マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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1 VS 3のデュエルが大分長くなったので前編・中編・後編の三編構成にしました。

パラドックス VS 遊戯・十代・遊星 戦――前編です。


前回のあらすじ
Z-ONE「歴史の観測が上手くいっていないゆえに神崎 (うつほ)が及ぼした影響が中々確認できませんね……」

アポリア「此方も手探りで観測を続けているが、歪みが多過ぎて何がなんだか分からない状況だ」

アンチノミー「うーん、神崎 (うつほ)の対処を担当しているパラドックスが心配だな……」


パラドックス「おのれ、神崎ィ!!」




第135話 叫ばずにはいられない

 

 

 1 VS 3の変則的なデュエルが開始されるが「その前に」とばかりに闇遊戯が声を張る。

 

「こっちは3人で挑むんだ――数の上での優位を貰った以上、複数戦での特殊ルールはお前が選びな、パラドックス!」

 

「ならば――1人が神崎の手札を引き継ぐ特殊ルールを取る」

 

 その言葉にすぐさまパラドックスはその脳内でルールを取捨選択し、語る。

 

「フィールドは別だが、キミたち3人はチーム――よって、それぞれ味方のカードなどを利用は可能だ。そして墓地に加え、ライフは共通……要は神崎の残りライフを引き継ぐ形を取る」

 

 語れるルール内容にそこまでの不備は見られない。

 

「つまり俺たちのチームは神崎さんの手札を受け継いだデュエリスト以外の手が0枚のスタートで――」

 

「ライフも先のデュエルで残った分だけ……」

 

 しかしデュエル開始時にアドバンテージの少なさに遊星と十代は確認するように呟く――3人がかりとはいえ、ライフはともかく初期手札0は中々に厳しいものがある。

 

「その通りだ! 万全な状態ならまだしも、モンスターは0! ライフはたった300! そして手札はたった1枚!」

 

 その現実を突きつけるようにパラドックスは声高に語る。

 

 神崎が残した永続罠やリバースカードがあったとしても、そのカードが3人のデッキに効果的に作用するとは限らない。

 

「そんな状況でこの私に勝てると思っているのなら、舐めるのも大概にして貰いたいものだ!」

 

 つまり圧倒的に不利な状況化でのスタートが遊戯・十代・遊星に課せられている。神崎のデュエルを引き継ぐとはそういう意味を持つのだ。

 

 パラドックスの実力を考えれば、次のパラドックスのターンで勝負が決しかねない。

 

 その絶望的な状況の中で遊星は一歩前に歩み出る。

 

「遊戯さん……俺から行かせてください。俺は持てる力の全てを出して戦いたい……!」

 

 遊星のデッキは少ない手札でも大きく動けるカードが多いゆえの決断だったが、闇遊戯が待ったをかける。

 

「いや、神崎のデッキが不明な以上、俺がこのターンを継ごう――その次のターンからは遊星に任せるぜ」

 

 闇遊戯のデッキはよく言えば多彩、悪く言えばごちゃごちゃしている為、神崎のリバースカードがなんであれ、対応できる自信が闇遊戯にはあった。

 

「遊戯さん……」

 

 そんな闇遊戯の姿に尊敬の眼差しを向ける遊星にパラドックスの声が上から降り注ぐ。

 

「順番は決まったようだな――私はバトルフェイズを終了し、カードを3枚セット! ターンエンドだ! さぁ、この絶望的な状況をどうやって乗り切る!」

 

 パラドックスのフィールドに佇む5体の強力なドラゴンたちの姿に遊星はゆっくりとデッキに手をかける。

 

 手札のない遊星はこのドローに全てがかかっているのだから。

 

「俺の――」

 

「待ちな、遊星」

 

 しかしそんな遊星を腕で制した遊戯が一歩前に出た。

 

「遊戯さん?」

 

 疑問を見せる遊星に遊戯は宣言する。

 

「俺は――パラドックス! お前のエンドフェイズに神崎が残したリバースカードを使わせて貰うぜ!」

 

 神崎のフィールドの正体不明のカードが今、明かされる。

 

「罠カード《早すぎた帰還》!! コイツの効果で俺は手札1枚を除外し、除外されているモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚する!!」

 

 遊戯のはるか上空から、異次元の穴が開き、1枚のカードがヒラヒラと遊戯のフィールドに落ちる。

 

「《虹クリボー》1体を呼んだところでどうなる!」

 

 神崎のデッキには相手モンスター諸共、自身を除外するカードが多いが、今現在に除外されているカードは《虹クリボー》のみ。

 

 そんなモンスター1体でこの盤面は覆らないと嘲笑うパラドックス。

 

「遊星! 思いっきり行け!」

 

 だが遊戯は親指を立てて、遊星に後を託した。

 

「はい! 俺のターン! ドロー!!」

 

 遊戯が無意味なことはしない筈とセットされたモンスターを確認する遊星。

 

――セットされたモンスターは……これなら!

 

 そのセットモンスターにはこの状況を打開する可能性が十分にあるカードだった。

 

「俺は遊戯さんがセットしたモンスターを反転召喚!」

 

 ポンッと現れた藍色の壺から一つ目のナニカがニヤリと笑いながらパラドックスを見やる。

 

《メタモルポット》

星2 地属性 岩石族

攻 700 守 600

 

「《メタモルポット》だと? チッ、最後のドローで引いていたか」

 

 パラドックスは遊戯の動きの真意を理解する。

 

 最後の神崎の手札である《メタモルポット》を罠カード《早すぎた帰還》のコストで除外し、セットしたのだと。

 

「リバースした《メタモルポット》の効果で全てのプレイヤーは手札を全て捨て、新たに5枚のカードをドローす――」

 

 全てのプレイヤーに影響を及ぼす《メタモルポット》の効果は遊戯たち3人の手札不足を一気に解消する。

 

「だが甘い! リバースカードオープン! 3枚目の速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動!」

 

 筈だったが、《メタモルポット》の壺に神の雫が投入される。

 

「効果により《メタモルポット》の攻撃力を400上げ、ターンの終わりまで効果を無効にする!!」

 

 壺の内部で目が染みると絶叫を上げる《メタモルポット》。これではドロー効果を発動できない。

 

「遊戯さんが繋いだ可能性を断ち切らせはしない! その効果にチェーンして速攻魔法《神秘の中華なべ》を発動!」

 

 だがその《メタモルポット》は中華なべに放り込まれ、中華なべは強火で着火。

 

「自軍フィールドのモンスター1体をリリースして、そのリリースしたモンスターの攻撃力か守備力分のライフを回復する――俺は攻撃力を選択!」

 

 神の雫を強火の熱で蒸発させながら、イイ感じに香ばしく焼かれた《メタモルポット》は天へと昇った。

 

遊戯・十代・遊星LP:300 → 1000

 

「これで速攻魔法《禁じられた聖杯》の効果を《メタモルポット》が受けることはない!」

 

 《禁じられた聖杯》の無効化の力を回避したことで《メタモルポット》の効果が適用される。

 

「くっ……《メタモルポット》の効果で手札を捨て、新たに5枚ドロー」

 

 それにより大量の手札を捨て、新たに5枚のカードを引くパラドックス。

 

 そして遊戯・十代・遊星も新たな手札5枚をドローする。これで心許なかった手札が補充された十代は感謝の言葉を漏らした。

 

「よっしゃあ! これで俺たちの手札は補充できたぜ! ありがとな、遊星!」

 

「いえ、遊戯さんのお陰です」

 

 だが遊星自身は遊戯があのタイミングで《早すぎた帰還》を発動したお陰だと謙遜するが――

 

「いや、あの状況でヤツの《禁じられた聖杯》を躱すことが出来るカードを引き当てた遊星の力があってこそだ」

 

 遊戯はパラドックスの《禁じられた聖杯》を躱すカードを引き込んだ遊星の手柄だと語る。

 

 そんな和気あいあいとする3人に対し、パラドックスは状況を示すように声を張る。

 

「だとしても其方がドローフェイズ以外でカードをドローしたことで、私は永続罠《便乗》の効果で更に2枚ドロー!!」

 

 結果としてパラドックスの手札も大きく充実したのだから、まだ逆転された訳ではないと。

 

「そして《スターダスト・ドラゴン》を失ったキミは所詮、私の敵ではない」

 

 そう、こと遊星においては彼のエースモンスター《スターダスト・ドラゴン》のカードはパラドックスの手元にあり、遊星のデッキは些か弱体化しているのだから。

 

 そのパラドックスの言葉に《Sin スターダスト》を視界に収めた遊星は悔し気に声を漏らす。

 

「くっ、よくもスターダストをこんな姿に!! 待っていてくれ、スターダスト! 今、お前を解放してやる!」

 

 だが奪われたのなら取り返せば良いと、手札の1枚のカードをデュエルディスクに差し込む遊星。

 

「俺は魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動! 手札のモンスター1体、《チューニング・サポーター》を捨て、デッキからレベル1のモンスター1体を特殊召喚!」

 

 中華なべを被りマフラーを巻いた寄せ集めのパーツで作られた小さなロボットが墓地行の穴に落ちていく中で頭の中華なべを開くと――

 

「来い! 龍可から託された力! チューナーモンスター、《サニー・ピクシー》!!」

 

 そこから仲間の1人に餞別として託された桃色の長髪を揺らす4枚羽根の小さな妖精がフワリと舞う。

 

《サニー・ピクシー》

星1 光属性 魔法使い族

攻 300 守 400

 

「さらにチューナーモンスター、《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

 橙色のブリキのアーマーに身を包んだ眼鏡を付けた機械の戦士が両腕を広げながら、遊星の足元に着地する。

 

《ジャンク・シンクロン》

星3 闇属性 戦士族

攻1300 守 500

 

「そして召喚した《ジャンク・シンクロン》の効果! 俺の墓地のレベル2以下のモンスター1体を蘇生する! 蘇れ、《チューニング・サポーター》!!」

 

 その《ジャンク・シンクロン》の背には先程墓地に送られた中華なべを被る小さなロボットが手足を目一杯広げて、元気さをアピールしていた。

 

《チューニング・サポーター》

星1 光属性 機械族

攻 100 守 300

 

「この効果で蘇生されたモンスターの効果は無効化される! そして俺の墓地のモンスターが蘇生されたとき、手札の《ドッペル・ウォリアー》を自身の効果で特殊召喚!!」

 

 遊星の呼び声に応じ、手札から銃を持った黒い軍服に身を包んだ兵士が現れる。

 

 その背には半透明ながらも、その兵士と全く同じ姿を持つドッペルゲンガーと思しき影があった。

 

《ドッペル・ウォリアー》

星2 闇属性 戦士族

攻 800 守 800

 

「おっしゃぁ! 遊星のフィールドに一気に4体のモンスターが並んだぜ!」

 

 怒涛の連続召喚を見せる遊星に十代は感嘆の声を上げるが――

 

「俺のデッキは此処からです、十代さん!」

 

 遊星のデッキの真骨頂は此処からだった。

 

「俺はレベル2の《ドッペル・ウォリアー》にレベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!!」

 

 腰に付いたエンジン起動用のスターターを引っ張る《ジャンク・シンクロン》が3つの光の輪となり宙を舞い、《ドッペル・ウォリアー》は2つの光る星となる。

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光さす道となれ!」

 

 やがてその3つの輪の中を通る2つの星が輝き、光が収まった先には――

 

「シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!!」

 

 青い装甲に身を包んだ機械仕掛けの戦士が、背中に装着されたブースターで宙に浮かびながらマントのように伸びる長い2つの白い布をはためかせていた。

 

《ジャンク・ウォリアー》

星5 闇属性 戦士族

攻2300 守1300

 

「おおー!! なんだその召喚! スゲー!!」

 

「これが俺たちの時代にある召喚法――シンクロ召喚です」

 

 自身が知らない召喚法に目を輝かせる十代に照れながら自身のフェイバリットカードの1枚の姿を誇る遊星。

 

「そしてシンクロ召喚した《ジャンク・ウォリアー》の効果が発動! そしてその効果にチェーンしてシンクロ素材となって墓地に送られた《ドッペル・ウォリアー》の効果も発動!」

 

 しかし遊星のフェイバリットカードの真価はまだまだ此処からだ。

 

「まずは《ドッペル・ウォリアー》の効果で俺のフィールドに『ドッペル・トークン』を2体、特殊召喚!!」

 

 遊星のフィールドにチョコンと現れる2体の小さな《ドッペル・ウォリアー》とも言うべきモンスタートークンが小さな銃を構えてパラドックスを威嚇する。

 

『ドッペル・トークン』×2

星1 闇属性 戦士族

攻 400 守 400

 

「そして《ジャンク・ウォリアー》の効果! このカードがシンクロ召喚した時、俺のフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分、このカードの攻撃力をアップする!」

 

 そして《ジャンク・ウォリアー》がその一際強靭で太い右腕を掲げるとフィールドのモンスターの力がその身に宿っていく。

 

「パワー・オブ・フェローズ!!」

 

 2体の『ドッペル・トークン』に加え、《サニー・ピクシー》と《チューニング・サポーター》の計4体の力をその拳に蓄えた《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力は3000ラインを超える。

 

《ジャンク・ウォリアー》

攻2300 → 攻3500

 

「まだだ! 俺はフィールドの戦士族――『ドッペル・トークン』をリリースすることで手札の《ターレット・ウォリアー》は特殊召喚できる!!」

 

 『ドッペル・トークン』の1体が飛び上がり、その背に現れた光の円にその身を沈めていく。

 

「来いっ! 《ターレット・ウォリアー》! この効果で特殊召喚したこのカードはリリースした戦士族の元々の攻撃力分、攻撃力がアップ!」

 

 やがてその光の円から身を乗り出したのは砦のような四肢を持つゴーレムのような戦士。

 

 その肩からは大砲が左右合わせて4つ伸びていた。

 

《ターレット・ウォリアー》

星5 地属性 戦士族

攻1200 守2000

攻1600

 

「そして俺はレベル1『ドッペル・トークン』とレベル1《チューニング・サポーター》! そしてレベル5の《ターレット・ウォリアー》にレベル1の《サニー・ピクシー》をチューニング!!」

 

 再びシンクロ召喚が実行され1つの光の輪に7つの光の星が通って行く。

 

「星海を切り裂く一筋の閃光よ!! 魂を震わし世界に轟け!!」

 

 やがてその合計8つの光は輝きを増していき――

 

 

 

 

「シンクロ召喚!! 《閃珖竜(せんこうりゅう)スターダスト》!!」

 

 

 その光の先から飛翔したのは《スターダスト・ドラゴン》。

 

 ではなく《スターダスト・ドラゴン》と瓜二つと言わんばかりに似た姿を持つドラゴン。

 

 だがその身体は煌く光が零れており、属性も風属性ではなく、光属性だ。

 

閃珖竜(せんこうりゅう)スターダスト》

星8 光属性 ドラゴン族

攻2500 守2000

 

「《サニー・ピクシー》が光属性のシンクロモンスターのシンクロ召喚に使用され墓地に送られた場合! 俺はライフを1000回復する!」

 

 天へと昇って行く《サニー・ピクシー》の光が遊星たちを癒していく。

 

遊戯・十代・遊星LP:1000 → 2000

 

「さらにシンクロ素材として墓地に送られた《チューニング・サポーター》の効果で俺はカードを1枚ドロー!」

 

 そして《チューニング・サポーター》から投げ渡されたカードをキャッチする遊星――手札補充も忘れない。

 

「そしてお前は永続罠《便乗》の効果で2枚ドローだ!」

 

 そうカードを引け、と語る遊星だったが、パラドックスはあり得ないものでも見たかのように驚愕に目を見開き揺らす。

 

「スターダスト……だと?」

 

 今現在《スターダスト・ドラゴン》はパラドックスの手の内にある筈だった。

 

閃珖竜(せんこうりゅう)……だと?」

 

 そんな名前のドラゴンをパラドックスは知らない。

 

 そしてパラドックスが知る本来の歴史でも、そんなドラゴンを遊星は使用しておらず存在すらしない。

 

 しかし今のパラドックスにあるのは焦燥感――歴史の歪みの大きさが想定以上だったことを目の当たりにしたゆえに、未来の状況が唯々気がかりだ。

 

 だがそんなパラドックスの事情を知らぬ十代は首を傾げる。

 

「どうしたんだ、アイツ? 様子が変だぜ?」

 

 遊星が何かおかしなことをしたようには見えなかったゆえに、十代は唯々疑問符を浮かべるばかりだ。

 

「そんなドラゴンは知らない! 本来の歴史には存在しなかった!」

 

 パラドックスは確認するように声を張る。そのカードを、《閃珖竜(せんこうりゅう)スターダスト》を認める訳にはいかないと。

 

「なら、これこそが俺たちの可能性の一つ! 決闘竜(デュエル・ドラゴン)だ! パラドックス!」

 

 だが遊星は仲間と切磋琢磨し、己の闇を受け止め手にしたこの力を誇るように語る。

 

 しかし対するパラドックスは叫ぶように返す。

 

「可能性だと? 可能性だと! 否、断じて否! そんなものは――ただの歪みだ!!」

 

 歴史の歪みをまざまざと見せつけられ、当事者である遊星がその歪みの影響を全く気にした様子もない事実。

 

 そんなものはパラドックスに、いや、イリアステルにとってあってはならない。

 

「ならその可能性の力を今、見せてやる! バトル! スターダスト! 今、解放してやる――《閃珖竜 スターダスト》! 《Sin スターダスト・ドラゴン》に攻撃!」

 

 だとしても遊星のスタンスは何も崩れない。

 

 2体のスターダストが鏡合わせのように身体を逸らし、ブレスをチャージする。

 

流星閃撃(シューティング・ブラスト)!!」

 

「相打ち狙いか!? 迎え撃て、《Sin スターダスト・ドラゴン》! シューティング・ソニック!!」

 

 互いのブレスが放たれ、ぶつかり合う。

 

 やがて逃げ場を求めるように交錯した2つのブレスはそれぞれを貫かんと突き進むが――

 

「違う! この瞬間《閃珖竜 スターダスト》の効果発動! 自分フィールドの表側表示のカード1枚を選択し、そのカードはそのターン、戦闘及び効果で1度だけ破壊されない!」

 

 《閃珖竜 スターダスト》が翼を翻すと共に発生した光がその周囲に集まっていく。

 

「俺は《閃珖竜 スターダスト》を選択! 波動音壁(ソニック・バリア)!!」

 

 そして透明なバリアと化した光の壁に《Sin スターダスト・ドラゴン》のブレスは弾かれる。

 

 だが《閃珖竜 スターダスト》のブレスは《Sin スターダスト・ドラゴン》を打ち抜きその身を砕く。

 

「くっ! 《Sin スターダスト・ドラゴン》が!!」

 

 闇が崩れるようにその身体が消えていく《Sin スターダスト》を余所に遊星は声を張る。

 

「まだだ! 《Sin 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》を攻撃!」

 

 《ジャンク・ウォリアー》の背中のブースターが火を噴き、爆発的な加速をもたらす。

 

「叩き込め、《ジャンク・ウォリアー》! スクラップ・フィストォ!!」

 

 やがて宙で身を翻しながら振りかぶられた《ジャンク・ウォリアー》の拳が《Sin 青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイト・ドラゴン)》のブレスを打ち払い、その白きドラゴンの身を貫いた。

 

 その拳の衝撃が白き龍をSinの呪縛から解き放ち、余波がパラドックスを打ち据える。

 

「ぐぁああああッ!!」

 

パラドックスLP:2200 → 1700

 

「俺はバトルを終了し、カードを1枚セットしてターンエンド! どうだ、パラドックス! これが俺たちの可能性だ!!」

 

 苦悶の声を上げ、膝を突くパラドックスに遊星は力強く宣言する。

 

 これこそが可能性の力だと、パラドックスが否定したものの力だと。

 

 そんな遊星にパラドックスは小さく笑う。

 

「ククク……ハハハ……可能性だと? 確かに可能性だな!」

 

 可能性の力――そう声高に叫び、シンクロ召喚を積み重ねてきた人類が辿った末路をパラドックスは知っている。

 

 パラドックスにとって遊星の語る可能性など――

 

「滅びの未来を加速させる可能性だ!!」

 

 パラドックスが、イリアステルが味わった滅びに向かう破滅への道だと。

 

 イレギュラーな《閃珖竜 スターダスト》に動揺を見せたパラドックスだが、そのお陰かやることはより明確になった。

 

「やはりヤツは此処で確実に殺さねばならん! 私のターン、ドロー!!」

 

 神崎は確実に殺しておく必要があると。

 

――奴らのライフは多少回復した程度、問題はない!

 

 多少盤面が遊星たちの元に傾こうとも、パラドックスの場には攻撃力4000のSinモンスターがいる。

 

 その圧倒的な攻撃力の前では遊星たちの肝心要のライフは風前の灯火同然だった。

 

「バトルだ!! 《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》! 《ジャンク・ウォリアー》を破壊しろ! エターナル・エヴォリューション・バースト!!」

 

 機械竜の3つの頭からそれぞれビーム砲が《ジャンク・ウォリアー》に迫るが――

 

「そうはさせない! 《閃珖竜 スターダスト》の効果発動! 俺は《ジャンク・ウォリアー》に1度の破壊耐性を与える!! 波動音壁(ソニック・バリア)!!」

 

 庇う様に前に出た《閃珖竜 スターダスト》の翼がそのビーム状のブレスを弾く。

 

「相手ターンでも発動が可能な効果だったか……だがダメージは受けて貰う!」

 

 だが弾かれたブレスは遊星たちの身を打ち抜いた。

 

遊戯・十代・遊星LP :2000 → 1500

 

「 「 「 ぐっ……!? 」 」 」

 

 衝撃に耐える3人のデュエリストを尻目にパラドックスは思案する。

 

――《Sin レインボー・ドラゴン》でどちらを破壊するべきか……いや、答えは始めから決まっている!

 

「《Sin レインボー・ドラゴン》! 下らぬ可能性とやらを粉砕しろ! オーバー・ザ・レインボー!!」

 

 仲間を守るべく前に出ていた《閃珖竜 スターダスト》を天を舞う《Sin レインボー・ドラゴン》の虹色のブレスが打ち抜いた。

 

「くっ、済まない! 《閃珖竜 スターダスト》!」

 

 《閃珖竜 スターダスト》を貫いたブレスが墜落するドラゴンを余所に遊星たちに向かうが――

 

「だがこれ以上のダメージは通さない! 罠カード《スピリット・フォース》! この効果で戦闘ダメージを1度だけ0に! そしてその後、墓地の戦士族チューナーを手札に加える! 《ジャンク・シンクロン》を手札に!」

 

 その虹色のブレスから仲間を守るべく墓地から《ジャンク・シンクロン》が飛び出し、その身を盾とする。

 

 やがて《ジャンク・シンクロン》は遊星の手札に向けて吹き飛ばされて行った。

 

 思う様にダメージが通らない事実に眉をひそめつつパラドックスは攻撃権が残る《Sin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を見やるが――

 

「私はバトルを終了し、《Sin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を守備表示に変更」

 

 バトルを終了させ、守りを固めるべく手札を見やる。

 

――存外にしぶとい……デッキの数に不安が残るか

 

 だがそうパラドックスが胸中で零すようにパラドックスのデッキは既に残り10枚を切っている。

 

 神崎を確実に叩き潰すべく永続罠《便乗》で手札を充実させ続けてきた弊害がこのタイミングで表に現れた。

 

 僅か300のライフを削るだけなら問題ないと、遊戯・十代・遊星のデュエルの引継ぎも許したが相手は伝説のデュエリストたち、如何に時代を巡り、最強のデッキを構築したパラドックスでもこのままでは分が悪い。

 

 このままなら。

 

「私は魔法カード《魔法石の採掘》を発動し、手札2枚を墓地に送って墓地の魔法カード《一時休戦》を手札に戻す――そしてすぐさま魔法カード《一時休戦》を発動!」

 

 2枚の手札が宝石のように砕け、墓地から1枚のカードが舞い戻り、再び発動される。

 

「チェーンしてリバースカード《貪欲な瓶》を発動! 墓地のカードを5枚デッキに戻し、1枚ドローする!」

 

 だがそれと合わせて宝石類で欲深き顔を象った壺が5枚のカードを呑み込み――

 

「さらにチェーンしてセットしておいた速攻魔法《非常食》を発動! 今発動した魔法カード《一時休戦》と罠カード《貪欲な瓶》と永続罠《便乗》を墓地に送り、その枚数×1000のライフ――3000のライフを回復する」

 

 最後とばかりに上述の2枚を合わせた3枚のカードを缶詰へと変えた。

 

 やがて光の粒子となって消えた缶詰がパラドックスのライフを癒し、

 

パラドックスLP:1700 → 4700

 

「チェーンの逆処理によって次に《貪欲な瓶》の効果が! 次に《一時休戦》の効果が適用され、全てのプレイヤーはカードを1枚ドローし、次のターンのエンドフェイズまであらゆるダメージを受けない」

 

 墓地のカードをデッキに戻し、デッキを充実させるパラドックス。そこに次のターンの布石も忘れない。

 

「カードを3枚セットし、ターンエンドだ」

 

 そして多めの手札を残してターンを終えた。その次のターンプレイヤーは遊城 十代。

 

「よっしゃあ! 俺のターンだな! 俺のヒーローデッキの力を見せてやる! ドロー!」

 

 諸々のやり取りで充実した手札から十代は楽し気に1枚のカードをかざす。

 

「よし! 早速行くぜ! 俺は魔法カード《融合》を発動!」

 

 遊星の真骨頂が「シンクロ召喚」にあるのなら、十代の真骨頂は「融合召喚」にこそある。

 

「手札の《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フェザーマン》と《E・HERO(エレメンタルヒーロー) バーストレディ》を手札融合!」

 

 十代の目の前で白い羽を広げる緑の体毛に覆われた風の力を持ちし鳥人のようなヒーローと、

 

 赤と白のライダースーツを纏い、黄金のヘルムから伸びる黒い長髪をなびかせる女ヒーローが渦の中に飛び込みその力を合わせる。

 

「融合召喚! 来いっ! マイフェイバリット HERO(ヒーロー)! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》!!」

 

 渦の中から現れたのは赤い竜の頭の右腕と赤い竜の尾を持つ緑と黒の身体を持ったヒーロー。

 

 その左肩から伸びる白い鳥のような片翼を広げながら、右腕の竜の顎をパラドックスへと向けた。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》

星6 風属性 戦士族

攻2100 守1200

 

「ほう、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》とは――」

 

 そんな《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》の姿に何処か侮るような視線を向けるパラドックス。

 

 それもその筈――

 

「遊城 十代。キミの切り札たる《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》を使わないとは――私も随分と舐められたものだ」

 

 歴史に轟く、遊城 十代の代名詞たる最強のヒーロー《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》を使わないプレイングなど、パラドックスからすれば出し惜しみ以外のなにものでもない。

 

 自身の最強を誇るSinドラゴンたちを前に、そんな気の抜けたプレイングを見せる十代の姿にパラドックスは不満気だった。

 

 そんなパラドックスの挑発染みた言葉に十代は――

 

「へっ、俺は出し惜しみなんてしちゃいない! いつだって全力全開だ! だけど1つだけ言わせて貰うぜ!」

 

 ことデュエルにおいて手加減・手抜きなど生まれてこのかたしたことがないと。

 

「どうした? 今更プレイミスだとでも言うつもりか?」

 

 そしてパラドックスに向けて宣言するように返そうと口を開く十代にパラドックスは冗談交じりの言葉をかけつつ小さく笑うが――

 

 

 

 

 

「『ねおす』って何だ!!」

 

 

 

 キリッとした顔の十代から発された爆弾発言にパラドックスはその発言を一拍置いた後に理解し、その瞳は驚愕で見開かれる。

 

「……? ……!? な、なにを言っている! 『ネオスペーシアン』と力を合わせ、多用な力を発揮するキミの切り札だろう!?」

 

 そう、そうなのだ。

 

 パラドックスの知る歴史では遊城 十代は《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》も使用していたが――

 

 十代の切り札の座は《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》が有していた。

 

 宇宙にて正しき闇の波動を受けた新たなヒーロー。それが《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》。

 

 そしてキモイルカ――もといイルカ頭と筋肉質な身体を持つ二足歩行の宇宙人こと《N(ネオスペーシアン)・アクア・ドルフィン》を含めた『ネオスペーシアン』たち。

 

 そんな『ネオスペーシアン』たちと《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》で行う特殊な融合――『コンタクト融合』を駆使して十代は数多の敵を倒し、世界を救ってきたのだ。

 

 

 そんな相棒と呼ぶべきカードたちを知らない等あり得ない筈だと、頭でも打ったのかと、嘘だと言ってくれとワナワナと震えるパラドックス。

 

「ねおすぺーしあん?」

 

 しかし十代はパラドックスの期待を打ち破り、首を傾げる――「聞いたこともない」といった様相だ。

 

「馬鹿な!? 何故!?」

 

 想定を遥かに超えたレベルで歴史が歪みまくっている事態にパラドックスは頭をかかえるが、十代の背後にて事の成り行きを見守っていたユベルが「あっ」とばかりに手を叩く。

 

 何か思い出したらしい。

 

『どこかで聞いた名前だね……あっ! 十代、君が小さかった頃にデザインコンテストに出したカードじゃなかったかい?』

 

 そう、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》は幼少時の十代の純粋な想いがインスピレーションとなって引き寄せた正義の化身。

 

 その事実はパラドックスも良く知る本来の歴史のもの――その瞳に希望が宿る。

 

「えっ!? あれってカード化されてるのか!?」

 

 だが十代はまたもその希望を神回避――ズレている。圧倒的なまでにズレている。

 

「キミが使っていたカードだろう!!」

 

 堪らず絶叫するように声を張るパラドックス――もう止めて! 彼の胃のライフは0よ!

 

「そうなのか!?」

 

『アイツは未来から来たって言っていたし、未来の君が使っているんじゃないのかな?』

 

「おお! そういうことかよ! く~! 未来が楽しみだぜ!」

 

 当事者であるにも関わらず、完全に他人事な十代にユベルが提示した「未来の可能性」ではとの仮説に期待を膨らませる十代。

 

 新しいヒーローとの巡り合いに心を躍らせる。

 

 だが違うのだ!

 

「違う! キミがアカデミアに在学中に『光の結社』と戦う際に手にした力だろう!!」

 

 パラドックスが知る十代はデュエルを学ぶ学園――デュエルアカデミアにて起こったある事件に立ち向かう際に手にしたカードであると叫ぶ。

 

 つまり既に社会人として様々な場所に飛び回っている十代は《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》を手にしていなければならないのだ。

 

「光の……なに?」

 

 しかし十代は全く記憶にない模様――「アカデミアでそんなことがあっただろうか?」と記憶を巡らせていたが、思い当たる節はやはりないようだ。

 

「遊城 十代! キミはアカデミアを卒業したんだろうな!?」

 

「卒業したぜ! 主席は逃しちまったけどな!」

 

 十代は座学が苦手だったことを思い出したパラドックスが「まさか退学になったのでは?」と心配するが、十代は「主席」を争っていた旨を明かす――座学もイケる口らしい。

 

「どういうことだ……歴史が……このままでは……」

 

 パラドックスの知る本来の歴史に何一つ沿っていない現実にその明晰な頭脳は悲鳴を上げるが――

 

「どうしたんだ、アイツ?」

 

『うーん、よく分からないけど……彼の知る未来とボクたちが過ごした日々はかなり違うようだね』

 

 当事者である十代やユベルは逆に心配そうにパラドックスを見上げていた――いや、キミらが悩みの原因ッ!

 

 やがて深呼吸し、落ち着きを見せたパラドックスは頭を振る。

 

「……だが! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス》を持たないキミなど私の敵ではない!」

 

 そう、逆に十代が弱くなったのなら脅威度は下がると――十代たちを下した後で、神崎を殺せばオールOKだと。

 

 しかし十代はその言葉に眉を上げる。

 

「そいつはどうかな? 『ねおす』ってカードがどんなにスゲェカードなのかは知らねぇけど、俺がアカデミアの仲間たちとぶつかり合って、助け合って組み上げたデッキは――」

 

 十代とて、今の己のデッキがパラドックスの言うデッキと違うことは分かったが、だからと言って仲間たちと切磋琢磨した結晶である(デッキ)が――

 

「最高のデッキだぜ!!」

 

 劣っているとは言わせないと。

 

『そうさ。ボクの十代を舐めないで貰いたいね』

 

 ユベルも十代と共に数々のデュエルを戦い抜いてきた自負に胸を張る。

 

「俺は《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》を召喚!」

 

 そんな十代の闘志に応えるように青いライダースーツに黄金の装甲と背中の機械翼を持った水色のバイザーで顔を覆ったヒーローが降り立つ。

 

 その掌の水晶からは滾る闘志のようにイカヅチが迸っていた。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》

星4 光属性 戦士族

攻1600 守1400

 

「そして装備魔法《スパークガン》を《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》に装備だ!」

 

 横に振り上げた《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》の右腕に特殊な突撃銃が握られ、突撃銃から伸びたケーブルがその腕に接続される。

 

「コイツはスパークマン専用の装備魔法! その効果で3回までモンスターの表示形式を変更できる! でも3回効果を使ったら破壊されちまうけどな!」

 

 その突撃銃、《スパークガン》からの銃口からはイカヅチが小さくスパークする。《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》の掌から漏れ出るイカヅチを利用しているようだ。

 

「ッ! キミの狙いは――」

 

「おうよ! 《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》と《Sin レインボー・ドラゴン》には守備表示になって貰うぜ!」

 

 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》が《スパークガン》を空に浮かぶ2体のドラゴンに向けて構え――

 

「やれっ! スパークマン! ツイン・スパークショット!!」

 

 イカヅチの弾丸が2発放たれた。

 

 回避しようと宙を舞う2体のドラゴンだが、イカヅチの弾丸は対象に近づいた瞬間にスパークして弾け、2体のドラゴンたちの身体に痺れを与え、動きを鈍らせる。

 

《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》

攻4000 → 守2800

 

《Sin レインボー・ドラゴン》

攻4000 → 守 0

 

 如何に攻撃力が4000あろうとも、守備力はそこまでの高さとは限らない。

 

「上手いぞ、十代! これなら!」

 

 遊戯の声援に背を押されながら十代は《Sin レインボー・ドラゴン》を指出す。

 

「行っくぜー! バトルだ! まずはスパークマンで《Sin レインボー・ドラゴン》を攻撃! スパークフラッシュ!!」

 

 跳躍した《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》が《スパークガン》を持たない左手の掌からイカヅチが放たれ、動きの鈍った《Sin レインボー・ドラゴン》の仮面を砕く。

 

 Sinの呪縛から解き放たれた宝玉のドラゴンは光の粒子となって消えていった。

 

「くっ! 守備力の低さを狙い打たれたか!!」

 

「ヨハンのカードはお前じゃ使いこなせやしないぜ!」

 

 想定外の十代の攻勢の衝撃に腕を盾にしながら耐えるパラドックスに十代は仲間のカードを1体解放出来た事実に笑みを浮かべる。

 

 だがまだ十代の攻撃は止まらない。

 

「次だ! 頼むぜ、フレイム・ウィングマン! 城之内さんのカードを解放してやってくれ! 《Sin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》を攻撃!!」

 

 天高く跳躍した《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》の右腕の竜の顎から漏れ出る炎に身体全体が包み込まれて行き――

 

「フレイム・シュート!!」

 

 宙で身を翻し、龍の顎を《Sin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の仮面に貫く、《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》。

 

 砕けた仮面と共に、《Sin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》は炎に包まれ、その身を散らしていくが――

 

「フレイム・ウィングマンが戦闘でモンスターを破壊し、墓地に送った場合! そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える!」

 

 その《Sin 真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)》の炎が《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》の竜の顎に吸い込まれ、やがて炎の弾丸がパラドックスに向けて放たれた。

 

 だがその炎は透明な壁に阻まれ、パラドックスには届かない。

 

「――けど、《一時休戦》の効果でダメージはないけどな! やっぱ、ライフが上手く削れねぇな……」

 

 そう残念そうに零しながら落ち込んだように頭をかく十代だが、闇遊戯が声を張る。

 

「いや、気を落とすことはないぜ、十代! ヤツの発動した魔法カード《一時休戦》のドロー効果は俺たち全員に及ぶ――お陰で手札が潤った!」

 

「なら良かったです、遊戯さん!」

 

 2人以上でのバトルロイヤル特有のルールの特性からアドバンテージを稼げたとの闇遊戯の声に十代は伝説のデュエルキングに褒められたことが嬉しいのか照れたように笑う十代。

 

「じゃぁ最後は遊星のモンスターの力を借りるぜ! コイツはカイザーの分だ!」

 

 そしてもっと良いとこを見せようとばかりに遊星と、そのモンスターへと声をかける。

 

「叩き込め! 《ジャンク・ウォリアー》! 《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》に攻撃! スクラップ・フィストォ!!」

 

 身体を丸めて守りを固める《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》の巨体をブースターで加速した《ジャンク・ウォリアー》の拳が打ち据え、吹き飛ばす。

 

 やがてパラドックスの横を通り過ぎ壁に叩きつけられた《Sin サイバー・エンド・ドラゴン》の身体は砕けるように消えていった。

 

「よっしゃ! これでお前を守るモンスターは0だ!」

 

「しかし、これ以上の攻撃は出来まい!」

 

 十代の宣言に強気な言葉で返すパラドックスだが、その胸中には不安が残る。

 

――くっ、神崎との一戦でカウンター罠を使い過ぎたか……

 

 神崎を相手にする際にかなりの数のカウンター罠を使ったゆえに十代たちの妨害が上手く行えないと。

 

 だがそんなパラドックスの胸中も気にした様子がない十代は、このデュエルを楽しむように笑みを浮かべながらデュエルを続行する。

 

「だよな! 俺はバトルを終了して、装備魔法《スパークガン》の最後の弾丸を放つぜ! 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》を守備表示に!」

 

 最後の弾丸を味方に向けて放った《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》。

 

E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》

攻2100 → 守1200

 

 腕を交差し、膝を突いてしゃがむ《E・HERO(エレメンタルヒーロー) フレイム・ウィングマン》に対し――

 

「3回効果を使った装備魔法《スパークガン》は破壊されるぜ」

 

 《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》の腕の《スパークガン》が役目を終えたとばかりに爆発する。

 

「そして俺は魔法カード《一時休戦》を発動! 全てのプレイヤーはカードを1枚ドローして、次のターンのエンドフェイズまでお互いはあらゆるダメージを受けない!」

 

 そんな間近で起こった小さな爆発に顔を腕で覆う《E・HERO(エレメンタルヒーロー) スパークマン》を余所に新たにカードを引く十代。

 

 そのドローは全てのプレイヤーにも適応される。

 

「おっ、ラッキー! 魔法カード《マジック・プランター》を発動! 表側表示の永続罠《死力のタッグ・チェンジ》を墓地に送って2枚ドロー!」

 

 引いたカードがドローを追加させるカードだったことから喜色の声を上げつつ、神崎の残した永続罠を墓地に送って手札を充実させる十代。

 

「さらに魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地のカードを5枚デッキに戻して、新たに2枚ドローするぜ! 俺は墓地の――」

 

 またまたドローを加速させるカードを引き当てた十代――どんなドロー力してんだ。

 

 やがて宝石をちりばめて強欲な顔をデザインされた壺に投入する5枚のカードを墓地から選ぼうとした十代だが、ふとその手が止まる。

 

「墓地にこんなにモンスターが……ずっと戦ってたんだな……」

 

 その墓地に眠る散っていった数多のヒーローたち(戦士族)の姿に十代は神崎とパラドックスのデュエルが熾烈を極めていたことを感じる。

 

 なお、その実態は一方的に神崎がボコられていただけだが。

 

「墓地の《D(ディー). D(ディー).アサイラント》・《荒野の女戦士》・《黒き森のウィッチ》・《H(ヒロイック)C(チャレンジャー)サウザンド・ブレード》・《メタモルポット》の5枚のカードをデッキに戻して2枚ドロー!」

 

 やがて5体のカードがしんみりとした顔の《貪欲な壺》に吸い込まれて行き、新たな2枚のカードとなる。

 

「永続魔法《ブランチ》と同じく永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動! 最後にカードを2枚セットしてターンエンド!」

 

 どちらも融合モンスターに関係する永続魔法の布陣を敷き、2枚のセットカードで備えた十代は気合の籠った声でパラドックスに返す。

 

「どうだ、パラドックス! 俺のヒーローたちの力は!」

 

 これでパラドックスのフィールドのSinモンスターは全滅。

 

 仲間のカードは全て解放したと宣言する十代だが、対するパラドックスの余裕は崩れず、その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。

 

 






E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス「十代! 十ゥ代ィ!! じゅうぅだァアアァアアアいィッ!!」

N(ネオスペーシアン)・アクア・ドルフィン「十代! ワクワクを――えっ? 僕のことを知らない? えっ?」


閃珖竜(せんこうりゅう)スターダスト「デッキからハブられるとは……かわいそうに」
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