マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
ブラック・マジシャン・ガール「たたかえ……もっと多々買え……」

杏子「うぅ……」

ダーツ「人は心の闇には打ち勝てぬ弱き者たちでしかない――さぁ、その愚かさに従い多々買い続けるがいい!」




DM編 第9章 ドーマ編 逆転の一手
第150話 精霊の鍵


 

 

「起動」

 

 そんな『ダーツ』の呟きと共に彼の手の甲から伸びた歪な形の『鍵』が光り輝き、周囲を覆う。

 

 その直後、すぐさま神崎の拳が扉のあった筈の場所に振るわれ、何やら破裂音が響いた後に遅れて突風が吹き荒れるがその拳は何も捉えてはいない。

 

「さて、これでキミは私と対峙する道しかなくなった訳だ」

 

 剛腕を振り切った神崎に向けてそう語るダーツの姿に動揺は見られず、ただただ自然体である。いつものサイズに戻って行く神崎の腕を見てもそれは変わらない。

 

「相変わらずの身体能力だな――驚嘆に値するよ」

 

 そう軽口を零せる程にその心は平静だった。

 

 ダーツとて神崎のデュエルマッスルによるぶっ飛んだアレコレは幾度となく見た光景なのだから――さすがに慣れる。とはいえ、「ソレ」に慣れてはいけない気もするが。

 

 

 そんなダーツの平静を余所に神崎は全身のデュエルマッスルをボコボコと脈動させているが、そこから動きを見せない――その姿に常日頃の神崎らしさは皆無だ。

 

 いつもの神崎なら未だにデュエルの動きを見せないダーツに「デュエルの意思なし」と判断して殴りかかってもおかしくないにも関わらず、相手の一挙手一投足の見定めに留めている。

 

 

 どうした神崎。いつものお前はもっと輝いていたぞ。

 

 

 そうして動きを見せない神崎の視線の先はダーツの背後に向けられていた。

 

 

 そこに佇むは、白い球体を繋ぎ合わせたような巨躯を持つ天使。その背には複数の色のプレートで組み上げられた翼を広げ、眼下の神崎を見下ろす姿は何処か既視感が溢れるもの。

 

「…………これは参りましたね」

 

 その既視感の正体を誰よりもよく理解できてしまう神崎は慣れ親しんだ物理的解決にも移れない。その為、デュエルマッスルを抑え、所謂「待機モード」に移行させる。

 

 

 やがて打つ手が殆どない状態に神崎は内心でパニックになりながらもいつもの調子で振る舞うが、その内心を抜きにしても今の状況は想定外過ぎた。

 

 ダーツの背後に佇む巨大な機械染みた天使の姿は神崎もよく知っている――レベル12の儀式モンスター《崇光なる宣告者(アルティメット・デクレアラー)》。

 

 手札コストを代償に相手の行動を封殺する厄介な効果を持つモンスターだが、今回はその効果自体はあまり問題ではない。問題はその姿そのものだ。

 

 

 それに加えてダーツの手の中で揺れる「鍵」の姿を見れば、この《崇光なる宣告者(アルティメット・デクレアラー)》の存在が「どういったものか」など神崎には一つしか思いつかない。

 

 そんな神崎の内心を見透かしたようなダーツの声が閉鎖空間の中に響く。

 

「何を驚く? 『最上級の精霊の鍵』の核に使われる原材料――『オレイカルコスの欠片』は我が神の力である以上、私ならば精霊の鍵を模造することが可能なことは明白だろう」

 

 そのダーツの言葉と歪な形の鍵の取手部分に光る緑の石――『オレイカルコスの欠片』の存在が全てを物語っていた。

 

 この《崇光なる宣告者(アルティメット・デクレアラー)》は「最上級の精霊の鍵」によって構成されたアバターとしての姿なのだと。

 

 そして呼び出されたアバターとしてのモンスターのレベルはデュエルモンスターズにおけるカードに記載された最高レベルの「12」だ。

 

 精霊の鍵におけるレベルの高低による違いはレベル1~4の下級、レベル5、6の上級、そしてレベル7~12最上級の括りしかない為、レベル12であっても性能が上がる訳でもないが、実際に目の当たりにすれば何やら言葉にならぬ圧迫感を感じさせる。

 

 

 そんな物言わぬ圧迫感に晒されている神崎は現在かなりピンチだ。

 

 神崎がドーマの傘下のものから奪――もとい譲り受け、最上級の精霊の鍵に利用することでつい最近まで奥の手として使いまくっていた力が、そっくりそのまま敵であるダーツに利用されている状況がそこにあるのだから。

 

 ちょっと前に廃棄したのが裏目に出た。といっても使い続ける訳にもいかない事情があったが。

 

 そうして精霊の鍵が使われた以上、神崎は《崇光なる宣告者(アルティメット・デクレアラー)》の進行に従わなければならない。

 

 

『問問うううううう問うう問問問問問問如何に如何何何如何何何い争争い争い争望望望むむ望む望む問う問問う問ううううう問問』

 

 だが全身を小刻みに振るわせながら壊れた機械のような声を発する《崇光なる宣告者(アルティメット・デクレアラー)》の姿にダーツは落胆した様子で溜息を一つ吐く。

 

「ふむ、やはり疑似人格が上手くいかないか」

 

 ダーツのその言葉に僅かに光明を見出す神崎。その言葉を信じるのならダーツの持つ精霊の鍵は「不完全なものである」ことの証明に他ならない。

 

 そもそも精霊の鍵は豊富なオカルトグッズに加え、「馬鹿じゃねぇの?」なレベルの投資と、ツバインシュタイン博士クラスの頭脳があって初めて生み出せるものだ。

 

 前者二つは大国の国家予算に匹敵する財力を持つパラディス社の総帥であるダーツには容易く用意できたとしても、最後の頭脳面には大きな壁が立ちはだかる。

 

 過去のダーツが如何に優れた王であり、多芸だったとしても、専門的な知識に関してはツバインシュタイン博士と比べればどうしても劣る現実があるからだ。

 

 でなければ、あんな色んな意味で危なっかしい人物を神崎は重宝しない――思想の過激化の原因は神崎の助力? …………気にしちゃダメだ。

 

 とはいえ、不完全ながらに精霊の鍵を再現できているだけでダーツの頭脳が十分以上にヤバいレベルであることが証明されている。普通に『閉鎖空間の構築』だけでも十二分に脅威だ。

 

「『デュエルエナジー』――デュエリストの魔力(ヘカ)の衝突の際に僅かに発生する未知のエネルギー」

 

 やがてダーツは神崎を値踏みするような視線を向けながら独り言のように語る。

 

「この未知のエネルギーが神々の奇跡を遥か古代から生み出してきた根源という訳か。実に興味深い」

 

 それは遥か太古の時代では「神の所業」とされてきた超常的な現象に対し、科学的な見地からメスを入れるに等しい。まさに神々の領域を地に落とす所業と言えるだろう。

 

 だが、そんな神への冒涜とも取れる行いに対し、オレイカルコスの「神」を信奉している筈のダーツは何処か楽し気だ。

 

「そしてオレイカルコスの神の力が宿る欠片をその未知のエネルギーで制御下に置くとは……中々に面白い試みだ」

 

 ダーツの語るように「オレイカルコスの欠片」は文明を数世代後のレベルまで一気に押し上げる程の実用性を秘めた代物であるが、そこには相応以上に重大な欠陥――いや、「罠」がある。

 

 それは「使い続ければある日突然、使用者を『理性なき化け物に変貌させる』」といった致命的なまでのデメリットが存在するのだ。

 

 

 それもその筈、この「オレイカルコスの欠片」は地球の意思が人間を試す為に生み出した産物――人間は己が欲望を律することが出来るのかと。

 

 遥か古代の国家「水の都アトランティス」の王であったダーツはその恩恵と代償に見舞われ、オレイカルコスの神の啓示を受けて己が故郷を亡ぼす決断を取るに至った悲劇を生んだ。

 

 

 将来的に確実な破滅をもたらす時限式の爆弾。それがオレイカルコスの欠片の正体。

 

 ゆえに神崎は爆発する前に破棄した――セコイ。

 

 そんな背景を余所にダーツは神崎を今一度見やり告げる。

 

「とはいえ、『無謀』と言いたくもなる――もう少しでKCが化け物の巣窟になるところだったというのに」

 

――えっ? ……えっ?

 

 そうしてサラッとダーツから語られた想定外の事実に神崎は内心で一瞬呆けるも、すぐさま何でもないように軽口を返すが――

 

「それは危ないところでした。対処が間に合って何よりです」

 

「ああ、そうだな。もう数か月ほど遅ければ手遅れだっただろう」

 

 神崎の想像以上に現実はギリギリだった――地雷原でタップダンスを踊る所の話ではない。

 

「………………ええ、間に合って本当に良かったです」

 

――ツバインシュタイン博士の(バー)を見ながら査問した甲斐があった……

 

 とはいえ、此処で慌てふためく訳にもいかないと、パニックのフィーバーを続ける胸中に喝を入れ、平静で対応する神崎。ポーカーフェイスこと営業スマイルは慣れたものだ。

 

「一時的な産物とはいえ、見事なものだよ」

 

 そんな相手の内心も知らず、ダーツは最後に神崎へと興味深そうな色が籠った視線を見せる。

 

 一時的とはいえ、オレイカルコスの欠片を制御せしめたシステムこと「最上級の精霊の鍵」への興味は尽きない。

 

「キミに対する評価を見直さねばならないな」

 

 満足気にそう語るダーツだが、神崎の内心を知ればひっくり返りそうな評価だ。

 

「かけたまえ。安心してくれていい――今すぐキミをどうこうする気はない」

 

 やがて不敵な笑みを見せるダーツは穏やかな姿勢は未だ、変化はない――だとしても、神崎からすれば何一つ安心できる材料がないが。

 

「まずは話し合おうじゃないか」

 

 やがてそのダーツの提案に内心のおっかなびっくりな様相を隠しながら神崎は対面側の席に座るが、その途端に頭上から耳障りな音が響く。

 

『選択選ぶ選び選選び選ま択しょう選何をどを択方ちら法望み望む勝負争い望む法選問問ううう問選勝選び望む争い選選選争い方勝負望択選選む選』

 

 その正体は、ギチギチと音を立てて身を揺らし、狂ったような言葉を落とす《崇光なる宣告者(アルティメット・デクレアラー)》の姿。

 

 その身体はボロボロと崩壊を始めており、それに伴い周囲の空間も軋みを上げていた。どう見ても先は長くはない。

 

「さすがに騒がしいな――解除」

 

 ゆえに仕方がないとダーツが軽く指を鳴らすと共に閉鎖空間が解除される――が、そこは先程までいた会議室ではなく、巨大な石室のような神殿。

 

 

 その神殿の床や壁一面にびっしりと埋め尽くされた石板の一つ一つにオレイカルコスの神に魂を捧げられた者たちの姿が彫られている。

 

「我が神を祭る神殿へようこそ――此処に誰かを招いたのは久しぶりだよ」

 

 精霊の鍵による閉鎖空間から、オレイカルコスの力による長距離転移の合わせ技を見せるダーツ。

 

 精霊の鍵の模造が不完全であっても、その『不完全さ』を利用した一手に神崎は完全に逃げ場を失う。これではパラドックスの時のように増援を呼ぶことも出来ない。

 

 

 

 だが、それでも周囲の様子をそれとなく窺いながらどうにか逃げる術を模索する諦めの悪い神崎はダーツの注意を逸らすべく会話に乗る。

 

「……随分と急なご招待ですね」

 

「そう警戒しなくてもいい。キミが私の三銃士集めを妨害したことは気にしてはいない」

 

 神崎の内心の警戒を見透かすようにダーツは語るが当人から「怒っていない」と言われて、納得できる筈もない。神崎はそれだけのことをダーツにしてきたのだから。

 

 立場が逆ならば神崎は何が何でも排除に動く――ゆえに信じられない。

 

「キミと私の目的は一致している」

 

「一致?」

 

「少しは話を聞く気になったようだな」

 

 だが続くダーツの言葉に神崎の思考は一瞬止まる。神崎からすればどのあたりが一致しているか皆目見当が付かない。

 

 ダーツの目的である「現人類の淘汰」と、神崎の目的である「平穏に暮らす」――結構対極に位置するのではなかろうか?

 

 その神崎の思考の空白の隙間を縫う様にダーツは語り始める。

 

「キミの妨害によって私が三銃士集めに失敗した段階で手を引かせて貰った。あれ以上続けても此方に利はない」

 

 ドーマの三銃士とは、ご存知の通り――ラフェール、ヴァロン、アメルダの3人のことだ。

 

 原作にてダーツは彼らの身に悲劇を演出し、それにより彼らの心の闇を増幅させて己の陣営に引き込み、自身の手駒としていた。

 

 ちなみにダーツは最初から彼らを最終的に神の贄へと捧げる腹積もりだったが、今は関係ないので割愛しよう。

 

 

 ようは神崎が思いっきり邪魔したので、ラフェールは普通に家族と共に暮らしており、残りの2人は出稼ぎとばかりにオカルト課に放り込まれていることがハッキリしていれば良い。

 

 つまり、神崎は結果的にダーツと敵対する意思を既に見せているのだ。

 

「そうですか……それで態々私などを罠にかけた貴方の目的は?」

 

 にも関わらず、今の今までダーツ側からの報復がなかったことを不審に思っていた神崎からすれば、「随分と回りくどいことするなー」である。

 

 ダーツの圧倒的な力を鑑みれば彼我の実力差は歴然だ。下手に搦め手を用いるより真正面からぶつかられる方が神崎としてはかなり困る。

 

 例えば『ダーツのオカルト的な力を神崎に向けて全力でぶつける』といった真正面からの殴り込みをすれば――

 

 当然、神崎が抱える冥界の王の力を「大衆に見せる」ような状況も自然に生まれ、後は勝手に遊戯たちが討伐する流れになりかねない。

 

 なお、「搦め手」であっても困らない訳ではない。どのみち神崎のピンチではある――悲しい。

 

――精霊の鍵を破棄した途端にこの状況か。どの程度まで探られていたのか……穏健な対応を見るに冥界の王の力はバレていないようだが……

 

 分からないことだらけな現在の情報を胸中で纏める神崎だが、ピタリと当てはまるものは浮かばない。

 

 神崎にはダーツの目的が見えなかった。今まで戦ってきたような「シンプルに神崎をぶっ殺す」ことを目的にしていた相手とは少々違う気配が感じられる程度だ。

 

 ダーツがその気なら、もっとやり様があろうことは明白である。

 

「そう焦ることはない――と言おうともキミが安心できないであろうことは理解している。ゆえに本題から語るとしよう」

 

 そんな神崎の内心を見透かすように語るダーツは一度言葉を区切り、その「本題」を明かす。そう、それは――

 

 

 

 

「神崎 (うつほ)――取引をしよう」

 

 

 

 

――? 何故、そうなる?

 

「随分と突然なお話ですね……」

 

 神崎からすれば謎の提案だった。ダーツが何故、その選択に至ったのかその経緯が想像付かない。謎が一つ増える。

 

「私から提示する対価はキミが求めてやまない――」

 

 ゆえに内と外で疑問を呈する神崎だが、ダーツは気にした素振りも見せずに――

 

 

 

 

 

 

 

「――『安寧』」

 

 神崎の核心を突いた。

 

 

 先程まで訝しんでいた神崎の瞳が僅かに見開かれる。

 

 誰も辿り着かず、そして信じないであろう神崎の望みを当てて見せたダーツ。それはダーツが神崎の内面をかなりの精度で見抜いていることに他ならない。大した中身はないが。

 

「おや、『何故知っている』――そんな顔だね」

 

 神崎の僅かな表情の変化に小さく笑みを浮かべるダーツは続ける。

 

「簡単な推理だよ。キミの行動は一見すると出鱈目で、行動基準が分からない――いや、掴ませない」

 

 小さく笑みを浮かべるダーツは饒舌な調子を見せた。

 

 過去、神崎によってダーツは自身の三銃士集めが妨害されてから「神崎 (うつほ)」という人間を観察し続けたゆえに辿り着いた答えが面白くて仕方がない様相が見える。

 

「そして人の心の繰り言が得意なキミは自身の歪な人間性を全面に押し出し、上手くカモフラージュしていたようだが――」

 

 その過程でダーツが垣間見たもの。それは――

 

「キミの全ての行動を見比べた時、僅かに違和感が――不自然な点が見受けられた」

 

 拭えぬ違和感。

 

 誰もが神崎の表面上に見える歪んだ人間性にばかり目が向き、誰もが意識の外に置いていたものだった。

 

 

 

 

 

――いや、大体不自然だった気がするけど……うん、思い返しても中々に強引に事を運んできている。よく乗り切れたな……

 

 とはいえ、神崎からすれば「今更」な話だったが。「原作知識」を活用するも、解決策が脳筋的な手段ばかりな以上、不自然さは言わずもがなである。

 

 悲しいことに神崎に要領よく問題を解決するだけのスペックはない――というか、あるのなら彼の人間関係が「孤立無援」と言わんばかりの状況になど陥ってはいない。

 

 神崎とて一応は自覚していた――自覚しているのなら、改善して欲しいものだ。

 

 

 そうして内心はともかく、表層は沈黙を保つ神崎へダーツは興味の視線を向けつつ語る。

 

「キミは常に自身を安全圏に置きたがる。だが特定の状況ではその前提が崩れ、自身を鉄火場に置くことを厭わなかった」

 

 これが傍から見た神崎に垣間見える大きな矛盾。

 

 自己保身の塊のような神崎の在り方だが、その割にはよく危険地帯に飛び込んでいる。

 

 死の商人であった過去のKCしかり、紛争地帯しかり、凶悪犯罪者たちの対処しかり、ダーティーな世界しかり、血も涙もない人の皮を被った者たちの相手しかり――例を上げればキリがない。

 

 その例を一言で括るとすれば――

 

「それが世界の安寧を乱すものに対して――それがどんなに小さな綻びでもキミは酷く過剰に対応するきらいが見える」

 

 ダーツの語るように「世界の安寧を乱すもの」と評することが出来るだろう。しかし、そんなダーツの言い様に神崎はとぼけて見せる。

 

「ただの英雄願望かもしれませんよ?」

 

「フッ、冗談は止せ――キミはこの星という名の自身の住処を守りたいだけだろう?」

 

「随分とスケールの大きな住処ですね」

 

 何だかんだで神崎の本質から微妙にズレつつも、その内実に迫りつつあるダーツに対し、頑張って誤魔化そうとする神崎だが――

 

「それは仕方のない話だ――キミの敵が『世界』に手をかけるのだから」

 

 誤魔化せはしない。ダーツは己の確信に従い神崎の内心を紐解いていく。

 

 

「戦争をビジネスに考える人間は世界中の何処が戦場になろうとも気にはしない」

 

 気にして貰わないと困る為、《もけもけ》軍団とマッスルの力とKCの諸々のアレコレを利用し、頑張った――お陰で一時期ヒットマンに狙われていたが。

 

 なお、神崎に狙われていた自覚はあんまりない。彼の規格外のデュエルマッスルの前に膝を折った者が多かったらしい。

 

「破壊衝動に支配された千年アイテムの所持者は目につく人間を手あたり次第に害するだろう」

 

 害されると面倒な為、闇マリクは闇のゲームでデリートし、表のマリクとリシドも既に刑務所の中で「奪った過去は変えられずとも、未来への再出発の手助け」として償いの一つの形として賠償金をせっせと稼いでいる。

 

 なおその過程でイシズからいらぬ恨みを買いまくった。売却は不可である。

 

「そして私はこの世界をリセットしようとしている」

 

 リセットされては困る為、折を見て世界中のデュエリストの中から最強格のデュエリストたちを集めてダーツを集団でフルボッコに「して貰う」計画があったのだが、今の状況ではおじゃんであろう。

 

 神崎の「戦いは(質を備えた)数だよ、兄貴ィ!」作戦は不発に終わった。無念。

 

「そんな世界の危機に対する矛として、盾として、キミは『神秘科学体系専門機関』――通称『オカルト課』を組織した」

 

 だが、これに関しては少し違う。その「原点」はお金儲けの為である。稼がなければ過去のKCの社長であった剛三郎に首切りされるかもしれなかったからだ――神崎の物理的に強靭な首が切れない? そう言う意味じゃないから。

 

 

「『人の力』と、『異能の力』によって世界の安寧を担う組織の前身として」

 

 そう己の推察を告げるダーツに神崎は穏やかな笑みを浮かべるばかりで何も返さない。

 

――も、餅つけ。じゃなかった落ち着け。

 

 というか、何も返せない――ぶっちゃけかなり深いところまで突かれたゆえに返す言葉がない。文字通り言葉を失っている。その内心はアホ丸出しなことを考えていたが。

 

 

 神崎は将来的に5D’s時代にあった組織、警察内部に組織される治安維持部隊「セキュリティ」と、

 

 不思議な力を持つ所謂「異能者」を保護する団体たる「アルカディアムーブメント」への介入を予定している。

 

 

 神崎としても、人間であることを放り投げてしまった実情がある以上、「老い」の問題からいつまでも表の世界にいれば怪しまれるのは必至な為、定期的に姿を消す必要があるゆえだ。

 

 

 だとしても、「姿を消している間の原作介入はどうするのか?」という問題がある為、上述した二つの組織への介入を以てことを成す予定である。

 

 神崎には「介入を止める」という選択肢は既にない。パラドックスの時の一件で未来が変わりまくっている以上、手をこまねくことは下策であると感じている理由がある。他にもあるが、今は関係ないので省略させて貰おう。

 

 

 そんな未来予想図を現実逃避気味に考えつつ、タップリと時間をかけて自身の動揺を抑えた神崎はゆっくりと口を開く。

 

「成程。貴方の目的は――」

 

「ああ、神秘科学体系専門機関、オカルト課を動かせる立場を持つ――」

 

 相手の言葉に割り込むようにスッと立ち上がったダーツは神崎の元に近づいて手を差し出し――

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミが欲しい」

 

 

 なにやら勘違いされそうな申し出がなされた。

 

 

 

 

 

 






┌(┌^o^)┐ 「ヒロイン現る(違)」




――と冗談はさておき、

ダーツ様の華麗なる逆転劇、第一幕「手駒がないなら、山ほど持っている相手を自軍に引き込めば良いじゃない」の巻き


此処からダーツ様の華麗なる逆転劇は続いていくで!( ´∀`)bグッ!





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