serial experiments akagi   作:叶芽

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 英利政美の件で出てきた沢山の私も私だし、lainも……そして、れいんも私……。何で、私って沢山いるんだろう。

 

―――玲音は遍在するのよ。玲音は神様なんだよ。

 

 違う……。あなただって、違ったじゃない。

 

―――でも、あなたはわたしに勝った。じゃあ、あなたが神様よ。

 

 違うよ……。

 

『『そんなの、どっちだっていいじゃない。なんだっていいじゃない。玲音はあなたで、lainはあたし。れいんはあんたで。体が同じでも、意識は違うんだから』』

 

 もしかしたら……同じかもしれない。lainがそう考えているのも私で、れいんが私を消そうとしたのも、私なのかもしれない。

 

『『そんなこと……』』

 

 じゃあなんで…みんな私の姿をしているの?lainだけなら良かった。lainだけなら耐えられた…。でも、あんなにも沢山いると……気がどうにかなってしまいそう。普通でありたいなんてもう思ってない……。でも、あれは嫌……。

 

 

 

 

『『……玲音……。手牌を見て……。まだオーラス……終わってないよ。さっき役満和了したけど、まだ逆転もしていない……』』

 

 

 lainに言われた通りに、私は手牌を見た。

 

 

オーラス

 

13巡目

 

西家 玲音 手牌

 

 

{③③③⑥⑥⑥三三三五五五西} ツモ {五}

 

 

 

 

 

 

 

 また……懐かしい形……。私はおじさんに麻雀を教えてもらった、あの時を思い出した。麻雀って、一枚ツモって一枚切る。そういうゲーム。私が何人いようと、切る牌は一枚……。

 おじさんはこの形から{西}を切ってリーチした。私は{西}を残せば四暗刻じゃないのって言った。そしたらおじさんは言った。「俺の暗刻はそこにある」って。裏ドラ三つめくったら、それが全部{二}。私はすごいと思った。今でもすごいと思っている。視えるはずのないものが視える…。それは私にとっては恐怖でしか無かった。それをそうではないって思えたのは、やっぱりおじさんのおかげだ。

 でも……私の選択は違った。その時はあまり麻雀を知っていなかったのもあるけど、その手牌で、私は何も切りたくなかった。それは、私が無い気がしたからだと思う。私がそのことをおじさんに伝えると、おじさんは四枚ある{五}をそっと倒した。だったら、一つにしちまえって。

 そう、全部がそろったら……一つに出来る。それも麻雀。私は嶺上牌で{三}をツモって…それも一つにした。次に{③}も、その次に{⑥}も一つにした。そして最後に{西}をツモッた。おじさんは、やるじゃねぇか、って言って頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

 

 

玲音 手牌

 

{西} 暗カン {■五五■} 暗カン {■③③■} 暗カン {■⑥⑥■} 暗カン {■三三■} 

 

ツモ {西}

 

ひろゆき     -11700(-24000)

玲音       136600(+96000)     

英利       -23900(-24000)

れいん      -1000(-48000)

 

 

 

「四暗刻単騎はダブル役満扱いなので、3倍役満で全員トビで終了です」

「最後の最後で盛り返したね、玲音ちゃん」

「先輩、すごいです!トリプル役満なんて初めて見ました。あ、あと四槓子も……二連続役満も」

「ふふっ。偶然よ。れいんちゃんは、こんな打ち方マネしちゃ駄目だよ。和了れる時に和了らないとね」

 

 

 この五回戦目でなんとか私はトップを取り戻した。最後の二連続役満はさすがにやり過ぎちゃったかな。後輩にはあまりいい麻雀を見せれたって感じじゃなかったし、次からは気をつけないと。

 れいんちゃんはラス半だったので、私やひろゆきさんと少しだけ話して、それから帰った。あの『れいん』は、もう視えなくなっていた。

 結局、あれも私なんだ。私が望んでいる姿の一つ……。ああいうのと出くわすと、少しだけど不安になる。私はどうありたいのかな、って。私は一番強くなりたいの?死にたいの?遍在したいの?それとも……みんなと一つになりたいの?色んな私が、色んな目的を持っていて……時々私は、今『どこに居る』のか分からなくなる。

 

 

 

『『ねぇ玲音?』』

 

 何?

 

『『玲音ってよく暗槓するけど、やっぱり……それって………その………』』

 

 願望と一致しているかってこと?打ち方が……。

 

『『う……うん……』』

 

 かもしれない……。でも……嫌………。

 

『『どうして?その気になれば、出来るよね?』』

 

 みんなと一つになっちゃったら、lainが消えちゃう。ひろゆきさんや天おじさんも消えちゃう。記憶が、過去や未来も含めるとしたら、しげるおじさんや、れいんちゃんも……きっと消えちゃう。それは、やっぱり嫌……。

 

『『そ…そう……』』

 

 大丈夫だよ。lainが居れば、きっと私大丈夫だから。

 

 これからも、よろしくねlain。

 

『『ま……いいんじゃないの?……それならそれで……』』

 

 

 

 

 

 

 

【翌週 赤木しげるの墓】

 

 

 

 

 

 しげるおじさんへ

 

 

 

 

 玲音は今日も元気です

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おしまい

 




 


Site-C終了

この直後、玲音は『FATALIZER』の青山和と出会います。

serial experiments akagi は以上です。

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