マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
アクター、寂しい一人旅に終止符を打つべく、すぐさま仕事を片付け始める

ですが、そう上手くいかないのが世の常と申します(紅蓮の悪魔のしもべ感)




第111話 このくらい当然だろ? デュエリストなら

 

 起動しない精霊の鍵を余所にデュエルはスタートされる。先攻はアクター。

 

――いや、リシドが相手なら精霊の鍵での行動の制限も必要ない。此方が勝ちさえすればデュエルの結果に従うだろう……なら、今はデュエルに集中するべきだ。

 

 そう結論付けたアクターは精霊の鍵の不具合を意識から外し、デッキへと手をかける。

 

「私のターン、ドロー。《ナチュル・アントジョー》を召喚」

 

 葉っぱの羽をぱたつかせながら大きなヒマワリの種を身体全体で抱えるファンシーな見た目の(アリ)がアクターのフィールドに現れる。

 

 その《ナチュル・アントジョー》はヒマワリの種を持つのが大変なのかキュッと目を引き絞っていた。

 

《ナチュル・アントジョー》

星2 地属性昆虫族

攻 400 守 200

 

 そのファンシーな見た目はおどろおどろしいアクターのイメージにはそぐわない。リシドの視線に怪訝なものが混ざる。

 

「カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 だが、当のアクターは気にした様子もなくターンを終えた。

 

 

 低ステータスのモンスターにリバースカードが1枚という一見すれば心許ない布陣のアクター。

 

 その内実はそこそこラインの手札ゆえのまあまあな立ち上がりだったが、そんな肩透かしを受けそうな布陣であってもリシドの気が緩むことはない。

 

「ならば私のターン! ドロー! まずはこのカードを発動させて貰おう! 遺宝祀りし聖域! 永続魔法《王家の神殿》!!」

 

 リシドは早速、己のデッキの核となるカードを発動させ、その背後に黄金で彩られた神殿が地面からせり上がった。

 

「そしてカードを1枚セット! ここで永続魔法《王家の神殿》の効果! 1ターンに1度、セットしたターンに罠カードを発動できる!」

 

 《王家の神殿》が脈動し、その真骨頂たる力を発揮する。

 

「永続罠《アポピスの化神》を発動! このカードは発動後、モンスターカードとして我がしもべとなる!!」

 

 だがアクターが待ったをかけた。

 

「その効果にチェーン。手札の《増殖するG(ジー)》を捨て、効果発動。このターン、相手がモンスターを特殊召喚する度に私はデッキからカードを1枚ドロー」

 

 そしてアクターの背後からウジャウジャと嫌悪感を感じさせる黒い影がざわめき始める。

 

「構わぬ! いでよ、《アポピスの化神》!」

 

 紫の煙と共に現れたのは蛇の鱗を持つ戦士。その足は蛇の尾であり、その背中から蛇の頭が伸びていた。

 

 そんな《アポピスの化神》は盾を正眼に構え、その盾に沿えるように剣をアクターへと向ける。

 

《アポピスの化神》

星4 地属性 爬虫類族

攻1600 守1800

 

「《増殖するG》の効果で1枚ドロー」

 

 アクターの手札に黒い影がシュッと通り過ぎ、その後には手札が1枚舞い込む。

 

「相手がモンスターを特殊召喚したことで、《ナチュル・アントジョー》の効果発動。自身のデッキからレベル3以下の『ナチュル』モンスター1体を特殊召喚」

 

 しかしリシドの気迫を受け流す様にアクターの声が響き、《ナチュル・アントジョー》が抱えるヒマワリの種にヒビが入り始め――

 

「レベル3《ナチュル・バタフライ》を守備表示で特殊召喚」

 

 やがてヒマワリの種から飛び立ったのは薄い桃色のファンシーな見た目の蝶。

 

 その《ナチュル・バタフライ》が羽を静かに動かすと共にフィールドにキラキラと水滴が舞い、その水滴に映る自身の姿をウットリと眺める《ナチュル・バタフライ》。

 

《ナチュル・バタフライ》

星3 地属性 昆虫族

攻 500 守1200

 

 結果としてアクターのフィールドに新たなモンスターが呼び出されたが、そのステータスは決して高くはない。

 

 ゆえにリシドは相手の戦術を見極める為にも果敢に攻めることを決意する。

 

「だが攻撃力は此方が上! バトルだ! 《アポピスの化神》で《ナチュル・アントジョー》を攻撃!!」

 

 《ナチュル・アントジョー》へ向けて《アポピスの化神》は自身の蛇の身体をくねらせながら迫り、手に持つ剣を振りかぶる。

 

「その攻撃時、《ナチュル・バタフライ》の効果を発動。1ターンに1度、自身のデッキトップを墓地に送ることで攻撃を無効化」

 

 しかしその剣撃の間に割り込んだ《ナチュル・バタフライ》が剣撃が届かぬ遥か上空へ《ナチュル・アントジョー》を抱えて飛び立った。

 

「躱したか……ならばバトルを終了し、カードを3枚セット!」

 

 裏デュエル界で様々な噂が飛び交う「役者(アクター)」という水面に一石を投じるかのようなリシドの攻勢は不発に終わったが、リシドの瞳に焦りはない。

 

 引き続き警戒しつつ魔法・罠ゾーンを全て使って相手の動きに注意深く備えるリシド。

 

――相手はあのイシズ様を退けた相手……出し惜しみは出来ん!

 

 イシズが千年タウクを身に着けていなかった事実が何を意味するか分からぬリシドではない。その為、アクターに対して強い警戒心を持っていた。

 

 そしてターンを終えようとするリシドにアクターは《増殖するG》の効果で手札に加えたカードを手に声を上げる。

 

「其方のメインフェイズ2終了時に永続罠《連撃の帝王》を発動。1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズにアドバンス召喚を行う」

 

 アクターのフィールドの地面が地響きを立てる――アクターのフィールドには2体のモンスターの存在。リリースが2体必要な最上級モンスター、エースクラスのカードの脈動をリシドは予感した。

 

「《ナチュル・アントジョー》をリリースし、《ナチュル・バンブーシュート》をアドバンス召喚」

 

 やがて地面に潜った《ナチュル・アントジョー》の代わりに出てきたのはつぶらな瞳を持つ2体のタケノコ。

 

 自身の存在をアピールするように小さな手足を目一杯広げていた。またまたファンシーな見た目のモンスターである。

 

《ナチュル・バンブーシュート》

星5 地属性 植物族

攻2000 守2000

 

「上級モンスターを呼び出したか……私はこれでターンエンドだ」

 

 呼び出された《ナチュル・バンブーシュート》の攻・守は共に2000。上級モンスターとしては高くもなく低くもないライン。

 

 このデュエル中に使用したアクターのカードは肩の力が抜けそうなゆるーい見た目のモノばかりだ。

 

 そのせいか何処か緩みそうになる気を引き締めつつリシドは再度アクターを見やる。

 

――まだデュエルは序盤……奴もこの時点で切り札を切る気はないか……

 

 そう一先ず結論付けるリシド。

 

 

 しかしリシドは気付かない――既に己が相手の術中にあることを

 

 

「私のターン、ドロー。永続魔法《進撃の帝王》を発動」

 

 アドバンス召喚されたモンスターに耐性を付与する永続魔法《進撃の帝王》の効果によりアドバンス召喚された《ナチュル・バンブーシュート》は気合を入れるようにみょーんと身体を伸ばし、その口を引き絞るように閉じる。

 

「《ナチュル・パンプキン》を召喚」

 

 そんな《ナチュル・バンブーシュート》の隣にノンビリと歩みより「どっこいせ」と腰を下ろした眠たげな眼のカボチャのモンスター《ナチュル・パンプキン》。

 

 その両の手を重ねるようにして持つ黄色い花をチラと見た後でフゥと溜息を吐く。

 

《ナチュル・パンプキン》

星4 地属性 植物族

攻1400 守 800

 

「そして相手フィールドにモンスターが存在する場合に召喚された《ナチュル・パンプキン》の効果を発動」

 

 やがて《ナチュル・パンプキン》がおずおずとカツラを外す様に頭を持ち上げるとスポンと上側の皮が取れ、中の空洞になった部分が露わになり――

 

「手札から『ナチュル』モンスター1体を特殊召喚する――《ナチュル・マロン》を攻撃表示で特殊召喚」

 

 その《ナチュル・パンプキン》の頭の空洞からトゲトゲとした「いがぐり」がポンと飛び出し、地面に飛び跳ねながらアクターのフィールドの列に並んだ。

 

 そのいがぐり、こと《ナチュル・マロン》のつぶらな瞳がジッと相手フィールドの《アポピスの化身》を見つめている。

 

《ナチュル・マロン》

星3 地属性 植物族

攻1200 守 700

 

「《ナチュル・マロン》の効果を発動。墓地の『ナチュル』モンスター2体をデッキに戻し、1枚ドロー」

 

 そのアクターの声に《ナチュル・マロン》はキリリと瞳を強め――

 

「墓地の《ナチュル・アントジョー》と《ナチュル・バンブーシュート》をデッキに戻し。1枚ドロー」

 

 墓地に眠る2体の同胞をデッキへと還し、アクターへと手札代わりにとその棘の内側の栗を射出する。

 

「《ナチュル・バタフライ》の効果で墓地に送られていたか……」

 

 そんなリシドの確認するような呟きもアクターは全く意に介する様子はない。

 

「《ナチュル・バタフライ》を攻撃表示に変更し、バトルフェイズへ移行――《ナチュル・バンブーシュート》で《アポピスの化身》を攻撃」

 

 地中に潜った《ナチュル・バンブーシュート》の姿に《アポピスの化身》は周囲を警戒するように蛇の頭と共に自身の目線を動かす。

 

 だが、その眼に最後に映ったのは己を貫く巨大なタケノコのみ――死角となった足元からの一撃に《アポピスの化身》の身体は崩れ落ちた。

 

リシドLP:4000 → 3600

 

「この程度ッ!!」

 

「《ナチュル・バタフライ》でダイレクトアタック」

 

 《ナチュル・バタフライ》の羽から舞う風が刃となってリシドへ放たれる。

 

「そうはさせん! 永続罠《深淵のスタングレイ》を発動! この永続罠は発動後、モンスターカードとして私のフィールドに特殊召喚される!!」

 

 しかしそれを遮るようにリシドのリバースカードが発動される――これこそリシドのトラップデッキの真骨頂である優れた奇襲性。

 

 

 だがその気迫に反し、リシドのフィールドには何の変化もない。

 

「――何故、発動しない!?」

 

「『ナチュル』モンスターをリリースしてアドバンス召喚した《ナチュル・バンブーシュート》がフィールドに表側表示で存在する限り、相手は魔法・罠カードを発動できない」

 

「……なん……だと……!?」

 

 不審がるリシドへと遅ればせながら説明を終えたアクターにリシドは思わず言葉を失う。

 

 

 それもその筈、リシドのデッキは「トラップデッキ」――デッキの中の大半のカードが魔法・罠カードでありモンスターは僅か。

 

 ゆえにリシドの魔法・罠を封じている《ナチュル・バンブーシュート》を除去する術がリシドのデッキには極僅か。

 

 自身の力でリシドを封殺した事実に、えへんと胸を張るように身体を逸らす《ナチュル・バンブーシュート》。

 

 そんな言葉を失うリシドを《ナチュル・バタフライ》の風の刃が僅かに切り裂いた。

 

「ぐぅっ!」

 

リシドLP:3600 → 3100

 

「《ナチュル・マロン》でダイレクトアタック」

 

 続いて《ナチュル・マロン》がリシドに体当たりし、そのいがぐりの棘でリシドを突き刺す。

 

「ぐぁっ!」

 

リシドLP:3100 → 1900

 

「《ナチュル・パンプキン》でダイレクトアタック」

 

 最後に《ナチュル・パンプキン》が外れた頭の上部分をフリスビーのようにリシド目掛けて投げ飛ばす。

 

「ぬぅううう!!」

 

 その頭の上部分はリシドを強かに打ち据えた後、弧を描いて《ナチュル・パンプキン》の手元に戻っていった。

 

リシドLP:1900 → 500

 

「ターンエンド」

 

 まだデュエルが序盤にも関わらず一気に追い詰められたリシド。己のデッキの致命的な弱点を突かれたリシドが今打てる手はない。

 

「くっ……私に対するアンチデッキの答えがこれか!」

 

 苦し気にそう零すリシドにアクターは何も返さない。

 

 そんなアクターの何者をも映さない仮面の奥の瞳を前にリシドは胸中でごちる。

 

――このバトルシティで手の内を明かし過ぎたツケが此処に来て……

 

 このバトルシティにてリシドはかなりの回数デュエルを行ってきた。『パズルカードを集める』――その一点の目的の為に。

 

 

 しかしリシドのその行為は役者(アクター)獲物(リシド)を見定める十分な機会を与えたに等しい。

 

 

 相手のデッキの弱点を突く所謂「アンチデッキ」――そんなものに後れを取るのは二流のデュエリスト。そう評するのは容易いが、言うは易く行うは難しと言うもの。

 

 

 さらに厄介なことにアクターが調べるのは相手デュエリストのデッキだけではない。

 

 

 対戦相手のドロー力などの目に見えぬデュエルに関する情報も含めた上で「相手」を見極め、僅かでも勝つ確率を高めるのだ。

 

 

 

 そうやって役者(アクター)は無敗の称号を重ねてきた――ギリギリの勝負が大半だが、此処は言いっこなしで願おう。

 

 

 勝負(デュエル)は戦う前から始まっているのだ。

 

 

 

 

 なお、これだけやっても遊戯(バグ)クラスには届かない事実が、如何に彼らが化け物染みているかを窺わせる。

 

 

 そんな才能の壁はさておき、リシドはその胸中で焦りを隠す様に呟く。

 

――この飛行船そのものが我らを捕らえる為の罠だったのではない……このバトルシティそのものだけでなく、集められた人間すら……

 

 そう考えた後で、「役者(アクター)とはよく言ったものだ」とリシドは自嘲気に笑みを作る。

 

 

 デュエルが始まった時点で相手は既に舞台の上でストーリーに囚われ、知らず知らずの内に「敗者」の役を演じさせられる――他ならぬ役者(アクター)に。

 

 

 しかしそんな追い詰められた状況でもリシドの瞳に陰りはない。

 

 ならばアクターが描いた筋書きを己が超えれば良いだけだと、デッキに手をかける。

 

「私のターン! ドロォオオオオ! ――私はカードを1枚セットし、ターンエンドだ!!」

 

 引いたカードではなく、元からあった手札を伏せてターンを終えたリシドにアクターは警戒の眼差しを向ける。

 

 

「私のターン、ドロー」

 

――恐らく手札誘発辺りを引いたようだな……だが此方の手札では、どうすることも出来ないか……

 

 そう考えながらアクターはリシドを見やる――視線の先のリシドの心は折れてはいない。つまりそれはまだ手札に抗う術があるということ。

 

 そして自身の手札を見やり内心で深く溜息を吐く。その手札には防御する類のカードがなかった。いつもの何とも言えない手札である。

 

「バトルフェイズ。《ナチュル・バンブーシュート》でダイレクトアタック」

 

 《ナチュル・バンブーシュート》が再度地面に潜っていくが――

 

「まだ私は終わる訳にはいかん! ダイレクトアタック時に手札の《バトルフェーダー》の効果! 自身を特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」

 

 お馴染みの手札誘発モンスターである時計の振り子のような悪魔、《バトルフェーダー》がバトルを終わらせるべく鐘を鳴らす。

 

《バトルフェーダー》

星1 闇属性 悪魔族

攻 0 守 0

 

 その音が地中に響いたのか、目を回した《ナチュル・バンブーシュート》がぐでんと横たわった状態で地中から顔を出す。

 

「バトルを終了し、メインフェイズ2へ移行。《ナチュル・バタフライ》・《ナチュル・マロン》・《ナチュル・パンプキン》を守備表示に変更」

 

 そんなグッタリする《ナチュル・バンブーシュート》を3体のナチュルたちはせっせとアクターのフィールドに運び、一仕事終えたと守備表示になって座り込んで各々休み始めた。

 

「ターンエンド」

 

 リバースカードを出せず防御に不安が残る胸中を隠しながらターンを終えたアクター。

 

 

 そんなハラハラしているアクターを余所にリシドは辛うじて敗北の危機を避けた事実に息を整えるように深呼吸し、意を決し宣言する。

 

「私のターンだ……」

 

 

――この状況を打開するあのカードを引かねば……頼む、我がデッキよ! 応えてくれ!!

 

 そうリシドは自身のデッキの上に力強く己の手を重ね、祈るように瞳を閉じた。

 

 

「ドロォオオオオ!!」

 

 

 やがて開眼したと同時に大きく右腕を振り切り引いたカードは――

 

――来たか!!

 

 己が相棒たるカード。

 

「私は《バトルフェーダー》をリリースしアドバンス召喚! 出でよ! 聖櫃に眠る神の守護者! 《聖獣セルケト》!!」

 

 《バトルフェーダー》の足元の地面を砕き、《バトルフェーダー》をムシャムシャと食しながら現れた巨大なサソリの身体を持つ《聖獣セルケト》。

 

 リシドの気迫に答えるようにその大きなハサミを上に掲げながらジャキジャキと動かす。

 

《聖獣セルケト》

星6 地属性 天使族

攻2500 守2000

 

 これで《ナチュル・バンブーシュート》の攻撃力は超えた――だがリシドの前には《ナチュル・バタフライ》の攻撃無効効果が立ちはだかっている。

 

「《王家の神殿》の更なる力を発動! 《ナチュル・バンブーシュート》の効果の無効化の能力は既に発動されている《王家の神殿》を止めることは叶わぬ!」

 

 そのリシドの宣言に驚く《ナチュル・バンブーシュート》を余所に《王家の神殿》が地響きを立て、揺れ動く。

 

「私は永続魔法《王家の神殿》と《聖獣セルケト》1体を墓地に送ることで、手札・デッキのモンスターまたはエクストラデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する!!」

 

 《王家の神殿》が崩れていくと共に《聖獣セルケト》もその身を光の粒子へと変えていく。

 

「その効果にチェーンして手札の2枚目の《増殖するG(ジー)》を捨て、効果発動。このターン、相手がモンスターを特殊召喚する度に私はデッキからカードを1枚ドロー」

 

 そんな揺れる世界にて嫌悪感漂う気配がアクターの背後でうごめくが――

 

「だが《王家の神殿》の効果は既に止まらぬ! 私はエクストラデッキから融合モンスターを特殊召喚!!」

 

 《王家の神殿》と《聖獣セルケト》の力は止まらない。

 

「起動せよ!! 神の聖域の守護者!! 《極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》!!」

 

 現れるのは羽蛾を仕留めたリシドの奥の手たる巨大な赤き古代兵器。

 

 塔のようにそびえ立つ身体から伸びる様々な武装がアクターのフィールドの「ナチュル」たちへと向けられる。

 

極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》

星12 地属性 機械族

攻4000 守4000

 

「相手がモンスターを特殊召喚したことで《増殖するG》の効果で1枚ドロー」

 

 アクターの手元に素早い黒い影が新たな手札を届けるが、リシドは止まらない。

 

「バトルだ!! 行けっ! 《極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》!! 《ナチュル・バンブーシュート》を攻撃!!」

 

 《極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》の全ての砲門が《ナチュル・バンブーシュート》へと向けられ、砲撃が放たれるが――

 

「その攻撃時、《ナチュル・バタフライ》の効果を発動。1ターンに1度、自身のデッキトップを墓地に送ることで攻撃を無効化」

 

 《ナチュル・バタフライ》の羽から舞い散る鱗粉が煙幕の役割を果たし、砲撃の雨が《ナチュル・バンブーシュート》を貫くことは避けられた。

 

 しかしリシドは力強く声を張る。

 

「だがヴァルバロイドは2度の攻撃が可能だ!! 追撃せよ、ヴァルバロイド!!」

 

 《極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》が放つ第二波に《ナチュル・バンブーシュート》は期待に満ちた眼で《ナチュル・バタフライ》を見やるが――

 

 《ナチュル・バタフライ》の効果は1ターンに1度。

 

 ゆえに今は鱗粉が切れて無理だと顔の前で手を振る《ナチュル・バタフライ》の姿に《ナチュル・バンブーシュート》の涙はちょちょぎれた。

 

「――ッ!!」

 

 初期ライフの半分を消し飛ばす衝撃に僅かに体勢を崩すアクター。

 

アクターLP:4000 → 2000

 

 しかしリシドは此処からだと声を張る。

 

「そしてヴァルバロイドが攻撃した効果モンスターの効果はダメージ計算後に無効化される! そのカードが如何な効果を持っていようとも無意味!」

 

 《極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》の追撃はこれで終わりではない。

 

「さらにヴァルバロイドが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、1000ポイントのダメージを与える!!」

 

 今度は《極戦機王(きょくせんきおう)ヴァルバロイド》の頭上からレーザーが放たれアクターを貫いた。

 

アクターLP:2000 → 1000

 

「これで私の魔法・罠カードを封じる《ナチュル・バンブーシュート》の効果は消えた! セットされたカードを発動させて貰うぞ!!」

 

 相手の行動を大きく制限する《ナチュル・バンブーシュート》が破壊された今、アクターのフィールドに残るのはステータスの低い守備表示モンスターのみ。

 

 

 ゆえにここぞとばかりにリシドは攻勢に出る。

 

「まず1枚目! 永続罠《苦紋様(くもんよう)土像(どぞう)》を発動! このカードも《アポピスの化身》同様、我がしもべとなる!! 守備表示で特殊召喚だ!」

 

 地面からヌッと這い出たのは蜘蛛のような形をした全身に文様が奔る土像(どぞう)

 

 カタカタと全身を震わせるその姿は何処か恐怖心を駆り立てる。

 

苦紋様(くもんよう)土像(どぞう)

星7 地属性 岩石族

攻 0 守2500

 

「相手モンスターが特殊召喚されたことで《増殖するG》の効果で1枚ドロー」

 

 アクターはリシドの残りの3枚のリバースカードを警戒しつつ、カードを引くが、望んだ防御系のカードは来ない。

 

「2枚目だ! 永続罠《カース・オブ・スタチュー》を発動! このカードも罠モンスターだ! 現れよ! 《カース・オブ・スタチュー》」

 

 大きな獣を思わせる仮面に毛皮と思しきローブを羽織った太古の人間を象ったとされる彫像が音を立ててフィールドに降り立つ。

 

《カース・オブ・スタチュー》

星4 闇属性 岩石族

攻1800 守1000

 

「《増殖するG》の効果で1枚ドロー」

 

 淡々とカードを引くアクターを意に介さずリシドは宣言する。

 

「此処で、《苦紋様(くもんよう)土像(どぞう)》の効果を発動! 自身の魔法・罠ゾーンのカードがモンスターゾーンに特殊召喚された場合にフィールドのカードを1枚破壊する!!」

 

 その声に呼応するように《苦紋様(くもんよう)土像(どぞう)》は蜘蛛のような足を地面に叩きつければ、やがて亀裂が蜘蛛の巣のように地面に広がり――

 

「《ナチュル・バタフライ》を破壊!!」

 

 地上で休んでいた《ナチュル・バタフライ》の足元から《苦紋様(くもんよう)土像(どぞう)》の足が飛び出し《ナチュル・バタフライ》が飛び立つ間もなく貫いた。

 

「そして《カース・オブ・スタチュー》で《ナチュル・マロン》を攻撃だ!!」

 

 足を地面から引き抜く《苦紋様(くもんよう)土像(どぞう)》を余所に駆けた《カース・オブ・スタチュー》は左右の手に持つ2本の槍で《ナチュル・マロン》を貫き、引き裂く。

 

《ナチュル・マロン》の身体の棘も槍のリーチの前では届かない。

 

「そして3枚目のリバースカードオープン!! 永続罠《深淵のスタングレイ》!! このカードもその効果によりモンスターカードとして特殊召喚!!」

 

 地面から浮かび上がるように現れ、周囲を泳ぐように身をくねらせたのは白い文様が全身を覆う、青い大きなエイ。

 

《深淵のスタングレイ》

星5 光属性 雷族

攻1900 守 0

 

「《増殖するG》の効果で1枚ドロー」

 

 カードを引くアクターの動きなどもはやリシドの視界には入っていない。あと少しなのだとリシドは突き進む。

 

「そして《苦紋様の土像》の効果を発動! 《ナチュル・パンプキン》を破壊!!」

 

 再び地面へと足を振り下ろした《苦紋様の土像》。

 

 しかし対する《ナチュル・パンプキン》はボンヤリと虚空を見るだけで動きもしなかった為、アッサリと地面から飛び出た《苦紋様の土像》の足に貫かれた。

 

 

 

 《ナチュル・バンブーシュート》によりリシドの動きの大半を封じていた状態からアクターの僅かな防御の隙を突いたリシドの怒涛の連撃。

 

 それにより今や空きが目立ち広くなった自身のフィールドを見ながらアクターは胸中で零す。

 

――やはり強いな……「デュエルを捨てない」デュエリストは。

 

 そう考えながら、何処かアクターは眩しいものでも見るかのようにリシドを見やった。

 

 

 その視線の先のリシドはアクターへと指差し、最後の指令を己がしもべに送り――

 

「ダイレクトアタックだ! 《深淵のスタングレイ》!」

 

 スルリと地面を滑るように近づいた《深淵のスタングレイ》の尾の針がアクターを狙う。

 

「これで終わりだァアアアア!!」

 

 そんなリシドの叫びと共に《深淵のスタングレイ》の尾の針が対象を貫いた。

 

 





ヨハン「このくらいの逆転劇は当然だろ? デュエリストなら」


アポピスの化身「私に『メインフェイズのみ発動可能』の縛りがなければフィニッシャーになれたというのに!!(涙)」
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