マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
以下、冥界の王
( ゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシ
 
(;゚д゚) ・・・
 
(つд⊂)ゴシゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚) …!?




第109話 虚仮おどし

 

『おい、聞いているのか、アクター!』

 

 イシズとのデュエルの一戦の記憶を思い出していたアクターの耳に苛立ち気なギースの言葉が届く。

 

『「何をしていた」と聞いている! 貴様の勝手な行動が――』

 

「千年タウクを確保した」

 

『――なんだと!?』

 

 簡潔に、というよりも言葉の足りないアクターの状況説明だったが、その事実はギースの胸中を驚愕に染めるには十分だった。

 

『いや、待て……千年タウクの所持者であるイシズ・イシュタールはどうした?』

 

 しかし何だかんだでアクターとの長らく同僚であったギースはすぐさま立て直す。アクター相手にこの程度でいちいち気をもんではいられないのだと――長年の苦労が目に浮かぶようだ。

 

「処理した」

 

 だから言葉が足りねぇよ、アクター。

 

『……まさか怪我を負わせるような真似はしていないだろうな』

 

 ギースの頭痛を堪えるかのような声色――通信機越しにでもギースが目頭を押さえている姿が見て取れる。

 

 そんなギースの言葉を聞き、手元の千年タウクを見ていた視線を動かすアクター。

 

 その先には呆然と膝を突き、静かに涙を流すイシズの姿が。

 

「生存に問題はない」

 

 そしてあくまで淡々とアクターは返す。このアクターの話し方にも色々事情があるのだ。しょうもない事情が。

 

『本当になんの問題もないのか?』

 

「精神が不安定」

 

 絶望の様相で膝を突き、涙を流す人間の精神状態が良好だとは思えないゆえのアクターの言葉だったが――

 

『なっ!? いや……此方の指示には従って貰えそうか?』

 

 ギースの声に僅かに焦りが見えた――そのギースの脳裏を過ったのは「精霊の鍵」の力。

 

 KCで精霊の鍵の実情を「正確」に知るものは片手で数える程もいない。

 

 その数少ない「正確に実情を知るもの」であるギースは最悪の可能性も視野に入れる。

 

「問題ない」

 

 だがアクターの言葉に胸を撫で下ろし、ギースは方針を定める。

 

『そうか……なら、牛尾たちを向かわせる――どのみち「本戦に連れていく必要がある」とのことだ』

 

 その指示はアクターも知っている――というか、指示したのはアクターこと神崎なのだが。

 

『牛尾たちが来るまで待機していろ。いいな、待機だぞ。繰り返し言うが、絶対にその場から動くなよ! いいな!』

 

 そんなもはやお笑い的な「フリ」ではないかと思えるようなギースの言葉と共に通信はブツンと切られた。

 

 

 

 通信機を仕舞いながら自身の内へと意識を向けるアクター。

 

――しかしデュエル後から冥界の王は何の反応も示さないな……感情の折り合いがついたのだろうか?

 

 そんなことを考えた後、不意に千年タウクを空にかざしたアクターは仮面の奥で目を細める。

 

――やはり千年タウクの力で未来を見ることは出来ないか。所持することは出来ても、「所持者に選ばれた」訳ではないと言ったところか……

 

 所持者に認められなかった場合のペナルティもないことから、そう仮説を立てたアクターは千年タウクを仕舞いながら思案する。アクターには他にも気掛かりなことがあった。それは――

 

――「役者(アクター)」は此処までギースに信用されていないのか……

 

 アクターの正体を見破られることのないように積極的に交流を絶っていたゆえか、溝は思っていたよりも深い。

 

 信用しろ、と言う方が無理な話だが、言いっこなしである……言わないで上げて。

 

――「役者(アクター)」も潮時かな……

 

 そんなアクターこと神崎の思案を余所にこの世の終わりを見たかのようなイシズの姿だけが牛尾たちに引き渡されるまで虚しく残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 童実野町のお墓が並ぶ霊園の一角で4人のデュエリストが座って、膝を突き合わせていた。

 

 その4人の内の一人、ダイナソー竜崎は首を縦に振りながら、向かいにいる3人の話に理解を示す。

 

「ほ~成程な……それでこんな人が全然おらんとこにおったんか」

 

 そして竜崎に向かい合う3人の内の1人、黒髪を逆立て、頬がこけた顔色の悪い小柄な少年、ゴースト骨塚(こつづか)が緊張した面持ちで肯定を返す。

 

「そうなんだゾ――ここ、霊園はこの辺じゃオレが一番落ち着いてデュエルが出来るからな……だから此処でデュエリストを待ち構えて居たんだゾ」

 

 バトルシティの性質上、人通りの多い場所の方が対戦相手を探し易いが、骨塚は自身がコンディションを保ちやすい場所で留まる作戦を取った。

 

「それで、後は佐竹と高井戸に噂を流して貰ったんだゾ」

 

 そう言いながら骨塚は自身の少し後ろに座る2人の人物を指さす。

 

 その1人は黒髪の空に伸びるほうき頭な髪形のガタイの良い男、佐竹(さたけ)

 

 もう1人はグラサンをかけたボサボサの髪の線の細い男、高井戸(たかいど) (きよし)

 

 やがて竜崎へと視線を戻す骨塚は話を続ける――

 

「それでデュエリストをおびき出したまでは良かったんだけど……」

 

――のだが、その骨塚の後ろで佐竹が小さく吹きだし笑う。

 

「この霊園じゃ、骨塚の奴がお化けにしか見えなかったみたいでよ……ププッ!」

 

 そう笑いながら語る佐竹につられて笑いだした高井戸が言葉を引き継ぐ。

 

「ハハハッ! そうそう! それで相手のデュエリストがブルッちまって骨塚の奴が楽~に倒せちまったんだわ!」

 

 そう愉快気に笑う佐竹と高井戸の姿だったが、今の骨塚はそれどころではない。

 

「お前ら~! 酷いゾ! 他人事だと思って! お前らも悪乗りしてあの後、変な噂を流してただろォ!」

 

 骨塚たちは切迫した事態に晒されているのだ。

 

 それを示すかのような骨塚の物言いに高井戸は目を泳がせながら返す。

 

「い、いや~俺らはデュエリストレベルが足りてなかったらバトルシティに参加できなかったからよ……」

 

「認定試験の方も仲良く落ちちまったからな! 俺らの中で参加できたのはお前だけだったし、助けになればと思って、つい……」

 

 そう追随する佐竹の姿に骨塚は大きく溜息を吐いた後、再び竜崎を見て不安げに零す。

 

「なぁ、竜崎……オレたちは大会のルールに抵触しちまうかな? パズルカードはキチンとデュエルで勝ち取ったゾ?」

 

「いや、ワイに言われても困るんやけど……『相手をビビらせたらアカン』、言う明確なルールはないやろうし……」

 

 しかしその竜崎の言葉通り、骨塚たちの行為がバトルシティのルールに抵触しているかどうかを竜崎には判断できなかった。

 

 デュエル中に話術や仕草などで相手の心理を揺さぶる、いわゆる「心理フェイズ」は明確なルールで規定されている訳ではなく、どちらかといえば「マナー」の範囲で語られる事柄なのだ。

 

 

 さらに事の発端であるのはゴースト骨塚の顔色の悪さ。責めるのは酷な話だった。

 

 

 そんな事情から頭を捻り苦心する竜崎の姿に骨塚の胸中は不安に襲われる。

 

「この大会の主催者って噂じゃあの『神崎』ってヤツなんだろ!? アイツ無茶苦茶ヤベェ奴って聞いてるゾ!」

 

 その骨塚の言い方から察せられるように神崎の噂には碌なものがない。

 

 

 KCを隠れ蓑に生物兵器を生み出しているとか、

 

 オカルトを通り越し、魔法のようなアレコレを行使できるなんてものに加え、

 

 命を握られている人間が世界中にいるらしい等々

 

 

 根も葉もないことを、言いたい放題言われている――まぁ、噂とはそう言う側面を持つものではあるが。

 

「さすがに大丈夫だろ? 俺らも悪乗りしちまったのは悪かったけどよ……さすがにこのくらいで……」

 

 そう言いながら高井戸は同意を求めるように残りの3人を見やるが、佐竹が深刻そうな顔でポツリと零す。

 

「いや、噂じゃ逆らった奴は闇に葬られたとかなんとか……」

 

「お前ら止めてくれよ~! オレがヤバいってことは一緒にやらかしたお前らもヤバいんだゾ~!!」

 

 佐竹の縁起でもない言葉に骨塚は不安が溢れたかのように泣き言を吐き出す。

 

 

 そんな骨塚たちの姿を眺めていた竜崎はその胸中でポツリと零す。

 

――エライ言われようやな……普段はただの気のエエ人なんやけどなぁ……普段は

 

 竜崎の知る神崎像はいつも笑顔な気のいいおっさんである。怒った姿など見たことがない。

 

 その普段は立場を感じさせぬ程に低姿勢であり、海馬やBIG5、更には各方面の顧客やら関係者たちの依頼を捌くべく奔走している姿が大半である。

 

 その内実は根が小市民ゆえだが竜崎が知る由はない。

 

 

 だが、時折その笑みが深くなる合間が竜崎は苦手だった――だが此方も竜崎は知らないが、そういう時は大抵「どうしようもない時」の諦めの自嘲である。

 

 

「なぁ、竜崎……オレたちは大丈夫なのか?」

 

 無言になった竜崎の姿におずおずと切り出す骨塚だが――

 

「いや、ホンマにワイは分からんで?」

 

 立場的に知らない情報ゆえに竜崎には言葉を濁すことしか出来ない。

 

「そ、そんなぁ~! お前がデュエルの前に『バトルシティのルールに抵触しとらへんか?』とか言い出したからだゾ! なんとかしてくれよぉ~!」

 

 そう言いながら骨塚はわらをも掴む心持ちで竜崎にすがりつく。

 

 そんな骨塚を余所に高井戸は佐竹と顔を合わせ――

 

「俺らでKCのスタッフに確認しようにも……なぁ?」

 

「ああ、もし問題だった時は悪ノリした噂を流した俺たちじゃなくて、骨塚がやり玉に上がっちまうだろうからな」

 

 その後、不安げに頭をかく2人。

 

「竜崎、お前が言い出しっぺなんだゾ! 責任取ってKCのスタッフに確認してきてくれよぉ~! お願いだゾ~!」

 

「 「 俺らからも頼む!! 」 」

 

 最後に後生だからと、頭を下げて願い出る3人の姿に竜崎は小さく溜息を吐いた。

 

――噂の真偽を確認しに来ただけやのに、なんやエライ面倒なことになってもうたなぁ……

 

 そう内心で一人ごちる竜崎。

 

 竜崎がこの霊園に来たのは「霊園にて幽霊がデュエルを挑んでくる」といった如何にもオカルト染みた話を聞いたゆえに大きな問題になる前に確認に来た次第であった――にも関わらず、この惨状は何なのか……

 

 

 ちなみに骨塚たちが流した噂は「霊園にはパズルカードを多く持った幽霊が見えるデュエリストがいる」である。

 

 随分、噂が捻じ曲がったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 KCの病室と思しき一室でベッドに眠る一人の白髪の青年が眼を覚ます。

 

「……此処はKCか……腕の怪我も問題はねぇみたいだな」

 

 その青年は獏良――ではなく、獏良が持つ千年リングに宿る邪悪なる人格、バクラは身体を起こし、周囲を見回す。

 

 だが周囲にあるのは殺風景な病室らしき部屋とバクラの傍で看病疲れからか、イスに座ったままコクリ、コクリと船を漕ぎ、居眠りする双六の姿。

 

 そんな双六を余所にバクラは確認するかのように負傷した腕を回すが、そこにあったのは不気味な程に健康な腕。

 

 腕にかなりの深い刺し傷があったにも関わらず異常らしい異常が全くない――KCのオカルト課、ご自慢の治療技術の高さを感じる以前にもはや不気味な領域である。

 

「――フゴッ! ……ん!? おお、獏良くん! 目が覚めたんじゃな! よかったのぉ……」

 

 近くで動く気配を察したゆえか双六は居眠りから眼を覚まし、目が覚めたバクラの元気そうな姿に喜ぶが、ふと思い出したかのように問いかける。

 

「そういえば、気分はどうじゃ!? ドクターの話では脳波が乱れておったとか、何とか言っておったが……」

 

 双六から出た「脳波」との言葉に城之内たちを相手に一芝居打つ為に、マリクに表の「獏良」を洗脳させて仲間だと思わせたことに思い至るバクラ。

 

 だが確認するべく自身の内へと意識を集中するバクラだったが――

 

――これは!? 俺様の宿主様に対するマリクの洗脳が解けてやがる。KCは伊達じゃねぇってことか……だが社長はオカルト嫌いだった筈だが? まぁ、いい……

 

 そこにあるのは洗脳のくびきから解放されている表の獏良の人格のみ――マリクが植え付けた記憶等はどこにも存在しない。

 

 

 バクラの中でKCへの警戒度が一段上がる。

 

 

「ボクは……一体どうしたんですか? 確か城之内くんたちと最後に会ったような……」

 

 怪我から回復したばかりの弱々しい姿を演じつつ双六へと探りを入れるバクラ。

 

「ああ、その後は城之内たちと別れて獏良君はずっとこの病室じゃ、ここは安全じゃから安心すると良いぞい」

 

 だが双六はそんなバクラの姿を信じ切り、バクラを安心させるように言葉を選ぶ。

 

「城之内くんたちは……?」

 

 しかしバクラが知りたいのはそんな情報ではない為、知りたい情報を得るべく話を誘導するが――

 

「城之内の方は――聞いた話じゃと、ひと悶着あったようじゃ。じゃがKCのスタッフのお陰で大事にはならなかったそうじゃから……今は本戦会場についとるじゃろうな」

 

 肝心の双六の警戒心が皆無の為、バクラが知りたい情報――マリクの計画の成功の有無はあっさり判明した。

 

――マリクの野郎……失敗しやがったか、だらしねぇ

 

 そう唾を吐くように胸中で零したバクラは思案する。

 

 まだマリクが捕まっていない以上、マリクが遊戯の命を狙い続けることは明白――遊戯に、名もなきファラオにまだ死なれては困るバクラの取るべき行動は一つ。

 

「遊戯くんたちの応援に行きたいんですが……」

 

「無茶はいかんぞい!」

 

 しかしバクラの提案を即座に断ずる双六――怪我は完治しているとはいえ、しばらくは安静にしておくべきだと。

 

――チッ、面倒くせぇ……

 

「お願いします!」

 

 面倒だと思う内心を隠しつつ再度頼み出るバクラ――これで聞き入れられない場合は強硬策も視野に入る。

 

「う~む、決意は固いようじゃな……なら儂も行こう!」

 

 そう言って拳を握りながら立ち上がった双六。そして本戦会場の場所を知っているKCのスタッフを探すべく行動に移そうとするが――

 

 

 

「ならこっちで車、回しといてやるよ」

 

 そんなヴァロンの声が病室の扉近くから聞こえた。海馬にバイクを奪われ――もとい貸し出した後、自力でKCに戻っていた模様。

 

「……おぬしは確か、ヴァロン君じゃったな! 助かるぞい!」

 

 知った顔ゆえに手間が省けたと双六は朗らかに笑う。

 

 その双六の背中越しにバクラがニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 だったのだが――

 

「……わりぃけど、今、使えるのはこの2人乗りのバイクだけだな――どっちか運転できるか?」

 

 KCから出た2人に用意されたのはバイクが1台――海馬が乗り捨てていったヴァロンが乗っていたものである。

 

 

 バクラはバイクの運転は一応出来るとはいえ、表の人格たる獏良は「出来ない」ことになっている。

 

「ボクは出来ないです……」

 

 ゆえにそう返すしかない。バクラは内心で舌を打つ。

 

「なら儂に任せるんじゃ! こう見えて昔はブイブイいわせっとったんじゃぞい!!」

 

 そんな意気揚々との言葉がピッタリな姿の双六と共にバイクに乗ったバクラは目的地たる本戦会場へと走り出していく。

 

「フフフ……昔の血が騒ぐのう!!」

 

 安全運転でお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本戦会場であるバトルシップが降り立つ予定のKCが所有するドームにて、遊戯たち一同は本戦出場者が揃うまで待機していた。

 

 そんな中で城之内がボヤクように呟く。

 

「しっかし、本戦会場だってのに殺風景なとこだな……もうちょっと何とかならなかったのかよ、海馬?」

 

 城之内の言う通り周囲は未完成のドームが広がるばかりで、本戦会場というには些か以上に不釣り合いだ。

 

 だが対する海馬は――

 

「ふぅん、凡骨風情が煩いぞ。今回の大会は俺が関知していない話を忘れたのか? おめでたい頭だ」

 

 相変わらずの俺様節。

 

 だが今回のバトルシティの情報を知らされていない海馬でも、この大会の名目上のトップであるモクバがこんな場所を本戦会場に選ぶ筈がないと確信している。

 

 ゆえに先の挑発はそんなことすら分からない城之内の頭の弱さを嘲笑っただけだ。

 

「こ、こいつは……!!」

 

 そこまでは分からずとも馬鹿にされていることには気付いた城之内が、さすがに我慢の限界だと苛立ちを見せるが――

 

「まぁまぁ、城之内さん。規定人数が集まれば説明が入るでしょうから」

 

 怒り心頭な城之内をなだめるナム――その正体はマリクであるが、城之内たちは気付いていない。

 

「いや、そうだけどよ、ナム……」

 

 知り合ったばかりのナムに格好の悪いところを見せてしまったことを恥じつつ、矛先を収める城之内。

 

 その城之内の姿を見つつ「ふぅん」と鼻を鳴らす海馬。

 

 

 そんな城之内たちの傍にいた遊戯の視線は「ナム」に注がれていた。

 

――あのナムって人の声……どこかマリクに似ている気が……

 

 そう胸中で名もなきファラオである遊戯へと語り掛ける遊戯。

 

――だが相棒、マリクは向こうの千年ロッドを持つ『大男』だろう? 城之内君の話ではナムもグールズに襲われたそうだから気のせいじゃないか?

 

 だが名もなきファラオである遊戯は離れた個所で壁にもたれ掛かる大男へと視線を向ける。

 

 その腰元には千年ロッドが見えていた――ただ、その正体はリシドであるが。

 

 

――後で牛尾くんにマリクの素顔の写真か何かないか聞いてみよう……

 

 そう考えつつちらと牛尾の方を見る遊戯。

 

 その視線の先にはイシズと静香を北森と共に守るように立つ牛尾の姿がある――今は話しかけられる状況ではなさそうだった。

 

「どうしたんだ、遊戯? そんな難しい顔してよ?」

 

 牛尾に視線を向けつつ考え込んでいる遊戯に本田はそう尋ねるが――

 

「もう、分かってないわね! ダーリンは本戦に向けて集中しているのよ!」

 

 遊戯の腕にくっついているレベッカが呆れ交じりに本田へ返す。

 

「レベッカ、そろそろ遊戯から離れたら?」

 

 そんな遊戯との距離が近すぎるレベッカを牽制する杏子の言葉にレベッカの間でバチバチと火花が散り、恋のバトルが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおお!!」

 

 だがそんな一同に届く必死さが溢れた声と共に見える此方へと走り迫る4人の姿。

 

「あら? なにかしら?」

 

 そんな孔雀舞の疑問を余所に黒服の磯野へと必死さが溢れた声の主、リッチーが夜行を抱えつつ立ち止まる。

 

「うぉらぁああああ!!」

 

 だが急停止した為か、そのリッチーの腕から夜行が飛んでいき――

 

「――ズペシッ!!」

 

 地面にヘッドスライディングーー不幸な事故である。

 

 だがそんな夜行の末路を余所に息を切らしながら磯野にリッチーは詰め寄り――

 

「これ! パズルカード6枚ずつだ! 俺とコイツの2人――本戦の席は空いてるか!?」

 

 パズルカードを差し出した。

 

「リ、リッチー……もっと優しく降ろして――」

 

 この本戦会場にまで走り詰めだったゆえにバテた自身を運んでくれたことをありがたく思ってはいても、それとこれとは別とばかりに零す夜行。

 

「後1席だったら俺じゃなくて――」

 

 しかしリッチーは取り合わない――色々あって、かなり遅れての到着だったゆえに最悪の可能性も視野に入れていた。

 

 

 そんなリッチーから受け取ったパズルカードを機械にスライドしながら磯野は安心させるように返す。

 

「問題ない。君たち2人でちょうど8名――本戦参加者の規定人数が揃った」

 

 

「――シャッ! セーフ!!」

 

 その磯野の言葉に握りこぶしを作るリッチー。

 

「ギリギリでしたね……」

 

 そして息を切らしながらリッチーに追いついた月行とデプレが安堵の息を漏らす。

 

「夜行……お前がもっと早く……連絡していれば……」

 

 だがデプレが自身の怒りを示す様に夜行の脇腹に連続して拳をゴツゴツ当てている。

 

「痛い、痛いですよ、デプレ!」

 

 地味に痛いと身をよじる夜行だが、リッチーは「もっとやってやれ」とばかりに夜行に苦言を呈する。

 

「お前がパズルカード6枚集めたってのに 報告しねぇからギリギリになっちまったじゃねぇか!」

 

「ですが、あのパズルカードはグールズ以外の一般の参加者から――」

 

 リッチーの言葉に夜行なりの言い分を返すが――

 

「だとしても一報入れるべきですね」

 

 兄である月行のリッチーへの援護射撃が夜行を襲う。

 

 返す言葉もない夜行にデプレの地味に痛いパンチは止まらない。

 

「デプレ! ちょっ! 待っ――」

 

 そんなペガサスミニオンたちの団欒を余所に自身を除いた8名のデュエリストに視線を移した海馬――だが決着をつける相手が一人足りない。

 

 だが海馬からすれば本戦にたどり着けないような相手など眼中にないと言わんばかりにモクバへと向き直る。

 

「これで8名が揃った訳か……モクバ! 本戦の――」

 

 しかしそんな海馬の間に割り込む磯野。

 

「申し訳ありません、瀬人様。まだ本戦に向かっているものが……」

 

「そうなんだぜい、兄サマ! だから本戦の説明はキチンと全員が揃ってからだぜ!」

 

「ふぅん、応援とやらか……面倒な」

 

 磯野の言葉にそう付け足したモクバの姿に海馬はマントを翻しつつ踵を返した。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして――

 

「遊戯く~ん!」

 

 そんなバクラの声と共に双六が本戦会場に到着。

 

「おおっ!? 爺さんに、獏良じゃねぇか! 獏良、怪我はもう良――」

 

 馴染みの顔に心配しつつ前に出る城之内だが、その横を素早く通り抜ける人影が。

 

「獏良くぅん!!」

 

 案の定、野坂ミホである――本戦への情報媒体の席を勝ち取ったようだ。

 

「やっぱり、ばーくらくんも大会に参加して――」

 

 バクラの手を取りながら、一方的に楽し気に話を弾ませつつグイグイと自身の方へと引き寄せていく野坂ミホ。

 

 

 

 そんな野坂ミホとバクラの様子など放っておけとばかりに、海馬は再度モクバへと声を張る。

 

「さぁ、モクバ! 今こそ本戦の宣言の時だ!!」

 

 

 

 

 

 

 だが、そんな一同の喧噪を断ち切るように黒い影が「カツン」と靴音を立てながら現れた。

 

「アイツは……」

 

 その言葉は誰のものか、しかしこの場にいる全ての人間の視線はその真っ黒な出で立ちに注がれている。

 

 

 人であることを覆い隠したようなその服装。その素顔は頭全体を覆う仮面からは窺えない。

 

 何処からか吹いた風がマントをはためかせ、その腰元に取り付けられたデュエルディスクがこの場のデュエリストを挑発するように鈍く光る。

 

 その歩みが止まると同時に風は吹き止み、周囲の緊張を駆り立てた。

 

 

 

 役者(アクター)。遅ればせながら本戦会場に到着。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の最後にそれっぽく出てきたアクターだが、その実情は「千年タウクをツバインシュタイン博士に届けようとKCに寄ったが、本戦会場に出発したことを知らされ、慌てて戻って来た」次第である。

 

 その内実は、まさに取引先に遅刻しそうになるサラリーマンの如く。

 

 皆が知れば、周囲の視線はどうなることやら。

 

 





~入りきらなかった人物紹介、その1~
ゴースト骨塚(こつづか)

不健康そうな顔色に頬がこけた不気味な様相をかもし出す小柄な少年デュエリスト。

その外見はお化けが苦手な城之内を気絶させる程の恐ろしさ。ただ城之内のお化け嫌いが際立っているだけかもしれないが。


しかし「ゴースト」骨塚と呼ばれる様にいわゆる「名持ち」のデュエリストであり、決闘者の王国(デュエリストキングダム)、及びバトルシティに参加できる程の実力を持つ。

そのどちらも戦績は振るわなかったが。

原作では――
決闘者の王国(デュエリストキングダム)に参加したデュエリストの1人であり、闇落ちしたキースの手下として共に行動していた。

その際、墓場フィールドで孤立させた城之内とスターチップを賭けデュエル。

キースから与えられたカードとアドバイスの元、優勢にデュエルを進めるが、最後の最後で城之内に逆転を許し敗北。

その後、キースから見限られ、佐竹、高井戸と一緒に、残ったスターチップを奪われた。



さらに原作のバトルシティにも登場。

キースにボコられ、スターチップを奪われた過去から
見返してやろうと夜の墓地で参加者をお化けの仮装で驚かせつつ脅し、パズルカードを物理的に奪っていた。

何としてでも本戦に辿り着く執念を感じさせる――たがルール的にアウトである。


その後、バクラの一戦交えたが、コミック版ではその出番はほぼカットされた。

だがアニメ版でキッチリ1話を通してデュエルする。

しかしバクラに敗北後の闇のゲーム特有の罰ゲームにより、共にいた佐竹・高井戸も含めて闇に呑まれた――カットされていた方が良かったのかもしれない末路である。

その後、彼らがどうなったかは不明――バクラの性格からして助けては貰えていない気も。


今作では――
決闘者の王国(デュエリストキングダム)にも参加していたが、今作では予選をカットした為、出番もカットされた――済まぬ

バトルシティにも参加していたが、特に気負う理由もないので出来る限り頑張ろうと自身が良いコンディションを保てる場所でデュエルしつつコツコツ、パズルカードを集めていた。

だがバクラとの接敵フラグが圧し折れた為、デュエル自体がお流れになった――本当に済まぬ






~入りきらなかった人物紹介、その2~
佐竹(さたけ)

ゴースト骨塚と共にいる2人のガタイの良い方。黒髪のほうき頭なヘアースタイルが特徴。

原作にてゴースト骨塚の顔を見た際に、お化けと勘違いして恐怖のあまり気絶した城之内にめざましビンタした人といった方が分かり易いかもしれない。

原作では――
決闘者の王国(デュエリストキングダム)に参加したデュエリストの1人。
ゴースト骨塚と共に闇落ちしたキースの手下をしていた。

だがゴースト骨塚が城之内に敗北後、ついでにキースから見限られ、スターチップを奪われた。

バトルシティではデュエルディスクを持っていない姿から参加できなかった模様。

だがバトルシティに参加しているゴースト骨塚のサポートを買って出た――が、その末路はゴースト骨塚と同じく闇の中である。

今作では――
仲間のよしみでゴースト骨塚のサポートを買って出ており、霊園までデュエリストを誘き寄せるべく噂を流した。


――のだが、最初に来たデュエリストが骨塚の顔を見て恐怖のあまり動揺し、まともなデュエルが出来ないままあっけなく敗北。

その姿を見て悪ノリし、高井戸と共にお化け系統の噂を追加で流していた。




~入りきらなかった人物紹介、その3~
高井戸(たかいど) (きよし)

ゴースト骨塚と共にいた線の細い体格にグラサンをかけた方。赤毛のボサボサヘアー。

原作にてバクラの闇のゲームから1人逃げ出そうとしたものの、バクラの闇パワーにより元の場所まで戻ってきてしまった人といった方が分かり易いかもしれ――いや、分かり難いか。

上述の佐竹と違い、フルネームが存在する――骨塚すらなかったのに……

原作では――
決闘者の王国(デュエリストキングダム)に参加したデュエリストの1人。
ゴースト骨塚と共に闇落ちしたキースの手下をしていたが、ゴースト骨塚と共にキースから見限られ、スターチップを奪われた。

バトルシティでは佐竹と同じくデュエルディスクを持っていないようなので参加していないが、ゴースト骨塚のサポートをしていた――その後の末路は上2人と変わらず闇の中である。

今作では――
仲間のよしみでゴースト骨塚のサポートを買って出ており、霊園までデュエリストを誘き寄せるべく噂を流した。

その後は佐竹での説明したようにお化け系統の噂を追加で流していた。
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