マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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原作知識は5D'sまでとしています。

でも安心してください。作者は全シリーズちゃんと見てますよ!――とにかく明るい作者




DM編 第1章 原作開始前 最初の躓き
第1話 事前調査はしっかりしよう ~支援絵掲載場~


 

 「KC」というロゴマークが掲げられた巨大なビルの前に男が立っていた。

 

 男の名は神崎 (うつほ)、この海馬コーポレーション―通称KCへの最終試験という最後の戦いに挑むものである。

 

 その最後の戦いの前に神崎は感慨にふける――今まで大変だったと。

 

 

 

 神崎が幼いころに両親が死去したため施設に預けられ、そして高校卒業を控えた神崎は職を探していた。

 

 だがなかなか見つからず途方に暮れていたところ「KC」の存在を神崎は知り入社しようと考えたのである。

 

 

 最終学歴が高卒の人間が大企業の中の大企業への入社など無理だと誰もが思うだろうが何の勝算もなしにこの考えに至ったわけではなかった。

 

 

 神崎には前世と呼べるものがあった。

 

 そして、その前世の知識からこの世界が「遊戯王」の世界であると気付いたゆえの考えである。

 

 「遊戯王」の世界ではデュエルの腕前が大きな力となる。ゆえに前世での情報を使えばそれなりの実力を示せると考える神崎。

 

 さらに社長である海馬瀬人のブルーアイズ愛を刺激すれば入社も問題ないと考えた――いささか甘い計画である。

 

 

 

 そして1次試験、2次試験と次々に試験を乗り越え、ついに最終試験である社長面接にまで漕ぎ着けたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 新入社員を選別するに当たり、KCでは過酷な試験を課している。それはこの程度で潰れる弱卒など不要という社長の教示によるものであった。

 

 

 KC社長は最終試験である社長面接まで上り詰めた神崎をその目で見据える。

 

 そしてKC社長が持った神崎の第一印象は「張り付いたような笑顔が特徴的」だった――一般的には少々マイナススタートである。

 

 しかしKC社長はその笑みに興味をひかれた――その笑顔の裏に何を秘めているのかと

 

 

 その神崎の笑顔の裏は「あの海馬瀬人に会える」ことに対してテンションが振り切れているだけなのだが……

 

 

 

 面接を始めようとしたKC社長に対し神崎は待ったをかけた――「社長が来ておられないようですが?」と。

 

 だがKC社長ー「海馬 剛三郎」はそんな神崎をコイツは何を言っているんだという目で見つつ返す。

 

「貴様、なにを言っている。社長は目の前にいるだろう」

 

 その答えに僅かに動揺を見せた神崎の姿を剛三郎はつぶさに感じ取る。だがなぜ動揺したのかが分からない。

 

 剛三郎は「面接に来ておいてその会社の社長すら調べていないとは考えにくい」と、この男に対する警戒を一段上げ、面接を再開しようとする。

 

 だが呟くような神崎の発言でその意識を引き戻された。

 

「海馬瀬人ではないのか……」

 

 

 剛三郎は動揺を抑えつけ心の中で考える――なぜ知っているのかと。

 

 

 「瀬人」は海馬剛三郎が自身の後継者にするべく孤児院に入れられた時から引き取りを計画していた存在。

 

 その計画が立てられたのはつい先日、一部のもの以外には存在すら明かしていない。その情報を知る神崎に対し警戒を剛三郎は最大にまで上げる。

 

 

 

 そして今の発言の裏に隠されたメッセージを剛三郎は思い至った。

 

 

 神崎はこう言いたいのだ「まだ海馬瀬人に社長の座を明け渡していないのか」と。

 

 

 神崎の中では剛三郎よりも瀬人のほうが社長にふさわしいと考えていることを知り、その認識は、海馬瀬人を後継者に据えようとはしているが実質的な権力を明け渡す気のない剛三郎にとって屈辱でしかなかった。

 

 

 

 ここでその無礼に怒り神崎を不合格にするのは簡単だがそれでは剛三郎の気が済まない。

 

 なにより、今までの試験により能力は合格ラインにあることを知っているのも相まって剛三郎は神崎を本社で使い潰すことにした。

 

――フッ、貴様が潰れていく様を見ながら笑ってやろう……

 

 内心でそう考えつつ、方針を固めた剛三郎はさっとこんな面接など終わらせてしまおうと面接を開始した。

 

 

 

 

 

 知らず知らずのうちに内定が決まっていた神崎だがその胸中は今はそれどころではなく現在の危機的状況を脱するために考えを纏めるのに忙しかった。

 

 

 よりにもよって原作前の軍事産業時代に入社しようとしていた神崎自身の不幸を呪いつつ、入社した時のリスクを考える。

 

 海馬瀬人が社長になった際に軍事産業部門は解体されるのは分かっていたが、BIG5と呼ばれる幹部連中の末路は知っていても関わった人間がどの程度処罰されるのかが神崎には分からなかった。

 

 

 よってそのリスクを鑑みた結果、神崎はKCの入社を諦める選択をする――やはり命は惜しい。

 

 

 しかし、入社しないとしても辞退するのはあまり良い手ではないと神崎は考える。

 

 大企業「KC」の影響力は大きく、その誘いを断ったとなると何らかの制裁が来る可能性も考えられる。よって神崎はこの社長面接で不採用になるべく行動を開始する。

 

 もう手遅れなことにも気づかず。

 

 

 

 こうして、どうせ採用するので早急に面接を終わらせようとする剛三郎と不採用になるために全力を尽くす神崎の結果の分かりきった戦いが今、始まる。

 

 

 剛三郎は無駄な時間を省くため神崎に言い放つ。

 

「貴様に聞くことは一つ。この会社で何をなすかだ」

 

 

 神崎は予想だにしない面接内容に驚愕する。

 

 神崎の予定としては志望動機や自己アピールといったいくつもの質問から不採用になりそうな答えを少しずつはさみこみ、KCの逆鱗に触れないように不採用を目指していくプランだったのだ。

 

 だがこれで分けて稼ごうとしたヘイトを一つの質問に全てにこめなければならなくなった。

 

 つまり難易度が跳ね上がったのである。

 

 その質問だけでKCに遺恨を残さずに不採用になる回答をせねばならない。

 

 

 神崎の頭脳が高速で回転を始める。

 

 

 

 もうどうにでもな~れ~

 

 

 

 神崎は諦めた。

 

 よって、その場のノリで話すことになったのである――イイノリしてやがるぜ!

 

 神崎は話し始める。軍事産業などいかにもう古いのか延々と語り、より需要があるであろう方向へとシフトするべきであると話し終えたところで問われる。

 

 血管が切れるのではないかと逆に心配になるほど怒りを抑えた剛三郎に。

 

 

「その需要は一体なんなんだ?」

 

 

 剛三郎自身が手掛ける軍事産業をあれだけ扱き下ろしたのだからよっぽどのものなんだろうなとその目が語っていた。

 

 

 知らん、そんな事は俺の管轄外だ。などと言えればどれだけ楽だったかと神崎は考える。

 

 だが現在の剛三郎の状態を鑑みるに当初用意していた人がいる限り途絶えることのない需要を持つ「医療」と言っても納得してもらえるかどうか不安であったため神崎は路線を変更することにした。

 

 

 つまり「いずれわかるさ。……いずれな」作戦へと舵を切ったのである。

 

 

 要ははぐらかした。

 

 

 

 

 

 こうして面接が終わり自身以外がいなくなった社長室で剛三郎は神崎について考える――食えぬ男であったと。

 

 今の軍事産業を超える需要に対して問いただしても明確な返答がなかったことから、ふざけているのかとも思ったが神崎と目があった時に感じた直感を剛三郎は無視できなかった。

 

 

 幾度となく剛三郎の窮地を察知していた直感が警告を放つ――野放しにはしておけない。

 

 

 剛三郎は笑う。面白い拾い物をしたと、その笑顔の裏の狂気をワシが飼いならしてやろうと息巻く。

 

 

 その笑顔の裏は狂気などではなく、営業スマイルで必死に誤魔化そうとしていただけだったのだが……

 

 

 

 

 

 その後、KCの社会的報復を「やっちまったな~」などと思いながら恐れていた神崎のもとに通知が届く。

 

 

 その中身を見て男は絶望した。

 

 

 






少年よ、これが絶望だ……


~支援絵の掲載場~
頂いた支援絵の方を此方に載せさせていただいております。
読者の方々のイメージとの差異、並びに本編のネタバレの可能性もある為、閲覧の際にはそれらの点をどうかご留意願います。


黒吉様
https://img.syosetu.org/img/user/321784/67854.png
https://img.syosetu.org/img/user/321784/67853.png
証明写真風の神崎のイラスト――笑顔Ver と 開眼Ver の2種になります。
その肩幅とガタイで会社員と言い張るのは厳しいっすよ(遠い目)


revil様
https://img.syosetu.org/img/user/317191/68877.png
https://img.syosetu.org/img/user/317191/68880.png
GX時代より若めのギース・ハントと神崎が並ぶものと、
怪しげな――例あの力を振るう神崎(社畜中)のイラストの2種になります。
このストーリー後半で裏切ってくるムーヴよ……タイトルロゴの遊び心が光ってるぜ!


iloveu.exe様
https://img.syosetu.org/img/user/405051/101326.png
https://img.syosetu.org/img/user/405051/101327.png
様々な角度から見た普段の神崎(なお背中)と
本性表したわね!?――と言わんばかりのイラスト2種になります。
まさに「胡散臭さを隠す気がねぇー!?」(某ハジケ○ストの仲間感)

https://img.syosetu.org/img/user/405051/118680.png
此方は謎のデュエリスト(笑)さんのイラストになります。
まさか、この人があんなことをするなんてー(棒読み)


タタミブトン様
https://img.syosetu.org/img/user/421147/109772.png
相棒のカードとのツーショット。視線の具合で彼らの距離感が伺えますね。

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