収録パート
Cou016
Lda108
Cou017
Lda109
Cou018
Lda110
Cou019
Lda111
Cou020
Lda112
【Cou016】
[lain]
[nine]
[first]
「最後は、お前か…。玲音」
「……」
「それにしても、よく来たな…。遠いところから一人で」
「……」
「どうした…考え込んじまって。お前も、どう俺を説得していいかわからない、とか、そんなこと考えてんのか?」
「そんなんじゃ…ない…」
「ん?」
「そこに…牌、あるでしょ?最後に、決着つけようよ…」
「ククク…なるほど…『お前か』」
「あの勝負、あたし納得してないから…。アルツハイマー、あの時から始まっていたのね」
「ああ…そうか…。だが、勝負を受けてやりたいんだが、俺にはもう、それがよくわからない…」
「わかってるよ…そんなこと。だから、9(ナイン)で決着をつけよ。あんたが、最初に玲音に教えたゲーム」
「……。どんな、ゲームだったかな?」
「ふーん。それも忘れちゃったんだ。まぁいいわ、教えてあげる。簡単だから」
【Lda108】
[lain]
[nine]
[game]
lainは、最後におじさんとの勝負を望んだ。
それも、私が最初に教えてもらった、全ての始まりの9(ナイン)で…。
【Cou017】
[nine]
[gamble]
[murderous intent]
「まぁ、理解した。で、何を賭ける?まさかノーレートってわけじゃねえだろ?」
「もちろん。あたしが勝ったら、あんたの失った記憶、元通りにしてあげる。
あたしが負けたら、あたしは玲音から消える」
「…………。ククク…なるほど。お前には、そういうことが出来るってか…」
「あんただって気付いてるでしょ?周りが変だって。いつの間にか、あんたが負けたってこと、無かったことになってる。あたしが、書き換えたのよ」
「ふーん…。そうか…。ククク…」
「一見、失った記憶が元通りになるんだから、あたしが勝った方があんたにはいい話。けど、あんたはそうじゃない…でしょ?」
「ああ。その通りだ。まぁ、記憶が、脳が元通りになるってんなら、俺が死ぬ理由は無くなっちまうわな。一見。
だが、仮にその記憶が元の記憶にどれだけ近かろうと、同じだろうと、他人から与えられた記憶で生きるなど、俺はしない」
「つまりさ…屈辱でしょ?あたしはあんたに勝って、それが見たいの」
「ククク…お前性格悪いな。で、俺が勝ったら、お前は玲音から消える、と」
「それでこそ、賭けってものでしょ?あたしの命とあんたの命を賭けた真剣勝負。
なにもあんたを助けようってわけじゃない。どっちみちあんたは死ぬ。問題はその死に方。自分の意思通り死ぬか、屈辱を受けた後死ぬか、よ。面白いでしょ。
あんた言ったよね?覚えてないかもだけど『殺す気で来なきゃ勝てない』って。あたしはあんたをぶっ殺す。………」
「ハハハ…いいねぇ。面白い。ここに来た奴の殆どは、まぁ過程は色々だが、生きろ生きろって言ってきたからな。正直、お前のような奴の方が、俺にはあってるのかもしれねぇ。面白いぜ。受けよう。だが……」
「何?」
「引き分けは勝負なしだぜ…」
「引き…分け?」
「つまり…俺はこのまま死に、お前は消えない…。そういうことだ」
「ふーん…。ふーん、そうかい…。いいよ。それで…」
「じゃあ…やるか……最後の真剣勝負……!」
【Lda109】
[nine]
[miracle]
[Man of god precincts]
こんなことって、あるの?
三回戦も、四回戦も、五回戦も分け。
信じられない…。
こんなに苦しそうなlain、初めて視た。
これが…これが、赤木しげる…。
【Cou018】
[nine]
[draw]
[alive]
「どうした?…」
「どうってもう八回せ……あッ……ああっ……」
「ん?」
「…いや……なん……でも……ないわ。……う……うう……」
「なんだ?急に泣きだして…。…これで、終わりだな。最後の牌は、出すまでもない」
「…最後まで、最後まで行こうよ。ここまで来たら、さ……」
「………」
「何よ…こんなのある?九戦全部引き分けって。フフ……ありえない。…結局……敵わなかったわ……」
「お前…負けようとしてただろ…」
「え…?」
「あんな下手な芝居、誰だってわかるさ。お前は、自分のせいで玲音が苦しんでるのをわかっている。どうにかしたいって思ってる。
だが、お前も俺と同じ。自分を変えられない。故に玲音を傷つけちまう。だから、負けて…消えたいんだろ?」
「何をバカなことを言ってるの?自分から消えたいなら、さっさと消えるわよ…」
「消えれないんだろ?納得出来ないから。せっかく生まれたのに、なんで自分から消えるのか。
だが、自分が生きていることで玲音を苦しませる、その板挟みで、お前はもがいている。
納得して消えるためには、もう勝負しかない。俺が相手なら、絶対に負ける自信があった…違うか?」
「…そんな…こと…うっ…うう……」
「ククク。泣きながら反論しても説得力ないぜ」
「…うう……」
「…………。生まれちまったもんはな、仕方ねぇ。こればかりは仕方ねぇ。
だがな、消えることはねぇ。『お前は』生きたいって、思ってんだろ?なら生きればいい。
それに、お前が思うほど、玲音は弱くない…。どんどんいじめてやれ。そのたびに、あいつは立ちあがってくる。そういう奴さ…………」
【Lda110】
[lain]
[birth]
[baby]
lainは大声で泣いた。赤ん坊のようだった。
lainは強い。けど、弱かった。
でもこれで、lainも少しは楽になったのかな…。
【Cou019】
[suicide]
[memory]
[father]
「落ち着いたか…?」
「う…うん…」
「今度は、玲音か?…お前とも、話さなきゃな…」
「……おじさん。これから死ぬって…どんな感じ?」
「……さぁな…これから、わかっていくんじゃねえかな」
「怖く……ない?」
「ん?」
「私もね…死ぬの……もうすぐ」
「ほう…。病気には見えねぇが……」
「おじさんと同じ……自殺……」
「……。ほう……」
「もう私、リアルワールドで生きる意味…無いの」
「……俺にはよくわからねぇが、現実でって意味か?」
「うん。私のお父さん……死んだんだよね?」
「……。玲音は、それを受け入れるんだな……」
「……うん。lainを見てたら、やっぱり受け入れようって思えた」
「………」
「私ね、お父さんのために生きようって思ってたの。たとえいじめられたって学校に行こう。勉強もしっかりして、偉くなって、お父さんに恩返しする。そう決めてたの。私はお父さんのために存在してる。
けど、お父さんはもういない。リアルワールドにいる意味はもう、無いの」
「……そうか?」
「うん……。これからはワイヤードで生きていく……」
「そのワイヤードってのは?」
「ネット。パソコンの中。あの子もね、そこに住んでいるの」
「死んだら……そこに行けるって、玲音は信じてるんだな」
「うん。そこでは、私はみんなと繋がっている。リアルワールドでは、おじさんがいったら、もう誰とも繋がっていない」
「果たしてそうか?」
「そう……だよ」
「…麻雀部はどうする?後輩たちは?教えることはまだあるんじゃないか?」
「何…………それ……私、そんな部…知らない……」
「ククク……なんだ、お前までアルツハイマーになっちまったのかよ。ちょっと早いぜ。ククク」
「え…?」
「フフフ……大体わかった。まぁ、そういうこともあるんだろうな」
「どういう、こと?」
「お前の記憶を消すとか作るとかっての……正確じゃないんだよ。間違えて、そういった記憶まで消しちまったんだ。………危なかった……危うくヤブ医者に治療されるところだったぜ……ククク…」
「そ……んな……こと。わからないよ……。私は、証明できない……」
「……試してみることだ……。試しに、部室に行ってみるといい。そこで誰もかれもが知らんぷりすれば、俺の言ったことは嘘。お前のリアルワールドの繋がりとやらが消えちまう、としてもいい」
「………………」
「全てはそれからだ、玲音……」
「う、うん……」
「…………」
「…………」
「もう、いいかな?」
「……え?……」
「最後にお前と話せて、よかった。まるで、娘のようだったぜ……お前は……」
「おじさん……?」
「じゃあな…………」
【Lda111】
[friend]
おじさんはスイッチを押した。
別の部屋で待機してたはずのみんなが、部屋に入ってきた。
みんな、勘がいいのかな?
みんな、おじさんの名前を呼んでいる。
赤木、赤木、って。
原田さんが点滴の針を抜いた。
やっぱり生きていてほしいんだ。
でも、もうその液はおじさんの体内に流れていってた。
【Cou020】
[complete]
『『玲音。どうする?私たちなら、全部リセットして最初からやり直せるよ?』』
駄目……!だっておじさんは、おじさんだもん……。
『『でも……みんなこんなに泣いてる……みんなのためにも……リセットしない?』』
違う!それは、みんなのためじゃない。
おじさんは、おじさんであってこそみんなに愛されてる。
私たちにだって!
だったら『その』おじさんを、殺しちゃ駄目……。
『『……うん……そうだよね…………玲音……。じゃあ、見届けよう。
泣いてもいいから、なるべく笑顔でさ…』』
そんなの……無理だよ……。
『『ウフフ……無理だね……』』
『……しげる……おじさん…………』
『ありがとう…………』
【Lda112】
[tomo]
[reunion]
[child]
翌日の朝、駅までの途中、友君に会った。
びっくりした。そういえば、友君こっちに来てたんだった。
少し背が伸びた?
これから暇なら、雀荘に行かない?って誘ってみた。
そしたら、俺たちまだガキだぜって。ウフフ。
そうだね。私たち、まだ子供だった……。