マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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ようやく記憶編の背中が見えてきたぜ……(`・ω・´)



前回のご質問が多かったことへのQ&A(ご感想への返信遅くて本当に済みません)――

Q:《光学迷彩アーマー》を装備していた神崎ってレベル1なの?

A:デュエルにおいて「属性・種族・レベル」等の要素はカード効果によって変更可能なものです。





前回のあらすじ
ディマイオス「フッ、ついに俺たちにかけられたオレイカルコスの封印が解かれたようだな……」

ヘルモス「ならば俺たちが大活躍! と思ったが――そんなことはなかったぜ!」

クリティウス「それに伴い《ブラック・マジシャン・ガール》のヒロイン的な出番も無効だァ!」

ブラック・マジシャン・ガール「!?」





DM編 第10章 KCグランプリ編 ジークさんのダイナミック破滅講座
第159話 カードが違います


 

 

 I2社の自室にて、ペガサスは自身のデスクの引き出しが光を放つ摩訶不思議な光景に見舞われていた。

 

「おや? ……Wow!? これは一体……」

 

 そうして不思議そうに引き出しを開けたペガサスの視線に映るのは一枚の「カード名どころか、イラストも、そして効果すら記されていないカード」が光の粒子となって消えていく姿。

 

 そのカードはペガサスがとある壁画に描かれた伝承から強くインスピレーションを受け、生み出そうとするも「何故か描く気になれなかった」一枚。

 

 ゆえに「その時が来るまで」とデスクの中にお守り代わりに仕舞っていたカードが消えていく姿を見届けたペガサスは感慨深く息を吐く。

 

「Oh……フフフ、既にデュエルモンスターズはワタシ(創造主)であっても、その全容を推し量ることは出来ないという訳ですか」

 

 デュエルモンスターズの生みの親――創造主と呼ばれるペガサスだが、世間で評される程に自身を「創造主」と自覚することはない。

 

 何故なら、ペガサスは知っているからだ。

 

「世界には科学では推し量れない、未知に溢れていマース。Mr.神崎――貴方にすら把握しきれない程に」

 

 歴史を紐解けば、現代科学では決して説明ができない事象や存在の影が至る所に点在している事実に。

 

 それはその手のオカルト分野の先頭に立つ神崎が立ち上げたオカルト課にすら全てを解き明かすには至らない。

 

 

 そしてペガサスは一人ごちる。

 

「にも拘わらず、全能を気取る人間――なんと愚かなことでしょう」

 

 今思えば全てが運命だったのかもしれない、と。

 

 古代エジプトの石板に描かれたモンスターの姿を見た時、そして三幻神の壁画を見た時に奔ったインスピレーション――そしてビジョン。

 

 その多くが神崎によって誘導されたと考えていたペガサスだが、その神崎もまた「運命」に踊らされていた道化に過ぎなかったのではないかと。

 

 

 そうして何時もの朗らかで快活な在り方が鳴りを潜め、鋭い視線で窓の外の景色を眺めるペガサスだったが――

 

「ペガサス、絵本のイラストのことなんだけど――あら? どうかしたの?」

 

「なんでもありまセーン!」

 

 愛する人(シンディア)の姿に、そのシリアスは一瞬にして霧散した。そこにいるのは何時もの愛に生きる陽気な男そのもの。

 

「そう? ……前みたいに抱え込んでない?」

 

「勿論デース! 辛くなったら、シンディア――貴方にドンドン甘えちゃいマース!」

 

 そう、此処にいるのは愛の戦士――ラブ&ピースである。身を預ける仕草と共にクネクネ動く姿は築かれた幻想(イメージ)を打ち砕く。

 

「フフッ、でもあんまり私ばっかりペガサスと一緒にいると、あの子たち(ペガサスミニオン)に妬かれちゃうわ」

 

「Oh!! それは困りマース!」

 

 だが、そう冗談めかして零すシンディアの姿に胸を打たれたかのようにオーバーなリアクションに興じるペガサスは幸せ一杯だった。

 

 世界の未知? デュエルモンスターズの全容? そんなの後々!

 

――精霊界へのバカンスが楽しみデース!

 

 今のペガサスにとって何より重要なのは愛する人(シンディア)と、愛する我が子たち(ペガサスミニオン)とのかけがえのない毎日である。

 

 

 

 そうして伝説の騎士の心を灯す一枚のカード(レジェンド・オブ・ハート)は人知れず役目を終えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある会社の応接室にて静かに瞳を閉じて椅子に座る海馬と、その背後で立つ磯野。

 

 そんな如何にも待ち人染みた空気の中で磯野が腕時計の時刻を確認しようとした瞬間にガチャリと扉の開いた音に二人の意識が其方に向かう。

 

「ふぅん、ようやくか」

 

「おや、待たせてしまったかな?」

 

 そんな海馬の視線の先には扉を開いた秘書風の男と――周囲を圧し潰すようなプレッシャーを放つ水色の長髪の男の姿に磯野は緊張感からか小さく息を呑んだ。

 

 眼前にて挨拶代わりの洗礼を浴びせる男の姿だが、海馬は怯むことなく牽制代わりに言い放つ。

 

「生憎だが、俺はその手のくだらん駆け引きに興味はない」

 

 そんな相手のペースに乗る気はないと示す海馬だが、その内心は何処か息苦しさを感じていたのは気のせいか――否、気のせいではない。

 

 今、海馬の眼前に座した男こそ、海馬の養父、剛三郎が「手を出すな」と恐れた、国家にすら介入する程の力を持った超巨大企業の長。

 

「お前がパラディウス社の総帥、ダーツか」

 

 パラディウス社の総帥、ダーツ。

 

 この世界において唯一真正面からKCを相手取り、圧倒することが出来る企業のトップ。

 

「如何にも――初めましてと言っておこうか、海馬 瀬人」

 

 一挙手一投足に絶対的な王者の風格を佇ませるダーツの姿に対し、海馬は挑発気に小さく強気な笑みを浮かべた。

 

 海馬がデュエリストではなく、KCの長としてこうも挑み甲斐のある相手はいないだろう。だが――

 

 

 

 

 

 

 

 何!? ダーツは神崎に喰われ――じゃなくて奥さんたちと共に成仏した筈!? と、お思いの方もいるだろう。だが安心して欲しい。

 

 

――ダーツっぽく! ダーツっぽく振る舞わねば!!

 

 中身は別の人である――というか、神崎だ。

 

 ちなみに二人が感じているプレッシャーや息苦しさの正体はカードの実体化の力によって心なしか増強された重力や、空気の濃度の調整による賜物だったりする。そう、物理である。

 

 

 

 

 

 

 

 色々言いたいことはあるだろうが、一先ずは『何故、こんなことになったのか』を説明せねばなるまい。

 

 

 時間はそこそこ巻き戻る。

 

 

 ダーツが死亡――というか、オレイカルコスの神から解放されたことで魂が自由となり、本来向かうべき死後の世界へと還っていったことが発端だった。

 

 

 そう、この世に「ダーツ」という存在が突然消えたことによる問題が発生するのである。

 

 

 

 具体的に語るのなら――

 

 アメリカの国家予算に匹敵するとまで噂される資金力を持ち、

 

 大国の大統領をも動かせる権力を影ながら持ち、

 

 人類が文明を手にした何千年も昔から現代に至るまで世界の影で糸を引いていた秘密結社の存在が問題だった。

 

 

 そう、ダーツが総帥を務めていたパラディウス社が完全に宙ぶらりんな状態になっていた件である。

 

 

 放置しておけば世界全土を巻き込んだ大恐慌など目でもない程の混沌とした混乱を引き起こしかねない。

 

 

 とはいえ、いつもの脳筋スタイルでパラディウス社をぶっ壊す訳にも行かない。こういったものは時間をかけて少しづつ崩していかなければ世に与える影響の反動が凄まじいのである。

 

 

「『オレイカルコス・ソルジャー』各員に通達。一先ずは通常業務の維持を徹底」

 

「 「 UGAGA 」 」

 

 そんな神崎の声に灰色の鎧に身を包んだ赤い瞳が輝く大柄の異形の石像染みた化け物、『オレイカルコスソルジャー』たちがコクリと頷き、PCの前に座ってカタカタ始めたり、書類仕事を始め出す。

 

 

 何だ、コイツ!? とお思いの方もおられるであろう為、この『オレイカルコスソルジャー』についても説明しておこう。

 

 

 このオレイカルコスソルジャーは原作にてダーツが従えていた――簡単に言えば量産型の兵隊である。

 

 オレイカルコスの力があれば幾らでも生み出せ、腕の鎧と一体化したブレードタイプのデュエルディスクから察せられるようにデュエルも可能であり、更には自立活動だけでなく遠隔操作も可能な一品だ。

 

 

 

 

 いや、そうじゃなくて何でそんなのが事務仕事してるの? とも、お思いだろう。それには、やんごとなき事情があるのだ。

 

「シモベ。キミはオレイカルコスの神から解放された魂の内のこの時代の者への対処を――影ながら支援するように。それと並行してパラディウス社が問題なく回っているかどうかについて精査も頼みます」

 

「お任せください、我が主!」

 

 表の人間に任せられない仕事(ダーツが起こした事件のフォロー)という事情が。

 

 そうしてシモベが炎の尾を楽し気に揺らしながらオレイカルコスソルジャーの何体かを引き連れて仕事に向かったことを見送った神崎は小さく息を吐く。

 

「指揮取り出来る手がもう少し欲しいな。ゼーマンたち――は精霊界で大きく動く以上、其方に集中して貰うべきか……」

 

 そう神崎が語るように圧倒的なマンパワーを用意できるオレイカルコスソルジャーにも致命的な欠点があった。それは外見上の問題――などではない。その手の問題はカードの実体化の力による幻術の類でどうとでもなる。

 

 彼らの一番の問題は一切言葉を話せない性質だった。「ウガウガ」しか言えねぇレベルである。

 

 それによりパラディウス社にいるダーツの裏側など知る由もない普通の人間の社員とコミュニケーションが取れないのだ。

 

 そうした普通の人間とコミュニケーションが取れ、更に神崎が裏側であっても自由に動かせ、なおかつコミュニケーション能力に問題がないのは――

 

 先程、指示を出した「元」紅蓮の悪魔のシモベ。

 

 現在、精霊界のアレコレにかかりっきりな、「元」ダークシンクロたち――の一部。

 

「アヌビスは……KCに置いておきたい」

 

 そして古代エジプトの神官だったアヌビス――だが、彼はKCに何かあった時の為に置いておきたい為、今回はスルーである。

 

 

 やがてそこまで考えた神崎は自分の影に視線を落とす。そう、最後の一人がいるではないか。

 

「冥界の王――は論外」

 

『なっ!?』

 

 それが冥界の王――だが、今の今まで赤き竜と殺し合うことが生活のメインだった存在に何を期待すれば良いのかと神崎は選択肢から外した。

 

「トラゴエディアも覚醒には未だ至らない。やはり手が足りないな……いや、表に出せる人員が少な過ぎると言うべきか」

 

 冥界の王のカチンときたような声も無視して現状の打破を思案する神崎だが、冥界の王は腹の虫が収まらぬと怒りのままに巨大な影を伸ばすが――

 

『神崎! 貴様! 我を愚弄――』

 

「キミがこの手の仕事をやりたいと望むのであれば、割り振っても構わないが?」

 

『……やらん』

 

 書類や電話を片手に告げられた神崎の一言にピタリと動きを止め、そのままシュルシュルと元のサイズへと戻っていった。

 

 しかし冥界の王の苛立ちは収まらないのか何処かグギギとしているように見えるのは気のせいなのか――否、普通に不機嫌である。

 

「そうか。なら大人しくしていてくれ――何分、今は本当に余裕がない」

 

 とはいえ、忙しさの只中にいる神崎からすれば気にしている余裕はない。オレイカルコスを取り込んだ際に冥界の王が色々言っていたことを雑に流す程度には一杯一杯である。

 

 ゆえに相も変わらず影から黒い手や目玉を出しながらあれやこれやと働きながら借りられる猫の手は何処かと考えるも――

 

「乃亜を巻き込――いや、ダメだ。いくら大人顔負けに聡くとも、子供をこの問題に巻き込んじゃいけない」

 

 今のところ「神崎がメッチャ頑張る」以外の選択肢がない。友達いな――ゴホン、少ないもんね。

 

「『兵士』方面ばかり気にしていたツケが此処に来て……いや、そもそもパラディウス社を運営するなんて想定していないんだよなぁ……」

 

 そんな「どうやって(企業戦士として)戦えばいいんだ!」な状況に頭を抱えつつも影から山ほど出した目や腕をグワングワン動かし、職務を片付けていく神崎。

 

 

「……そろそろアリバイ作りの為にKCに戻る頃合いか。いつまでもパラディウス社にいる訳にもいかない。というか、そもそもKCの社員の私が何してるんだろう……」

 

 しかし、ふと視界に入った時計の針が差す時刻に一気に現実に戻される。「自分は遊戯王ワールド(カードゲームの世界)で何やってんだろう」と。

 

 

 それは「夢も希望もない社畜」と評するしかあるまい。

 

 

 そんな無慈悲な現実に神崎は流石に「休まねば」と考え始める。

 

「最近、働き詰めだな……そろそろマトモな睡眠時間を確保し――そう言えば前に眠ったのはいつだろう?」

 

 神崎は基本「仕事人間」であり、不思議パワーで身体に負荷をかけつつトレーニングに並行して仕事をしながら僅かでも時間に余裕が出来れば将来の為にデュエル諸々の修行し続ける毎日を過ごしている――もはや新手の拷問である。

 

 とはいえ、神崎とて定期的に短期間ながら睡眠を取っていたのだが、こと最近を振り返ってみると、どうにも記憶が怪しい。「あれ、休んだっけ?」と。

 

『我が見ていた限り、いつも何かしらゴチャゴチャやっとったぞ』

 

「えっ?」

 

 しかし残酷な事実が冥界の王から告げられた。

 

 

 無理もない。冥界の王を不思議パワーと共に取り込んだ人間はもう……人間ではないのだ。その辺の問題も力技で解決されてしまっている。もはや弊害と言ってもいい。

 

 

 その「もう止めて! とっくに神崎のライフはゼロよ!」な状態でもライフレスコンボで睡眠放棄の無限ループを続けていた神崎は此処に来て無慈悲な現実に頭痛を堪えるようにこめかみを押さえる。

 

 とはいえ、デュエルマッスルと不思議パワーによって色々ぶっ飛んだ肉体に頭痛などそう起こりはしないのだが。

 

 

 そんな社畜スピリットから今の今まで気付かないとは……悲しい男である。スピリットモンスターよろしくターンの終わりに手札に戻って休んで欲しいところだ。

 

 

「GUGAGA」

 

 そうして現実から解脱しそうになっていた神崎の精神だが、受話器片手に膝をつくオレイカルコスソルジャーの姿にその意識は引き戻される。

 

「あぁ、電話かい? この状況でこれ以上の問題は――」

 

――しゃ、しゃっちょー!?

 

 だが、電話越しに聞こえた「ふぅん」との聞きなれた声とフレーズに、何処かの巡査長のような心の声を放つことになった。

 

 

 

 と、まぁ、そんな経緯があった感じである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上述した理由からパラディウス社の社員とその家族の為に、そしてダーツの被害者の為に既にこの世に存在しないダーツという存在を演じる必要が出てきた神崎は「『気品』ってなんだよ」などと考えながら今までの経験をフル動員して頑張っていた。

 

「『瀬人』と呼んでも?」

 

 そう語りながら海馬の正面に足を組みつつ椅子のひじ掛けに肘を置いて頬杖を突くダーツのガワを被った神崎――「威厳」とやらを頑張って出そうと必死である。

 

「……好きにしろ」

 

「ならば、瀬人。今回はどういった要件かな?」

 

 何処か苛立ちを見せる海馬の声色に「フッ」と小さく笑みを浮かべながらダーツは要件を問いただす――なお内心の神崎は「どう見ても怒ってるよ……」と戦々恐々しているが。

 

「磯野」

 

 そんな内と外のギャップがエライことになっている相手を余所に海馬は磯野へと声をかけ、磯野もその意図を汲み用意していた書類の束を秘書風の男――中身はオレイカルコスソルジャーだが――に手渡した。

 

 

 当然、秘書風のオレイカルコスソルジャーはそのまま流れ作業のようにダーツに手渡すが、内心の神崎は書類の情報量に「この量を今から読むの?」と若干引き気味だ。

 

 しかしダーツらしさを優先しなければならない神崎にそんな泣き言など言ってはいられない。

 

 ゆえに神崎なりにダーツらしさを出すべく、書類の束をパラパラ漫画でも読むように素早くめくる。そんな中、磯野が大まかな概要を説明し始めるが――

 

「僭越ながら私からご説明させて頂きます。この『KCグランプリ』は強豪デュエリストを集――」

 

「ふむ、世界規模のデュエル大会か」

 

 それより早くパタンと書類をめくり終えたダーツはそんな言葉と共に興味なさげに秘書風のオレイカルコスソルジャーに書類の束を手渡した。

 

 

 冥界の王の力とデュエルマッスルによって鍛え抜かれた視力任せの芸当に何処か呆然とする磯野と、鋭い視線を崩さない海馬を余所にダーツはその内心で神崎として目まぐるしく頭を回す。

 

――今のKCは特に原作でのドーマ編によるダメージは負っていない筈だが……何故、この話が? 折角、ジークの逆恨みによる復讐を封殺できたと思ったんだが……

 

 その思考の大半が「原作と事情が違う」ことへの疑問。悩んでいる当人が原因であろうことは明白だが。

 

 そう、「KCグランプリ」はダーツことドーマ編の騒動によって低迷したKCの株価を回復させる為に海馬が打った一手である――今作では当然、KCの株価の低迷などない。原因であるダーツが既に成仏した為だ。

 

 それゆえの疑問が当然浮かぶのは必然であろう。とはいえ、直ぐに「何で!?」と問えぬのが悲しいところ。

 

 やがて先程の「足組み」+「頬杖」+「不敵な笑み」の王者っぽい所作トリプルコンボな姿勢に戻ったダーツは茶化すようにポツリと零す。

 

「出資の願いかな?」

 

「…………ふぅん、勘違いするな。KCだけで十分に大会の運営は可能だ――今回はただ国際デュエル協会の顔を立ててやったに過ぎん」

 

 しかし対する海馬は「KCの力を舐めるな」と言わんばかりにそんな言葉を切って捨てた。今回、海馬がダーツの元を訪れたのはそんな理由ではない。

 

 国際デュエル協会――早い話がデュエルに関してアレコレ携わる組織の――そう、権力構造的なアレコレだったり、お役所的なやり取りの諸問題である。

 

「奴らは口を揃えて『パラディウス社に話を通しておけ』と喧しくてな」

 

「それは災難だったね」

 

 国際デュエル協会を無視して無秩序にアレコレ動かすことは当然リスクしかない。

 

 とはいえ、お偉方にお伺いを立てるような真似など海馬はしないが、まるっきり無視するような大人げない対応もまた問題なゆえに今、面倒に思いつつも此処にいるのだ。

 

 

――知ってはいたが、パラディウス社の影響力……凄いな。

 

 そんな海馬の姿にパラディウス社の影響力の巨大さに内心で舌を巻く神崎はしみじみと思う――早いとこ解体した方が良さそうだと。

 

 そうして将来の展望へと意識を向けていた神崎だが、眼前の海馬の思惑を探るように言葉を並べる。

 

「しかし、デュエルキングを決めるバトルシティの熱も冷めたばかりだというのに随分と急な話だ」

 

 上述したようにこの世界において「KCグランプリ」の開催理由がない以上、海馬には別の理由が当然存在する筈だと。

 

 渡された書類に示された「各国のデュエリストの交流の場」などのお行儀の良い理由ではないことだけは容易に理解できる。

 

「……この大会の裏はデュエルキングの称号に不満を持つデュエリストを黙らせる為のものだ」

 

 そして語られたのは――バトルシティの決勝にて遊戯と海馬が「引き分け」たのが問題だったのだ。そう、またしても神崎が原因の一端を担いでいた。

 

――成程、KCグランプリの開催理由がズレたと。未来は簡単には変わらないということか……ん? いや、これって……チャンスじゃないか?

 

 そんな「もう大体お前のせいじゃねぇの?」な状態だったが、神崎はめげない――ピンチとチャンスは表裏一体なのだと。

 

『手空きのオレイカルコスソルジャー各員に通達。総力を結集し、大至急「これ」を用意するように』

 

 やがてテレパス染みた力でオレイカルコスソルジャーに指示を出した神崎は確かな手応えを感じていた。

 

 上手くいけばジークの海馬への復讐を止めさせることが出来るかもしれない――と、フラグ感満載なことを考えながら。

 

 

「プロ・アマ問わず、スケジュールの都合でバトルシティに参加できなかった者たちが煩くて敵わん――俺と遊戯のデュエルを見ても理解出来なかったらしい」

 

「フッ、デュエリストとは元来そういうものだ――誰もが『己こそが』と心に秘めている」

 

「だが、この『KCグランプリ』でそんなくだらん考えは覆される」

 

 そんなこんなで我がロードを突き進む社長節に合いの手を入れていたダーツ。だが対する海馬は用が済んだとばかりに席から立ち上がった――帰るらしい。磯野も慌てて扉を開きにかかる。

 

「話はそれだけだ――奴らへの義理は通した。これで文句は言わせん」

 

「手間をかけさせてしまったようだな」

 

「ふぅん、心にもないことを」

 

「なに本心だとも」

 

 海馬の牽制するような言葉に努めて余裕を見せながら返すダーツ――内心の神崎はオレイカルコスソルジャーが間に合うかハラハラしているが。

 

 だが、退出するべく扉に手をかけようとした磯野がドアノブに触れる前に新しく入ってきた社員風の人間――やはり中身はオレイカルコスソルジャーだが――が入室し、磯野を経由して差し出されたものに海馬は僅かに眉をひそめる。

 

「……これはなんの真似だ?」

 

 自身が手に取り、軽く目を奔らせた「それ」は海馬の心を大きく揺さぶるものだった。

 

「スケジュール調整表といったところだ――手間賃替わりに受け取ると良い」

 

「俺が言いたいのは『何故、これを俺に渡すのか』ということだ」

 

 軽いダーツの説明も海馬を納得させる要素はない。こんなものを軽く用意し、なおかつ他社の人間にポンと手渡すなど正気の沙汰ではないのだから。

 

 しかしダーツは変わらぬ余裕を見せる――中身の神崎も「珍しく冴えたアイデアが出た」と自信タップリだ。

 

「言葉の通り、ただの『手間賃』だよ。どんな時代でもよく言うだろう? 『祭りは派手な方が良い』と」

 

「……ふざけているのか?」

 

「至って真面目だとも。つわもの共を集めるのであれば――」

 

 そう、ダーツが海馬に授けたのは「つわもの」を集める為の招待状――いや、挑戦状と言える。

 

 だがそれは原作のKCグランプリの比ではない。

 

 

「――世界『各地』などと言わず、世界『全て』から集めようじゃないか」

 

 これは、ほぼ全人類がデュエリストと言える遊戯王ワールドゆえに可能な荒業。

 

「プロもアマも、表も裏も、名有りも名無しも、一切の区分なく――」

 

 この大会は原作のKCグランプリのように「招致し、参加してもらう」ものではない。

 

 デュエリストなら「是非、参加させてくれ」と諸手を振って願いでるような魔法の如き代物。

 

 

「文字通り、全人類を篩にかけて競い合う」

 

 

 それはデュエリストなら誰もが思い描いた到達点。

 

 

 

「さしずめ――『World(ワールド) Duel(デュエル) Grand Prix(グランプリ)』と言ったところか」

 

 

 そう静かに言い切ったダーツに海馬は小さく息を呑む。

 

 

 その耳には文字通り、「世界最強」を決める戦いの足音がハッキリと聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 空耳である。

 

 

 






大会の規模を爆上げすることで、ジークの介入を躊躇させる作戦。


ジーク! 逆恨みで復讐は止めろよ! フリじゃないからな! 絶対に止めろよ! 本当に止めろよ!(とある鳥類の倶楽部感)





最後に――

(リンクスでの召喚演出を見つつ)
《フォーチュンレディ・エヴァリー》ってダークシンクロモンスター(扱い)なのかよぉ!!

同じダークシグナーであるミスティ(が使っていたテーマのシンクロ)の方の《レプティレス・ラミア》は普通のシンクロ(演出)だったのにぃ!!


このままでは《猿魔王ゼーマン》が戦力を隠していたことになってしまう……(頭痛)

――以上のことから、何処かで辻褄合わせすることになると思われますので、どうかご容赦ください<(_ _)>



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