マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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平成最後の更新が間に合わなかったよハルトォォォォ!!(ノД`)・゜・。




前回のあらすじ
取り合えずお墓を2人分予約しておくウラ……





第152話 許せないヤツがいる

 

 

 まるで「キミは知り過ぎた」と言わんばかりの神崎の言葉にもダーツは動じず、軽口を以て返そうとするが――

 

「それは光栄に――」

 

 ジャランと鎖の鳴る音と共に神崎が何処からか取り出した『光のピラミッド』から放たれた闇が周囲を覆い、ダーツを呑み込まんと迫った。

 

 

 話術で誤魔化すのかと思いきや、まさかの闇のアイテムによる強硬策に踏み切った神崎。

 

「フッ、千年アイテムの力か……だが、無駄だ。オレイカルコスの力の前では意味をなさない」

 

 しかし対するダーツが指を一つ鳴らせば光のピラミッドから漏れ出た闇は綺麗サッパリ晴れてしまう。

 

「ただの確認ですよ」

 

 そうして余裕を崩さないダーツだが、神崎も表面上は何でもないように振る舞った。これは「小手調べ」だと――実際は奥の手だが。

 

「ほう、確認か」

 

「ええ、出来ればこのまま尻尾を巻いて逃げ帰りたかったのですが、どうやらそうもいかなくなったようなので試せるだけ試しておこうかと――悔いは残したくないですから」

 

 興味あり気に弱者の足掻きを眺めるダーツへ神崎は色々言葉を重ねつつ次なる手を打とうとしていた。

 

「此方としても貴方と『直接戦う』選択は避けたかったのですが……何事も思う様にはいかないものです」

 

 そう、もはや神崎に「戦わない」選択肢はない。

 

 世界に対し、神の視点――安く言えば『メタ的な視点』を持つということは言葉のように安くはない。

 

 アホ――ゴホン、脳筋な神崎ですらメタ的な知識――原作知識により大きな改変を起こしているのだ。それを頭脳明晰なダーツが行えばその危険性は語らずもがなである。

 

 

 しかしそうして戦う意志を見せる神崎にダーツは語り合いを止める気はないとポツリと零す。

 

「『悔いを残したくない』……か。未だに過去を引きずっているようだな」

 

「何のことでしょうか?」

 

「なに――キミが私の過去を調べたように、私もまたキミの過去を調べたに過ぎない」

 

「……一体、何のことでしょう」

 

 それは神崎の拭えぬ過去(心の闇の根源)――誰もがさして重要視しなかった神崎の心の内。

 

「キミが『救えなかった人間』の話だよ」

 

「凡庸な私が全てを救えるなどとは始めから思っていませんよ」

 

 ゆえに一石を投じた。

 

 

 

「知識の中ではキミの両親の存在は『無価値』だったようだな」

 

 

 神崎の心を大きく揺らす巨石を。

 

 

 変化は劇的だった。

 

「初めて此方を見たな」

 

 その言葉通り、ダーツへと真っ直ぐ視線を向けた神崎の顔からいつもの貼り付けた笑顔が傍と消え、

 

「どんな気分だった? 大切な相手が『知識』の中においては路傍の石程度の価値すらなかったと知った時は」

 

「『何に価値を抱くか』なんて、人によって千差万別ですよ」

 

 続いたダーツの問いかけに、いつもの温和な声色もまた抜け落ちるように鳴りを潜める。

 

 

 ダーツの言う様に遊戯王ワールドにおいて、神崎の両親の立ち位置など端役も端役。主役(遊戯)を引き立たせることすらしない。

 

 

 ただ『その世界』にいるだけの存在。フレーム外の群衆の1人――いや、2人か。

 

 本来であれば文字通り「いてもいなくても問題のない人間」だ。

 

「本当にそうか? その知識の中に僅かでも情報があれば『死なずに済んだかもしれない』、『助けられたかもしれない』とは考えなかったのか? キミなら欠片程度の情報でも辿り着けた筈だ」

 

 そんな無価値な存在が「いつ死ぬか」など誰が気にするというのか。

 

 そうして続いたダーツの言葉に神崎は言葉を絞り出す。

 

「…………それは挑発のつもりですか?」

 

 

 幼少期の神崎は何の力も持っていなかった。

 

 成熟していた精神(転生の産物)以外は等身大の子供でしかなかった。

 

 無力な存在でしかなかった。

 

 ゆえに救えなかった過去を嘲笑っているのかと。

 

 

 だが違う。

 

「フッ、なに――『ただの確認』だ」

 

 これはダーツの確認作業に過ぎない。

 

「私にはキミが持つ『知識』の全容は分からない。しかしパラドックスの様子を見るに既に『本来辿るべき道筋(原作)』からは大きく逸脱し始めていることは明白」

 

 そう、ただダーツは確かめたかった。

 

「だが何故だ? 『知識』のアドバンテージを活かすのならば、改変は最低限に留めるべきなのは誰の目にも明らかだろう?」

 

 そうして続く説明の通り、原作からの変化が大きくなれば、当然「原作知識がアテにならなくなる」事態に見舞われる。パラドックスの一件からもそれは明白だ。

 

 少し考えれば誰にでも分かる理屈だ――それは神崎だってさすがに理解している。

 

「なれば程よく見捨てていくべきだ。『知識(原作)』を長く利用していく為にもな」

 

 未来の知識というアドバンテージを長く保たせるのなら、原作通りに動かしつつ要所々々で僅かに改変した方がより旨味を享受できる。

 

「だというのに、キミは『知識』を利用し、積極的に『観測された世界』を改変……いや、破壊している――何故だ?」

 

 だが、神崎はそれをしなかった。今までの神崎の行いは自身のアドバンテージを掃いて捨てているようなものだ。

 

「何が言いたい…………のでしょうか?」

 

「なぁに、そう難しい話ではない」

 

 ダーツは確認しておきたかった。

 

 

 

 

 

「――憎いのだろう? その知識の根源(原作知識)が、その観測された世界(遊戯王ワールド)が」

 

 

 

 神崎が己で蓋をした心の闇の根源を。

 

 

 遊戯王ワールドにおいて、神崎の両親の命など何の価値もなかった。

 

 2人が死のうが生きようが、世界(原作)には何一つ影響を与えない群衆(モブ)の中の非ネームドキャラ(名すら与えれていない存在)に過ぎない。

 

 原作において神崎の大切な人は「どうでもいい存在」だった。

 

 自身の大切な人間が世界に「無価値だ」と断じられれば、「ふざけるな」と思ってしまうのも無理からぬ話だ。ならば――

 

 

「『壊れてしまえ』と思う程に」

 

 

 そんな世界(原作)に配慮する義理など何処にもない。そう思うことは「悪」なのだろうか?

 

 未来を変える可能性は、生きる人々、一人一人の手に平等に存在する――そうだろう? 原作(本来の歴史)でも不動 遊星はそう言っていたじゃないか。

 

 

 ゆえにダーツは神崎に再度手を差し出す。

 

 

「ならば『壊そう』じゃないか――私たちの手で! この世界を! 完膚なきまでに!」

 

 ならば、変えてしまえ(壊してしまえ)

 

 星を、未来を、世界を。

 

「キミの大切な存在を否定したこの世界を!!」

 

 生きる人々の一人一人に平等に存在する権利(可能性)とやらで。

 

 彼ら(二人)を殺した世界(原作)を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……やはり貴方とは相いれそうにない」

 

 しかし拒否するように放たれた神崎のいつもの調子を戻した言葉がダーツの手を振り払う。

 

 その声色に何処かこれ以上の問答を望まないような色が見えるのは果たして気のせいなのか。

 

「……つれないな。だが考えてもみろ。私はキミと同じ視点に立てることは既に証明されている筈だ。合理性を重視するキミならば、今まで以上に――」

 

 そんな不明瞭な感情が乗った神崎の誤魔化すような話題転換にダーツは引き留めるように語り掛けるが、既に神崎の腹は決まっている。

 

 どれだけダーツが神崎の内面にかなりの精度で踏み込めたとしても、互いの思想の一点が致命的なまでに合わないのだ。

 

 そう、此処からはトラゴエディアのときのように平和的な――もとい、命のやり取りを行わずに済んだようにはいかない。

 

 もはや建設的なやり取りは不可能である。それもその筈、神崎はダーツとは違い――

 

 

「私は人の『可能性』を信じているもので」

 

 

 人間の可能性という力を信じていた――近場に否が応でも信じざるを得ない具体例(遊戯たち)に加え、

 

 自身が逃れられなかった死の恐怖の只中であっても変わらぬ想い(愛情)を持ち続けた無価値な弱者の存在が、神崎に人の可能性を信じさせる。

 

「……フッ、『可能性を信じる』とは、意外とロマンチストだな」

 

「そうでしょうか? 私は『可能性』の力を持つ者たちを知っています。彼らの存在を見れば『人もそう捨てた者では無い』と思えますよ――それに貴方が『無価値』と断じた2人も、私に……かけがえのないものを残してくれました」

 

「若いな。私とて『そう』思っていた時期もある」

 

 話題の矛先を逸らされたダーツだが、思わず飛び出た神崎の青臭い答えに嘲笑を返す。そんなものはダーツに取って「夢見がちな思想」だと断ずるほかない。

 

「遥かなるいにしえ――1万年を超える長きに渡って私はこの世界を見てきたが、世界の腐敗は留まることを知らず、人間は過ちを繰り返し続けている……もはや『人間という種』の限界はとうに見えているのだ」

 

 何故なら、それは幻想に過ぎないのだと他ならぬ歴史が証明してしまっている。それがその歴史を文字通り己が目で見続けてきた者が悟った世界の真理だった。

 

「この石室を見渡してみるがいい。これまで多くの賢者と呼ばれる者たちが、キミのように『可能性』とやらを信じて心の闇から逃れようと苦悩し、打ち勝つ術を見出してきた」

 

 この一室を見渡す限りに存在する心の闇を克服できず、オレイカルコスの神に囚われた者たちの末路である『魂を封じた石版』が何よりの証だ。まさに「人の愚かさの証明」と言えよう。

 

 彼らは過去にその運命から抗おうと足掻いたが――

 

「だが皮肉にも彼らが証明したのは『人が心の闇に打ち勝てるのは、ほんの一時でしかない』という残酷な現実だった」

 

 全ては無駄だったとしか思えぬ結果が残っただけだった。

 

「心の闇に打ち勝ち続けるには人の心はあまりに弱く、儚い」

 

 弱さは時として罪である。その現実は神崎も幼少時、まざまざと突き付けられた。

 

「ゆえにオレイカルコスの神を降臨させ、腐敗した人間どもを滅ぼし、新しい人間を作り上げなければならない」

 

 もはや「可能性」などという曖昧な尺度を夢見ていられる段階は通り過ぎたのだと。

 

「今の人は、世界は、終焉に向けて堕ちていくことしか出来ない――それこそがこの世界の真実なのだ」

 

 それこそが世界の残酷な真実。

 

 真実から目を背けようとも、世界は何も変わらない。変えられない。

 

 ならば受け入れる他に道などありはしない。

 

「それは違いますね」

 

「……なんだと?」

 

 だが、此処で珍しく明確に断言するような神崎の否定の言葉にダーツはその動きをピタリと止める。眼の前の若造が一体なにを言うつもりなのかと。

 

「この世界は――」

 

 しかし神崎はこの世界(遊戯王ワールド)の揺るがぬ真実を知っている。

 

 それは何よりも絶対的で、何よりも無慈悲で、何よりもシンプルで、そして――

 

 

 

「『全てがデュエルによって左右される世界』です」

 

 何よりも狂っていた。

 

 

 ゆえに今一度神崎はその狂気に身を晒す。

 

 勝ち目など殆どないだろう。可能性など論ずるに値しない程に僅か。しかし無策ではない。

 

 そう、神崎はあの日から生きる為に戦い続けることを誓った。そうだ、神崎は『戦わなければならない』――そう、生きる為に。

 

「フッ、交渉は決裂か」

 

 これは一本取られたと小さく笑みを浮かべるダーツは指をパチンと一鳴らしてテーブルや椅子の類を消し去り、

 

「しかし、カードの叫びに耳を傾けないキミがデュエルとは……まぁいい」

 

 何処か呆れたような言葉と共に神崎からデュエルに適した距離を取る。

 

「仕方がない。キミの魂をオレイカルコスの神に捧げ、抜け殻となったその身体を私が有効活用するとしよう」

 

 やがて腰のホルダーから青銅を思わせる色合いの特注のデュエルディスクを腕に装着しつつ、あらぬ誤解を招きそうなことを語るダーツ。

 

「さぁ、キミの言う様に(いにしえ)より受け継がれてきた魂を懸けた闘いの儀式――デュエルを始めようじゃないか」

 

 そしてその言葉と共にダーツのデュエルディスクが起動し、まるで死神の鎌のようなボード部分が展開された。

 

 そうして自身がデュエルの準備を整える間、追従するように数あるデッキから一つを選びデュエルディスクにセットした神崎を確認したダーツはデュエリストとして牙を剥く。

 

「汝、魂を捧げよ」

 

 これから行われるのは神への生贄を処す儀式。

 

「 「 デュエル!! 」 」

 

 その命懸けの一戦の火ぶたが切られ、先攻・後攻の選択権を得たダーツはさして悩むことなく――

 

「では先攻は私が貰おう――私のターン、ドロー」

 

 先攻を選ぶ。相手の実力の底を既に知っているのだ。様子見の必要もない。

 

「スタンバイフェイズに私は手札の《黄金の天道虫(ゴールデン・レディバグ)》の効果により、自身を公開することでライフを500ポイント回復する」

 

ダーツLP:4000 → 4500

 

 手始めにダーツの周囲をクルリと舞った黄金の虫の癒しの輝きの中、ダーツは手札の1枚を神崎に見せつけるように指に取る。

 

「そしてこのカードを発動させて貰おう」

 

 それはダーツの、オレイカルコスの神の象徴たるカード。

 

「漆黒の闇より生まれしカードよ! 我が手に天命の力を!」

 

 やがてダーツが天に掲げたカードは眩い光を放つ。

 

「発動せよ! 《オレイカルコスの結界》!」

 

 その光は地面に六芒星に似た陣となって敷かれ、二人のデュエリストを閉じ込めるようにドーム状にオーラが広がって行く。

 

「これで敗者の魂はオレイカルコスの神に捧げられる。もはやお前に逃げ場など無いと悟るがいい」

 

 やがて広がった《オレイカルコスの結界》が足元を怪しげな光で灯す中、ダーツは神崎を挑発するようにそう告げつつ、自身の手札の一枚へと手を伸ばす。

 

「さてデュエルに戻ろう。まずは魔法カード《コア濃度圧縮》を発動――私は手札の魔法カード《コアキメイルの鋼核》を見せ、手札の『コアキメイル』モンスターを捨てて2枚ドローする」

 

 だが、そうしてダーツの使用したカードに神崎は内心で疑問符を浮かべた。

 

――『オレイカルコス』シリーズではなく、コアキメイル?

 

 それはダーツのデッキが原作とは大きく異なっていたゆえ。その変化はアヌビスの時とは比べものにならず、もはや『全く別のデッキ』と言える程の差だった。

 

 これに関しては、オレイカルコスシリーズが1枚しかOCG化されていないからどうしようもないんだ……無力な私を許してくれ……

 

 と、そんなことは置いておいて――

 

「私は《コアキメイル・テストベッド》を捨て2枚ドロー」

 

 神崎の思考を置き去りにしながら《コアキメイルの鋼核》が赤く染まり、鼓動の如き脈動を見せるに伴い、ダーツもデッキの呼応に応えるようにカードを引き抜いた。

 

「続けて2枚目の魔法カード《コア濃度圧縮》を発動! 手札の《コアキメイル・ウルナイト》を捨て2枚ドロー」

 

 次に引いた2枚のカードの内の1枚をダーツは早速使用し、先と同様の光景が繰り返されて行く。

 

「まだだ、3枚目の魔法カード《コア濃度圧縮》を使用し、《コアキメイル・ウルナイト》を捨て2枚ドロー」

 

 都度3度の墓地肥やしとドローを軽く行って見せたダーツ――羨ましい程のドロー力である――は此処からだとばかりに動きを見せる。

 

「そして魔法カード《ソウル・チャージ》を発動! 自分、墓地のモンスターを任意の数だけ復活させ、その数×1000のライフを失う。私が呼び戻すのはこの3体――」

 

ダーツLP:4500 → 1500

 

 1ターン目にも関わらず己のライフが大幅に減少することを一切躊躇わないダーツが呼び出すのは――

 

「舞い戻れ、《コアキメイル・テストベッド》! そして2体の《コアキメイル・ウルナイト》! 共に《オレイカルコスの結界》の効果を受け、攻撃力が500ポイントアップ!」

 

 コアキメイルの鋼核を緑のアーマーで覆い四脚で支える戦闘兵器が背中から伸びたコードの先の黄色い機械の瞳を無機質に揺らす《コアキメイル・テストベッド》と、

 

《コアキメイル・テストベッド》

星4 地属性 岩石族

攻1800 守1800

攻2300

 

 ケンタウロスを思わせる姿をした2体の機械魔獣こと《コアキメイル・ウルナイト》が盾と剣を鏡合わせに構え、眼球代わりの赤いモノアイを光らせるが――

 

《コアキメイル・ウルナイト》×2

星4 地属性 獣戦士族

攻2000 守1500

攻2500

 

 突如として、その3体の額に浮かび上がるオレイカルコスの結界の文様が彼らをダークモンスターへと変貌させ、その瞳に狂気の赤を宿らせる。

 

 

 これこそが《オレイカルコスの結界》の力の一部。単純な攻撃力の強化とはいえ、一切の制限のないそれは中々に厄介だ。

 

「魔法カード《ソウル・チャージ》を発動したターンはバトルを行うことは出来ないが、今は先行1ターン目、些細な問題だ」

 

 そうしてドローと併用して墓地に送っていた3体のコアキメイルを展開したダーツはその内の2体を指さし宣言する。

 

「此処で2体の《コアキメイル・ウルナイト》の効果をそれぞれ発動! 手札の《コアキメイルの鋼核》を見せ、デッキから《コアキメイル・ウルナイト》以外のレベル4以下の『コアキメイル』モンスター1体を特殊召喚する」

 

 そんなダーツの声に従い剣を天に掲げた二体の《コアキメイル・ウルナイト》。やがてその個所を起点に宙に異次元の扉を開く。

 

「私は2体の《コアキメイル・ウルナイト》のそれぞれの効果によりデッキから2体の《コアキメイル・クルセイダー》を特殊召喚!」

 

 そこから現れるのは銀の西洋甲冑に身を包んだ剛腕さを窺わせる2体の巨躯の重戦士な獣戦士、《コアキメイル・クルセイダー》。

 

 そして2体の《コアキメイル・クルセイダー》の額にも先程の同胞たちと同じようにオレイカルコスの文様が輝き、剣と盾を掲げながら内から溢れ出る力のままに狂ったような雄叫びを上げた。

 

《コアキメイル・クルセイダー》×2

星4 地属性 獣戦士族

攻1900 守1300

攻2400

 

「そして永続魔法《大胆無敵》を発動し、次に魔法カード《手札抹殺》を発動! 互いは手札を全て捨てて、捨てた枚数分ドローだ。私は2枚の手札を捨て、新たに2枚ドロー」

 

「なら私も5枚の手札を捨て、その枚数分ドローします」

 

 5体のモンスターを展開したにも関わらずダーツのデッキの回転は落ちる様子は見られないが、今の神崎にはそんなことよりも重要なことがあった。

 

――此処までのデュエルを見るに、相手のデッキはトークンか? となると、あのカードも多分OCG仕様だと思うが……

 

 原作から大きく変化を受けたダーツのデッキの精査である。今、使用しているデッキが問題なく作用しなければ神崎に待つのは魂を奪われる結果のみ。

 

 何せ、今の神崎のデッキはかなりピーキーな仕様なのだから。

 

「この瞬間、墓地に送られた《闇より出でし絶望》の効果を発動――このカードが相手の効果で手札・デッキから墓地に送られた際に、自身を特殊召喚します」

 

 そんな心配を余所に伸びに伸びた神崎の影から――

 

「《闇より出でし絶望》を攻撃表示で特殊召喚」

 

 闇が噴出し、巨大な闇の魔人となって神崎を守るべくコアキメイルたちの前に立ちはだかった。

 

《闇より出でし絶望》

星8 闇属性 アンデット族

攻2800 守3000

 

 闇の中で光る《闇より出でし絶望》の瞳がコアキメイルたちを射抜く中、ダーツは感心するように息を吐く。

 

「ほう、私のターンにも関わらずモンスターを呼び出したか。成程、お前も誰と闘っているか分をわきまえているようだな」

 

 それは神崎の足掻きに対する評価――相手の微妙なドロー力を知っているがゆえのものだが――

 

――いえ、偶然です。悲しいことに……

 

 実態は神崎の内心の声が示すように、いつもの通り初手でもたついていただけである。

 

「しかしこの瞬間、永続魔法《大胆無敵》の効果が適用される。お前がモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚する度に私のライフは300回復する」

 

ダーツLP:1500 → 1800

 

 そんなことなど知る由もないダーツはその程度は読んでいたとばかりに失ったライフを補填しつつ、盤石の盤面を敷くべく仕上げにかかる。

 

「最後にカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 攻撃力が2000越えのモンスターを自軍のフィールドに並べられる最大数の5体展開しきったダーツ。

 

 それだけではなく2枚のセットカードまで用意する徹底振りは例え相手がどれ程の弱者であっても全力をかける獅子の如き強靭さが感じられる。

 

 だが高いステータスを持つ「コアキメイル」モンスターたちには大きなデメリットがあった。

 

「このエンド時に《コアキメイル・ウルナイト》と《コアキメイル・クルセイダー》は手札の自身と同じ種族のモンスターを公開するか、魔法カード《コアキメイルの鋼核》を捨てなければ自壊する」

 

 彼らはその力の代償として定期的なエネルギーこと維持コストが必要な個体が多いのだ。

 

「今の私の手札は0――当然、どちらも行うことは出来ない。よってこの4体のモンスターは露と消える結果が待つ」

 

 しかし今のダーツにその維持コストを支払う術はない。ならばコアキメイルたちが辿るのは自壊の道のみ。

 

 《コアキメイル・テストベッド》以外の4体のコアキメイルたちの身体がピシピシとひび割れていき、最後はガラス細工のように粉々に砕け散るが――

 

「だがこの瞬間、《コアキメイル・テストベッド》の効果が発動する!」

 

 その砕ける寸前に《コアキメイル・テストベッド》の身体から突如として伸びた数多のケーブルが件の4体のコアキメイルたちに接続された。

 

「自身の『コアキメイル』モンスターがエンドフェイズに破壊された時、自身のフィールドに『コアキメイルトークン』の特殊召喚が可能!」

 

 すると、やがて砕け散った4体のコアキメイルたちの残骸から同様のケーブルがウジャウジャと這い出し、新たな命を生み出すかの如く形を成していく。

 

「私は自壊した4体のコアキメイルの数だけ『コアキメイルトークン』を特殊召喚! そして《オレイカルコスの結界》の力を得る!」

 

 そうして生まれたのは《コアキメイル・テストベッド》と不気味な程に同じ姿をした4体のトークン。

 

 彼らは新たに生まれ変わった事実に歓喜の声を上げるように歪な音を盛大に鳴らした。その額にはオレイカルコスの文様が輝いた。

 

『コアキメイルトークン』×4

星4 地属性 岩石族

攻1800 守1800

攻2300

 

 ターンを終え、盤石の布陣を整えたダーツは静かに語りだす。

 

「お前のターンが始まる前に教えておこう。《オレイカルコスの結界》には私のフィールドに2体以上モンスターが存在するとき、最も低い攻撃力を持つモンスターを相手の攻撃から守る効果がある」

 

 こうして自身の扱うカード効果を教えるのは強者としての余裕なのか。それとも離れた位置であっても気合いでカードテキストを確認してくる神崎への牽制なのか。

 

「成程、今の貴方のフィールドには『同じ攻撃力』を持つモンスターが5体存在する」

 

「そうだ――つまりお前は私のモンスターを攻撃することは叶わない」

 

 成程と自身が確認したテキストと相違ないことに頷く神崎を見る限り後者の意味合いが強そうである。

 

 

 やがて「どう動いたものか」と考える神崎は自身の手札を再確認するが――

 

――さして動けないな……

 

 相変わらずのまるで成長が見られない手札であった。

 

 手札にドローソースがあれど、言ってしまえばそれだけの手札。

 

 デュエリストとしての一歩を踏み出すべく外法染みた試みすら手を出したというのに、その足掻きの成果は何一つみられない。

 

 この通常ドローでまともなカードを引かなければ次のターン、コアキメイルたちになぶり殺される未来とてあり得る。

 

「では私のターン、ドロー」

 

――これなら……次に引くカード次第か。

 

 そうして己の命運がかかった通常ドローで引き込んだのは今の手札では壁にするしかない下級モンスター。いきなり打つ手なし――とはまだならない。

 

「スタンバイフェイズに墓地に存在する《死霊王(しりょうおう)ドーハスーラ》の効果発動」

 

 ダーツが必ず発動するであろう《オレイカルコスの結界》を見越したカードがあるのだ――なお、墓地に送っておく必要があったが、ダーツによってその問題もクリアされている。完全に相手頼りな有様だ。

 

「フィールド魔法が表側表示で存在する場合、このカードは互いのスタンバイフェイズに墓地から守備表示で特殊召喚できる」

 

 大地を砕き、地の底から舞い戻るように現れるのはいくつもの巨大な生物の頭蓋を鎧のように纏う死霊の王。

 

 半身から伸びる双頭の蛇の足が獲物を探す様に揺らめく中、右の手の巨大な杖を地面に叩きつけ、己が威容を示す。

 

死霊王(しりょうおう)ドーハスーラ》

星8 闇属性 アンデット族

攻2800 守2000

 

 今回の神崎のデッキはパラドックス戦での保守的過ぎた構築を反省し、若干の攻め気味の構築がなされている。

 

 自己再生能力持ちとはいえ、若干「重さ」を許容し、その分だけパワーのあるカードを頑張って盛り込んであるのだ。

 

「フッ、《オレイカルコスの結界》に対抗する為のカードか――だが、相手モンスターが特殊召喚されたことで永続魔法《大胆無敵》の効果によりライフを回復させて貰おう」

 

 しかし対するダーツはその程度の小細工では揺るがないとばかりに着実にライフを回復していく。

 

ダーツLP:1800 → 2100

 

「魔法カード《強欲で金満な壺》を発動。エクストラデッキのカードを6枚ランダム除外し、デッキからカードを2枚ドローします――そしてこのターン、私はドローすることが叶いません」

 

 そうして手札の唯一の望みであった欲深き顔と成り金顔が貼り付いた壺をぶっ壊し、手札を補充するが――

 

 

――……微妙。 動けるだけマシと……考える他ないな。

 

 劇的に良くなっている訳ではないが、「あ、これ死んだわ」と言う程に絶望的でもないリアクションに困るもの。攻めの構築にしたのが此処に来て――というか、早速悪い意味で響いている。

 

 やはり大人しめのデッキにしておくべきだったかと、若干の後悔を感じる程だ。

 

 

 しかし最初のターンにてダーツが放った魔法カード《手札抹殺》のお陰もあって、動けなくはない。

 

「魔法カード《ブーギートラップ》を発動。手札を2枚捨て、墓地の罠カードを1枚自分フィールドにセットします。私は墓地の罠カード《絶滅の定め》をセット」

 

 足元から水が噴き出し、墓地から罠カード1枚を神崎のフィールドに押し上げる。そうしてセットされたカード名の不吉さは気のせいではあるまい。

 

「この効果でセットした罠カードはセットしたターンに発動可能です。早速、罠カード《絶滅の定め》を発動――その際にライフコストを2000支払います」

 

神崎LP:4000 → 2000

 

 やがてその不吉さを示す様に発動されたカードの効果によって天――といっても、室内ならぬ遺跡内だが――に暗雲が立ち込める。

 

「罠カード《絶滅の定め》の効果により、発動後の3回目のバトルフェイズ終了時に互いのプレイヤーは自分フィールドのカードを全て墓地に送らなければなりません」

 

 それは文字通り絶滅の定め――確約された破滅の未来。

 

 その未来の前には強固な耐性を持つ三幻神ですら抗うことは許されない。そしてそれは当然――

 

「フッ、《オレイカルコスの結界》を恐れたか」

 

 オレイカルコスの力――1ターンに1度の破壊耐性を持つ《オレイカルコスの結界》とて例外ではない。

 

 それがOCG効果ではなく、原作での強力無比な効果であってもだ――――多分。

 

 しかしこの変えられぬ未来の破滅をもたらす《絶滅の定め》を覆す方法が一つだけ存在する。

 

「だが、3度目のバトルフェイズまでお前が立っていられるかな?」

 

 それがプレイヤーである神崎の死――3度目のバトルフェイズを迎えなければ破滅は訪れない。

 

「そうならないことを願います」

 

 とはいえ、神崎とて「それ」は重々承知である為、全力で抗う。何としてもダーツには破滅して貰わなければならない。思考が完全に悪役である。

 

「私は先程、墓地に送った《馬頭鬼(めずき)》の効果を発動――墓地の自身を除外し、墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚します」

 

 やがて神崎が手を突き出した先の地面が巨大な斧によって断ち切られ、そこからまさかり担いだ金太――もとい、馬の頭を持つ地獄の鬼が顔を出し、冥府よりの客人をお送りする。

 

「墓地より《冥帝エレボス》を特殊召喚」

 

 そして冥府と言ったらこのお方、とばかりに黒き重厚な鎧を纏った帝王が髑髏をあしらった玉座に威圧感タップリに座した。

 

 隣に守備表示で佇む《死霊王(しりょうおう)ドーハスーラ》を意識しているようにも見える。

 

《冥帝エレボス》

星8 闇属性 アンデット族

攻2800 守1000

 

「だがその特殊召喚の瞬間、永続魔法《大胆無敵》の効果によりライフを回復させて貰おうか」

 

 そうして神崎がモンスターを展開すれば展開する程にダーツはライフを回復させていく。

 

ダーツLP:2100 → 2400

 

 数値の上では300と微々たるものだが、数が重なれば無視できないものとなるだろう。

 

「魔法カード《クロス・アタック》を発動」

 

 だがそんな神崎の声に自軍の死霊王と冥帝を挑発するように大地に両の手を叩きつけ、グワッとその巨体を躍らせる《闇より出でし絶望》は「我こそは」とばかりに気合の乗った咆哮を上げた。

 

「自身のフィールドの同じ攻撃力を持つ2体の攻撃表示モンスターを選択――このターン、一方の攻撃権を放棄することで、もう一方のモンスターは相手プレイヤーに直接攻撃が可能に」

 

 そんな張り合う3体のモンスターの攻撃力は全て同じ「2800」――つまり《クロス・アタック》の効果を問題なく受けられる。

 

 ただ《死霊王(しりょうおう)ドーハスーラ》は守備表示の為、今回は条件から外れるが。

 

 

 ゆえに攻勢に出るべく神崎は動き出す。

 

「バトルフェイズへ移行し、《闇より出でし絶望》の攻撃権を放棄し――」

 

 顎で指図する《冥帝エレボス》を無視して《闇より出でし絶望》がダーツを直接ぶっ飛ばしに行こうと雄叫びを上げるが、突如ピタリと止まり神崎を振り返る。

 

 そんな2体のモンスターの胸中を評するのなら「えっ、今なんて?」といったところか。

 

「魔法カード《クロス・アタック》により《冥帝エレボス》でプレイヤーに直接攻撃」

 

 気を取り直して玉座から頬杖をついていた《冥帝エレボス》は気怠い様子で指をパチンと鳴らすと――

 

「少しは知恵を絞ったようだな」

 

 そう呟くダーツの背後から闇色の槍が対象を射殺さんと迫る。だが対するダーツは振り向きもせずに嘲笑を見せた。

 

「――だがその程度の一撃が私に届くとは思わないことだ」

 

 そして余裕を崩さないダーツの背を貫く筈だった闇色の槍は不可視の障壁に阻まれ届かない。

 

「永続罠《スピリットバリア》を発動させて貰った。その効果によって自分フィールドにモンスターが存在する限り、バトルによって発生する私へのダメージはゼロとなる」

 

 発動されたセットカードの1枚の効果を述べるダーツに対し、何処か歯がゆさを感じさせる動きを見せた《冥帝エレボス》――己が一撃を止められたことが不服らしい。

 

「ではバトルフェイズを終了――これで《絶滅の定め》の1回目のカウントがなされます。そのままメインフェイズ2へ移行して、《闇より出でし絶望》を守備表示に変更」

 

 出鼻を挫かれた神崎だが、セットカードの1枚が分かれば儲けものとばかりに堪えた様子もなく、《闇より出でし絶望》もそんな神崎を守るべく闇の身体を盾とする。

 

《闇より出でし絶望》

攻2800 → 守3000

 

「後は……そうですね。モンスターをセットし、カードを1枚セットしてターンエンドです」

 

 やがて少し考え込んだ後、神崎は手札を1枚残して全てをフィールドにセットし、ターンを終えた。

 

 今回も相手のダーツが圧倒的に格上である以上、出し惜しみなどしていられない。とはいえ、デュエルにおいて神崎が出し惜しむことが出来た試しなど殆どないが。

 

 状況が状況ゆえに内心でハラハラしている神崎だったが、ダーツは自身のターンとなったにも関わらず、ドローする様子も見せずにポツリと零す。

 

「所詮はこの程度か。やはりと言うべきか、パラドックスとのデュエルから何も成長していないようだな」

 

 その言葉から感じられる感情は失望――ではなく、何処か呆れに近い。

 

「そんな有様では運命の歯車からは逃れられぬ。素直に天命を受け入れるが良い」

 

「耳の痛い話ですが、凡夫は凡夫らしく最後までみっともなく足掻かせて頂きますよ」

 

 そうして見切りをつけるように続けるダーツに対し、相手との埋まらぬ差を痛感する神崎は表層だけでもと平静を装う。神崎は常に『そう』して来た。

 

 己の弱さを隠す為に。

 

 強くある為に。

 

 もう二度と大切な『――』を失わない為に。

 

「フッ、やはりお前は空虚だな。神崎 (うつほ)

 

 だがそうして平静を装う神崎にダーツはそう告げた。

 

 神崎の内など、心の機敏など、長き時を生きてきたダーツには手に取るように分かる。相手の言葉など必要としない程までに。

 

 ダーツから見た「神崎 (うつほ)」という人間は何処までも弱者だった。

 

 腕力といった物理的な力云々の話ではない。それは心の問題。

 

 神崎の心に「生き汚さ」はあれど「強さ」はない。その心は弱さと共にある。

 

 弱さゆえに恐怖し、弱さゆえに備え、弱さゆえに足掻き、弱さゆえに信じられず、弱さゆえに安堵できず、弱さゆえに力に縋る。

 

 神崎がどれだけ仮面で取り繕うとも、その心の内には常に恐怖の感情が渦巻いていた。

 

 アヌビスのデュエルの時も、冥界の王と対峙したときも、パラドックスのデュエルの時も、そして今、このデュエルの時も例外はない。

 

 

 それらは何よりも――

 

「その空虚さはデュエルにも表れている――お前のそれ(デュエル)はまるで『熱』が存在しない」

 

 神崎のデュエルが示していた。

 

 この世界においてデュエルは相手の心の内を言葉以上に雄弁に語ってくれる。

 

 役者(アクター)という仮面越しにマイコ・カトウが見抜いた神崎本人すら自覚のない本質が今、紐解かれていく。

 

「なんのことでしょう?」

 

「お前は理解出来ないのだろう? 他の人間(デュエリスト)の在り方が。そのデュエルが」

 

 そんなダーツの言葉に神崎の眉が僅かにピクリと動いた。

 

 

 この遊戯王ワールドにおいて、デュエルとは非常に大きな意味を持つものである。その重要性は神崎がいた世界では考えられない程に高い。

 

 その事実を神崎が理解出来ないと語るダーツだが、神崎とて全く理解出来ない訳ではない。多少のイメージは掴めなくもないのだ。

 

「そんな周囲の人間とのズレが、お前が無意識に他者を遠ざける要員となっている」

 

 しかし決して明確な実感は伴わない――その事実こそが問題なのだとダーツは語る。

 

 その問題こそ神崎のデュエルが、ドローが、そして人間関係が、上手くいかない原因の一つなのだと。

 

「お前のデュエルの空虚さの根源を当ててやろう。お前は――」

 

 ダーツが語る神崎の内に隠された、その正体は――

 

 

 

 

「『勝てば他はどうでも良い』のだろう?」

 

 

 神崎を全否定する代物だった。

 

 

 それが問題なのだとすれば、勝利をリスペクトするように、自己生存へ特化した生き方をしてきた神崎の人生の全否定である。

 

 

 

「……それが、そこまで『おかしなこと』だとは思えませんが」

 

「無自覚か……ならば断言しよう――『おかしい』とも。他の人間はそうは思わない。無論、この私でさえ」

 

 思わず目が点になりそうな表情筋を抑えつつ絞り出した神崎の言葉もやはりと言うべきか、ダーツに全否定される。そこには神崎を追い込むような意図が見えた。

 

 しかしダーツとて神崎を糾弾したい訳ではない。ただ事実を述べているだけに過ぎないのだ。

 

「デュエリストは当然勝利を求めるが、同時にその心の内に……そうだな、『こだわり』が介在する。どれ程までに僅かであってもな」

 

 ダーツが「こだわり」と評したそれは――

 

 

 勝利のみを追い求め、『勝利をリスペクトする』と断言した者も、

 

 実利のみを追い求め、己を『リアリストだ』と評した者も、

 

 魂の昇華の為にそれ以外を削ぎ落してきた者も、

 

 妹と仲間を取り戻す為、あらゆる躊躇いを振り切って足掻いた者も、

 

 効率を突き詰め、手段は選ばず、時に悪辣さをすら厭わなかった者も、

 

 

 この世界の誰一人として、その『こだわり』は捨てられない。

 

 

 だが何もそれは悪いことではない。むしろ良いことだ。その『こだわり』ゆえに彼らは己がアイデンティティを完全に見失うことがないのだから。

 

「だが、お前はそれを容易く捨てられる。躊躇なく、気にすらしない」

 

 しかし、神崎だけはこの世界において唯一『それ』を気にしない。

 

 気にする筈もない。何故なら、神崎にはこの世界の人間が当たり前に持っているものを持っていないのだから。

 

「理解が及ばないようだな。いや、『理解に至れない』だけか」

 

 それを言葉で評するのならデュエルに対する『熱』という他あるまい。

 

 神崎とて多少の好みの範疇であればなくはない。だが、それさえも状況次第では捨てられるものでしかなかった。

 

 

 

 人はデッキに、カードに、何処まで想いをかけることが出来るだろう?

 

 

 『結束の証』と評せるだろうか?

 

 『己がプライド』と評せるだろうか?

 

 『無二の相棒』と評せるだろうか?

 

 『絆の象徴』と評せるだろうか?

 

 『魂そのもの』と評せるだろうか?

 

 

 

「やはりお前は異端だよ、神崎 (うつほ)

 

 神崎は返す言葉を持たない。

 

 

 

 

 






~「ダーツが言った最後のアレは何が言いたいんだってばよ!」な方々の為の簡略化した説明~


パラド――匿名希望のQ:見るがいい! あらゆる時代から最強カードを集めた究極のデッキを!!

遊戯王ワールド風のA:なんという力だ……!!

OCGことリアル思考のA:ねぇ、もっと強いカードやテーマ使えば?


カルチャーショックですわ(真顔)


~今作のダーツのデッキ~
トークン軸のコアキメイル――「オレイカルコス」シリーズ添え

未OCGカード『オレイカルコス・ミラー』のトークンを生み出す能力の再現を重視したデッキ。

さらに唯一OCG化された「オレイカルコス」モンスターとのコンボも取れなくはない設計になっている。

というか、OCG化されたカードの方は効果が原作効果からかけ離れ過ぎてるんですけど……(遠い目)

???「許さねぇ……絶対に許さねぇぞ! K〇NAM〇イイィイィ!!」


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