マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
ラッビー「束の間の栄光を味わうといい、カイバーマン…………ハハッ!」





第164話 電子戦

 

 

 デュエルリングに上がった、蝶ネクタイに合う仕立てのよい服を着た茶髪の少年がデッキをセットするとスィーとゴンドラ部分が稼働していく。

 

「ジュリアン、頑張るのよー!」

 

 そんな中、自身の背に届いた声援に「ジュリアン」と呼ばれた少年は声の主の方を向きブンブンと手を振った。

 

 その先にいたのは薄桃色のドレスを着た遊戯より少し背丈の高いウェーブがかった長い金髪の少女の姿。

 

「うん! 見てて、ソニア姉様! えーと、僕は後攻か……」

 

 そうした姉、ソニアの声援を受け、蝶ネクタイをつけた少年、ジュリアンはデッキから引いた5枚の初期手札を手に、デュエルロボの出方を窺う。

 

 窺うのだが――

 

「――の効果で、私がフィールドの《イビリチュア・ガストクラーケ》をリリースし、三度、儀式召喚した《イビリチュア・ガストクラーケ》の効果により、貴方の手札を2枚選び、その内の1枚をデッキに戻して頂きマス」

 

 フィールドに座する赤いウェーブの長い髪の女性の半身が頭から生えた黒い体色をした巨大なイカ――《イビリチュア・ガストクラーケ》が脱皮するようにドロリととけ、その内部から新たな《イビリチュア・ガストクラーケ》となって降臨する。

 

 さしずめ「転生儀式召喚」といったところか。うむ、カッコいい呼び方だ。

 

 そうして現れた儀式モンスターが、そのイカ足でジュリアンの二枚の手札を突き刺し、その内の1枚をデッキに戻す。

 

《イビリチュア・ガストクラーケ》 攻撃表示

星6 水属性 水族

攻2400 守1000

 

 デュエルロボが語ったように、これは既に三度目の光景――そう、先攻を取ったデュエルロボの最初のターンが同じモンスターを何度も呼び出しているせいか、とにかく長い。だが、ジュリアンからすれば由々しき事態だった。

 

「残り……2枚……」

 

 そう、チラチラと自身の手札とデュエルロボを交互に見やるジュリアンの様子から分かるように、最初の自分のターンが回ってくる前に3枚の手札を失っているのだ。

 

 しかも「デッキに戻された」為、再利用にも苦心する始末。次のターンでなんとか挽回せねばと考えるジュリアン。

 

 

 だが、いらぬ心配だ。

 

「これで私の墓地の水属性モンスターは5体になりマス。よって手札から《氷霊神ムーラングレイス》を自身の効果で特殊召喚」

 

 残った最後の希望を刈り取る準備は済んでいる。

 

 そうして吹雪と共に空を舞い翼を広げるのは白い鎧に身を包んだ竜の姿。鎧の隙間からいくつも伸びる氷の角がドーム内のライトに晒され爛々と輝く。

 

《氷霊神ムーラングレイス》 攻撃表示

星8 水属性 海竜族

攻2800 守2200

 

「そして特殊召喚時、自身の効果により、相手の手札を2枚ランダムに捨てさせマス」

 

 やがて《氷霊神ムーラングレイス》から放たれた咆哮によって吹き荒れた冷気がジュリアンの残り2枚の手札を凍り付かせていった。

 

「て、手札がなくなっちゃった!?」

 

「カードを1枚セットし、ターンエンドデス」

 

 やがて砕けた手札が墓地に送られ、手札0(ハンドレス)で己の最初のターンを迎えることになったジュリアン。

 

 絶望のゴールはもうすぐ傍まで来ている。

 

「うぅ……手札が……で、でも!」

 

 目じりに薄っすらと涙が浮かぶジュリアン。だが、応援してくれる姉の姿にグッと涙をこらえ、憧れの兄の言葉を思い出す。

 

「お兄様も言ってた――デュエルには無限の可能性が宿ってるんだって!」

 

 そうだ! 泣き虫な己から転生しろ! ジュリアン!

 

「…………ドロー! やった! このカードなら――」

 

 そんな気分はバーニングドローなジュリアンの引きが奇跡の炎を――

 

「ドローフェイズに罠カード《水霊術-「葵」》を発動。自分フィールドの水属性モンスター、《リチュア・アビス》をリリースし、相手の手札を1枚選んで墓地に送りマス」

 

「えっ」

 

 起こす前に水色の長髪の少女が杖から放った光により、その身を水へと変えて突撃したサメ頭の魚人、《リチュア・アビス》によって消化された。

 

 

 どうやら此処までらしい、ソウルバ――ではなく、ジュリアン。

 

 

「………………………タ、ターンエンド」

 

 再び訪れた手札0の(サティスファクションな)状況に茫然としていたジュリアンだが、暫くして絞り出したかのような声が零れる。

 

 少年よ、これが絶望だ。

 

 

 そうして一切の対抗手段を持たないジュリアンにデュエルロボは死刑宣告を降す。

 

「う、うぅ……」

 

「私のターン、ドロー。バトルフェイズ。《イビリチュア・マインドオーガス》と《氷霊神ムーラングレイス》でダイレクトアタックしマス」

 

「うわぁあああぁあああッ!!」

 

 やがて2体のモンスターによる津波と吹雪のコンボ攻撃がまるっきり無防備なジュリアンを襲った。

 

ジュリアンLP:4000 → → → 0

 

 

 半端な気持ちで挑むなよぉ……高レベルのデュエルロボによォ!!

 

 

 

 

 そうしてデュエルが終わり、デュエルリングのゴンドラ部分がスィーと戻って行くが、ぶっちゃけジュリアンからすれば何もすることなく、デュエルを終えたのでその胸中には虚無感が凄い。

 

 出来たのは、カードを引いて戻すだけである。

 

 

 

 だが、そんなジュリアンを周囲の「無茶しやがって……」な視線が暖かく迎えていた。

 

 

 そうして一連の流れを見届けた本田は苦々しく零す。

 

「あんなもんどうやって勝ちゃぁいいんだよ……」

 

「でも、あの子のターンに3枚のカードが墓地に送られていたから、反撃の隙がなかった訳じゃないよ」

 

「うむ、遊戯の言う通りじゃ。あの時のデュエルロボのデッキは手札破壊に注力しておったようじゃから、あの場さえ乗り切れば勝負の流れを引き込めたじゃろうな」

 

「いや、普通はそんな風に立ち回れねぇからな!」

 

 遊戯と双六から語られるありがたいアドバイスも本田からすれば「意味☆不明」でしかない。

 

 

「ソニア姉様~!」

 

 やがてデュエルリングから降りた「お前の手札をフルボッコだドン」されたジュリアンが涙を堪えながら姉のソニアにかけよるが――

 

「だからレベル10は貴方には早いって言ったじゃない……ほら、次の人の邪魔になるから、来なさい」

 

「う、うん……」

 

 ジュリアンの姉、ソニアからすれば兄の気を引こうと無茶をしただけなのは分かり切っている為、慰めつつも少々厳しめのご対応。

 

 そんなジュリアンを余所に――

 

「今度はボクの番だ! おじさんのアドバイス、早速試してみるよ!」

 

「リック。キミがカードを想う気持ちがデッキを、そしてキミ自身を大きく成長させる――それを忘れないようにな」

 

「うん!」

 

 何やらデッキ相談をしていたとみられる赤いジャケットのこげ茶の髪の少年、リックが自身のデッキ片手に空いた手でレ型のもみあげをした金髪の大柄な男と拳をぶつける動作の後、デュエルリングにかけていった。

 

 

「お兄様~!」

 

 やがてジュリアンはリックにファンサービスを済ませた兄のレ型のもみあげをした人の黒いシャツ越しにも分かる強靭な腹筋にダイブ。

 

「おっと――最後まで心折らずデュエルした姿は見事だったぞ、ジュリアン」

 

「お兄様! お兄様なら勝てるよね!」

 

 そうして瞬殺――もとい奮闘した己のデュエルを褒められ満足しつつも、今度は兄のデュエルが見たいと言外にねだるジュリアン。

 

「どうだろうな。デュエルに絶対はない。ひょっとすれば私とて成す術もなく負けてしまうかもしれないな」

 

「お兄様、少々冗談が過ぎますわ。幾ら最新鋭のデュエルロボと言えども――」

 

 だが「今日はオフ日」だと冗談めかしつつ返すレ型のもみあげの兄だが、その(もみあげ)の実力を知るソニアからすれば、少々悪い冗談が過ぎる。

 

 ゆえに弟ジュリアンをたしなめる方向に話の舵を切ろうとするが――

 

 

「ラフェール……!」

 

 此処で遊戯たちと観戦ムードだったレベッカの心なしか常よりも低くなった声が響いた。

 

 そう、このレ型のもみあげの男の正体は「ラフェール」――本来の歴史ではドーマの三銃士の一角を連ねた男であり、圧倒的なまでのデュエルの実力を有するデュエリスト。

 

 その実力の程は「遊戯クラス」と言えば、どれ程のものか窺い知れるだろう。

 

「あら、貴方は確か……」

 

「これはこれは、あの時のお嬢さんじゃないか――いい目をするようになったな」

 

「……レベッカの知り合い?」

 

 ソニアとラフェールが過去の記憶を巡らせた最中、遊戯が小首を傾げる。明らかに「何かありました」と言わんばかりの会合に少々困惑気味だ。

 

「彼はプロデュエリストのラフェール――レベッカにプロの壁を示したデュエリストだよ」

 

「ちなみに次の全米チャンプを確実視されとる程のデュエリストじゃ」

 

 そんな疑問に答えるように今作でのラフェールの肩書の一つ「プロデュエリスト」であることを説明するアーサーとその実力の程を評する双六。

 

 

 早い話が、過去に天才少女と呼ばれ、天狗になっていたレベッカの鼻っ柱を圧し折った人物である。

 

 

 だが、「全米チャンプ」と聞いて黙ってはいられない人物もいた。

 

「マジなの――」

 

「生憎だが、私は『次』を狙うつもりはないよ。彼から直接その座を貰い受けるつもりだ」

 

「――かよって、なにぉ! キースを倒すのは俺だぜ!」

 

「ふーんだ! お兄様の方が強いもん!」

 

「なんだとぉ!」

 

 そう、打倒キースを掲げ、プロを目指す城之内だ。

 

 サラッとジュリアンによって言外に兄より弱いと評された城之内は、ラフェールそっちのけで顎をとがらせながら食って掛かる。煽り耐性が皆無だ。

 

 城之内とて子供相手にこれ以上、踏み込むことはないだろうが、デュエリストとして、また先達として道を示してやるべく、ガツンと言ってやろう――

 

「止すんだ、ジュリアン。相手を侮るような真似は礼を失するだけでなく、己の品位すら下げる」

 

 などと考えていたが、それより先にラフェールがジュリアンと目線を合わせて先程とは打って変わって厳しい声色を向ける方が早かった。

 

「……で、でも、お兄様の方が強いもん……」

 

「その気持ちは嬉しいよ」

 

 言葉尻小さく眼前の城之内よりも兄の方が強いのだと示したかった様子を見せるジュリアンに、ラフェールはその頭に優し気に手を置く。

 

 その気持ちはラフェールとて理解できるが、だからといって「無礼」を働いて良い理由にはなりはしない。

 

「城之内 克也……だったな」

 

「おっと、やる気かぁ! この男、城之内様は逃げも隠れも――」

 

 やがてズイッと前にでたやたらとガタイの良いラフェールに張り合う様に胸を張る城之内だが――

 

「弟が済まなかった。だが私を想うゆえの言葉――どうか許してやって貰えないか」

 

「……ご、ごめんなさい」

 

「お、おう……」

 

 サッと下げられた兄弟の頭に返す言葉を完全に失った。なんとも度量の違いを見せつけられているようで、城之内も居心地が悪そうだ。

 

「めっちゃ気圧されてるじゃねぇか……」

 

「城之内が苦手なタイプかもね」

 

――アイツら~! 後で覚えとけよ!

 

 背後で味方の筈の本田と杏子が小声で話すフォロー皆無な援護射撃というよりも誤射な内容に、己が心中にて「後でコーヒーカップをぶん回してやる」と固く決意する城之内。

 

 

 そんな仲間同士のじゃれ合いを余所にラフェールが遊戯の方へと向き直り、右手を差し出す。

 

「そしてキミが武藤 遊戯か。海馬 瀬人とのデュエル、見事だったよ。あの時程バトルシティに参加しなかったことを悔やんだことはない」

 

 ラフェールが城之内の名前を紹介されずとも知っていたことから分かるように、彼も当然「バトルシティ」の情報はチェックしている。ゆえの後悔、ゆえの高揚。

 

「だが、この大会でデュエルキングとなったキミに挑める――その時は互いにベストを尽くそう」

 

「はい、その時はよろしくお願いします!」

 

 両者ともサラッと互いがぶつかるまで負けるつもりなど皆無な自負を見せつけつつ、名立たる二人のデュエリストの会合は握手と闘志を交わせつつも穏やかに終わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かに思われたが、此処でドーム内部の全ての照明が一気に消えた。

 

「何だ? 停電か?」

 

 思わず零した本田の声を否定するようにチカチカと明滅する照明に加え、突然に閉まる非常シャッター。

 

 

 そんな非日常的な雰囲気を漂わせる出来事の連続に、ざわざわとこの場に来ていた子供たちの不安が今にも溢れ出しそうに燻り始めた。

 

 

 

 

「みんな落ち着くんだ! キミたちもデュエリストとして、デュエルキングに恰好の悪いところを見せる訳にはいかないだろう!」

 

 だがドーム全体に響いたラフェールの声にハッと遊戯の元に視線を向け、デュエルキングの加護を求めるようにワラワラと集まる少年少女――己が内の不安や恐怖を少しでも和らげようと必死だった。

 

 やがて年の割に小柄な遊戯が子供たちの中でおしくらまんじゅうしているかのような状態にラフェールは小さく謝罪をいれる。

 

「済まないな、キミの名前を勝手に使ってしまって」

 

「そ、そんな! 気にしないでください」

 

 とはいえ、遊戯も近くに漂う不安の感情を見れば、文句など出る筈もない。

 

 そうして場の雰囲気が落ち着きを見せた頃、大人――というか、老人組が動き出す。

 

「うーむ、何かトラブルがあったのかもしれんの」

 

「なら、緊急時の連絡用に備え付けの電話が――あったあった」

 

 言外に「大した問題ではない」ことを双六が匂わせつつ、アーサーが「分かり易い希望」を見せてパニックの事態の芽を摘む。

 

「えーと、もしもし。はい、実は――えっ? もう動いてる? はい、はい、分かりました。では……はい」

 

 やがて受話器片手に軽い調子のやり取りを得て――

 

「どうだったのお爺ちゃん?」

 

「既に近くの職員が此方に向かっているそうだ。直に……うん? スポットライトがデュエルリングに?」

 

 幾つかのスポットライトがデュエルリングを照らし始め、頭上からドラムロールが響く。

 

 そしてモノアイを赤く狂暴さを感じる色に変化させたデュエルロボ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひぇえぇええええええっ!」

 

 が空から降ってきたペンギンの着ぐるみ――の裏に隠れた神崎に叩き潰された。

 

「ぐふっ!? ……ちょっと着地が乱暴じゃありませんか!?」

 

 

 そんな具合で突如としてデュエルリングに降り立った蝶ネクタイに仕立ての良いスーツだけを纏った《ペンギン・ナイトメア》の着ぐるみに先程までの緊迫感が一気に霧散していく。

 

「ペンギン伯爵だ!」

 

「わぁー、本物だー!」

 

 やがて盛り上がる少年少女たちの黄色い?声援に右手を掲げる決めポーズで返す《ペンギン・ナイトメア》の着ぐるみ。

 

 そしてその裏でコソコソと胸の中央あたりに拳の跡が生々しく残るデュエルロボを手にデュエルリングから離れる神崎。

 

 

 そんな混沌とし始めたデュエルリング周辺に杏子は《ペンギン・ナイトメア》に視線を移し、思わずポロリと言葉を零す。

 

「何なのアレ……」

 

「あれは『ペヌート・ペラッペ・ペ・ペギーン・ペンペン』伯爵――ラッビーのライバルであり、海馬ランドUSAの一員だよ」

 

「えっ? ペ……ぺ、ペ……なんですか?」

 

 アーサーの説明にまさか返事がくるとは思っていなかったのか慌てて砕けた口調を正す杏子だが、サラッと語られたその名は一度で覚えらない程に長ったらしい。

 

「『ペヌート・ペラッペ・ペ・ペギーン・ペンペン』伯爵だよ。とはいえ、名前が長いから、まず『ペンギン伯爵』としか呼ばれていないけどね」

 

 スポットライトに照らされたペヌなんとかペン……「() () () () () ()」の登場に周囲の子供は沸き立って行く光景を見る限り、このペヌなんとかは人気者らしい。

 

 

 そのなんとかペンギン――もといペンギン伯爵の背中が見える位置にデュエルリングから降りた後に陣取った神崎。

 

 そしてデュエルロボの残骸をカバン程のサイズに無理やり綺麗に折りたたみながら、何やらUSBのような機械をデュエルリングの操作盤らしき場所に突き刺した後、無線機に向けて小声で話す。

 

「よし――大田さん、繋ぎましたよ。」

 

――ハッキング対策は強化したんだけどな……ジークの方が上手ということか。

 

 肉塊ならぬ機塊のアートにされたデュエルロボを余所に内心でそんなことを考えていた神崎に、通信機越しの《機械軍曹》の人こと大田が現在の状況を簡潔に纏める。

 

『うむ、これは……デュエルリング経由でデュエルロボに向けたハッキングか。その最大レベルの12に設定されたデュエルロボをデュエルで倒さん限り、外へは出られんようにしとるようだな』

 

「なら大瀧さ――ペンギン伯爵、手筈通りにお願いします」

 

「このペンギン伯爵がキミにデュエルを申し込みますぞ!!」

 

 小声で告げられた神崎の声に威風堂々とデュエルディスクを構えるペンギン伯爵。

 

「さぁ、デュエルディスクからカードの剣を取るのです、少年!!」

 

「よーし、負けないぞー!」

 

「 「 デュエル!! 」 」

 

 その姿に少年リックもまたテーブルにおいたデッキをデュエルディスクにセットして応えた。

 

 ペンギン伯爵とリックのデュエルがデュエルロボを完全に蚊帳の外に置きながら始まる。

 

 

 

 そうして厄介な現状に対し、今ここに、おっさんたちが立ち向かうのだ。

 

 

 

「か、神崎さん!? どこから入ってきたんですか!?」

 

「上からです」

 

 立ち向かうのだが、此処でペンギン人気ゆえか、おしくらまんじゅうから解放された遊戯が告げた当然の疑問にドームの天井を指さしてサラッと返す神崎。

 

「上って…………でも何でアンタが? 確かお偉いさんだろ?」

 

「偶々近くにいたからですよ。丁度、手も空いていましたし」

 

 その返答に呆れ顔を見せる本田の言う様に普通ならば神崎は立場上、現場に駆け付けるポジションではないように思われる。

 

 だが、ことがことだけに速やかに問題を解決する必要がある為、スピードが求められることは明白。

 

 となれば、KC内でもっとも足の速い神崎に白羽の矢が立つのも自明の理。そう、自明の理なのだ。

 

 ゆえにお土産コーナーにあった小型のドラムや、偶々、着ぐるみを着用して自撮りに勤しんでいた《ペンギン・ナイトメア》の人こと大瀧などを抱えて、神崎は文字通りの「最短距離」を駆け抜けてきた感じである。

 

 

 

 そうした遊戯たちのやり取りを余所に先攻を得たペンギン伯爵はフィールド魔法を発動した後、手札の1枚をデュエルディスクにペシィッとおく。

 

「私は《トビペンギン》を召喚! そして私の発動したフィールド魔法《ウォーターワールド》の効果でステータス変化! テンションアップ!!」

 

 目の上の眉が左右に翼のように伸びたペンギンがフィールド魔法《ウォーターワールド》によって生じた浅瀬を見つけるや否や、その足元の水をパシャパシャしながら挑発交じりにステップを踏む。

 

《トビペンギン》 攻撃表示

星4 水属性 水族

攻1200 守1000

攻1700 守 600

 

「此処で2000のライフを払い、魔法カード《同胞の絆》を発動! レベル4以下のモンスターである《トビペンギン》と同じレベル・種族・属性のモンスターをデッキから2体特殊召喚しますぞ!」

 

ペンギン大好きおじ――ペンギン伯爵LP:4000 → 2000

 

 ペンギン伯爵の声に従い《トビペンギン》は仲間を呼ぶべく空に向けて鳴き声を飛ばすが――

 

「レベル4のモンスターが一気に3体も!?」

 

「ぐふふ、それはどうですかね――チェーンして速攻魔法《スター・チェンジャー》を発動! フィールドのモンスター1体のレベルを1つ上げます! これで《トビペンギン》のレベルは5にアップ!!」

 

 空から飛来したのは一つのラッパ。それを手にした《トビペンギン》はノーマルペンギンから演奏者ペンギンへとクラスアップした――気になって上がったテンションに伴いレベルも上昇した。

 

《トビペンギン》

星4 → 星5

 

「やがて適用される魔法カード《同胞の絆》の効果により、私はデッキからレベル5・水属性・水族のモンスター2体を特殊召喚できますぞ!」

 

 やがておろしたてのラッパにより運動会で良く聞くメロディを吹き鳴らしなせば――

 

「来なさい、ペンギン界の王――《大皇帝ペンギン》! 後、亀! 《カタパルト・タートル》!! フィールド魔法の効果でパワーアップ!」

 

 氷の大地を砕きながら浮かび上がるのは頭皮からたなびく王冠の如き黄金のたてがみを揺らす巨大なイワトビペンギンのような《大皇帝ペンギン》が手を空に掲げて、王者の威容を下々の者へと示す。

 

《大皇帝ペンギン》 攻撃表示

星5 水属性 水族

攻1800 守1500

攻2300 守1100

 

 その《大皇帝ペンギン》の足元にはカタパルトを背負った緑の亀型ロボットである《カタパルト・タートル》が球体上の足でホバリングしていた。

 

《カタパルト・タートル》 攻撃表示

星5 水属性 水族

攻1000 守2000

攻1500 守1600

 

「こんな方法があるんだ……流石ラッビーのライバルのペンギン伯爵、凄いね!」

 

「ぐふふ、褒めても手加減は致しませんぞ」

 

 魔法カードのコンボで一気にレベル5のモンスターを2体展開したプレイングに尊敬の眼差しを向けるリックの視線を受け、満更でもないペンギン伯爵。

 

「ですがまだ終わりではありません! 《カタパルト・タートル》の効果発動! フィールドのモンスター1体をリリースして射出し、相手にその攻撃力の半分のダメージを与えますぞ!」

 

 《大皇帝ペンギン》の指示に敬礼を返した《トビペンギン》は《カタパルト・タートル》のカタパルトにてうつ伏せに寝転がり、

 

「さぁ、あの子にペンギンちゃんの愛らしさを届けるのです! 《トビペンギン》射出!」

 

 リック目掛けてダイブした《トビペンギン》の羽毛ボディが炸裂。

 

 それによりフィールド魔法《ウォーターワールド》によってパワーアップした《トビペンギン》の攻撃力1700の半分、850のダメージがリックを襲う。

 

「うわわっ!?」

 

リックLP:4000 → 3150

 

「最後に永続魔法《水舞台(アクアリウム・ステージ)》を発動し、更にカードを2枚セットしてターンエンドです――ぐふふ、これからペンギンちゃんたちの絆をタップリと見せて差し上げましょう!」

 

 ペンギン伯爵のエンド宣言に、ターンの終わりを示す様に《大皇帝ペンギン》が《カタパルト・タートル》の上で挑発するようなダンスを踊る光景が、中々にファンシーだった。

 

 

 

 

 そんなペンギン伯爵に少年少女の尊敬の眼差しが集まるデュエルを余所に、城之内は「今はデュエルを観戦している場合ではない」と神崎に詰め寄る。

 

「それより、最大レベルのデュエルロボ倒さなきゃならねぇって聞こえた気がしたんだが、本当なのかよ!」

 

 そう、通信機越しの僅かなやり取りを小耳に挟んだ城之内からすれば、今はペンギンなんちゃらが悠長にデュエルしている場合ではない。

 

「そ、そんな……最大レベルはプロでも倒すのが難しいんでしょ!?」

 

「何とかならねぇのか、工場長のおっさん!」

 

『その声はあの時の坊主か――儂らも手は尽くしているが、相手の方が中々やり手でな。此方からの操作は受けつけんありさまだ。今すぐどうこうは出来ん』

 

 杏子の悲痛な声に縋るような言葉を投げかける本田だが、《機械軍曹》の人こと大田からすれば、下手人の腕に舌を巻くほかない。

 

「ですが肝心要のデュエルロボは処理しましたから、今すぐどうこうなる心配はありませんよ。現場の方は私たちで何とかしますので、大田さんは大本の方をお願いします」

 

『ふむ、なら其方は任せた。儂は下手人を追おう――KCに喧嘩を売った阿呆に目にもの見せてくれるわ』

 

 だが、既にデュエルロボは神崎の手によって悪趣味な現代アートになっている。ゆえに後の問題はハッキングを受けているこのデュエルリングと、閉じてしまった非常シャッターだけだ。

 

 少なくともペンギン伯爵がデュエルしている間に対処すれば良い為、そう焦ることはない。

 

 それゆえの神崎の対応だったが、此処で天才少女レベッカが動く。

 

「ちょっと借りていい?」

 

「情報管理の観点から駄目です。あと、少し離れてください」

 

 そう、彼女は若くして天才の名を欲しいままにする少女。その頭脳は大学に飛び級する程であり、特に電子系の――と、色々語るべきことはあったが、レベッカの協力を神崎が拒否った為、またの機会としよう。

 

「あっ、はい。邪魔してすみません。ほら、レベッカ――ボクたちはボクたちで出来ることをしよう」

 

「で、でもダーリン、今は緊急事態な――」

 

 遊戯がレベッカの手を握り、神崎の邪魔にならないようにと距離を取らせようとするが、初めて遊戯側から握られた手にドギマギするレベッカが神崎の対応に納得がいかないと再度、協力の姿勢を見せる前に――

 

 

 

 

 

 

 

 デュエルリングに神崎の拳が放たれた。

 

 

 

 

 この場の誰にも止める事の叶わない一撃は強かにデュエルリングの中枢部分を貫き、その命を無慈悲に刈り取る。

 

「――えっ? ……えっ?」

 

 それは一体誰の声だったのか。だが、その声の主の心情を端的に評するのなら「何が起こったんだ」――この一言に尽きよう。

 

 やがて神崎の一撃に耐えられる筈もないデュエルリングはプシューと気の抜ける音を僅かに漏らした後、息絶えるようにその機能を止めた。

 

 そして遊戯たち数名の視線がデュエルリングに突き刺さる神崎の拳と、相変わらずの胡散臭い笑顔の神崎本体を数回に渡り、行ったり来たりした後――

 

「な、なにやってるのよ!?」

 

 眼前で行われた自身の常識から大きく逸脱した行為に遊戯たち一同の声を代弁するかのような小声の叫びがレベッカから飛び出した。

 

 

 だが、対する神崎は当然のことのように返す。

 

「ハッキングを受けたのはあくまでこのデュエルリングだけなので、破壊しました」

 

 そこにあるのは圧倒的ゴリラ(知性)……! 圧倒的ゴリラ(パワー)理論……!

 

 やはり暴力……! 暴力は全てを解決する……!

 

 ジー〇ロ〇ド(没落貴族)だろうが、〇星(カニ)だろうが、ブルー〇(身も心もメカ)だろうが、プレ〇メー〇ー(復讐の使者)だろうが、草〇さん(ジャ〇アン)だろうが、ハ〇イ(テロリスト)だろうが――

 

 どれ程のハッキングスキルを持つ天才でも「ネットワークに存在しないもの(ぶっ壊れた残骸)」にはアクセスできない。逆転の発想である。

 

 

 失うことを恐れない人間のなんと恐ろしいことか。

 

 

 

 

 そんなゴリズム(マッスル主義)に呼応するようリック少年は今まさに攻勢に移る場面であった。

 

「バトル! 《サファイアドラゴン》と《天空竜(スカイ・ドラゴン)》で攻撃だぁ!」

 

 リックの声に呼応するのは、全身が青いサファイアで覆われた美しきドラゴンと、4枚の羽を持つ鳥の特徴を色濃く残したグリフォンのような紫色のドラゴンの2体。

 

 その攻撃力はどちらも1900と中々高く、ペンギン伯爵のフィールドの厄介な《カタパルト・タートル》を片付けるには十分だ。

 

「おっと、キミ自身が発動した永続魔法《平和の使者》の効果で攻撃力1500以上のモンスターが攻撃できないことを忘れてしまったのですかな?」

 

「へへん、心配いらないよ! 永続魔法《絶対魔法禁止区域》の効果でボクの効果モンスター以外――つまり通常モンスターは魔法の効果を受けないのさ!」

 

 そしてサッと入るペンギン伯爵の忠告にも心配ご無用とリックは己の敷いた攻防一体の布陣に得意気だ。

 

「行っけぇ! ボクのドラゴンたち!!」

 

 相手のリバースカードが気掛かりであるが、どちらか1体の攻撃は通してみせると2体のドラゴンが《カタパルト・タートル》に牙を剥き、空中から襲い掛かるが――

 

「やりますな――ですが無駄です! 永続魔法《水舞台(アクアリウム・ステージ)》の効果により私の水属性――つまりペンギンちゃんたちと後、亀は同じ水属性モンスター以外との戦闘では破壊されません!」

 

「でもダメージは受けて貰うよ!」

 

「甘ィ! リバースカードオープン! 永続罠《スピリットバリア》を発動! このカードにより私のフィールドにペンギンちゃんたちが存在する限り、私への戦闘ダメージは全て0に!」

 

 襲来する《サファイアドラゴン》と《天空竜(スカイ・ドラゴン)》にペンギンたちが飛ばした大量のシャボンのような泡が壁のように立ちはだかり、ドラゴンたちの強襲を妨げる。

 

「ふっふっふ、どうです! この完全無欠のペンギンちゃんの絆の力は!」

 

「くっそ~! カードを3枚セットしてターンエンドだ!」

 

 

 

 

 かくしてリック少年の攻撃を軽くあしらってみせるペンギン伯爵のタクティクスに完全に観客状態の双六は感嘆の声を漏らす。

 

「あのペンギン……中々やるぞい!」

 

「当たり前だよ! ペンギン伯爵はラッビーを何度もあと一歩のところまで追い込んだことがあるんだから!」

 

 そしてジュリアンが「当然だ」と返すが、その後で「キング ガ 最初カラ 全力ナラ 一瞬ダ!」と瞬殺されることは、ペンギン伯爵の名誉の為にも伏せて置こう。

 

 

 

 だが、そんな双六とジュリアンのやり取りに「ハッ」と現実に戻る遊戯たち。そしてぶっ壊れたデュエルリングを指さし本田が状況の確認を行う。

 

 なお双六は現在も変わらず、ペンギン伯爵VSリックのデュエルに釘付けだ。

 

「これって何したんだ? もう解決したってことで良いのか?」

 

「ハッキングされた端末を破壊して、大瀧さ――ペンギン伯爵の持つデュエルディスクでデュエルしている状態ですから、ハッキングの影響は気になさらずとも問題ありませんよ」

 

 早い話がハッキングを受けたPCことデュエルロボ+デュエルリングを物理的に破壊し、

 

 その横でハッキング云々とは関係のないデュエルを始めた状態である。

 

 そう、デュエルロボは放っておいても世界を破壊したり、物理的手段で襲い掛かってこない以上、無視しておけばいいのだ。

 

 

 そうして語られた神崎の説明に遊戯は小さく安堵の息を吐く。

 

「なら、これで一安心だね」

 

「でもよぉ、遊戯。シャッターを開けるにはデュエルロボに勝つ必要が――」

 

 とはいえ、未だ問題もある。

 

 神崎はドームの天井から強引に侵入したが、現在このドームはハッキングにより非常シャッターが閉まってしまった為、実質的な密室状態なのだ。

 

「開きました」

 

「えっ?」

 

 かと思ったら、神崎がシャッターを人力で上げたその一瞬で解決した。オカルト能力のない密室など、マッスルの前では無いも同然である。

 

「なんだよ、ただシャッターが下りてただけかぁ――閉じ込められたのかと思ったぜ」

 

 思いの外、アッサリと非常シャッターが開いた為、城之内はロックの類がされていなかったのかと早合点するも――

 

「シャッターが歪んでねぇか?」

 

「…………きっと気のせいよ」

 

――そういえばこの人、玲子ちゃん(マッスル)の上司なんだった……

 

 本田の呟きに対し、杏子が吐露した心の声が全てを物語っていた。でも北森は此処まで脳筋じゃないから……。

 

 

 

 

 こうして凡そ力技で全ての問題を解決したゆえに残すところはペンギン伯爵とリックのデュエルのみ――ぶっちゃけ勝敗は今後に影響しないが、デュエリストたるもの勝利を目指すものである。

 

「手詰まりのようですな! ですが、攻めの手は緩めませんぞ! 私のターン、ドロー!」

 

「で、でもペンギン伯爵のペンギンたちは《カタパルト・タートル》でいっぱい飛んでいっちゃったから、残りは《ペンギン・ナイトメア》だけだよ!」

 

「そのようなものペンギンちゃんの生命力の前では無用な心配です!」

 

 ペンギン伯爵の止まらぬ猛攻にリックがリソースの限界を示すが、その程度の問題はペンギンパワーの前では些細なことだ。

 

「魔法カード《トランスターン》を発動! この効果で《ペンギン・ナイトメア》を墓地に送り、同じ属性・種族でレベルの1つ高いモンスターをデッキから特殊召喚です! 来なさい、2体目の《大皇帝ペンギン》!!」

 

 《ペンギン・ナイトメア》が海の中にポチャンと飛び込んだ後、一気に海面から飛び上がれば、そこにいるのは《大皇帝ペンギン》。

 

 そう! 極寒の海はペンギンたちの進化を促すのだ!

 

《大皇帝ペンギン》 攻撃表示

星5 水属性 水族

攻1800 守1500

攻2300 守1100

 

「そして《大皇帝ペンギン》の効果を発動! このカードをリリースしてデッキから自身以外のペンギンちゃんを2体まで特殊召喚しますぞ!」

 

 フィールド魔法《ウォーターワールド》の効果でパワーアップした《大皇帝ペンギン》が宙返りしながら海に飛び込めば――

 

「私は《ボルト・ペンギン》と《ペンギン・ナイト》を特殊召喚です! さらに墓地の《否定ペンギン》の効果により『ペンギン』ちゃんの効果が発動した瞬間、自身を復活!!」

 

 お次は三つの水柱が立ち上る。

 

「おいでなさい、3体のペンギンちゃんたちよ!! そしてフィールド魔法《ウォーターワールド》でパワーアップするのです!」

 

 やがて現れたのは「×」マークの書かれたプラカードを持った億劫そうな表情を見せる黒いペンギンと、

 

《否定ペンギン》

星3 水属性 水族

攻1600 守 100

攻2100 守 0

 

 両手のヒレの先端から電撃がほとばしる鞭をテンション高めで叩きつける青いペンギンに、

 

《ボルト・ペンギン》

星3 水属性 雷族

攻1100 守 800

攻1600 守 400

 

 剣を構え、肩に赤いアーマーを付けたペンギンがペンギン伯爵の元に集った。

 

《ペンギン・ナイト》

星3 水属性 水族

攻 900 守 800

攻1400 守300

 

「また増えた!?」

 

「当然です! ペンギンちゃんは大家族なのですから!」

 

 これにて《カタパルト・タートル》を含め、合計4体のモンスターがズラリと並ぶペンギン伯爵のフィールドにリックは自身のピンチを悟る。

 

 そう、モンスターが増えたということは――

 

「永続魔法《平和の使者》で攻撃は出来ませんが――《カタパルト・タートル》の効果により《否定ペンギン》を射出! さぁ、何度でもペンギンちゃんの愛を受けるのです!!」

 

「うわっ!?」

 

 再び、《カタパルト・タートル》によるペンギン砲弾がリックに炸裂するということ。

 

リックLP:2000 → 950

 

 更に今回は攻撃力が2100と高めな《否定ペンギン》の潤いボディによる一撃とあってか1050ポイントと中々に侮れないダメージだ。

 

「ぐふふ、着実にペンギンちゃんの愛は伝わっている(ライフが削れている)ようですな……」

 

――さらに私の手札には《ガード・ペンギン》がある。これで神崎くんとのデュエルの時のように《溶岩魔神ラヴァ・ゴーレム》が飛んで来ても、ペンギンちゃんは不滅です!

 

「ターンエンド! さぁ、少年よ――キミの輝きを見せてご覧なさい!」

 

 やがて並んでいたライフもこれで覆ったと、内と外の両方で満足気なペンギン伯爵だったが、神崎から自身に問題解決の合図が送られたのを確認すると、了承した旨を示す様にサッと襟を正す仕草を見せた。

 

 

 

 

 そんなペンギン伯爵と神崎のやり取りを見ていたレベッカは頭痛を堪えるように頭を押さえる。

 

「なんなの、この人たち……」

 

 思わずそんな言葉が零れてしまうのも無理はない。なにせ――

 

「書き換えられたプログラムは無視して機械を破壊、非常シャッターは力づくで開けるって、そんな前時代……いえ、原始的な……」

 

 凡そ文明人にあるまじき程の力技である。原始人でも、もう少し工夫するのではないだろうか。

 

 KCのポテンシャルを考えれば、もっと良い方法が幾らでもあったことは明白だ。

 

 

「あの少年のデュエルに『この場の行く末』なんてものを乗せる方が嫌だったもので」

 

 しかし神崎からすれば、くだらない大人の思惑に関係のない子供が巻き込まれずに済むのなら、目先の損失などに躊躇はしない。

 

 

 それで誰も傷つかずに解決できるのであれば、デュエルロボ+デュエルリングの修理代などプライスレス(安いもの)である。

 

 

 

 そんな神崎の瞳にはペンギン伯爵と楽しそうにデュエルするリックと、その二人のデュエルに一喜一憂する少年少女たちの姿が映っていた。

 

 

 

 

 

 






ジーク「やめろぉおおッ! こんものは電子戦ではない! 私の信じる電子戦は、もっと優雅に知略を張り巡らせて……!」




~入りきらなかった人物紹介~

「ソニア」と「ジュリアン」

遊戯王DMに登場
ラフェールの妹と弟。

原作では双方とも、ラフェールの幼少時(が普通のもみあげだった頃)にダーツの引き起こした海難事故で幼くして死亡している。

ソニアはウェーブがかった長い金髪の少女であり、作中ではピンクのリボンと同色のフリルのドレスを着ていた。ピンク色が好きなのかもしれない。
ラフェールを「お兄ちゃん」と呼ぶ。

ジュリアンは前髪を中央で分けた茶髪の少年であり、作中での服装は某小さくなった名探偵のような赤い蝶ネクタイと青いジャケット、半ズボンを着用――名のある家だけに正装が求められるのだろうか。
ラフェールを「お兄たん」と呼ぶ。舌足らずゆえだろう。



今作では――
上述の海難事故から強引に救助された為、ソニア、ジュリアンともに生存。それゆえに順当に年を重ねた。それに伴いラフェールの呼び方も「お兄様」へと変化。

ちなみに、ワールドグランプリの現在の時期での二人の年齢は――
ソニアは遊戯より少し高い程度の身長くらいの、ジュリアンはモクバくらいの年齢を想定している。

でも明確な数字の算出は勘弁な!(逃げ)


~入りきらなかった人物紹介2~

リック
遊戯王DMに登場


ドラゴンが大好きな少年。デッキはドラゴン族一色! かと思えば原作では炎族である《ビッグバンドラゴン》も混ざっていた――多分、あんまりデュエルのルールを理解していない。

原作ではKCグランプリにてジークの策略により最高レベルのデュエルロボとデュエルする羽目になる。なおそのデュエルはデッキ諸共、闇遊戯が引き受けてくれた。

デッキは遊戯からデッキ診断を受け、城之内く――もとい永続魔法《凡骨の意地》をプレゼントされたことで、ドラゴン族モンスターを手札にため込み、《スピリット・ドラゴン》の効果でワンショットキルを目指すデッキと化す。

今作では――
遊戯が持つ永続魔法《凡骨の意地》が城之内の元を経て本田の元へ旅立ったので、彼のデッキ診断はラフェールが担当。

詳細は次回。

~今作オリジナルキャラクター紹介~
ペンギン伯爵

正式名称――『ペヌート・ペラッペ・ペ・ペギーン・ペンペン』伯爵。

だが、その冗長過ぎる名前のせいか、「ペンギン伯爵」としか呼ばれない。

BIG5のペンギン大好きおじさん大瀧によって海馬ランドUSAにぶっこまれたニューキャラクター。外見は《ペンギン・ナイトメア》そのもの。

海馬ランドUSAのアトラクション――海中観覧車を管理している設定がある。

本来は海馬ランドUSAの「リーダー」として君臨する筈だったが、海馬社長の「白黒ならパンダの方がまし」との声で却下された。
でもリーダーならばパンダよりウサギ(ファニーラビット)の方が素敵デース!


何処かつっけんどんな性格と爵位を意識した口調から傲慢に見られがちだが、

伯爵の地位にいる己が「民を守らねばならない」との責任感から来るものであることが周知である為、あまり気にされていない。

デュエルの実力はそこそこ。

ラッビーのライバルを自称しているが、自身にはない奔放さを持つラッビーを何処か羨望している節がある。


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