前回のあらすじ
紅蓮の悪魔のしもべ「皆々様、我が主では冥界の王を取り込むことは出来ないと思われているようですが――この
なお原作では勝負途中に紅蓮の悪魔、スカーレッドノヴァがシグナーの力により再封印される模様
紅蓮の悪魔のしもべに圧倒的なアドバンテージの差を広げられている神崎。だが、その胸中に焦りはない。
「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1に」
相変わらずの代わり映えの無い神崎のドローだが、引いたカードを見た神崎はその内心で小さく笑みを浮かべる。
「永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動した1度目のスタンバイフェイズによりその効果を適用します」
神崎の背後に立ち並ぶビル群が怪し気な光を放つ。
「私はエクストラデッキの融合モンスター《インフェルノイド・ティエラ》を公開し、その融合素材であるモンスターをデッキから墓地へ」
そこには蛇のような細長い身体に、白と黒の翼を広げるインフェルノイドの最高位、《インフェルノイド・ティエラ》が半透明に浮かび、その咆哮が周囲の空気を震わせ――
「デッキから《インフェルノイド・ネヘモス》と《インフェルノイド・リリス》――そして任意の数の『インフェルノイド』モンスターを。デッキの全ての『インフェルノイド』モンスターを墓地に」
その咆哮に導かれるように神崎のデッキから闇をうごめかせながらインフェルノイドたちが次々と墓地に送られて行く。
そしてデッキから全てのインフェルノイドモンスターが消えた後、その闇もまた消えていった。
「成程、成程……墓地に多くのカードを送り、新たな『インフェルノイド』を呼びだす算段ですか」
インフェルノイドの特性を把握し、指を銃のような形にして顎に当てる紅蓮の悪魔のしもべの言葉を肯定するように神崎のデッキはようやく動き出す。今回はいつも以上に立ち上がりが悪い。
「墓地の2枚目の《インフェルノイド・ルキフグス》と2枚目の《インフェルノイド・アスタロス》、そして《インフェルノイド・デカトロン》を除外し――」
3体の同胞を喰らい、業炎と共に現れるのは――
「墓地から《インフェルノイド・ネヘモス》を特殊召喚」
薄い紫の透けた翼を広げ、赤き龍を思わせる長大な身体を躍らせる悪魔――《インフェルノイド・ネヘモス》が狂ったような雄叫びを上げる。
《インフェルノイド・ネヘモス》
星10 炎属性 悪魔族
攻3000 守3000
「《インフェルノイド・ネヘモス》が特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールドのモンスターを全て破壊します」
やがてその雄叫びは炎となって周囲に広がっていき全てを呑み込まんと互いのフィールドを焼き尽くさんと迫っていく。
「なんと!? クッ! ククク……」
その炎の海に呑まれる自身の《インターセプト・デーモン》を尻目に紅蓮の悪魔のしもべは堪え切れないように笑い始める。
「アヒャヒャヒャヒャ! 残念、残念! これで《インターセプト・デーモン》の効果から逃れようとしておられるのでしょうが――」
《インターセプト・デーモン》がいなくなれば神崎は攻撃の際にダメージを受けることはなくなる為、神崎は一気に攻勢に移ることができる。
紅蓮の悪魔のしもべの策を踏破すれば――との前提が付くが。
「このカードで逆に己に止めを刺す結果になっちゃうんだYO! チェーンして罠カード《ナイトメア・デーモンズ》をワタシの《インターセプト・デーモン》の1体をリリースし、発動!」
神崎の放った逆転の一手を嘲笑う紅蓮の悪魔のしもべの笑い声に合わせてケタケタと笑う黒い影が3つ神崎のフィールド目掛けて迫る・
「この効果により貴方サマのフィールドに3体の『ナイトメア・デーモン・トークン』を特殊召喚します! ですが~このカードは破壊された際にコントローラーへと1体につき800のダメージを与えちゃいます!」
それは白髪に細い黒の身体を持つ3体の悪魔。ただし、その悪魔は主に牙剥く可能性を持つ裏切りの兵。
「そう! もうお判りでしょう――この3体は直ぐに貴方サマの《インフェルノイド・ネヘモス》に破壊されちゃうんだYO!」
その3体の『ナイトメア・デーモン・トークン』は早速とばかりに神崎に止めを刺すべく《インフェルノイド・ネヘモス》の放つ炎に飛び込んでいく。
「最後は自爆で自滅! 滑稽な最後になりましたねぇ!」
これで破壊された3体の『ナイトメア・デーモン・トークン』の効果によって1体につき800――合計2400ポイントの効果ダメージが神崎を襲い、その残り僅かなライフを刈り取る。
筈だったが、《インフェルノイド・ベルフェゴル》が紅蓮の悪魔のしもべの発動された罠カード《ナイトメア・デーモンズ》のカードをその爪で貫いた瞬間にその黒い身体とカードが溶けるように消えていく。
それに伴い3体の『ナイトメア・デーモン・トークン』の身体も崩れていった。
「…………あれ? あれれ?」
自身の放った必殺の罠が神崎を殺す筈だったにも関わらず、未だ健在な相手の姿に紅蓮の悪魔のしもべは現実感なくそう零す。だがタネは簡単だ。
「《インフェルノイド・ネヘモス》は1ターンに1度、自分フィールドのモンスターをリリースすることで魔法・罠の発動を無効にし、除外することが可能です」
そう、これは罠カード《ナイトメア・デーモンズ》の発動が無効化された為、3体のトークンが呼び出されなかっただけのこと。
「《インフェルノイド・ベルフェゴル》をリリースして罠カード《ナイトメア・デーモンズ》の発動を無効にし、除外させて頂きました」
「なんと!?」
つまり神崎のライフを削ることは叶わず、残った《インターセプト・デーモン》も《インフェルノイド・ネヘモス》の放った炎に呑まれ、破壊される。
「グッ!? ワタシのモンスターが!?」
自軍のモンスターが全て消え去り、壁となるモンスターを失った紅蓮の悪魔のしもべは顔を歪ませるも――
「ですが! 『インフェルノイド』は自軍のフィールドのモンスターレベルが8以下でなければ後続を呼ぶことは出来ません!」
《インフェルノイド・ネヘモス》のレベルは10――よって大半の『インフェルノイド』の持つ特性からこれ以上新手が並ぶことはない。
つまり己のライフを削り切るには至らない事実に紅蓮の悪魔のしもべは余裕を見せて嘲笑の笑みを浮かべる。
だが神崎はそんな言葉などに興味も示さずセットされたカードを発動させた。
「セットしておいた永続魔法《煉獄の虚夢》を発動。これにより元々のレベルが2以上の『インフェルノイド』モンスターのレベルは1になります。代わりに相手への戦闘ダメージが半分になってしまいますが――」
そして白い石造りのクリフォトの木の図形が大地からせり上がり、そこから発せられる光が《インフェルノイド・ネヘモス》から発せられるプレッシャーを幾分か和らがせていく。
《インフェルノイド・ネヘモス》
星10 → 星1
「――大した問題じゃない」
戦闘ダメージの問題も、墓地に眠る『インフェルノイド』の数を考えれば些細なことだ。
「墓地の2体目の《インフェルノイド・ネヘモス》、《インフェルノイド・アシュメダイ》、《インフェルノイド・シャイターン》を除外し――」
再び墓地に眠る同胞を喰らい、顕現するのは――
「墓地の《インフェルノイド・リリス》を特殊召喚」
蛇を思わせる長大な身体を持つ悪魔が白い翼を広げ、その身体から金属質な駆動音を鳴らす。
《インフェルノイド・リリス》
星9 → 星1
炎属性 悪魔族
攻2900 守2900
「《インフェルノイド・リリス》が特殊召喚に成功した時、互いのフィールドの『煉獄』カード以外の魔法・罠カードを全て破壊します」
やがて《インフェルノイド・リリス》の身体から飛び出た九つの真空管のような物体からレーザーが放たれ、フィールドの魔法・罠カードを打ち抜いていく。
「ワタシのフィールドが焼け野原に!?」
これにて紅蓮の悪魔のしもべのフィールドは文字通りのがら空き。インフェルノイドたちの攻撃を遮るものは何一つとして存在しない。
ただ、その《インフェルノイド・リリス》が放ったレーザーは神崎のフィールドの魔法・罠カードも打ち抜くが――
「チェーンして発動したセットしておいた速攻魔法《煉獄の死徒》の効果により《インフェルノイド・ネヘモス》はこのターン相手のカード効果を受けない」
その1枚はチェーンして今、発動されたゆえに意味はなく、破壊されたのは永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》のみ――損害は軽微だ。
「墓地から3枚目の《インフェルノイド・ネヘモス》と2枚目の《インフェルノイド・リリス》を除外し、《インフェルノイド・アドラメレク》を墓地から特殊召喚」
そして墓地に眠る同胞を喰らい、次に現れたのは猛るように四肢を震わせて翼を広げる機械染みた身体を持つ悪魔――《インフェルノイド・アドラメレク》。
その《インフェルノイド・アドラメレク》は身体から炎を漏らし、敵対者である紅蓮の悪魔のしもべを見下ろす。
《インフェルノイド・アドラメレク》
星8 → 星1
炎属性 悪魔族
攻2800 守 0
「墓地の《インフェルノイド・ベルフェゴル》と《インフェルノイド・ベルゼブル》を除外し、墓地から《インフェルノイド・ヴァエル》を特殊召喚」
そして4体目のインフェルノイドたる槍を持った悪魔が翼を広げ、深い紫の金属板のような装甲の隙間から紫電を奔らせる。
《インフェルノイド・ヴァエル》
星7 → 星1
炎属性 悪魔族
攻2600 守 0
「《ネクロフェイス》を召喚」
最後に不気味な人形の頭だけが浮かび上がり、崩れた個所から肉塊がせり出す。
《ネクロフェイス》
星4 闇属性 アンデット族
攻1200 守1800
「召喚した《ネクロフェイス》の効果により除外されたカードを全てデッキに戻し、戻した枚数×100ポイント攻撃力が上昇」
そんな《ネクロフェイス》の不気味に脈動する肉塊から触手が伸び、除外されたインフェルノイドたちを取り込んだ後、残った命の木漏れ日が神崎のデッキに引き寄せられ、戻って行く。
「互いのデッキの戻したカードの合計は14枚――よって1400ポイントアップ」
それに伴い肉塊は体積を増し、人形の身体となって肉体美を示すようにポージングを取り始めた――不気味さが薄れた代わりに不快度がスゴイ。
《ネクロフェイス》
攻1200 → 攻2600
これにて神崎のフィールドには攻撃力2000オーバーのモンスターが5体。思わず後退りながら紅蓮の悪魔のしもべは小さく零す。
「ご、五体のモンスターが……」
「バトルフェイズへ移行。《インフェルノイド・ヴァエル》で直接攻撃」
だがそんな紅蓮の悪魔のしもべの様子など無視し、その手の槍を紅蓮の悪魔のしもべに突き立てるべく飛翔する《インフェルノイド・ヴァエル》。
「ですが! ワタシは手札から《バトルフェーダー》の効果を発動し――」
「《インフェルノイド・リリス》の効果発動。自分フィールドのモンスターをリリースし、モンスター効果の発動を無効にし、除外します」
その行く手を阻もうとした振り子の悪魔、《バトルフェーダー》も背後に佇む蛇のような体躯を持つ悪魔、《インフェルノイド・リリス》が同胞の血肉を糧に口から怨霊となった同胞を放つ。
「《ネクロフェイス》をリリースし、その効果を無効。そして除外」
ポージングを取りながら《バトルフェーダー》を異次元まで殴り飛ばした《ネクロフェイス》は満足気に消えた――これで《インフェルノイド・ヴァエル》の槍を遮るものはない。
「くっ! ならば墓地の罠カード《光の護封霊剣》を除外し、このターンのダイレクトアタックを封じます!!」
筈だったが、紅蓮の悪魔のしもべの背後から放たれた幾重もの光の剣がその槍を弾き、攻勢の出鼻を挫く。
しかし神崎に動揺はない。《クリバンデット》の効果で墓地に送られたカードはその超視力によって把握している。
――これで残る攻撃を防ぐ類の墓地のカードは0。
ゆえに紅蓮の悪魔のしもべには次のターンの防御手段は今のところ存在しない。好機だ。
「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へ――2枚目の永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動し、カードを1枚セットしてターンエンド」
また前のターンと同じように永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》を発動しターンを終えた神崎。
だがフィールドの状況は大きく異なる。
紅蓮の悪魔のしもべのフィールドには何もなく、神崎のフィールドには4体の『インフェルノイド』たちに加え、永続魔法《未来融合-フューチャー・フュージョン》による次弾も見える――盤面は一気に覆された。
そんな事実に地団駄を踏みながら紅蓮の悪魔のしもべは怒りを見せる。
「クッ、グググググッ! ただの器の分際で!! 紅蓮の悪魔も怒っておられますぞー!!」
さらにその紅蓮の悪魔のしもべの言葉に違わず、背後に朧気ながらに浮かぶ紅蓮の悪魔が放つ咆哮は怒りに満ちていた。
「ワタシのターン! ドロー まずはスタンバイフェイズに墓地の《ブレイクスルー・スキル》を除外し、《インフェルノイド・ネヘモス》の効果をこのターン無効にさせて貰うYO!!」
そんな主従の怒りを示すように墓地からカードが発動されオーラが噴出する。
やがて竜のような身体に纏わりつくオーラに不快気に身体をくねらせて怒りの雄叫びを上げる《インフェルノイド・ネヘモス》。
「そしてメインフェイズ1の開始時に魔法カード《強欲で金満な壺》を発動! このカードの効果によりワタシのエクストラデッキを3枚または6枚をランダムに裏側表示で除外します――ワタシは6枚のカードを除外!!」
緑の欲深い顔と黄金の下卑た表情の顔がそれぞれ浮かぶ壺が紅蓮の悪魔のしもべのエクストラデッキにかぶりつき、グチャグチャと6枚のカードを平らげる。
「そして除外したカード3枚につき、1枚のドローできる! 除外したカードは6枚! よって2枚ドローです!!」
やがて満足した表情で砕けていった《強欲で金満な壺》の後には2枚のカードが浮かび、紅蓮の悪魔のしもべの手元に戻る。
「魔法カード《死者蘇生》を発動! 墓地の《インターセプト・デーモン》を――」
そして十字架の元に墓地に眠るカードが呼び覚まされんとするが――
「チェーンして《インフェルノイド・ヴァエル》の効果を発動。自分フィールドのモンスターをリリースし、相手の墓地のカードを1枚除外する」
その前に、手に持つ槍で己を突き刺し、命を絶った《インフェルノイド・ヴァエル》はその身体を泥のような亡者へと変え――
「蘇生対象となった《インターセプト・デーモン》を除外」
道連れとばかりに《インターセプト・デーモン》を墓地より深い冥府へと送った。
――くっ、《インターセプト・デーモン》が!?
そう「計算が狂った」と内心で舌を討つ紅蓮の悪魔のしもべ――だが、まだ手は十二分に手札に残されていると次なるカードを繰り出す。
「ならば魔法カード《
宙に躍り出たカップ麺にライフを注げば、そこから煙が噴き出し――
紅蓮の悪魔のしもべLP:4000 → 3000
「《バロックス》を融合召喚だYO!」
青い身体に獣のような茶毛が伸びる悪魔が、大口を開けながら地の底から響くような笑い声を漏らす
《バロックス》
星5 闇属性 悪魔族
攻1380 守1530
「さらに墓地の2体目の《ヘルウェイ・パトロール》を除外し、効果を発動します! ワタシの手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスター1体――3体目の《ヘルウェイ・パトロール》特殊召喚しちゃうYO!」
最初のターンの焼き増しとばかりに左右に角の生えたヘルメットを被ったライダースーツの悪魔2体、並走しながら紅蓮の悪魔のしもべのフィールドに迫る。
そして1台のバイクが走り去った後、もう1体のバイクが停止し、エンジン音を唸らせる。
《ヘルウェイ・パトロール》
星4 闇属性 悪魔族
攻1600 守1200
「ワタシは《バロックス》と《ヘルウェイ・パトロール》をリリースしてアドバンス召喚!!」
だがすぐさま《バロックス》と《ヘルウェイ・パトロール》が贄として炎に呑まれ、次なる一手へと繋がれる――これぞ紅蓮の悪魔のしもべの最後の一手。
「怒りは炎となり貴様を喰い尽くすであろう!」
やがて紅蓮の悪魔のしもべの怒りを示す様に猛る炎は巨人の如き巨大な姿を形どっていき――
「来たれ! 紅蓮を冠する炎の悪魔! 《絶対服従魔人》!!」
その巨体で神崎を見下ろすのは顔に五つの目玉をぎょろつかる鬼の如き形相を見せる巨大な赤い悪魔――《絶対服従魔人》。
その巨躯は神崎が見上げる程に巨大だ。
《絶対服従魔人》
星10 炎属性 悪魔族
攻3500 守3000
「ククク……アハハハハハ! この力の前では貴方のインフェルノイドも雑魚同然!!」
その《絶対服従魔人》の攻撃力は3500と、神崎のフィールドの最大の攻撃力3000を持つ《インフェルノイド・ネヘモス》を上回る。
「最後に墓地の《スキルサクセサー》を除外し、《絶対服従魔人》の攻撃力を800アップ!」
更にダメ押しとばかりに紅蓮の悪魔のしもべによって発動されたカードにより、《絶対服従魔人》の全身から熱気の如く赤いオーラが滾り、周囲を圧倒する姿はまさに神の如く。
《絶対服従魔人》
攻3500 → 攻4300
「バトル! やっちゃいな! 《絶対服従魔人》!!」
紅蓮の悪魔のしもべの声に《絶対服従魔人》の巨体は揺れ動き、巨大な腕がインフェルノイドたちに迫る。
その《絶対服従魔人》の拳の一撃によってその身を貫かれた《インフェルノイド・ネヘモス》の身体が炎となって爆ぜる。
「アヒャヒャヒャヒャ! これで残りライフ1000の貴方は終わりです!」
この戦闘で発生するダメージは1300――紅蓮の悪魔のしもべの言う様に、神崎にそのダメージを防ぐ術はなく、残り僅かだったそのライフの灯火は消えるだろう。
炎となって爆ぜた《インフェルノイド・ネヘモス》の残照が風に乗って天に昇り、地下神殿に深紅の空を広げた。
だがその業炎の空はいつまでたっても消えず、ライフが尽きる筈の神崎も動きがない。
「……アヒャ?」
さすがにおかしいと勝鬨の笑いを止めた紅蓮の悪魔のしもべを見下ろすように業炎の空は《インフェルノイド・ネヘモス》の姿を象っていく。
「これは一体……」
「罠カード《火霊術-「
紅蓮の悪魔のしもべの疑問に答えるようにそう返す神崎のフィールドには赤い髪を揺らす霊使いの少女、《火霊使いヒータ》が杖をビシッと相手に向けている。
そんな相手のフィールドの光景に紅蓮の悪魔のしもべは震える声で呟く。
「そ、そんなカードがあるのなら、なぜ今のタイミングで――」
3000ポイントのダメージを与えることが出来るのならば、魔法カード《
なにも《絶対服従魔人》をアドバンス召喚し、紅蓮の悪魔のしもべが展開を終えるまで待つ必要はない筈だと。
しかし神崎は小さく首を振る。
「貴方の最後の手札が不確かだったので」
――使用したカードが全てOCGカードだからといって、此方が知らないカードを所持していない証明にはならない。
神崎の考えはシンプルだった。
神崎は超常的な存在とデュエルする際は常に相手のカードに「自身の知らないカード」がある可能性を想定する――彼らは「カードの入手」の仕方の時点で普通とは一線を画しているのだから。
今までの相手が全て「OCGカード」を使っていたとしても、その考えは変わらない。むしろバトルシティで「三幻神」という例外を体感した以上、その警戒心は跳ね上がっている。
今回の場合も、紅蓮の悪魔のしもべの最後の手札が「バーン効果を跳ね返す」カードであれば目も当てられない。
「そ、そんな理由で――」
「終わらせましょうか――リリースした《インフェルノイド・ネヘモス》の元々の攻撃力は3000。よって3000ポイントのダメージが貴方を襲います」
わなわなと震える紅蓮の悪魔のしもべを余所にそう突き放すように返した神崎の言葉を合図に、新たに紅蓮の炎の身体を得た《インフェルノイド・ネヘモス》が翼を大きく広げ咆哮のような音を発しながら紅蓮の悪魔のしもべを焼き尽くさんと迫る。
「ただの器風情にィイイイイ」
やがてその業炎に身を焼く紅蓮の悪魔のしもべの声だけが遺跡の中に響いた。
紅蓮の悪魔のしもべLP:3000 → 0
デュエルの終了と共に消えていく炎のフィールドを余所に紅蓮の悪魔のしもべは力なく零す。
「負けちゃったYO……申し訳ありません、我が主……」
そうして半覚醒状態で背後に佇む自身の主、紅蓮の悪魔スカーレッドノヴァへと向き直り、頭を下げる紅蓮の悪魔のしもべ――その胸中は重い。己の不手際で自身の主に手間を取らせてしまうのだから。
「それでは我らは貴方サマに一体なにを助力すれば――」
やがて神崎へと振り返り、ヤレヤレ顔を向ける紅蓮の悪魔のしもべに差すのは黒い影。
その神崎の足元から伸びた影はいつのまにやら地下神殿全体を包み込むように這われており、ウゾウゾと蠢く影の合間からは歪な黒い牙が今か今かと焦がれるようにガチガチと音を鳴らし、眼球が何処を見る訳でもなくギョロギョロと忙しなく視線を彷徨わせる。
「こ、これは一体、どういった意図があるのでしょう……」
明らかな異常事態に恐る恐ると言った具合に尋ねる紅蓮の悪魔のしもべ。
だが何も語らない神崎。
「我らが盟主! なにか言ったら――」
そんな神崎に嫌な予感だけはヒシヒシと感じていた紅蓮の悪魔のしもべに向けて、返答代わりとばかりに影が一斉に紅蓮の悪魔スカーレッドノヴァに向けて殺到した。
「――
咄嗟に己が主に手を伸ばす紅蓮の悪魔のしもべの悲痛な声が周囲に木霊する。
彼ら主従に待ち受けるのは果たして――
(冥界の)王者と悪魔、今ここに交わる!!
今作の紅蓮の悪魔のしもべデッキはアニメの「黄泉シリーズ」を参考に――
何と言えば良いのか……「攻撃強要バーン」?
原作再現を目指し過ぎたあまりに、些か受動的過ぎるデッキに……
ちなみに切り札は未OCGカードである『黄泉の邪王 ミクトランコアトル』を意識し、
同じレベル10の悪魔族モンスターの中から攻撃力の近い《絶対服従魔人》をチョイス。
とはいえ、「自身の手札0」+「フィールドに己のみ」の場合でしか攻撃できないデメリットアタッカーな為、基本は「相手に攻撃させて返り討ちにする要員」。
うーん、全体的にパッとしない分を解消できなかったなぁ……(´・ω・`)ショボーン
こんな半端な再現デッキになってしまって申し訳ない<(_ _)> ペコリ