マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
??の翼神竜「戦況を一瞬で塗り替えたラーの翼神竜は流石の貫禄んごねぇ……( - ω - ) ウンウン」





第191話 怨嗟の果て

 

 

 闇遊戯とマハードが、隠し通路の先にあるこの地下闘技場にて、アクナディンの裏切りの現場を目撃したのは偶然が重なった結果だった。

 

 マハードを助ける為、命懸けの嘆願をし、尚且つ魔力(ヘカ)切れで倒れた己を王宮まで運んだ兵へ闇遊戯が礼を告げようと動いたのが全ての始まりである。

 

 天上の存在であるファラオの礼に対し、「恐れ多い」と驚き飛びのいた兵が壁に激突した時に損傷した壁の中から「偶然」隠し通路を発見。

 

 最初は隠し通路の発見に驚いていただけだが、兵の「奥から助けを呼ぶような叫び声が聞こえた」との発言に、万が一があってはならぬと、急行した闇遊戯たちはアクナディンの裏切りの現場を「偶然」目撃したのだ。

 

 

 なんとも「偶然」である。

 

 

 そうして目撃したアクナディンの暴挙に義憤からか、一歩前に出た兵が相手の言い訳を許さぬように大声で糾弾する。

 

「アクナディン様……これ程の非道に加え、ファラオへの叛意のお言葉の数々、見過ごす訳にはいきません!」

 

「アクナディン、何故なんだ……」

 

「ファラオ! お下がりください! アクナディン様は貴方様の御命を狙っております!」

 

 アクナディンから弁明の声を聞こうと闇遊戯が前に出るが、その歩みは兵が横に突き出した腕が遮った。ファラオの命を守るものとして当然の対応であろう。

 

「お待ちください、ファラオ! アクナディン様はバクラに敗れたことで冷静さを失っているのです! 今一度、冷静になる時を頂きとうございます!!」

 

「お言葉ですが、セト様! あのようなご発言を見逃すなど、王権崩壊の亀裂になりかねません! 何より皆に示しがつきませぬ! ファラオ、ご決断を!」

 

 セトが闇遊戯へ膝をつきながらの嘆願も、やたらと出しゃばる兵が封殺するが、闇遊戯は暫し瞳を閉じ、冷静に務めながらマハードの意見を求めた。

 

「……マハードはどう思う?」

 

「私も失態を犯した身、大それたことは言えません――ただファラオのご決断に従うのみです」

 

 とはいえ、マハードから返って来たのは丸投げ染みた回答。だが闇遊戯の決定に全幅の信頼を置いている事実が、言葉よりも雄弁に語っている瞳を前に、闇遊戯の腹は決まる。

 

「……アクナディン。お前が乱心したのはバクラたちの存在があった為。ゆえにこの一件が終わるまで暫し、牢にて頭を冷やせ」

 

「ファラオ……御寛大なお心に感謝いたします……!」

 

 甘いとすら思われかねない処罰だが、バクラからのなんらかの魔術の類を受けた可能性も否定できない為の決定だったが、アクナディンからすれば堪ったものではない。

 

――駄目だ。バクラと、賊の勢力の騒ぎが収まった後では、ファラオを王位から落とせぬ……!

 

「ではアクナディン様、此方へ。牢までご案内します」

 

「ええい、離せ!!」

 

「アクナディン様! ファラオの寛大なご決定に――」

 

 そうして己を連行しようとする兵の手を払ったアクナディンは相手の声など無視して、己がディアディアンクの付いた腕を天に掲げた。

 

「――現れろ、サウザンド・アイズ・サクリファイスよ!!」

 

 その声に従い闇より現れた不気味な紫色の体色をした一つ眼が伸びた翼の生えた異形が、鍵爪をガャシャリと開き、それに伴い牙の覗く腹の口から瘴気のような息が漏れた。

 

「アクナディン様!?」

 

「ついに本性を現しになられたか!!」

 

 今までアクナディンが扱っていた魔物(カー)とは似ても似つかぬ別の禍々しき魔物(カー)、サウザンド・アイズ・サクリファイスの出現に戸惑いの声を漏らすセト、激昂する兵。

 

 だが、アクナディン自身はそんな相手の反応に構っている暇はなかった。

 

「千眼呪縛!!」

 

 そんなアクナディンの声にサウザンド・アイズ・サクリファイスの全身から、その名の通り千の目玉がギョロリと開き、その瞳に捉えられた闇遊戯とマハードの身体は金縛りにあったように動かない。

 

「ぐっ……!?」

 

「身体が……!?」

 

――こうなれば今ここでファラオを殺すしかない! さすれば王家の血を継ぐのはセトのみ! 幸い邪魔をするであろう神官はこの場では1人! それがエジプト一の魔術師と名高いマハードなのが、厄介ではあるが……

 

 そうして二人に魔物(カー)を呼び出させずに、僅かに稼いだ時間でアクナディンはすぐさま考えを纏めつつ――

 

「サウザンド・アイズ・サクリファイスよ! 囚人共の魔物(カー)を喰らえ!!」

 

 戦力の増強を図る。

 

「やめろー!」

 

「く、くるなぁあああ!!」

 

 やがて今までことの成り行きを静かに見守っていた囚人たちの叫びなど気にも留めず、素早く二体の魔物(カー)を屠り喰らったサウザンド・アイズ・サクリファイスの身体はベキベキと音を立てて膨れ上がった。

 

魔物(カー)が……変貌して……!?」

 

「ククク、これで我がサウザンド・アイズ・サクリファイスは、ミレニアム・アイズ・サクリファイスへと進化した」

 

 セトの悍ましい物でも見たかのような声を余所に、身体中の瞳が千年眼へと変貌し、魔力(ヘカ)共々邪悪さを増したサウザンド・アイズ・サクリファイス――否、ミレニアム・アイズ・サクリファイスの姿にアクナディンは勝利を確信する

 

――漲る、力が漲るぞ! この力ならば、マハードを倒せる! そしてファラオを亡き者にすればたとえ私が死のうとも、此度の騒動がセトを王位に引き上げてくれる!!

 

「ミレニアム・アイズ・サクリファイスとなった我が魔物(カー)の力! 度重なる連戦で消耗したお前たちにこれを破る術はあるまい!」

 

 出来ればセトに託したかった力ではあるが、新たなエサはファラオを殺した後で集めれば良い。

 

 それゆえに最優先事項である闇遊戯の抹殺を図ろうとしたアクナディンだが――

 

「ハァアアアア!!」

 

 マハードが気合と共に全身に漲らせた魔力(ヘカ)の輝きが、ミレニアム・アイズ・サクリファイスの拘束を打ち破った。

 

 パリンと割れて砕けるような音と共に自由を取り戻したマハードは闇遊戯を守るような位置にて反逆者に立ちはだかる。

 

「ほう、流石だな、マハード。エジプト一の魔術師と言われるだけはある」

 

「ファラオのご慈悲すら踏みにじる、此度の狼藉! 決して許されるとお思いにならぬことだ!!」

 

 アクナディンの感心するような声も意に介さず、今のマハードにあるのは純粋な怒りのみ。

 

 その研ぎ澄まされたマハードの魔力(ヘカ)は、今の外法によりパワーアップを果たしたアクナディンを以てしても冷や汗が流れる程だ。

 

「セト、デュオスを呼べ! 共にマハードを降し、ファラオを亡き者にするのだ!!」

 

 ゆえに己が息子であるセトとの共闘を選ぶアクナディン。幾らマハードの力が強大であっても、数の利を生かせば対応できる自信がアクナディンにはあった。

 

「アクナディン様……たとえ大恩ある貴方の言葉であっても――」

 

 しかしセトはアクナディンに立ち塞がるように歩み出て、キサラがくれたミサンガが揺れる拳を握り――

 

「――私は闇に魂は売らぬ!!」

 

 力強く決別を宣言。

 

 それは光の道を、正道を歩むとの決意。闇への誘いを完全に振り切ったセトの心は、もはやアクナディンの甘言など届かない。

 

「……そうか」

 

「アクナディン様! いい加減目をお覚ましください! 貴方はそのような邪念に心奪われる方ではなかった筈です! まさかバクラに何らかの術をかけられたのですか!」

 

「……もうよい」

 

 そんな中、セトの説得を受けて諦めたような言葉を漏らしたアクナディンに、セトの顔は喜色に染まる。やはり、今回のアクナディンの変貌は何かの間違いだったのだと。

 

「おお! 遂に元の貴方に――ぐっ!?」

 

「お前は黙ってそこで見ておれ」

 

 だが、ミレニアム・アイズ・サクリファイスの力によって動きを封じられ、宙に浮かぶセトにアクナディンは邪悪な笑みを浮かべた。

 

「お前が王に! ファラオになる瞬間を!!」

 

「お、お止めください……ア、アクナディン様……」

 

 セトの必死の説得すら無碍にしたアクナディンの姿に、マハードの中の最後の慈悲すら消え失せる。

 

「出でよ、幻想の魔術師! ファラオに指一本たりとも触れさせるな!」

 

「ゆくぞ、マハ――ぁ」

 

 しかし幻想の魔術師と対峙したアクナディンが此処に来て唐突にピタリと動きを止めた。

 

「……アクナディン様?」

 

 遂に思い直してくれたのかと希望を持ったセトの言を余所に、アクナディンの胸から剣が飛び出していた。

 

 その剣の持ち主である己を背後から一突きにした兵に向け、アクナディンは驚愕の声を途切れ途切れに零す。

 

「貴ィ……様ァ……いつの……間に……」

 

 一兵卒の戦闘力ではアクナディンの眼中にないゆえにミレニアム・アイズ・サクリファイスの力の行使対象からは魔力(ヘカ)の節約も兼ねて外していたが、だからと言って、不意を突けば攻撃が当たるというものでもない。

 

 魔物(カー)は命じられずとも本能的に宿主を守るのだ。

 

 つまり、人を大きく凌駕した能力を持つ魔物(カー)を掻い潜れるものでしか、宿主を傷つけることは叶わない――そんなことが出来るのは、同じ魔物(カー)くらいだ。

 

 人力でどうにかなる相手なら、神官が此処まで高い地位を得られていない。

 

「下準備はこんなものか」

 

 だが、その前提を覆して背後からアクナディンを一突きにした兵から出たのは感情の色が見えない冷淡な声。

 

「馬鹿……な……こん……なとこ……で……」

 

 先程までの、ファラオを案ずる熱血漢な姿が嘘のような豹変ぶりに戸惑いの声を零すアクナディンだが、やがて限界を迎えたようにパタリと倒れる。

 

 やがて宿主の限界ゆえかミレニアム・アイズ・サクリファイスも煙のように消えていき、闇遊戯とセトの拘束が解かれた。

 

 そうして倒れたアクナディンは息も絶え絶えにか細く呼吸音を響かせるばかり。こうなってしまえば死は時間の問題だろう。

 

「アクナディン……様」

 

 そんな恩師の姿にセトも思わず悲痛な声を漏らし、目を伏せる。状況を鑑みても兵の行動に問題はない。ファラオの慈悲すら踏みにじり、命を狙った相手に刃を突き立てることは当然のことだ。

 

 だが感情までもが、そう容易く割り切れるものではない。

 

「よっと」

 

 しかし、そんな最中に瀕死のアクナディンの胸倉を掴み上げて持ち上げた兵の行動にマハードが待ったをかける。

 

「待て、既に止めを刺すまでもない状態だ。これ以上の追い打ちは止せ」

 

 神に等しきファラオへ唾を吐きかけたも同然の相手を許せぬ気持ちはマハードとて理解できるが、だからといって必要以上の攻撃を加えることを許容する訳にはいかなかった。

 

 

「《ポジションチェンジ》」

 

 

 だが、兵が短くそう呟いたと共に、瀕死だったアクナディンの姿は画面が切り取られたかのように消失する。

 

 それは恩師の亡骸一歩手前の身体と、その眼に埋め込まれた千年眼の消失を意味する為、セトは腰から剣を引き抜き、兵へと向けた。

 

「ッ!? 貴様、何をした!? アクナディン様を何処へやった!!」

 

――よもや、商人の言っていた内に潜む敵は1人だけではなかったのか!?

 

「待てセト――まずはこの者から話を聞くことが先決だ」

 

――私の助命を願い出てくれたものに杖を向けることになろうとはな……

 

 未だ感情の整理がつかぬセトの慟哭を諫めるように、マハードがその肩に手を置きつつ幻想の魔術師の杖を兵へと警戒と共に向けるが――

 

 

「クル・エルナ村の同胞の無念! 晴らさせて頂く!!」

 

 

 問答無用とばかりに腰から火薬の入った筒を取り出した兵は、導火線に火を点けた。

 

「ファラオ! 御覚悟を!!」

 

 この距離で火薬が炸裂すれば、闇遊戯とてタダでは済むまい。

 

 やがて導火線に奔る火が火薬に接触し――

 

 

――自爆するつもりか!?

 

「ファラオ、私の後ろに!! デュオス!!」

 

「幻想の魔術師!! 魔防壁!!」

 

 セトの魔物(カー)デュオスと、マハードの魔物(カー)、幻想の魔術師が、兵の前に立ちふさがった瞬間に、爆炎が地下闘技場に広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処で舞台は変わり、砂漠のど真ん中を闇遊戯の王墓へ向けてせっせと進む表の遊戯たち。だが、そんな中で城之内は我慢できないように叫んだ。

 

「結ッ構ッッ!! 歩いたよな! まだかよ、ボバサ!!」

 

 ボバサの案内で王宮のある街からせっせと歩き続け、早幾日。未だに王墓の「お」の字も見当たらない。

 

 彼らがこの世界の全てに触れぬゆえか、疲労や空腹の類を感じないとはいえ、砂漠を黙々と徒歩で進んでいくだけでは、精神的に辛いところである。

 

「もうちょっとだよ~」

 

「それ、さっきも言ってたわよね……」

 

 先頭をルンルンで進むボバサの説明にも、杏子が溜息で返す様に、このやり取りは飽きる程に繰り返されていた。

 

「みんな、頑張ろ! ボバサも頑張る!」

 

 恰幅の良い身体をボヨンボヨン揺らしながらのボバサの応援も、いまいち一同には効果が薄い模様。

 

「あー、もう駄目だ! 少しだけ岩陰で休もうぜー」

 

「……城之内。ノンビリしてる暇はないでしょ――もう一人の遊戯だって、今も戦ってるのよ……」

 

 そんな中で、城之内がギブアップとばかりに見つけた岩陰にへたり込んだ。杏子が苦言を呈するが当の本人も精神的な疲労は隠せない。

 

「んなこと言われても、ずっと歩き詰めで疲れんだよ……休み休みいかねぇと、こっちが先に倒れちまう。見渡す限り砂漠ばっかで進んでる気もしねぇし」

 

「ほら、城之内! 立・ち・な・さ・い!」

 

「待って、杏子。城之内くんの言うことも一理あるよ。ずっと休みなく歩き続けたんだし、少し休憩していこう」

 

 ダラリと身体を横たえぼやく城之内の腕を強引に引く杏子を表の遊戯は止めつつ、岩陰に腰を下ろした。

 

 大前提として砂漠を徒歩で走破しようなど、そもそもが無茶な行為だ。今回は自分たちが特殊な状態ゆえに強行できたが、それでも適度なガス抜きは必須であろう。

 

「さっすが遊戯、話が分か――なんだ、アイツら?」

 

「えっ?」

 

「みんな伏せて!!」

 

 だが、自分たちの背後にあった大きめの岩のくぼみから見える光景に、表の遊戯の判断で、身を隠すように咄嗟に身体を伏せる一同。

 

 その岩のくぼみから、地下深くに広がるのは――

 

「UGOGOー」

 

「KOTTI KOTTI」

 

「YOISYOー!」

 

 多くのオレイカルコスソルジャーたちが、何やら作業している様子。地下を削り、空間を広げ、水を張り、場を整えている光景。

 

「なんだ、あいつら? こんな何もない場所で何やってんだ?」

 

 そんな工事現場感溢れる場に、城之内も思わず首を捻るが――

 

「あれって……形式は少し違うようだけど『禊』?」

 

「みそぎ? なんだソレ?」

 

「神道での不浄や穢れ――悪いものを払う儀式だよ。でも、向こうにあるのは聖水……他の宗教の様式も混ざってる……なんだろう? ホプキンス教授の論文に似たようなのがあった気が……」

 

 表の遊戯は、オレイカルコスソルジャーたちが水を張っている場に揃えられた小物から彼らの目的を予想していく。

 

 とはいえ、闇遊戯の為に色々調べたとはいえ、古代エジプト以外の分野の知識は穴が多い為、断定はできない。

 

 だが、その説明を話半分で聞いていた城之内は、見逃せないものを発見した。

 

「あっ、あれッ! 千年アイテムじゃねぇか!?

 

「なに言ってるのよ、城之内。千年アイテムは神官の人たちが持ってるって話――って嘘ッ!?」

 

「マジかよ!? まさかもう一人の遊戯の身に――」

 

「ちょっと本田、声が大きい!」

 

 予想外の代物に動揺から騒がしさを増していく一同に影が差した。

 

「UGOGO?」

 

 表の遊戯たちの真正面には岩のくぼみから出てきたバケツを持ったオレイカルコスソルジャーが佇む。

 

 その体躯は大柄なボバサすら超えたものであり、荒事では勝ち目が見いだせない。

 

「悪ィ! こうなったら、お前らだけでも――」

 

「待って、本田君」

 

「ゆ、遊戯!?」

 

 ゆえに本田が己を囮にしてでも、皆を逃がそうとするが、それを表の遊戯が引き留めた。

 

 そうしてジッと動かず口に手を当てながら息を潜める表の遊戯たち一同を余所に、目の前でオレイカルコスソルジャーはバケツに入った大量の石を所定の位置に捨てた後、踵を返して立ち去っていく。

 

――気付かれて……ない?

 

 その表の遊戯たちの存在など目に入っていないように、岩のくぼみの内部の階段を下って行くオレイカルコスソルジャーの姿に、表の遊戯はそう仮定した。

 

「DOーSITA?」

 

「AWATI ITATIGUUY AKNAN」

 

「MAZIDE!?」

 

 他のオレイカルコスソルジャーと何やら話していたが、それらも遊戯たちに気付いた様子もなく作業に戻って行く光景を見るに表の遊戯の仮定は間違っていなさそうだ。

 

「い、行ったかぁ~~心臓止まるかと思ったぜ……ボバサ、アイツらのこと何か分かるか?」

 

 そんな中、先程までの緊張の為か膝から崩れ落ちる城之内が、ボバサ関連かと話を振るが――

 

「ううん、ボバサ知らない。初めて見る」

 

「そうかー、見た感じ街の奴らみてぇに俺らのこと見えてねぇみたいだな――まぁ、アイツらにだけ見える方がむしろおかしいか」

 

「触れもしねぇから千年アイテムを、どうこうするのも出来ねぇけどな」

 

 とはいえ、分からないことが増えるばかり。

 

 溜息を吐いた本田の言う様に自分たちには「出来ないこと」が多すぎた。

 

「つーか、なら隠れる必要ねぇじゃねぇか。近くで見てこようぜ!」

 

「ちょ、ちょっと城之内、止めといた方が――」

 

 だが、此処で透明人間状態ゆえか、強気な城之内は杏子が引き留めるまもなく、階段を下って行く。

 

「OZUAGIT NOMUOYK ONOKOK!!」

 

「うおっ!?」

 

 しかし目の前に現れた巻物を持つオレイカルコスソルジャーの1体の怒声に、ビクリと身体を震わせた。

 

「NESAMNUS、US!!」

 

 だが、その怒声の先は、もう1体の筆を持つオレイカルコスソルジャー。ペコペコ頭を下げている様子からなにか怒られている模様。

 

「なんだよ、脅かしやがって……」

 

 それゆえに、「やはり自分たちの姿が見えていないのだ」と安堵の息を漏らす城之内によって、問題ないことが判明した為、遊戯たち一同は暫し、この場の探索に乗り出した。

 

「ここで一体なにしてるのかしら……」

 

「多分だけど、儀式場……なのかな?」

 

「なんの儀式だ?」

 

「多分、悪い物を払う……んだと思う。宗教や形式の違いはあるけど、どれもその類のものばかりだし……」

 

 杏子と本田の疑問に、闇遊戯の為に片っ端から集めた情報を基に仮説を立てていく表の遊戯だが、明確な部分は不明である為、謎は深まるばかりだ。

 

 そんな中、祈りの手に千年リングを持った白装束を着たオレイカルコスソルジャーに、清めの水をぶっかけている神職の服を着たオレイカルコスソルジャーの隣に立つ城之内は、自分たちが来た入り口の方を指さす。

 

「なら、この辺のどっか分かり易いとこにアイツに向けたメッセージの残しとこうぜ!あの辺がいいんじゃねぇか?」

 

「うーん、ならあっちの方がいいんじゃない?」

 

「EKOTEKUDATAK EDOTA ONURETTI AGARUTIA」

 

「USSU!」

 

 やがて、この不思議な儀式場に、闇遊戯たちが見つけやすいような位置に目印をセットした表の遊戯たち一同は、再び道なき砂漠を進み始める。

 

 だが、そんな中で杏子は心配気な声を漏らした。

 

「でも千年パズルもあったのよね……もう一人の遊戯……大丈夫かしら……」

 

「確かに、バクラとの喧嘩で何かあった可能性も……」

 

 本田が続けたように、それは千年パズルを失ったであろう闇遊戯の安否を気がかりにしてのことだったが、先頭を行くボバサに続く表の遊戯は、努めて明るく返す。

 

「それは大丈夫だと思う。この世界はもう一人のボクの記憶の世界だから、何かあったのなら、この世界自体に影響が出る筈だよ」

 

「うん、きっとダイジョブ、ダイジョブ! 信じる気持ち、とっても大事!」

 

 表の遊戯の確信に満ちた言葉に安心するような一同は、元気付けようとするボバサの動きにクスクスと笑顔を取り戻したなら、力強い足取りで進んでいく。

 

 

 

 

 

「しっかし、千年アイテムお祓いして、何がしてぇんだろうな、アイツら」

 

 だが、そんな最中に城之内が呟いた疑問の答えは、誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 王宮から遠く離れた砂漠のど真ん中にて、倒れていたアクナディンは目を覚ます。

 

 なんかやたらと動きの良い兵に剣で胸を貫かれた傷は応急処置されており、身体の節々の痛みを堪えつつ立ち上がったアクナディンだが、千年眼のあった左目の喪失感に気付いた。

 

「……此処は? 千年眼が……ない?」

 

「ようやく目覚めたか」

 

「ッ!? アヌビス!? そうか、貴様の助力であの場を脱したのか……よくやった、流石、我が忠実なる部下」

 

 そして近くに立つ己が部下の1人であるアヌビスの姿に、今の状況を大まかに把握した。そう、まだセトを王位につける計画は、完全に頓挫した訳ではないのだと。

 

 

「遅かったじゃないか」

 

 

 だが、新たに現れた見知らぬ顔にアクナディンは警戒するようにディアディアンクを構えるが――

 

「何だ、貴様は…………アヌビス、なにを!?」

 

「くだらん演技も此処までだ」

 

 己に向けて形のことなるディアディアンクを構えたアヌビスの姿に、一歩後退るアクナディン。

 

「あぁ、長かった。この時をどれだけ待ちわびたか……くだらん指示にも応え、駒として動き、屈辱の日々を送った……だが、全てはこの時の為!!」

 

「アヌビス、貴様、何を言って――」

 

「来い、《アンドロ・スフィンクス》!! 《スフィンクス・テーレイア》!!」

 

 一人独白を零すアヌビスに困惑するアクナディンだが、相手の背後に呼び出された獅子の巨大な獣戦士、《アンドロ・スフィンクス》と、麗しい赤い長髪を伸ばす女の頭を持つスフィンクス、《スフィンクス・テーレイア》の姿に鋭い視線を向けた。

 

「何の真似だ、アヌビス!?」

 

「ククク、聞こえる。聞こえるぞ。貴様の身に渦巻く同胞の怨嗟の声が!! この身を覆うがいい、我が怨念よ! 《トラゴエディア》!!」

 

 だが、魔物(カー)の姿を解放したトラゴエディアの蜘蛛の足が大地を揺らす衝撃に、アクナディンは忌々し気な表情を浮かべていく。

 

「貴様らッ!」

 

「貴様に我が味わった地獄をくれてやろうぞ!!」

 

「あの世でオレの同胞にくびり殺されるが良い!!」

 

 そうしてアヌビスとトラゴエディアの憎悪の叫びが響くが、そんなものなど、アクナディンは知ったことではない。今、彼を突き動かすのは、己が息子セトへ王位を継がせること。

 

 その為ならば、彼は文字通り「なんだってやる」。ゆえに眼前のエサに向けて魔物(カー)をけしかけようとするが、身体に奔った痛みに膝をつくアクナディン。

 

「アヌビス! 私を裏切るとは、愚かな真似を! 来たれ、ミレニアム・アイズ――ぐっ!?」

 

――いかん、傷が深い……だがセトを、我が息子を王にするまでは死ねん!

 

「ッ! 来い! ミレニアム・アイズ・サクリファイス!! 邪眼の魔術を放て!!」

 

 そんな怪我の痛みなど気迫で抑え込み、呼び出されたミレニアム・アイズ・サクリファイスは異音染みた叫びを轟かせた。

 

 そしてすぐさま全身の千年眼から3匹の獲物を見定め、身体中の千年眼からレーザーが放たれる中、被弾を恐れぬトラゴエディアがミレニアム・アイズ・サクリファイスの翼に噛みつく。

 

 更に追撃とばかりに《アンドロ・スフィンクス》の雄叫びからなる轟砲と、《スフィンクス・テーレイア》の口から噴き出す炎が放たれた。

 

 

 怨嗟渦巻く復讐劇の幕が上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 複数の尾を揺らす黄金の竜、《マテリアルドラゴン》の身体に背中を預けつつ、《封神鏡》に映る2人の復讐劇の終わりを、トラゴエディアが入手した本を眺めつつ待っていた神崎の影が伸び、口を開く。

 

「何故、あの神官の傷を癒した?」

 

 やがて影から響いたいつもより明瞭な冥界の王の声に、神崎は本をパタンと閉じながら、影の方に向き直った。

 

「これは、お久しぶりですね、冥界の王――何故と問われれば、彼らの復讐に『気持ちの良い勝利』が必要だからですよ」

 

「一方的な戦いに見えるが?」

 

「二人がかりで未だに倒せていないにも拘わらず?」

 

 冥界の王の疑問ににこやかに回答する神崎が言外に告げる様に、アクナディンの戦闘能力は決して低くない。

 

 剣術の腕もセトに剣を教える程に達者で、それに伴い一瞬の間に行われる駆け引きにも慣れている。

 

 長く神官の地位にいたことも相まって経験に関してはマハードすら凌ぐだろう。

 

 今の半死半生な身体も、目の前の良質な二つのエサを喰えば、再起は可能だ。

 

 ゆえに「生き延びてセトに王位をつがせる」目標を諦める理由もなく、現在のモチベーションも高い。

 

 その「生への執着」はミレニアム・アイズ・サクリファイスの力を限界以上に引き出すだろう。アヌビスとトラゴエディアが二人がかりでも手古摺る程に。

 

「そう……か」

 

「何か他に気になることでも?」

 

 やがて納得をみせた冥界の王は、神崎へ静かに告げる。

 

「考えていた」

 

 だが、その発言は重要な要素が大きく抜け落ちており、要領を得ない。

 

「考え……ですか」

 

「貴様という個を眺め、人間を観察し、人の心に触れ、考えていた」

 

 それは冥界の王の主張を読み取ろうとする神崎の努力が無為に帰す程、伝える気が垣間見えなかった。

 

「答えは出ましたか?」

 

「我の腹は決まったよ」

 

「事情は読み取れませんが、何よりです――それで、どうするおつもりですか?」

 

 あくまで冥界の王自身に向けて語られているような発言に対し、相槌に徹した神崎だが――

 

「直に分かる」

 

 そう最後に短く告げた冥界の王は影と共に静かに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭を砕かれ、全身を引き裂かれたアクナディンの亡骸を前にアヌビスは高笑う。

 

「フハハハハハハハハハハッ!! ハハハハハハハハハハッ! ハーハッハッハッハッハ!! やった、やったぞ!! 我は遂にやり遂げたのだ! あのにっくきアクナディンを! この手で消し去ってやったぞ!」

 

「……終わってみれば存外アッサリとした最後だったな」

 

 しかし、一方で人間の姿に戻ったトラゴエディアの言葉にはどこか虚無感を感じさせた。

 

 アクナディンの足掻きは手強くはあった。だが、トラゴエディアからすれば、それだけだった。

 

 亡き同胞の仇を討ったというのに、トラゴエディアの心は晴れない。

 

 己の隣で達成感や、多幸感に包まれ、狂ったように笑い続けるアヌビス程にはしゃぐ気にはなれなかった。

 

「フハハハハハハ! 我ガ望ミハ……成就サレ、実ニ昂ル――」

 

「おい、どうした?」

 

 だが、此処でアヌビスの身体に異変が起こる。高笑いを上げていた声は徐々に歪みを見せ、身体は溶けるように崩れ始める。しかし、当のアヌビスは己の身体に生じた異変など気にも留めずに愉し気だ。

 

「あアぁ? 我……ハ……復しゅウを……成シ遂げタ……ノだァぁあ……………………」

 

「どうした!? オレの声が聞こえないのか!?」

 

「アハハ……はヒひャハハ……ハ…………ハ…………………………」

 

 やがて身体が完全に崩れ去ったアヌビスだったものが砂漠に消えていく中、消失した共犯者がいた砂地に手を当てるトラゴエディアは理解する。いや、思い出した。

 

「……そうか、()()か」

 

 自分たちダークシグナーが一体何によって現世に留まれているのかを。

 

 そうして亡骸すら残らなかった共犯者の最後へ言語化できない感情を抱くトラゴエディアに声がかかった。

 

「おや、無事に成仏できたようですね」

 

「この有様が『無事』だと言えるのか?」

 

 《マテリアルドラゴン》を引き連れながら、アヌビスのデッキを拾う神崎に、皮肉を飛ばすトラゴエディアだが、相手は堪えた様子もなくあっけらかんと返す。

 

「そう言われましても、最初に説明した通り、ダークシグナーは死後の『強い未練』によって、現世にその身を留めています。なれば、その『強い未練』がなくなれば元の死者に戻るのは当然のことでしょう?」

 

 神崎からすれば「何を今更」な問答だった。ダークシグナーの本質は「死からの蘇生」ではない。「どう死に直すか」だ。まさに未練に縛られた憐れな囚人。

 

「……だったら、何故、オレは無事なんだ?」

 

「貴方の『強い未練』はアクナディンの殺害では晴れなかったからかと。今すぐどうこうなる問題ではありませんし、ご安心を――その内、直に内から衝動が溢れるでしょうから、その時次第ですよ」

 

 とはいえ、トラゴエディアの疑問は神崎にも分からない部分だった。

 

 原作でも彼はそこまで下手人への復讐に固執はしていなかった事実は知っていても、神崎に分かるのは所詮そこまでだ。その為、後は流れに任せるしかない。

 

「元神官とはいえ、同じ男を憎んだ者の最後が『これ』とはな……」

 

――いや、ヤツからすれば復讐を遂げたことによる多幸感の只中で終われたのなら、コイツ(神崎)に殺されるよりは余程上等な最後だった……か。

 

 内と外で葛藤を漏らすトラゴエディアに、神崎は空気を変えるように話題を変える。

 

「人の最後なんてそんなものばかりですよ。そろそろ仕事の話に戻りましょうか――トラゴエディア、貴方は王宮の見張りを頼みます。名もなきファラオに万が一があれば連絡を」

 

「ああ……分かった」

 

「では、私はこれで」

 

 そうして姿を消した神崎を余所にトラゴエディアは暫し茫然と虚空を眺めていたが――

 

「これが復讐……か」

 

 もう一度、アヌビスがいた場所の砂地に触れる。

 

 

「……存外つまらんな」

 

 

 そんなトラゴエディアの呟きは砂の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 王宮の地下闘技場にて起こった兵の自爆は、火薬不足で威力が足りなかったゆえか、地下で生き埋めになることもなく、死者の方も死体がグチャグチャになっていたゆえに個人の判別は不可能だった。

 

 だが、状況から鑑みて死亡したのは自爆した兵と、アクナディンの部下の老人の2人だったとされ、現在は地下闘技場を封鎖し、行方が知れぬアクナディンの――いや、遺体に残った千年眼の捜索がなされている。

 

 

 此度の恩師の裏切りと死に、最もショックを受けているであろうセトは仕事を逃げ場にするように籠城の準備にのめり込んでいるが、他の神官たちの交流もあって、直に立ち直ってくれる信頼があった。

 

 しかし一方で闇遊戯は自室にて眉間にしわを寄せ、何やら思い悩んでいた。

 

「またクル・エルナ村……バクラと同じ……俺の父は一体なにをしたんだ」

 

 それは自爆した兵が最後に遺した「クル・エルナ村の同胞の無念」との言葉。バクラからも闇遊戯の父、先代アクナムカノン王への恨みを匂わせる発言も数々出ていたことは闇遊戯の記憶にも新しい。

 

 双六似のシモンは「アクナムカノン王は素晴らしき王」と語っていたが、その言葉を信じ切ってよいのか闇遊戯には分からなくなっていた。

 

「ファラオ、お時間よろしいでしょうか」

 

 だが、そんな最中に闇遊戯の元にマハードが訪れる。追い返す理由もない為、快く迎える闇遊戯。

 

「ああ、構わない。自室に籠り切りで暇を持て余していたところだ」

 

「申し訳ありません。我ら神官団の不甲斐なさがファラオに不便を強いてしまい……」

 

「いや、いい――それで話とは?」

 

 そうして社交辞令染みたやり取りを得て先を促した闇遊戯にマハードが語るのは――

 

「過去のクル・エルナ村にて起こった事に関してです」

 

「なにか知っているのか、マハード!?」

 

 今の闇遊戯が何よりも知りたかった情報。

 

「はい、此度の一件となにやら密接な拘わりがあると判断し、お話ししておくべきだと」

 

 そして語られるのは罪の記憶。

 

 他国の侵略に対し、アクナムカノン王は武力に頼らずことを収めようとしたが、結果この国は窮地に陥る。

 

 そこでアクナディンの発案した「千年アイテムの製造」を許可。その際に、盗賊の巣窟だったクル・エルナ村の人間を材料に千年アイテムは生み出され、その力により、他国の侵略は退けた。

 

 だが、その凄惨な製造法はアクナムカノン王のあずかり知らぬ場所で行われたことであり、後にマハード経由で真実を知ったアクナムカノン王はその事実を悔い、心労から身体の不調が重なったが、最後の最後まで優しき王だったと語られる。

 

 

 それらの話に、闇遊戯の心は、少しばかり前を向くようになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 クル・エルナ村の冥界の石板が眠る地下神殿にて、柱に背を預けていたバクラはディアバウンドにナニカを喰わせながら、現在の状況を纏めるように一人ごちる。

 

「町民様は噂好きだねぇ……だが、まさか5つも集めるとはな。俺様の思惑通りに動いてくれて助かるぜ」

 

 それはバクラが起こした騒動で石像たちが、入手した千年アイテムの数。バクラにとって想像以上の成果だった。

 

 これならば態々アクナディンに仕掛けを施さず、千年眼を奪っていても良かった程に上々の結末。

 

「そして、これでハッキリした――あの石像共の目的は俺様と同じと考えて良い」

 

 バクラの腕のディアディアンクに浮かぶ文様が次々に入れ替わって行く様子を余所にバクラはほくそ笑む。

 

「ディアバウンドの力も、ククク……タップリ喰って、三幻神に対抗し得るには十分だ。もしもの時は最後の札を切りゃ良い」

 

 今、ディアバウンドと己の身に満ちていく莫大な魔力(ヘカ)による全能感。バクラの中には確かな手応えがあった――今ならば正面からでも三幻神にすら後れを取らない、と。

 

「フフフ、さぁて最後の二つ、千年パズルと千年眼を頂くとするか――それには、まず遊戯を俺様のホームに招待してやらねぇとなぁ」

 

 それゆえに最後の決戦の舞台にクル・エルナ村を選んだバクラが招待状代わりの手掛かりを闇遊戯に届けようとするが、そのタイミングで背後にて蠢いた気配に振り返る。そこには――

 

「KOTTIKOTTIー!」

 

「MATTEー!」

 

「SOTTOYO?」

 

「SIZUKANINE」

 

「SETTO KANRYO!」

 

 冥界の石板の当たりでウロチョロする何体かのオレイカルコスソルジャーの姿。

 

「あぁ? 石像共……ククク、なんの用かはしらねぇが、今のディアバウンドのウォーミングアップの相手になって貰おうじゃねぇか」

 

 相手の目的は不明だが、大きく力を増したディアバウンドの状態を確かめるには程よい相手。ゆえにバクラは最後のエサを喰い終えたディアバウンドに発破をかける。

 

「さぁ、ディアバウンド! パワーアップしたテメェの力を見せてやりな!!」

 

 そして地獄の底から響くような雄叫びが地下神殿内に響き、暴虐の化身の内から今、その力を解放される。

 

 

 

 

 

 その前に、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「……………………は?」

 

 暗い光を放つ冥界の石板に、その周囲で砂になって消えていくオレイカルコスソルジャーたち。

 

 石板には七つの千年アイテムが収められており、大邪神ゾークの意思が宿るバクラにも、冥界の扉が開いたことが本能的に理解できる。

 

 更に大邪神ゾークの力が開いた扉から漏れ出ており、ディアバウンドが更なる強化を果たしていることを鑑みれば、疑う余地はない。

 

 

 そう、バクラ的には、己が千年アイテムを一つも集めていないにも拘わらず、なんかよく分からない内に冥界の門が開いた。

 

 

 

 絶望が――なんかよく分からない内に――広がる。

 

 

 






やったね、バクラの逆転大勝利だ!!


~今作での闇落ちしたアクナディンの魔物(カー)について~

Q:闇落ちしたアクナディンの魔物(カー)って、《サウザンド・アイズ・サクリファイス》や《ミレニアム・アイズ・サクリファイス》なの?

A:原作でのアクナディンの闇落ち後の魔物(カー)は不明です。
闇落ち後の戦闘も、大邪神ゾークから力を得て闇の大神官となった後だった為、完全に独力で戦っていました。
(闇落ち後の戦闘は精々シャダを石で殴って気絶させた程度)

ですが全身に千年眼を埋め込んだ外見の《ミレニアム・アイズ・サクリファイス》を扱えそうなのが、今作ではアクナディンしかいなかった為、折角だから――と、登場しました。
(原作ならともかく、今作の漂白されたペガサスでは雰囲気に合わないですし)



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