マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
左右の手に、光り輝く剣と亡霊渦巻く闇の剣を持ち、

その身体から白いオーラを滾らせ、

漆黒の翼で空を舞う海馬社長――もとい《正義の味方 カイバーマン》が降臨!


天高く舞うカイバーマンの姿はまさに神の如く! ゴッド・カイバーマンと呼ばねばなるまい!


なお、お相手はクリボー軍団なので絵面が酷い模様(目そらし)




第129話 低い攻撃力を侮る者は敗北に泣く

 

 

 ライフ差は微妙に上回ったものの大きくは動かなかった神崎。だがモクバはここぞと強気な笑みを浮かべる。

 

「やるな、神崎! だけどお前のフィールドのモンスターはこれで0だぜい!」

 

 そう、これで神崎のモンスターは0――そしてモクバには最強のカード《正義の味方 カイバーマン》が存在する。

 

「こっから巻き返しだ! 俺のターン、ドロー! 永続罠《(あけ)(よい)の逆転》の効果を使うぜ!」

 

 チャンスだと、一気に攻めるべくメインエンジンたるカードを発動させるが――

 

「チェーンして2枚目の速攻魔法《相乗り》を発動。これでモクバ様がデッキか墓地からドロー以外でカードを加える度に私はカードを1枚ドローです」

 

 先のターンで苦汁を飲まされた悪魔の運転する車がモクバの元に停車する――運転手の悪魔の笑顔が眩しい。

 

「またそのカード!? ――あっ、だから前のターンに《機雷化》で永続罠《(あけ)(よい)の逆転》を破壊しなかったんだなッ!!」

 

「はい、手札補強は大事ですから」

 

 先のターンの神崎の不審な動きの意図に辿り着いたモクバはにこやかに対応する神崎に一杯食わされたと悔しがる。

 

 とはいえ、発動してしまった効果は取り消せない。

 

「くっそー! またかよ……俺は手札のレベル3の『闇属性』の戦士族、《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》を墓地に送って、デッキから同じレベル3で反対の属性の『光属性』の戦士族、《レベル・ウォリアー》を手札に!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》に代わり、赤いバトルスーツを着た星のマークを顔と胸に付けた茶色のマントを付けた愛と勇気が友達のヒーローに似た《レベル・ウォリアー》がモクバの呼びかけに応える。

 

「速攻魔法《相乗り》の効果で1枚ドローします」

 

 それを尻目にカードを引く神崎。

 

 増えていく神崎の手札にモクバは前回と同様に危機感を覚えるが――

 

――でも俺の今の手札じゃあんまりモンスターは呼べない……此処は行くしかないぜい!

 

 神崎のモンスターゾーンがガラ空きな今を逃す手はないと、強気に動く。

 

「俺は今、墓地に送った《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)ダスティローブ》を除外して効果発動! デッキから《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》を手札に!」

 

 前回と同様の動きで手札を着実に増やしていくモクバ。

 

「速攻魔法《相乗り》の効果でドローします」

 

「此処で魔法カード《手札抹殺》を発動だぜい! 互いは手札を全て捨て、捨てた分だけドローだ! 俺は3枚捨てて、3枚ドロー!」

 

 そして此処で手札の質を一気に高める――これでモンスターばかりのバランスの悪い手札は一新された。

 

「此方も2枚の手札を捨て、新たに2枚ドローです」

 

「俺は魔法カード《モンスター・スロット》を発動!」

 

一新した手札から繰り出されたのは緑の巨大な顔に手足が生えたモンスター――といっても魔法カードだが。

 

「コイツは俺のフィールドのモンスターと同じレベルの自分の墓地に存在するモンスターを除外してカードを1枚ドロー! そのドローしたカードが除外したモンスターのレベルと同じ時! ソイツを特殊召喚できるぜい!」

 

 その緑のモンスターは額に「当」のマークを付け、口元はスロットのようになっており、左右から伸びる腕がスロットの開始レバーを握っていた。

 

「俺はレベル3の《正義の味方 カイバーマン》を選び、墓地のレベル3《レベル・ウォリアー》を除外して、頼むぜ~~ドロー!!」

 

 スロットに「《正義の味方 カイバーマン》」・「《レベル・ウォリアー》」の絵が表示され、最後の1つのスロットが回転を始める。

 

「俺が引いたのは――」

 

 やがてスロットが止まり、表示されたのは――

 

「やったぜい! レベル3のモンスターだ! 来いっ! レベル3、《サイバー・チュチュ》!!」

 

 水色のバイザーで目元を隠した赤と水色が混じった色彩のライダースーツと腰に半透明なバレリーナの舞台衣装のフリルのある桃色のボブカットの少女がスロットから飛び出した。

 

《サイバー・チュチュ》

星3 地属性 戦士族

攻1000 守 800

 

「最後に《共闘するランドスターの剣士》を召喚だぜい!」

 

 丸い豆のような顔の小さな戦士がドヤッと剣を掲げるが、その姿を《正義の味方 カイバーマン》は鼻で笑っている。

 

《共闘するランドスターの剣士》

星3 地属性 戦士族

攻 500 守1200

 

 この構図、どこかで見た気が……いや、気のせいだろう。

 

「そして《共闘するランドスターの剣士》の効果で俺の戦士族モンスターの攻撃力は400アップだ!」

 

 《正義の味方 カイバーマン》の態度に憤慨する《共闘するランドスターの剣士》を余所に強化されていく戦士たち。

 

《正義の味方 カイバーマン》

攻2200 → 攻2600

 

《サイバー・チュチュ》

攻1000 → 攻1400

 

《共闘するランドスターの剣士》

攻500 → 攻900

 

「バトルだ! 《共闘するランドスターの剣士》でダイレクトアタックだぜい!!」

 

 《正義の味方 カイバーマン》に目にもの見せてやるとばかりに《共闘するランドスターの剣士》は気合タップリに剣を振りかぶり突撃するが――

 

「その直接攻撃宣言時に墓地の《クリアクリボー》を除外し、効果を発動します」

 

 突如現れた紫の毛玉こと《クリアクリボー》がその剣を受け止めつつ真っ二つに切り裂かれる――いや、受け止めてない。

 

「さらにチェーンして速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》も発動」

 

 スプラッターな現場を余所に流れる笛の音を合図にチェーンは逆処理されていく。

 

「チェーンの逆処理へ移行――まずは速攻魔法《クリボーを呼ぶ笛》の効果でデッキから《ハネクリボー》を守備表示で特殊召喚」

 

 笛の音に呼ばれたのは天使の羽を持つ毛玉こと《ハネクリボー》。その身を小さく固め、蹲る。

 

《ハネクリボー》

星1 光属性 天使族

攻300 守200

 

「次に《クリアクリボー》の効果で、私はデッキから1枚ドロー。そのカードがモンスターだった際に、そのモンスターを特殊召喚し、攻撃対象をそのモンスターに移し替えます」

 

 神崎の言葉を余所に切り裂かれた《クリアクリボー》の中身がうごめき――

 

「攻撃力900以上だったらヤバいぜい!?」

 

「ではドロー」

 

 モクバの緊張が高まる中で神崎はカードをドロー。

 

「そのカードは!?」

 

「おや、モンスターですね」

 

 モンスターカードであった。

 

「えぇっ!? そんな!?」

 

 もしこのカードの攻撃力が900以上なら、そう考えるモクバの不安に神崎はニッコリと笑う。

 

「ですがご安心くださいモクバ様。私がドローしたカードは《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》――特殊な召喚条件を持つゆえに《クリアクリボー》の効果では特殊召喚できません」

 

 迎撃することは出来ないと――いや、そのカードって……

 

「よ、よかったぁ~」

 

 一安心な様相のモクバは攻撃を続行する。

 

「なら《共闘するランドスターの剣士》で《ハネクリボー》を攻撃するぜい!」

 

 《ハネクリボー》を剣の腹でポカポカ叩く《共闘するランドスターの剣士》。

 

 そんな猛攻に《ハネクリボー》は涙を零しながら墓地へと逃げていった。その姿に満足気な《共闘するランドスターの剣士》。

 

「このまま追撃だ!」

 

「お待ちを――フィールドで破壊された《ハネクリボー》の効果発動。ターンの終わりまで私が受ける戦闘ダメージは全て0になります」

 

 《サイバー・チュチュ》で追撃しようとしたモクバだが、《ハネクリボー》が最後に放った加護が残る間――このターンの攻撃はあまり意味をなさない。

 

「つまり攻撃しても意味がないってこと?」

 

「はい、そうなります」

 

「ならバトルは終わりにするぜい!」

 

 神崎の言葉に納得を見せるモクバは次のターンに備えるべく動く。

 

「それでメインフェイズ2で墓地の《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》を除外して効果発動だぜい! デッキから永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》を手札に!」

 

 《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》がモクバに更なる剣を授けるが――

 

「速攻魔法《相乗り》の効果でドロー」

 

「あっ、ソイツの効果がまだあったんだった……」

 

 そのサーチは神崎のドローに利用される――モクバはしまったと口を開けるが後の祭り。

 

「まぁ、しょうがないぜい! カードを2枚セットしてターンエンドだ!」

 

 直ぐに切り替え、全ての手札をセットしたモクバ。これでどんな攻撃もへっちゃらだと。

 

「私のターンですね。ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1に」

 

 カードを引き、フェイズ確認を終えた神崎は早速あのカードを使う――そう、あのカードである。

 

「私はモクバ様のフィールドの《サイバー・チュチュ》と《共闘するランドスターの剣士》をリリースしてこのカードを呼び出します」

 

「おいおい、何言ってんだよ、神崎――アドバンス召喚するには自分のモンスターをリリースしなくっちゃ駄目だぜい」

 

 神崎の言葉に微笑ましい勘違いを見せるモクバ――だがデュエルは時として非情なのである。

 

「いえ、呼び出すのはモクバ様のフィールドです」

 

「えっ?」

 

 呆けたモクバの声を余所に《サイバー・チュチュ》と《共闘するランドスターの剣士》は足元から噴出したマグマに呑まれていき――

 

「《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》をモクバ様のフィールドに特殊召喚」

 

 突如として檻に閉じ込められたモクバ。

 

 やがてその檻は噴出したマグマが集まり巨大な魔物と化した《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の首から吊るされる。

 

《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》

星8 炎属性 悪魔族

攻3000 守2500

 

「お、俺のモンスターが!?」

 

 急展開を見せた自身のフィールドに驚愕の声を漏らす檻の中のモクバ――海馬に見られればエライことになりそうな絵面である。

 

 だが今現在、海馬は留守なのでセーフだ。

 

「《共闘するランドスターの剣士》がフィールドを離れたことで、戦士族に対する強化は消え、《正義の味方 カイバーマン》の攻撃力がダウン」

 

 モクバを捕らえる檻に手をかけ、必死に檻を壊そうとする《正義の味方 カイバーマン》。

 

 マグマの熱ゆえに高温となった檻は《正義の味方 カイバーマン》の手を焼くが、意に介した様子はない。

 

《正義の味方 カイバーマン》

攻2600 → 攻2200

 

 一気に絵面がアウトになったが、ソリッドビジョンなのでモクバに害はない。本当にない。ないったらない。

 

「あぁ、カイバーマンの攻撃力が!? あと何だよ、この檻!? それとこのマグマみたいなヤツ!?」

 

 《正義の味方 カイバーマン》の奮闘を余所に未だ状況の理解が追い付かないモクバに神崎は変わらず返す。

 

「そのモンスターは『あの』《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》に匹敵する攻撃力3000ものパワーを持つ超強力モンスターです」

 

「いや、これ絶対に何かあるだろ!」

 

 確かに攻撃力は高いが、デュエリストを檻に捕らえるモンスターがマトモな筈がないと返すモクバ――ブラコンっぷりをデッキに反映した人物に言われてもブーメランだが。

 

 神崎は説明を続ける。

 

「しかし、そのあまりのパワーは使い手を傷つけてしまう程――《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》をコントロールするプレイヤーは毎ターンのスタンバイフェイズに1000ポイントのダメージを負います」

 

「やっぱり!?」

 

 毎ターン初期ライフの4分の1を削っていく主殺しの魔物――それが《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の本質だった。

 

 だが属性・種族以外のステータスだけは《青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)》とお揃いである。やったね!

 

「ではデュエルに戻りましょう――魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》を1000のライフを払い発動します」

 

神崎LP:2000 → 1000

 

 何処でも便利なカップ麺にライフという名のお湯を注げば、アッという間に――

 

「その効果によりエクストラデッキからレベル5以下の融合モンスター1体を融合召喚扱いで特殊召喚します」

 

 融合モンスターのお出ましである。漏れ出る煙から現れたのは――

 

「レベル1、《サウザンド・アイズ・サクリファイス》を融合召喚です」

 

 1つ目のウジャトの眼球がぬるりと伸び、身体の中央には丸く巨大な口が開き、巨大な鍵爪と大きな翼を持つ深紫色の体色の異形のモンスターが翼を広げる。

 

《サウザンド・アイズ・サクリファイス》

星1 闇属性 魔法使い族

攻 0 守 0

 

「とはいえ、エンドフェイズには破壊されてしまいますが」

 

 そんな神崎の言葉に《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の全身に浮かぶ数多の閉じた目がクワッと開く――「聞いてないよ」と言わんばかりに。

 

「なんか不気味なモンスターだな……」

 

 モクバの声に左右の鍵爪の付いた腕を伸びたウジャトの眼球の下部分で合わせ、ショックを受けている様相を見せる《サウザンド・アイズ・サクリファイス》――いや、十分不気味でしょうに。

 

「そうですか? まぁ、それはさておき《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の効果発動。 1ターンに1度、相手モンスター1体をこのカードの装備カードとし、その元々のステータスを奪います」

 

 しかし言葉を濁しつつ指示を出した神崎に《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の全身の眼は神崎を見やる――いや、目標を見ろよ。

 

「当然、《正義の味方 カイバーマン》を選択」

 

 やがて《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の腹の口が圧倒的な吸引力を持って吸い込みを敢行。

 

 地面に踏ん張る《正義の味方 カイバーマン》だが、その身体はジリジリと《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の方へと吸い寄せられていく。

 

「カ、カイバーマーン!!」

 

 《正義の味方 カイバーマン》のピンチに悲痛な声を上げるモクバ。

 

 だが《正義の味方 カイバーマン》はモクバに心配をかけまいと親指を立てて見せる。

 

 正義の味方は子供たちの応援がある限り決して負けない。負けられなどしない。

 

 

 そう、今こそ《正義の味方 カイバーマン》を応援すべき時だ!

 

 

「あの……そこまで《正義の味方 カイバーマン》を失いたくないのなら、モクバ様のセットした永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》を発動すれば良いのでは……?」

 

 しかし空気を読まない神崎の声がモクバに届き、ハッとデュエリストとしてすべき事に気付いたモクバは1枚のカードを発動させる。

 

「あぁっ!? そうだった! チェーンして永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》を《サウザンド・アイズ・サクリファイス》に向けて発動!」

 

 モクバの宣言の元、現れた二本の角を持った獣の頭の骨を持った《正義の味方 カイバーマン》。

 

 するとその骨から怨霊の叫びと共に紫の霧のような剣が噴出した。

 

「発動時に選んだモンスターはこのカードが存在する限り、効果は無効化され、攻撃を封じて、攻撃対象にも選べない!!」

 

 やがてその霧のような剣は《正義の味方 カイバーマン》によって投擲され、《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の腹の口に突き刺さる。

 

「不発になってしまいましたね――カードを2枚セットして、ターンエンドします」

 

 吸引を止めた《サウザンド・アイズ・サクリファイス》は異物が詰まって気持ち悪いのか、霧の剣こと永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》を引き抜こうと足掻く。

 

「このエンドフェイズに魔法カード《簡易融合(インスタントフュージョン)》で特殊召喚された《サウザンド・アイズ・サクリファイス》は破壊されます」

 

 だが時間切れとばかりに《サウザンド・アイズ・サクリファイス》の身体は溶けて崩れていった。

 

「対象のモンスターがフィールドから離れちまったら永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》は破壊されるぜい」

 

 やがて最後に地面に落ちた永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》が砕ける。

 

「色々やられたけどカイバーマンは守れた! それに神崎のフィールドにモンスターは0のままだぜい! チャンスだ!」

 

 《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の首から伸びる檻の中でマグマのダメージに晒されながらも強気の姿勢は崩さないモクバ。

 

「俺のターンだ! ドローだぜい!!」

 

「スタンバイフェイズに《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の効果でモクバ様に1000のダメージが発生します」

 

 しかし容赦なく《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の身体からはドロリと多量のマグマが零れ、檻の中のモクバの身を焼いていく。

 

「うわっ、熱っ――くはないけど!」

 

モクバLP:2000 → 1000

 

 これで残りライフは1000――レベル3の下級モンスターを中心にしたロックビートが主戦術であるモクバに《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》を何とかする術は決して多くはなく、ライフにも余裕はない。

 

「永続罠《(あけ)(よい)の逆転》の効果を使うぜい!」

 

 とはいえ幸いにもモクバの1枚限りの手札は理想的なもの。

 

「手札のレベル3の『闇属性』の戦士族、《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》を墓地に送って、デッキから同じレベル3で反対の属性の『光属性』の戦士族、《シャインナイト》を手札に加える!」

 

 どんな手札であってもモクバは諦めも弱音も吐きはしない。

 

 モクバの知る本物のデュエリスト(海馬や遊戯)たちもどんな窮地であれ諦めなどしないのだから。

 

――互いのライフはあと1000! どっちが先に相手に一撃を入れるかの勝負だ! なら引いてる場合じゃないぜい!

 

「《シャインナイト》を召喚!!」

 

 光り輝く銀の西洋鎧で全身を固め、純白のマントを翻し現れるのは白き突撃槍を持つ聖戦士。

 

 その甲冑の目元の隙間から覗く赤いモノアイが神崎を射抜いていた。

 

《シャインナイト》

星3 光属性 戦士族

攻 400 守1900

 

「バトルだ!」

 

「お待ちを――モクバ様のバトルフェイズ開始時に罠カード《共闘》を使わせて貰います」

 

 攻めの気を崩さないモクバの出鼻を挫くような神崎の声が響く。

 

「発動時に手札のモンスターを捨て、選択したモンスターの攻・守をターンの終わりまで、その捨てたモンスターの攻・守と同じにします――手札の《クリボーン》を捨て、《正義の味方 カイバーマン》を選択」

 

 白い毛玉こと《クリボーン》が白いベールを揺らしながら《正義の味方 カイバーマン》に浄化の光を浴びせていく。

 

 《カオスエンドマスター》が死の間際に《イージーチューニング》で託した力が、

 

 漆黒の闇の翼たる《幻影翼(ファントム・ウィング)》が浄化され、消えていき――

 

《正義の味方 カイバーマン》

攻2200 守700

攻300 守200

 

「カイバーマンが!?」

 

 力を大きく失った《正義の味方 カイバーマン》は悔し気に膝を突く。

 

「さて、どうしますかモクバ様?」

 

「くっそー! なら《シャインナイト》で今度こそ神崎にダイレクトアタックだ!! 行けっー!!」

 

 ならばと《シャインナイト》の突撃槍が神崎に向かうが――

 

「その攻撃宣言時に墓地の《クリボーン》の効果を発動――墓地のこのカードを除外し、墓地の『クリボー』モンスターを任意の数だけ特殊召喚します」

 

 《クリボーン》の光に導かれ、墓地の仲間たちが神崎の窮地に駆けつける。

 

「《クリボー》・《ハネクリボー》・《ジャンクリボー》・《クリボール》・《虹クリボー》の合計5体を守備表示で特殊召喚」

 

 ノーマル毛玉の《クリボー》が毛を逆立たせ、

 

《クリボー》

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

 

 天使の羽の生えた毛玉《ハネクリボー》が羽を畳み、

 

《ハネクリボー》

星1 光属性 天使族

攻300 守200

 

 鉄球のタイプの《ジャンクリボー》が身を伏せ。

 

《ジャンクリボー》

星1 地属性 機械族

攻300 守200

 

 完全にまん丸な球体状の《クリボール》が転がり、

 

《クリボール》

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

 

 紫の丸い身体にヒレのような手足と尾が生えた虹色に輝く額のプレートを持つ《虹クリボー》が最後に並んだ。

 

《虹クリボー》

星1 光属性 悪魔族

攻 100 守 100

 

「一気に5体のモンスターを蘇生!?」

 

 クリボー軍団の思わぬ爆発力に面食らうモクバだが、ふと零す。

 

「だけど《虹クリボー》よりステータスの高い《クリボン》を除外して置いて正解だったぜ……」

 

 《虹クリボー》よりも《クリボン》は若干、攻・守が高い。

 

 数値に大きな差はないとはいえ、その微妙な差が勝敗を分けることもある為、安堵を見せるモクバだが――

 

「いえ、《クリボーン》の効果は『クリボー』でないといけないので《『クリボ』ン》はどのみち特殊召喚できませんよ?」

 

 悲しい事に《クリボン》はクリボー軍団には含まれていないのだ――効果的な意味で。

 

「同じクリボーの仲間なのにか?」

 

「はい」

 

 見た目やステータスから明らかに仲間であろうにもかかわらず効果的な意味では仲間ではない悲しい事情にモクバは若干しょんぼりして見せる。

 

「なんだか仲間外れみたいで可哀そうだぜい……」

 

 そんなモクバの言葉に草葉の陰こと除外ゾーンの《クリボン》も涙を流していることだろう。

 

「いや、今はデュエル中だ! 集中しなきゃ! 《シャインナイト》で攻撃を続行だ! 《ハネクリボー》を攻撃!!」

 

 しかし若干、下がった自身の気合を立て直すモクバに呼応するように突撃槍を構え直した《シャインナイト》が《ハネクリボー》を貫かんと迫る。

 

「罠カード《アルケミー・サイクル》を発動。効果により私のフィールドの表側モンスターの元々の攻撃力は全て0になります」

 

 だがその突撃槍が刺さる前に身体をグッタリとさせる《ハネクリボー》。

 

「代わりにその攻撃力が0になったモンスターが戦闘に破壊され墓地に送られる度に私はカードを1枚ドローできますが」

 

「どのみち《シャインナイト》の攻撃は止まらないぜい!」

 

 効果の説明を聞けども、既にモクバの攻撃宣言はなされている為、《シャインナイト》の攻撃は止まらず、《ハネクリボー》を貫いた。

 

「破壊され墓地に送られた《ハネクリボー》の効果でこのターンのダメージを0に――さらに罠カード《アルケミー・サイクル》の効果で1枚ドロー」

 

 《ハネクリボー》の最後の力が神崎の手札となり盾となる。

 

 とはいえ、モクバは手を緩める様子はないようだ。

 

「次だ! 《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》で《虹クリボー》を攻撃するけど……うーん、これだ!」

 

 だがモクバの動きは突然止まり、悩む仕草を見せる。

 

 罠カード《アルケミー・サイクル》の効果でドローすることを警戒しているのかと考えた神崎だったが――

 

「行っけぇ!! ゴーレム・ボルケーノォ!!」

 

 そのモクバの宣言に満足気に《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の口から巨大な炎の砲弾が放たれ《虹クリボー》を打ち抜いた。

 

「罠カード《アルケミー・サイクル》の効果で1枚ドロー」

 

 カードを引きながら神崎は思う――そっちかよ、と。

 

――悩んでいたのは技名か……いや、それよりもステータスの低い《虹クリボー》の方を狙った? 「光属性」を意識したのか? となればセットカードの1枚は……

 

 しかしモクバの攻撃によって前のターンに伏せられたカードも予想がついてきたようだ。

 

「俺はバトルを終了! カイバーマンを守備表示にして――」

 

 モクバの声に悔し気に守備表示になる《正義の味方 カイバーマン》――とはいえ、今は1度のダメージが勝敗を左右する状況の為、守りも疎かには出来ない。

 

《正義の味方 カイバーマン》

攻300 → 守200

 

「墓地の《幻影騎士団(ファントム・ナイツ)サイレントブーツ》を除外して効果発動だぜい! デッキから永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》を手札に!

 

 最後に前のターンと同じカードを手札に加えたモクバは此処が正念場だとばかりに力強くカードを伏せる。

 

「カードを1枚セットしてターンエンドだ!」

 

「そのエンドフェイズに罠カード《共闘》の効果が終了し、《正義の味方 カイバーマン》のステータスは元に戻ります」

 

 その神崎の声と同時に《正義の味方 カイバーマン》から良し悪しに関わらず全ての力が抜けていく。

 

《正義の味方 カイバーマン》

攻300 守200

攻200 守700

 

「そして罠カード《アルケミー・サイクル》の効果も終了し、攻撃力が元に戻ります」

 

 さらに3体の残ったクリボー軍団もまた力を取り戻した。

 

「私のターンですね。ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1に」

 

――このままターンを終えても次のモクバ様のターンに《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》のバーン効果で終わりだが……

 

 引いたカードを見つつ神崎は状況を確認するように思案するが――

 

――モンスターの効果を無効化する永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》だけは片付けておかないと

 

 やるべきことは変わらない。

 

「《クリボー》・《ジャンクリボー》・《クリボール》の3体を守備表示から攻撃表示に変更」

 

 攻撃姿勢を取る3体のクリボー軍団。その姿は何とも頼もしい――気がする。

 

「《比翼(ひよく)レンリン》を通常召喚」

 

 しかしそのクリボー軍団の隣に降り立つのは2つの頭と尾を持つ虹色の羽を持った四足の緑の怪鳥。

 

比翼(ひよく)レンリン》

星3 闇属性 ドラゴン族

攻1500 守 0

 

 神崎へクリボー軍団たちの戸惑いの視線が向く。

 

「《比翼(ひよく)レンリン》の効果発動。このカードを装備カード扱いとしてフィールドのモンスターに装備します――《ジャンクリボー》に装備」

 

 しかし戸惑うクリボー軍団たちの中の《ジャンクリボー》をくちばしで咥えた《比翼(ひよく)レンリン》。

 

 全てを諦めたような《ジャンクリボー》の眼が残ったクリボーたちを射抜く。

 

「《比翼(ひよく)レンリン》を装備したモンスターの元々の攻撃力は1000になり2回攻撃の効果を得ます」

 

 だが《比翼(ひよく)レンリン》の足元で騒ぐ2体のクリボー軍団の予想は外れ、《ジャンクリボー》はその怪鳥の背に乗せられた。

 

 やがて状況を理解した《ジャンクリボー》の視線に力が戻る――その頼もしさはまるで竜騎士の如く。鳥だけど。

 

《ジャンクリボー》

攻300 → 攻1000

 

「永続魔法《ウィルスメール》の効果――《クリボール》に直接攻撃権を付与」

 

 次に《クリボール》にドクロメールが張り付く――いつものである。

 

「バトルフェイズへ。《クリボール》でモクバ様に直接攻撃」

 

 《クリボール》が止めは任せろとばかりに球体の身体をジャイロ回転させながらモクバの元に突撃するが――

 

「させないぜい! 罠カード《光子化(フォトナイズ)》! 相手モンスター1体の攻撃を無効!!」

 

 檻の中のモクバの背後から光が輝き、《クリボール》の眼をくらませ、狙いをずらす。

 

 ついでに至近距離で光を喰らった《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》が目玉を押さえて唸り声を上げるが、特に何もない。

 

「それだけじゃないぜい! そのモンスターの攻撃力分まで俺の光属性モンスターの攻撃力を次の俺のエンドフェイズまでアップする! 俺は光属性の《シャインナイト》の攻撃力をアップ!!」

 

 やがてその光は《シャインナイト》の身に宿り、その力を僅かばかり高めた。

 

《シャインナイト》

攻400 → 攻700

 

「では次に《ジャンクリボー》で《シャインナイト》を攻撃」

 

 怪鳥騎士となった《ジャンクリボー》は《比翼(ひよく)レンリン》の力を借り、更なるスピードの地平に飛び立ち、一気に加速するが――

 

「まだまだぁ! 永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》で《ジャンクリボー》の動きを封じるぜい!」

 

 永続罠《幻影霧剣(ファントム・フォッグ・ブレード)》の霧の刃に囚われ、ジタバタしていた――これでは風に、スピードに乗れない。

 

「よっし! これで防ぎ切った!」

 

 モクバの言う通り、これで神崎に残ったアタッカーは《クリボー》のみ。

 

 そして《クリボー》の300ぽっちの攻撃力ではモクバのモンスターたちを突破することは出来なかった。

 

 

 《シャインナイト》の光り輝くポージングに、

 

 目玉を押さえる《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の苦悶の声。

 

 そして勝ち誇った《正義の味方 カイバーマン》の高笑い。

 

 

 そんな三者三様の姿に《クリボー》は力不足を感じて俯く――もっと攻撃力があれば、と。

 

「速攻魔法《エネミーコントローラー》を発動。相手フィールドのモンスター1体の表示形式を変更します――守備表示の《正義の味方 カイバーマン》を攻撃表示に」

 

 しかし高笑いしていた《正義の味方 カイバーマン》は巨大コントローラーの力によって攻撃態勢を取らされていた。

 

《正義の味方 カイバーマン》

守700 → 攻200

 

 

「えっ?」

 

 呆けた声を漏らしたモクバと同じように《クリボー》も顔を上げ、首を傾げる。

 

 《クリボー》の攻撃力は300。そして《正義の味方 カイバーマン》は200。つまり――

 

「《クリボー》で《正義の味方 カイバーマン》に攻撃」

 

 反撃のチャンスである。

 

『クリクリャァッ!!』

 

 そんな色々な思いを込めた叫びと共に放たれた《クリボー》のタックルが《正義の味方 カイバーマン》のどてっぱらを強かに打ち据えた。

 

「カ、カイバーマーン!!」

 

 《クリボー》のタックルに吹き飛ばされた《正義の味方 カイバーマン》は檻に囚われたモクバの隣を親指を立てながら通り過ぎ――

 

 モクバの背後で未だに目を押さえていた《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》の身体に沈んでいった。

 

モクバLP:1000 → 0

 

 マグマの中に親指を立てながら沈む《正義の味方 カイバーマン》の姿はとても男らしいものであったことを此処に記しておく。

 

 






クリボー「攻撃力300」

正義の味方 カイバーマン「くっ、俺の攻撃力は……200!!」


たかが100ポイントでも、単身では覆せぬ「差」があるのだよ!(邪神アバター感)


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