此方が本当の168話です2019・12・7
前回のあらすじ
漆黒の豹戦士パンサーウォリアー「強くなったな、城之内……もう俺の助けは必要あるまい」
匿名希望のE・HERO「デッキ改修にベンチ落ちはつきものさ。なぁ、フレイム・ウィングマン」
勲章おじさん「勲章ものだな」
カードを引く。絶好調だ。展開する。調子も良い。攻撃へ転じる。届かない。追撃を敢行。届かない。効果破壊を狙う。届かない。カウンターを狙う。届かない。物量で攻める。届かない。高火力で攻める。届かない。搦め手で攻める。届かない。自爆覚悟で攻める。届かない。相手の攻撃が迫る。防御。届かない。回避。届かない。迎撃。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。届かない。
どうして届かない。自分のデュエルは出来ているのに、最高のコンディションで挑めているのに、何故届かない。
足掻きに足掻けども届く気配がまるで感じられない。
どうすれば届く。何をすればいい。今まで頑張ってきたんだ。きっと頑張れる。
頑張って、頑張って、頑張って、頑張れば、何時か必ず、絶対に、追い付ける。
本当に?
「おい、大丈夫かよ、竜崎! お前、顔真っ青だぞ!?」
そんな城之内の声に自身の奥深くに潜っていた竜崎の意識が一気に引き戻される。
「――お、おう。大丈夫や……」
しかしそう零す待合室の近くにあったベンチに魂が抜けたように座り込む竜崎の顔色は優れない。
「どうみたって大丈夫じゃねぇよ」
「……放っといてくれて大丈夫や」
「放って置けるわけねぇだろ」
圧倒的なまでの力の差を見せられた一戦ゆえに様子を見に来た城之内が心配気な視線を向けつつ、どうしたものかと頭をガシガシするが、上手い言葉は浮かばなかった。
そっけなく何処か遠ざけるような竜崎の態度だが、熱血派な城之内の性分を鑑みれば放っておける訳もないだろう。
「……なら、ちょっと場所変えよか」
そんな相手の姿に根負けしたように零した竜崎が力なく腰を上げる光景は城之内が見たことがない程に弱々しかった。
そうして各々のデュエリストたちの浮き沈みする心を余所にワールドグランプリはデュエルキング以外を振り落とすように何の停滞もなく進んでいく。
やがて現在デュエル中のジークは天馬にまたがるワルキューレたちと共に眼前の圧倒的攻撃力を誇る機械仕掛けの三つ首のドラゴンを指さす。
「魔法カード《ワルキューレの抱擁》を発動。私のワルキューレ1体を守備表示にすることで、相手モンスター1体を除外する――これでキミご自慢の《サイバー・エンド・ドラゴン》にはヴァルハラに旅立って貰おう」
ジークの声にワルキューレの1体が天に祈りを捧げた後に剣を掲げると、天上より降り注いだ光が三つ首の機械竜、《サイバー・エンド・ドラゴン》に降り注ぐ。
暫くして、天に召されるように消えていった《サイバー・エンド・ドラゴン》。
「くっ、私のサイバー・エンドが……!!」
そんな己のエースであり、切り札を失ったスキンヘッドのずんぐりした体形の口元に少々髭が見える男――デュエル流派の一つ、サイバー流を修めた鮫島は悔し気だ。
「どれ程の攻撃力を有していようとも、攻撃できなければ
そしてジークは相対する鮫島の実力を鼻で笑いながら、嘲笑してみせる。
有名なデュエル流派「サイバー流」を修め、なおかつ「師範」にまで上り詰めた男の力が「この程度なのか」と。海馬に自身の実力を見せつける前に倒れる相手などジークは求めていない。
「さて、こんな座興など早々に終わらせてしまうとしよう。行け、ワルキューレたちよ!愚かな夢想家に現実を教えてやるがいい!!」
ゆえにジークは天に舞うワルキューレたちに終局の鐘を鳴らさせるべく声を張る。
そうして5体のワルキューレたちの剣撃が天馬の疾走と共に鮫島の元に降り注いだ。
「ぬぐぁああああぁあああああ!!」
鮫島LP:4000 → → → 0
「くっ……」
デュエルの決着と共に膝をつき、無力を噛み締める鮫島の頭上から声が落ちる。
「敗者にはお似合いの末路だな」
「貴方に……貴方にリスペクトの心はないのですか!!」
そのあまりな言いように鮫島は怒りの声を張る。
彼が誇る「サイバー流」の理念は「互いに全力を尽くし、勝負の後は互いに心から称え合う」――そうしたデュエルを誇りとしている。
ゆえにジークの言葉はサイバー流の師範の1人として、鮫島は無視することが出来なかった。
「リスペクト? あぁ、キミは『リスペクトデュエル』などというものを掲げた流派だったな――くだらない。負け犬の遠吠え程、聞くに堪えぬものはない」
「それは聞き捨てなりませんね!」
「くだらないとも」
しかしジークからすればサイバー流の正道の教えなど「くだらない」ものだった。鮫島を嘲笑し、見下す視線に呆れの色が見え始める。
「『キミたち』の語る『リスペクトデュエル』は集団内の漠然とした好悪に乗っ取っただけの代物に過ぎない。それは『嫌悪する対象への弾圧』と何が違う?」
そうしてサイバー流の理念たる「リスペクトデュエル」に対し、悪意をふんだんに含んだ解釈を返すジークは鮫島を皮肉気に嗤って見せた。
「違う! リスペクトデュエルは全力でデュエルに挑み、勝ち負けなど関係なく、互いを称え合え――」
「なら、何故『私をリスペクト』しない?」
「――ッ!!」
激昂さすら感じさせる鮫島の勢いだったが、ジークの一つの言葉でピタリと止まる。そんな光景に満足そうなジークは嗜虐的な笑みを浮かべながら続ける。
「勝敗関係なく称え合うのだろう? 何故、私を称えない? 私が『リスペクトの心』とやらを持っていないからか?」
「それは……」
殆どこじ付け同然の返答だが、今現在返す言葉を失った鮫島は確かに「ジークのデュエルを一方的に否定している」。
ジークが何故そんなデュエルをするのか? 何故それを正しいと考えたのか――そういったものを全て無視して否定していることは確かに事実だ。
とはいえ、どうみてもジークのデュエルが世間一般に正しいものには見えない為、やはり「ただの言いがかり」でしかない。
しかし真実などジークにとってはどうでも良かった――いや、「どうとでもなる」と言うべきか。
「私が『気に喰わない』から――そうだろう? だから『リスペクトの心がないのか』と問うた。それがないものは『幾らでも糾弾して構わない』から」
誇りだなんだと語った鮫島と、敗者を嗤う自身に何の違いがあると、ジークは悪魔のささやきを落とす。
「違う……違う……!! リスペクトデュエルはそんなものじゃない!!」
「フフフ、オウムのように同じ言葉を繰り返すのではなく、論理的な反論を願いたいものだね」
やがて誇りをもって敗北した鮫島を「敗者らしく」彩ったジークは満足気に背を向ける、最後の最後に追い打ちをかける。
「もっとも、敗者の弁に耳を貸すものがいるとは思えないがな」
「それでも……それでも、私は……!!」
「世界は勝利者が動かすものだ。敗者はそうやって地べたで喚いているがいい」
そうして海馬への溜まりに溜まったフラストレーションを適度に発散させたジークは胸ポケットの薔薇をピンと鮫島に放りつつ、会場を後にする。
会場に残るのは項垂れる敗者だけだった。
控室に戻ったジークは高級そうなソファーに腰を落とし、退屈そうに息を吐く。
「大会のシステムとはいえ、有象無象とのやり取りはうんざりする」
早々にデュエルキングの称号を得て、その場で海馬に勝負を挑もうと考えているジークからすれば、膨大な参加者によって伸びた道筋は些か以上に長すぎた。
多少骨のあるデュエリストがいようとも、自身からすれば敵ではない現実がある以上、作業感が強いのだろう。
「だが……フッ、舞台が整いつつあるな――通信?」
しかし、その裏で海馬へのもう一つの決戦を企てていたジークは己の未来予想に笑みを深めるが、専用の電話の呼び出し音に応えれば――
「これは父上。どうかなされましたか ほう、パラディウス社から……ご安心ください。何も問題はありません」
シュレイダー家にて朗報を待つジークの父からの連絡。
それはパラディウス社から釘を刺すようなメッセージを聞いたゆえに計画の安否を問うものだった。
早い話がパラディウス社からシュレイダー社に向けて「平和な大会にしようね!」的なことを態々名指しでダーツが伝えたのである――言外の圧力ってやつだ。
「計画は順調そのものです。掴んだ尻尾が何なのかすら理解していない愚者が一喜一憂している光景をお楽しみください」
リックVSペンギン伯爵の際にKCから打たれた手も、ジークが用意したダミープログラムに引っ掛かり、サイバーテロに関する物的証拠が得られなかったゆえのダーツの中の人の苦肉の策だったが、ジークを止めるには至らない。
「そろそろ次の試合の準備を行いますので……はい、朗報をお待ちください――――フッ、海馬 瀬人。キミには少し失望したよ」
そうして父との通信を終えたジークは海馬に落胆するように小さく息を吐いた。
今回のパラディウス社の言外の圧力は、つまりはKCが、海馬が、己との勝負から背を向け、逃げたと同義だとジークは考えたゆえ。
実行したのは神崎やらBIG5やらの面々だが、実行した相手が問題ではない。KCが、海馬がそれを止めなかったことが問題なのだ。
「これではあのペガサスも海馬を見限り、我がシュレイダー社をパートナーに選ぶであろうことも時間の問題だな」
そして海馬への失望と共に、己が思い描く未来予想図に修正を加える必要性を考えるジークの心は少しばかり「張り合い」を失っていた。
ところ変わって、ダーツの為に用意された一室にて膝をつくシモベが炎の悪魔ボディをメラメラさせる中、ダーツの中の人はそのままの姿でダーツらしからぬ口調で零す。
「『レイン恵』……ですか」
「はい、ご命令によりKCに待機させていたワタシめの配下から『人間ではないもの』を発見したとの報告があったんだYO!」
シモベによってもたらされた情報は神崎に色々と二の足を踏ませるものだった。パラドックスが所持する活動記録の詳細の把握を、未来のテクノロジーの前に頓挫した事実が此処に来て響く。
神崎にとって「パラドックスの身柄」はイリアステルへのジョーカーともなり得る為、無茶はできない。
「で・す・が! この会場には精霊を知覚できる者もおりますのでー、ワタシが直接お知らせに馳せ参じた次第です」
「助かります」
「いえいえいえいえ! この程度、当ー然のことですとも!」
そうして「気を利かせたワタシはどうよ! どうよ!」なシモベが謝辞を前に手を前に振りながらオーバーに謙遜して見せる姿を余所にダーツの中の人、神崎は思案する。
――牛尾くんが言っていたKC見学の話か……後輩としか聞いていなかったが、まさか彼女が関係するとは……
レイン恵――既に軽く紹介は済ませているが、彼女は遊戯王のゲームTFシリーズの住人であり、イリアステルのメンバーの1人だ。ちなみに、この世界には他にも――
先祖代々プリンを作り続け、1日10個しか手にはいらない「プリン・トリシューラ」なる幻のスイーツを作っている職人の存在や、
ものまね稼業の茂野間家の息子の一人が「オレっちは教師になるんだぁい!!」と家を飛び出したとの話。
海産業界のドンと名高い海野家、先祖代々が考古学会一家の宇佐美家や、ファッションブランド「シーサイド」に加え、ヤク――もとい反社会組織、龍剛院一家などなど。
DM時代にも関わらずチラホラ出てきている人たちの存在は神崎もある程度入手している。とはいえ、原作の事件には殆ど関わることもなかった為、周辺調査に留めた後は特に何もしていないのだが――
「周辺に赤帽子の男はいましたか?」
文字通り、世界に「
「……? いえいえ! そのような報告は受けていないんだYO!」
「そうですか」
「その赤帽子とやらに、何か問題がおありで?」
「いえ、いないのであれば其方に関しては気にせずとも構いませんよ」
シモベの報告にレイン恵は「イリアステルの命令、もしくは自発的に行動した」と判断した神崎は内心で小さく息を落としながら考えを纏める。
――此処まで本来の歴史が歪んでいるにも拘らず、未だに姿を現さないのならば存在の有無はどうであれ、「いない」扱いで問題はない。
そう、実際に動かないのであれば無視して問題ない――というか相手が本気になった場合、神崎は明日への逃亡をかますか、リアルファイトで殴り合うしかない。お腐りになられるようなエンドは個人的に御免であろう。
「ふーむ。では、あの者への対処は如何様に?」
「そうですね……相手の目的がハッキリしない以上、初手で強硬策を取る気にもなれませんし――」
そうして話の核がレイン恵への対処に戻ったことで神崎は顎に手を置きつつ悩む素振りを見せる。
――アヌビスをKCから離した途端にこれとは……相手は此方の状況をかなり詳細に把握していると考えるべきか? しかし相手の強硬策どころか様子見するような動きも気になる。
イリアステルが神崎の情報を何処まで掴んでいるかが不明瞭な為、「何処まで動いて問題ないか」の線引きがやりにくい。神崎はイリアステルに冥界の王の力がバレれば速攻でぶっ殺されかねない為、下手を打つわけにもいかないのだ。
「――念には念を入れておくことにしましょう」
ゆえに最悪の事態だけを避ける方針を固めた神崎は幾枚かのカードをシモベに差し出す。
「立て続けに申し訳ありませんが、幾つかお願いしても構いませんか?」
「勿論ですとも! このシモベめをどうぞ使ってくださいな!!」
かくして打たれる一手が転がる先は吉か凶か。
そんなこんなで色々と思惑が渦巻くワールドグランプリだが、そんなこととは無縁な二人がデュエルするのは様々な列車モンスターが行き交うゴーカートならぬゴー列車エリア。
「BGMだか、4WDだか言うゲームを作った相手って話だけど、デュエルの方もちょっとはやるようね」
そこでデュエルする一方、ヴィヴィアン・ウォンはセンスを片手に口元を隠しながら、対戦相手を挑発する。
ヴィヴィアンLP:2300
そのフィールドに4枚のセットカードに守られた1体のモンスター、両肩から幾重もの銀の棘が生えた漆黒の全身鎧に身を包む《闇魔界の戦士 ダークソード》が二刀の剣を構える。
《闇魔界の戦士 ダークソード》 攻撃表示
星4 闇属性 戦士族
攻1800 守1500
「D・D・M――ダンジョン・ダイス・モンスターズ、だよ」
そんなヴィヴィアンの発言に注釈を入れるもう一方、御伽。
御伽LP:2800
互いのライフは似たようなものだが、そのフィールドにはセットカードはない。だが、モンスターは――
手足を金の輪のアーマーで覆った赤いマフラーをたなびかせるクナイを持った忍者が腕組みし、
《速攻の
星4 闇属性 戦士族
攻1700 守1200
一つ目のついた三角形のような形をした水色の小型の飛行船が独楽のような脚部を浮かべながら、目玉をギョロギョロ動かし、
《異次元の
星3 闇属性 機械族
攻1200 守 800
目玉に細いアームが幾つか伸びたマシンがフヨフヨと浮かんでいた。
《異次元の偵察機》 攻撃表示
星2 闇属性 機械族
攻 800 守1200
フィールドのモンスターの総数は御伽が勝っているものの、攻撃力とセットカードの差は歴然である。そして手札の方も2枚と少々心もとない。
「あ~ら、ごめんなさ~い。私、無名の人には興味なくってぇ」
「無名か……否定はできない、かな。でもデュエルにそんなことは関係ないよ! 僕のターン、ドロー!!」
ゆえに余裕綽々なヴィヴィアンがセンスと共に豊富な自身の手札をヒラヒラ揺らして挑発する姿に対し、返答代わりに御伽は力強くドローしつつ天を指さす。
「このスタンバイフェイズに自身の効果で除外されていた《ヴェルズ・サンダーバード》が帰還し、その効果により攻撃力は300アップ!」
その御伽の指の先からけたたましい鳴き声と共に何もない空間からヌルッと飛翔したのは首元から5本の触手が伸びた不気味な黒いハゲワシのような鳥。
《ヴェルズ・サンダーバード》 攻撃表示
星4 闇属性 雷族
攻1650 守1050
↓
攻1950
翼を広げ、悠々と己の強さを示す様に宙をクルクルと飛ぶ《ヴェルズ・サンダーバード》の攻撃力は《闇魔界の戦士 ダークソード》より150と僅かだが上回っている。
「《異次元の哨戒機》と《異次元の偵察機》をリリースしてアドバンス召喚!!」
しかしヴィヴィアンの4枚のセットカードの前には少しばかり頼りないと、天高く飛び立った二体のマシンを贄に天より巨大なサイコロが降り立ち――
「ダイスに眠るダンジョンの王よ! 今こそ目覚めよ! ディメンジョン・ダイス! 生誕せよ! 《ゴッドオーガス》!!」
巨大なサイコロが展開すると共にそこから現れるのは藍色のアーマーを見に纏った巨躯の戦士。その手中の身の丈程もある大剣を振ると共に疾風が舞う。
《ゴッドオーガス》 攻撃表示
星7 地属性 戦士族
攻2500 守2450
「《ゴッドオーガス》の効果! 1ターンに1度、ダイスを3つ振り、同じ目が出た時に効果を得る! クレスト・ダイス!!」
そして《ゴッドオーガス》が地面に大剣を突き刺せば、その柄の部分から飛び出した3つのサイコロが空中でクルクルと回転を始めた。
「1か2なら相手のターンの終わりまで戦闘・効果で破壊されず」
ぶつかり合いながら回転する3つのサイコロは段々と回転速度をゆるめていく。
「3か4なら僕は2枚ドロー! 5か6ならこのターンのみダイレクトアタックでき、3つとも同じ数字なら全ての効果を得る!」
「ふふん、手札補充の2枚ドロー狙いだろうけど、そう上手く行くかしら?」
やがてヴィヴィアンの軽口と共に3つのサイコロがピタリと止まり宙に浮かぶ中、示す出目は――
「出た目は2・2・6! よって《ゴッドオーガス》は相手ターン終了まで破壊されない!」
そうして三つのサイコロが《ゴッドオーガス》の剣の柄に戻ると共に、その全身にエネルギーが漲り始める。
「そして出た目の合計は10! よって、その合計の100倍――1000ポイントのパワーアップだ! ゴッド・フォース!!」
やがて拳を胸の前で握りしめ、体内を巡っていた力がオーラのようにその全身を覆い力強さを増す《ゴッドオーガス》。
《ゴッドオーガス》
攻2500 守2450
↓
攻3500 守3450
これで攻撃力は《闇魔界の戦士 ダークソード》を大きく上回り、セットカードが《聖なるバリア―ミラーフォース―》のような逆転のカードでも《ゴッドオーガス》を止めるには至らない。
「なら、攻撃してみなさい! 私の伏せカードを乗り越えられるものならね! おーほっほっほっ!」
しかし手の甲を口元に当て、お嬢様感溢れる高笑いするヴィヴィアンの姿を見れば、罠があることは明白。ゆえに御伽は相手の予想を超えるべく一手打つ。
「僕は魔法カード《ブラック・ホール》を発動! フィールドの全てのモンスターを破壊する!!」
「自分のモンスターごと!?」
天より全てを呑み込まんと黒き破壊の奔流が渦巻く。
自身のフィールドの3体のモンスター諸共、ヴィヴィアンの唯一のモンスター《闇魔界の戦士 ダークソード》の破壊を狙った御伽。アドバンテージの観点から見れば悪手のようにも思えるが――
「それはどうかな! チェーンして《速攻の
御伽のデッキにとってはあまり痛手にはならない。
「墓地の闇属性モンスター2体――《異次元の哨戒機》と《プリーステス・オーム》を除外し、このカードをエンドフェイズまで除外! 隠れ身の術!!」
《速攻の
「まだだよ! 《ヴェルズ・サンダーバード》の効果も発動! 魔法・罠・モンスター効果の発動をトリガーに自身を次のスタンバイフェイズまで除外!!」
一方でけたたましい鳴き声と共にアタフタと異次元に頭を突っ込む《ヴェルズ・サンダーバード》。だが、腰が引っ掛かったのかバタバタともがいていた。魔法カード《ブラック・ホール》の着弾は秒読みである。
やがて《ヴェルズ・サンダーバード》が間一髪で《ブラック・ホール》から逃れた中、地面に二本の剣を突き刺し堪えていた《闇魔界の戦士 ダークソード》が黒い渦に呑まれて行く。
だが、《ゴッドオーガス》は悠然と佇みこゆるぎもしない。
「そして《ゴッドオーガス》は自身の効果で破壊されない! これで破壊されるのはキミのモンスターだけだ!!」
「私のダークソードが!?」
「これで道は開けた!」
そうしてヴィヴィアンのキーカードであり、守り手となっていた《闇魔界の戦士 ダークソード》が消えたことで、大剣を構える《ゴッドオーガス》。
「きぃ~! な・ま・い・き! 私は手札の《天威龍-シュターナ》を除外して効果発動!」
だが、その大剣の先の地面から大地を砕きつつ氷柱と共に流氷の如く青白い竜が天に消えて行けば――
「破壊された効果モンスター以外のモンスターを復活! さらに相手モンスター1体を破壊するわ!!」
その竜の背から黒いマントをはためかせながら《闇魔界の戦士 ダークソード》が大地に降り立ち、二本の剣をクロスさせて守り手として対峙する。
《闇魔界の戦士 ダークソード》 守備表示
星4 闇属性 戦士族
攻1800 守1500
そして流氷の如き竜《天威龍-シュターナ》の氷の鱗が氷剣の雨となって《ゴッドオーガス》に降り注ぐ。
「だとしても《ゴッドオーガス》は破壊されない!
だが、オーラによって強化された身体には傷一つつかない。
「でも貴方のモンスターは今やたった1体!」
「ならバトルだ!! 《ゴッドオーガス》でダークソードを攻撃!!
そうして《ゴッドオーガス》が大きく上段に振りかぶった大剣を二本の剣で受け止める《闇魔界の戦士 ダークソード》だが、暫しの均衡の後ペキンとひび割れたと同時に身体諸共両断され、大地に沈む。
「無駄よ、ダークソードは守備表示! 私へのダメージは0よ! 攻め時を誤ったみたいね――うふふふ……おーほっほっほ! このデュエル、頂くわ!」
しかし主は守り通せた、とその最期は何処か満足気だった。
「……僕はカードを1枚セットしてターンエンド。そしてエンド時に《速攻の
相手の守りを突破できないどころか、セットカード1枚すら使わせられなかった御伽は内心の歯噛みを隠しつつターンを終えると共に――
《速攻の
《速攻の
星4 闇属性 戦士族
攻1700 守1200
「除外された《異次元の哨戒機》の効果で墓地のカードを除外することで、自身を帰還させる! 《異次元の偵察機》を除外して戻って来い!!」
キーンと空気を切る音を鳴らしながら、飛んできた《異次元の哨戒機》がホバリング。
《異次元の
星3 闇属性 機械族
攻1200 守 800
「そして除外された《異次元の偵察機》はこのエンド時にフィールドに攻撃表示で戻る!!」
その《異次元の哨戒機》背に乗っていた《異次元の偵察機》がパッと背から降りると共に宙に浮かぶ。
《異次元の偵察機》 攻撃表示
星2 闇属性 機械族
攻 800 守1200
2体のアドバンス召喚のリリースに加え、魔法カード《ブラック・ホール》で一度全てを吹っ飛ばしたにも拘らず4体のモンスターが立ち並ぶ御伽のフィールドにヴィヴィアンは苛立ちを隠さず舌を打つ。
「ワラワラうっとうしいわね……でも、壁モンスターなんかじゃ私の攻撃は毛ほども止まらないわ! 私のターン、ドロー!」
「キミのスタンバイフェイズに自身の効果で除外されていた《ヴェルズ・サンダーバード》が攻撃力を300アップして帰還する!」
相変わらずの煩い声と共に黒いハゲワシ、《ヴェルズ・サンダーバード》がバタバタと翼を動かしながら列に加わった。
《ヴェルズ・サンダーバード》 攻撃表示
星4 闇属性 雷族
攻1650 守1050
↓
攻1950
「本当にうっとうしいわね!!」
これで5体目が並び御伽のフィールドを埋め尽くす光景にヒステリックに叫ぶヴィヴィアン。消えたと思ったら直ぐに現れてな光景が繰り返されれば面倒臭くもなろう。
「フィールドアドバンテージの差を保たせて貰うよ」
「ふん、強がっちゃって――魔法カード《予想GUY》を発動! 私のフィールドにモンスターがいないときデッキからレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚よ!」
常にモンスターを絶やさない御伽に対し、ヴィヴィアンの一点集中なデュエルスタイルは変わらない。
空から舞い降りるのは通常モンスターの何度目か分からぬ程に現れる《闇魔界の戦士 ダークソード》。
「デッキから舞い降りなさい、《暗黒の
ではなく、緑の体表を持ったTheドラゴンな外見の《暗黒の
《暗黒の
星4 闇属性 ドラゴン族
攻1500 守 800
「そして魔法カード《トランスターン》を発動! 《暗黒の
そうしてグオーと叫ぶ《暗黒の
「おいでなさい! ユニオンモンスター! 《騎竜》!!」
赤い鱗を持つスリムなドラゴンへと変貌を遂げた。4足で立つ細長い身体はなんともスピードがありそうである。
《騎竜》 攻撃表示
星5 闇属性 ドラゴン族
攻2000 守1500
「攻撃力2000……どんな効果を持っているかは知らないけど、この盤面差を覆すのは容易くない筈だ!」
「焦らないの――ユニオンモンスターには担い手が必要なのよ。私のような美しき担い手が! 魔法カード《思い出のブランコ》を発動! 墓地から通常モンスターを復活させるわ!」
そして勝利の道筋を描き出したヴィヴィアンが呼ぶのは今度こそ――
「蘇りなさい、ダークソード!!」
己が戦術の起点となる《闇魔界の戦士 ダークソード》が《騎竜》の背に飛び乗るように現れた。
《闇魔界の戦士 ダークソード》 攻撃表示
星4 闇属性 戦士族
攻1800 守1500
「《騎竜》のユニオン効果! このカードを《闇魔界の戦士 ダークソード》の装備カードとし、その攻・守を900ポイントアップ!」
そうしてそのままユニオン状態になったことでパワーアップを果たす。
《闇魔界の戦士 ダークソード》
攻1800 守1500
↓
攻2700 守2400
「だとしても僕の《ゴッドオーガス》には届かない!」
「本物の『美』っていうのはね、無駄な拳を一切振るわないものよ――ユニオン状態の《騎竜》の効果! 装備された自身をリリースすることでダークソードはこのターン、ダイレクトアタックできる!」
御伽の言う様に攻撃力は足りないが、破壊されない相手を態々相手してやる義理もないと《騎竜》の全エネルギーをかけた飛翔と共に天を舞う《闇魔界の戦士 ダークソード》。
《闇魔界の戦士 ダークソード》
攻2700 守2400
↓
攻1800 守1500
「バトル! 有象無象なんて飛び越えなさい、ダークソード! ダイレクトアタック!!」
そしてそのまま《ゴッドオーガス》たちを飛び越え、天より御伽に向けて二本の剣を構えるが――
「此処で罠カード《ゲットライド!》を発動! 墓地のユニオンモンスターを装備可能なモンスターに装備するわ!」
その落下に合わせて隣に飛翔する影が一つ。
「墓地のユニオンモンスター、《漆黒の
それは己が愛馬ならぬ愛竜――黒き身体を持つ《漆黒の
《闇魔界の戦士 ダークソード》
攻1800 守1500
↓
攻2200 守1900
「くっ……!」
――セットカードを……いや、魔法カード《思い出のブランコ》で復活したモンスターはターンの終わりに破壊される。温存すべきだ……!
やがて己のセットカードをチラと見て一瞬の逡巡を見せた御伽に二つの剣撃がその身を切り裂いた。
「うぁあッ!!」
御伽LP:2800 → 600
「あら、リバースカードは発動させないの――なら終わりよ!!」
そんなセットカードを発動させない御伽につまらないものでも見るかのような視線を向けたヴィヴィアンは中国拳法のように拳を腰だめにした後に突き出し宣言する。
「速攻魔法《コンビネーション・アタック》を発動! 戦闘を行ったユニオンを装備したモンスターのユニオンを解除し、攻撃権利を+するわ!」
そうして《漆黒の
「ユニオンモンスター《漆黒の
《漆黒の
《漆黒の
星3 闇属性 ドラゴン族
攻 900 守 600
そして《闇魔界の戦士 ダークソード》は飛び降りた勢いのまま――
《闇魔界の戦士 ダークソード》
攻2200 守1900
↓
攻1800 守1500
「そしてこのターンのダークソードはダイレクトアタックが依然可能なまま! トドメよ!!」
空中から御伽に二の太刀を浴びせんと剣を振りかぶる、当然、御伽のフィールドのモンスターは手が出せない。
――しまった!?
「くっ……! なら罠カード《つり天井》発動! フィールドのモンスターが4体以上の時、フィールドの全てのモンスターを破壊する!」
セットカードにばかり意識が向いていた為、手札からの奇襲が疎かになっていたと自身の失策を悟った御伽が発動させたカードによって天から己を狙う刃の上からスパイク付きの天井が落下し、フィールドの全てのモンスターを串刺しにせんと迫った。
「チェーンして《速攻の
だが、先程の焼き増しで異次元へと姿を消す《速攻の
「そして
名前の挙がらなかった《異次元の哨戒機》と《異次元の偵察機》は……うん、さよならの未来である。
「なら、私もチェーンさせて貰うわ――速攻魔法《瞬間融合》を!」
「《瞬間融合》!?」
しかし此処でヴィヴィアンが待ったをかけた。思わず顔ならぬ目玉を上げる異次元’sたち。
「その効果により私のフィールドのモンスターを、ダークソードと《漆黒の
しかし行われたのは先程の焼き増しのように竜の背に乗る戦士があるだけ――久々の乗っただけ融合である。
《闇魔界の竜騎士 ダークソード》 攻撃表示
星6 闇属性 戦士族
攻2200 守1500
「無駄だよ! このタイミングで融合召喚されれば、どのみち《闇魔界の竜騎士 ダークソード》は罠カード《つり天井》の効果で破壊される!!」
だが登場早々に天井のスパイクに貫かれ、地面に叩きつけられる《闇魔界の竜騎士 ダークソード》。
その横で《異次元の哨戒機》と《異次元の偵察機》がペシャンコに潰れるが、残った《ゴッドオーガス》は《つり天井》を砕きながら無傷の身体を誇るように大剣を天に掲げていた。
「それで良いのよ! フィールド魔法《遠心分離フィールド》の効果発動! 融合モンスターが破壊された時、そのカードに記された融合素材モンスターを墓地より復活させるわ! ダークソードは何度でも蘇るのよ!」
しかし此方も負けじと《闇魔界の戦士 ダークソード》も二本の剣を天に掲げていた。
《闇魔界の戦士 ダークソード》 攻撃表示
星4 闇属性 戦士族
攻1800 守1500
「だとしても、そのダークソードは《騎竜》の効果を受けていない以上、ダイレクトアタックは出来ない!」
「そうね――《ゴッドオーガス》に攻撃するのよ、ダークソード!!」
そして主の言に迷わず先のターンのリベンジとばかりに二本の剣を左右に広げて構え、突撃する《闇魔界の戦士 ダークソード》。
「――なっ!?」
「その攻撃宣言時、手札の《天威龍-ナハタ》を除外し、効果発動!」
さらにその横を援護するかのように疾風の如き身体を持つ緑の竜が先陣を切る。
「私の効果モンスター以外のモンスターが相手モンスターへ攻撃した時、ターンの終わりまでバトルする相手の攻撃力を1500ポイントダウンさせるわ!」
やがて《ゴッドオーガス》に噛みつき、絡みつき、全身に大きくダメージを与えた後、果然のように消えていく《天威龍-ナハタ》。
《ゴッドオーガス》
攻3500 → 攻2000
「だ、だとしても! ダークソードの攻撃力は1800! 《ゴッドオーガス》の敵じゃ――」
「おバカさんね――2枚目の罠カード《ゲットライド!》を発動! 墓地のユニオンモンスター1体をフィールドのモンスターに装備!」
そうして《闇魔界の戦士 ダークソード》の左右から襲い来る剣に《ゴッドオーガス》の大剣がその頭上へと振り下ろされるが――
「ダークソード! 《騎竜》に飛び乗るのよ!!」
何処からともなく現れた《騎竜》の背に手をかけ空中へと三度躍り出た《闇魔界の戦士 ダークソード》には届かない。
《闇魔界の戦士 ダークソード》
攻1800 守1500
↓
攻2700 守2400
そして天より竜と騎が一体となった一撃によって《ゴッドオーガス》はその身を散らした。
「うぁわぁああぁあああッ!!」
御伽LP:600 → 0
遠方から歓声が響く余所で会場から離れた場所で缶ジュース片手にベンチに腰を落とした竜崎の隣に座る城之内は相手の肩を叩きつつ問う。
「落ち着いたか、竜崎」
「ワイの今までは一体なんやったんや……」
「負けちまってへこんじまうのは分かるけどよ。結局のところ腕磨いて、また挑戦すりゃぁいいだけじゃねぇか」
しかし竜崎の心は未だ、晴れぬ模様。
一方的なデュエルだった。先程、城之内が死力を尽くして僅かに届かなかった相手――竜崎の全てが何一つ通じないままに力の差を見せつけられた。
それを間近でみた城之内にも、竜崎が放心する気持ちも分からなくはない。だが――
「腕磨く? アレはそんなんでどうにか出来るもんやない。持っとるモンが、力が違い過ぎるんや。ワイが逆立ちしたってどうにもならへんもんが……今、目の前に立っとるんや」
竜崎から零れた言葉は心が折れてしまったかのような覇気のないものだった。
「どうしたんだよ。随分弱気じゃねぇか」
「ワイはアイツに勝てるビジョンが浮かばへんのや……追いつける気が欠片もせえへんのや……」
「なんだ。そんなことか――まぁ、俺だってハナから強かった訳じゃねぇ。いや、今だってそうだ。何度も何度も負けて負けて。でもその度にもっと強くなってやるって……そうやって此処まで這い上がってきたんだ――お前だってそうだろ?」
だが、壁があろうとも立ち止まっていては先に進むことは出来ないと語る城之内。自分も壁にぶつかったことなど幾らでもあるゆえにやるべきことはシンプルだと。
「ワイはそう言う話をしとるんやない!! 絶対に埋まらへん力の差の話をしとるんや!!」
しかし城之内の言葉に竜崎はベンチから勢いよく立ち上がり、激昂するかのようにがなり立てる。
「さっきから何だよ! 力、力って! デュエルは力が全てじゃねぇだろ!!」
「なんやと? 城之内! お前、いつからそんな優等生になったんや! そんなんは綺麗事や! デュエルは真剣勝負! 勝つか負けるかの世界や! 自分のデュエルを通すには『力』は避けて通られへん!!」
相手の怒気に当てられたように声を荒げる城之内だが、竜崎の行き場のない思いもまた止まらない。
「勝負は勝ってこそが華なんや!!」
「なに言ってんだ、竜崎――その為に腕磨いてんだろうが!!」
力が足りないから
頑張れば、何時か追い付ける。足を止めてはならない。ゆっくりでも前に進もう。
ある種の真理だ。
「ああ、お前が言っとることは、正しいんやろうよ。ムカつくくらいに正しいんやろうよ!」
それは竜崎も理解している。
城之内の言葉は正しい。頑張れば報われる。努力は裏切らない。
「お前の言う努力なんざみんな死ぬ程しとるわ! せやけどワイはあのデュエルで知ったんや……どうにもならへんもんを……『才能』ってやつを……」
しかし、「差」は生まれる。
「才能がなんだよ! お前はペガサス島より強くなってたじゃねぇか! だったら――」
「強ぉなったからこそ、分かったんや!! ……ワイかて、こんなん知りとうなかった……」
その差に打ちのめされた今の竜崎には己を奮い立たせる気力が欠如していた。
そんなライバルの姿を城之内は見たくはないと己の熱に当てられ、言葉は乱暴なものへと変わって行く。
「だからって、ちょっと負けたくらいでいじけてんじゃねぇよ!!」
「なに他人事みたいに言ってるんや……お前かて、遊戯に本気で勝てると思っとんのか!」
だが、竜崎のその言葉に城之内は一瞬返す言葉を失った。
城之内とて考えなかった訳ではない。遊戯の強さを。その差を。
「……止めろよ」
先程までの熱が嘘のように消えいりそうな声で零す城之内。
「時間かけて腕磨いたら追い付けるなんて本気で信じとるんか!」
「止めろよ、竜崎!」
考えないようにしてきた現実を突きつける言葉に城之内は思わず竜崎の胸倉を掴む。
その差をどうやって埋める?
時間をかけて? 相手は自分の倍どころではない程の速度で強くなっていくのに?
沢山頑張れば? 今だって必死に頑張っているのに?
どうすればいい? どうして追い付けない。
本当はお前だって分かっているんだろう?
「今の強なったお前やったら薄々分かっとる筈やろ! 世の中にはどないしても埋めようがない差ってもんが――」
「――止めろって言ってんだろ!!」
そんな自身の脳裏に過った残酷な答えから逃げるように城之内は竜崎へと拳を振るった。
が、その拳が動かなくなった。
「喧嘩はよくありませんよ」
「――うぉっ!?」
――神崎のおっさんじゃねぇか!? 何時の間に!?
そして聞き覚えのある声の主である神崎に対し、幽霊でもみたように驚く城之内。だが、神崎が軽く抑えた城之内の腕を起点に金縛りにあったかのように動かない。
相手は軽く腕に手を添えているだけだ。ただそれだけで、城之内の腕はピクリとも動かない。
「おおよその話は怒声交じりに聞こえてきましたが、感情のままに拳を振るえば大抵、後になって悔やむものですから、あまりオススメしませんよ?」
「えっ!? お、おう。つーか、いつの間に――」
しかしそんな城之内の戸惑いを余所に定番のセリフを並べる神崎だが、今気づきましたとばかりにパッと手を放す。
「おっと、これは失礼。何やら只ならぬ様子が聞こえてしまったので、ついお節介を」
「そ、そうなのか」
――腕はなんともねぇ……なんだったんだ、さっきの?
とはいえ、未だ城之内の戸惑いは晴れない。しかし、今はそれよりも――
「止めてくれて助かった――じゃなくて、助かりました」
思わず拳を振るってしまった自身を止めてくれた相手への感謝が先だった。忘れた敬語も慌てて治す。
「ああ、敬語などは気になさらなくて構いませんよ。あまり気にしない性質なので」
「いや、うーん……そうか。なら、助かったぜ」
「いえいえ、偶々通りがかっただけなので」
しかし穏やかな姿勢を崩さない神崎の言葉に頭をガシガシとかいた後、観念したように城之内は口調を崩し、肩の力を抜いた。ちなみにヴァロンなどは公式の場以外で、ほぼタメ口だ。
だが、そうして冷静さを徐々に取り戻した城之内は踵を返す。
「なら――俺はちょっと頭冷やしてくるんで、竜崎のこと頼んます」
「勿論ですよ。彼は海馬社長のKCに勤める同僚ですから」
それは若干の熱は引いたとはいえ、完全に何時もの状態とは城之内も思えないことから一度冷却時間が必要だと考えたゆえ。
朗らかに了承した神崎の姿もその決断に拍車をかける。そうして返事も待たずにこの場を去ろうとする城之内だが――
「だけどよ、竜崎……最後にこれだけは言わせてくれ」
ふと、その足を止めて竜崎に偽らざる己が胸中を零す。
「俺はお前とのデュエルはスゲェ楽しかった。勝ちとか負けとかなんざ吹っ飛んじまうくらいに――それだけはぜぇってぇ間違ってねぇことだって胸張って言える」
そうして背中越しに語られた城之内の言葉だが、竜崎は何も答えない。いや、答えられる状況ではない。
「だからよ。俺はちっとばかし先に行かせて貰うぜ――またな」
ゆえに最後にそう付け加えてこの場を去った城之内。それは竜崎ならば何時か立ち上がり、前に進むであろうと信じているゆえに「待っている」――そう伝えているようにも思えた。
そうして城之内の背を言葉なく見送った竜崎は未だ動きを見せない己が上司に送る一先ずの言葉を探すも――
「すんません、神崎ハン。あないにボッコボコに負けただけやのうて、こんな無様見せてもうて……」
上手く言葉にはできない。今話すべき内容ではない当たり障りのないことしか竜崎には出てこない。そんな竜崎に神崎は――
「――少し、話しましょうか」
何時もと変わらない張り付けたような笑顔でそう告げた。
そんな失意の底にある竜崎と対戦したラフェールは会場にて、本日最後の対戦相手の前に立っていた。
「良いデュエルにしよう」
そうして差し出されたラフェールの右手に対し、対戦相手であるジークは応えることなく手に持った薔薇を口元に持って行きながら問う。
「良いデュエル? それはキミの先程の戦いのようなかね?」
「ああ、お互いに力の限り――」
「フッ、くだらない茶番、ご苦労なことだな」
だが、ラフェールが返答するよりも早く、ジークは肩をすくめながら嘲笑してみせた。
「なんだと?」
「あのような道化との戯れなど退屈だっただろう――そう言っているのだ」
ジークからすれば竜崎の実力は「格下」だ。それは名うてのデュエリストであるラフェールにとってもそうだろう。
ゆえに先程までの自身と同じく、張り合いのない相手ばかりで「うんざりしていただろう」と。
「取り消せ」
「フフフ、どうした? 道化が踊り狂う様に憐みでも覚えたのか?」
「彼は道化ではない。最後の最後まで戦い抜いた一人の
しかしラフェールはジークの言に静かに返す。声こそ荒げてはいないが、そこに何処か怒りが見えるのは気のせいではあるまい。
「彼を侮辱するような物言いは止して貰おうか」
「言うに事を欠いて、デュエリストの魂とは――くだらないな」
そう誇りを語るラフェールに対し、ジークは己のスタンスを変えはしない。
「無様な敗北を晒した道化を面白おかしく嗤って何が悪い」
勝利者であれ、と幼少期から厳しく育てられたジークにとって勝利こそが全て。敗者にかける言葉など嘲笑以外は持ち合わせていない。
そんなジークの本質を垣間見たゆえかラフェールの瞳に何処か悲しい色が宿るも――
「……そうか。どうやらお互いの考えは平行線のまま交わることがないようだ」
「そうかね? 誇り高き戦士とやらが踊り狂う様はさぞ見応えがあると思うが?」
相容れぬ現実を受け止め、ジークのジョーク交じりの言葉に、同じく茶目っ気を含めた返答を返す。
「生憎だが、キミとダンスを共にするには音楽性の違いが致命的だな」
「――戯言を!」
もはや、互いに言葉を交える段階は終えた。
「 「 デュエル!! 」 」
デュエルで決着をつけるのみ――彼らはデュエリストなのだから。
もっとも愚かなものは自分の力量を知らぬものだ――Byジークフリード・フォン・シュレイダー
Q:ジークが色々言ってたけど、この作品はリスペクトデュエルをアンチするの?
A: 作者はリスペクトデュエル好きですよ! 今作でもリスペクトデュエルをリスペクトしていき、原作のリスペクトデュエルになるようリスペクトしていきたいです!(ややこしい)
ただ、「ジークは性格的にも鼻で笑うだろうなー」となった為に色々言った状態です。
Q:なんか荒ぶってる竜崎はラフェールとのデュエルで何を知ったの?
A:「竜崎が全ての人生を捧げてデュエルの腕を高めたとして、遊戯に勝てる?」――その答え。
相手が自分より努力した?
成程、キミは努力すれば追い付けると信じたいんだね。
~前回紹介しそびれた今作のゴースト骨塚のデッキ~
原作でのゴースト骨塚のデュエルは「VS城之内」と「VSバクラ」の2戦だが、
VS城之内の時は「キースの仕込みが大きかった」と考え、
VSバクラの時のデュエルで使用されたカードを主軸に組んだデッキ。
《金色の魔象》の融合素材である《ドラゴン・ゾンビ》とシナジーのある
永続罠《
原作でも使用されていた永続罠《死霊の誘い》で相手の動きに反応してチマチマ削って行く。
相手が動かなければ永続魔法《エクトプラズマー》で《金色の魔象》を射出してダメージ。蘇生手段が豊富で別にフィールドに残すメリットもない為、惜しみなく射出できる(おい)
更に相手の面倒なモンスターも永続魔法《エクトプラズマー》が間接的に処理してくれるので結構助かる。
決まると地味に鬱陶しい――なお「沢渡さん、《大嵐》っすよ!」の除去カードの類で一瞬に崩壊する。流石っすよ、沢渡さん!
そしてジークの使う「あるカード」が凄まじく(弱点として)刺さる。
~今作の御伽デッキ~
極力「
コミック版で登場した中でOCG化されたのが《速攻の
全体除去を撃ちつつ、《速攻の
ザックリ言えば、よくある《速攻の
ただ《ゴッドオーガス》の耐性はサイコロ効果による不確定なものなので、除去のタイミングに気を付けないと《速攻の
~今作でのヴィヴィアン・ウォンのデッキ~
アニメで使用していた彼女を象徴するカード
「
「
(《本気切れパンダ》を主軸にしようにもパンダカードは数も少ない上にそれぞれのシナジー薄いですし)
《闇魔界の戦士 ダークソード》でにゃんにゃんするしかねぇ!!(無謀)
な具合で構築されたデッキ。
――と冗談はさておき、原作にて使用されたカード(といっても打点強化の為に墓地に送られたカードですけど)
《漆黒の
「《闇魔界の戦士 ダークソード》ユニオンセット」が採用されていた為、其方を主軸に構築。
(彼女が使用した《暗黒の
作中のように《コンビネーション・アタック》からの《瞬間融合》の三連撃が決め技(なお成功率)
失敗してもエンド時の自壊からフィールド魔法《遠心分離フィールド》により《闇魔界の戦士 ダークソード》が帰還し、再度ユニオンの起点になってくれる。
そのまま通常モンスターの《闇魔界の戦士 ダークソード》でビートダウンしよう!
通常モンスターサポート(厳密には違うけど)な中華っぽい「天威龍」のサポートを最大限受けられるぜ!
よくよく見れば《闇魔界の戦士 ダークソード》も中華っぽく見え(る気がする)
そしてユニオン+融合体を巧みに乗り換える《闇魔界の戦士 ダークソード》の姿は
巧みにハニートラップを仕掛け、男を乗り換える彼女の在り方に似ているのではなかろうか(おい)