マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
ゲート・ガーディアン「乗っただけ融合☆合体! 《ユーフォロイド・ファイター》!!」

ユーフォロイド「げ、限界を超えたパワーを……見……よ……」





第105話 全速前進DA☆

 

 迷宮、兄の《ゲート・ガーディアン》と迷宮、弟の《ユーフォロイド》の融合体、《ユーフォロイド・ファイター》の一万に近い攻撃力によって吹き飛ばされた光の仮面と闇の仮面。

 

 

 その仮面コンビのライフが0になったことを確認するや否やすぐさま迷宮、弟は迷宮、兄の元へと駆け寄った。

 

「我らの勝利だ! 勝ったぞ、兄者!!」

 

 そして倒れた迷宮、兄の身体を起こしつつ勝利報告を行う迷宮、弟に苦笑しつつ迷宮、兄は小さく返す。

 

「そのように声を張らずとも聞こえておる。よくやったな」

 

「何を言う! 兄者が託してくれた《ゲート・ガーディアン》の力があってこそだ!」

 

 迷宮、兄の言葉に鼻をかきつつそう返す迷宮、弟。その姿に迷宮、兄はまた苦笑交じりに言葉を零す。

 

「フッ、ならばそう言うことにしておこう。だがまずは奴らをしっかりと拘束しておかねばな」

 

「なら兄者はそこでしばし休んでおいてくれ! そのくらいは一人でも問題ない!」

 

 そう言って仮面コンビの元へと駆け出そうとした迷宮、弟の隣に立ち上がりつつ迷宮、兄は遊戯が走り去った先を見る。

 

「そういう訳にもいかん。我らはすぐさま動けるようにしておくべきだ――遊戯殿が友の危機に間に合っておればよいが……」

 

 

 どうか間に合っていて欲しいと信じながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな迷宮兄弟を見ていたカードプロフェッサーのクラマス・オースラーは残念そうにぼやく。

 

「チッ、あいつら勝っちまったか……折角のボーナスが、ツイてねェ」

 

 だがそんなクラマス・オースラーの背をバシッと勢いよく叩きつつメンド・シーノは豪快に笑う。

 

「だッハッハッハ! まぁ、いいじゃねぇか! 商売敵の奥の手中の先の先まで見れたんだ――ボーナスに比べりゃちっとばかし劣るが、情報屋にでも売りゃぁそこそこの金になるだろうよ!」

 

 そのメンド・シーノの言う通り、デュエリストの情報は金になる。相手の切り札や戦術をあらかじめ知っておけば対峙する前に対抗策を用意することも可能なのだから。

 

 情報の値段はデュエリストの実力が高ければ高い程に釣り上がっていく。

 

 そして「迷宮兄弟」といえばタッグデュエルの実力者として名の知れた存在――悪くはない値段が予想された。

 

「おお! そんな手もあんのか! いいじゃねぇか、ケッケケケケ! ――で、俺の分け前は!?」

 

 思わぬお宝に目を輝かせるクラマス・オースラー。

 

「ハァ? 俺の作戦で、俺の伝手の情報屋に売るんだ――当然、俺が全部……ってのはさすがに婆さんにどやされっか……」

 

 だがメンド・シーノの返答は辛辣、ではなく、カードプロフェッサーのご意見番、マイコ・カトウのおっかない一面を思い出した後、しばし思案し――

 

「――まぁ、俺が『七』でお前が『三』だな」

 

 ある程度納得させられるだけの分け前を配分したメンド・シーノ。

 

「えぇ!? 俺がアイツらを見つけたんだぞ! 半々でいいじゃねぇか!」

 

 しかしその分け前に不満を漏らすクラマス・オースラーの額に指を向けるメンド・シーノ。

 

「ちょーしにのんじゃ……ねぇ!」

 

「イダッ!」

 

 そして放たれたデコピンに額を押さえるクラマス・オースラーをメンド・シーノは笑い飛ばす。

 

「お前も早いとこ、裏でうまく立ち回る術を覚えるこったな! だッハッハッハ!」

 

「ちぇっ……」

 

 額を押さえながら渋々引き下がるクラマス・オースラーを引き連れ、「今度なにか奢ってやるか」と考えつつ、メンド・シーノは新たな獲物を求めて踵を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処で時間は遡り、迷宮兄弟にグールズの仮面コンビを任せた遊戯は駆けていた。

 

 迷宮兄弟のお陰で短縮できた時間を無駄には出来ないと全力で走り続ける遊戯。

 

「無事でいてくれ! 城之内くん!!」

 

 そんな願いを声に出し、遊戯は駆け続ける。その隣には海馬も全速前進で並走していた。

 

 

 だがその遊戯と海馬の隣を1台のバイクが通り過ぎ、遊戯たちの前で方向を変え、停止。

 

 そしてバイクに乗る男がフルフェイスのヘルメットから顔を覗かせながら遊戯へと声をかける。

 

「武藤 遊戯だな!」

 

「新手かッ!?」

 

「貴様は……」

 

 またもやグールズの足止めかと警戒する遊戯に海馬は小さく声を漏らす――海馬の知った顔であった。

 

「社長は知ってるよな――俺はヴァロン。牛尾の同僚になるが事情は月行から聞いてるぜ! 後ろに乗りな! KC本部まで乗っけてってやる!!」

 

 そう、バイクに乗った男はヴァロン。

 

 死者の腹話術師からの連絡を受け、マリクが操る人形と遊戯がデュエルした河原まで駆けつけたのだが、既にデュエルが終わっており、月行たちを残すのみであった。

 

 そして事情を月行から聞いたヴァロンがこうしてバイクを飛ばし、道なき道を進みショートカットして追い掛け、遊戯に追いついた次第である。

 

 

 海馬の方へと視線を向ける遊戯――もう一人の遊戯にヴァロンとの面識はない。表の遊戯が牛尾と共に見た写真でチラと記憶にあっても、今の精神状態で気づけてはいない。

 

「安心しろ、遊戯。コイツの身元は俺が保証してやる」

 

「話は纏まったみたいだな? さぁ行くぜ!」

 

 海馬の言葉を信じた遊戯はヴァロンから投げ渡されたヘルメットを被りつつ、ヴァロンの後ろに乗り――

 

「助かる!!」

 

「飛ばすぜ! 掴まってな!!」

 

 すぐさまアクセル全開で飛び出そうとしたヴァロン。

 

 

「――ってどうしたよ、社長。そんなとこに突っ立ってると邪魔だぜ?」

 

 だがそのバイクの前には海馬が立ちはだかっていた。海馬の意図が見えないヴァロンはぼやくように零す。

 

 

 

 

「降りろ」

 

「 えっ 」

 

 しかし親指でそう指示した海馬の言葉にヴァロンの口から気の抜けた声が漏れた。

 

 

 

 

「行くぞ、遊戯!!」

 

 やがてヴァロンからバイクを強奪――もとい借り受けた海馬はその際に一度バイクから降りた遊戯に再度乗るように急かす。

 

「いや、海馬……さすがにそれは……」

 

 だが遊戯は海馬とバイクから降りたヴァロンを交互に見つつそう返すが――

 

「早くしろ! さっさと凡骨を探さねばならんのだろう!!」

 

「すまない、ヴァロン! この礼はまたの機会――」

 

 城之内の危機を押し出されては遊戯も申し訳ないと思いつつも急ぐしかない。そしてヴァロンへと感謝の意を示そうとするも、示す前に全速前進でバイクは走り出していった。

 

 

 そんな海馬と遊戯を見送ったヴァロンは気にした様子もなくポツリと零す。

 

「行っちまったか……まぁ、目的は果たせた訳だし問題はねぇか!」

 

 ヴァロンからすれば遊戯を運ぶよりもグールズの中のまだ見ぬ強敵を探す方が魅力的なのだから――相変わらずバトルジャンキーなことで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな遊戯が心配する城之内一同は未だ果てのない戦いに身を投じていた。

 

「コイツら一体どれだけいるんだ!!」

 

 そう肩で息をしながらグールズの1人の攻撃を躱す御伽に本田は元気付けるように叫ぶ。

 

「ナムが助けを呼んでくるまで粘るっきゃねぇぜ、御伽! 踏ん張りな!」

 

 だがそうは言っても痛みを感じず自身の負傷を気にしない状態で城之内たちに拳を振るうグールズたちは一向に減る様子がない。

 

 グールズたちの数もさることながら、中々倒れない――数が減らないことが問題であった。

 

「クソッ! コイツら全然倒れねぇ! なにっ!」

 

 そんな城之内の言葉の最中に地面に倒れ伏していた筈のグールズが城之内の足を掴み、動きが制限された城之内の元へと倒れた仲間など気にせず殴りかかるグールズたち。

 

 彼らに恐怖も躊躇もない――いや、感じなくさせられている。

 

「――ッ! アブねぇ、城之内!!」

 

 城之内に殺到するグールズ達の攻撃に対し、身体を張って全て受け止める蛭谷。その隙に自由を取り戻した城之内は迫ったグールズたちを蹴り飛ばし、膝を突く蛭谷にかけよる。

 

「蛭谷! 大丈夫か!」

 

「なぁに、かすり傷だよ!」

 

 だが駆け寄る城之内を手で制した蛭谷は身体の痛みを隠すかのようにニヒルに笑うとグールズたちの一団へと殴りかかった。

 

 

 

 

 

 

 そんな殴り合いの喧嘩を少し離れた個所から見つつギースは通信機に向けて事態は切迫していることを示す様に声を張る。

 

「乃亜! アクターとはまだ連絡が取れないのか!」

 

『残念ながら未だに連絡が付かない――これは彼の方に何らかのトラブルがあったことは確定だね』

 

 通信の相手は乃亜。だがギースが望んだ答えは返ってこない。

 

 あくまで大会の参加者でしかない城之内たちに負担を強いている現実に歯を食いしばりながらも努めて冷静さを保ちながらギースはポツリと零す。

 

ヤツ(アクター)を止められる程の人間がグールズにいるとは……」

 

 そのギースが零した言葉から垣間見えるのはギースの持つアクターへのある種の信頼に近いもの。

 

 傍から見れば勝手気ままで周囲と歩調を一切合わせる気のないアクターをギースは毛嫌いしているが、その実力だけは認めていた――自身には決して届かぬ力だと。

 

 ただアクターの人間性に関しては毛ほども信頼していないが。

 

 

 そんならしくないギースの様子をその声色から察した乃亜は確認するように問いかける。

 

『その辺りの事情は不明だけど…………ギース、――グールズの首領、マリクはその場から姿を消したんだね?』

 

「ああ、恐らく彼らを捕らえた後で出てくる算段だろう。今なら此方でも追えるが――」

 

 乃亜は様々な情報を頭の中で反芻するが、ギースの聞き逃せない言葉に遮るように話を割り込ませる。

 

『その選択肢はありえないよ。万が一にでも君がマリクに洗脳された場合のリスクが大きすぎる』

 

 ギースはオカルト課の中で最も勤続年数が長く、触れてきた情報も多い。それら全てがグールズの側に渡ればどうなるかなど火を見るよりも明らかだ。

 

 たとえギースがカードの精霊の加護を持つと言っても千年アイテム相手にどの程度通じるかも分からない不確かな状態で対峙させるなど以ての外だと乃亜は断じる。

 

「だがアクターと連絡が取れない以上、この作戦は――」

 

『そうだね。神崎には悪いけど、この作戦は破棄しよう』

 

 2人の言う作戦は冥界の王の力を取り込み、千年アイテムの亜種、「光のピラミッド」を持つアクターこと神崎がマリクを叩き潰す一手。

 

 さすがに上述の2つの力があれば洗脳は届かないゆえの策――肝心の「光のピラミッド」の力は未知数だが。

 

 ただ乃亜とギースは「アクターに洗脳は効かない」程度の情報しか与えられていない――神崎も素直に「冥界の王の力をゲットしました」等とは口が裂けても言えないだろうが。

 

 しかしアクターがいない以上、成り立たない作戦の為、乃亜はすぐさま別の手を打つ。

 

『だからギース、キミは城之内 克也の救助に当たると良い』

 

 マリクが城之内たちから距離を取ったということは、「城之内たちの意識を物理的に刈り取った」場合にしか出てこない腹積もりな事が見て取れる。

 

 ならばグールズの雑兵さえ片付ければ、城之内たちの元へマリクが舞い戻る心配はない――そしてギースならばそれが問題なく行える。

 

「ならマリクはどうする――泳がせたままか?」

 

 乃亜の方針変換にすぐさま行動に移しながら念の為にと問いかけるギース。城之内たちとの距離はグングン縮まっており、到着に殆ど時間はかからない。

 

 

 乃亜はそんなギースの様子を通信機越しに察しつつ、小さく笑う。

 

『心配しなくても羽蛾の話からグールズの首領が6枚のパズルカードを持っていることは確認している――そしてこの騒動でグールズの手足を使い切った以上、彼の取れる手は一つしかない』

 

 マリクの取った策は惜しげもなく全ての人員を使い潰した贅沢な一手。

 

 だがいくら千年ロッドの洗脳の力で人員を望むだけ得られるとはいえ、人を集めるにはそれ相応の時間がかかる為、このバトルシティの開催中に新たに増やせる手駒の数は限られる。

 

 ゆえにマリクがこのバトルシティの間に打てる集団を用いた策はこれが最後。

 

『ならその背を押して上げようじゃないか』

 

 そしてその策が失敗してしまった場合には逃げる以外に取れるマリクの手はたった一つ。

 

『――処刑台(本戦)へとね』

 

 逃げ場のない天空デュエル場への片道切符。

 

 

 その言葉を最後に両者の通信は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 乃亜との通信を終えたギースは城之内たちと数多のグールズたちとの間に降り立ち、不可視の力――精霊の力でグールズたちを吹き飛ばす。

 

「アンタは!?」

 

 突然現れたギースの姿に驚く城之内だったが、御伽は知らぬ顔だ。

 

「本田君……あの人って知り合い?」

 

 ゆえに警戒しつつ本田に向けてそう尋ねるが――

 

「ああ! 確か牛尾の上司の人だったよな?」

 

 本田とてレベッカの件で一度会っただけであり、そこまで詳しい訳でもない。

 

「後は任せてくれ、キミたちは私の後ろに」

 

 そんなギースの城之内たちを安心させるような言葉が背中越しから伝えられるが、御伽は心配気な声を出す。

 

「でもこれだけの人数を相手に――」

 

 城之内たち4人ですら減る気配のないグールズたちの物量差に辛うじて拮抗していた状況にいくら腕に自信があろうとも1人でどうにか出来るとは御伽には思えなかった。

 

「何この程度――」

 

 迫るグールズたちの先頭の1人が急に()()()に足を引っ張られたようにつんのめり体勢が崩れたところギースに横殴りされ、糸の切れた人形のようにパタリと倒れる。

 

 御伽の前提は間違っていた。

 

「すぐ終わる」

 

 

 (ギース)1人ではない(精霊と共にある)

 

 

 

 

 

 

 

 先程の城之内たちの苦戦が嘘のようにただ圧倒的な光景がその眼に映っていた。

 

 

 的確に人の意識を奪う術を知る素人のソレとは一線を画す動き。そこに一切の無駄はなく、流れるようにグールズたちは倒れていく。

 

 倒れ伏したグールズは完全に意識を手放し、誰一人ピクリとも動かない。

 

 

 だが見るものが見れば異様な光景である。

 

 それもその筈、グールズたちが()()()()()体勢を崩し、ギースの放つ攻撃に当たりに来ているのだから。

 

 それは常人の目には映らぬ精霊の力ゆえ――ギースとて文字通りの1人であれば、この場を収めるにはそれ相応の苦労が伴ったであろう。

 

 

 

 

 

 

 

 やがて最後の1人のグールズが倒れたことを見届けた城之内はポツリと零す。

 

「スゲェな……牛尾の上司……」

 

 腕っぷしに自信のある城之内から見てもギースの力の全貌は見えない程の開きがある。

 

 そんな城之内に蛭谷は小さく笑って返す。

 

「フッ、見事なもんだ。明らかにプロのソレだな――俺たちの『喧嘩』と比べるもんじゃねぇさ」

 

 その蛭谷の言葉通り、ギースはデュエル界の裏の奥の奥まで熟知した男。

 

 精霊との協力により完全なステルスで情報の見聞きが可能なことから、ダーティーな職業の方々とヒットマン的なやり取りや、天変地異レベルの災害現場。

 

 果てはガチの戦場、紛争地帯のハシゴ旅などなど、具体例を上げれば気が遠くなるレベルの危険地帯のフルコースを神崎の補佐として同行し、ギースは網羅している。

 

 強制ではないというのに、ついていく方も方だと思う――なお危険手当によってギースの貯金額がエライことになっているらしい。

 

 そんなギースにとって意思のないグールズなど物の数ではない。

 

 

 

 

 そんなことはさておき、軽く両手を払いながら城之内たちの元へと戻るギースに感謝の言葉を送る城之内。

 

「助かったぜ! え~と、ギースさんで良いんだよな?」

 

 だがそんな感謝も城之内たちを囮として利用していたギースからすればその感謝は受け取ることが出来ない。

 

「大きな怪我はないようだな……済まない。本来なら奴ら(グールズ)は此方で処理しなければならないというのに君たちを矢面に立たせる結果になってしまって……」

 

 ゆえにギースは真意を隠しつつ頭を下げる――今回の一件は此方側の不手際ゆえだと。

 

「あ、頭を上げてくれよ! そもそも俺らが不用心にこんな人気のない場所に来ちまったせいでもあるからよ」

 

「そうか……ならこれ以上は言うまい――まずはKCで怪我の様子を診て貰うと良い。そこまで護衛代わりに案内しよう」

 

 ギースの態度に面食らった城之内が慌てて首を振る姿にギースは内心で気を遣わせてしまったかと思いつつ、事務的に返すが――

 

「あっ! ちょっと待ってくれ! ナムはどこにいるんだ?」

 

 その本田の言葉にギースは少し考えるような素振りを見せた後で嘘を吐く。

 

「ナム? 済まないが、私は騒ぎを聞きつけて現場に来ただけだ――その『ナム』という名に心当たりはない。その人物がどうかしたのか?」

 

「実はKCのスタッフを呼んでもらう様に頼んでたんだが、会ってねぇのか……」

 

 ギースの嘘を信じ、そう呟くように語る本田。だがそんな本田にギースは嘘を重ねるしかない。

 

「なら、その『ナム』という人物がKCスタッフに接触した場合に其方から君たちの無事を伝えるように手配して置こう」

 

 だがナムことマリクがKCスタッフに自発的に近づくことはない――ハンターに囲まれるリスクを考えればあり得ない選択肢であろう。

 

 嘘を重ねなければならない事実に申し訳なくなるギースに御伽が確認するように問いかける。

 

「そういえば、この騒ぎにKCのスタッフが中々来なかったのは……」

 

「それは……いや、直接的な被害にあった君たちに隠し立てするべきではないか――だが他言無用で頼む」

 

 御伽の問いかけに一瞬悩む素振りをあえて見せてから口止めをしつつ話し始めるギース。

 

「実はあちこちでグールズたちによる騒ぎが多発していてな、今の今までその対応に追われていたんだ」

 

「ええっ!? それって大丈夫なんですか!?」

 

 衝撃の事実といった風に語られたギースの言葉に驚く御伽だったが――

 

「その点は安心してくれて構わない。既に事態は収束に向かっている――後は時間の問題だろう」

 

 その安心させるようなギースの言葉を最後に城之内たちはKCへとギースの先導によって歩みだす。

 

 

 やがて倒れたグールズたちはアヌビスが引き連れた回収班によって運ばれ、その場では何も起きなかったように片付けられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!! あれだけの人数で城之内一人さらえないとは!!」

 

 城之内をさらい洗脳した後で名もなきファラオこと遊戯と命懸けで戦わせる計画が、最初の段階でつまずいた事実にマリクは壁に拳をぶつけながら怒りを示す。

 

 運が向いてきたと思った後でコレ(失敗)である――多少の運で覆されるような布陣をKCは引いてはいないが、マリクが知る由もない。

 

「マリク様。他のポイントの構成員たちも次々と捕縛されております。これ以上は――」

 

 そんな怒れるマリクにリシドが忠言するが――

 

「分かっている!! クッ、名もなきファラオへ最大限の苦痛を味わわせてやる計画が!!」

 

 怒り心頭のマリクにその言葉が正しく届いているようには見えない。そしてマリクは考えを纏めるように呟く。

 

「人員をまた集めたとしても、あの男(ギース)が出てくれば同じか……眼鏡の女もいる――リシド、お前ならヤツらを止められるか?」

 

 知る人が知ればかなりの無茶振りを行うマリク。

 

「全力を尽くしますが、確約は出来ません」

 

 リシドとて腕に多少の覚えがあるが、実戦を突き詰めた戦いを見せたギースに重厚な鉄の扉を抱えて高々と跳躍できる北森――リシドは正面切って勝てるとは思えない。

 

 だがマリクの命であれば、リシドは死に物狂いで戦う所存であった――悪いことは言わないから止めときなさい。

 

「そうか……まぁいい――ならば本戦にて遊戯を迎え撃つだけだ」

 

 マリクとてリシドに無理をさせる気はない。それゆえに本戦で遊戯と決着をつけてやると息巻く。

 

 そんなマリクを草葉の陰、もとい遥かお空にてイシズが「最初からそうしろ」と言いつつ笑顔で青筋を立てている姿が見えた気が…………気のせいである。

 

 

 

 

 

 

「まだか海馬!」

 

「煩いぞ、遊戯!!」

 

 バイクの後部座席にて焦った声を上げる遊戯に海馬は苛立ちを示す様に声を荒げる。

 

 海馬の怒りももっともだった。それもその筈、現在の2人が乗るバイクは――

 

 

 

 信号待ちである――さすがに交通ルールは守らねばならない。

 

 海馬のお膝元であるKCの周辺で海馬が発端となって交通事故を多発させるような真似は出来ない。それ以前に事故など以ての外だが。

 

「海馬、他に道はないのか!!」

 

「ふぅん、この道が最短ルートだ――他はグールズ共の騒動に巻き込まれかねん」

 

 バイクに2人乗りし、ヘルメットを装着した名の知れたデュエリストの姿は目立ちそうな、いや、さぞ目立つ。

 

 だが童実野町の全域を使ったバトルシティのお祭り騒ぎゆえに車両が通るような個所に人気はなく、多少車両が行き来する程度だった為、目撃者は少ない。

 

 

 バイクのハンドルを握る海馬の背後で焦りを募らせる遊戯に海馬は苛立ちのボルテージを上げていく。

 

 

 だがその海馬の怒りが爆発する前にその隣に信号待ちゆえに停車した青いオープンカーが!

 

「遊戯~! どうしたの? そんなに急いで」

 

 その運転席からそんな言葉と共に顔を覗かせたのは孔雀 舞。

 

 

 バイクに2人乗りする遊戯と海馬の珍しい組み合わせに何かあったのかと想像するが――

 

「舞! 実は城之内くんがグールズに狙われているんだ!」

 

 何かあったどころではない事態が遊戯から伝えられる――城之内に一目置いている孔雀舞にとって聞き逃せない程の緊急事態である。

 

「なんですってぇ!? それでアンタたちは何処へ向かってるの!!」

 

「KCの大会本部だ! そこなら城之内くんの居場所が探せるらしい!」

 

 遊戯の焦った様子から状況を予想した孔雀舞の声に遊戯は情報を開示。それに対する孔雀舞の答えなど決まり切っていた。

 

「アタシも行くわ!!」

 

 その決断を後押しするように信号が青に変わり――

 

 それと同時にバイクとオープンカーの2台がアクセル全開で競う様に飛び出した――見事なスタートダッシュである。

 

 

 ただ、もはや特に急ぐ意味もないのだが……そんな事情は知らぬ2人のカーアクションが童実野町の交通事情を襲った。

 

 ライディングデュエル! アクセラレーション!!

 

 えっ? 違う?

 

 





牛尾「ライディングデュエル、それはスピードの世界で進化した決闘(デュエル)……

 そこに命を懸ける、決闘者(デュエリスト)たちを人々はDホイーラーと呼んだ……」


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