の面々に素性を明かしていた。
かつては数百人の門下生を抱えていたこともある武術道場。尤も今は廃れてしまっているが、とにかく良次はその道場の跡取り息子にあたるのだ。幼い頃から、周りに娯楽が少ない状況で研鑽を重ねてきたために、先ほどのような剣技を披露することが出来たのだという。
「へぇ、そりゃ強いわけだな」
「結構鍛えてると思ってたけど、やっぱりよし君って凄かったんだね!」
「は、はる姉さんにそういってもらえると、とても嬉しいです!ありがとうございます!」
遥に誉められ、全身で喜びを顕にする良次。嵐山はそれを少し呆れたような顔で眺めていたが、不意に思い出したかのように疑問を口にした。
「そういえば、二戦目の時に剣を振り回してたのは何だったんだ?適当に振り回していたように見えたが」
「ああ、あれはその通りですよ。ただ適当に振り回していただけです」
「何でだ?さっきの話を聞くに、君ならもっときちんと振れそうだと思うんだが」
「ああ、それはですね」
質問の意図を理解した良次は、少し頭のなかで言葉を整理するために一拍ほどの間を置いたあと、再び口を開いた。
「確かに多少なら質の高い攻撃はできたかもしれませんが、相手が太刀川さんほどの人ではそれではなんの意味もありません。それよりは、あの一戦を捨ててでも、腕と肩周り、それに剣の感覚を馴染ませようと思いまして。時間があるときなら一本一本集中して素振りをするべきだとは思いますが、あの時は急を要しました。それなら、めちゃくちゃでも、より数をこなしたほうが有効だと考え、あのような形で行動に移しました」
「ふむ、なるほどな。少し気になったもんでな」
「いえ、全然大丈夫ですよ」
暫くそのように会話をしていると、ふと、太刀川が時計を確認する。この後に任務があることを完全に忘れていたのだ。
「おっと、そろそろ任務の時間だわ。俺はここら辺で失礼するぜ 」
「ありがとうございました!また対戦よろしくお願いしますね!」
立ち去ろうとする太刀川に良次が声を掛けると、嵐山隊の面々も別れの挨拶をする。すると、太刀川は去り際に、何かを思い出したかのように振り返り、良次に声をかけた
「稲葉、だったか?ランク外戦ばっかしてないで、ちゃんとポイント稼げよ。お前には早く正隊員になってもらわないと困るからな」
じゃあな、と手を振りながら去っていく太刀川をみつめながら、最後に残した言葉を頭のなかで反芻する。しかし、その意味をしっかりと捉えられなかったため、嵐山隊に尋ねることにした。
「・・・えっと、ランク外戦って何ですかね?ランク戦と何か違いが?」
「え?うん、今の対戦みたいに、C級と正隊員の対戦はそう呼ばれるんだけどね、双方の合意のもと、ポイントの移動なしじゃないと、行われないことになってるんだけど・・・」
その言葉を聞き、良次は数秒間固まった。頭ではその言葉の意味を理解していたが、心では祖の事実を拒絶していたのである。しかし、無情にも頭のなかで無意識的に言葉の理解が完了すると、ゆっくりと自分の個人ポイントを確認した。
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「・・・・・・・・・はぁ」
「お、落ち込まないで!大丈夫だよ、よし君!今回の対戦はポイントなしだけど、よし君ならすぐにB級になれるよ!」
「うぅ、ありがとうはる姉さん。俺、頑張るよ」
なかなかの苦労をしたにも関わらず、目的であったポイントが全く得られなかった良次は、結果ひどく落ち込んだ。そのあまりの落ち込みように、遥が即座に慰めにかかる。その甲斐あって、良次もなんとか気持ちを持ち直す。が、しかし、
「いや、さっきの勝負の後だと、C級隊員は誰も相手してくれないんじゃない?」
「そうだな。逆に、正隊員の奴らは戦いたがるだろうし。その場合は、やっぱりポイントの移動はないわけだが」
「ええ、現に私も今、良次さんと戦いたいと思ってますし」
嵐山隊の面々のその言葉を聞き、改めて自分は取り返しがつかないことをしてしまったのか、と落ち込む良次。
「もう!なんでみんなそんなによし君を落ち込ませるようなこと言うんですか!」
「いや、なんか面白くなって、ついな」
「はい。というか、私は本当に戦いたいですし。どうですか、良次さん」
言われた通り、確かに今日C級の人とランク戦をやるのは厳しいだろう。そう考えると、より強い人と戦った方が経験になるだろう。そう結論付けた良次は、木虎に応じようと振り向いた。
「稲葉良次さーん!いらっしゃいますかー?」
その声が聞こえてきたのは、その時である。見ると、ボーダーの職員らしき小柄な少女がランク戦のブースの方へと向かいながら、自分の名前を呼んでいた。それに対して良次は、手を挙げながらすぐに応答する。
「はい。自分が稲葉ですが、どうかしましたか?」
「ああ、やっと見つけました。って、あれ?嵐山隊の皆さんお揃いでどうかしたんですか?」
「お、三上か。まあ、三上が探していた稲葉が綾辻の親戚だったから、見に来てたってところかな」
「そうなんですか?」
「うん。ところで歌歩ちゃん、よし君が何か用事があったんじゃないの?」
よし君、という名称に該当する人物に関して、少し考え自分が探していた稲葉良次というのことだと理解したその少女、三上歌歩は当初の用事を思い出し口を開いた。
「そうでした!えっと、新入隊時に全員に実施している、近界民戦闘訓練としてバムスター討伐のタイムアタック、あと実施していないのはあなただけなので、探していたんです」
「え、本当ですか?すみません、余計な手間をとらせて」
「いえ、それは大丈夫です。でも、時間がないので、この後すぐに行ってもらうことになりますが、よろしいですか?」
「承知しました」
三上歌歩とそのように言葉を交わしたあと、良次は再び木虎の方へと向き直る。
「すみません。戦うのはまた後程、ということでよろしいでしょうか?」
「ええ、仕方ないですから。その代わり、しっかりと見させてもらいますよ」
「はい。不甲斐ない結果にならないよう、頑張ります」
「うん、応援してるよ、よし君!」
「はい!全力を尽くして頑張ります!」
良次のその様子に、嵐山隊の面々は多少呆れをもって見つめる。しかし、先ほどの動きを見る限り、かなりのタイムが出ることが予想され、自然と楽しみな気持ちが涌き出てくる。
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その後、良次たちは訓練ブースへと移動し、良次はタイムアタックの準備を整えていた。
「バムスターとやらの耐久力はどの程度なんでしょうか?」
ブースの中に入ると、良次は急に誰にともなくそう尋ねた。その質問にたいして、三上が言葉を返す。
「一応、新人の相手なので、トリオン兵のなかでは最弱です。なので、そこまで耐久力は強くはないはずですよ」
「一太刀で倒せるくらいですかね?」
「ええ。過去に何人かそのような人もいましたよ。過去最速は4秒です」
「なるほど。あと、これは凄い重要なことなのですが、この訓練ではポイントは貰えるんですか?」
「はい。最大20点満点で成績に応じて加算されることになってます」
「承知しました、ありがとうございます」
その言葉を聞くと、良次は徐に右手に携えていた剣を腰の位置に構える。まるで、これから居合いをするような形である。
一方その頃訓練ブースの外では、嵐山隊ともう一人、小柄な青年が良次の様子を見つめていた。小柄な青年とは、今回の新入隊員のうち、攻撃手の最初の近界民戦闘訓練の教導を担当していた、A級3位の部隊の隊長である、風間蒼也だ。嵐山たちが今回の訓練を見学しに来ていることに気づくと、風間は近づいて声をかけた。
「こんなところでどうしたんだ嵐山?お前の隊の隊員を引き連れて」
「ああ、風間さん。今回の担当は風間さんだったんですか。いや、実はですね」
嵐山は今日の一連の出来事を風間に伝える。話を聞き、驚きで目を見開いていた風間は、話が終わると、楽しそうにほんの少し微笑んだ。
「ほう、太刀川に勝ったのか。訓練用トリガー同士だとはいえ、それはすごいな。面白そうなやつだ」
「あ、風間さん!よし君がB級に上がるまでは戦わないであげてくださいね?これ以上正隊員の皆さんに目をつけられると、ランク戦が出来なくなっちゃうので!」
「親戚とはいえ、意外と綾辻も過保護だな。……まあ、善処するとだけ言っておこう」
「全然戦う気ですよね?!」
「わかったよ。控えておく」
事実、風間は今日にでも良次と戦おうと思っていたのだが、遥が意外にも必死に頼んできたので、控えておこうと考えを変えた。そう口にした風間をみて、遥はほっと胸を撫で下ろす。
(うん、今日は止めておこう。明日にしよう)
そんなことを風間が考えているとは露知らず、我に帰った遥は自分が思いの外取り乱していたことに、少しばかり恥ずかしさを覚えた。
「す、すみません。少しし取り乱してしまって」
「いや、問題ない。少し驚きはしたが」
「そうですね、あまり先輩のそういう姿は目にしたことがなかったので、私も驚きました」
その後、微妙に気まずい空気が流れる。その空気を打ち破ろうと、遥は小さくかつ皆に聞こえるようにこほんと咳払いをし、話題の転換を試みて口を開いた。
「えっと、そういえば、よし君はどのくらいの記録を出すと思います?」
「うむ、5秒は間違いなく切るだろう」
「ええまあ、恐らくそうでしょうね」
「あれ、意外と素直に認めるんだね、木虎」
「まあ、悔しくはありますが」
自身が9秒だったこの訓練について、間違いなく5秒を切ると嵐山がいったことに対して、悔しさこそ感じる木虎だったが、木虎自身もそう思っているため、認めざるを得なかった。
遥だけが不安げに、それ以外のものは興味深げに良次の剣を構える姿を見つめる。実は彼ら以外に、この場で見ている正隊員も数名いるのだが、それはまた別の話。
たくさんの人が見つめるなか、
「それでは、訓練開始!」
良次の訓練が始まり、
「…………えっ?」
そして、終わった。
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「タイムは?」
「え?………あ、はい!」
訓練開始の合図が告げられ、その次の瞬間には、バムスターが消滅していた。見ていた者の全てがその事実を認識し終える前に、良次が三上に声を掛ける。数秒後に我に帰った三上は、手元に映し出されたタイムを大声で読み上げた。
「0.021秒です!」
「うん、よかった。トリオン体だと理想に近い動きができる」
そう言いながらブースを出る良次。呆然としている嵐山隊の面々と風間のもとへ、再び歩いていく。
「えっと、皆さん?終わりましたけど」
「よし君!?今何したの?!」
「テレポーターは使えないはずだが?」
詰め寄ってくる面々の勢いに押されつつ、良次は質問に答えるべく、口を開いた。
「えっと、てれぽーたー?っていうのはよく分からないですけど、今のは縮地という移動術ですよ」
「しゅくち?それはどういった?」
興味津々といった様子で、木虎が尋ねる。それに対して良次は、優しげな口調で応答する。
「地を縮める、と書いて縮地ですね。その名の通り、二点間の距離を縮めて移動する技術です。うちの流派にも、脈々と受け継がれてるんですよ。とは言っても、そう見えるくらい早く動くという単純なものなんですけどね」
「どうやったんですか?」
「とにかく速く動くだけですよ?体の動かし方にもコツはありますが。まあ、生身の肉体なら今ほど理想的なものはできないので、トリオン体というのは凄いですね。とはいえ、これって結構疲れるので、乱発は出来ないんですが」
そう言う良次に周囲は唖然としたが、最もはやく我に帰った嵐山は、良次に向き直り思い付いたことを口にした。
「ますます、ランク戦の相手がいなくなるんじゃないか?」
「えっ?」
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「それじゃあ、私と戦いましょう」
「それじゃあ、そのあとは俺が」
タイムアタックをこなし、よりB級昇格が遠のいた良次が、再び途方に暮れていると、改めて木虎が勝負を挑み、それに続けて今回の訓練を担当していたという、風間蒼也という人物にも勝負を挑まれた。返事をしようとして顔をあげると、壁にかけられた時計が目に入り、思いの外時間が経っていることに気が付いた。
「あ、すみません。今日は時間的に厳しいので、また明日にして頂いてもよろしいでしょうか?」
「よし君、なにか用事?」
「用事というか、鍛練ですね。ボーダーになったとはいえ、生身の鍛練も欠かせませんから」
遥の質問に良次がそう返す。それを聞くと、努力家の木虎はその理由を認めざるを得なく感じ、良次に言葉を返した。
「…まあ、それなら仕方ないですね。では、明日の17時頃に対戦ブースでいいですか?」
「承知しました!風間さんもそれでよろしいでしょうか?」
「ああ、了解した。楽しみに待っているぞ」
「ははは、期待に応えられるように頑張りますね。それでは皆さん、また!」
そういって挨拶を交わした後、良次はボーダー本部を後にした。
この日のうちに、良次に関する一連の噂がボーダー本部内に広がことになるのだが、翌日、良次は早速知ることになるのだった。
訓練のポイントは20点満点ということで進めていきたいと思います。
次回も頑張って書きたいと思います。