マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
貴方の大切な人を救いたくはないですか?

そうですよね。救いたいですよね。それはもうどんな手を使ってでも救いたい。

その気持ち、よく分かります。私にも覚えがありますから。

彼は悪くないんですよね。本当は心優しい人なんですよね。存じております。変えられてしまったんですよね。理解しております。

彼を助ける力が欲しいですか? そうですよね。是が非でも欲しいですよね。なら願いましょう。欲しましょう。強く、より強く、地を砕く程に。

そんな貴方の願い(未練)が力になる。

そして示そうじゃないですか、貴方の愛を。

確かめようじゃないですか、彼の――







――(欲望)を。





第157話 ヒトデナシ

 

 

「アはハハはハはハハハはははハはハハはははハハはハはハははははハハははははハハはハははハはハはハはははハはハはハハはハはハはハハはハははははハハハはははハはハハはハはハはははハハはハはハはハハはハはハはハはハハははハはハはハはハはハハははハはハハはハはははハハはははハハはハハハはははハはハはハはハハはハはハはハはははハはハハハはははハはハはハハハはははハはハははハはハはハはハはハハはハはハはははハハ!!」

 

 

 オレイカルコスの神をその身に取り込んだ神崎は空に浮かびながら、赤く染まった片側の瞳で天を見上げつつ狂ったように嗤い声を響かせる。

 

 

 それは先の一戦を征したことによる高揚感ゆえ? 違う。

 

 それは更なる力を得た全能感ゆえ? 違う。

 

 それは人の滅びを願う神の意思に呑まれた破壊衝動ゆえ? 違う。

 

 それは世界の危機をまた一つ砕いた達成感ゆえ? 違う。

 

 

 

 

 

 それはきっと、己が嫌うデュエルを穢す(デュエルで殺し合う)存在により近づいてしまったゆえの自嘲染みたもの(嗤い)なのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 違う。

 

 

 その世界を嘲笑うかのような笑い声は神崎のものではない。それは神崎がその身に取り込んだ「オレイカルコスの神」のもの。

 

 

 数多の異形を喰らったことで、その心を歪めながら変質に変質を重ね、異形(自分たち)にとって都合よく形成された上質な器を得たのだ。笑みも零れよう。

 

 

 そうしてSAN(正気)値を彼方へシュゥゥゥーッ!! しつつ、超! エキサイティン!! な様相を神崎に浮かべつつ、その身体を乗っ取りつつあるオレイカルコスの神だったが――

 

 

『■■■■■■■■■■■■■■ッ!!』

 

 

 その神崎の心の部屋でもまた、黒い大蛇が同様に声にならぬ声を上げていた。

 

 

 

 この神崎の精神世界で超! エキサイティン!! している黒い大蛇は「オレイカルコスの神」の正体である星が持つ怨念――心の闇が生み出した化け物(モンスター)である。

 

 この存在はオレイカルコスの神の本体といっても過言ではない。まさに地球の心の闇の根源。

 

 そう、オレイカルコスの神は未だ朽ちてなどいない。この星に人間たちが行ってきたことへの怨念が尽きぬ限り、消滅することなど決してないのだ。

 

 その怨念はまさに星が消えぬ限り、途絶えぬ「呪い」染みたもの――死の外にある事象。

 

 

 原作では闇遊戯がその心の闇を引き受け、自身の心の奥底へと封印される結末を辿っていた――彼が王たる器を持つゆえにその闇を制することが出来たのである。

 

 

 だが、今回その心の闇を引き受けた――というか、強引に喰い千切ったのは自称小市民の神崎である。悲しいことに王の器などありようもない。

 

 

 このままではかつてのダーツのように星の心の闇に呑まれ、第二のダーツとなって世界へと、人へと牙を剥く邪悪となることだろう。

 

 

 そうして神崎のだだっ広いだけの不気味なほどに真っ白な心の部屋――精神世界にてポツンと立つ神崎本人へと叩きつけられるのは星の憎悪、星が「世界の、人の、ありとあらゆる存在の破滅を願う意思」そのもの。

 

 星の怒りが叫びを上げる。

 

 壊せ、砕け、破壊しろ、潰せ、滅ぼせ、崩せ、殺せ――響く意志は多岐に渡れど、その全てが「人を害せよ」と憎悪のままに悪意をばらまくものばかり。それらが怨嗟の渦となって響き渡り、人の心を塗り潰していく。

 

 そんな全てを壊してしまえとばかりに鳴り響き侵食する怨念が破壊衝動を誘発し、狂気となって精神世界に伝播する只中で――

 

 

 

「では、この星の浄化プランについてご紹介したいと思います」

 

 

 なんか始まった。

 

 

「まず1つ目のプランは『地球再生』プラン! このプランは読んで字のごとく――」

 

 

 なんか続くらしい。

 

 

 周囲に何処かで聞いたようなメロディが流れたような気がするが、空耳だ。この精神世界にそんな音声はない。

 

 そうして何処かの特徴的な高音トークが聞こえてきそうな雰囲気の中で神崎の説明が続くが、ポカンと呆気に取られたようにピタリと止まっていた星の怨念が仕事を思い出したかのように憎悪と狂気の波を再燃させる。

 

 それは神崎の主張など知ったことかと跳ねのけるようにも思えた。

 

 そんなオレイカルコスの神の怨嗟が神崎の精神を消し飛ばさんとうねりを上げる中――

 

「――お気に召さないようですね……では2番目のプラン『人類統制』プランをご紹介しましょう!」

 

 

 神崎は未だ、このアホな――もとい、不可解な行為を続ける気らしい。

 

 

 星の怨念をセールストークで受け止めるなどと、馬鹿じゃ――ゴホン、無謀と評すしかない蛮行を決行し続ける神崎だが――

 

 

 果たして本当に無謀なのだろうか?

 

 

 よくよく考えてみて欲しい。

 

 

 人の身では受け切れぬ怨嗟も、企業戦士(社畜)であれば受け切れるのではないだろうか?

 

 

 何を馬鹿なとお思いになるかもしれないが、聞いたことはないだろうか――「お客様は神様です」との言葉を。

 

 

 そう! お客様は神様なのだ!

 

 なれば、逆説的に本物の神様はお客様である!

 

 

 そんなお客様のご要望をお聞きすることが出来るのは企業戦士(社畜)に他ならない!

 

 

 王の器はなくとも、会社員の器なら此処にはある!!

 

 

 なれば、神崎も企業戦士(社畜)の一人として、この困難な商談(勝負)に立ち向かえるのではないのだろうか!

 

 

 そう! 邪神 VS 会社員! なんだか言葉の響きも似ている気がするぞ!!

 

 

 

 とはいえ、此処まで語っておいてなんだが「馬鹿じゃねぇの!」って思うけどな!!

 

 

 そんなこんなで神崎とオレイカルコスの神の熾烈な論争(ビジネス)が始まった――どういうことだってばよ。

 

 

 

 

 

 そうして、一体どれだけの時間が経っただろうか? 生憎、神崎の精神世界に時計はない為、正確な時刻は定かではないが――

 

 

「1395番目の『地球上から人類排除』プランもお気に召しませんか……では――」

 

 

 未だに弾切れの見せぬ神崎のビジネストークを見るに、かなりの時間が経過していることが容易に想像できた。脅威の1000番台である。

 

 そんな時間経過が原因なのか怨念を神崎の精神世界にぶちまけ続けた巨大な大蛇ことオレイカルコスの神にも疲れのようなものが見えた。

 

 どうか気のせいであって欲しい。頼む、気のせいだと言ってくれ。頼むから……

 

 

 やがて怨念をぶちまけていたオレイカルコスの神が初めて怨み辛みの感情以外を神崎へ向けた。

 

 それを訳すなら、「いつまで続けるつもりなのか」といった具合だ。

 

 オレイカルコスの神とて、もっとスピリチュアル的なバトルを望んでいるのだろう。

 

 ダーツの時のように自身の国を、民を、そして家族を、そんな愛するべき者たちへの想いで神の洗礼と言う名の洗脳に抗って貰った方が、「らしい」だろうと。

 

 此方はIFになるが、原作の闇遊戯のように全てを受け止める王の器を以て挑んで欲しいことだろう。

 

 なんだったら、デュエルでも構わないかもしれない。

 

 

 だが、残念ながら現実は神たる身にビジネストークで挑んできた神崎(アホ)の姿があるばかり。そんな相手に対する困惑がオレイカルコスの神から感じられるのは……此方もどうか気のせいであって欲しい。

 

 とはいえ、きっと初めての経験であろうと思われる為、困惑するのも無理からぬ話だ。しかし、神崎のビジネストークは――

 

 

「今のところ2万とんで964程、ご用意させて頂いております」

 

 序の口だった。しかも「今のところ」との言葉から時間が経てば経つほど増えていくようだ。悪夢のような現実だ。

 

 そう、「まだ神崎のバトルフェイズ(ビジネストーク)は終了していないぜ!!」状態である。

 

 

 此処に来てオレイカルコスの神の怨嗟(クレーム)の動きが全てピタリと止まった。何処か意識が現実から飛んでいるような有様は気のせい――であって欲しいが、悲しいことに気のせいではない。

 

 人らしく表現すればまさしく「ゑ?」と言った感じだろう。

 

「お客様にピッタリのプランをお約束します!」

 

 しかし社畜(神崎)は作り物めいた朗らか笑顔を向けつつデスマーチに戻る。誰にとっての「デス()」かは直に分かる。

 

「では1396番目のプランである『地球崇拝』のご説明に移らせて貰います。このプランの最大の特徴は――」

 

 

 その社畜アタックはどちらか一方の心が折れるまで続くまさに仁義なき戦い。

 

 

 では皆さん、お手を拝借。

 

 

 

 ドロー! モンスターカード(お客様にぴったりのプランをご提供します)!!

 

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 もう止めて! そう言ってくれる誰かは此処にはいない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて」

 

 やがて現実世界にてオレイカルコスの神殿の残骸に降り立った神崎は周囲に影を伸ばしながら空に浮かぶ古代アトランティスの都と共に周辺一帯を丸ごと呑み込んで証拠隠滅を図る。

 

 オレイカルコスの神? もう済んだことだ。そっとしておいて上げて欲しい。

 

 そして振り返った神崎は――

 

「――これで貴方との契約は果たされました」

 

 虚空に向かってそう告げた。何も神崎がおかしくなった訳ではない。元からおかしい――ゴホン、よくよく視線の先を見ればうっすらと人のようなものが何かを優しく抱き留めている姿が垣間見える。

 

 所謂、「霊魂」の類だ。

 

 その幽体の如き人影の正体は先の一戦でかなり酷い扱いを受けたダーツの妻、イオレ。

 

「いやぁ、それに関しては申し訳ない。貴方の『未練』――いや、願いである『夫の凶行を止める』為には必要であったことですので」

 

 当然、イオレも小さく怒りの感情を見せているが、そんな姿に神崎はそう言いつつ、申し訳なさ気に頭を下げる。かなり酷いことをしてしまったと。本当だよ。

 

 

 だが、神崎とて事情はある。

 

 神崎にとってイオレは「超常的な力を持ち、なおかつデュエルの実力も秀でていたダーツ」に対する唯一の鬼札である存在の為、最も効果的なタイミングで切る必要があったのだ。

 

 神崎がもっと有能であれば始めから使わずに済んだ鬼札ではあるが。

 

 

 とはいえ、原作では父と娘すら平然と手にかける(殺害する)ダーツに対して原作でもあまり語られていなかったイオレにそこまでの重要性があるのか? と疑問に思われる方もいるだろう。

 

 ゆえに軽く説明するなら――

 

 

 イオレはオレイカルコスの欠片の呪いによりその身を化け物に変貌させてしまった後のこととはいえ、ダーツが「オレイカルコスの神の洗礼を受ける前に自らの意思で手にかけた(殺害した)相手」なのだ。

 

 

 そう、ダーツによる父と娘の殺害は「オレイカルコスの洗礼を受けたせい」と弁も立つが、イオレに対してだけはその弁は通じない。

 

 早い話がイオレは最もダーツの心を揺さぶる可能性が高い存在。

 

 

 心の機微が、情動が、感情が、その実力に大きく影響を及ぼす「デュエリスト」という存在に対し、これ程までに重要な存在はいまい。

 

 

 そういった事情が神崎にはあるのだが、遊戯たちに知られれば普通にアウト案件である。

 

 

 

 やがて頭を下げたままの神崎に呆れ気味に溜息を零したおぼろげな人影ことイオレはすぐさま踵を返す様に背を向け、空の向こうへと飛び立とうとするが――

 

「おや、もう帰られるのですか? では、この場所に寄っては如何でしょう? そこには貴方のお父君と娘さんとがおられます――家族で団欒しながら帰られては如何ですか?」

 

 呼び止めた神崎の提案に懐疑的な雰囲気を滲ませる。神崎の人道的にアウトなアレコレを見てきたイオレからすれば突然の提案に警戒するなと言う方が無理であろう。

 

「この提案に裏などありませんよ。純粋な善意――そう、サービスです」

 

 しかし、神崎はイオレの最後の未練を、願いを掬い取ったこともまた事実。これ以上の疑惑の眼差しは恩を仇で返すようなものだと、その手の内の小さな光(ダーツの魂)をギュッと抱き留めた。

 

 そうして目的地を再度確認するように指さしたイオレに、肯定で返した神崎から確認を取り――

 

「では、貴方とご家族の幸福を願って」

 

 最後にもう一度深々と礼を取った神崎の姿をチラと見つめて小さく一礼した後、イオレは煙のように空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 暫くしてダークシグナーの証である《地縛神(じばくしん)Ccarayhua(コカライア)》の文様が影の中に戻った後、神崎は背後に向けて声を放つ。

 

「お待たせしてしまったようですね」

 

「いえいえ、とんでもございません! 我らが主の聖戦を妨げるような真似がどうして出来ましょうか!」

 

 その背後に膝を突いて待機していたのは紅蓮の悪魔のしもべこと「シモベ」が人型の炎の身体をご機嫌な様子で揺らめかせながら喜色の声を漏らす。

 

――いや、聖戦って……

 

「むしろ、このような重大な局面にお邪魔してしまい申し訳ない程ですYO!」

 

 シモベの言葉に内心でちょっと引く神崎を余所に炎の尾はユラユラと動き、なんとも楽し気だ。

 

「ただ……いえ、なんでもございません。ご報告の方に移らせて――」

 

 しかし、シモベが僅かに言葉を濁した瞬間に神崎は間髪入れずに問いかける。

 

「疑問点は?」

 

「か、可能な限り、速やかに解消……」

 

「はい、良く出来ました」

 

「で、では恐れながら……」

 

 だがシモベからすれば神崎――というか、冥界の王は立場が大きく違うゆえ、妙に歯切れが悪い。そんな「ようやく」といった具合に口を開いたシモベから語られたのは――

 

「何故、あの者の魂に救いをお与えになられたのでしょう? あの者が成した我が主への数々の無礼を思えば、その魂を引き裂こうとも足りぬ筈です! 今すぐにでもそうすべきかと!!」

 

 ダーツの処遇の件だった。

 

 シモベが見ていたのはリアルファイトが始まってからだけだが、その間のやり取りだけでもシモベからすれば「殺されても文句は言えない」レベルらしい――やっぱり邪悪である。

 

 にも拘わらず、ダーツからオレイカルコスの神を引っぺがした後、普通に成仏させたことが不服らしい。

 

 とはいえ、神崎としても言い分はある。

 

「それが彼女との契約でしたので」

 

 第一にダーツの妻、イオレとの契約により助力の代価としてダーツの身の安全――魂しか残っていないが――を保証していたゆえ。

 

 なお助力の内容は酷いものだったが、当の本人が納得していればセーフである。いや、セーフだと思うしかない。

 

「そんな約定など反故にしてしまえばよかったのです! あのような霊魂ごときがそれを止める手立てなどありはしないのですから!」

 

 なのだが、シモベは納得できないご様子。

 

 単純な力関係に大きな差がある以上、態々相手の言い分を聞いてやる義理など何処にもない筈だと。

 

 そんなシモベの狂信に若干の危惧を持ちつつ神崎は問を投げかける。

 

「……成程。では問いますが、それを成した場合に得られるメリットは?」

 

「メリットですか? それは当然、苦しみのたうち回る彼の者の姿によって我が主のお心を慰撫することが出来ましょうぞ!」

 

 その「人間ではない」シモベの精神性を確かめるような問に、シモベは拳を二度三度出してシャドーボクシングの真似事をしながらもの凄く悪役感溢れる答えを返す。まぁ、原作でも悪役なゆえに当然かもしれないが。

 

――いや、むしろ無駄に罪悪感味わうから。

 

 そんな返答に内心で何処か頭痛を堪えるように頭を押さえる神崎。

 

 

 そもそもの話、神崎はダーツに対してそこまで「怒り」の感情は持っていない。ダーツが神崎に語ったことは凡そ的を射ており、否定する材料もあまりないのだ。

 

 

 

 

 それに加え、オレイカルコスの神(星が抱える心の闇)に侵食されきった相手(ダーツ)を糾弾する気持ちになど、そもそもなれない。

 

 相手は超常的な存在によって人生を狂わされた身なのだ。神崎としても「怒り」よりも「憐み」の感情が先に立つ。

 

 

 

 そんなダーツに対しての感情の向け方に大きく差のある2人の問答は続いていく。

 

「……ではデメリットは?」

 

「デメリットなど、ありはしません! どのみち、消えゆく命! 積み重ねた咎を鑑みれば自業自得というもの! なれば誰が咎めましょうか!」

 

 続いていくのだが、元ダークシンクロたちと同じく言い含めた『善人を装う』・『英雄的(ヒロイック)であれ』との指示など忘れてしまったようにシモベは言葉を並べる。

 

 シモベからすれば「どうせ死ぬのだから、どう死のうとも結局は同じ」といった具合だろう。

 

「つい先程までこの世界に留まっていた彼の父と娘の魂――もし、彼らを通じてその報復が他者の耳に入ればどうなりますか?」

 

「それは僥倖! さすれば貴方様の恐ろしさを伝える良き語り部となりましょう!」

 

 神崎がヒントと言うよりは思考誘導染みた発言をするも、シモベの悪役感溢れるスタンスは何一つブレない。神崎的にはブレて欲しいところである。

 

――ズレてるなぁ……だから「悪役」なんだろうけど。

 

「成程、『恐ろしさ』――『脅威』が情報として伝わるわけですね。もし、それを聞いて義憤に駆られたものがいればどうなるでしょう?」

 

「なれば新たなる戦火が…………あぁ、成程、成程!」

 

 そう内心でゲンナリしながら、ほぼ答えを明かす神崎の言葉にシモベもようやく理解が及んだ様子で手をポンと叩いた。

 

「理解に及びましたぞ! ええ、理解に及びましたとも! これがあの者たち(ゼーマンたち)に仰られた『善人を装う』の答えなのですね!」

 

 やがてやたらとオーバーに称えるような仕草を取りながらクルクルと回るシモベは意気揚々とガッツポーズを取るように拳を握る。

 

「余計な敵を作らず、なおかつシグナー共の気勢を削ぐ! そのゆえに『英雄的(ヒロイック)』であれと!」

 

「はい、大まかにはそんなところです」

 

 そう、これが元ダークシンクロたちや、シモベに神崎が指示した「善人を装う」に対して、建前として用意した理由である。

 

 普通に「悪い事しちゃダメだぜ!」と言ったところで、納得して貰えるとは思えなかったゆえの苦肉の策だ。今までのシモベの発言を見るに普通に言っても納得しないのは明白だろう。

 

「我が主のお考えを汲めなかったこの身が恨めしい限りですYO!」

 

「いえ、構いませんよ。どのみち答え合わせはする予定でしたから」

 

――といよりは、そういう存在(打ち倒されるべき悪)としてデザイン(創作)された彼らには平和的な発想に辿り着かないようになっているのかもしれないな。

 

 神崎的には自分で気付いて欲しかったのだが、シモベの何処までも破壊的な思考パターンに対して、思わずそう考えてしまったゆえに予定を変更して明かしたに過ぎない。

 

――今回みたいな単純な連想すら破壊的な方向へと向いている。恐らく「冥界の王」として命じていなければ、「善人のフリ」すらしないだろうな……

 

 やはり、彼らはどうあっても「悪」であることから逃れられないのだろうと。

 

 

 この調子では元ダークシンクロたちの方も望み薄である。

 

 

 

「では要件の方に移りましょうか」

 

 しかし何時までも肩を落としてもいられないと、話を戻す神崎にシモベはすぐさま膝をついて平伏し、臣下としての体に戻った。

 

「ハッ! それなのですが、少々精霊界の方で問題が起きてしまったようでして……」

 

「問題? 緊急ですか?」

 

 シモベから語られた「問題」との言葉に上述のこともあって、「何かやらかしたのか!?」と焦りながらも頑張って冷静を装い問う神崎にシモベは慌てた様子でブンブンと首と手を横に振る。

 

「いえいえいえ! とんでもございません! 主の御計画は万事が万事、滞りなく進んでおりますとも!」

 

 そのシモベの慌てっぷりは神崎の慌てた心が逆に落ち着いてしまう程に大仰だったが、暫くそうしていて一息ついたシモベはキリっと元の姿勢に戻す。

 

 とはいえ、あれだけ焦った姿を見た後では、その姿勢を正した姿が何とも微笑ましく感じてしまうが。

 

「ただ、荒事の一つを収めた際に疑問が少々……今後の方針にも影響しかねないと皆で判断し、我が主のお知恵を頂きたく馳せ参じた次第なんですYO!」

 

「そうですか。ではその『荒事』とやらの報告を」

 

「ハッ、手短に申しますと――」

 

 シモベの荒事との言葉に今の時期で精霊界に特徴的な事件はあっただろうかと、原作知識を思い返す神崎に語られるのは――

 

 

 

 

「数多の命を糧に《超融合》なるカードを生み出そうと画策していた《暗黒界の狂王 ブロン》を首領とした『暗黒界』の面々を捕縛しましたが、処遇の方は如何しましょう?」

 

 

 

「えっ?」

 

 神崎の予想だにしない答えだった。

 

 

 

 間の抜けた声が周囲に木霊する。

 

 

 

 

 

 こうしてまた未来の脅威の一つが、なんかよく分かんない内に消えた。

 

 

 






覇王十代「えっ?」

超融合「えっ?」

超越融合「えっ?」

暗黒界の混沌王 カラレス「えっ?」

E・HERO(エレメンタルヒーロー) ネオス「キミたちは……一人じゃない……!!」

N(ネオスペーシアン)・アクア・ドルフィン「ボクたちは同じ痛みを共有できる仲間だよ!!」






読者の皆様方から頂いたご感想への返信が作者の返信力の低さにより滞っている為、先んじてQ&A――

Q:オレイカルコスの神はどうなったの?

A:アイツは喰われた、もういない! だけど……神崎の心の中で一つになって生き続けているんだ!!

――と、冗談はさておき、オレイカルコスの神が「星の浄化プラン(おまかせ仕様)」を神崎から購入した為、今現在は神崎の心の奥底で再復活に供えてエンジョ――もとい、休眠しております。

ゆえに今後、神崎は「星の守護者としての使命」に準じる必要があります――つまり何時も通りに「世界の危機への対処」を永遠に頑張っていかなければなりません。

それが滞れば、神崎を第二のダーツにするべく(精神の)限界バトルが叩きつけられます。


Q:イオレと交わした契約内容って?

A:「私はどうなっても良い……! だから……あの人(ダーツ)を救って……おねがい……」と涙ながらに訴えるイオレを神崎は前話の通りに運用しました――この、クズ野郎!!(牛尾感)

現在は家族仲良く冥界に旅立っております(なお罪への罰の重さはそれぞれ別とする)


Q:あ、あの……数話前までのシリアスは何処に……

A:現在、担当者(シリアス)が休暇中の為に此方でも対応が取れず、回答を差し上げることができません。


Q:覇王城「ボクには出番を待つ病気の新規E-HERO(イービルヒーロー)たちが……」

A: 関係ねぇよ! 既存E-HERO(イービルヒーロー)と一緒に(出番的な意味で)地獄に逝け!!(ユーリ感)


Q:《超融合》関連の話はGXの3期の中核を成すテーマなんですけど、GXの3期どうするの!?

A:次回、遊戯王GX――3期、ほぼ死す! デュエルスタンバイ!



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