マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
やったね、レオンハルト! (己の記憶にない程に)優しいお父様とお母様が戻ってくるよ!





DM編 第11章 記憶編 ディアハしようぜ!
第182話 スタートダッシュで差をつけろ


 

 

 とある日のKCの会議室にて、BIG5の面々がテーブルを挟んだ先にいる神崎が連れた人間と向かい合っていた。

 

「――と言う訳で、今日からKCの一員となったジーク・ロイドさんです」

 

「……ジーク・ロイドだ」

 

 にこやかに紹介する神崎の声を受けて、バツが悪そうに言葉短く名乗ったジークフリード・フォン・シュレイダー改め、ジーク・ロイドの姿にBIG5の《深海の戦士》の人こと大下は鼻で嗤う。

 

「『ロイド』かね? かのシュレイダー家も落ちたものだな」

 

 かつてはKCとシェアを争った軍事企業の一角が、名を捨て、誇りを捨て、転落に転落を重ねてKCの一介の社員にまで転げ落ちた様はなんとも無様であろう。その現実は言葉なく拳を握るジークが誰よりもそれを理解していた。

 

「だとしても、儂はまだ完全に納得してはおらんぞ……!」

 

 しかし、それでも納得できないもの――BIG5の《機械軍曹》の人こと大田のような人間もいる。

 

 ジークが起こしたサイバーテロ騒ぎで、特大の迷惑を被ったのが技術周りを統括していた彼だろう。

 

 単純に事件への対処に留まらず、ことを終えた後のシステムの復旧や、再点検、更にセキュリティシステムの見直し+再構築と、てんやわんやの大騒ぎ。

 

 その原因を担った相手を「はいそうですか」とすんなり通すには引っ掛かりが大きい。

 

 だが、そんな《機械軍曹》の人こと大田へ《人造人間-サイコ・ショッカー》の人こと大門は苦言を呈する。角を立てても仕様がない理由があるだろうと。

 

「その辺りにしておけ、どうせお甘い副社長の肝入りだろう――お前には何時も苦労をかけるな、神崎」

 

「だとしてもだな!」

 

「確かに私も思う所がない訳ではありませんがぁ、彼が目の敵にしてきた海馬社長の元で一生飼い殺される――そう思えば幾らかは溜飲が下がるのではぁ?」

 

「むぅ……」

 

 そして続いた《ジャッジ・マン》の人こと大岡の言葉に《機械軍曹》の人こと大田は溜飲を下げるように言葉を濁すが――

 

「グフフ、そのような物言いは良くありませんなぁ。肩代わりされた負債をご家族で返済しきれば、晴れて自由の身になれるのですから」

 

 《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧の言葉に、ちょっと可哀想に感じたのか《機械軍曹》の人こと大田は口をつぐんだ。

 

 

 やがて、一先ずの愚痴大会が終えた後、最初の発言以降、沈黙を守っていた《深海の戦士》の人こと大下が神崎に向き直りながら問う。

 

「さて、それで彼を我々の前に寄越した理由はなんだね? まさか言葉通りに『顔見せの為』という訳でもあるまい」

 

「はい、彼の得意分野は既に皆様ご存知のことでしょうが、現段階で任せるには――」

 

「成程な、牙抜きの時期という訳か」

 

 しかし問いかけに神崎が答えきる前に理解したと打ち切った《深海の戦士》の人こと大下に、《ジャッジ・マン》の人こと大岡が思案するように腕を組みながら顎に手を置くが――

 

「となれば、誰が受け持つかですねぇ……キミの部署では無用の長物でしょう。そして私も――」

 

「おっと、海馬社長のおなりだ。その話は後にしよう」

 

 

 バタンと会議室の扉が開くと共に磯野を引き連れ、歩みでた海馬の姿にBIG5の面々は無駄口を閉じるように会話を打ち切った。珍しくモクバは同行していない。

 

 

「貴様は確か……ふぅん、まぁいい。磯野、始めろ」

 

 そうして海馬はジークを一瞥した後、興味もないのか気にした様子もなく会議室にて司会役を仰せつかった磯野の音頭にて報告会が始まった。

 

 語られる内容は多種多様で様々だ。

 

「大田が作ったデュエルディスクの『補助器』の医療機関への卸しもつつがなく進行中だ。やはり抑圧があった分、喰いつきが良い。大好評だよ――シェアが独占できている内に公式大会への許可も通しておいた方が良いだろう」

 

「ふぅん、そんなものはとうに済ませた」

 

 《深海の戦士》の人こと大下から告げられる朗報と助言にも、海馬は意に介した様子もなく、

 

「流石と言っておこうか」

 

「くだらん世辞は不要だ」

 

 自社のトップを立てる《深海の戦士》の人こと大下だが、海馬からすれば、見え透いたおべっかに過ぎず、かえって不愉快な程だ。

 

「『補助器』?」

 

 しかし、此処でジークの口から思わずといった風に零れた疑問に一同の注目が集まる中、代表して《機械軍曹》の人こと大田が口を開く。

 

「なんだ、知らんのか? 簡単に言えば、何らかの障害を持ったヤツでも問題なくデュエルを楽しめるようにするもんだ」

 

 とはいえ、最近の商品とはいえ既に販売されている代物の為、説明はかなりザックリしていた。しかし、反応の鈍いジークにもう少しばかり踏み込んだ部分の説明に移る。

 

「例えば、耳が聞こえん場合は、モノクルのレンズにデュエル情報を流して――」

 

 己の目元に指を置き、眼鏡の右手で丸を作る仕草を見せる《機械軍曹》の人こと大田。

 

「目が見えん場合はこう、耳に引っ掛けるヤツを作ってな。骨振動でデュエル情報を伝える代物でだな」

 

 そして次に耳を指さし、引っ掛けるような仕草を続けるがジークからの反応は芳しくない。

 

「はたまた片腕で扱えるように――といった具合に……本当に知らんのか? ……知らんようだな」

 

 やがて腕を回した後に、諦めたようにため息を吐く《機械軍曹》の人こと大田の姿に対し、海馬が一段と低い声を漏らす。

 

「大瀧。情報伝達は貴様に一任した筈だが?」

 

「ふぇー!? 私のせいにする気ですか!?」

 

 思わぬ形で背中から撃たれたと《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧が素っ頓狂な声を漏らすが、企業人であるジークが知らないとなれば、「周知に問題があったのではないか?」と判断されてもおかしくはない。

 

 ゆえに鋭さを増す海馬の視線にタジタジな《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧に対し、《深海の戦士》の人こと大下が助け舟を出す。

 

「そう虐めてやるな。彼のようなタイプからすれば、縁遠いものだろうさ」

 

「世情に疎いのは大きなマイナスだな」

 

「おやおや、少々大人げないですよぉ」

 

 そうして《人造人間-サイコ・ショッカー》の人こと大門と、《ジャッジ・マン》の人こと大岡の援護射撃により、「ジーク側に問題があった」とやり玉にあげるが――

 

「くだらんやり取りはそこまでにしろ――次だ。大田、例の物はどうなっている?」

 

 その流れを断ち切る海馬の声に、話題を振られた《機械軍曹》の人こと大田は意気揚々と会議室のテーブルになにやら広げていく。

 

「ふっふっふ、無論問題なく完成させたとも! 見よ、この完璧な仕上がりを!!」

 

「これは……シート?」

 

 それはジークの呟きの通り「シート」のようなもの。そこにはカードを置く部分と思しき四角が幾つか表示されていた。

 

「あー、お前は知らんか。まぁ、平たく言えば『超薄型のデュエルディスク』だ。仮の名称は『デュエルマット』になる」

 

 そしてこの商品は発売前の物の為、外様のジークが知る由もないと、《機械軍曹》の人こと大田が自慢するように説明を始める。

 

「用途としてはテーブルデュエルの際にもソリッドビジョンシステムの使用を可能にするコンセプトで、ちょっとした時や、後、病人や怪我人などのデュエルディスクが使えない者にも――まぁ、グダグダ理屈を並べるより見た方が早いだろう」

 

 だが「百聞は一見に如かず」だと半ばで説明を放棄した《機械軍曹》の人こと大田は懐からお気に入りの1枚のカードを取り出し、シートの上にペシッと軽く叩きつけた。

 

「《機械軍曹》召喚!!」

 

 そうしてシートの置かれた1枚のカードの上から、ゴテゴテと多くの勲章を身体に張り付けたロボットが海賊風の帽子を指でピンと弾いた後、腰元から自慢のサーベルを引き抜いた。

 

《機械軍曹》 攻撃表示

星4 炎属性 機械族

攻1600 守1800

 

 ザックリ語られた「超薄型のデュエルディスク」との説明に違わず、召喚されたモンスターが実体化しているが、サイズがカードより少し大きい程度であり、全体的にこじんまりしている。

 

 しかし、これこそが売りなのだと《機械軍曹》の人こと大田は語る。

 

「屋内の使用を想定しとるから、要のソリッドビジョンは縮小版になっとる。その縮小の過程で頭身を幾らか弄る必要があったが、そのお陰で既存のデュエルディスクと差別化できて良いこと尽くめだな!」

 

「ソリッドビジョンのデザイン周りの事情はI2社の方にも話は通してありますから、ご安心くださぁい」

 

「これを流用すればいつか来た若造の言っておったD(ダンジョン)D(ダイス)M(モンスターズ)だったか? それのようなデュエルディスクに非対応の商品にも活用できよう」

 

 《ジャッジ・マン》の人こと大岡の注釈も交えながら《機械軍曹》の人こと大田の説明の最中に何枚か追加で置かれたカードから次々にソリッドビジョンによってカードが実体化され、モンスターどうしがポカポカと喧嘩――もといバトルを始める光景が広がる。

 

「こんなものが……」

 

 しかしジークに返す言葉はなかった。シュレイダー社もソリッドビジョンの技術は有しているが、「その先」に関しては、殆ど発展していない。

 

 ライバルだと一方的に見定めていた海馬との差を、己の復讐心にかまけていた時間のツケが、ジークに重く圧し掛かる。

 

「それでジークとやら――なにか気になった点はあるか?」

 

「…………いや、問題はないように――」

 

「作り直せ、大田」

 

「なんだと―――ぬおあっ!? なんということを!?」

 

 だが、意気消沈とするジークなど眼中にない海馬の拳がデュエルマット(仮名)に勢いよく振り下ろされた。

 

 《機械軍曹》の人こと大田の悲鳴染みた声から察せられるように、海馬の拳によって機械部分はショートし、マット部分に大きな亀裂が奔る。

 

 それにより、ソリッドビジョンの機能が停止したのか、召喚されたモンスターがラグと共に消えていく中、海馬は冷たく言い放つ。

 

「拳をぶつけた程度で機能不全に陥る欠陥品が売り出せると思っているのか?」

 

 思いっきり殴っておいて「ぶつけた程度」は些か厳しい言だが、「強度に不安が残る」という面は《機械軍曹》の人こと大田も理解している。

 

「ぐぐぐ……だが、この薄さを維持するには――」

 

「新しいシステムを組みなおしておいた。これで試してみろ――推定では今より3倍の強度が望める筈だ」

 

 しかし「製品の性質上、仕方のないことだ」と返す前に海馬から解決案が書類の束として提示された。

 

 テーブル上を滑るように己の元に舞い込んだ資料をパラパラとめくって行く《機械軍曹》の人こと大田は歯噛みする。先程の言い訳染みた己の論を容易く覆された事実が悔しいらしい。

 

「…………くっ、相変わらず発想がズバ抜けとるな。 だが、見ておれよ! 3倍どころか5倍の強度にしてやるからの!!」

 

「ふぅん、口の減らん男だ。そういうことは実現してから言ってみせるんだな」

 

 だが「タダでは終わらん」と挑戦的に指を差す《機械軍曹》の人こと大田の声に、海馬は「受けて立つ」とばかりに鼻を鳴らして見せる。

 

 完全に意地の張り合いのような有様だが、これが彼らなりのコミュニケーションなのだろう。

 

 そうしてこの話が一先ずの収束を見せたと判断した《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧は気合を入れるようにネクタイをキュッと締め直し、己が成果を語り始める。

 

「ではお次は私から――グフフ、素晴らしい仕上がりになっておりますぞ~!」

 

「御託は良い。さっさと話せ」

 

「やれやれ、風情がありませんね! なら早速……カモーン!」

 

 だが、無駄口を聞く気はない海馬のスタンスに渋々納得を見せた《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧の声に、扉を開き少年が青を基調とした服でファッションショーよろしく現れる。

 

 

 ペンギンのクチバシを思わせる鋭角のフードに覆われ、顔は伺えぬが、翼を思わせるポンチョが揺れている様は楽しそうな雰囲気を見せる。

 

 そんなポンチョに覆われた腰元に少年が左手を伸ばせば、その左腕の袖部分が展開し、腰元のデュエルディスクが装着されると共に頭のフードが二つに分かれ、ヒーローのマフラーよろしくヒラヒラとたなびく。

 

 

 そんな荒野のガンマン風ヒーロー・ペンギン仕立てに身を包んだ少年の顔が露わになったことでジークは息を呑んだ。

 

 その瞳に映るのは肩口程に伸びた紫の髪を後ろで縛った顔にそばかすの少年。もの凄く見覚えがある。いや、兄であるジークが見間違う筈がない。

 

「レオンハルト!?」

 

 思いっきりジークの弟レオンだった。

 

「はい、ポーズ! いいですぞ~! いいですぞ~!」

 

 そうした感動的な兄弟の再会を余所に《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧は己の声に合わせ、事前に打ち合わせていたであろうポーズをしっかりと取るレオンの姿に満足気に声を漏らす。

 

「さぁ、ご覧ください! この愛らしいペンギン風衣装を! デュエルディスクとの調和性を重視し、尚且つプリティさを全面に押し出し、全世界をターゲットにした――」

 

 《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧の熱弁は留まることを知らない。ペンギンの素晴らしさは外見にもあるのだと、海馬に語る。

 

「神崎ッ……殿! 貴様、どういうつもりだ! 何故、弟が! レオンハルトが此処にいる!!」

 

「再就職先です」

 

 その横で、己の胸倉を掴んだジークへ神崎が端的に返すが、そんなことは知ったことではないと、《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧の熱意は留まることを知らないが――

 

「――な具合で、こうしたKCのデザイン力を示すことで、プロデュエリストの衣装などの――」

 

「それ以外はどうした?」

 

「……はいはい、チェンジ! はい、ポーズ! うーむ……ヨシ! と、こんな具合に一応他のモデルも揃えておりますよー」

 

 海馬の「ペンギン以外は?」との声に内心で舌打ちしながら、《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧が指をパチンと鳴らせば、レオンの衣装は色を変え、形状を変え、赤を基調としたパンダ風の中華服へと変貌を遂げる。

 

 そしてレオンのポージングもカンフーっぽくなる。

 

「私はペンギンちゃんだけで十分だと思いますけどね」

 

 やがて己の手で愛らしいペンギンの姿を崩してしまったことに海馬へ嫌味ったらしく呟く《ペンギンナイトメア》の人こと大田だが――

 

「これに関しては私も社長に同意だ。話題性の為のプロジェクトならば、様々なパターンを試すべきだろう」

 

 此処で《深海の戦士》の人こと大下が、珍しく海馬の援護に回った。

 

「こら、大下! 貴方、裏切る気ですか!」

 

「心外だな。私はあくまでKCの発展の為に進言しているだけだとも――そもそも今回の肝は衣服へのソリッドビジョンの投射技術の披露である以上、キミの趣味を全面に押し出すべきではない……そうだろう?」

 

「何を言うんです! ペンギンちゃんのポテンシャルは無限大ですぞ!」

 

「技術披露の場を儂抜きに話を進めるな! そもそも形状記憶繊維はコストが高いんだ! 披露するのなら一般転用を視野に入れた鏡面に映した衣服をソリッドビジョンで変換する方だろう!」

 

「なぁに、金をかけたがる人間は何処にでもいるものさ。『値段』を『価値』だと誤認してありがたがる馬鹿な連中がね」

 

 《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧と、《機械軍曹》の人こと大田、そして《深海の戦士》の人こと大下の論争がヒートアップしていく中――

 

「では両方行えば解決ですね」

 

「……神崎くん、この問題の中核はそこにはありませんよぉ。彼らがそれぞれ推すどの技術をよりプッシュするかという――」

 

 神崎が、議論の争点をぶっ壊しにかかるが、《ジャッジ・マン》の人こと大岡の論に巻き込まれて行く。

 

「ふぅん、纏まりのないヤツらだ。大門、貴様の件はどうだ?」

 

 そんなアホみたいなやり取りを尻目に海馬が《人造人間‐サイコ・ショッカー》の人こと大門へと今もっとも力を入れている事業に触れた。

 

「無論、仔細無い。お前の言う『デュエルの学び舎』との話は関係各所に話は通しておいた。手頃な場所も候補を纏めて置いたから適当に選べ――だが、少々横やりがあってな」

 

「なんだと?」

 

「老い先短い老人の道楽だ。あれやこれやと口うるさくて仕方がない」

 

 だが《人造人間-サイコ・ショッカー》の人こと大門の言葉に僅かに逡巡を見せる海馬。語られた「老人」の狙いが何処にあるのか思案している模様だ。

 

「それと人員の類は其方で勝手に決めるといい。お前の好みはよく分からん。だがペガサス会長の顔は立てて欲し――」

 

 しかしそうして思案を巡らせる海馬だが、続く《人造人間-サイコ・ショッカー》の人こと大門の話は思案の最中であっても、問題なく処理されていく。

 

 

 

 そうして己を置き去りにしながらグングンと進んでいく話に対し、ジークは会話の中へと踏み出すことは出来なかった。

 

 

 惨めだった。

 

 唯々、惨めだった。

 

 

「――以上だ。俺はI2社に向かう。俺の留守中に些事の類は片付けておけ。磯野、モクバを呼べ、どうせ乃亜のところだろう」

 

「ハッ!」

 

 やがて話すことは済んだと会議室から海馬が立ち去るその瞬間まで、ジークは何一つ言葉を発することはなかった。

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、相変わらず嵐のような男ですねぇ」

 

「なれば一先ず目下の『些事』を片付けるか」

 

 そして足早に立ち去った海馬を《ジャッジ・マン》の人こと大岡が呆れた様子で見送り、《人造人間‐サイコ・ショッカー》の人ことがジークへ視線を向けるが――

 

「彼、ハッキングの腕を見るにサイバー系統がお得意でしょう? もう思い切って大田殿に預けてはぁ?」

 

「馬鹿を言うな。信用できん奴を儂の工場に入れさせるものか!」

 

 《ジャッジ・マン》の人こと大岡の案を《機械軍曹》の人こと大田はバッサリと切り捨てる。未だにジークのことを許せていない以上、無理もない話だ。

 

「とはいえ、神崎くんの元に置いておいても、あまり旨味はありませんからね! デュエルの腕が高くとも、あそこでは埋もれる程度の才能でしょうし」

 

 やがて続く《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧の冷めた視線が、

 

「あれだけやらかした手前、広告塔にも使えない」

 

 《人造人間‐サイコ・ショッカー》の人こと大門の呆れた声が、

 

「当人の意見も聞きたいな。我が社に貢献できることは何かね?」

 

 《深海の戦士》の人こと大下の期待すらしていない雰囲気が、

 

「私は……私は……」

 

 ジークの心を苛んでいく。

 

 シュレイダー社にも、ソリッドビジョンシステムは――と張り合っていたが、

 

 KCはそれらを過去だと置き去りにするが如く、遥かその先を進んでいた現実に打ちのめされていた。

 

 神崎がジークに手を差し伸べたのは、「自身の能力を目当てに」などと考えていた事実を嘲笑うかのように今のKCはジークを必要としていなかった。

 

 KCで再起を図る席を用意した? 違う。その心を完全に折りに来たのだ。

 

 

 二度とくだらぬ考え(サイバーテロ)など起こさないように。

 

 

 頭を垂れるジークに、会議が始まる前にあった覇気は欠片も伺えない。このままKCを去りかねない程に意気消沈していた。

 

「――待ってください! 兄さんにはアレがあります!」

 

「ほう、アレとは?」

 

「止せ、レオンハルト! 私など……」

 

 しかし、待ったをかけたレオンが兄のスゴイ部分を語る。そこには未だに兄への信頼が見えた。

 

 ジークのスゴイ部分はサイバー部門だけではないのだと、レオンは項垂れる当人を余所に自信満々だ。

 

 そしてジークの制止の声も振り切り、発されたのは――

 

 

「――兄さんはお洒落さんです!」

 

 

「レオンハルト!?」

 

 ジークが予想だにしていなかった発言だった。

 

「ふむ、お洒落さんかね」

 

「はい! お母様が言うには『シュレイダー家は高貴な出』だって!」

 

 《深海の戦士》の人こと大下の合いの手にレオンは自信タップリに語る。ジークは父と母から一身に情熱と期待を注がれ、教育を受けていた。

 

 それらから完全に蚊帳の外だったレオンには難しいことは分からなかったが、「高貴であれ」、「上品であれ」と何処か貴族的な価値観による美意識を「お洒落」と判断し、ジークの強味だとレオンは語る。

 

「それにお父様も言っていました――『由緒ある我がシュレイダー家が成り上がりの企業に負けることなどあってはならない』って! だから身嗜みには特に気を付けていると言っていました!」

 

「ククク、我らは成り上がり企業か」

 

 両親が愚痴っていた部分の正しい意図を理解しないままにサラッと明かしたレオンの言葉に《深海の戦士》の人こと大下は含み笑いを零す。

 

「そういえば、シュレイダーの屋敷は貴族趣味な趣でしたねぇ」

 

「ふ~む、芸術関連と言いますか、デザイン関連と言いますか、ファッション関連と言いますか……独特な発想でしたなぁ……」

 

 やがて《ジャッジ・マン》の人こと大岡が過去のパーティでのシュレイダー家の様子を思い出しつつ、《ペンギンナイトメア》の人こと大瀧も、何とも言えぬ表情でそれに追随。

 

「なら決まりだ。まずは大瀧に預けよう――構わないな、神崎」

 

 そして「聞く価値もなかった」と話を打ち切るように《人造人間-サイコ・ショッカー》の人こと大門が言外に「合う場所が見つかるまでたらい回しにする」と語りつつ神崎へ向き直った。

 

「はい、ご無理を通して頂いて感謝の言葉もありません。大瀧さんもどうか彼のことを、よろしくお願い致します」

 

「グフフ、気にすることはありません! キミとは今後も仲良くしてきたいですからね!それに彼がペンギンちゃんの素晴らしさを表現できるのであれば、構いませんとも!」

 

 こうして、ペンギン大好きおじさんの元へ放り込まれたジーク。そこにはKC専属ファッションモデルとして頑張る弟レオンもいる為、収まる所に収まったと言えるだろう。

 

 

 だが、ペンギン大好きおじさんと愉快な仲間たち(大瀧の部下)は兄の暴走に巻き込まれたレオンに同情的である為、親元を離れた子供という立ち位置も相まって猫可愛がりされている。

 

 ゆえに元凶である兄ジークへの好感度は地の底だ。針のむしろであろう。

 

 

 しかし、そんなストレスに負けるな、ジーク! 戦え、ジーク! お家の再興の為に!

 

 シュレイダー家の再興はキミの肩にかかっているぞ!

 

 タイムリミットはご両親の野心が保っている間だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなジークのサクセスストーリーなど刹那で忘れちゃった頃、夜も更け辺りが暗くなったにも拘らず、多くの人の気配を感じた双六は自宅の2階の窓のカーテンを少し開けて外を見る。

 

「しかし凄い人じゃの」

 

 その視線の先にはマスコミやら、なんやらが獲物(デュエルキング)を狙うようにカメラを構えており、双六が僅かに開けたカーテン越しに中にいるであろう遊戯を狙いシャッターを切る。

 

 フラッシュが焚かれ、明滅する光源に対し、双六は厳しい顔つきを見せ――

 

「――ブイッ!」

 

 Vサインと共にとびっきりのキメ顔をカメラ目線で応えた双六は「用は済んだ」とカーテンを閉じ、孫の遊戯の元へと向き直った。

 

「じいちゃん……どうしてピースしたの?」

 

「ほほ、つい――の。これも大会で儂ゲフンゲフン、マスク・ザ・ロックが儂の店を宣伝してくれたおかげじゃの」

 

 双六の昔語りを聞いていた最中の祖父の奇行に表の遊戯は困惑の視線を向けるが、双六はいたずらっ子のように笑いながら誤魔化すように咳払いした。

 

『未だにバレていないと思っているのか……』

 

「とはいえ、これでは暫く店は開けんな」

 

「……じいちゃん、ごめ――」

 

 しかし闇遊戯の声を余所に呟かれた双六の発言に咄嗟に表の遊戯が謝ろうとするが、双六はそれを手で制した。

 

「何を言っとる。遊戯が謝ることではないじゃろう? なーに、この手の騒ぎは一時のもの。学校の方の騒ぎも合わせて直ぐ収まるもんじゃ」

 

 双六が語った「騒ぎ」――それは闇遊戯が決闘王(デュエルキング)の称号を得たことによる世界からのアクション。

 

 それらは表の遊戯の予想を遥か超えていた。

 

 学校に通おうとするだけでも苦労する程に人混みにもまれ、見ず知らずの人間が己から言質を取ろうとあの手この手を伸ばされる。金の生る木だと欲の籠った瞳を向けられ、

 

 学校内ですら、知らぬ名の生徒にあれこれ言い寄られ、更には教員側からも「今後の進路はどうするか」などと、誰の差し金かも分からぬ探りを入れられる。

 

 騒ぎを聞きつけた牛尾から一旦帰るようにとの提案を受け、ボディーガード料抜きで家まで送り届けられ、自宅に戻れば、鳴り響き続ける電話に嫌気がさした双六が電話線を引っこ抜く姿に遭遇する始末。

 

 

 まさに世界の人気者状態の表の遊戯だが、当人からすれば、決闘王(デュエルキング)は闇遊戯が勝ち取った称号ゆえに、何処か申し訳なさが勝っていた。

 

 無論、そこには己の騒動に巻き込んでしまった祖父へも含めるが、双六は「気にするな」と表の遊戯の肩を叩き宣言する。

 

「それに聞いた話では海馬くんが何やら動いてくれておるんじゃろ? なら、遊戯がエジプト旅行に行っとる間に収束するじゃろうから、気に病むことはないぞい」

 

「じいちゃん……」

 

 家まで送って貰った牛尾から、「海馬に話を通す」と聞いていたゆえに「重く考えることはない」と語る双六の大人な姿に表の遊戯は気恥ずかしさの混じった尊敬の眼差しを向けるが――

 

 

「――ブイッ!」

 

 

 またもやカーテンを少し上げ、取材陣に渾身のキメ顔を披露していた。誇らし気にフラッシュの光を浴びる双六は承認欲求が満たされることに酔いしれているようにも見える。

 

「……この状況を楽しんでるよね、じいちゃん」

 

「ムホホ、まぁ、注目されるというのは気持ち良いもんじゃからな――やっぱりの」

 

「もう、じいちゃん……」

 

 何処か恰好の付かない双六の姿に、小さく息を吐く表の遊戯だが、肩の荷が下りたかのようにその顔からは陰りが失われていた。

 

『まぁ、じいさん程とは言わないが、相棒もあのくらい楽に考えた方が良いんじゃないか?』

 

「そうなのかなぁ?」

 

「さて、そろそろ儂の冒険譚に戻ろうかの。儂が千年パズルを手にした時の侵入者を阻む、第三の仕掛けが――」

 

 そうして闇遊戯と共に表の遊戯は、再開された双六の昔語りへと耳を傾ける。

 

 

 その話を通じ、人は試練を克服して初めて得られる言葉では言い尽くせない宝があるのだと教えられるが、表の遊戯がそれを本当の意味で実感するのは先の話。

 

 やがて双六の話を聞き終えた表の遊戯の意識は明日に控えたエジプトへの闇遊戯の最後の旅路に備えるべく、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇夜に染まった空の元、ゆっくりと歩を進めるバクラは邪悪な笑みを浮かべながら、確かめるように語る。

 

「千年パズルを持つ遊戯」

 

 それは究極の闇のゲームの始まりを告げるゴングであり、

 

「千年リングを持つ俺様」

 

 それは邪悪なる神の復活の前哨戦を表し、

 

「千年眼と千年秤と千年錠を持つシャーディー」

 

 それは神々の戦いへのリベンジを賭けた決意の表れであり、

 

「千年タウクを管理する墓守の一族」

 

 それは世界の終わりをもたらす宣誓式のようであり、

 

「そして千年ロッドを預かった海馬」

 

 それは全ての準備が整った証明でもあった。

 

「ククククク、究極の闇のゲームの駒は出揃った」

 

 やがて小さく嗤い声を漏らしたバクラの足がピタリと止まる。

 

「だが、俺様にはまだやるべきことが遺されている」

 

 そう、全ての準備を終えてなおバクラは更に万全を期す。勝負は始まる前から始まっているのだと。

 

「肝心要の究極の闇のゲームに勝つための下準備がな――ククク、社長さんよぉ。ちっとばかし俺様のゲームに付き合って貰うぜ」

 

 やがて眼前にそびえ立つKCのビル――かの城のトップ、海馬に狙いを定めたバクラは社内に入り込む。

 

 

 千年アイテムに所縁があるものにしか扱えぬ三幻神の一角、『オベリスクの巨神兵』を従えた海馬 瀬人は、神にも匹敵しうる力を宿している竜を有している。

 

 バクラの望みはその力――盗賊らしく、その力を奪い取り、究極の闇のゲームに利用することこそが彼の計画。

 

 

 ゆえに海馬を誘い出す為のエサとして、モクバに狙いをつけ、眼前の眼鏡の女から、その居場所を聞き出そうとするバクラ。

 

「えっ? モ、モクバ様ですか? モクバ様なら、海馬社長と一緒に海外出張に行かれてますけど……なにか約束なされていたんですか?」

 

 

 ダメだった。

 

 

 眼鏡の女――北森の語る言葉に嘘はない。随分前に海馬はモクバを連れて、ペガサス会長の元にブルーアイズジェットで飛び立った後だ。

 

 いない相手は人質に取れないし、いない相手から力を奪うことは出来ない。

 

――いや、この女を人質に社長をおびき出せば……

 

 だが、バクラはめげなかった。モクバの性格を考えれば、大事な社員が人質に――との話を聞けば、海馬を引き連れノコノコ戻って来る筈だと。

 

 北森の実力はバクラとしても未知数だが、多少腕に覚えがある程度ならば、敵ではない。

 

 ゆえに闇のゲームを仕掛けるべく、相手の腕力も知らずに不用意に手を伸ばすバクラ。

 

「ん? こんな時間に客かよ? タイミング悪ぃな」

 

 しかし、その手は夜分にも拘らず明かりのついた部屋から顔を覗かせた缶ジュース片手のヴァロンの姿にピタリと止まった。

 

――チッ、二対一か……

 

 そうして数の不利を悟るも、バクラは己ならば対応できると、千年リングへと意識を向ける。

 

 だが、バクラはもっと深く考えるべきだった。ホワイトな労働環境をモットーにするオカルト課にて、こんな夜遅くに社員(北森たち)がいることに。

 

「まぁ、そう言うなよ、ヴァロン。なんか急な要件なんだろ。あっ、ギースの旦那、買い出しお疲れさまっす」

 

「気にするな。アヌビスの時は送り出しも碌に出来なかったからな……なんだ、客人か?」

 

 やがてヴァロンの背後から顔を出した牛尾に加え、バクラの背後からギースが買い物袋片手に竜崎と羽蛾を引き連れ――

 

「彼、何処かで見た気が……誰だったかしら?」

 

「恐らく、バトルシティの時かと。負傷者リストの中で見た覚えがあります」

 

 牛尾の後ろから、歩み出た響みどりとアメルダが羽蛾と竜崎から荷物を受け取りつつ、バクラの素性に思い至り――

 

「あ~! ば~くらくんだ~! アメルダくん、どいて! ねぇ、ねぇ! 獏良くん! 今、オカルト課でパンドラさんの送別会してるんだけど、一緒に――」

 

 形成されつつある人混みをかき分け、自身の手を握った野坂ミホが矢継ぎ早に自身に迫る光景にバクラの表情は固まった。

 

 

 戦力比は野坂ミホが戦力にならないことを考えても、九対一。しかも実力の方もそこそこながらに侮れない面々+一線級の者たち。

 

 

 だが、数の利がなんだ。バクラには闇のゲームというアドバンテージがある。

 

 肉体と精神に直接ダメージを与える命のやり取りの前では普段通りの力を発揮できるものなど、そうはいない。

 

 

「ゴメンね、野坂さん! ボク、もう空港に向かわないといけないんだ!」

 

 

 ダメだった。

 

 

 全力で猫を被り、バクラはこの場を後にする方針に切り替える。

 

 諦めも肝心である。バクラは引き際を間違えぬ男なのだ。

 

「えぇ~! ……そうだ! 牛尾くんに送って貰えば空港まですぐ着くよー! いや~、私って冴えてるな~! ねぇ! いいでしょ、牛尾くん!! 決まりね! だから、獏良くんもフィーバーしま――あぁ~!? いないー!?」

 

 バクラは引き際を間違えぬ男なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして空港にダッシュし、遊戯たちの動向を観察しながら飛行機に乗ったバクラが、エジプトに着いた後に真っ先に行ったのは――

 

「あっ、獏良君」

 

「やぁ、遊戯くん!」

 

 表の遊戯と偶然を装って会うことだった。無論、猫を被り主人格である獏良のフリも忘れない。

 

「獏良君もエジプト旅行?」

 

「うん、父さんのことで、ちょっとね――それと、これ! 千年パズル! ボクの荷物に紛れ込んでたみたいなんだ」

 

 何処か警戒心を見せる表の遊戯を余所にバクラはなんでもないように千年パズルを差し出して見せる。

 

 しかし、その言葉は嘘に塗れていた。

 

 実際は千年アイテムが手荷物で持ち込めない仕様だった為に、貨物室から流れた遊戯の荷物から盗み取ったものである。

 

 しかし明確な証拠がない以上、表の遊戯も追及は出来ず、慎重に受け取るに留まった。

 

「……そうなんだ。ねぇ、獏良君。キミは今、千年リングをつけ――」

 

「あっ、もうこんな時間!? それじゃあボクは約束があるから、またね! あー! お土産は食べ物がいいなー!!」

 

 やがて表の遊戯が探るように口を開くが、それより先に時計をチラと見たバクラは宿主である獏良 了の演技をしながら慌てた様子で空港を後にする。

 

――ククク、海馬社長の件は失敗に終わったが、なんとか千年パズルへ俺様の魂の一部をパラサイトさせられたぜぇ……少しばかり予定は狂ったが、今はこれで十分だ。

 

 既にバクラの目的は達成された。なれば長居は無用。

 

 それに加え、バクラとしても獏良の「のほほーん」とした性格のトレースは自身の気質の差異が大きいゆえに肩がこる為、長く続けたいものでもなかった面もあったりする。

 

 

 

 

 そうして走り去って行ったバクラを見送り、首から千年パズルをかけた表の遊戯は千年パズルに眠る闇遊戯へと語り掛けた。

 

「ねぇ、もう一人のボク。なにかあった?」

 

『いや。というより、相棒の手から離れた俺に外の様子を知る方法がないのはお前も知っているだろ?』

 

「……そうだよね」

 

 とはいえ闇遊戯は性質上、表の遊戯の身体の元に千年パズルがなければ意識を表に出すことは出来ない。

 

 ゆえにバクラの悪意へ警戒だけが募り、心にモヤモヤが蓄積していくが――

 

「おーい、遊戯ー! 千年パズルはちゃんとあったかー?」

 

「うん、大丈夫だったよ、城之内くん!」

 

 自分たちの荷物を回収し終えた城之内が、杏子と本田を引き連れた光景に表の遊戯は努めて明るく振る舞って見せる。

 

「なら良かったぜ! んで、エジプトについたは良いんだけどよ。こっからどこ行きゃいいんだ? 牛尾のヤツは手続きがどうとか言ってたみてぇだが……」

 

「えーと、ガイドの人がいるらしいんだけど……」

 

 そうして問われるがままに今後の予定を城之内に明かそうとするが――

 

 

「む――ぎ――様――と――ゆ――様――!!」

 

 

 なにやら遠方から表の遊戯を呼ぶ声が響いた。

 

「なんだ、アレ? 段々こっちに近づいて――」

 

 その声に城之内が視線を向ければ、ビヨン、ビヨンと擬音が出そうな程に真ん丸ボディのぽっちゃり系のたらこ唇の巨漢の男が迫る光景が広がり――

 

「いたいた~! むとー ゆーぎー様ね? ガイド、ガイド! 案内するよ~!」

 

「わわっ、よ、よろしくお、お願いします!?」

 

 その巨漢の男は、褐色肌の太ましい体形に違わぬパワフルさを以て表の遊戯の手を取り、己の身体と共に小柄な表の遊戯をグルングルンと回す。

 

 そして「ガイドだ」と身分を明かす、本田は半信半疑な様相で指差しつつ呟く。

 

「なんだ、このデケェの……」

 

「ガイドさん……らしいけど」

 

 そんな本田と杏子の困惑の眼差しに、ピタリと動きを止めた太ましい男は子供のように邪気の無い笑顔を浮かべ――

 

「ボバサだよ~」

 

 表の遊戯を地面に降ろしながら、朗らかに名乗った。

 

「よろしくね~」

 

 かくして、人懐っこそうに手を振る巨漢の男――ボバサの案内の元、遊戯たち一行の最後の旅路が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボバサの合流を確認――と、コミック版の流れに近いみたいですね」

 

 遥か遠方から超視力まかせに様子を窺う異物(神崎)思惑(お節介)に絡めとられながら。

 

 






Q:あれ? DMではシャーディーが案内するんじゃないの?

A:ボバサ、なんのことか分かんないよ~ ( ´3`)~♪


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