マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
神崎「千年アイテムぶっ壊すわ」

千年アイテム’s「させるかぁぁあぁあぁああぁああぁあぁああぁあああっぁあ!!」

冥界の王「共に神崎を倒そう!!」

光のピラミッド「今こそ我らの力を結束させるとき!!」




第201話 邪なる神

 

 

 黒いデュエルディスクのようなものを腕から生やす冥界の王に対し、ひとりでに神崎のデュエルディスクも展開された。

 

「長かった。屈辱に塗れながら、貴様が僅かな隙を見せる時を待った」

 

――ッ!?

 

 その事実に内心で驚く神崎を余所に、身体を得た冥界の王の独白は続く。

 

「そしてようやく時がきた――闇のゲームにサレンダーはない。開始の合図も不要だろう」

 

 そう、既に闇のゲームは「始まっている」――神崎が小細工を弄する暇すら許さぬように、冥界の王は神崎の展開されたデュエルディスクを指さした。

 

「そして闇のデュエルが既に始まった以上、デッキの交換は許可されない」

 

 その指の先が差すのは、神崎のデッキ。そう「神崎」のデッキ。

 

「貴様が普段セットしているデッキは常に同じ――未練がましいなァ」

 

 

 神崎の前世の想いが大いに籠った過去の追憶の結晶。

 

「デュエル!!」

 

「……デュエル」

 

 そうして有無を言わせぬままに始まった闇のデュエルの先攻は冥界の王。その腕から生えたデュエルディスクにセットされた黒いモヤがかかるカードを引き抜いた。

 

「我の先攻、ドロー!! 我はモンスターをセット、そしてカードを2枚伏せてターンエンドだ」

 

 だが、極々最低限の動きでターンを終える。

 

 あれだけ大見得を切ったにしては、些か以上に不気味な程だ。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1へ」

 

――相手のデッキが見えない。原作でデュエルを一切行わなかった相手……事前情報が少なすぎる。そして……

 

 そんな不気味さに警戒するようにカードを引く神崎だが、問題はそれだけではなかった。

 

――このデッキ……いや、デッキは関係ない。問題にすべきは己だ。

 

 神崎は基本、「強いデュエリスト」には、相手の弱点を突くような「相手に対応したデッキ」でしか挑んだことがない。

 

 唯一の例外がトラゴエディアの一戦くらいだが、あのデュエルも「《ハネクリボー》の力」がトラゴエディアにとって天敵であったことは決して無視できない。

 

 

 今、神崎の本当の実力が試される。

 

「《ミスティック・パイパー》を召喚」

 

 そして一番槍に呼び出された笛の音を鳴らす道化師が軽快な動きでクルリと回る。

 

《ミスティック・パイパー》 攻撃表示

星1 光属性 魔法使い族

攻 0 守 0

 

「《ミスティック・パイパー》の効果を発動。自身をリリースし、1枚ドロー――したのはレベル1《クリボーン》よって、追加でもう1枚ドローします」

 

 やがて回った先で光と消えた《ミスティック・パイパー》の笛の音が導いたカードが神崎の手元に加えられる中――

 

「魔法カード《ワン・フォーワン》を発動。手札のモンスター1体を墓地に送り、デッキからレベル1――《クリボン》を特殊召喚」

 

 神崎の手札からちょこんと降り立つのは長いまつげがチャーミングな毛玉こと《クリボン》が尻尾のリボンを自慢げに掲げる。

 

《クリボン》 攻撃表示

星1 光属性 天使族

攻 300 守 200

 

 

 これでもうお分かりであろうが、今の神崎のデッキは彼の前世の思い出が詰まった「クリボーデッキ」――ハッキリ言ってピーキーな構築の為、酷く偏った戦略しか取れない。

 

 

 冥界の王のデュエルの実力は原作でも不明ではあるが、あれだけの自信をもって動いた相手に挑むには、些か難のあるデッキだろう。本人はそれを言い訳にすることはないだろうが。

 

「此処で魔法カード《予見通帳》を発動。デッキの上から3枚除外し、3回目の自分のスタンバイフェイズに除外した3枚を手札に加えます」

 

 そうして神崎のデッキの上から3枚のカードが宙に浮かぶ通帳に吸い込まれて行く中――

 

「カードを1枚セットしてメインフェイズ1を終え、そのままターンエンドです」

 

 神崎はバトルすることなくターンを終えた。

 

 速攻するデッキではないとはいえ、此方も些か消極的な立ち上がりであろう。

 

 

 だが、そんな悠長な神崎に冥界の王は合わせる気など毛頭ない。

 

「ならば我のターン、ドロー! 来たか――貴様の最後の舞台に、せめて弔いの花を添えてやろう。フィールド魔法《ブラック・ガーデン》を発動!」

 

 引いたカードをそのまま発動させた冥界の王の背後から、薔薇が己が棘で周囲を削りながらドーム状に広がっていく。

 

 

 やがて冥界の王と神崎を覆う様に薔薇園のコロシアムが形成された。

 

「そして永続魔法《冥界の宝札》を発動し、セットモンスターをリバース! 《スケープ・ゴースト》! そのリバース効果により、我のフィールドに任意の数だけ『黒羊トークン』を特殊召喚!!」

 

 そんな茨の園に現れるのは虚ろな瞳をした4匹の丸い羊の幽霊がユラリと揺れ動く。

 

《スケープ・ゴースト》 裏側守備表示 → 攻撃表示

星1 闇属性 アンデット族

攻 0 守 0

 

 するとその身体からそれぞれ真ん丸な黒い羊が4匹ばかりポトリと落ちた。

 

『黒羊トークン』×4 守備表示

星1 闇属性 アンデット族

攻 0 守 0

 

「ですが、そのリバース効果にチェーンして手札から捨て発動した《増殖するG》の効果により、1枚ドロー」

 

「好きにするがいい――モンスターが特殊召喚されたことでフィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果により、攻撃力が半減され、呼び出したモンスターから見て相手フィールドに『ローズ・トークン』が攻撃表示で特殊召喚」

 

 やがて神崎のデッキから黒い影がうごめく中、薔薇園の黒い4匹の羊たちに絡みつく茨が、彼らから養分を奪い取り――

 

「『黒羊トークン』は4体呼び出されたが、タイミングは同時な為、貴様のフィールドに1体の『ローズ・トークン』が花開く――もっとも『黒羊トークン』の攻撃力が0な以上、半減するものもないがな」

 

 神崎のフィールドに赤い薔薇を一輪ばかり花開かせた。

 

『ローズ・トークン』 攻撃表示

星2 闇属性 植物族

攻 800 守800

 

「《増殖するG》の効果で1枚ドローさせて頂きます」

 

 

「そして我は2体の『黒羊トークン』と《スケープ・ゴースト》を贄に捧げ(リリースし)、降臨せよ!!」

 

 

 そんな赤き花が見守る中、冥界の王の()()の羊たちが地に沈むようにその身体を泥へと変えていき――

 

 

 

「神を抹殺せし、邪なる一柱!!」

 

 

 

 その泥から瘴気を巻き散らしながら邪悪なる影を覗かせる魔龍が茨に覆われたドームへと飛び立つ。

 

 

 

「――『THE DEVILS ERASER(邪神イレイザー)』!!」

 

 

 

 やがて冥界の王の背後に立つのは銅の如き鈍い輝きを放つ邪悪なる魔龍が、長大な身体でとぐろを巻き、黒き翼を広げながらクチバシのような口を大きく開き、その口内にあるもう一つの口から奇怪な叫びを轟かせた。

 

THE DEVILS ERASER(邪神イレイザー)』 攻撃表示

星10 神属性 邪神獣族

攻 ? 守 ?

 

「『THE DEVILS ERASER(邪神イレイザー)』のステータスは貴様のフィールドのカードの数×1000となる。ゆえに――」

 

 そして邪なる一柱の前に対峙する神崎のフィールドには《クリボン》と『ローズ・トークン』に加え、セットカードが1枚。

 

 そんな敵意の象徴を前に、邪なる魔龍はその力を漲らせていく。

 

THE DEVILS ERASER(邪神イレイザー)

攻 ? 守 ?

攻3000 守3000

 

 

 そうして「邪神」の威容を前にした神崎の瞳は、驚愕からか見開かれたまま動きを見せない――否、動けない。

 

「邪神……!?」

 

――何故、此処に!?

 

 思わず零れた言葉が、神崎の内心の動揺を物語る。

 

 『THE DEVILS ERASER(邪神イレイザー)』――ペガサスが「三幻神」の抑止力としてデザインした「三邪神」と呼ばれる神属性の3枚のカードの内の1枚。

 

 

 原作では遊戯王Rにて一騒動を起こすのだが、その原因である「ペガサスの死」がない以上、この場において存在しない筈のカードだった。

 

 

 

「ようやく貴様の驚く顔が見れたな」

 

「ええ、驚きました――そのカードを一体どこで?」

 

――ペガサス会長も邪神の製造は取りやめたとの話だった筈……それに、本体を奪われた以上、冥界の王の意思は私からは離れられない。一体いつ……

 

 やがて続いた冥界の王の言葉に平静を取り繕いながら神崎は頭の中で邪神の入手経路を模索するが、答えは出ず。

 

「無論、この場でだ」

 

 だが、その望んだ答えは他ならぬ冥界の王から告げられた。

 

「我はこの場で役目を終え、消えた三幻神の残留思念を読み取ったに過ぎん」

 

「残留……思念?」

 

「そう、この場には三幻神の残留思念が集合意識となって根付いている」

 

 そうして思念・意識などという既存科学では未だ未知が多い領域を、さも当然の事象のように語る冥界の王は拳を握る仕草と共に零す。

 

神に選ばれし者(アテム)と、その選ばれし者を受け止める器(武藤 遊戯)の一戦による強い意識が、思念が、情報が、神を眠らせたと言っても過言ではなかろう」

 

 そう、此処はつい先程ばかりにアテムと遊戯のデュエルによって、王の魂を冥界に還した地。

 

 三幻神の最後の地。

 

「数年あれば霧散する程度の代物であろうが、現時点では『世界の記憶』といっても過言ではない『それ』に我は囁いただけだ」

 

 ゆえに冥界の王は、その役目を終えた神に、劇場版にて海馬が地面から神をドローしたように思念的な残照へ方向性を与えた。

 

 

「『千年アイテムを害するものがいるぞ』とな」

 

 それこそが、王の眠りを穢さんとする敵対者(神崎)の排除。

 

「そして我は『それ』と共に千年アイテムをこの身に宿し、身体を得た」

 

「興味深いお話ですね」

 

――千年アイテムの材料を考えれば、三幻神が三邪神と化すことも説明はつく……のか?

 

 そうして語り終えた冥界の王に神崎は軽く肩をすくめてみせるが、内心での理解は浅い。

 

 

 冥界の王の説明では「三幻神」復活の説明がついたとしても、抑止力である「三邪神」へ変容する説明にはなっていなかった。

 

 ゆえに千年アイテム――とくに千年リングや千年眼などの「闇の力が大きい」とされるものに原因を模索する神崎だが――

 

「さて、デュエルに戻ろうか」

 

 冥界の王は、自身のカードに手をかけながらフィールドを指し示す。

 

「邪神が呼び出されたことで、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果が発動するが、神にこんなものは効かん。よって、『ローズ・トークン』も呼び出されることは――」

 

 そこにあるのは邪神の威光を前に、しなびていた周囲を覆う黒き茨。

 

 だが、突如として邪神の身体からその絶対的なまでの神々しき力の波動が霧散した。

 

THE DEVILS ERASER(邪神イレイザー)』 → 《邪神イレイザー》

神属性 邪神獣族 → 闇属性 悪魔族

 

 

――属性と種族が? いや、存在の格が落ちたのか?

 

 神崎の内心の仮説の成否はともかくとして、《邪神イレイザー》の身を覆う禍々しきオーラは未だ健在である。

 

 しかし、その僅かな違いを察知した周囲の黒い茨が花を咲かせる養分を求めて《邪神イレイザー》へと殺到した。

 

「……チッ、今の我が力では完全な状態で呼び出すことは叶わんか」

 

 そして《邪神イレイザー》から養分(攻撃力)を奪わんとする茨に対し、僅かに苛立ちを見せた冥界の王はフィールドの1枚のカードへと手をかざす。

 

「我はフィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果にチェーンし、永続罠《ポールポジション》を発動。そして更に速攻魔法《サモン・チェーン》を発動だ」

 

 すると《邪神イレイザー》の身体に赤黒いオーラが包み、その身体に荒々しさを増していく。

 

「これにより、我はこのターン3度の通常召喚が可能となり、永続罠《ポールポジション》によりフィールドの最も攻撃力が高いモンスター、《邪神イレイザー》は魔法の効果を受けん」

 

 やがて神聖さが薄れたものの毒々しい気配はそのままに《邪神イレイザー》の雄叫びが天を震わせた。

 

「よって、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果で攻撃力が半減されることもなく、トークンも呼び出されない」

 

 そんな《邪神イレイザー》の咆哮に再びしなびた黒き茨を余所に冥界の王は増えた手札の1枚に手をかざす。

 

「おっと、忘れるな――我は永続魔法《冥界の宝札》で2枚のカードをドローさせて貰ったぞ」

 

 それは《邪神イレイザー》のアドバンス召喚の際に、舞い込んだ禍々しさすら感じさせる1枚。

 

「此処で我は罠カード《リバイバル・ギフト》を発動。我の墓地のチューナー《スケープ・ゴースト》を効果を無効化し、復活させ、更に貴様のフィールドに2体の『ギフト・デモン・トークン』をプレゼントだ」

 

 やがてその1枚のカードを余所に冥界の王のフィールドに虚ろな瞳の4匹の丸い羊が戻り、

 

《スケープ・ゴースト》 守備表示

星1 闇属性 アンデット族

攻 0 守 0

 

 対する神崎のフィールドにカエルに似た真っ黒な悪魔が2体ばかり宙より降り立ち、足元の茨の棘を踏んで絶叫を漏らした。

 

『ギフト・デモン・トークン』×2 攻撃表示

星3 闇属性 悪魔族

攻1500 守1500

 

「《スケープ・ゴースト》と『ギフト・デモン・トークン』の特殊召喚は同時な為、私は《増殖するG》の効果で1枚ドローです」

 

「だとしても、此処で互いのフィールドにモンスターが呼ばれたことで、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果により、我らのフィールドにそれぞれ呼び出したモンスターの攻撃力を半減させ、相手に向けて『ローズ・トークン』を送り合う」

 

 そうして棘を踏んだ痛みから転んだ《ギフト・デモン・トークン》の全身に棘が突き刺さりまくる中――

 

『ギフト・デモン・トークン』×2

攻1500 → 攻750

 

 その養分を糧に、冥界の王のフィールドの赤い薔薇が咲く。

 

冥界の王のフィールドの

『ローズ・トークン』 攻撃表示

星2 闇属性 植物族

攻 800 守 800

 

 ついでにいつの間にか茨にからめとられていた虚ろな4匹の丸い羊《スケープ・ゴースト》を養分に、神崎のフィールドにも薔薇が咲いた。

 

神崎のフィールドの

『ローズ・トークン』 攻撃表示

星2 闇属性 植物族

攻 800 守 800

 

「2体の『ローズ・トークン』も同時に特殊召喚されている為、1枚ドロー」

 

「これで我のフィールドに4体のモンスター、いや、3体の贄が揃ったなァ」

 

 着々と《増殖するG》により増えていく神崎の手札など意に介さない冥界の王は裂けた口で邪悪な笑みを浮かべながら手札で揺らしていた1枚のカードをデュエルディスクに叩きつけた。

 

「我は2体の『黒羊トークン』と『ローズ・トークン』を贄に捧げ(リリースし)!」

 

 その途端、黒い炎が冥界の王の3体のトークンを焼き尽くし、その黒き炎の中から――

 

「世に恐怖振り撒きし、邪なる一柱!」

 

 悪魔の白い骨格がゆっくりと歩を進めていく。

 

「来たれ、『 THE DEVILS DREAD-ROOT(邪神ドレッド・ルート)』!!」

 

 やがてその白い骨格の内側から深緑の肉がせり上がり、巨人の体躯を与えたことで、禍々しくも神々しき邪神の一柱が茨の園の只中に立つ。

 

 そして邪神の一柱は骨の翼を広げ、黒い翼膜で突風が吹きすさぶが、やはりと言うべきか《邪神イレイザー》の時と同様に、その身から神々しさが失われて行く。

 

THE DEVILS DREAD-ROOT(邪神ドレッド・ルート)』 攻撃表示

星10 神属性 邪神獣族

攻4000 守4000

《邪神ドレッド・ルート》

闇属性 悪魔族

 

「永続魔法《冥界の宝札》の効果で2枚ドロー! フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果が発動されるが永続罠《ポールポジション》の対象が最も攻撃力の高い《邪神ドレッド・ルート》に移行したことで無意味だ」

 

 しかし、その邪神――《邪神ドレッド・ルート》の身体に茨が迫ることはない。

 

「そして《邪神ドレッド・ルート》が存在する限り、己以外の全てのカードの攻守は半減される!」

 

 さらに《邪神ドレッド・ルート》がもたらす圧倒的なプレッシャーは周囲のモンスターたちに恐怖を植え付け、その闘志を敵味方問わず挫いていく。

 

《クリボン》

攻300 守200

攻150 守100

 

『ローズ・トークン』×2

攻800 守800

攻400 守400

 

『ギフト・デモン・トークン』×2

星3 闇属性 悪魔族

攻750 守1500

攻375 守750

 

《邪神イレイザー》

攻6000 守6000

攻3000 守3000

 

 

 降り立った2体目の邪神――そして残る《スケープ・ゴースト》が1体。

 

 だが、冥界の王は手を緩めるつもりはない。

 

「此処でライフを1000払い、永続魔法《ドラゴノイド・ジェネレーター》を発動! このカードは1ターンに2度まで自分のフィールドに『ドラゴノイドトークン』を攻撃表示で呼び出せる」

 

冥界の王LP:4000 → 3000

 

 冥界の王の背後に現れた卵型の機械がズラリと並び――

 

「我は2度効果を使用し、2体の『ドラゴノイドトークン』を特殊召喚。《邪神ドレッド・ルート》により、その攻守は半減」

 

 その卵型の機械の2つから、逆さにしたチェスの駒のような身体を持つ小さな青いドラゴンが生れ落ち、宙にフワフワと浮かんでいたが、邪神のプレッシャーの前に茨の地面に落下した。

 

『ドラゴノイドトークン』×2 攻撃表示

星1 地属性 機械族

攻300 守300

攻150 守150

 

 だが、そんな災難を受けた小さなドラゴンに追い打ちをかけるように降りかかる――

 

「特殊召喚に対し、我のフィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果で攻撃力が更に半減し――此処でもう一度《邪神ドレッド・ルート》の効果が適用され、攻撃力はその半分になる」

 

 冥界の王の説明に、2体の『ドラゴノイドトークン』たちが頭に「!?」を浮かべながら、《邪神ドレッド・ルート》の力の前に、見えないプレッシャーを受けて地面にめり込んだ。

 

『ドラゴノイドトークン』×2

攻150 → 攻75 → 攻37

 

――やはり来たか【黒庭ドレッド】……!!

 

 『ドラゴノイドトークン』と同じく沈痛な想いを胸中で見せる神崎。

 

 邪神に半減された後に、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》で半減されて終わりじゃないの!? なんでまた半減してるの!?

 

 と、お思いの方もいるやもしれないが――

 

 詳しくは長くなるので、後書きにて明記させて貰おう――今は《邪神ドレッド・ルート》と《ブラック・ガーデン》の「半減パワーの結束コンボで攻撃力が8分の1だドン!」と考えて頂ければ幸いだ。

 

 そのコンボをOCGでは【黒庭ドレッド】と評されていたのだ。

 

 ペガサスによって《邪神ドレッド・ルート》がカード化されないゆえに再現されることのなかったコンボが、今、神崎の前に立ちはだかっていた。

 

「……2度、『ドラゴノイドトークン』が特殊召喚された為、2枚ドロー」

 

「貴様のフィールドへの『ローズ・トークン』の生成はモンスターゾーンが埋まっている為、行われんがな」

 

 そうして神崎のフィールドで新たな薔薇が咲かんとするが、既に《クリボン》・《ギフト・デモン・トークン》2体、『ローズ・トークン』2体と5か所とも満員な為、咲かんとしていた2輪の薔薇はしなびたように消えていく。

 

「さぁ、もう説明は不要だろう! 『ドラゴノイドトークン』2体と、《スケープ・ゴースト》を贄に捧げ(リリースし)!!」

 

 そんな矢先に三度、3体の贄が天へと捧げられる中、天が暗黒で染まり、

 

「降臨せよ、神を越えし、邪なる一柱!!」

 

 茨の園に太陽が昇るが、そこに日の暖かさなどありはしない。

 

「――『THE DEVILS AVATAR(邪神アバター)』!!」

 

 なにせ昏き世界を照らすのは、漆黒の太陽において他ならないのだから。

 

 そうして闇の如き太陽の内側にてなにかが蠢く。

 

THE DEVILS AVATAR(邪神アバター)』 攻撃表示

星10 神属性 邪神獣族

攻 ? 守 ?

《邪神アバター》

闇属性 悪魔族

 

「《邪神アバター》が召喚されたことで効果発動! 貴様のターンで数えて2ターンの間、貴様の魔法・罠カードの発動を封じる!!」

 

「チェーンして罠カード《共闘》を発動。手札を1枚捨て、モンスター1体のステータスをターンの終わりまで捨てたモンスターと同じにします。私は《クリボーン》を墓地に送り、《邪神ドレッド・ルート》を選択」

 

 やがて漆黒の輝きが神崎を照らしきる前に、その手札から飛び出した紺のヴェールを被った白い毛玉が《邪神ドレッド・ルート》へと聖なる輝きを放つ鎖で覆っていく。

 

《邪神ドレッド・ルート》

攻4000 守4000

攻300 守200

 

「ふん、貴様のフィールドのカードの枚数が変化したことで、《邪神イレイザー》の攻撃力も変化する――《邪神ドレッド・ルート》の効果で半減されるがな」

 

 やがて地に膝をついた《邪神ドレッド・ルート》を余所に、《邪神イレイザー》は相手の敵意の変化を敏感に感じとり、その威容を変化させた。

 

《邪神イレイザー》

攻5000 守5000

攻2500 守2500

 

「《邪神アバター》の攻守は、自身以外のフィールドで最も高い攻撃力の+100の数値となる。ゆえに、永続罠《ポールポジション》の効果が適用され、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の影響は受けん」

 

 すると《邪神アバター》の漆黒の太陽の如き姿が泥のように流動し、やがて《邪神イレイザー》と瓜二つな姿へと変化した。

 

 しかし、その体躯は黒一色であり、何処か禍々しさが引き立つ。

 

《邪神アバター》

攻 ? 守 ?

攻2600 守2600

 

「辛うじて延命処置に成功したようだが……永続魔法《冥界の宝札》でドローしたカードを使わせて貰う。永続魔法《進撃の帝王》を発動! これでアドバンス召喚された邪神は効果の対象はおろか、効果破壊もされん」

 

 そうして1ターンで3体の邪神を呼び出した冥界の王は、新たなる耐性を与える1枚を、神属性を失った三邪神への加護とばかりに施した。

 

「そして魔法カード《マジック・プランター》を発動。永続罠《ポールポジション》を墓地に送り、2枚ドローだ! 永続罠《ポールポジション》がフィールドに存在しなくなったことで自壊効果が適用されるが、永続魔法《進撃の帝王》で無為に化す」

 

 やがて、もはや不要とばかりに魔法耐性を与える《ポールポジション》をデメリットを回避しつつ退かし――

 

「バトル! 《邪神アバター》で『ギフト・デモン・トークン』を攻撃! ダークネス・ダイジェスティブ・ブレス!!」

 

 そして永続魔法《進撃の帝王》によって茨の園に炎が立ち昇る中、三邪神の進軍が始まる。

 

 やがて《邪神イレイザー》の姿を模した《邪神アバター》の竜の口元から毒々しくも何処か神々しい闇の奔流が吹き荒れた。

 

 それに対し、成す術もない『ギフト・デモン・トークン』が見た目通りのカエルのような断末魔と共に吹き飛ばされ、その余波が神崎の身を強かに打ち付ける。

 

神崎LP:4000 → 1775

 

「ぐっ……ですが、私のフィールドのモンスターが減ったことで《邪神イレイザー》の攻守も下がります!」

 

 闇のゲームゆえのダメージの実体化に合わせて、完全な状態ではないとはいえ神の一柱である三邪神の一角の攻撃に、苦悶の声を漏らす神崎。

 

 そんな彼に僅かばかりの朗報を告げるとすれば、己の守り手の減少が《邪神イレイザー》の力を削いだことか。

 

《邪神イレイザー》

攻2500 守2500

攻2000 守2000

 

 それに伴い、姿を映しとった《邪神アバター》の力も僅かに減衰する。

 

《邪神アバター》

攻2600 守2600

攻2100 守2100

 

「だとしても、貴様をいたぶるには十分だ! 最後の《ギフト・デモン・トークン》へ攻撃しろ! 《邪神イレイザー》! ダイジェスティブ・ブレス!!」

 

 そして先の光景の焼き増しのように《邪神イレイザー》が放った闇色のブレスが、先程と同じく《ギフト・デモン・トークン》を消し飛ばし、その余波が神崎の命を削っていく。

 

神崎LP:1775 → 150

 

「ぐぅぉっ!?」

 

 思わず膝をついた神崎の残りの命の残量ことライフは、1ターンの攻防で今や僅か150。

 

 だが、未だ攻撃権利を有している《邪神ドレッド・ルート》は罠カード《共闘》の影響により、このターンばかりは神崎のフィールドに残る『ローズ・トークン』を越えることはない。

 

 仮に《クリボン》を攻撃しようとも、その効果により、旨味はないだろう。

 

「ククク、貴様からすれば、邪神の力は数値以上にその身を苛むだろう?」

 

――これが邪神の一撃……想像以上にキツイが、三幻神ならこの比ではなかった筈。

 

 それゆえか、バトルを終えた冥界の王が嘲笑交じりに嗜虐的な声を漏らすが、対する神崎は問答できる程の余裕はもはやない。

 

 もし、呼び出されていたのが、三幻神だったら。

 

 もし、眼前の三邪神の神の耐性が失われていなかったら。

 

 そうなれば既にこの場で全てのライフを削られ、命を落としていた可能性すらある。

 

――この程度で済んだと考えるべきだ。今はデュエルに集中する時、相手のデッキは分かったが、2ターン続く魔法・罠封じが致命的だ。

 

「我はカードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

 そんな具合にか細い希望を抱く神崎を余所にターンを終えた冥界の王だが、絶望は終わらないとばかりに、フィールドを指さした。

 

「このエンド時に、永続魔法《ドラゴノイド・ジェネレーター》の効果により、神崎――貴様のフィールドに我が呼び出した数だけ、『ドラゴノイドトークン』を攻撃表示で特殊召喚せねばならん」

 

 その指の先は神崎のフィールド。そこに機械の卵から青いドラゴンが飛び立つが――

 

「だが、そのトークンに《邪神ドレッド・ルート》の力と、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果が及ぶ――結果、我のフィールドに『ローズ・トークン』を2体特殊召喚だ」

 

 その小さなドラゴンは、黒き茨と邪神が振りまく狂気によって、見るも無残に茨の園に横たわる。

 

『ドラゴノイドトークン』×2

星1 地属性 機械族

攻300 守300

攻150 守150

攻75

攻37

 

 そうして奪った養分から、冥界の王のフィールドに二輪の血のように赤い薔薇が咲いた。

 

『ローズ・トークン』×2

星2 闇属性 植物族

攻800 守800

攻400 守400

 

「ククク、壁モンスターが増えて良かったではないか」

 

「……貴方の2度の特殊召喚により、《増殖するG》で2枚ドローします」

 

 そうして神崎のフィールドに再び5体のモンスターが並ぶが、挑発するような冥界の王の言葉通り、プラスにだけ働く訳でもない。

 

 敵が増えたことで《邪神イレイザー》の攻守も増し、更にはレベルの低いモンスターを主体とした神崎のデッキからすれば、モンスターゾーンが埋まってしまっている状態はあまりよろしくない。

 

「ターンの終わりに、罠カード《共闘》の効果が切れ、《邪神ドレッド・ルート》の力が戻る!」

 

 それに加え、光の鎖の拘束を引きちぎった《邪神ドレッド・ルート》の巨人の如き巨躯が自由を取り戻したことで、元の力を取り戻し――

 

《邪神ドレッド・ルート》

攻300 守200

攻4000 守4000

 

 加えて、「最も高い攻撃力」が更新されたことで、《邪神ドレッド・ルート》の姿を模した《邪神アバター》の力も高まって行く。

 

《邪神アバター》

攻4100 守4100

 

――フィールドがトークンで埋まった……面倒なことになったな。

 

 やがてフィールドをチラと見やった神崎は《増殖するG》の効果で大きく増えた手札を視界に収めるが、この状況を打破する一手は浮かばない。

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終え、メインフェイズ1へ」

 

――手札こそ多いが、《邪神アバター》の効果もあって動けない……

 

 そして頼みの綱の新たなドローカードも、同上だった。

 

 素のパワーの低いクリボーたちを魔法・罠でサポートしていくデッキなだけに、それを封じられると文字通りサンドバッグにしかならない。

 

「2体の『ドラゴノイドトークン』をリリースし、モンスターを裏側守備表示でアドバンスセット」

 

 ゆえに殴られる対象を少しでも減らす方向に舵を切った神崎。

 

 邪神と茨にやられ、瀕死な『ドラゴノイドトークン』が光へと消えていく中、カードの裏面だけがポツンと現れる。

 

「《クリボン》と2体の『ローズ・トークン』を守備表示に変更」

 

 それに続くように尾を己が身を隠すように前に曲げる《クリボン》と、

 

《クリボン》攻撃表示 → 守備表示

攻150 → 守100

 

 ガードするようにツタのような腕を交錯する『ローズ・トークン』。

 

『ローズ・トークン』×2 攻撃表示 → 守備表示

攻400 → 守400

 

「カードを2枚セットしてターンエンドです。エンド時に手札が6枚以上――7枚ある為、1枚墓地に送ります」

 

「ククク、魔法・罠カードが封じられ、さぞ動き難かろう」

 

 やがて守備表示で耐え忍ぶ長期戦の構えを見せた神崎へ嘲笑を送る冥界の王。

 

「しかし貴様がセットカードを――フィールドのカードを増やしたことで、《邪神イレイザー》がパワーアップ!」

 

 それもその筈、そうして神崎がカードを費やし守りを固めれば固める程に《邪神イレイザー》の力は高まって行くのだから。

 

《邪神イレイザー》

攻3000 守3000

 

「クハハハハ! 防戦一方だな! 我のターンドロー!」

 

 そうして己が圧倒的有利を誇るように笑う冥界の王がカードを引くが、手を緩めることはない――驕ったものの末路を冥界の王は、眼前の男の元で腐る程に見てきた。

 

「だが、その防戦を続けさせる気はない! 永続罠《最終突撃命令》を発動! これによりフィールドの全ての表側モンスターは攻撃表示となる!」

 

 ゆえに「押し切る」とばかりに発動されたカードによってフィールドのモンスター全てが闘争本能に魅入られ、攻撃表示となり各々の牙爪を剥く。

 

《クリボン》守備表示 → 攻撃表示

守100 → 攻150

 

『ローズ・トークン』×2 守備表示 → 攻撃表示

守400 → 攻400

 

「バトル! 《邪神アバター》でセットモンスターを攻撃! ダークネス・フィアーズノックダウン!!」

 

 やがて邪なる巨神の姿を写しとった《邪神アバター》がセットモンスターに剛腕を振り下ろす。

 

 セットモンスターがたとえ、何らかの効果で爆発的に攻撃力を上げる効果を有していても、《邪神アバター》の力はそれすらも呑み込む。

 

「セットしていたモンスターは永続罠《最終突撃命令》により、表側になった瞬間に攻撃表示になり……ます」

 

「だとしても、《邪神ドレッド・ルート》の力が、貴様のモンスターを襲う!!」

 

 だが、そんな警戒に反して裏側のカードから牙を剥き、翼を広げたのはイカズチ迸らせる三つ首の魔龍。

 

《雷撃壊獣サンダー・ザ・キング》 裏側守備表示 → 守備表示 → 攻撃表示

星9 光属性 雷族

攻3300 守2100

攻1650 守1050

 

 その攻撃力は3000越えとかなりのものだが、《邪神ドレッド・ルート》の前では、その力もつゆと消える。

 

「終わりだ、神崎ィ!!」

 

 ゆえに力が大きく目減りしたことでその身を覆うイカヅチも、龍の鱗も何もかもが脆く弱々しく成り果てた三つ首の竜が、邪神の剛腕によって貫かれた後、茨の園に落ちていく。

 

 

 そしてその余波は神崎を深々と打ち抜き、残り150ぽっちのライフを消し飛ばした。

 

 

 

 

「手札から《クリボー》を墓地へ送り、ダメージを0にさせて頂きました」

 

 かに思えたが、神崎の前で小さな手を広げる黒い毛玉《クリボー》がその命を僅かに繋ぐ。

 

「フン、防いだか――だが、邪神の進軍は止まらん! 《邪神イレイザー》! 《ローズ・トークン》ごとヤツを討て!! ダイジェスティブ・ブレス!!」

 

 だとしても、絶望的な状況に変わりはない。

 

 黒き邪なる神竜が、大口を開き放った闇の奔流の前に、『ローズ・トークン』の小さな薔薇の身体はいとも容易く消し飛ばされ、殆ど減衰しなかった奔流が神崎の身を打ち付けた。

 

 

 

 

 

「手札から2枚目の《クリボー》を墓地へ送り、ダメージを0にさせて頂きました」

 

 しかし、まだまだ神崎は倒れない。

 

 冥界の王は誰よりも知っている。眼前の男のしぶとさを。

 

「チッ、相変わらず往生際の悪い――ならば行けッ! 《邪神ドレッド・ルート》! 《ローズ・トークン》を叩き伏せろ! フィアーズノックダウン!!」

 

 ゆえに、情けも容赦も掛けずに《邪神ドレッド・ルート》に剛腕を振らせ、『ローズ・トークン』を地面にクレーターを生みながら叩き潰し、その余波で神崎を殺しにかかる。

 

 

 そうして邪神の三連続の攻撃の余波を前に膝をつく神崎。

 

 

 

 

 

 

 

「手札から3枚目の《クリボー》を墓地へ送り、ダメージを0にさせて頂きました」

 

「しつこいぞ貴様ァ!!」

 

 だが、まだ死なない。しつこいくらいしぶとい。

 

 

 そのしぶとさに「やはり」という確信と、「しつけぇ!」という怒りがない交ぜになりながらも、冥界の王は攻撃の手を緩めない。

 

「……くっ! ならば我は『ローズ・トークン』で《クリボン》を攻撃だ! 貴様のライフは僅か150! この程度の一撃でも十分であろう!」

 

「ですが《クリボン》が攻撃されたダメージ計算時に、その戦闘ダメージを0にします――代わりに相手の攻撃力分、貴方は回復し、《クリボン》は手札に戻ります」

 

 小さな薔薇である『ローズ・トークン』がツタを腕のように伸ばし、《クリボン》に向けてペシッと叩きつけるが、その毛玉ボディは神崎の手札に吹き飛ばされた後、小さな光が冥界の王に届く。

 

冥界の王LP:3000 → 3400

 

「だが、これで貴様のフィールドはがら空き! もう1体の『ローズ・トークン』のダイレクトアタックで終わりだ!!」

 

 そうして開けたフィールドを最後の『ローズ・トークン』が伸ばしたツタが神崎を貫かんと迫った。

 

「その直接攻撃宣言時、手札の《EM(エンタメイト)クリボーダー》の効果発動。手札から自身を特殊召喚し、このカードとバトルさせます」

 

「だとしても、その特殊召喚に対し、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の半減効果も合わせた《邪神ドレッド・ルート》の弱体化効果を受けて貰う!!

 

 しかし、そのツタを受け止めるのは、神崎の手札から飛び出したボーダー柄の三角帽子を被ったクリボーこと《EM(エンタメイト)クリボーダー》。

 

EM(エンタメイト)クリボーダー》 攻撃表示

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

攻150 守100

攻37

 

 その身が邪神と茨に苛まれ、攻撃力が一気に下がるも――

 

「そしてその戦闘で発生する私へのダメージは、回復効果に変換されます――よって発生するダメージ363ポイント、ライフを回復」

 

 『ローズ・トークン』の伸ばしたツタに貫かれながらも、その衝撃が三角帽子に吸い込まれた後、神崎を僅かばかり癒す光となった。

 

神崎LP:150 → 513

 

 かくして三邪神たちの猛攻をなんとか退けた神崎だが、払った代償は決して安くはない。

 

「相変わらずのしぶとさよ……しかし《増殖するG》の効果で増やした手札も大きく目減りした――次のターンも同じように持つかな? 我はカードを1枚セットし、ターンエンドだ」

 

 冥界の王の言う様に前のターンでは最大枚数あった神崎の手札も、手札に戻った《クリボン》を除き2枚と、1ターンの攻防で見る影もない程に目減りした。

 

 次のターン、同じように防げるかと問われれば、容易く頷けはしないだろう。

 

 そうしてターンを終えた冥界の王から示された絶望的状況の只中、神崎はデッキのカードに手をかけ――

 

「私のターン、ドロー。スタンバイフェイズを得て、メインフェイズへ……私は《クリボン》を召喚」

 

 引いたカードへ視線を向けた後、やがて手札から飛び出た《クリボン》がリボン尻尾を揺らす中、《邪神ドレッド・ルート》と《ブラック・ガーデン》にその身が苛まれた。

 

《クリボン》 攻撃表示

星1 光属性 天使族

攻 300 守 200

攻150 守100

攻75

攻37

 

「……ターンエンドです」

 

「ククク、どうした! 貴様の奇跡は品切れか! ならば、我が今度こそ引導を渡してくれよう!!」

 

 そして打つ手なしとばかりに何も状況を変えられぬままにターンを終えた神崎を冥界の王は嘲笑う。

 

「我のターンドロー! バトルだ!! 三邪神よ! ヤツ最後の壁を蹴散らし、とどめをくれてやれ!!」

 

 《クリボン》に向かう『ローズ・トークン』を余所に、三邪神が神崎目掛けて二対の拳を、闇色のブレスが放たれんとするが、その前に、互いの間に紺のヴェールを被った毛玉が祈りの所作と共に宙に浮かぶ。

 

「相手の攻撃宣言時に墓地の《クリボーン》を除外し、効果発動。墓地の『クリボー』モンスターを任意の数だけ特殊召喚します」

 

「無駄だ! 永続罠《最終突撃命令》がある限り、低い攻撃力を晒す的となるだけでしかない!」

 

 やがて冥界の王の宣言を余所に、《クリボーン》の祈りを聞きつけ、神崎の墓地からクリボーたちが舞い戻るが――

 

「そしてフィールド魔法《ブラック・ガーデン》と《邪神ドレッド・ルート》の効果により攻撃力は八分の一にダウン!!」

 

 降り注ぐ邪神と茨の洗礼に《EM(エンタメイト)クリボーダー》が被るボーダー柄の三角帽子も力なく頭を垂れ、

 

EM(エンタメイト)クリボーダー》 攻撃表示

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

攻150 守100

攻37

 

 2体の《クリボー》も、茨に雁字搦めにされながら、力なく地面を転がり、

 

《クリボー》 ×2 攻撃表示

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

攻150 守100

攻37

 

 《クリボー》の背中にウジャトの瞳がついた《サクリボー》もまた、しなびた様子で力なく横たわった。

 

《サクリボー》 攻撃表示

星1 闇属性 悪魔族

攻 300 守 200

攻150 守100

攻37

 

 やがて全体的にグッタリしているクリボーたちに向けて三邪神たちの攻撃が続行される中、冥界の王が神崎に向けて声を張る。

 

「さぁ、どうせセットしたリバースカードで防ぐのだろう! 《邪神アバター》の魔法・罠封じの効果は先の貴様のターンの終わりと共に終了しているからな!」

 

 神崎のしぶとさは、冥界の王が誰よりも知っている。身に染みている。

 

 ゆえに神崎が何の意味もなく《邪神アバター》の魔法・罠封じの効果が続いていたターンに除去される危険を冒してまで「発動できない状況」でカードを伏せた意図が、

 

 何の意味もなく、エンド時に手札枚数制限から「無意味に手札を捨てる」意図が、

 

「最後の頼みの綱を見せてみるがいい!!」

 

 冥界の王には手に取るように分かる。

 

 逆転の秘策を忍ばせている筈だと。

 

 

「罠カード《スウィッチヒーロー》を発動」

 

 

 そんな最中で罠カードが発動された途端、神崎のクリボーたちは三邪神へと突撃していき、三邪神もそれに応えるように進撃すれば――

 

「互いのフィールドのモンスターの数が同じ時、そのコントロールを全て入れ替えます」

 

 そのままぶつかり合うことなく素通りし、互いにそれぞれから見て相手フィールドへと降り立った。

 

 

 これにより、冥界の王のフィールドには《クリボン》含めた5体のクリボーたちが、

 

 神崎のフィールドには三邪神と2体の『ローズ・トークン』が鎮座する。

 

 

「邪神が……!!」

 

「これで貴方の攻撃は通らない」

 

 そう、これにて三邪神の脅威は去った。

 

「クッ……!!」

 

 もはや冥界の王の場に残るのは、己が攻め手には不適格だと嗤ったクリボーの身である以上、攻撃力の差から攻勢には移れない。

 

 

 神崎が忍ばせていた牙は、冥界の王の喉元にしかと届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「想定通りだ」

 

 

 

 

 

 

 そんな冥界の王の言葉と共に、神崎は目や口から血を流しつつ、己の身体に奔った身を焼くような痛みの中で、糸が切れるように倒れた。

 

 

 

 

 そう、神崎に課した苦境も、この逆転も、全てが冥界の王の掌に過ぎない。

 

 

 

 

 不可視の牙が、今、突き立てられる。

 

 

 

 






三邪神「我らの出番がないと言ったな――――あれは嘘だ」



黒吉様より頂いた支援絵になります。ありがたや、ありがたや……
https://img.syosetu.org/img/user/321784/67854.png
https://img.syosetu.org/img/user/321784/67853.png
証明写真風の神崎のイラスト――笑顔Ver と 開眼Ver の2種とのこと。

平時は隠されているマッスルが存在感を主張しているので非常時(リアルファイト)を連想させます。
その肩幅とガタイで会社員は無理でしょ(遠い目)



~今作の冥界の王のデッキ~

いわゆる「トークン軸・最上級ビート」に三邪神を投入したもの。

永続魔法《ドラゴノイド・ジェネレーター》などで、自分・相手フィールドにトークンを大量に並べながら
その特殊召喚に対し、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》で更にトークンを展開して

素早く三邪神をアドバンス召喚していく(永続罠《ポールポジション》が欠かせないけどな!)

遊戯王Rの作中では「人頼みの神」など散々ないわれを受けた《邪神イレイザー》も

このデッキならば相手フィールドに大量のトークンが並ぶ為、時に《邪神ドレッド・ルート》をも超える攻撃力を得られたりする。
(相手フィールドに生やしたトークンがリンク素材にされる? DMにはリンク召喚ないのでセーフ!)

コンマイ語の難題「黒庭ドレッド」により、後から呼び出されたモンスターの攻撃力がもれなく8分の1になるので、打点勝負に非常に強い。




~【黒庭ドレッド】について~
《邪神ドレッド・ルート》の力による半減は、一般的な攻撃力の増減の場合は、半減される元の数値に増減してから、再計算します。
(ちなみにこの段階で《邪神ドレッド・ルート》にのみ適用される特殊な裁定です――頭がおかしくなるぜ!)

つまり一度、「半減を一旦解除して」から「計算し直される」為、今回のように二度《邪神ドレッド・ルート》の半減を受けることはありません。


ですが、今回のような「半分にする」などの増減ではない「数値の『固定化』」がなされた場合、事情が異なります。

そう、「半分」に「固定化」された「数値」は計算上であっても「半減を解除することができない」のです――だって、「固定化されている」のだから。

「固定化された数値」を計算上であっても「元に戻すことは出来ない」ゆえに、「そのまま半減するドン!」という処理がなされます。

正直分かり難いとは思いますが、これがコンマイ語などと言われる所以です(汗)

より詳細な説明をお求めの方は、遊戯王公式サイトをチェックだ!(逃げ)


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