マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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アテム VS 遊戯 前編です。

注:今回のデュエルは手札補充などの要所々々のシーンを大幅カットしてお送りさせて頂く、バージョンになっております。

色々考えたのですが、そうしないと原作の闘いの儀の輝きの影すら踏めなさそうという作者の未熟さゆえの代物です。

ちゃんと真っ当にデュエル描写出来なくて申し訳ありません<(_ _)>




前回のあらすじ
アテム「三幻神をリリースし、降臨せよ! 《光の創造神 ホルアクティ》!! 俺の勝ちだ、相棒――闇よ、消え去れ!!」

光の創造神 ホルアクティ「光創世(ジェセル)!!」

遊戯「やっぱりキミには叶わないな……」

杏子「アテム……! これからも貴方とずっと一緒にいられるのね……!」

海馬「フハハハハハ! 流石だ、遊戯(アテム)! さぁ、今こそ俺たちの宿命の戦いを始めるぞ!!」










彼らが夢から覚める一秒前(夢落ち感)





第198話 神を討て

 

 

 闘いの儀が開始早々全力全開のフルスロットルで始まる中、神崎は成仏したアヌビスに扮して古代エジプトの石板の片付けを含んだ事後処理を熟していた。

 

「――と、こんなものか」

 

 そんな最中、人目を排したのを良いことに冥界の王の力で影から手を伸ばして古代エジプトの石板の保全を完了した神崎は退屈そうにテレビを眺めるトラゴエディアに声をかける。

 

「トラゴエディア、私は精霊界に用事がありますから、武藤くんたちが闘いの儀から戻った際は手筈通り、アヌビスとして彼らへ別れの挨拶をお願いします」

 

「ああ、分かった」

 

 そうして成仏したアヌビスの話題ゆえか、覇気のない様子でテレビの歌舞伎役者のようなプロデュエリストの試合をボーっと眺めるトラゴエディアへ、神崎は精霊界へのゲートを開きながら問うた。

 

「それと、究極の闇のゲームで使う予定だったアクナディンのミイラですが、未練解消につながるかもしれませんし、手ずから破壊しておきますか?」

 

 それは、原作コミックではバクラが入手していた代物であり、アニメ版ではスルーされた代物でもある。

 

 それゆえか、回り回って神崎が確保できたのだが、仇のミイラを前に、トラゴエディアの表情は浮かない。

 

「…………いや、止めておく。どうせ魂の欠片も残っていない抜け殻だ」

 

「そうです――かッ!!」

 

 やがてチラとミイラを見た後、興味を失くしたように試合観戦に戻ったトラゴエディアの背後で、アクナディンのミイラが神崎の拳によって木端微塵に消し飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 此処で舞台は闘いの儀に戻り、1ターンで三体の神を呼び出したアテムの姿にモクバは小さく息を呑む。

 

「場に三体の神が……スゴいぜい、兄サマ……」

 

「ふぅん、流石はデュエルキングと言っておこう」

 

「なんということじゃ……まさかこんな光景を生きている内に拝めるとは」

 

「だが、双六。これじゃあもう勝負は決したようなものじゃないか……」

 

 しかし、さしたる動揺を見せない海馬と異なり双六とアーサーは三幻神の威容から目を逸らすようにアテムの方を見るが――

 

 

「俺は《エルフの聖剣士》と《エルフの剣士》の2体を贄に、『オベリスクの巨神兵』の効果発動! ソウルエナジーMAX!!」

 

 アテムは豊富な手札からいつの間にやら展開されていたエルフの剣士たちが『オベリスクの巨神兵』の両腕にそれぞれ収まり、贄としてエネルギーに還元され、破壊の神の両拳が光り輝いた。

 

「これにより、相棒! お前のフィールドのモンスターを全て破壊し、4000ポイントのダメージを与える!! ゴッド・ハンド・インパクト!!」

 

「今の遊戯くんのライフは2000しかない!」

 

 やがて御伽の絶叫するような声を余所に振るわれ、放たれた『オベリスクの巨神兵』の両拳からの衝撃が遊戯のフィールドを爆炎を上げながら奔り抜け、その一撃は遊戯自身をも呑み込んだ。

 

「こうも一瞬で……!」

 

「これが神の力……!」

 

 土煙が遊戯への視界を塞ぐ中、城之内と本田が力なく零す。まさに一瞬――1ターンでの決着。

 

 アテムの力がこれ程まで強大になっていた事実は、彼らにとっても想定外だった。

 

 

 

 

 

表の遊戯LP:2000 → 6000

 

 しかし煙が晴れた先に立つ遊戯の姿に、獏良が指を差す。

 

「遊戯君のライフが回復しているよ!?」

 

「モンスターも残ったままだぜい!?」

 

「ボクはオベリスクの効果の前に、この2枚のカードを発動させて貰ったよ――罠カード《マグネット・フォース》と罠カード《レインボー・ライフ》を!!」

 

 そしてモクバの驚きに遊戯のフィールドでは三体のガジェットたちの身体がメタリックにコーティングされており、遊戯の周囲には虹色の光が煌いていた。

 

「考えたな、相棒――罠カード《マグネット・フォース》は自身の機械族モンスターに破壊されない耐性を与えるカード。神の効果に干渉している訳じゃない」

 

「うむ、上手いぞ遊戯! 罠カード《レインボー・ライフ》は手札1枚をコストに1ターン限定で全てのダメージを回復に変換する! 神の耐性の隙を上手くつけておる!」

 

「よっしゃぁ! 遊戯のモンスターは無傷だ! 3体もいれば次のターンいくらでも手があるぜ!」

 

 間一髪で『オベリスクの巨神兵』の力を回避した遊戯に賞賛の声を送るアテムと双六、そして本田だが――

 

「『ラーの翼神竜』の効果発動! ライフを1000払い、相手フィールドのモンスターを全て破壊する!! ゴッド・フェニックス!!」

 

アテムLP:4000 → 3000

 

 アテムのフィールドで己が身体を炎で包み、不死鳥として飛び立った『ラーの翼神竜』が遊戯のフィールドに飛び込み、火の海と化した。

 

「で、でも遊戯くんのモンスターは罠カード《マグネット・フォース》の効果で――」

 

「無駄だ! ラーの炎にあらゆる耐性は無意味!」

 

 御伽の解説など断ち切るように燃え盛った不死鳥の炎は、遊戯のフィールドの3体のガジェットたちをドロドロと溶かし尽くし――

 

「あぁ!? 3体のガジェットたちが!? ヤバいぜい!?」

 

 モクバの声が示すように、遊戯の壁となるモンスターは完全に失われた。

 

「だが、このターンは罠カード《レインボーライフ》の効果で相棒にダメージは与えられない。俺はカードを2枚セットしてターンエンドだ。手札が減ったことで『オシリスの天空竜』の攻守も下がる」

 

『オシリスの天空竜』

攻6000 守6000

 

 しかし、1ターンの猶予をなんとか稼いでいた遊戯を余所に、三幻神に加え、正体不明な2枚のセットカードがその逃げ場を塞いでいく。

 

 

 そんな中、ギャラリーである本田は、その僅かな間に脱力するように大きく息を吐く。彼からすれば、見ているだけでいっぱいいっぱいな勝負であった。

 

「ふぃー、遊戯のヤツ、なんとかアテムの攻撃を凌いだぜ……心臓に悪ぃ」

 

「ばっかやろう、本田! こっからだ! ライフは遊戯の奴が圧倒的に有利なんだからよ!」

 

「ふぅん、だから貴様は凡骨なのだ」

 

 だとしても、応援する己たちが気持ちで負けてはならぬと発破をかける城之内を海馬は鼻で嗤う。

 

「なんだと!?」

 

「三体の神が場に揃ったことで、モンスターを呼ぶだけで『オシリスの天空竜』によりそのステータスは2000下げられ、

2体の贄が見える限り、『オベリスクの巨神兵』の4000バーンの脅威に晒され、

ライフが残る限り『ラーの翼神竜』の絶対的な破壊効果が立ち塞がる」

 

 噛みつく城之内に、三幻神が揃ったことによる絶望的状況を端的に告げる海馬が言う様に、たとえ自身のターンであっても、常に神の脅威は己の頭上に広がっているのだ。

 

「この布陣を前に高々6000のライフなど吹けば消える程度の代物でしかない」

 

 ゆえに僅かな楽観は即敗北に繋がる事実を、アテムを良く知る海馬は誰よりも理解していた。

 

 

「ボクはモンスターをセット! そして魔法カード《一時休戦》を発動して――」

 

 そんな中、手札と盤面を整えながら、遊戯は次のターンまで互いのダメージを無力化する魔法カード《一時休戦》で延命を図るが――

 

「待ちな、相棒! 速攻魔法《終焉の焔》でスタンバイフェイズに呼び出した2体の《黒焔トークン》をリリースして、オベリスクの効果を発動!! ソウルエナジーMAX!!」

 

 その僅かな隙をアテムは見逃さない。『オベリスクの巨神兵』の両拳に二頭身の黒い炎の悪魔が呑み込まれて行き、神の拳に再び輝きがもたらされる。

 

「拙い! 魔法カード《一時休戦》のダメージを0にする効果の前に、発動されたオベリスクの効果ダメージは防げない!!」

 

「ゴッド・ハンド・インパクト!!」

 

 やがて遊戯のセットしたモンスターを消し飛ばしながら、遊戯を呑み込まんと迫る神の一撃による奔流。

 

「――ボクは手札から《ハネワタ》を捨て、効果発動! このターン、ボクが受ける効果ダメージを0にする!!」

 

 だが、その衝撃は綿毛のような身体に羽の生えた天使《ハネワタ》が僅かに逸らし、遊戯の直ぐ隣を通り過ぎた。届かない。

 

「上手くオベリスクの効果を誘ったな、相棒」

 

「くっ……ボクはカードを1枚セットしてターンエンドだ」

 

 先に『オベリスクの巨神兵』の破壊効果に必要な的を用意した遊戯の考えを見透かしたアテムの言葉に、背後に響く爆発音を余所に、遊戯はなんとか神の猛攻に備えていく。

 

 

 

「あ、危ねぇ……」

 

「遊戯くんは防戦一方だ……」

 

 そうして本田と御伽が心配気な視線を向ける最中、遊戯はターンを跨ぎつつ繰り出される三幻神の猛攻をなんとか耐えていくが、その表情には――

 

「遊戯、笑ってる」

 

 杏子が言う様に楽し気な笑みが浮かべられていた。

 

「遊戯のヤツ、この状況でまだ余裕があるなんて驚きだぜい」

 

「いや、遊戯は後がない程に追い詰められている筈じゃ」

 

 拳を握りながらのモクバの声を、双六は静かに否定する。祖父として、遊戯のことを誰よりも見てきた双六は、あの笑みの正体がよく分かった。

 

 

「もしかして遊戯くんもアテム君と離れたくないんじゃ……」

 

「バカ言ってんじゃねぇ! アイツは負けを覚悟してへらへら笑うようなデュエリストじゃねぇよ!」

 

 それは御伽の言うような、諦めの表情ではない。

 

「アイツは楽しいんだ……今、この瞬間のデュエルが」

 

 御伽の主張を否定した城之内の言う様に、1人のデュエリストとしての本能が、デュエルキングとの――いや、親友(とも)とのデュエルに言葉では語れぬ程の想いが交錯し続けているのだ。

 

 その心の全ては、相対する2人にしか分からない。

 

「で、でも三幻神が相手じゃ、流石の遊戯君も――」

 

「遊戯はまだ諦めてねぇ」

 

「ふぅん、虚勢でないことを願いたいものだ」

 

――神の弱点。如何に突けるか見物だな。

 

 獏良の心配を余所に、城之内と海馬は、静かにこのデュエルの行く末を見定めていた。

 

 

 

 そしてターンが経過し、魔法カード《光の護封剣》の効果が終了して光の剣が消えていく中、アテムは発破をかけるように声を上げる。

 

「どうした、相棒! 守ってばかりじゃ俺には勝てないぜ!!」

 

 防戦一方に見える遊戯のデュエルだが、アテムは遊戯の動きを見通していた。

 

 遊戯は虎視眈々と、逆転の布石を組み上げていることに。

 

――三体の神が出てくることなんて最初から分かっていた。

 

 だが、三幻神を見据え、内心を吐露する遊戯の今の手札には、鍵となるカードが1枚不足していた。

 

――けど怖い。逃げ出したいくらいに。でも……

 

 これ以上、三幻神の猛攻を耐えきるのは厳しい今の状態で、次のドローで引き切れるのか――そんな不安から、怖れが胸中で鎌首をもたげる中、遊戯の心にデュエリストの声が響く。

 

 

 

『強い相手のデュエルはワクワクする! それじゃ駄目なのか?』

 

――そうだよね、十代くん

 

 それは、純粋にデュエルを楽しむことを忘れない、HERO(ヒーロー)の姿。

 

 

『見せてやりましょう、遊戯さん! 俺たちの可能性を!!』

 

――遊星くん

 

 それは、仲間との絆を胸に秘めた、赤き龍に選ばれた者(シグナー)の姿。

 

 

『だがまあ――それだけこのデュエルが最高だったってことさ』

 

――キースさん

 

 それは、デュエルモンスターズと共に駆け抜けた、異国の王者(全米チャンプ)の姿。

 

『ハハハハハッ! ハーハッハッハッハ! 昂る、昂るぞ、遊戯!! このギリギリの戦い! これこそが俺の全身からアドレナリンを掻き出させ、血液を沸騰させる!!』

 

――海馬くん

 

 それは、遊戯(アテム)というデュエリストを誰よりも認めた、好敵手(ライバル)の姿。

 

 

『其方のターンだ』

 

――アクターさん

 

 それは、デュエルに光あれと願った、処刑人(王の盾)の姿。

 

 

 

 彼らの想いが、遊戯の胸に確かに息づいている。ゆえに迷いは断ち切れた。

 

――ボクは今、凄くデュエルが楽しいんだ!

 

「ボクのターン、ドロー!!」

 

――来た。

 

「相棒、仲間として俺と一緒にいても、無意識に考えていた筈だ。この俺というデュエリストを倒す方法を!」

 

 そして引いたカードを視線に入れた遊戯の僅かな表情の変化にアテムは挑発的に語る。

 

「見せてみな!!」

 

「うん! ボクは攻略して見せるよ! 三幻神を!!」

 

 その声に遊戯はらしからぬ強気な言葉で返した――今こそ、アテムの全力に応えるのだと。

 

「手札の《磁石の戦士(マグネット・ウォリアー・)α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)》を墓地に送り、手札からこのカードを呼び出すよ! 来て、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》!!」

 

 その遊戯の闘志に応えるように3体の磁石の戦士たちが、各々の身体のパーツを分離させ、一つに集まれば、巨大な翼を広げる磁石の戦神となって、神に向けて剣を向けた。

 

《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》 攻撃表示

星8 地属性 岩石族

攻3500 守3850

 

「攻撃表示!?」

 

「忘れたのか、相棒! 『オシリスの天空竜』の力を! オシリス!! 召 雷 弾!!」

 

 だが、驚くモクバの声が示すように、神へと剣を向けた愚行を断ずるように『オシリスの天空竜』の第二の口が開き、イカヅチの砲弾が裁きとして落ちた。

 

 剣を盾のように構え、イカヅチの砲弾に耐える《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》。

 

 その裁きを受けたものは、表示形式に対応したステータスを2000削られ、無力な身となって膝をつくしかない。

 

――『オシリスの天空竜』の攻略法は、他ならぬキミが教えてくれたんだ!!

 

「勿論だよ、もう一人のボク!! 罠カード《あまのじゃくの呪い》!!」

 

 しかし、此処でフィールドに広がった呪いが、全ての因果を狂わせ反転したことで――

 

「これにより、このターン、オシリスによって下げられるステータスは、逆に上昇する!!」

 

 それにより、神のイカヅチがその身を駆け巡った《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》の身体は紫色のスパークを放ちながら、より力強さを増していった。

 

《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》

攻3500 → 攻5500

 

「攻撃力5000超え!!」

 

「いいぞ、遊戯! これでオベリスクは倒せる!!」

 

 本田と城之内が顎を尖らせながら、《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》の雄姿にエールを送る。

 

 そんな中、勝機を一気に手繰り寄せるべく遊戯は最後のリバースカードへ手をかざす。

 

「此処でボクは罠カード《戦線復帰》を発動! 墓地のモンスターを守備表示で復活させる! ボクが復活させるのはこのカード!!」

 

「そのモンスターにも召雷弾が向かうぜ!!」

 

「だけど、罠カード《あまのじゃくの呪い》の効果で、パワーアップに利用させて貰うよ!!」

 

 そうして『オシリスの天空竜』のイカヅチに晒されながら現れたのは、緑の身体でホバリングして浮かぶ、カタパルトを背負った亀型――《カタパルト・タートル》。

 

《カタパルト・タートル》 守備表示

星5 水属性 水族

攻1000 守2000 → 守4000

 

「《カタパルト・タートル》!? もっと攻撃力の高い――」

 

「いや、これで良いんじゃ!」

 

 たった攻撃力1000のモンスターを呼び出した事実に獏良が声を漏らす前に、双六が腕で制した。そう、これは――

 

 

――そしてこれはアクターさんが教えてくれた!

 

「《カタパルト・タートル》の効果はキミも知っての通りだ! ボクのモンスター1体をリリースし、その攻撃力の半分のダメージを与える!」

 

 効果ダメージによるプレイヤーキル。《カタパルト・タートル》の背中のカタパルトがアテムを狙う。

 

「イイぞ、遊戯! 幾ら神が強くたって、アテムのライフを0にしちまえば関係ねぇ!」

 

「今のアテムくんのライフは2000! イケる! イケるよ!」

 

 本田の声に、御伽が遊戯の勝利を確信するが――

 

「甘いぜ、相棒! 《カタパルト・タートル》の特殊召喚成功時に《岩石の巨兵》と《岩石の番兵》の2体をリリースし、オベリスクの効果発動! ソウルエナジーMAX!!」

 

 2体の岩石の戦士をその両拳へエネルギー変換した『オベリスクの巨神兵』の拳が輝き――

 

「これでお前のコンボも振り出しだ!! ゴッド・ハンド・インパクト!!」

 

「うぁぁあああぁぁあぁっ!!」

 

 突きだれた神の拳と共に、遊戯のフィールドを薙ぎ払った破壊の奔流がライフ共々全てを消し飛ばし、爆炎を立ち昇らせた。

 

遊戯LP:6000 → 2000

 

 

「うーむ、遊戯くんは躱しきれなかったようだね」

 

「ふぅん、これでヤツのフィールドはがら空き」

 

「そんなの見りゃ分かるだろ!!」

 

 ホプキンス教授が悔し気に拳を握る中、零した海馬の煽るような言に城之内は噛みつくが――

 

 

「所詮は、凡骨デュエリスト……気付く筈もないか」

 

 

「召雷弾が遊戯君のフィールドに!?」

 

 指さし叫んだ獏良の声が、一同の注目を、神のイカヅチが落ちた遊戯のフィールドへと向けられる。

 

 

 やがて『オベリスクの巨神兵』の一撃で生じた爆炎が晴れていけば、そこにいたのは黒いバイザーで赤毛を逆上げた黒き戦士。

 

 左右に持つ『オシリスの天空竜』のイカヅチが宿った剣と盾を構え、アテムを冥府に送るべく遊戯のフィールドにたった1人立つ。

 

《冥府の使者ゴーズ》 攻撃表示

星7 闇属性 悪魔族

攻2700 守2500

攻4700

 

「《冥府の使者ゴーズ》? あんなの、いつの間に……」

 

「ボクのフィールドにカードが存在しない場合にボクがダメージを受けた時、このカードは手札から特殊召喚できる……!」

 

 モクバの戸惑う声を余所に、遊戯は先程の衝撃でついた膝を奮い立たせながら、アテムを指さし――

 

「そして受けたダメージが戦闘ダメージなら『冥府の使者カイエントークン』を呼び出し、効果ダメージなら――」

 

 それに伴い、《冥府の使者ゴーズ》が剣を上段に構え――

 

「――ボクが受けた数値分、キミにダメージを与える!!」

 

 《冥府の使者ゴーズ》の剣の先に、巨大な黒いイカズチが迸る。

 

「4000の効果ダメージだって!!」

 

「遊戯君はこれを狙って……!」

 

 御伽の驚きの最中、獏良が静かに息を呑むが、アテムは驚いた様子もなく強気な笑みを浮かべてみせる。

 

「やるな、相棒」

 

「行けっ! 《冥府の使者ゴーズ》!! 冥絶斬!!」

 

 そして遊戯の宣言の元、《冥府の使者ゴーズ》の剣から放たれた黒きイカズチがアテムを切り裂かんと迫った。

 

「だが、まだまだ! 『ラーの翼神竜』の効果発動!! 手札を1枚捨てることで、ラーの攻守を0にし、攻守どちらかの数値だけ俺のライフを回復する!!」

 

 しかし『ラーの翼神竜』の身体から噴出した炎が黒きイカズチの斬撃を阻み、その一撃を減衰させていく。

 

アテムLP:2000 → 8000 → 4000

 

 やがて己が力をアテムに託した『ラーの翼神竜』から、プレッシャーが薄れていった。

 

『ラーの翼神竜』

攻6000 守3600

攻 0 守 0

 

 そして手札が減ったことで、『オシリスの天空竜』の攻守も減衰。

 

『オシリスの天空竜』

攻6000 守6000

攻5000 守5000

 

 

 遊戯の放った捨て身の一撃は、『ラーの翼神竜』の力の前に脆くも崩れ去った。

 

「くっそー、仕留めきれなかったぜい!!」

 

「いや、モクバ、これでいい。このターン、オベリスクの効果は打ち止めだ。そしてラーも案山子同然。手札が減ったことでオシリスのステータスも下がった」

 

――だが、それは遊戯(アテム)とて承知……此処から最後の一押しがなければ、ヤツに次のターンはない。

 

 その事実に悔し気な声を漏らすモクバだが、海馬は先の一連のコンボが与えた影響は十二分に大きいと語る。

 

 しかし、それで気を緩めれば、返す刀で遊戯の敗北は濃厚――そして、それは遊戯自身も理解していた。

 

「ボクは魔法カード《ブーギートラップ》を発動! 手札を2枚捨てて、墓地の罠カード1枚をセット!」

 

 ゆえに、果敢に攻めの姿勢を見せるべく、1枚の罠を強引に仕掛けた。

 

「これで墓地に揃った《(エレクトロ)磁石の戦士(マグネット・ウォリアー・)α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)》を除外して、来い!」

 

 そして手札コストで墓地に送った3体の電気の力を得た磁石の戦士たちが、いつぞやのように各々身体のパーツをバラバラに解き放ち――

 

「《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》!! オシリスの効果を利用しパワーアップ!!」

 

 組み上がるのは巨大な電磁石の体躯を持つ磁石の狂戦士。

 

 天より降り注いだ『オシリスの天空竜』のイカヅチを受け、放電する身体で、巨大な槍を肩に乗せた。

 

《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》 攻撃表示

星8 地属性 岩石族

攻3000 守2800

攻5000

 

「そして墓地の『マグネット・ウォリアー』を除外して、ベルセリオンの効果発動! 相手フィールドのカード1枚を破壊する! ボクはキミのセットカードを――」

 

「そいつは通さないぜ! 速攻魔法《禁じられた聖杯》を発動! モンスター1体の攻撃力を400アップさせ、その効果を無効化させる!!」

 

 やがて肩に担いだ槍を振り上げたが、空から飛来した聖杯から零れた赤い雫が、槍にかかると共に――

 

「これでベルセリオンの効果は無効! さらに相棒が発動した罠カード《あまのじゃくの呪い》の効果で攻撃力は逆にダウン!!」

 

「ベルセリオン!?」

 

 槍の穂先が石化され、《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》の身体から電磁力が放てなくなった。

 

《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》

攻5000 → 攻 4600

 

「くっ……でも攻撃力は十分だ! 《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》で『オベリスクの巨神兵』を! 《冥府の使者ゴーズ》で『ラーの翼神竜』を攻撃!!」

 

 だとしても、鈍器としては十分だと《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》の槍が青き巨神に振りかぶられ、黒き剣が太陽神に夜を与えるべく振り切られるが――

 

「無駄だぜ、相棒! 『ラーの翼神竜』の効果!! ライフを1000払い! 相棒のフィールドのモンスターを全て破壊する! ゴッド・フェニックス!!」

 

アテムLP:4000 → 3000

 

 己が炎にその身に包み、天を舞う『ラーの翼神竜』の不死鳥の舞が、2体の神敵を焼き尽くしていった。

 

「ぐうぅっ! ――だけど! 《電磁石の戦士マグネット・ベルセリオン》が破壊された瞬間、除外されている《(エレクトロ)磁石の戦士(マグネット・ウォリアー・)α(アルファ)β(ベータ)γ(ガンマ)》を特殊召喚!!」

 

 だが、その炎が過ぎ去った後から、3つの影が飛び出していく。

 

 1つは、飛び出した小さな磁石の剣士が、『オシリスの天空竜』のイカヅチによって高まる気力のままに剣と盾を天に掲げ、

 

電磁石の戦士(エレクトロマグネット・ウォリアー・)α(アルファ)》 攻撃表示

星3 地属性 岩石族

攻1700 守1100

攻3700

 

 もう1つは、小さな磁石の猛獣が、神のイカヅチによって紫電が迸る鍵爪のような磁石の爪を神に向け、

 

電磁石の戦士β(エレクトロマグネット・ウォリアー・ベータ)》 攻撃表示

星3 地属性 岩石族

攻1500 守1500

攻3500

 

 最後の1つは、真ん丸な小さな磁石の身体で天より落ちたイカヅチを受け、四股を踏むように中腰で構えた。

 

電磁石の戦士γ(エレクトロマグネット・ウォリアー・ガンマ)》 攻撃表示

星3 地属性 岩石族

攻 800 守2000

攻2800

 

 新たに3体のモンスターを展開した遊戯だが、その最高攻撃力は3700――全ての三幻神を打ち払うには足りない。

 

「だが、オシリスの効果を逆手にパワーアップしても、ラー以外を仕留めることは叶わないぜ」

 

「でも『ラーの翼神竜』は倒させて貰うよ! 《電磁石の戦士β(エレクトロマグネット・ウォリアー・ベータ)》で攻撃!!」

 

 そんなアテムの声を振り切った遊戯の宣言に背を押され、《電磁石の戦士β(エレクトロマグネット・ウォリアー・ベータ)》の磁石の鍵爪が、不死鳥の炎を失った『ラーの翼神竜』を砕き、神の一柱が倒れた余波がアテムを襲う。

 

「罠カード《ガード・ブロック》を発動! この戦闘での俺へのバトルダメージを0に!! そして1枚ドロー! 手札が増えたことでオシリスの攻守が6000にパワーアップ!!」

 

 しかし、アテムは神が倒れた事実すら活用してみせ、生じた余波をドローに変換して、『オシリスの天空竜』は同胞の死に報いるように気炎を滾らせた。

 

『オシリスの天空竜』

攻5000 守5000

攻6000 守6000

 

 

「どうした! それで終わりか、相棒!!」

 

「まだボクのバトルフェイズは終わりじゃないよ! 速攻魔法《マグネット・リバース》を発動!! ボクの墓地から通常召喚できないモンスター1体を復活させる! もう1度お願い! 《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》!!」

 

 そうした神々に再度挑むのは、このターン蒼き巨神に後れを取った磁石の戦神がリベンジに燃えるように大翼を広げ、天空の神の召雷弾の力を乗せた剣を残り二柱の神へと向けた。

 

《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》 攻撃表示

星8 地属性 岩石族

攻3500 守3850

攻5500

 

「そして、このカードもだ! 罠カード《緊急儀式術》発動! 墓地の儀式魔法《カオスの儀式》を除外し、除外した儀式魔法を発動する!!」

 

 そんな磁石の戦士の軍勢の只中に、空から飛来した一振りの剣が地面に突き刺さり、炎の陣を描く。

 

「ボクはフィールドの《(エレクトロ)磁石の戦士(マグネット・ウォリアー・)β(ベータ)γ(ガンマ)》と墓地の自身を除外して儀式素材となる墓地の《クリボール》・《儀式魔人ディザーズ》をリリースし、儀式召喚!!」

 

 その炎の陣の中に捧げられた2体の磁石の戦士と、墓地に眠る者たちの魂が、一筋の光の道を天へと伸ばし――

 

「天を差す混沌(カオス)フィールドより、降臨せよ! 超戦士! 《カオス・ソルジャー》!!」

 

 光る天から、金縁の藍色の鎧に身を包んだ最強の剣士が、神を討つべくフィールドに降り立った。

 

《カオス・ソルジャー》 攻撃表示

星8 地属性 戦士族

攻3000 守2500

 

「そしてオシリスの効果にチェーンして速攻魔法《旗鼓堂々》発動!! ボクの墓地の装備魔法――《巨大化》を《カオス・ソルジャー》に装備!! そしてボクのライフがキミより少ない時、《巨大化》を装備した《カオス・ソルジャー》の攻撃力は倍になる!!」

 

 さらに遊戯の援護を得て、赤き輝きを放つ《カオス・ソルジャー》の剣は大剣と見まがう程に巨大化し、さらに敵陣から放たれた『オシリスの天空竜』が宿ったゆえか、赤き輝きを放つ。

 

《カオス・ソルジャー》

攻3000 → 攻6000 → 攻8000

 

「攻撃力8000P(ポイント)!?」

 

「オベリスクを切り裂け!!  《カオス・ソルジャー》!! カオス・ブレェードッ!!!!

 

 そして超戦士の一刀は驚く獏良の声を余所に、迎撃に拳を放った『オベリスクの巨神兵』へと振り下ろされた。

 

 せめぎ合う蒼き巨神の拳と、超戦士の斬撃。

 

 

 だが、拮抗が崩れるように『オベリスクの巨神兵』の拳から全身へと広がるように亀裂が走って行き――

 

「これが通ればアテムくんのライフは!!」

 

 御伽の声が示すように超戦士の一撃により『オベリスクの巨神兵』が砕け散ったことで、その衝撃はそのままアテムへと迫る。

 

「俺は手札の《クリボー》を墓地に送り、効果発動! この戦闘によるダメージを0にする!!」

 

 しかし、その衝撃はアテムの前で小さな手を広げる小柄な黒い毛玉《クリボー》によって阻まれた。

 

『オシリスの天空竜』

攻6000 守6000

攻5000 守5000

 

 そうして遊戯の渾身の一撃をいなしたアテムだが、払った犠牲は1枚の手札――だが、その1枚こそが明暗を分ける。

 

「でもオシリスの攻撃力は下がった!! 今だ! バルキリオン! マグネット・セイバ(電磁剣)ァァアアッ!!」

 

 手札が減ったことで、その力を僅かに減衰させた『オシリスの天空竜』に迫るのは、今の今まで散々放ってきた己が力の宿った磁石剣。

 

 大翼を広げ、天空の神のお株を奪う様に天から《磁石の戦士マグネット・バルキリオン》の剣が迫り、両断された『オシリスの天空竜』の身体は地に倒れ伏した。

 

アテムLP:3000 → 2500

 

「ハァ……ハァ……」

 

――海馬くんのデュエルが教えてくれたんだ……神が相手だって、攻撃力で、力で、上回れるんだって……!

 

 ギリギリの読み合いを制し、三幻神のいなくなったフィールドの先に立つアテムを肩で息をしながら見やる遊戯。

 

 ギャラリーも信じられないと声を漏らす。

 

「倒した………」

 

「マジかよ……!」

 

「ホントに、三体の神を……倒しちまった……!」

 

「やりおったぞ、遊戯! 流石は儂の孫じゃわい!」

 

「やったな、双六!」

 

 獏良、本田と続き城之内が拳を握る中、双六とホプキンス教授が手を取り合い、浮足立ったように喜びを見せる。

 

 

 そう、ようやく此処まで来たのだ。

 

――みんなが……みんなが教えてくれたんだ。

 

「キミと共にいた時が! みんなとの想いが! ボクを強くしてくれたんだ!!」

 

 遊戯の力が、アテムの背に手が届いた瞬間だった。

 

 そんな仲間と共に強くなった遊戯にアテムは優し気な笑みを零す。

 

「見事だぜ、相棒」

 

「まだだよ、もう一人のボク! 《電磁石の戦士(エレクトロマグネット・ウォリアー・)α(アルファ)》の攻撃が残ってる!! ダイレクトアタックだ!!」

 

「アテムくんのライフは2500! これが通れば――」

 

 御伽のフラグ発言を余所に、なんだかんだでフィールドに残っていた《電磁石の戦士(エレクトロマグネット・ウォリアー・)α(アルファ)》が己の剣をアテムへと向けて突き進む。

 

 その攻撃力は『オシリスの天空竜』の置き土産の召雷弾を罠カード《あまのじゃくの呪い》で反転したお陰で3700――アテムの残りライフを削り切るには十分だ。

 

「そいつは通さないぜ、相棒! 罠カード《死魂融合(ネクロ・フュージョン)》!! 墓地のモンスターを裏側表示で除外し、融合召喚する!!」

 

 しかしアテムの前の地面から、二つの影が噴出。

 

「俺は墓地の《幻獣王ガゼル》と《バフォメット》をネクロ・フュージョン(融合)!!」

 

 その影の正体である一本角の獣とヤギの角を持つ赤い肌の悪魔が白い翼を広げながら一体となり――

 

「融合召喚! 来たれ! 《有翼幻獣(ゆうよくげんじゅう)キマイラ》!!」

 

 二つの魔獣の頭部から威嚇するように咆えながらアテムを守るように四足の幻獣が白い翼を広げて立ち塞がる。

 

有翼幻獣(ゆうよくげんじゅう)キマイラ》 守備表示

星6 風属性 獣族

攻2100 守1800

 

「でも攻撃力はこっちが上だ! 攻撃続行!! キマイラ撃破!!」

 

「だとしても破壊された《有翼幻獣キマイラ》の効果を発動! 墓地の2体目の《幻獣王ガゼル》を守備表示で特殊召喚!!」

 

 しかし磁石の剣で一刀のもとに切り伏せられ、倒れる《有翼幻獣(ゆうよくげんじゅう)キマイラ》だが、崩壊するように消えていく身体から、狼のような一本角の獣がアテムの守護者として立ちはだかった。

 

《幻獣王ガゼル》 守備表示

星4 地属性 獣族

攻1500 守1200

 

 三幻神を倒した勢いのままに攻め込んだ遊戯だが、神を失った動揺も見せないアテムはこともなげに躱して見せる。

 

「くっ、攻めきれなかった……ボクはカードを2枚伏せてターンエンド! ターンの終わりに速攻魔法《旗鼓堂々》で装備されていた装備魔法《巨大化》は破壊される」

 

 ゆえに悔し気にターンを終えた遊戯。その瞬間、《カオス・ソルジャー》の巨大化していた大剣も、もとのサイズの剣へと戻って行った。

 

《カオス・ソルジャー》

攻8000 → 攻5000

 

 

 そうしてアテムのフィールドから三幻神が消えた事実に、城之内は友の有利を確信し拳を握った。

 

「よし! これで一気に逆転だ!」

 

 あの絶対的ともいえる三幻神を降したのだ。そう思っても無理はないだろう。

 

 だが、そんな城之内を海馬は鼻で嗤う。

 

「ふぅん、なにをぬか喜びしている。本当の戦いは此処からだ――互いのアドバンテージの差は明白」

 

「そうか! 神攻略の為に手札の殆どを使いきった遊戯くんと違って、アテムくんの手札は5枚もある! ライフも遊戯くんは半分を切った……」

 

「だけど遊戯の場にだって、攻撃力の高ぇモンスターが並んでるぜ!」

 

 海馬の発言の趣旨を理解した御伽を余所に、城之内が「それでも」と零すが――

 

「ヤツにとってその程度が障害になると思っているとは、凡骨らしいおめでたい頭だ」

 

 相も変わらず馬鹿にしたような海馬に、城之内の怒りのボルテージは高まって行くが、そんな最中、デュエル中のアテムが動いた事実に一同の視線が集まった。

 

「俺のターン、ドロー!! 《幻獣王ガゼル》をリリースし、アドバンス召喚!!」

 

『遂にこの時が来たんですね、王子!』

 

 そしてアテムのフィールドで最後に残ったモンスターが消え、現れるのは水色とピンクを基調にした魔法少女風の法衣を纏う魔術師の少女。

 

 記憶編で失った出番を取り戻すように、精霊としてアテムへと語り掛ける。

 

《ブラック・マジシャン・ガール》 攻撃表示

星6 闇属性 魔法使い族

攻2000 守1700

 

「そして――待たせたな、マハード!! 魔法カード《賢者の宝石》を発動!」

 

 そんな《ブラック・マジシャン・ガール》に小さく頷きで返したアテムが発動したカードにより、《ブラック・マジシャン・ガール》の杖の先が光を放ち、フィールドに影を落とす。

 

「俺のフィールドに《ブラック・マジシャン・ガール》が存在するとき、手札・デッキから師たる《ブラック・マジシャン》を呼び出すぜ!」

 

 その影に語り掛けるようにアテムが手をかざした先から――

 

「頼むぜ、マハード!!  来たれ、《ブラック・マジシャン》!!」

 

『ファラオよ……三千年の時を越え、再び我が魂を貴方に捧げる!!』

 

 黒き法衣を纏った最上級魔術師が、三千年の時を越え、記憶編では果たせなかった会合を果たした。

 

《ブラック・マジシャン》 攻撃表示

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

 そうして魔術師の師弟が並び立つ姿に杏子が憂う様に小さく言葉を零す。

 

「《ブラック・マジシャン》……2人の遊戯が最も信頼する切り札……」

 

「そのカードは最初のターンにサーチしていたカード……!」

 

 だが、遊戯はそれどころではなかった。魔法カード《賢者の宝石》――それはアテムが神を呼んだ際にサーチされたもの。それが意味するところは一つ。

 

「その通りだぜ、相棒。俺はこの状況を最初から予測していた」

 

「ッ!? ……最初から、この状況を!?」

 

 読み合いを制し、神を倒したと思っていた遊戯に突きつけられたのは、今の状況すらアテムの手の只中だという事実だった。

 

「確かに三幻神は強力なカードだ。だが、相棒――俺は確信していた。お前は神を倒す程のデュエリストだと!!」

 

 それはある種の信頼。アテムが最も信じる遊戯だからこそ――そんな絶対的な信頼感が成した読み。

 

遊戯(アテム)ヤツ(表の遊戯)のことをそこまで……!!」

 

「本当の戦いは神が消えた時から始まる!! カードを信じる勇気に支えられた真のデュエリスト同士の魂のぶつかり合いが!!」

 

 そんな認め合う2人に嫉妬交じりの言葉を漏らす海馬を余所に、このデュエルは更なる次元へと突入していく。

 

 

 全てのデュエリストの頂点たる決闘王(デュエルキング)

 

 

 彼は確かに三体の神に認められし王だ。

 

 

 だが、彼を王たらしめたのは神の力ではないことを、これより遊戯は身をもって知ることになる。

 

 

 






念の為、Q & A――
Q:あれ? 今作の記憶編ではマハードが《ブラック・マジシャン》化しなかった以上、
マハード=手持ちの《ブラック・マジシャン》だとアテムは分からないのでは?

A:アテムの失われた記憶が戻っている為、本来の三千年前の歴史でマハードがバクラへ無駄死にムーヴをかましたことも思い出しており、それらの情報もアテムは周知しております。

手持ちの《ブラック・マジシャン・ガール》=マナについても同上です。



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