マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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遊戯 VS 夜行 ダイジェスト版です。ただ押し込んだ感がスゴイですが……



前回のあらすじ
本戦トーナメント「1試合だけ……だと!? 嘘だ!! そんなの嘘だ!!」

ペンギンおじさん「本戦トーナメント―――彼はもう終わりですね」





第120話 「 神 」 VS 「 神 」

 

 

 夜行のペガサスへの家族愛が成せる進撃は確実に遊戯を追い詰めつつあった。

 

 

 そんな夜行のフィールドには――

 

 黒い翼を開く白髪の悪魔、《闇の侯爵ベリアル》が黒い大剣を肩に担ぎ、

 

《闇の侯爵ベリアル》

星8 闇属性 悪魔族

攻2800 守2400

 

 キャタピラの付いた赤いドラゴン型の戦車が2つの砲門を遊戯に向け、

 

《可変機獣 ガンナードラゴン》

星7 闇属性 機械族

攻2800 守2000

 

 目元を仮面で隠し、黒い鎧で全身を包んだ白い長髪の女戦士が鞭を振るい、

 

《カオスハンター》

星7 闇属性 悪魔族

攻2500 守1600

 

 ヴェールで覆われた帝王の1体が静かに佇む。

 

《真源の帝王》

星5 光属性 天使族

攻1000 守2400

 

 

 一方の遊戯のフィールドには――

 

 遊戯の相棒たる黒衣の魔術師、《ブラック・マジシャン》が腕を組み、

 

《ブラック・マジシャン》

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

 絵札の三騎士が一体となった融合モンスター《アルカナ ナイトジョーカー》が黒と金で彩られた雄々しい鎧から伸びる剛腕を振るい、剣が空気を切り裂く。

 

《アルカナ ナイトジョーカー》

星9 光属性 戦士族

攻3800 守2500

 

 そして遊戯は攻めに転じる。

 

「最後に装備魔法《魔術の呪文書》を《ブラック・マジシャン》に装備! 攻撃力が700ポイントアップ!」

 

 手元に現れた《魔術の呪文書》によって《ブラック・マジシャン》は魔術の更なる深淵に振れる。

 

《ブラック・マジシャン》

攻2500 → 攻3200

 

「さぁ、バトルと行くぜ!」

 

「ですが私の《闇の侯爵ベリアル》の効果で貴方は他のモンスターを攻撃出来ません!」

 

 遊戯の攻撃宣言に対して一歩前に出た《闇の侯爵ベリアル》は肩に担いだ大剣を地面に突き刺し、交戦の意を示す。

 

「ならソイツからだ! 《アルカナ ナイトジョーカー》で《闇の侯爵ベリアル》を攻撃!」

 

 そんな《闇の侯爵ベリアル》に対する《アルカナ ナイトジョーカー》は剣を構えて疾走し、

 

「そして次に《ブラック・マジシャン》で守備表示の《カオスハンター》を攻撃だ!」

 

 その後に《ブラック・マジシャン》が続く。

 

「永続罠《連撃の帝王》の効果でアドバンス召喚を行います!」

 

 しかしその夜行の宣言と共に夜行のフィールドに強大なプレッシャーが空気の波となって脈打ち始めた。

 

「《可変機獣 ガンナードラゴン》! 《カオスハンター》! 《真源の帝王》の3体をリリースしアドバンス召喚!!」

 

 《闇の侯爵ベリアル》の背後で3体のモンスターが光の柱となって天に昇る。

 

「3体のモンスターをリリースだと!?」

 

 3体のリリース(生贄)――その召喚条件はまさに三幻神の如く。

 

 

 やがてその光の中から飛び出したのは――

 

「降臨せよ! 神に仕える従属神の王!! 《神獣王(しんじゅうおう)バルバロス》!!」

 

 獅子の獣人の顔に赤い突撃槍と盾を持った浅黒い人の肌の上半身に、獣の下半身を持つ獣王。

 

神獣王(しんじゅうおう)バルバロス》

星8 地属性 獣戦士族

攻3000 守1200

 

「私が2体以上のモンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功したことで永続魔法《冥界の宝札》が適用され、2枚のカードをドロー!」

 

 効果を発動させる夜行を余所に《神獣王バルバロス》は《闇の侯爵ベリアル》を横切り、《アルカナ ナイトジョーカー》の剣をその盾で受け止めた。

 

「だが攻撃力3000じゃ、俺の《アルカナ ナイトジョーカー》は止められないぜ!」

 

 その言葉通り、ジリジリと押され始める《神獣王バルバロス》だが、その赤い突撃槍が猛るように輝く。

 

「まだです! 3体の贄を以て呼び出された《神獣王バルバロス》の効果! 相手フィールドの全てのカードを破壊します!! 根こそぎ薙ぎ払え、バルバロス!!」

 

 その槍の赤き波動は渦を巻き、巨大な力の奔流と化す。

 

「ゴッドォ! トルネェエエエドッ! シェイパァアアアアアア!!」

 

 その夜行の声と共に《神獣王バルバロス》からその力が放たれた。

 

 

 赤き波動の力の奔流によって消し飛ばされる《アルカナ ナイトジョーカー》と《ブラック・マジシャン》。

 

「遊戯くんの場ががら空きに!?」

 

 そんな思わず声を上げた観客の御伽の言葉に夜行は力強く宣言する。

 

「どうです! 武藤 遊戯! 従属神の頂きに立つ百獣の王の力は!」

 

 

 しかし《神獣王バルバロス》の力によって舞う煙から伸びた杖が振るわれ、煙が払われる。

 

 その杖の主は破壊された筈の黒衣の魔術師のもの。

 

「何故、《ブラック・マジシャン》が!? いや、違う!!」

 

 夜行の驚きの声を余所に煙が晴れていき、その姿がハッキリと周囲に映る。

 

 それは拘束具のような装いが見える黒い装束を身に纏う《ブラック・マジシャン》が更なる力を得た姿――《マジシャン・オブ・ブラックカオス》。

 

 2本の角のような帽子から黒い長髪を揺らし、悠然と佇んでいた。

 

《マジシャン・オブ・ブラックカオス》

星8 闇属性 魔法使い族

攻2800 守2600

 

「《マジシャン・オブ・ブラックカオス》……!?」

 

「お前の破壊した速攻魔法《滅びの呪文-デス・アルテマ》の効果さ! このカードが相手の効果で破壊された場合! デッキから召喚条件を無視して《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を呼び出すことが出来る!」

 

 遊戯のフィールドにモンスターを繋いだのは他ならぬ夜行の《神獣王バルバロス》が放った一撃によって破壊されたカード。

 

「クッ……ですが、その攻撃力は2800! 《神獣王バルバロス》には届かず、《闇の侯爵ベリアル》と相打つのが限度です!」

 

 その事実に歯噛みする夜行だが、状況は未だ夜行が有利だ。

 

「確かにその通りだ――だが破壊されたカードはそれだけじゃない! 《神獣王バルバロス》の効果で破壊された装備魔法《魔術の呪文書》の効果! 俺はライフを1000回復する!」

 

遊戯LP:3800 → 4800

 

 しかしすぐさまライフアドバンテージを稼ぐ遊戯。

 

「まだだ! 破壊された2枚の罠カード《運命の発掘》の効果発動!」

 

 さらに遊戯はもう一歩先を行く。

 

「このカードが相手によって破壊された時、墓地の同名カードの数だけデッキからドローする! 墓地の《運命の発掘》は3枚! よって合計6枚のカードをドローだ!」

 

 やがて砕けたカードたちが遊戯の手元に集まっていく。

 

「そしてカードを5枚セットし、ターンエンド!!」

 

 フィールドアドバンテージを一時失った代わりに一気に手札を増やした遊戯は、さらに5枚ものセットカードで防御を固める。

 

 夜行とて、そう易々とは踏み込めない布陣だ。

 

「盤石の体制を敷いてきましたか……ですが私のフィールドの永続魔法《進撃の帝王》がある限り、効果破壊は勿論、カード効果の対象になることさえありません!」

 

 しかし夜行のフィールドのアドバンス召喚されたモンスターは全て強固な耐性を得ている。多少の罠には怯まない。

 

「さらに貴方のエンドフェイズにこのカードも発動させて貰いましょう! 罠カード《トゥルース・リインフォース》!」

 

 その夜行の声と共に空から降り立つのは――

 

「このカードの効果によりデッキからレベル2以下の戦士族――《天帝従騎イデア》を特殊召喚!」

 

 帝たちお馴染みの白銀の従騎士が膝を突く。

 

《天帝従騎イデア》

星1 光属性 戦士族

攻 800 守1000

 

「そして《天帝従騎イデア》の効果発動! デッキから《天帝従騎イデア》以外の攻撃力800、守備力1000のモンスター1体を特殊召喚! 来なさい! 《邪帝家臣ルキウス》!」

 

 《天帝従騎イデア》が天に腕をかざすと光が放たれ、その光によって生まれた影から二頭身の黒い全身鎧を纏った帝の家臣がボロボロのマントを揺らして降り立った。

 

《邪帝家臣ルキウス》

星1 闇属性 悪魔族

攻 800 守1000

 

「アドバンス召喚の為のリリースを揃えてきたか……」

 

 警戒の色を強める遊戯の言葉から察せられるように夜行のデッキは最上級モンスターが次々と繰り出される超重量デッキ。

 

 

 そのどれもが強力なモンスターであるだけでなく、アドバンス召喚されたモンスターに耐性を与える《進撃の帝王》といったカードでの援護も相まって遊戯はなかなか攻めきれない。

 

 

 そして当然そんな隙を夜行は逃さない。

 

「私のターン! ドロー! 早速行きましょう! 《天帝従騎イデア》と《邪帝家臣ルキウス》をリリースし、アドバンス召喚!!」

 

 2体のモンスターが紫の炎に呑まれ、一つの巨大な火球となる。

 

「フェニックスよ、舞うのです! 《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》!!」

 

 やがて炎をまき散らしながら青い羽を広げるのは青い不死鳥が如き龍。

 

 その全身は紫焔に燃え、周囲をおどろおどろしく照らす。

 

炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)

星8 炎属性 炎族

攻2900 守1800

 

「そしてチェーンです! まず永続魔法《冥界の宝札》により2枚ドローする効果、次に

墓地に送られた《天帝従騎イデア》によって除外されている永続魔法《進撃の帝王》を手札に加える効果が!」

 

 次々とチェーンが組まれアドバンテージを稼ぐ夜行に対し、遊戯は自身のセットカードをチラと見る。

 

「最後にアドバンス召喚の為のリリース素材となった《邪帝家臣ルキウス》の効果で貴方のセットカードを全て確認させて貰います! チェーンの逆処理へ!!」

 

 その遊戯の視線の先には《邪帝家臣ルキウス》が遊戯のリバースカードを1枚ずつひっくり返している姿が映った。

 

「なっ!?」

 

「ふむ、成程――トークンを呼び出し、守備を固める戦法ですか……ブラフで伏せられた永続罠《リターン・オブ・ザ・ワールド》を見るに、次のターンでの反撃の準備は整っていると」

 

 《天帝従騎イデア》のよって回収された『帝王』カードと《冥界の宝札》の効果でドローした2枚のカードを手札に加えつつそう思案する夜行。

 

 《邪帝家臣ルキウス》の効果によってガン見したリバースカードを元に遊戯の手を明かした夜行は方針を決める。

 

「ならば此処で墓地の《冥帝従騎エイドス》の効果発動! 墓地の自身を除外し、墓地から《冥帝従騎エイドス》以外の攻撃力800、守備力1000のモンスター1体を特殊召喚します!」

 

 黒き鎧で隙間なく全身を包む従騎士の力によって夜行のフィールドに広がる影から、墓地から眠れる従者を呼び起こす。

 

「蘇れ! 《天帝従騎イデア》! そして再び効果発動! デッキから今度は《冥帝従騎エイドス》を特殊召喚です!」

 

 そして夜行のフィールドに並ぶのは白と黒の従騎士。

 

 《天帝従騎イデア》がスッと膝を突き、

 

《天帝従騎イデア》

星1 光属性 戦士族

攻 800 守1000

 

 《冥帝従騎エイドス》が拳を合わせて臣下の礼を取る。

 

《冥帝従騎エイドス》

星2 闇属性 魔法使い族

攻 800 守1000

 

「そして《冥帝従騎エイドス》が特殊召喚されたターン、私はもう1度だけアドバンス召喚できる! 《天帝従騎イデア》と《冥帝従騎エイドス》をリリースし、アドバンス召喚!!」

 

 光の粒子となって消えていく2体の従騎士の間を奔りぬけるのは――

 

「滾る熱は我が闘志! 私と共に燃え上がりなさい! 《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》!!」

 

 青いアーマーに赤いバイザーを身に着けた熊こと《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》。

 

 やがて《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》は雄叫びと共に腕で円を作り、拳をへその中央で合わせるポーズを取った――脈打つ上腕二頭筋が色んな意味で眩しい。

 

熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》

星8 炎属性 獣戦士族

攻2600 守2700

 

「そして! 私のフィールドに炎属性が2体存在するとき、このカードは手札から特殊召喚されます! 私のフィールドには炎属性の《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》と《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》が存在する!」

 

 夜行の宣言を聞き遂げた《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》と《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》が発した炎が1つの巨大な火柱と化す。

 

「よって手札より特殊召喚! 現れよ! 《嚇灼(かくしゃく)魔神(まじん)》!!」

 

 やがてその炎が巨大な人型へと転じていき、炎の巨人となってその巨体の身の丈ほどもある燃え滾る炎の斧を地面に突き立てた。

 

嚇灼(かくしゃく)魔神(まじん)

星8 炎属性 獣戦士族

攻2600 守2200

 

「攻撃力2600のモンスターがそんなに簡単に!?」

 

 手札から容易く飛び出した高火力モンスターに驚く観客の本田の声に夜行は小さく首を振りながら返す。

 

「当然デメリットもあります――このカードが特殊召喚されたとき、私のフィールドの炎属性モンスター2体を破壊しなければなりません」

 

 《嚇灼(かくしゃく)魔神(まじん)》の炎の身体から漏れ出る熱が逃げ場を求めるように揺らめき――

 

「《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》と《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》を破壊! と言いたいところですが、このアドバンス召喚された2体は永続魔法《進撃の帝王》の効果によって破壊されません!」

 

 《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》と《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》が炎に包まれるが、その2体は平然と佇んでいた。

 

 

 これにて夜行のフィールドのモンスターゾーンは全て埋まった。

 

「最上級モンスターが5体……!!」

 

 その遊戯の言葉通り夜行のモンスターは全て最上級モンスター。そのどれもが一線級のパワーを持つ。

 

「貴方に次のターンでの余力を残させはしません! バトル!」

 

 遊戯の実力を肌で感じ取っている夜行は出し惜しみなどせず、全力で叩き潰しにかかる。僅かな隙が致命打になると感じ取っているゆえだ。

 

「《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》で《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を攻撃!!」

 

 羽を広げ、フェニックスの如く飛翔した《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》は《マジシャン・オブ・ブラックカオス》に狙いを定めるが、夜行はこの攻撃が通るなどとは考えていない。

 

「さぁ! そのセットされた罠カード《亜空間物質転送装置(あくうかんぶっしつてんそうそうち)》を使うのでしょう!」

 

 既にこのターンの遊戯の動きは《邪帝家臣ルキウス》の効果にてリバースカードを確認したゆえに把握済みだ。

 

 そして遊戯はその通りに動くしかない。

 

「くっ……俺は罠カード《亜空間物質転送装置(あくうかんぶっしつてんそうそうち)》を発動! 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》をこのターンの終わりまで除外する!」

 

 魔力を込めた杖を振り、異界へのゲートを開いた《マジシャン・オブ・ブラックカオス》はその身を異次元へと隠す。

 

「なら私はそのまま《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》でダイレクトアタックしますが――」

 

 そんな《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を尻目に《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》はそのまま遊戯の元へと急降下を始めた。

 

「私の5体のモンスターの攻撃を防ぐには《クリボー》をリリースし、《増殖》で5体のトークンとするしかない!」

 

そう語る夜行の言葉通り、今の遊戯にはその通りのままに動くしかない。

 

「速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》! その効果でデッキから《クリボー》を特殊召喚!」

 

 笛の音と共にフィールドに久々に表れた小さな黒い毛玉の悪魔、《クリボー》が遊戯の盾にならんとキリリと目を引き締めて両手を広げるが、夜行のフィールドの大型モンスターの数に目を見開く。

 

《クリボー》

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

 

 《クリボー》も、「さすがに無理」と言いたいらしい。

 

「さらに速攻魔法《増殖》を発動! 《クリボー》をリリースして俺のフィールドに可能な限り『クリボートークン』を守備表示で特殊召喚する!!」

 

 しかし遊戯からの援護を受けた《クリボー》は小さな手を忍者のように印を組み、「クリー!」と声を上げると煙が上がり――

 

「来いっ! クリボー5兄弟!!」

 

 煙が晴れた先には5体の《クリボー》こと『クリボートークン』が遊戯を守るべくスクラムを組んでいた。

 

『クリボートークン』

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

 

「だとしても、そのまま追撃しなさい! 《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》!!」

 

 『クリボートークン』の1体を急降下した勢いを殺さず炎を纏った身体で貫く《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》。

 

「ぐぁあああッ!! グッ……」

 

 その炎は『クリボートークン』を貫き遊戯を貫く――「なんで!?」とばかりに遊戯へと振り返る残った4体の『クリボートークン』。

 

遊戯LP:4800 → 2100

 

「どうして!? 遊戯のモンスターは守備表示だったのに!?」

 

 そんな杏子の声に『クリボートークン』たちも「クリクリッ!」と抗議の声を上げるが――

 

「《炎神機(フレイムギア)紫龍(しりゅう)》には守備表示モンスターを破壊した際に貫通ダメージを与える効果があります!」

 

 その夜行の説明に腕を組んで「成程」と頷きながら『クリボートークン』たちは納得の色を見せる。

 

「さぁ次です! 《神獣王バルバロス》! 《闇の侯爵ベリアル》! 《熱血獣王(ねっけつじゅうおう)ベアーマン》! 《嚇灼(かくしゃく)魔神(まじん)》! 残りのクリボーを破壊してしまいなさい!」

 

 しかし、そんな『クリボートークン』たちに容赦のない最上級モンスターたちの猛攻が襲い掛かる。

 

 赤い槍に貫かれ、

 

 黒い大剣で両断され、

 

 ベアーナッコォ!で殴り飛ばされ、

 

 斧の一撃で叩き割られた。

 

 そんな些かオーバーキルな攻撃に『クリボートークン』たちは悲痛な断末魔と共に消えていく。

 

「だが、これ以上のダメージはない!」

 

 しかし『クリボートークン』たちの犠牲によって遊戯は辛うじて夜行の攻撃を防ぐことが出来た。《クリボー》も身体を張った甲斐があるものだ。

 

「ええ、そうですね――私はカードを2枚セットし、ターンエンドです!」

 

 夜行のターンエンド宣言に遊戯は此処ぞとばかりに態勢を整えに動く。

 

「待ちな! 俺はそのエンドフェイズ時に永続罠《リターン・オブ・ザ・ワールド》を発動! 俺のデッキから儀式モンスター1体を除外するぜ!」

 

 白い長髪の女神が両の手で斧を掲げ、古の力を異次元に留めていく。

 

「さらに罠カード《貪欲な瓶》を発動! 俺は墓地の5枚のカードをデッキに戻し、1枚ドロー!」

 

 さらに宝石の散りばめられた欲深い顔が象られた瓶が遊戯の墓地の5枚のカードをペロリと平らげるとカタカタと揺れ始め、やがて木っ端微塵に砕け散り、宝石の1つが遊戯の手札に飛んでいく。

 

「そしてターンの終わりに《亜空間物質転送装置》によって除外されていた《マジシャン・オブ・ブラックカオス》が帰還する!」

 

 最後に異次元を割き、ゆっくりと遊戯の元へと降り立つ《マジシャン・オブ・ブラックカオス》。

 

《マジシャン・オブ・ブラックカオス》

星8 闇属性 魔法使い族

攻2800 守2600

 

 

「そして俺のターン! ドロー! まずは墓地の《ギャラクシー・サイクロン》を除外し、効果発動! フィールドの表側の魔法・罠カード1枚――永続魔法《進撃の帝王》を破壊!厄介なソイツに消えて貰うぜ!」

 

 夜行の守りを僅かに削いだ遊戯は手札の1枚を切る。

 

「魔法カード《アースクエイク》を発動! こいつで全てのモンスターには守備表示になって貰うぜ!」

 

 カードの発動と共に大地を揺るがす地震が起き、全てのモンスターがその災害に対し防御姿勢を取っていく。

 

「おっしゃぁー! 一番攻撃力の高い《神獣王バルバロス》の守備力は1200! これで大分やりやすくなったぜ!」

 

 そんな観客の城之内の声を余所に夜行は冷静に状況を分析していく。

 

「成程、こうきましたか。ならば恐らく貴方の手札にあるであろう魔法カード《拡散する波動》の効果で私のモンスターの一掃を狙っている――そんなところでしょう」

 

 現在の夜行のフィールドのモンスターの守備力はそれなりに高いものも存在する。

 

 だが、《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の攻撃力2800を防ぐことのできる守備力を持つモンスターはいない。つまり――

 

「俺は《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を攻撃表示に戻し、前のターンにセットした魔法カード《拡散する波動》を1000のライフを払って発動!」

 

遊戯LP:2100 → 1100

 

 遊戯の声に攻撃姿勢を取った《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の杖に波動が蓄積されて行く。

 

「これで俺のレベル7以上の魔法使い族に全体攻撃能力を与える! これにより《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の魔法攻撃が――」

 

 夜行の予測した通りへと戦況が移り変わっていく。

 

「夜行! お前のフィールドの全てのモンスターに襲い掛かるぜ! バトルだ! 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》! 夜行のフィールドを薙ぎ払え!!」

 

 遊戯の宣言に杖を天に掲げる《マジシャン・オブ・ブラックカオス》。その杖の先には黒い魔力がチャージされて行き、《拡散する波動》の力と混ざり合う。

 

「滅びのアルテマ・バースト!!」

 

 やがて振り下ろされた杖と共に拡散する滅びの力が夜行のフィールドを薙ぎ払った。

 

 

 魔力の奔流が夜行のフィールドを蹂躙していく。

 

「よっしゃぁ! これで遊戯は一気に逆転だぜ!!」

 

 戦況を一気にひっくり返した遊戯にそう声援を送る本田。

 

 

 だがその本田の横を黒い魔力弾が通り過ぎていった。

 

「へっ?」

 

「なにっ!?」

 

 呆ける本田と驚く遊戯を余所に魔力の奔流の中で左手を振り切った《神獣王バルバロス》の姿があった――その腕の盾がボロボロと崩れていく。

 

「なんで!? 《神獣王バルバロス》の守備力じゃ遊戯くんの攻撃は受け止めきれない筈!?」

 

 その観客の御伽の言葉通り、あの状況では《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の攻撃を《神獣王バルバロス》で防ぐことは出来なかった。

 

 

 しかし《神獣王バルバロス》の体表の色が灰色に変わっていき、その身体がベキベキと変質していく。

 

「コイツは一体……」

 

 やがて大地を踏みしめたのは《神獣王バルバロス》であって、《神獣王バルバロス》に非ず。

 

 獅子の如きたてがみも消え、獣人の毛皮は硬質な灰色の表皮へと変化し、その所々を赤い装甲が覆っている。

 

 そしてその両手には槍と盾の姿はなく、巨大な赤い砲台が拳を覆い隠す様に握られていた。

 

獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)

星8 地属性 獣戦士族

攻3800 守1200

 

 生物と機械が混じり合った異形の獣戦士の雄叫びが周囲の空気を震わせる。

 

 その雄叫びに周囲が気圧される中、夜行は意気揚々と宣言する。

 

「これこそが私の奥の手――もっとも神に近い我が切り札! 《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》!」

 

 これこそが《神獣王バルバロス》の真なる姿、《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》だと。

 

「私は貴方の攻撃に合わせて、永続罠《連撃の帝王》の効果でアドバンス召喚させて貰いました。永続魔法《冥界の宝札》の効果で2枚ドローさせて貰います」

 

 真相は至極単純、遊戯の《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の一斉攻撃によって全てのモンスターがなぎ倒される前に、アドバンス召喚しただけだ。

 

 

 しかしその力は破格――攻撃力の高さもさることながら「アドバンス召喚されたモンスター」ゆえに今は除去されたが、『帝王』カードのサポートを受けることが出来る。

 

 

 さらに遊戯にとって間の悪いことに――

 

「まずいわ! このままじゃ《マジシャン・オブ・ブラックカオス》が!!」

 

 孔雀舞の焦った声を肯定するように夜行は説明を引き継ぐ。

 

「その通り! 魔法カード《拡散する波動》の効果を受けた《マジシャン・オブ・ブラックカオス》は攻撃『しなければならない』――例え勝ち目がなくとも!!」

 

 魔法カード《拡散する波動》の効果を逆手にとった夜行の一撃が遊戯を襲う。

 

「《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》はその強大な力ゆえに戦闘ダメージを与えられないデメリットがありますが、貴方のエースを屠るのに何ら問題はない!!」

 

 《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》のデメリットが夜行から語られるが遊戯には何の気休めにもならない。

 

 どのみちエースモンスターを失ってしまうのだから。

 

「一度、見せた戦術で私を出し抜けるなどとは思わないことです! 打ち抜きなさい! 《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》!!」

 

 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》に向けて両腕の巨大な砲門を向ける《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》。

 

 

 しかし遊戯も黙ってはいない。

 

「なら俺は速攻魔法《滅びの呪文-デス・アルテマ》を発動! 俺のフィールドにレベル8以上の魔法使い族がいるとき! フィールドのカード1枚を裏側表示で除外する!」

 

 《マジシャン・オブ・ブラックカオス》の杖に赤黒い禍々しい魔力がチャージされていく。

 

「罠カード《貪欲な瓶》でデッキに戻したカードを引き込んでいましたか!?」

 

「攻撃力だけじゃ、俺は捉えられないぜ!!」

 

 驚きを見せる夜行と拳を握る遊戯を余所に《マジシャン・オブ・ブラックカオス》から禍々しい魔力が放たれた。

 

 

 だが雄叫びと共に振るわれた《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》の腕がその一撃を弾き飛ばす。

 

「なッ!? このカードは仮にお前のフィールドに永続魔法《進撃の帝王》があっても防げない筈……」

 

 遊戯の言う通り、永続魔法《進撃の帝王》で防げるのは「対象を取る効果」と「破壊する効果」――しかし《滅びの呪文-デス・アルテマ》にはそのどちらも当てはまらない。

 

 とはいえ、所詮IFの話――どのみち《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》には防げない筈の一撃であった。

 

「フッ……私が『最も神に近い』と評したのは攻撃力だけではありませんよ」

 

 そんな遊戯に向けて小さく笑う夜行はタネを明かす。

 

「私はチェーンしてこのカードを発動させて貰いました――罠カード《帝王の凍志》!!」

 

 そのカードの力によって《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》の表皮は永久凍土の如き強靭さを持っていた。

 

「このカードは私のエクストラデッキにカードが存在しない場合に発動が可能な罠カード。その効果は――」

 

 そう、《滅びの呪文-デス・アルテマ》を防いだのは永続魔法《進撃の帝王》では「ない」。

 

「私のアドバンス召喚したモンスター1体の効果を無効化する代わりに、『このカード以外の効果を受けない』効果を与える!!」

 

「なん……だと……!?」

 

 夜行の言葉に遊戯の目は驚愕に見開かれる――そう、『このカード以外の効果を受けない』。このフレーズはこのバトルシティで印象に残っている。

 

 

 あらゆる効果を受けないモンスター。それはまさに――

 

「そう! 今、この瞬間! 私の《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》は! 三幻神の力にすら届きうる耐性を得たのですよ!!」

 

 

 神の如く。

 

 

 その事実に海馬は楽し気に笑みを浮かべる。

 

「ふぅん、成程な……さらに、あのカードのデメリットであった『戦闘ダメージを与えられない』も無効化された――文字通り、神に匹敵しうるモンスターに化けた訳だ」

 

 神の前では如何な小細工も無意味――ゆえに速攻魔法《滅びの呪文-デス・アルテマ》は別の対象を打ち抜く。

 

「くっ……なら速攻魔法《滅びの呪文-デス・アルテマ》でお前の永続魔法《冥界の宝札》を除外するぜ……」

 

 遊戯が選んだのはドローブーストである永続魔法《冥界の宝札》。これで夜行の手を少しでも削れればとの考えであるが――

 

 

 状況は何も変わらない――いや、それどころか悪化している。

 

「だとしても、もうバトルは止まらない! 《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》! 閃光烈破弾(クラッグ・ショット)!!」

 

 《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》の効果が無効化されたことで、遊戯に攻撃力の差だけ戦闘ダメージが発生する。

 

 攻撃力の差は1000。このままでは遊戯の残りライフ1100はたった100にまで落ち込む。

 

 

 しかしそんな窮地の状況であっても《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》は止まらない。

 

 その剛腕に握られた巨大な赤い砲台が火を噴き、遊戯のフィールドの《マジシャン・オブ・ブラックカオス》に着弾して爆炎が上がり遊戯を襲う。

 

 

 

 

 

 だがその爆炎は最強の剣士の一閃が切り裂き、遊戯のフィールドに藍色の鎧を躍らせる。

 

《カオス・ソルジャー》

星8 地属性 戦士族

攻3000 守2500

 

 突如として現れた守備表示で膝を突く《カオス・ソルジャー》の姿にも夜行は動じない。

 

「永続罠《リターン・オブ・ザ・ワールド》の効果ですね……」

 

「その通りだぜ、夜行。俺はバトルが発生する前に、永続罠《リターン・オブ・ザ・ワールド》のもう1つの効果を発動させて貰ったのさ!」

 

「そのカードを墓地に送ることで、発動時に除外した儀式モンスター――《カオス・ソルジャー》を《マジシャン・オブ・ブラックカオス》を素材に儀式召喚し、躱しましたか」

 

 夜行に向けて窮地を脱した一手を明かす遊戯だが、その説明は他ならぬ夜行に遮られた。

 

 夜行のカード知識の深さに内心で舌を巻く遊戯だが、それを表に出すような愚行は侵さず、いつも通りに返す。

 

「ですがその躱し方も予想通りです」

 

 揺るがぬ夜行の姿に遊戯は手札をチラと見て、決断する。

 

「俺はバトルを終了し、魔法カード《光の護封剣》を発動! これでお前は3ターンの間、攻撃出来ないぜ!」

 

 夜行のフィールドに光の十字架が幾重にも降り注ぎ、夜行のフィールドのモンスターを封じるが、今は《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》のみ。

 

 さらに《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》は神クラスの耐性を持った為、魔法カード《光の護封剣》では止められはしない。

 

 しかしこれで次のターンに夜行が新たにモンスターを展開しても、追撃は出来ない。

 

「最後にフィールド魔法《心眼の祭殿》と永続魔法《補充部隊》を発動して、カードを1枚セット――ターンエンドだ」

 

 ガードを固めてターンを終える遊戯の背後に杖を祭った神殿が現れる。

 

 

「ですが、そのターンの終わりにこのカードを発動させて貰いましょう! 速攻魔法《デーモンとの駆け引き》!」

 

 しかし夜行の攻めの手は止まらない。

 

 夜行の背後から這い出た悪魔の手が1枚の契約書をヒラリと落とし――

 

「この効果は私のフィールドのレベル8以上のモンスターが墓地に送られたターンに発動出来るカード! その効果で私はデッキからあるモンスターを呼び出すことが出来ます!」

 

 その契約書が炎に包まれ燃え尽きる。これにて契約はなされた。

 

「闇より生ずる狂気の龍! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》!!」

 

 やがて地響きと共に大地を押しのけ現れるのは死して骨となってもなお戦い続ける狂気に苛まれたドラゴンだった亡者。

 

《バーサーク・デッド・ドラゴン》

星8 闇属性 アンデット族

攻3500 守 0

 

 そんな《バーサーク・デッド・ドラゴン》の狂声をバックミュージックに夜行はデッキに手をかける。

 

「そして私のターン! ドロー! まずは2枚目の永続魔法《進撃の帝王》を発動! これで再び私のアドバンス召喚したモンスターたちは守られます!」

 

 とはいえ、今の夜行のフィールドにアドバンス召喚したモンスターは1体のみだ。だが些細な問題である。

 

「そして墓地の《冥帝従騎エイドス》の効果で自身を除外し、《天帝従騎イデア》を蘇生させます! そして三度効果発動! 《冥帝従騎エイドス》を特殊召喚!」

 

 先のターンの焼き増しのように現れる白と黒の従騎士。

 

《天帝従騎イデア》

星1 光属性 戦士族

攻 800 守1000

 

《冥帝従騎エイドス》

星2 闇属性 魔法使い族

攻 800 守1000

 

「特殊召喚された《冥帝従騎エイドス》の効果で私はアドバンス召喚の権利が+1!」

 

 夜行のフィールドにすぐさま贄が揃えられた。よって此処からはご察しの通り――

 

「《天帝従騎イデア》と《冥帝従騎エイドス》をそれぞれリリースし! 2体のモンスターをアドバンス召喚!!」

 

 2体の従騎士が光となって消えていく。

 

「現れなさい! 神の従者が1体! 《神禽王(しんきんおう)アレクトール》!!」

 

 白き従騎士を贄に現れたのは白銀の鎧で身を固めた赤き翼を広げる鳥の獣人。

 

 2本の足で悠然と佇む姿はまさに王たる気品すら感じさせる。

 

神禽王(しんきんおう)アレクトール》

星6 風属性 鳥獣族

攻2400 守2000

 

「さらに大総統たる悪魔! 《軍神(ぐんしん)ガープ》!!」

 

 そして黒き従騎士を贄に現れたのは黒い甲殻で覆われた何処か昆虫を思わせる姿の悪魔の長。

 

 その背から生えた巨大な腕のような翼から禍々しい爪が伸びる。

 

軍神(ぐんしん)ガープ》

星6 闇属性 悪魔族

攻2200 守2000

 

「そして《軍神ガープ》の効果が貴方を襲います! このカードが表側表示で存在する限り、全てのモンスターは攻撃表示となり、表示形式を変更できない!!」

 

 夜行の宣言に《軍神ガープ》が遊戯に指を向けると守備表示で防御を取っていた《カオス・ソルジャー》の意に反し、身体が動き攻撃姿勢を取った。

 

「《カオス・ソルジャー》が!?」

 

 戦う意思を見せた戦士の姿を《軍神ガープ》は満足気に眺める。

 

 

 先のターンに遊戯に4体のモンスターを破壊されたにも関わらず、今や夜行のフィールドのモンスターは4体。

 

 しかもその全てが強者たる風格を兼ね備えている。ゆえに観客の城之内はポツリと零す。

 

「こんな……こんな切り札みてぇなモンスターがこんなポンポン出てくるのかよ……」

 

 城之内の知る強者である孔雀舞を倒した相手との前評判はあったが、実際にそのデュエルを間近に見れば城之内は悟らざるを得ない。

 

――地力が違い過ぎる……

 

 己の無力感を。遊戯や海馬が立つ頂との差を。

 

 

 やがて夜行は動き出す。

 

「さらに《軍神ガープ》のもう一つの効果を発動! 私の手札の『悪魔族』モンスターを任意の数だけ公開し、このターンの終わりまで、その数×300ポイント自身の攻撃力を上昇させます!」

 

 《軍神ガープ》の肩の巨大な手のような翼が夜行の手札を貫く。

 

「私は手札の《バトルフェーダー》と《クリボール》の2枚を公開し、《軍神ガープ》の攻撃力は600ポイントアップ!!」

 

 その2枚のカードから力を得て、その身を黒いオーラで包みながら更に攻撃力を高めていく《軍神ガープ》。

 

《軍神ガープ》

攻2200 → 攻2800

 

「だが、いくら攻撃力を上げても俺のフィールドの魔法カード《光の護封剣》がある限り、そいつらの攻撃は届かないぜ!」

 

 遊戯の言う通り、夜行のモンスターは光の十字架によってその進軍を遮られている。

 

「心配無用ですよ、武藤 遊戯! 《神禽王(しんきんおう)アレクトール》の効果を発動! フィールドの表側表示のカード1枚の効果はこのターンの終わりまで無効になります!」

 

 だが《神禽王(しんきんおう)アレクトール》の赤き翼から放たれた突風が光の十字架を一時、吹き飛ばす。

 

「魔法カード《光の護封剣》を無効にさせて貰いましょう! ですが、貴方の発動した《心眼の祭殿》の効果で1000ポイントずつしかダメージは与えられませんが、十分です!」

 

 これで遊戯を守る壁は《カオス・ソルジャー》のみ。

 

「バトル! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》で《カオス・ソルジャー》に攻撃!」

 

 《バーサーク・デッド・ドラゴン》の朽ちた顎が歪な音と共に開き、全てを薙ぎ払わんと血のように赤いエネルギーが放たれた。

 

「罠カードオープン!」

 

「先のターンのようにいくら壁モンスターを増やそうとも、《バーサーク・デッド・ドラゴン》の全体攻撃能力の前には逆効果ですよ!」

 

 遊戯の声に《バーサーク・デッド・ドラゴン》の力を示す夜行だが――

 

「俺が発動した罠カードは《和睦の使者》! このターンのダメージを0にし、モンスターは破壊されない!」

 

 遊戯の援護に背を押され《カオス・ソルジャー》は何とか《バーサーク・デッド・ドラゴン》の一撃を切り裂き、遊戯を守った。

 

「1ターンばかりの猶予を得ましたか……私はこれでターンエンドです」

 

 遊戯の2段構えの防御の前に攻めきれなかった夜行。

 

 その夜行が持つ神の如き力を得たエース《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》も心なしか振るう力の先を失い苛立っているようにも見える。

 

「このエンドフェイズ時に《神禽王(しんきんおう)アレクトール》で無効化されていた貴方の魔法カード《光の護封剣》の効果は戻り、《軍神ガープ》の攻撃力は元に戻ります」

 

 《軍神ガープ》を覆っていた黒いオーラが消えると同時に《光の護封剣》が降り注ぐ。

 

 そんな光の結界を《軍神ガープ》は目障りそうに見やっていた。

 

《軍神ガープ》

攻2800 → 攻2200

 

「そして《バーサーク・デッド・ドラゴン》は私のターンエンド毎に攻撃力を500ダウンしていきます」

 

 死からは逃れられないことを示す様に《バーサーク・デッド・ドラゴン》の骨の身体が朽ちていく。

 

《バーサーク・デッド・ドラゴン》

攻3500 → 攻3000

 

 

 辛うじて《カオスソルジャー》を守り切った遊戯だが、状況は予断を許さない。

 

「なら俺のターン! ドロー! そして墓地の《シャッフル・リボーン》を除外し、その効果で俺のフィールドの魔法カード《光の護封剣》を戻し、1枚ドロー!」

 

「《光の護封剣》による守りを捨てましたか……」

 

 状況を覆す為に遊戯は手を変える――それと同時に夜行のフィールドのモンスターたちの進軍を妨げていた光の十字架が消えていく

 

「バトルだ! 《カオス・ソルジャー》で《軍神ガープ》を攻撃! カオス・ブレード!!」

 

 引いたカードは発動させずに攻撃を命じる遊戯の声に突撃する《カオス・ソルジャー》は《軍神ガープ》が迎撃として放った手刀を躱し、巨大な手のような翼を剣でいなし、悪魔の長を両断してみせた。

 

夜行LP:4000 → 3000

 

 フィールド魔法《心眼の祭殿》の効果により互いが相手から受けるダメージが1000となっている為、本来受ける800のダメージよりも割り増しされたダメージを受ける夜行。

 

「《軍神ガープ》を破壊したということは――守備モンスターで守りを固める気ですか」

 

 だがその瞳は遊戯の狙いを捉えて離さない。

 

――読まれているか……ならヤツの思惑を超えるまで!

 

 当然そんな夜行の視線に気付いている遊戯は内心のそんな覚悟を持って先程引いたカードを発動させた。

 

「俺はバトルを終了し、魔法カード《アドバンスドロー》を発動! 俺のフィールドのレベル8以上――《カオス・ソルジャー》をリリースし、新たに2枚ドロー!」

 

 剣を天に掲げた《カオス・ソルジャー》が光と消え、遊戯のデッキに集まっていく。やがてその光を引いた遊戯は小さく笑みを浮かべる。

 

「そして魔法カード《死者蘇生》を発動! 《翻弄するエルフの剣士》を守備表示で特殊召喚!」

 

 マントを翻し、剣を地面に突き刺して遊戯を守るように《翻弄するエルフの剣士》が膝を突く。

 

《翻弄するエルフの剣士》

星4 地属性 戦士族

攻1400 守1200

 

「攻撃力1900以上のモンスター相手では戦闘で破壊されないモンスター……」

 

 その夜行の言葉通り、高い攻撃力のモンスターで攻める夜行のデッキには面倒なモンスターである。

 

「さらに魔法カード《魂の解放》を発動! 墓地の5枚のカードを除外する!」

 

 青い光の中に浮かぶ透明な妖精と思しき精神体が墓地に眠るモンスターを戦いの場から解放していく。

 

「俺はお前の墓地の《軍神ガープ》・《天帝従騎イデア》・《冥帝従騎エイドス》・《神獣王(しんじゅうおう)バルバロス》・《真源の帝王》を除外!」

 

 解放――除外されたのは夜行の墓地の5枚のカード。

 

 その内の3枚はアドバンス召喚用のリリースを揃える為のカードの為、夜行にとっては手痛い一撃だ。

 

「最後にモンスターをセットし、リバースカードを4枚セットしてターンエンドだ! エンドフェイズに《シャッフル・リボーン》の効果で手札を除外するが、除外する手札はないぜ!」

 

 《光の護封剣》による守りを捨て、切り札たる《カオス・ソルジャー》の力も手放したが、4枚のリバースカードに2体の守備モンスターが遊戯を守る。

 

「私のターン、ドロー! 私は――」

 

「待ちな! お前のスタンバイフェイズに罠カード《バトルマニア》を発動! このターン相手フィールドのモンスターは全て攻撃表示となり、表示形式を変更できない!」

 

 しかしその守りをどう崩すかを思案してカードをドローした夜行を待っていたのは思わぬ一撃。

 

 遊戯の説明を引き継ぐように夜行が呟く。

 

「さらに私のモンスターはこのターン攻撃可能な場合は攻撃しなければならない効果ですか……」

 

「その通りだ――さぁ、どうする?」

 

 明らかに罠を思わせる遊戯の声に夜行は思案する。

 

――攻撃を誘っている……残りの3枚のカードは此方を迎撃するタイプの罠と考えるのが自然。此処は手札の魔法カード《ソウル・チャージ》を使い、無理やりにでもバトルを躱すべきか?

 

 しかし夜行の手札には墓地からモンスターを可能な限り蘇生させ、その数×1000のライフを失う魔法カード《ソウル・チャージ》が存在する。

 

 このカードを発動すれば、そのデメリット効果によりバトルフェイズを「行えなくなる」が――

 

――いや、武藤 遊戯ならばその1ターンの猶予で一気に逆転されかねない……

 

 その1ターンを稼ぐことこそが遊戯の狙いかもしれない。

 

 そして永遠にも思える一瞬の中で下した夜行の決断は――

 

「《神禽王(しんきんおう)アレクトール》の効果を発動! 《翻弄するエルフの剣士》の効果を無効化します!」

 

 突き進む選択――罠を踏む危険性よりも、あの「武藤 遊戯」に1ターンの猶予を与えることを夜行は嫌った。

 

 《神禽王(しんきんおう)アレクトール》の赤い翼から放たれた羽の矢が《翻弄するエルフの剣士》に突き刺さり、その特異なる力を消失させる。

 

「そしてバトル! 2体の守備モンスターを薙ぎ払い《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》の道を開きなさい! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》!!」

 

 全体攻撃能力を持つ《バーサーク・デッド・ドラゴン》のブレスが遊戯の《翻弄するエルフの剣士》とセットモンスターに襲い掛かる。

 

 そのブレスを受けた《翻弄するエルフの剣士》の身体は風化していき、消えていく。

 

 

 そして正体不明のセットモンスターである小さな槍を持った額と頬に角が生えた小さな悪魔が攻撃を躱すべく伏せていたが、躱せる訳もなく消し飛ばされた。

 

《ダークファミリア》

星2 闇属性 悪魔族

攻 500 守 500

 

「《ダークファミリア》? 成程、前のターンではなく、このタイミングで呼び出すべきモンスターがいたという訳ですか」

 

 その夜行の言葉通り、《ダークファミリア》は墓地の仲間を呼ぶ効果を持っている。

 

「リバースした《ダークファミリア》の効果発動! リバースした自身が墓地に送られた時、お互いは墓地のモンスター1体を選んで表側攻撃表示か裏側守備表示で特殊召喚する!」

 

 しかしその力は相手プレイヤーにも働いてしまう欠点もあった。

 

 

 やがて《ダークファミリア》の命の残照が互いのフィールドを包み――

 

「ならば私は《カオスハンター》を攻撃表示で特殊召喚!」

 

 夜行のフィールドには《カオスハンター》が鞭で地面を叩きながら現れ、

 

《カオスハンター》

星7 闇属性 悪魔族

攻2500 守1600

 

「これで貴方はカードを除外することは出来ません!」

 

 遊戯の除外を封じる。

 

「俺はモンスターをセット! さらに発動しておいた永続罠《召喚制限(しょうかんせいげん)猛突(もうとつ)するモンスター》の効果が適用されるぜ!」

 

 そして遊戯はモンスターをセット。

 

 さらに先の攻撃の前に発動されていた永続罠《召喚制限(しょうかんせいげん)猛突(もうとつ)するモンスター》の効果でセットモンスターの下の地面から煙が漏れ出ている。

 

「特殊召喚されたモンスターを表側攻撃表示にし、そのターン可能な限り、そのモンスターは攻撃しなければならない」

 

 やがて煙は小さな爆発を起こし、セットモンスターを表側攻撃表示にさせる。そのモンスターを興味深そうに眺める夜行は呟くが――

 

「また攻撃強要カード? いや表示形式の変更が狙いですか……貴方は一体どんなモンスターを蘇生したの――」

 

 

 現れたのは先程、墓地に送られたものと同じモンスターである小さな悪魔、《ダークファミリア》。

 

 その手の小さな槍を威嚇するようにブンブン振り回す。

 

《ダークファミリア》

星2 闇属性 悪魔族

攻 500 守 500

 

 

「ダーク……ファミリア!?」

 

 蘇生されたのは大した攻撃力も持たないモンスターだが、夜行の背に嫌な汗が流れる。

 

「さぁ、お前のモンスターは俺が発動した罠カード《バトルマニア》の効果で必ず攻撃しなければならない――」

 

 語られる遊戯の言葉に夜行の瞳はゆっくりと見開かれて行く。

 

「――すると、どうなると思う?」

 

 その遊戯の言葉を肯定するように《バーサーク・デッド・ドラゴン》の口から死者のブレスがチャージされ――

 

「――ッ! 待てッ! 《バーサーク・デッド・ドラゴン》!!」

 

 夜行の制止の声を振り切り《ダークファミリア》に向けて放たれた。

 

「攻撃力の差は2500ポイントだが、フィールド魔法《心眼の祭殿》の効果で受けるダメージは1000ポイントに!」

 

 当然その攻撃に耐えられる筈のない《ダークファミリア》は消し飛ばされ、遊戯をその余波が襲う。

 

遊戯LP:1100 → 100

 

「さらに永続魔法《補充部隊》の効果で相手の攻撃によって俺がダメージを受けた時、1000ポイントに付き1枚のカードをドローする!」

 

 作業員風のゴブリントが乗ったトロッコから届けられたカードが遊戯の手札に加わり、

 

「そして発動しておいた2枚の永続罠《神の恵み》の効果でカードをドローする度にライフを500回復! 2枚の効果で回復量は1000!」

 

 天から癒しの光が遊戯を包む。

 

遊戯LP:100 → 1100

 

「やはり……!!」

 

「さぁ、リバースして墓地に送られた《ダークファミリア》の効果が発動するぜ? 俺は三度、《ダークファミリア》をセット! そして永続罠《召喚制限(しょうかんせいげん)猛突(もうとつ)するモンスター》の効果でリバース!」

 

 三度現れた《ダークファミリア》に対し、夜行のフィールドには――

 

《ダークファミリア》

星2 闇属性 悪魔族

攻 500 守 500

 

「私は……《闇の侯爵ベリアル》を特殊召喚……します」

 

 天から黒い羽を舞い散らせながら《闇の侯爵ベリアル》が降り立つ。

 

《闇の侯爵ベリアル》

星8 闇属性 悪魔族

攻2800 守2400

 

 だがもはや意味はない。

 

「そしてお前のモンスターは《ダークファミリア》を攻撃しなければならない!」

 

 《バーサーク・デッド・ドラゴン》の効果は「相手の全てのモンスターに1度ずつ攻撃出来る」もの。

 

 だが今や遊戯の発動した《バトルマニア》の効果によって「攻撃しなければならない」状態にされている。

 

 

 ゆえに《バーサーク・デッド・ドラゴン》は新たに呼び出された《ダークファミリア》を攻撃し「続け」なければならない。

 

「これは……!」

 

 夜行は思わず後退る――夜行のデュエリストとしての実力の高さが今の状況を明確に理解できてしまう。

 

 しかしこの状況は止まらない。

 

「《ダークファミリア》との戦闘によって俺はダメージを受けるが、フィールド魔法《心眼の祭殿》の効果でダメージは1000ポイントに!」

 

 遊戯に再びダメージが襲うが、それは1000ポイントに固定され、

 

遊戯LP:1100 → 100

 

「永続魔法《補充部隊》で1枚ドロー!」

 

 永続魔法《補充部隊》の効果によってドローに変換される。

 

「これは……これは!!」

 

「2枚の永続罠《神の恵み》の効果で1000ポイントのライフを回復!」

 

 そして失った分のライフが回復され、遊戯のライフが尽きることはない。

 

遊戯LP:100 → 1100

 

「リバースして墓地に送られた《ダークファミリア》の効果で墓地の《ダークファミリア》をセット!」

 

 何度でも自身のリバース効果で蘇る《ダークファミリア》。

 

「そして永続罠《召喚制限(しょうかんせいげん)猛突(もうとつ)するモンスター》の効果でリバース!」

 

 そして攻撃表示となって攻撃を受け止め、遊戯はダメージを負いドローと回復が成される。

 

「全てのモンスターを攻撃しなければならない《バーサーク・デッド・ドラゴン》は新たに呼び出された《ダークファミリア》に攻撃しなければならないぜ!」

 

 

 《バーサーク・デッド・ドラゴン》の攻撃が

 

 

 《ダークファミリア》の復活が

 

 

 遊戯のドローが永遠と繰り返される

 

 

「――無限ループ!!」

 

 

 夜行の驚愕の声が今の状況を端的に示していた。

 

 無限ループによって手札を増やし続ける遊戯に海馬は感嘆の息を漏らす。

 

「まさに無限のドローが約束されたループ……」

 

 その言葉通り、永遠と遊戯の手札は増えていく。だが本田は焦った声を上げた。

 

「だがマズイぜ! このままドローを続けちまうと、遊戯のデッキが尽きちまう!」

 

 その本田の通り、この無限ループには終わりがある――それは遊戯の残りデッキの数という明確な終わりが。

 

「違う!! 武藤 遊戯のデッキには……」

 

 だが全てを悟った夜行が声を張る。

 

「ふぅん、そうだ。遊戯のデッキには――」

 

 同じくこの無限ループの「本当の終わり」を知る海馬は遊戯を称えるように獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

「 「 あのカードがッ!! 」 」

 

 

 やがて重なった夜行と海馬の2人の声を肯定するように遊戯の手が止まった。

 

「その通りだぜ! そして今! あの5枚のカードが俺の手札に揃った!」

 

 大量のカードが扇子のように並ぶ遊戯の手札から強大な力が巻き起こる。

 

「こんな……こんな方法で……!!」

 

 その圧倒的な力に夜行は信じられないと遊戯の背後へと目を向け――

 

 

 

「今こそ、その封印を砕き! 我が前に降臨せよ! 『エクゾディア』!!」

 

 

 

 その視線の先の虚空から《封印されし者の右足》と《封印されし者の左足》が歩み出し、

 

 《封印されし者の右腕》と《封印されし者の左腕》が封印を引き裂くように腕を振るい、

 

 《封印されしエクゾディア》がその姿を現した。

 

 

「バカな……」

 

 信じられない様相を見せる夜行を余所に「エクゾディア」の掌に灼熱の業火が燃え盛り始め、

 

「神の力をその身に受けな! 怒りの業火!! エクゾード・フレイム!!」

 

 天をも覆う程の巨大な業炎となって夜行のフィールドに降り注いだ。

 

 

 やがて神に仕えし鳥獣の王――《神禽王(しんきんおう)アレクトール》が、

 

 あらゆる獲物を狩ってきた女悪魔――《カオスハンター》が、

 

 誇り高き悪魔の権威――《闇の侯爵ベリアル》が、

 

 全てを滅する不死の龍――《バーサーク・デッド・ドラゴン》が、

 

 三幻神に等しき力を持った魔獣神――《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》が、

 

 

 エクゾディアによって放たれた炎に等しく焼き尽くされていく。そしてその炎は平等に夜行も燃やしつくした。

 

 

「バカなぁあああぁあああ!!」

 

 巨大な火柱が立ち昇る中で夜行の叫びが虚しく響く。

 

 

 






オシリスの天空竜「えっ? 出番は?」

獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)「耐性あっても、相手がエクゾディアって……」

バーサーク・デッド・ドラゴン「済まねぇ! 戦犯で済まねぇ!」

オシリスの天空竜「ねぇ、(われ)の出番は!」



今作の夜行デッキは――
「家臣+帝王(魔法・罠)で援護! ソロモン風(モンスター)アドバンス召喚ビート」です。

もう《獣神機王(じゅうしんきおう)バルバロス Ur(ウル)》は通常召喚しちゃおうぜ!( -`ω-)✧
(一応、特殊召喚ギミックもありますが)

そして罠カード《帝王の凍志》で三幻神のような超耐性をゲットだ!(☆ゝω・)b⌒☆


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