マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
神崎……嘘を吐かなきゃ良いってもんじゃないよ……(´・ω・`)ショボーン




第141話 最強の地縛神――なおOCGカード化は……

 

 

 ある国の地下深くの古代の神殿にて炎の身体を揺らす紅蓮の悪魔のしもべは珍しい来客に愉快そうに笑う。

 

「ヒヒヒヒッ、アハッハッハハ! ワタシめに一体何用で?」

 

「スカーレッドノヴァと話せますか?」

 

 そんな紅蓮の悪魔のしもべに神崎は神殿に祀られている石像に目を向け答えた。

 

 

 この祭壇に祀られているのは「最強の地縛神」との呼び声高い「紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァ」が封印されたもの。

 

「おっーとっと! 我が主にご用でしたか――差し支えなければご用件をお聞きしても?」

 

 その神崎の返答に紅蓮の悪魔のしもべはオーバーに驚いて見せた後、頭を垂れつつ問う。その瞳は「差し支えなければ」と言いながら、有無を言わせぬ雰囲気が漂っていた。

 

「構いませんよ――ただ、『助力を得られたら』と思いまして」

 

 今回の神崎の目的は「紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァ」の力といっても過言ではない。

 

 

 だが、この「紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァ」は今よりさらに先の未来、5D’s時代にてジャック・アトラスが「バーニング・ソウル」の境地に至り、シグナーの竜の一体、《レッド・デーモンズ・ドラゴン》に更なる進化をもたらす為に必要な存在である。

 

 そう――結構、重要な存在なのだ。

 

 ゆえに将来的にジャックが必要になるであろうことから神崎は放置していたのだが、パラドックスとの一件で力不足を思い知ったゆえに放置を止めて、助力を求めにきたのだ。

 

 原作ブレイクにちょっとは配慮して欲しいものである。

 

 だが神崎にも一応の考えはある。5D’s時代の前に放流こと、キャッチ&リリースすれば問題ないだろうと――いや、問題しかねぇよ。

 

「ククク、フフフッ! アッハッハッハッ!!」

 

 そんな神崎の言葉に紅蓮の悪魔のしもべは狂ったような笑い声を上げる。

 

「そのようなことでしたら、我が主に問いかけるまでまりませぇん! 答えは一つです!」

 

 そして神崎に指差し紅蓮の悪魔のしもべは意気揚々と宣言する。

 

 

 

 

「貴方に貸す力なんて、これっぽっちもございませ~ん!!」

 

 

 拒絶の意思を。

 

 紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァは冥界の王の眷属である「地縛神」の一体であるにも関わらずの仕打ちに神崎は小さく溜息を吐く――冥界の王は思ったよりも人望がないらしい。

 

「そうですか……ご無理を言ってしまったようですね。では――」

 

「逃がす訳ないでしょうッ!!」

 

 やがてそう零しながら一歩後ろに下がった神崎に紅蓮の悪魔のしもべが声を上げると共に、周囲をグルリと炎の陣が奔り、相手を閉じ込めるように炎が猛る。

 

「一応、『何故』と聞いておきます」

 

「アッハッハ! 本気で言っておられる? 言っておられるぅ? これは愉快!」

 

 相手の意を確認するような神崎の言葉に紅蓮の悪魔のしもべは小躍りするように笑いながら両手で神崎を指さしながらおちょくるように返す。

 

「分かっていないのなら、教えて上げちゃうYO! つまり我々は――」

 

 そう、もはや紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァと紅蓮の悪魔のしもべにとって冥界の王は――

 

 

「もう貴方に仕える気がないってことだYO!!」

 

 

 従う価値のある相手ではないのだ。

 

「ただの人間に取り込まれっちゃったマヌケにはねぇ!」

 

 精霊の力も持っていなかった人間の罠に嵌まり、生殺与奪を含め、全てを剥奪された負け犬を崇めてやる道理など彼らにはない。涙拭けよ、冥界の王……

 

「で・す・が! その無駄に丈夫な器は有効活用してやるYO!」

 

 だが、冥界の王を受け止めた神崎の器としての性能は紅蓮の悪魔のしもべも評価している。

 

 デュエルマッスルの為に、「頭おかしいんじゃないの?」なレベルのトレーニングを欠かさず続けた神崎の身体は豊富な生命エネルギーを秘めているのだ――過去のアヌビスもアテにした程に。

 

「古の儀式といこうじゃあーりませんか! イッツショーターイム!!」

 

 ゆえに紅蓮の悪魔のしもべはショーの始まりとばかりに大仰に手を広げる。

 

「そう! デュエルです! 貴方が勝てば、その助力とやらを我が主は聞きいれてくださることでしょう!」

 

 そう、紅蓮の悪魔のしもべの狙いは――

 

「そして、貴方が負ければその器は紅蓮の悪魔の生贄として捧げられます! 冥界の王と共にねえ!!」

 

 紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァの完全なる復活――その為の依り代の入手。その事に思い至った神崎は確認するように零すが――

 

「つまり貴方たちは――」

 

「その通り! 下剋上ってやつだYO!!」

 

 その言葉は紅蓮の悪魔のしもべに割り込まれる。話し合いの余地は介在しない。

 

「さぁ、儀式の始まり始まり! どちらかが倒れるまで終わらない! 闇の儀式!」

 

 そしてその紅蓮の悪魔のしもべの声に神殿の天井から40枚の石板が浮かびシャッフルされていく。

 

 この石板は昔のデュエル――ディアハにおいて石板をカードとして用いていたゆえの光景だ。ゆえに特に今の時代のカードとの違いはない。

 

「貴方にとっては『最後の晩餐』ならぬ『最後のデュエル』! 思い残しがないように盛大にいこうじゃあーりませんか!」

 

 そう神崎に嘲笑うように告げる紅蓮の悪魔のしもべの声に神崎は用意していたデッキをデュエルディスクにセットし、デッキをシャッフル。

 

 やがて5枚の初期手札を引きながら、その胸中で集中力を研ぎ澄ませる。

 

――話が早くて助かる。

 

 このデュエルは己の今後を大きく左右するのだから。

 

 

 

 

 そうしてデュエルが開始され、紅蓮の悪魔のしもべが5枚の初期手札の「石板」を並べる光景を余所に先行を得た神崎はデッキからカードを引く。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1に」

 

 だがフェイズ確認をしながら神崎は内心でげんなりした面持ちになる。

 

――手札が悪いな……手札交換カードがあるだけマシか。

 

 自身が進歩しているかどうか判断に困る手札だ。

 

「カードを1枚セットし、魔法カード《手札抹殺》を発動。互いは手札を全て捨て、捨てた枚数分ドローします――私は手札を4枚捨てて新たに4枚ドロー」

 

 そして手札を一新して動こうとする神崎だが――

 

――微妙。

 

 手札の質は芳しくない。

 

「魔法カード《一時休戦》を発動。互いにカードを1枚ドロー。そして次の相手ターン終了まで一切のダメージは発生しません」

 

 そうしてダメージ回避のカードで1ターンの猶予を確保しつつ神崎は先兵代わりにモンスターを呼び出す。

 

「自分フィールドの効果モンスターのレベルの合計が8以下の時、手札・墓地の『インフェルノイド』モンスター2体――墓地の《インフェルノイド・ルキフグス》と《インフェルノイド・アスタロス》を除外し――」

 

 様々な生物を寄り集めた獣染みた様相の機械の悪魔たちが墓地に眠る同胞すら食らいつき、やがて奈落より溶け合い、一つに混ざりあう。

 

「手札・墓地の《インフェルノイド・ベルフェゴル》を特殊召喚できる――手札から特殊召喚」

 

 やがてその奈落から醜悪の悪徳を持つ悪魔が、何処か機械を思わせる深い藍色の手足と尾を翻し、その翼を広げて宙に佇む。

 

 その身体を覆う鎧のような装甲版の隙間から怨霊のようなうめき声が響いていた。

 

《インフェルノイド・ベルフェゴル》

星6 炎属性 悪魔族

攻2400 守 0

 

「さらにもう1枚カードをセットし、ターンエンド」

 

――さて、相手のデッキは此方の知識ではOCG化されていない「黄泉」というカード群だった筈だが……どう動く。

 

 結果的に消極的なターンとなった神崎は内心でそう一人ごちつつ紅蓮の悪魔のしもべの様子を伺う。

 

「ならワタシのターンです! ドロー!」

 

 だが紅蓮の悪魔のしもべは神崎の様子など気にした様子も見せずに、何処からかカード代わりの巨大な石板を自身の前に並べドローしていた。

 

 そして7枚の石板を眺めていた紅蓮の悪魔のしもべは口を小さく歪め、意気揚々と石板を指差して動き出す。

 

「まずは墓地の《ヘルウェイ・パトロール》を除外して効果発動! ワタシの手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体を特殊召喚しちゃうYO!」

 

 指差された石板が前に動くと同時にバイクのエンジン音が響く。

 

 そうして左右に角の生えたヘルメットを被った悪魔が件のバイクを奔らせ紅蓮の悪魔のしもべのフィールドを通り過ぎ、その際にバイクの後部座席に乗っていた手札の悪魔族モンスターがフィールドに舞い降りた。

 

「来ちゃいなよ! 《インターセプト・デーモン》!」

 

 それはドクロのマークが腹に浮かぶアメフトの防具に身を纏った悪魔が左右の肩から新たな4本の腕を伸ばして四方に広げ、迎撃するような姿勢を取る。

 

《インターセプト・デーモン》

星4 闇属性 悪魔族

攻1400 守1600

 

「さらにさらに! ワタシが攻撃力1500以下のモンスターを特殊召喚したことで――手札の速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動!」

 

 その声と共に石板の1枚が神崎に公開され、その効果が発動――地面から新たに2枚の石板がせり上がる。

 

「ワタシの手札・デッキ・墓地から同名モンスターを特殊召喚しちゃうYO! カモーン! 2体《インターセプト・デーモン》!」

 

 其処から新たに現れた2体を合わせ、3体の《インターセプト・デーモン》が並び、肩を組んでスクラムするも、肩から生える4本の腕が微妙に邪魔そうだ。

 

《インターセプト・デーモン》

星4 闇属性 悪魔族

攻1400 守1600

 

 速攻魔法《地獄の暴走召喚》のもう一つの効果として神崎は自身のフィールドのモンスター1体の同名モンスターを展開できるが――

 

「此方の《インフェルノイド・ベルフェゴル》は特殊召喚モンスターの為、速攻魔法《地獄の暴走召喚》での展開は出来ません」

 

 今回の神崎のデッキの『インフェルノイド』は大半が自身の効果以外での特殊召喚が出来ない為、意味はない。

 

「ざぁんねんですね! 次にワタシは永続魔法《強欲なカケラ》を発動して、残りの4枚のカードを全て伏せてターンエンドだYO!」

 

 自身が一方的に展開できた事実にご機嫌で笑う紅蓮の悪魔のしもべは魔法・罠ゾーンに5枚のカードを発動・セットし、ターンを終える。

 

 動きとしてはあまり大きくはないが、明らかに「罠を仕掛けています」と言いたげな態度だ。

 

「さぁ、さぁ、さぁ! 貴方サマのターンですよ!」

 

 そんな挑発するような紅蓮の悪魔のしもべの声に神崎は内心で考える。

 

――今のところはOCG化されているカードだけ使用されているようだが、原作のデッキと随分毛色が違うな……

 

 自身の知識をフル動員して、紅蓮の悪魔のしもべのデッキがどういったものなのかを組み立てていく神崎。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1に」

 

――だが《インターセプト・デーモン》か……ならコンセプト自体に相違はない筈だ。

 

 カードを引きながら神崎が辿り着いたのは「原作と似たデッキ」であるということ。

 

 紅蓮の悪魔のしもべの原作でのデッキは「黄泉」というシリーズの内の3体のカードでコンボを組み、「相手が攻撃した際にダメージを与えつつ、戦闘を強制終了させる」――そんなデッキ。

 

 相手が攻撃した際にダメージを与える《インターセプト・デーモン》の効果とも合致する。

 

――とはいえ、今の手札は……相変わらず微妙だ。リカバリーも効きそうにない。幸い相手は待ちのデッキ――攻撃は見送るか。

 

 ただ、そんな神崎の内心の通り、今の手札では攻勢に移るにはリスクが高いが。

 

「メインフェイズ1を終了し、エンドフェイズへ――」

 

「おっと、お待ちを! ――そのメインフェイズ終了前に永続罠《竜星の極》を発動しちゃうんだYO!」

 

 ゆえにすぐさまターンを終えようとした神崎に紅蓮の悪魔のしもべはカードを発動させる。

 

 すると紅蓮の悪魔のしもべの背後から神崎のフィールドのモンスターを引き寄せるような風が吹き込み始めた。

 

「これによりこのカードが存在する限り、貴方サマは攻撃可能なモンスターで攻撃しなければなりません!」

 

 そのバトルを強要させる効果により《インフェルノイド・ベルフェゴル》は牙をガチガチと鳴らし、今にも飛び出さん様子だ。

 

「さらに永続罠《最終突撃命令》も発動! アハハ! これで守備表示で逃げることも出来ないよん!」

 

 そして守備表示にして「攻撃できない状態」にすることも叶わない。

 

 ゆえに神崎の残された選択肢はほぼ一つだ。

 

「ではバトルフェイズへ。《インフェルノイド・ベルフェゴル》で《インターセプト・デーモン》を攻撃」

 

 その神崎の声に待ってましたと言わんばかりにおどろおどろしい声を漏らしながら地を這うように低空で飛行し、相手に迫る《インフェルノイド・ベルフェゴル》。

 

「イッツショーターイム!」

 

 だが待っていたのは此方だとばかりに紅蓮の悪魔のしもべが意気揚々と声を上げる。

 

「この瞬間、3体の《インターセプト・デーモン》の効果が発動しちゃうYO! 相手モンスターの攻撃宣言時に500ポイントのダメージを与えちゃう!」

 

 その声が開始の宣言だと、3体の《インターセプト・デーモン》がそれぞれフットボールを神崎に向けて蹴り飛ばす。

 

「つ・ま・り――3体の合計で1500ポイントのダメージをお受けなさいな!」

 

 やがてその3つのフットボールは神崎に当ると同時に爆ぜ、その周囲に爆炎が上がった。

 

神崎LP:4000 → 2500

 

 だがそれ自体に《インフェルノイド・ベルフェゴル》の進行を妨げはしない。

 

 

 その為、爆炎を引き裂きながら3体の《インターセプト・デーモン》の内の1体の《インフェルノイド・ベルフェゴル》の爪が迫るが――

 

「そして! その攻撃は発動しておいた永続罠《アストラルバリア》によりワタシへのダイレクトアタックに!」

 

 だがその《インフェルノイド・ベルフェゴル》の爪は急に方向を変え、紅蓮の悪魔のしもべの方へと向かう。

 

「発生するダメージは発動済みの永続罠《スピリットバリア》の効果により、ワタシのフィールドにモンスターがいる限り――なんと、ゼロ! ノーダメージだよーん! アヒャヒャヒャヒャ!」

 

 しかし《インフェルノイド・ベルフェゴル》の爪は紅蓮の悪魔のしもべを切り裂く前に透明なバリアに阻まれ、届かない。

 

 やがて火花を散らすバリアからうっとおし気にガチガチと歯を鳴らしながら翼を羽ばたかせ宙で一回転して神崎の元に戻る《インフェルノイド・ベルフェゴル》。

 

「私はバトルフェイズを終了し、そのままターンエンドです」

 

――デッキのタイプは完全に割れた。デッキ相性は問題ないが、手札が悪い……拙いな。

 

 初撃を譲ってしまった神崎は内心でそう考えつつターンを終える――今の手札ではそう長くは持ちそうになかった。

 

「アハハハハッ! 成す術もないご様子! ワタシのターン! ドロー!」

 

 そんな神崎の様子を感じ取ったのか自身の有利を確信するように笑い新たなカード――石板を己が前に並べる紅蓮の悪魔のしもべ。

 

「このドロー時に永続魔法《強欲なカケラ》に強欲カウンターが1つ乗るんだYO!」

 

 ご機嫌な様子を見せる紅蓮の悪魔のしもべの笑い声に釣られて壺のニヤケ面が半分浮かぶ。

 

強欲カウンター:0 → 1

 

「ですが、これにてターンを終了――ヒャハハハハ! だってやることないんだもん!」

 

 しかし紅蓮の悪魔のしもべは両の手を手持ち無沙汰に揺らしながらターンを終える。

 

 とはいえ、紅蓮の悪魔のしもべからすれば既に相手は己の策の中――後はゆっくりと死に様を眺めていればいいのだと余裕タップリであろう。

 

 

 対する余裕皆無な神崎はデッキから淡々とカードを引く。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1に」

 

 引いたカードに内心でピクリと反応を見せる神崎だが、そのカードは今直ぐにこの状況を打開できるカードではない。

 

「……バトルフェイズへ移行し、《インフェルノイド・ベルフェゴル》で《インターセプト・デーモン》を攻撃」

 

 ゆえにこのターンも紅蓮の悪魔のしもべに強制されるままに攻撃を行うしかなかった。

 

 ただ、当の《インフェルノイド・ベルフェゴル》はそんなことなど気にした素振りも見せずに牙をギラつかせて獲物に飛び掛かっていたが。

 

「またまたイッツショーターイム!」

 

 だが意気揚々と手を掲げ、宣言する紅蓮の悪魔のしもべの声が響く。

 

「その攻撃は永続罠《アストラルバリア》によりワタシへのダイレクトアタックになり、永続罠《スピリットバリア》の力でダメージはゼロ!」

 

 その結果、《インフェルノイド・ベルフェゴル》の牙は《インターセプト・デーモン》には届かず、空を切る。

 

「そして貴方サマが攻撃宣言したことで3体の《インターセプト・デーモン》の効果で合計1500のダメージを受けちゃいなYO!」

 

 さらに《インターセプト・デーモン》が今度は死のパスとばかりに投げたフットボールが先のターンの焼き増しのように神崎を襲い、爆炎が舞った。

 

神崎LP:2500 → 1000

 

 これで神崎のライフは4分の1――次のターンに神崎が攻撃しただけで消し飛ぶ数値。

 

「アハハハハッ! 此処まで手応えがないとは――なんたる無様! 笑いが止まらないYO! アヒャヒャヒャヒャ!」

 

 そんななされるがままの神崎を紅蓮の悪魔のしもべは嗤う。

 

 元は肉体の頑強さを除き、特殊な力を何一つ持たなかった神崎に対し、冥界の王をその身に封じ込めた存在として警戒していただけに、こうまで手応えがなければ心配しただけ無駄だったと思わざるを得ないだろう。

 

 そうゲラゲラと神崎を嗤う紅蓮の悪魔のしもべの姿を余所に神崎はフェイズ確認の後、手札の1枚をデュエルディスクに差し込む。

 

「私はバトルフェイズを終え、メインフェイズ2へ移行。永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動し、ターンエンドです」

 

 そして神崎がようやく引けたキーカードの1枚が発動され、周囲の神殿を覆うようにビル群が立ち並ぶ。

 

 とはいえ、このターンの神崎の動きはそれだけであり、他は紅蓮の悪魔のしもべに完全になされるがままだが。

 

 だが紅蓮の悪魔のしもべは発動されたカードを視界に収め、眉をひそめる。

 

「未来融合? ……まぁ、良いでしょう。ワタシのターン、ドロー!」

 

 このタイミングで「融合召喚」に関するカードが発動されたことを紅蓮の悪魔のしもべは訝しむも、その新たに加わった手札を含め、除去する類のカードはない。

 

「このドロー時に永続魔法《強欲なカケラ》に強欲カウンターが1つ乗るんだYO!」

 

 そんな紅蓮の悪魔のしもべの警戒を余所に、完成した強欲な様相を漂わせる顔の付いた壺は己の誕生を喜ぶようにゲラゲラと笑う。

 

強欲カウンター:1 → 2

 

 やがて紅蓮の悪魔のしもべは緩んでいた気を引き締める。

 

――念を入れておくとしましょうか……

 

 このデュエルは自身の主、「スカーレッドノヴァ」の封印を完全に解く大事なデュエル――失敗は許されない。

 

「強欲カウンターが2つ乗った永続魔法《強欲なカケラ》を墓地に送り、2枚ドローするんだYO!」

 

 ひとりでに笑う壺が「壺は砕くもの」と言わんばかりに砕かれ、その中身たる2枚のカードが紅蓮の悪魔のしもべの手元に舞い込んだ。

 

「ワタシはカードを1枚セットし、《クリバンデット》を召喚!」

 

 盗賊風の装いの《クリボー》こと《クリバンデット》が紅蓮の悪魔のしもべの警戒に触発されたように音もなく降り立つ。

 

《クリバンデット》

星3 闇属性 悪魔族

攻1000 守 700

 

「そしてターンエンド! エンド時に通常召喚した《クリバンデット》をリリースし、デッキの上の5枚のカードから魔法・罠カードを1枚選んで手札に加え、残りを墓地に送っちゃうYO!!」

 

 先のターンと同じく殆ど動きを見せない紅蓮の悪魔のしもべだったが、《クリバンデット》がすぐさま墓地に潜り、主人の為に次なる一手を打つ為の布石を揃える。

 

「ワタシは魔法カード《強欲で金満な壺》を手札に加えます――さぁ、其方のターンだYO!」

 

 その中から選ばれたのは欲深い顔が二つ付いた壺のカード。だが紅蓮の悪魔のしもべの狙いの大本は其方ではない。

 

 立ち去る《クリバンデット》と共に墓地に送られた4枚のカードこそが狙い――とはいえ、保険の意味合いが強いが。

 

「で・す・が! 貴方サマはなんと! 後1度の攻撃でライフが尽きてしまいますけどねぇ!!」

 

 そして両の手を煽るようにパシパシ叩きながら笑う紅蓮の悪魔のしもべの背後から巨大な赤い蛇が数匹現れ、その赤い蛇の先に深紅の身体を持つ巨人の如き存在が朧気ながらに姿を現す。

 

 その赤き巨人の如き存在こそ最強の地縛神たる紅蓮の悪魔、「スカーレッドノヴァ」。

 

 かつて赤き龍に選ばれた戦士、「シグナ―」の中の荒ぶる魂――バーニングソウルを持つ者に封じられてはいるが、復活の時は近い。

 

「我が主! 紅蓮の悪魔もお喜びです! 直に復活の依り代が手に入るのですから!!」

 

 そう楽し気に語る紅蓮の悪魔のしもべの言葉通り、闇の化生である紅蓮の悪魔に相応しい贄がもうじき手に入るのだから。

 

「是非とも人生最後のターンを楽しんでくださいな!」

 

 だが、そんな自身の主の間近に迫った復活に心躍らせる紅蓮の悪魔のしもべの心の内には確かな「隙」があった。

 

 

 あと少し、あと少しで憎っくきシグナーに封じられた己が主と完全な形で再会できるのだと――勝敗が決まっていない段階で、未来に想いを馳せる「隙」が。

 

 

 

 

 

 

 ただ、神崎がその隙を突けるかどうかは別問題だが。

 

 






今回の神崎のデッキは結構普通に「インフェルノイド」

原作にて紅蓮の悪魔のしもべが使用した墓地でループする効果を持つ「黄泉」カードをメタったチョイス。

インフェルノイドたちの効果で墓地除外すれば容易く機能不全を起こすだろう――なお肝心の「黄泉」シリーズは未OCG(目そらし)



~入りきらなかった人物紹介~
紅蓮の悪魔のしもべ
遊戯王5D’sにて登場

最強の地縛神との呼び声高い、「紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァ」の下僕。

だが作中では「紅蓮の悪魔のしもべ」としか評されない為、名前が不明どころか、あるのかすら謎。

見た目は細い身体と手足、そして火の玉のような顔を持ち、悪魔の尻尾が生えている。

「紅蓮の悪魔の仕業でございます」とやたら繰り返し言っていたせいか印象に残っている人も多いのではないだろうか。


原作ではシグナーに封印された主の復活の為、ジャックの身体を贄にするべく甘言でデュエルの場に引きずり込んだ。

そのデュエルの際にやたらと対戦相手であるジャックを煽っていた姿から何処か人を小馬鹿にしたような性格が垣間見える気がする。

しかし、その最後はジャックの持つシグナーの竜に主であるスカーレッドノヴァが吸収され、その力によって討ち果たされる――慕った主の力に打たれる救いのない最後となった。


~今作では~
主の封印が解ける機会を待っていた所に現れた鴨が葱を背負って来たレベルに理想的な器である神崎が来たため、古の儀式によって神崎を主の復活の贄にするべくデュエルを挑んだ。


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