マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
匿名希望の少年探偵「デュエル大会に参加すべく博士に連れられ、飛行船に乗った俺たちだったが、参加者の1人リシドさんが何者かの手によって殺られちまっただと!?

だが犯人に繋がる証拠は何も出ない……文字通り完全犯罪って訳か、おもしれぇ……

捜査を続ける俺だったが、試合が始まる時間になったにも関わらずホールに来ない参加者に気付く。

そんな不穏な気配が漂うデュエル大会だったが、大会の進行はスムーズに進み、第1試合は城之内兄ちゃんのデュエル

――の筈だった。


突如として天に届くまでの火柱が俺たちの意識が集まる。

デュエル大会の参加者たちは大会の演出の一環だと思っているようだが――

バーロー! あの炎はただの炎じゃねぇ! 何らかの目的で犯人が引き起こした可能性が高い!

クソッ! 第二の事件が起こっちまったのかもしれねぇ! 現場に急がねぇと!!」




第115話 神の炎に抱かれて消えろ!

 

 天を焦がす程の火柱の前で狂ったように闇マリクは笑い続ける。

 

「フハハハハハ!!  燃えろ燃えろ! 燃やし尽くせ! 奴の命という燃料を一滴残らずなァ! ハハハハハハハ!!」

 

 不死鳥となった『ラーの翼神竜』の炎の中で声なき叫びを上げるアクターを幻視しながら闇マリクは己の嗜虐心を満たすように高らかに笑い続ける。

 

 

 

「マリク!!」

 

 だがそんなイシズの声を筆頭に牛尾に加えて海馬や遊戯を含めた多くの人間がこの場に集まった。

 

「ん? 新しい獲物が向こうからやってきてくれたぜ――姉上サマもごきげんよう! ハハハ!!」

 

 そんな人がごった返す簡易デュエル場にて闇マリクは楽し気に新たな闇の生贄たちを歓迎するが――

 

「これは一体!? それにお前はバクラ!?」

 

「えっ、アイツはナムじゃねえのか!? それにお前は!!」

 

 続いてこの場に辿り着いた遊戯と城之内には今の状況が上手く把握できない――新たな情報が少しばかり多すぎた。

 

「久しぶりだな、遊戯ィ――だが安心しな、今はお前の味方ってことにしといてやるよ」

 

 遊戯の声に争う意思がないことを示すバクラ。

 

「後、ナムだか何だか知らねぇが、アイツはマリクだよ。ナムじゃねぇ」

 

「なっ!? アイツの言葉は嘘だったのかよ!?」

 

 そして城之内に向けてサラッと自身の関与をなかったことにしつつ注釈したバクラに本田は事のあらましを理解する。

 

 

 だがそんな一同の中の遊戯を視界に入れた闇マリクは力の差を見せつけるように不死鳥となった『ラーの翼神竜』を示した。

 

「遊戯ィ! これこそ、あらゆる存在に絶対的な死を与える『ラーの翼神竜』の力だ!」

 

 そして次の獲物を遊戯に定めた闇マリク。次なる闇のゲームの幕開けを示す様にその顔を笑みで歪める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マリク・イシュタール。其方のターンだ」

 

 だが、そんな声が響いた。

 

 『ラーの翼神竜』の力によって轟々と燃え盛る火の海から届いた声に、その声の主が誰なのかを闇マリクは理解できる――ゆえに信じられない。

 

「あ、ありえない………『ラーの翼神竜』の……神の炎に焼かれたんだぞ!!」

 

 闇マリクの言う通り、現在行われている闇のゲームではモンスターのダメージが直接プレイヤーを襲う仕様になっている。

 

 その為、『ラーの翼神竜』程の、三幻神の内の最高クラスの「力」を持つ一撃がモンスターを襲えば、命のラインが繋がるデュエリストもただでは済まない筈だった。

 

「な、何故だ! 神の攻撃を、あの男の精神力が上回ったとでもいうのか! くっ、炎で見えねぇ……戻れ、『ラーの翼神竜』!!」

 

 その闇マリクの声に従い、闇マリクの背後へと戻る『ラーの翼神竜』――その身体を覆う炎が消え、通常形態へと移行する。

 

 

 しかし神の炎の残火漂うフィールドに佇むのは無傷のアクター。フィールドに《ゼンマイラビット》の姿もなく、5枚のリバースカードの数も減ってはいない。

 

 『ラーの翼神竜』の効果が防がれた痕跡がないにも関わらず、アクターには焦げ跡一つなかった。

 

「何故だ! どうやって神の一撃を耐えきった!!」

 

 デュエル開始時と何一つ変わらず佇むそのアクターの姿に思わず後退る闇マリクにアクターの声が届く。

 

「《ゼンマイラビット》の効果。自身が表側表示で存在する時、1度のみ自分フィールドの『ゼンマイ』モンスター1体を次の自分のスタンバイフェイズまで除外する」

 

 そんなアクターの宣言を肯定するように《ゼンマイラビット》がアクターの足元から少し顔を出し、闇マリクの様子を窺っていた。

 

 

 つまり、『ラーの翼神竜』の効果によって焼かれたモンスターがいない為、アクターへの闇のゲームによるダメージも発生しなかった。ただそれだけの話である。

 

 

 そう、アクターは自分のフィールドが特に意味もなく燃え上がる姿を眺めつつ、満足そうに高らかに笑う闇マリクに対して、声をかける良い感じのタイミングをずっと窺っていたのである――律儀か。

 

 

 そんなアクターが無事だった理由を理解した闇マリクは再び強気な笑みを見せる。

 

「フフフ……ハハハ! なんだ、驚かせやがって……ただ逃げただけじゃねぇか……」

 

 そうアクターは『ラーの翼神竜』の効果を防いだ訳ではない。神の絶対性は何一つとして揺らいでなどいないのだ。

 

 

 そうして自身の優位性を確認した闇マリクだったが、その隣に浮かぶマリクに異変が起こる。

 

『ぐぅうう……!』

 

「マリクの身体が!?」

 

 苦し気に呻き声を上げながら、意識が覚醒するマリクの身体の所々は黒い影に呑まれ、消失していく。

 

 心配気に声を上げたイシズを余所にマリクの身体はドンドン闇に呑まれて行き、身体の4分の1程を消失させた後で収まった。

 

「おっと、新しいギャラリーの為に説明してやらねぇとな――これこそが『究極の闇のゲーム』! ライフを失う度に己の身体を闇に喰われちまうのさ!!」

 

 ざわめくギャラリーを相手に嗜虐的な笑みを浮かべて闇のゲームに対する説明を行う闇マリク――ようやく望んだ反応が見れたゆえか、些か上機嫌にも見える。

 

「とはいえ、俺の方は主人格サマが身代わりになってくれるがなァ!」

 

 その言葉の通り、アクターに別人格のような存在はいない為、ダメージを受ければ消えるのはアクターの身体だ。

 

 

 ちなみに冥界の王はカウントされない。あちらは実質的にはアクターこと神崎が冥界の王を取り込んだ為、同一の存在として扱われている状態ゆえだ。

 

 

 そんな若干、理不尽なルールではあるが、勝てば問題ないのだ。勝てば。

 

 

 闇マリクのライフが『ラーの翼神竜』の効果発動のコストで1000ポイント削れた為、身体の所々の合計4分の1が消えたマリクが痛みからか意識を戻す。

 

『ぐっ……ここは……?』

 

「ようやく主人格サマのお目覚め――」

 

 意識を取り戻したマリクに今の絶望的な状況を教えてやろうとする闇マリクだが、その足をナニカが引っ張った。

 

「ん? なんだ?」

 

『マリク……マリク……貴様……よくも……』

 

 そんな恨み辛みを吐き出すのは泥のようなナニカで覆われた人らしき影。しかしその声にマリクは聞き覚えがあった。それは忘れる筈もない相手。

 

『……父上?』

 

 そのマリクの言葉の通り、過去に闇マリクによって殺害されたマリクの父だ。

 

 そんなマリクの父が亡霊となって闇マリクの足元にしがみ付き、怨嗟の籠った声を向けていた。

 

「フハハハハッ! これはこれはお父上様、ご機嫌いかがッ!」

 

 何故この場に死んだマリクの父が亡霊となって存在するかの察しがついた闇マリクは亡霊を足蹴にし、踏みにじる。

 

 だがマリクの父は怨嗟の声を上げながら闇マリクに己の恨みをぶつけていた――その憎悪に濁った瞳は闇マリクを睨んでおり、マリクからは父の背しか見えない。

 

「成程、成程――これがお前の闇のゲームって訳か……」

 

 やがて闇マリクはアクターの光のピラミッドが生み出した闇のゲームの詳細をマリクに語り掛けるように説明し始める。

 

「ライフが減る度に俺たちに強い思念を向ける怨霊が相手を闇へと誘う――中々に良い趣味なこって!」

 

 これこそが光のピラミッドの――いや、アクターこと神崎の悍ましいまでの生への執着から生じた心の闇が形作った闇のゲーム。

 

 

 この闇のデュエルの敗者に待ち受けるのは闇マリクの言った「闇に呑まれる」だけではなく、「敗者はその身から怨霊が欲する全てを簒奪される」それが敗者の罰だった。

 

 

 己の咎が大きければ大きい程にこの闇のゲームの危険性は高まっていく。

 

 

 そしてこの闇のゲームの対戦カードは墓守の一族に強く恨まれている闇マリクに、あちこちから無駄に恨みを買っているアクター。

 

 

 よって、このデュエルで負けたものは命を奪われるだけでは「済まない」。

 

 

 しかしマリクには聞き逃せない言葉があった。それは――

 

『どういうことだ! 何故、父上がお前に怨みを向ける!』

 

 そう、マリクの中では名もなきファラオに殺されたことになっている父親がどうして闇マリクを恨んでいたのかマリクは疑問でならなかった。

 

 墓守の一族の中でマリクだけが知らない事実。

 

 

「そんなもん決まってるじゃねぇか! (お前)が殺したからだよ!!」

 

 

 それが今、マリクに明かされた。

 

『なっ!? そんな……だって父上は名もなきファラオに……』

 

「まだそんな寝ぼけたこと言ってやがったのか……呆れるね」

 

 動揺するマリクに闇マリクは呆れた様相を見せ――

 

「当時、主人格サマと同じガキだった遊戯にそんなこと出来る訳がねぇだろう!!」

 

 そんな明確な矛盾に対し、ずっと眼を逸らしていたマリクの心の弱さを闇マリクは嘲笑う。

 

 

 だが本当の仇を見つけたマリクの瞳は憎悪が滲み、その濁った瞳で闇マリクを睨む。

 

『お前が……お前が父上を!!』

 

「おいおい、虫のいいこと言ってんじゃねぇよ! 俺はお前の負の感情から生まれたんだぜ? お前の業を俺『だけ』に押し付けてんじゃねぇ!!」

 

 しかし闇マリクからすれば見当違いも甚だしい。マリクと闇マリクは一般的な二重人格であり結局のところ、その存在は同一のものだ。

 

 

 マリクの墓守の一族に対する閉塞感や、外の世界に対する強いあこがれも、闇マリクのものだ――それゆえに望んだ。下らない縛りを砕くことを、「破壊」を望んだ。

 

 

 そして一方の闇マリクの残虐性も、他者を痛めつけ、命を奪う行為に快楽を覚えるその異常な精神性も、父親を殺したい程に目障りに感じた殺意も――

 

「お前がお父上サマを殺したい程、憎んだからだろうがよォ!」

 

――全てマリクの一部、心の闇だ。

 

 マリクと闇マリク――この2人は結局のところ同じ存在である。少しばかり見える側面が違うだけ。

 

 

 しかしマリクには「その現実(己の心の闇)」が受け入れられない、誰しもが持ちうる己の醜い部分を直視できない。

 

『ち、違う……ボクじゃない……名もなきファラオの仕業だって……リシドが……姉さんが、あの男がそう言――』

 

「違う? 何が違うんだ? ちょっと考えれば嘘と丸分かりな作り話に縋って、復讐の為にと何をした? 俺に教えてくれよ――グールズの首領サマよォ?」

 

 マリクは己のしでかしたことの罪の重さを自覚し始めていた。しかし自覚し始めているゆえにその現実が受け止められない。

 

 その事実を闇マリクは誰よりも理解しているゆえに、その心の隙を穿つ。

 

『違う……ボクは……』

 

「今になって、都合が悪くなったら被害者面かァ? ハハッ! さすが俺の負の感情の大本、俺と同じで性根が腐ってやがるなァ!!」

 

『……ボクは……こんな筈じゃ……』

 

 罪悪感に押し潰されそうになっているマリクの姿に闇マリクはほくそ笑む。

 

――いいぞ、もっと絶望しろ……そうすりゃこの身体の主導権は更に俺に傾き、強固になる!

 

 しかしそんな闇マリクの思惑に抗う声が響く。

 

「マリク! 今は心を強く持ちなさい! 邪悪なる人格に負けてはいけません!!」

 

 そんなマリクを呼び戻すようなイシズの声だが、マリクに効果的に届いているとは言い難い。

 

「フフフ、姉上サマ……そいつはあんまりじゃねぇか? 被害だけを見れば主人格サマの方がよっぽど邪悪だろうによォ!!」

 

『……ボクは……ボクは……』

 

 イシズの発言をあげつらいマリクへの糾弾の材料に変える闇マリクの発言にマリクの心はますます弱っていくばかりだ。

 

「リシドはくたばった、姉上サマも千年タウクを失いあのザマ――お前を助けてくれる奴なんて1人もいねぇんだよ!!」

 

 歯向かう気力すら消えたマリクの姿に満足しつつ闇マリクは高らかに笑う。

 

「諦めて俺が全ての命を破壊する様を眺めてな!! そうすりゃ、俺の支配する世界の誕生を見せてやるぜェ? 闇の世界の誕生だがなァ!! ヒハハハハハッ!!」

 

 闇マリクは高揚感に身を包まれながら笑う――これで本当の自由まで後少しだと。

 

 

「ふぅん、下らん御託を並べているようだが、貴様のご自慢の『ラーの翼神竜』の攻撃力は0――最高神と聞いていたが、存外マヌケを晒しているようだな」

 

 しかしそんな闇マリクの気分に水を差す海馬の声が届いた。

 

「フハハ……海馬、お前は知らないんだったな――お前の持つ、『オベリスクの巨神兵』を超える俺の『ラーの翼神竜』の力を!!」

 

 そんな海馬の言葉に挑発気に返す闇マリク――『ラーの翼神竜』の力は此処からなのだと。

 

「だがまずは下準備だ――永続罠《強化蘇生》を発動! 墓地のレベル4以下のモンスター、《グラナドラ》を蘇生!! そして永続罠《強化蘇生》の効果で攻守100アップ!!」

 

 巨大な顎に多くの牙が四方に並ぶ異形の頭部を持つ生物が、爬虫類と思しき足で歩みだし、その尾を揺らす。

 

《グラナドラ》

星4 水属性 爬虫類族

攻1900 守 700

攻2000 守 800

 

「そして《グラナドラ》の効果! コイツが召喚・反転召喚・特殊召喚したとき、俺のライフを1000回復するぜ」

 

 《グラナドラ》から発せられる奇声が暗い光を生み出し、闇マリクを癒していく。

 

闇マリクLP:3000 → 4000

 

「今こそ見よ! 『ラーの翼神竜』の更なる効果を!!」

 

 ついに『ラーの翼神竜』が動く。

 

「『ラーの翼神竜』は俺のフィールドの全ての命を喰らい(リリースし)、その力を己がモノとする能力を持つ!!」

 

 その力は命を集める力。

 

「《ニュードリュア》と《グラナドラ》を神の糧とする!!」

 

 その闇マリクの声に呼応して《ニュードリュア》と《グラナドラ》が炎に包まれ、『ラーの翼神竜』の周囲に灯り、神の糧となる。

 

『ラーの翼神竜』

攻 0 守 0

攻3200 守1600

 

「まだまだ! セットしておいた魔法カード《マジック・プランター》を発動し、俺のフィールドの永続罠――《強化蘇生》を墓地に送り、2枚ドロー!」

 

 『ラーの翼神竜』の力の一端を見せた闇マリクだったがすぐさま手札を補充し、両の手を広げ、宣誓するかの如く叫ぶ。

 

「さぁ、目ん玉かっぽじって見な!! 『ラーの翼神竜』の更なる力を!!」

 

 そして天へと向けて唱えられるは『ラーの翼神竜』に記されたヒエラティックテキスト。

 

 言語としての機能を一切排し、神の頂きに立つためだけのような言葉が周囲に木霊する。

 

 やがて闇マリクがヒエラティックテキストを唱え終わり――

 

「このヒエラティックテキストを唱えた時! 俺は100の倍数のライフを払い、その(ライフ)を『ラーの翼神竜』の力とする!! 俺は可能な限り、全て(ライフ)を捧げる!!」

 

闇マリクLP:4000 → 100

 

 ライフが減ったことで身体が闇に喰われていくマリクの姿と共に、何故か闇マリクの身体も消えていく。

 

「フハハハハッ! この能力により『ラーの翼神竜』と俺が一体化するのさ――まさに神との融合!!」

 

 そして闇マリクの身体は『ラーの翼神竜』の額の宝玉から半身だけ現れた。

 

『ラーの翼神竜』

攻3200 守1600

攻7100 守5500

 

「ハハハハハハッ! ハーハッハッハッハッ!」

 

 神との一体化を果たした闇マリクは上機嫌に笑う。己の身体に流れる圧倒的な力の奔流により絶対的な己の勝利を確信しながら狂ったように笑い続ける。

 

 

 これによりあらゆる効果を受けない攻撃力7000超えのモンスター、否、「神」がたった「1ターン」で降臨した。

 

 

 この『ラーの翼神竜』の力の前ではデュエリストがあらかじめ持つ初期ライフ4000など吹けば飛ぶ数値でしかない。

 

 

 圧倒的な力を見せつける『ラーの翼神竜』の姿に海馬はポツリと零す。

 

「まさにワンターンキル……」

 

 『オベリスクの巨神兵』のような攻撃力4000という制限もなく、

 

 『オシリスの天空竜』のように手札を増やす準備すら必要ない。

 

 デュエリストの命(ライフ)ある限り、あらゆる障害を焼き尽くし、すぐさま際限なく力を高める能力。

 

 それこそが三幻神が最高神『ラーの翼神竜』の力だった。

 

「これで貴様は終わりだぁ……覚悟しな! 血の一滴まで焼き尽くしてやるぜ!! バトル! ラーの攻撃ィ!!」

 

 『ラーの翼神竜』の頭上の宝玉から宣言する闇マリクの言葉に神が動き出す。

 

「闇のゲームの醍醐味を、究極の苦痛をその身に味わって死んじまいなァ!!」

 

 やがて『ラーの翼神竜』の口元に巨大な炎が集まっていき――

 

「 ゴ ッ ド ・ ブ レ イ ズ ・ キ ャ ノ ン !! 」

 

 神の炎がアクターを焼き殺さんと放たれた。

 

 

 

 『ラーの翼神竜』の炎が迫る中、アクターは闇マリクの姿、そして在り方を見て思う。

 

――君も消え(死に)たくないのか。

 

 何処か鏡に映った己を見るかのような感情をアクターは抱いていた。

 

 闇マリクとアクターの行動原理は近い。

 

 闇マリクはアクターという仮初の脅威に対して「獲物をいたぶる」ことを止め、一息に殺しに来た。その行動の本質にあるのは――

 

 

 再び封印され、二度と表に出られなくなることに闇マリクは怯えているのだ。アクターが己の死に怯えるように。

 

 結局どちらも「自分の生存の為に」動いているだけであった。アクターには闇マリクの姿が「生きたい」と叫びを上げる赤子のようにも見える。

 

――だが私も死に(消え)たくない……悪いが……

 

 そんな事実にアクターは強いシンパシーと憐憫の感情を持った。ただ、だからといって――

 

 

 

 

 

――君に消えて(死んで)貰う

 

 容赦はしないが。

 

「その攻撃に対し、罠カード《ゴブリンのやりくり上手》を発動。墓地の《ゴブリンのやりくり上手》+1枚のカードをドローし、手札を1枚デッキに戻す」

 

 

「今更カードを1枚ドローしたところでどうなるよ!!」

 

 1体のゴブリンが『ラーの翼神竜』の炎の前で必死にそろばんをはじく――闇マリクの言う通り、その行為に大した意味はないが。

 

「チェーンして罠カード《和睦の使者》を発動。このターン私は戦闘ダメージを受けない」

 

 そんなゴブリンの後ろで何やら契約を交わす一団。このターンのダメージに関して話し合っているらしい。

 

 チラチラと後ろを気にするゴブリン。

 

「ケッ、ダメージは避けてきたか――だが寿命を僅かばかり伸ばしたに過ぎないんだよォ! ハハハハハ!!」

 

 ダメージが回避された事実にそう笑う闇マリクだが、その言葉通り次のターンも『ラーの翼神竜』の攻撃を防げる保証はない。

 

 今のアクターの手札は0――次のターンでダメージを回避するカードを引けなければそれまでの話。

 

 

 神の炎の切っ先がアクターから僅かに逸れるも、その炎は洗礼代わりと言わんばかりに止まる気配はない。

 

 

 

 

 

「チェーンして罠カード《妖精の風》を発動。フィールドの表側表示の魔法・罠カードを全て破壊し、破壊した数×300ポイントのダメージを互いのプレイヤーに与える」

 

 アクターの背後から小さな妖精が突風を吹かせ、そこから青い流体が形を変えながら浮かぶ。

 

 やがてその青い流体は2つの瞳で闇マリクを見やった。

 

「ハハハ……ハ?」

 

 その《妖精の風》と目が合った闇マリクの笑いはピタリと止んだ。

 

 

 そんな闇マリクの様子など気にせず、アクターは残りの2枚のリバースカードを発動させていく。

 

「チェーンして罠カード《積み上げる幸福》を発動。チェーン4以上に発動が可能。デッキから2枚ドローする」

 

 天からあわい蒼の光がアクターの手元に落ちる。

 

「チェーンして2枚目の罠カード《積み上げる幸福》を発動。デッキからカードを2枚ドローする」

 

 さらにもう1つの蒼い光もアクターの手元に落ちていった。

 

「チェーンの逆処理へと移行」

 

 やがてチェーンが処理されて行き――

 

 まず、2枚の《積み上げる幸福》の効果でアクターの手札が4枚に増え、

 

 次に《妖精の風》で互いのフィールドの表側表示の魔法・罠カードが全て破壊され、破壊した数×300のダメージが互いを襲う。

 

 表側の魔法・罠カードの合計は4枚。よって1200のダメージが互いを襲い。

 

 そして《和睦の使者》の効果でこのターンのアクターへの戦闘ダメージが0になり、

 

 最後に《ゴブリンのやりくり上手》の効果が適用されるが、《妖精の風》の効果で破壊されている為、2枚のカードをドローして手札の1枚を戻す。

 

 

 

 『ラーの翼神竜』の業炎と《妖精の風》の突風が入り混じるフィールドの衝撃に吹き飛ばされないように腕を交差し、防御姿勢を取る観客の中でレベッカが叫ぶ。

 

「――アイツ! 『ラーの翼神竜』の効果でライフが減ったマリクを直接狙ったのね!!」

 

「初見だろうに、よくやるぜ! 一歩間違えればそのままお陀仏だったろうに!」

 

 己の命すらチップとしてテーブルに乗せたアクターの姿に感心する牛尾の声を余所にイシズは弟の名を叫ぶ。

 

「マリク!!」

 

 この闇のゲームでマリクが負ければ世にも恐ろしい罰ゲームが待っている。ゆえにマリクの身を案ずるように祈るイシズ。

 

「これでマリクの野郎は――」

 

 そんな城之内のフラグ満載の言葉を余所に神の炎と妖精の風が止み、フィールドの様子が視認可能になり始めた。

 

 

 そのギャラリーたちの視線に映ったのは――

 

 

 

 

 

 

闇マリクLP:100 → 7200 → 6000

 

 『ラーの翼神竜』の額の宝玉ではなく、地に足を付けて立つ闇マリクの姿。傍で浮かぶマリクの身体の欠損はなくなっていた。

 

「そんな! どうしてっ!?」

 

 そんな御伽の声に応えて闇マリクは小さく笑う。

 

「フフフ……残念だったなぁ……俺は『ラーの翼神竜』の最後の効果を発動させて貰ったぜ」

 

 闇マリクの言葉を肯定するように『ラーの翼神竜』から空気を震わせるような声が鳴る。

 

「俺の手札1枚を捨てることで神との融合を解除し、神の攻守を0に! そしてその攻守どちらかの数値分、俺のライフを回復する効果をなァ!」

 

 その声が示すのは『ラーの翼神竜』が己の力を闇マリクのライフとして移し替え、力を失った喪失感からなるもの。

 

『ラーの翼神竜』

攻7100 守5500

攻 0 守 0

 

 アクターの一手を躱した闇マリクは得意気に笑う。

 

「ハハハ! だがよく考えたじゃねぇか、神に勝てないと悟って俺を狙うとは――お利口さん。お利口さん。ハハッ!!」

 

 そんな何処か相手をコケにするように手を軽く叩きながらアクターを挑発する闇マリクだったが、ふと残念そうな顔を作り大袈裟に溜息を吐く。

 

「――とはいえ『ラーの翼神竜』の攻撃力が0になったことで、お前を焼く筈だった炎は消えちまったがな……」

 

 その闇マリクの言葉通り、アクターに迫っていた炎は既になく、『ラーの翼神竜』も今や攻撃姿勢を取っていない。

 

「だがお前のライフが減っちまったぜ! さぁ、闇のゲームの醍醐味をしかと味わいな!!」

 

アクターLP:4000 → 2800

 

 闇マリクの宣言通り、罠カード《妖精の風》は互いにダメージを与える為、闇のゲームのシステムは容赦なくアクターを襲う。

 

 闇がアクターの身体を喰い始め、身体全体の30%程を消すと同時に闇の浸食が止まる。

 

 

 

 次にアクターの背後からアクターに強い思念を向ける怨霊とも言うべき存在がアクターに憑りつく。

 

 大多数の亡者が言葉すらなっていない呻き声を上げる中で、2人の亡者がアクターに囁くように声を発する。

 

『……きろ…………ほ……』

 

『わ…………の……ぶ……で……』

 

 しかしその声は風化したように掠れ、正しく伝わっているようには思えない。

 

 

 そんな亡者たちに憑りつかれるアクターの姿に闇マリクは面白いものを見たと高らかに笑う。

 

「フハハッ! そいつらは一体、お前の何だったのかねぇ……クククッ!」

 

 アクターに憑りつきうごめく亡者の中で明らかに違う動きを見せる2体の亡者の姿を興味深そうに闇マリクは見やる。

 

 とはいえ、アクターの表面上は相変わらずのノーリアクション。そんな姿に闇マリクは若干の慣れを覚えつつ、闇に囚われているマリクの方へ向き直る。

 

「それはさておき、今や俺のライフが回復したことで、お父上サマも消え、宿主サマもこの通り」

 

 そう芝居がかった仕草で闇に喰われた身体が戻ったマリクを指し示す闇マリクだが、その身に縋りつく3つの影が怨嗟の声を上げる。

 

『マリク……よくも……よくも墓守の一族の悲願を……』

 

 その怨嗟の声の正体の1つはマリク父のものであり――

 

『お前が居なければマリク様は――』

 

『貴方は私が刺し違えてでも――』

 

 他2つはリシドとイシズのものだった。

 

 一瞬、リシドが死亡した可能性を考えた闇マリクだが、観客としてイシズがいる以上これは――

 

「んん? コイツは生霊か? チッ、ライフを回復しても消えねぇのか……」

 

 ギャラリーとしてイシズがいる以上、イシズの強い思念が生霊となって己の身体に憑りついたと当たりを付ける闇マリク。

 

 

 やがてこの闇のゲームのルールに対して思案を巡らせつつ闇マリクはデュエルに意識を戻す。

 

「まぁいい……攻撃力0じゃあ、これ以上のバトルは無理だな――俺はカードを1枚セットし、ターンエンド! 特殊召喚された神はエンド時に墓地へと戻る」

 

 闇マリクのエンド宣言を受け、『ラーの翼神竜』が炎となって闇マリクのデュエルディスクの墓地ゾーンへと吸い込まれて行く。

 

「これで俺のライフは6000――頑張って削るんだな! ハハハハハハハッ!!」

 

 そうアクターへと余裕の笑みを見せて闇マリクは高らかに笑った。

 

 




~注意書き~
原作では直接的なバーンは禁止扱いでしたが

今作ではルールの土台がOCGになった為、バトルシティでも禁止になっておりません。


ちなみに――
初期ライフ4000の環境から大半のバーン効果を持つカードはデッキに1枚のみ入れることが出来る「制限カード」扱いになっております。



~今作での神の効果 『ラーの翼神竜』編~
『ラーの翼神竜』
星10 神属性 幻神獣族
攻  ? 守  ?

(1)このカードを通常召喚する場合、
自分フィールド上に存在するモンスター3体をリリースして
アドバンス召喚しなければならない。

(2)このカードの召喚・反転召喚・特殊召喚は無効にされない。

(3)フィールドのこのカードは自身以外のカードの効果の対象にならず、効果も受けず、相手によってリリースされない。このカードの効果は無効化されない。

(4)このカードがフィールド上に存在する限り元々の属性が神属性以外の自分フィールド上のモンスターは攻撃できない。

(5)特殊召喚されたこのカードは、エンドフェイズ時に墓地へ送られる。



(6)このカードの攻撃力・守備力はこのカードのアドバンス召喚のためにリリースしたモンスターの攻撃力・守備力を合計した数値になる。


(7)1ターンに1度、このカード以外の自分フィールドのモンスター全てをリリースし、このカードの攻撃力と守備力はリリースしたモンスターの攻撃力・守備力分アップした数値になる。

(8)1ターンに1度、自分ライフを100の倍数払って発動する。このカードの攻撃力・守備力は払ったライフ分アップした数値になる。

以下の効果は1ターンに1度、発動でき、相手ターンでも発動できる。

(9)1000ライフを払って発動する。
相手フィールド上の全てのモンスターをあらゆる耐性を無視して破壊する。
この効果を発動したターン、このカード以外の自身のモンスターは攻撃出来ない。

(10)手札を1枚捨て、このカードの攻撃力・守備力どちらかの数値のライフ回復し、このカードの攻撃力・守備力を0にする。



ラーの翼神竜「これで不名誉な呼び名は無くなる筈だ!!」

しかし、効果が10個って(白目)

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