マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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前回のあらすじ
社畜が倒れたが、KCの業務とは無関係な為、労災は降りぬ(ブラック企業感)






第202話 還るべき彼方

 

 

「……これは……なに……が……」

 

 いつもの作り物の笑顔も苦痛で歪み倒れ伏した神崎は、息も絶え絶えな様子で本能的に立ち上がらんとするが、その脳裏を満たすのは混乱。

 

 

 

 戦闘・効果ダメージを負った訳でもなく、今までの攻防のダメージから限界を迎えた訳でもないというのに、突如として己が身を苛み始めた異常事態。

 

 そんな神崎の頭上に冥界の王の嘲るような声が落ちる。

 

「ククク、貴様からすれば、邪神の力は数値以上にその身を苛むだろう?」

 

 それは最初のバトルフェイズでの《邪神イレイザー》と《邪神アバター》の攻撃を受けてダメージを負った神崎へ向けた言葉を復唱したもの。

 

――まさか……

 

「邪神の、邪なる力ならば、己が益に働くとでも思ったか? 愚かだなぁ」

 

 その冥界の王の発言の本当の意味を此処に来て理解し始めた神崎を冥界の王は「今更だ」と嗤う。

 

 

「『三邪神』とはなんたるか」

 

 そして冥界の王の口から語られるのは、三邪神の定義――ペガサス会長は「三幻神が暴走した際の抑止力」と定義した。

 

 だが、冥界の王の解釈は少し違う。

 

「三幻神を光の柱とすれば、三邪神は闇の柱――が、『闇』ではあるが、『悪』にあらず」

 

 そう、「抑止力」を謡う割には、三邪神の姿はあまりにも禍々しい。

 

 それは、千年リングにかつて在った大邪神ゾーク・ネクロファデスの影響か? 否。

 

「三幻神の抑止たる存在が邪()な道理などありはしない――光と闇は表裏一体、所詮はもう一つの側面でしかないのだ」

 

 三幻神と三邪神は鏡合わせのような存在であるとの冥界の王の言に、その身に奔る苦痛に耐える神崎の沈痛な表情に理解の色が見える。

 

 これは何も珍しいものではない。現代でも至って普通に存在する概念だ。

 

「成……程、和魂(にきたま)と……荒魂(あらたま)と……のよう……な、関係……」

 

「然り」

 

 和魂(にきたま)荒魂(あらたま)

 

 これは神道における概念の一つであり、同一の神であっても別人ならぬ別神の如き強い個性を持つことを差す。

 

 安く言えば、普段すごく優しい人が、怒った時は別人の如くすごく怖い――そんな別人の如き二面性が、一つの存在として存在する状態。

 

 まさに慈悲深い側面と、荒々しい側面が一つの神の只中にある状態。

 

 

 和魂(にきたま)である三幻神が、無辜の(罪なき)民を守る慈悲深い側面であるのなら、

 

 荒魂(あらたま)である三邪神は、()を犯した驕った民を諫め罰する冷徹な側面である。

 

 

 そう、つまり三邪神とは、三幻神と同一の存在である――それが冥界の王の主張。

 

 

 三邪神が抑止するのは三幻神にあらず、三幻神を悪しき目的で使う担い手なり。

 

 

 

 つまり早い話が、三邪神は「邪悪」な神崎の天敵だ。

 

 神崎の身を苛むのは神の裁き。咎人を祓う闇でありながらも神聖な祓いの力。

 

「人間は常に『光が善であり、闇が悪だ』と、さした根拠もなしに声高に叫ぶ」

 

 三幻神の裁きを病的なまでに警戒していた神崎だが、三邪神の方の警戒はそれ程ではなかった。

 

「闇を恐れるあまり、どれだけの愚行を重ねようとも、未だ本質を見ない」

 

 そこには数々の邪悪な存在を神崎が喰らってきたゆえに知らず知らずの内に「邪神」の侵食も問題ないと考えた愚行ゆえ。

 

 それは「闇」と「悪」を混同して考えた人間らしい愚かさである。

 

「正……しき……闇……の力……」

 

「そうだ――『闇』とは悪にあらず、『光』は善にあらず、何処まで行こうとも光と闇でしかない」

 

 神崎は本来の歴史で遊城 十代が担う力の本質を知っていた筈だというのにその可能性を見過ごした。否、見逃した。

 

「それをあげつらい『善だ』『悪だ』と叫ぶのは貴様ら人間だけだ」

 

 どれだけの邪悪を喰らおうとも、神崎の本質など所詮は驕った人間に過ぎない。

 

「その現実から目を逸らし、己が都合の良いものばかりを『善』ともてはやす者共のなんと愚かなことか」

 

 そうして神崎を愚かだと嗤う冥界の王に、神崎は肉体を蝕む神の裁きを抜きにしても返す言葉を持たない。

 

 

「貴様のそのデッキは良く知っている。三邪神を真正面から打ち倒す力なく、コントロール色の強いデッキだ」

 

 なにせ、仮に神崎が「邪神を扱う危険性」を正しく認識していたとしても――

 

「なれば、邪神を奪うしかないよなぁ」

 

 この闇のデュエルにおいて、神崎は三邪神の最適解をそれしか持たないからだ。

 

 《溶岩魔人ラヴァ・ゴーレム》のようなカードを使おうにも、それで邪神全てを退けることができる訳ではない。

 

 更にトークンを多量に展開できる冥界の王のデッキならば三邪神の再展開も容易だろう。

 

 そう、知っていようが、いまいが、己を祓う毒をその身に打ち込むしかない状況を生み出すことこそ、冥界の王の策。

 

 冥界の王が千年アイテムを取り込むことで神に身を焼かれることなく扱って見せ、神崎の邪神への警戒心を削ぎ、打ち込んだ一手。

 

「フッ、貴様の考えていることなど手に取るように分かる」

 

 更に此処から神崎がどう動くかすらも、冥界の王の掌の上――なにせ、この世界において誰よりも神崎の闘いを見続けてきたのだから。

 

「早々にこのデュエルを終わらせねばならないと、早々に三邪神を除けてしまわねばならないと――だが、そうはさせん」

 

 そして逃げ場を塞ぐように冥界の王は己がリバースカードに手をかざす。

 

「我はバトルを終了し、速攻魔法《非常食》を発動。我のフィールドの魔法・罠ゾーンの――永続罠《最終突撃命令》、永続魔法《冥界の宝札》、《ドラゴノイド・ジェネレーター》、《進撃の帝王》を墓地へ」

 

 やがて冥界の王の魔法・罠ゾーンのカードが崩れていく中、その崩れたカードが黒き光となって冥界の王の元に集っていく。

 

「その枚数分×1000のライフを、4000のライフを回復する」

 

冥界の王LP:3400 → 7400

 

「カードを3枚セットしてターンエンドだ。フフフ、さぁ、貴様のターンだぞ?」

 

 そうして一気にライフを回復させつつ、これ見よがしに手札を全て伏せた冥界の王は挑発するような言葉を投げかける。

 

 

 なにせ8000近くなった冥界の王のライフは、基本チマチマ削っていくクリボーデッキにおいて、削り切るのは一苦労な数値だ。

 

 そして、今は「その一苦労」が何よりも遠い。

 

「私の……ターン、ドロー。この瞬間……に、魔法カード《予見通帳》の3度目のスタンバイフェイズ……です。除外した3枚のカードを……手札に」

 

 やがて三邪神の裁きに身を苛まれながらも、震える手で宙に浮かぶ通帳から落ちたカードを受け取った神崎は、頭上の通帳が消えていく中、思慮を巡らせる。

 

「メイン……フェイズ1へ」

 

――単純に三邪神を除けるだけでは駄目だ。相手が明らかに戦術を変えてきた以上、罠があることは明白。だが、このデッキで三邪神を除ける機会は殆どない。どうする? どうすべきだ?

 

 考えることが山積みで、なおかつ身体を蝕む神の裁きからか、思考すら纏まらない。

 

「どうした? そうノンビリ考えていて良いのか? 邪神の、神の裁きは時が過ぎ去る程に、貴様の身体を蝕んでいくぞ」

 

「――くっ……私は《邪神イレイザー》の効果発動……自身を破壊……する……!!」

 

 そんな最中、告げられた冥界の王の言葉に対し、《邪神イレイザー》を指差しながらその神をも呑み込む力を行使する。

 

「そして《邪神イレイザー》が破壊され……墓地に……送られた瞬間……フィールドの全てのカードを……破壊する」

 

 それはあらゆる存在を道ずれにする呪いの力。《邪神イレイザー》が死するときに流す黒き血は、文字通り、フィールドの全てを呑み込む。

 

 

 

 だが、神崎が指差した《邪神イレイザー》は一切動くことなく、フィールドに佇んだままだった。

 

「ククク、フフフ、ハハハハハハハ!!」

 

「何故……動かない……!」

 

「ハハハハハハハ! 当然であろう! 神に選ばれぬ者が、神を動かすことは叶わん!」

 

 冥界の王の嘲笑が地下神殿内に響き渡る。

 

 

 神は選ばれしものにしか扱えない――それが真理、それが道理。

 

 

 ディアハを世に送り出したペガサスの後継者筆頭(月行や夜行)でもなく、曲がりなりにも全米チャンプに至った男(キース・ハワード)でもない、なんの適性も持たぬ異物(転生者)如きに神が従う道理などありはしないのだ。

 

「なんだ、邪なるものどもを喰らい、己が特別になれたとでも思い上がったか? ハハハハハハハ! 滑稽だな!!」

 

 その身にどれだけの邪悪を喰らおうとも、届き得ぬ頂きがあるのだと冥界の王は嗤う。

 

 選ばれなかった者は、どれだけの禁忌に身を染めようとも、選ばれた者にはなれないのだ。

 

――成程。原作で孔雀舞が『ラーの翼神竜』を召喚したが、神は沈黙したまま動かなかった状態か。

 

「貴様は神の裁きに晒されるだけ――辛かろう、サレンダーを許可してやってもよいぞ?」

 

 そんな世界の不条理を、「原作再現だ」などと何処かズレた感想を抱く神崎を余所に、挑発を重ねる冥界の王だが――

 

――だが、試せるだけ試す!!

 

 神崎は冥界の王のフィールドに送った《クリボー》を指さし宣言する。

 

「バト……ル! 《邪神アバター》で……《クリボー》を攻……撃!!」

 

「ククク、かかったな? 邪神の攻撃時に罠カード《ディメンション・ウォール》を――」

 

 そうして巨神の姿を模した《邪神アバター》に攻撃指示を出す中、冥界の王がリバースカードに手をかざすが――

 

「動かない……か」

 

 やはり三邪神は動く気配を見せない。

 

「ハハハハハ! 何処までも神に拒絶されるか!! だが、そのお陰で1ターン生き延びることが出来たぞ!」

 

 だが、今回ばかりは動かずに済んで良かったとも言えよう。

 

 なにせ仮に神であること(神属性・邪神獣族)を失っていなくとも、罠カード《ディメンション・ウォール》の「戦闘ダメージを押し付ける」効果はプレイヤーを対象としている為、防げないのだから。

 

「私はバトルを……終了し、2体の『ローズ・トークン』と三邪神を……守備表示に変更」

 

 ゆえに運よく首の皮一枚繋がった神崎は、守備固めをしていくが、ツタの腕で薔薇の花を守ろうとする『ローズ・トークン』に対し――

 

『ローズ・トークン』 攻撃表示 → 守備表示

攻400 → 守400

 

 三邪神は毛ほども動きはしない。

 

――表示形式の変更すら無理だとは……それでこそ神と言うべきか。

 

「カード……を1枚セット……してターンエンド」

 

 ゆえに、三邪神に振り回されるままにターンを終えた神崎。だが、そうして相手のターンを待つだけの身であっても、神の裁きは収まる様子を見せない。

 

 常人であれば一瞬の内に絶命できよう神罰も、強靭なマッスルを持つゆえに無駄に頑丈な神崎は、生き永らえてしまうゆえに苦しみは延々と続く。

 

 

「三邪神に苦労しているようだなぁ――無理もない。貴様のそのデッキには小粒ばかりが多い」

 

 そんな神崎へ冥界の王は態々長引かせるように現状を語って見せる。

 

「いや、そもそも大して強くもないデッキだ。そんなデッキを持ち歩いた己の浅慮を恨むのだな」

 

「強さ……を決める……のは、貴方じゃありま……せんよ」

 

「神の怒りにその身を苛まれても、口は減らんか――しぶといことだ」

 

 息も絶え絶えな神崎の返答も、冥界の王からは唯の強がりにしか見えない。いや、実際に唯の強がりなのだろう。

 

 途切れかねない意識を繋ぐことに必死なのだ。なにせ、意識を失いデュエルの続行が不可能となれば闇のデュエルは容赦なく敗者を消し去ることは明白。

 

「我のターン、ドロー! スタンバイフェイズに永続罠《拷問車輪》を発動! 貴様のモンスター1体――『ローズ・トークン』の攻撃と表示形式の変更を封じる!」

 

 そんな神崎へ冥界の王は、己がターンの開始早々に巨大な顎を持つ骨に車輪の付いた拷問器具を呼び出し、神崎のフィールドの『ローズ・トークン』にけしかける。

 

「さらに、そのモンスターが存在する限り、我のスタンバイフェイズ毎に500のダメージを与える! こんな具合にな!!」

 

 やがて車輪に捕まった『ローズ・トークン』が巨大な顎の骨に身体を削られ、飛び散った薔薇の棘が神崎を貫き、その命たるライフを削っていく。

 

「ぐ……ぅ……」

 

神崎LP:513 → 13

 

 そんな僅かな衝撃にも倒れそうになる己を必死に奮い立たせる神崎の命はもはや消える寸前であろう。

 

「ククク、文字通り風前の灯火のライフ――だが、手抜かりはせん! メインフェイズ開始時に魔法カード《強欲で金満な壺》を発動!エクストラデッキのカードを6枚裏側で除外し、2枚ドロー!」

 

 だからこそ、冥界の王は此処で決めにかかる。そうして欲の張った二つの顔がついた壺がぶっ壊して得た2枚の手札の内の1枚に手をかけた。

 

「我は2体の《クリボー》を贄に捧げ(リリースし)! 降臨せよ(アドバンス召喚)!! 我が眷属たる一柱よ!! 大海より舞い戻れ! 《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》!!」

 

 そして地下遺跡の大地を巨大なシャチの地上絵が奔り、その地を海のように割きながら身体に紫のラインが入った巨大な黒いシャチ《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》が宙に躍り出た。

 

《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》 攻撃表示

星10 闇属性 魚族

攻2900 守2400

攻1450 守1200

攻 725

攻 362

 

「《邪神ドレッド・ルート》とフィールド魔法《ブラック・ガーデン》で攻撃力が8分の1になろうとも、問題ない!」

 

 だが、その力は大きく削がれ、力なく雄叫びを上げる《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》に、記憶の世界で行われた究極の闇のゲームの時のような活力はない。

 

「《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の効果発動! このターンの攻撃権を放棄し、自身の守備力の半分――600のダメージを神崎! 貴様に与える!! ダーク・ダイブ・アタック!!」

 

 しかし、それでも神の一柱――邪神の力にも負けずに開いた大口から、超音波のような波紋が神崎に向けて放たれる。

 

「これで終局だ!!」

 

「相手が効果ダメージを与える……カード効果を発動した時、手札の……《ジャンクリボー》を墓地に送り、その発動を……無効にし……破壊します」

 

 だが、その超音波を迎え撃つように神崎の手札から飛び出したネジのような尻尾を持つ金属の球体状のクリボーこと《ジャンクリボー》が飛び出し、衝撃波を打ち抜きながら突き進み《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の土手っ腹を貫かん勢いで激突した。

 

「させん! 永続罠《ディメンション・ガーディアン》発動! 我のモンスター1体は破壊されなくなる! 無論、我が選ぶのは――《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》!!」

 

 しかし地下神殿の壁面に叩きつけられた《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》を覆う光の鎧により守られ、悔し気な《ジャンクリボー》が力尽きるように消えていく。

 

「です……が、《ジャンクリボー》に……よる『発動の無効化』は回避……できません」

 

「だとしても、《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の効果の発動が無効化されたことで『攻撃権の放棄』も無効化された――バトル!!」

 

 そうして《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の効果をなんとか回避した神崎だが――

 

「地縛神は相手の場に三邪神がいようともダイレクトアタックが可能だ! 行けッ!! Chacu(チャク) Challhua(チャルア)!!」

 

 回避したことで、新たな脅威――《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の宙からの突進がその身に迫る。

 

「相手の攻撃宣言時に……手札の《虹クリボー》の効果……を発動。自身を装備カード……とし、装備対……象の攻撃を封……じます」

 

 しかし、そんな《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の頭上にチョウチンアンコウよろしく、くっついた紫色の真ん丸な身体を持つ《虹クリボー》。

 

 やがて、そのまま額の虹色のプレートを目一杯光らせれば、《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の突撃がピタリと止まり、やる気を失ったように腹を上にしながら空中をプカプカと浮かぶ。

 

「クハハハハハハハ! 粘るなぁ……長引けば、長引く程に地獄が続くというのに、ご苦労なことだ」

 

 こうしてギリギリの延命を続ける神崎の必死さを冥界の王は高笑いと共に嗤いつつも、抜かりなく己が状況を見定める。

 

「だが、貴様のデッキに《ジャンクリボー》は後何体いる? 何時まで《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の効果を躱せるかな?」

 

 《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》の効果ダメージは毎ターン発動が可能であり、永続罠《ディメンション・ガーディアン》によって破壊が容易くないことも相まって防ぎ続けるのは難しいだろう。

 

 さらに《地縛神 Chacu(チャク) Challhua(チャルア)》が守備表示の際は相手のバトルフェイズをスキップする効果を得る為、戦闘での除去も難しくなる。

 

 文字通り、王手に差し掛かったといっても過言ではない。

 

「我はこれでターンエンド――貴様が神に殺されるのをじっくり眺めるとしよう」

 

 そうして残りのクリボーたちを攻撃表示のままにターンを終えた冥界の王。見え透いた罠ではあるが、見え透いているがゆえに意識せざるを得ない。

 

――此方を嘲りながらも一切手を緩める素振りを見せない……徹底しているな。

 

 そんな冥界の王の動きに対し、神崎は神罰に苛まれながらも頭を回す。今、考えることを止めれば倒れてしまいそうな程に、限界が近かった。

 

――《ジャンクリボー》の効果も使ってしまった以上、残りライフが13では……次は防げない。

 

 そして、それは神崎の身体に留まらずデッキの防御手段に対しても言える話だった。文字通り後がない。

 

「私……のターン、ドロー。スタンバイフェイズを終……え、メインフェイズ1へ」

 

 やがて神崎は震える手で引いたカードをデュエルディスクへとなんとか差し込む。

 

「永続魔法《ウィルスメール》を発……動。『ローズ・トークン』を選択……し、このターン直接攻撃権利……を得ます」

 

 それはいつぞやのモクバのデュエルの時に使用した永続魔法。

 

――ククク、何時ものダイレクトアタック狙いか。芸のないデッキだ。

 

 それの意味するところは一つ。冥界の王の伏せた罠カード《ディメンション・ウォール》へ対処しつつ、僅かばかりでも相手のライフを削っておく魂胆。

 

「バトル……フェイズへ」

 

――さぁ、来い。

 

「メイ……ンフェイズ2へ移行し……ます。そしてこの瞬間、永続魔法《ウィルスメール》の効……果を受けた『ローズ・トークン』は墓地へ……送られる」

 

 だが、莫大なライフを持つゆえの余裕を見せる冥界の王を余所にバトルが行われることはなく、『ローズ・トークン』の背中に張り付いた手紙の封筒からドクロマークが広がり、一輪の薔薇の最後を彩っていく。

 

――攻撃しない?

 

 やがて散った薔薇の残照が風に吹かれて飛んでいく中、不審がる冥界の王を余所に、神崎は手札から1枚のカードを引き抜いた。

 

――ようやくフィールドが空いた。

 

「魔……法カード……《死者蘇生》を発……動。墓地より、《プリーステス・オーム》を守備表示で特殊……召喚」

 

 そしてフィールドに昇るのは死者の眠りを暴く白きアンク。やがてその禁忌の光より降り立つのは――

 

「だが、貴様が新たにモンスターを呼んだことで、フィールド魔法《ブラック・ガーデン》と《邪神ドレッド・ルート》の効果により、攻撃力は八分の一だ!」

 

 長い灰色の髪を持つ黒づくめの魔女。目元は丸みを帯びた帽子に隠されるも、病的な白い肌から弧を描く口元は何処かぞっとする程に冷たい。

 

《プリーステス・オーム》 守備表示

星4 闇属性 魔法使い族

攻1700 守1600

攻212 守800

 

 やがて黒き茨に囚われた《プリーステス・オーム》は指を一つ鳴らした。

 

「還るといい」

 

 途端に、神崎のフィールドから激流の如き闇が冥界の王を呑み込み弾き飛ばす。

 

「ぐぉっ!? な、なにが……!?」

 

冥界の王LP:7900 → 7100 → 6300 → 5500 → 4700

 

「《プリーステス・オーム》の効……果です。闇属性モン……スターをリリースすること……で相手に800のダメージを……与えま……す」

 

「くっ……三邪神と『ローズ・トークン』を射出したことによるダメージか……!」

 

 やがて膝をついた冥界の王が、過去のデュエルで神崎が使用しなかった戦術の存在に苛立ち気に立ち上がり現状を理解する中、神崎は大きく息を吸った。

 

「ようやく……まともに息ができ……る」

 

――三邪神が本来の力……『神属性』であったなら、打てなかった手だ。

 

 三邪神によって苛まれたダメージがなくなった訳ではないが、それでも継続していた神罰がなくなったことは、神崎にとっては非常に大きい。

 

 

「だが、貴様のライフはたった13! 邪神の侵食が消えようとも、既に貴様のバトルフェイズは終わった! 次の我のターンを凌ぐ余力はあるまい!!」

 

 だとしても、未だ神崎の絶望的な状況は変わらぬと冥界の王が宣言する。なにせ神崎に残ったライフは13しかない。

 

 適当な効果ダメージを一度でも通せば一瞬の内に消し飛ぶだろう。

 

「次のターンを渡す気はない」

 

 しかし、散々後手を踏んだ神崎は「次」を与える気はないと強い言葉で己を奮い立たせ手札を切る。

 

「貴方のフィールドの《サクリボー》をリリースし、《壊星壊獣ジズキエル》を特殊召喚。フィールド魔法《ブラック・ガーデン》の効果を受け、私のフィールドに『ローズ・トークン』が特殊召喚される」

 

 やがて冥界の王のフィールドで雄叫びと共に現れる黒と黄の巨躯。

 

 その正体は鳥の上半身と蛇の胴体を併せ持ったような機械仕掛けの怪獣――《壊星壊獣ジズキエル》がフィールド魔法《ブラック・ガーデン》により己が身体に絡みつく茨へと苛立ちを向けるようにその巨体を震わせる。

 

《壊星壊獣ジズキエル》 攻撃表示

星10 光属性 機械族

攻3300 守2600

攻1650

 

 そしてそんな怪獣――いや、壊獣を養分とし、神崎のフィールドに一輪の赤い薔薇が咲いた。

 

『ローズ・トークン』 攻撃表示

星2 闇属性 植物族

攻800 守800

 

「リリースされた《サクリボー》の効果で1枚ドロー。そして《金華猫》を通常召喚。召喚時、墓地のレベル1――《サクリボー》を特殊召喚」

 

 そんな一輪の薔薇の隣に歩み出るのは、小さな白い猫。

 

 だが、その白い猫の影が大きく広がり、黒い猫の姿と化したと思えば、その影の中から――

 

《金華猫》 攻撃表示

星1 闇属性 獣族

攻 400 守 200

攻200

 

 背中にウジャトの瞳がついた《クリボー》に良く似た黒い毛玉こと《サクリボー》が飛び出した。

 

《サクリボー》 攻撃表示

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

攻150

 

「《プリーステス・オーム》の効果、闇属性――『ローズ・トークン』、《サクリボー》、《金華猫》の3体をリリースし、1体につき800のダメージを与える」

 

 そして自軍を焼き払いながら、打ち出された闇色の銃弾が冥界の王の身体を撃ち抜いていく。

 

冥界の王LP:4700 → 3900 → 3100 → 2300

 

「ぐぬぉっ!? だが、我のライフはまだ残る!」

 

 闇のデュエルによる連続ダメージを前にしても、なお残るライフを示す様に冥界の王は力強く佇み腕を横に振りつつ強気な姿勢を示す中――

 

「リリースされた《サクリボー》の効果で1枚ドロー。さらに魔法カード《貪欲な壺》を発動。墓地の5枚のカードをデッキに戻し2枚ドロー」

 

 欲深き壺が墓地に眠る死者を強引に引き釣り出してデッキへと戻した後、役目を終えたように断末魔と共に爆ぜて消える。

 

「フッ、精々逆転のカードが引けるように祈ることだ!」

 

「――引く必要はない。セットした魔法カード《クリボーを呼ぶ笛》を発動。デッキより《クリボー》を特殊召喚」

 

 そうして新たに引いた2枚のカードになど目もくれない神崎は、リバースカードから響く笛の音に誘われた《クリボー》へと1枚のカードをかざす。

 

《クリボー》 攻撃表示

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

攻150

 

「そして速攻魔法《増殖》を発動。《クリボー》をリリースし、可能な限り『クリボートークン』を特殊召喚」

 

 途端に、小さな爆発と共に爆ぜて分裂した4体の《クリボー》たちこと『クリボートークン』が神崎のフィールドを埋め尽くした。

 

『クリボートークン』×4 守備表示

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

攻150

 

 そんな彼らは当然「闇属性」――命を砲弾に変える魔女の眷属に相応しい。

 

「馬鹿……な……!?」

 

「《プリーステス・オーム》の効果で4体の『クリボートークン』をリリース」

 

 やがて全ての『クリボートークン』たちの身体が崩れ、闇色の弾丸に形成され直した後、敵対者を貫くべく魔弾と化した。

 

「またしてもぉぐぉぉぉおおっぉおおおおおっぉおぁああぁッ!?」

 

 そして冥界の王の断末魔が響く最中も飛来する弾丸が、その身体を抉り、腕を飛ばし、千年アイテムが一つ、また一つと地面を転がっていく。

 

冥界の王LP:2300 → → → → 0

 

 やがて7つの千年アイテムが地面に転がったと同時にライフが0となった冥界の王は、力尽きるように倒れ、最後にその身に埋め込まれた光のピラミッドが宙に投げだされた。

 

 

 

 

 

 

 

――削り……切れた。

 

 そうして神崎もまた内心に広がる安堵からか気が抜けたのか、力尽きるように倒れる。碌な受け身も取れず倒れたせいか鈍い音が鳴るが――

 

「……………………ァ」

 

――無理だ。起き上がれない。

 

 当の神崎は、腕はおろか、身体も何一つ上手く動かず、発声すら危うい。

 

 しかし神崎の視界の端で千切れ飛んだ冥界の王の腕についたデュエルディスクから落ちた三邪神のカードが、三幻神のカードが、光の粒子となって消えて行く光景に、満足気な笑みを零した。

 

――だが三邪神(三幻神)を還すべき場所へと還せたなら……良い……か。

 

 そこにあるのはある種の安堵感――己の不手際で望まぬ舞台へと上げられてしまった光と闇それぞれの三体の神を解放できた事実に神崎は内心で小さく思う。

 

 やはり三対の神(三幻神と三邪神)は、名もなきファラオにこそ相応しいのだと。

 

 

 

 

 やがて、そんな想いを余所に地面を転がった光のピラミッドが神崎の視界の端で止まる中、その光のピラミッドに付随した僅かに残った冥界の王の身体が口を開く。

 

「我の……負けか」

 

 それは、最後の言葉。

 

 準備に準備を重ねた計画も、最後の最後で打ち破られた。「あの時ああしていれば」なんて言い訳をする気は冥界の王にはなかった。

 

 

 そんなものは負け犬の遠吠えでしかない。

 

 

 そう、彼の計画は、完遂されなかった。

 

 

 

 

「果たしてそうかな?」

 

 だが、完遂できなかっただけだ。

 

 計画の骨の部分は、既に達成している。

 

 確固たる自負が見える冥界の王の言葉に対し、動かぬ身体で視線だけを向ける神崎が考えを巡らせるが、正直打つ手がなかった。

 

――? まだ、何か策があるのか……これ以上は、正直お手上げだ。

 

「フフフ、我は敗北を喫したが、貴様の勝利では終わらん。我という『個』が消えることで、貴様は赤き龍との戦いに未来永劫囚われる……ハハハ、貴様の願った安寧は決して手に入らぬ!」

 

 そう、デュエルに敗れたものの冥界の王は神崎の望みを奪って見せた。

 

 闇のゲームの敗者は闇に還るのが常――今の「冥界の王」としての意識は闇に還り消滅するが、それは同時にシグナー率いる赤き龍と戦う「冥界の王の立ち位置」に神崎が立つことを意味する。

 

 5000年周期で行われる、終わりのない戦乱に組み込まれたのだ。

 

 この先、平穏や安寧などとは無縁であろう。

 

 初めからこのデュエル――いや、()()に冥界の王の敗北はない。

 

 勝てば当然全てを得るが、負けても神崎の望みを全て奪い、憎き相手を地獄の底へと叩き落とせるのだ。

 

 そう、既に冥界の王の策は果たされていた。

 

「ククク、ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハっ!!」

 

 ゆえに冥界の王は嗤う。嗤い続ける。憎き男から全てを奪ってやったと。

 

 それを想えば代償に払った己が命の何と安いことか。

 

 冥界の王が最後に目にするのは己に屈辱の日々を味わわせた男の苦悶と恐怖と絶望に歪む顔。

 

 奪う者としての面目躍如であろう。

 

 

 

――なんだ。()()()()()か。

 

「そう……ですか……他……に貴方の……願いは……ありま……すか?」

 

 だが、神崎は作り物の笑顔を浮かべながら冥界の王の最後を看取らんとする。

 

 遺したい想いはないか? 託したい願いはないか? やり残した夢はないか? と尋ねるその顔に、絶望など何一つ見当たらない。

 

 そんな最後の最後まで何一つ己の思うようにならぬ相手に冥界の王は怒声を上げた。

 

「――何故、笑う! 憎くないのか! 我が!! 貴様から安寧を奪ったのだぞ!! 恐怖におののけ! 怨嗟の声を上げろ!! 絶望の只中に沈め!!」

 

 あらん限りに叫ぶ度に冥界の王の身体の崩壊が早まっていくが、腹の虫は全く以て収まらない。

 

 怨み事の一つでも零してみせろと煽る冥界の王だが――

 

「此方の都合……で、あなた方の在り……方を一方的に排して……いる私に、そんな資格は……ありま……せんよ」

 

 神崎は「己にそんな資格はない」と考えていた。なにせ、彼は完成された世界(本来の原作)に存在してはならない異物(バグ)

 

 

 排斥されるべき存在。

 

 

 たとえ、誰を何人救おうが、どれだけ世界の脅威とやらを退けようが、所詮は命惜しさに原作(好きだった世界)へ破壊と混乱をばら撒いている事実は変わらない。

 

 彼がこの世界(原作)にとっての不純物(転生者)である事実は決して変わらないのだ。

 

「最後の……願いは……あり……ますか?」

 

 ゆえに神崎に出来ることは出来得る限りの声を拾うことだけだった。それがただの自己満足であっても。

 

「……わぬ」

 

「すみませ……ん、もう一度……お願」

 

 

 身体が完全に崩壊する直前ゆえか、一段とか細くなった冥界の王へと再度問いかける神崎。

 

 

「願わぬ――願ってなどやるものか!! 我は願わぬ! 貴様から施されぬ! 我は冥界の王! 死を施すもの! 己が死すらも我が只中にある!!」

 

 しかし冥界の王は命を縮めてまで神崎の「それ」へと拒絶を示す。

 

 己の死は己だけのものだと言わんばかりに、突き放す冥界の王へ神崎は一度死んだ人間として自論を述べてみせる。

 

「誰にも……看取られず終わる……のは――」

 

 死の恐怖は抗えない程のものだ。

 

 だが、その最後を、己が手を、誰かに握って貰えるだけで、心がほんの僅かばかり軽くなるのだと。

 

 一人苦痛と恐怖と喪失の只中に死んだ男が、最後に願ったのはそんな『誰か』だったのだと。

 

「――寂しいですよ」

 

 救い亡きままに死んだ男の言葉を最後の合図とするように冥界の王の身体は塵と消え、光のピラミッドの爛々と輝いていた赤い宝玉の光が消え失せた。

 

 

 

 やがてカランと地下神殿の石の床に光のピラミッドが転がった無機質な音が響いた暫し後、先程まで冥界の王がいた場所を神崎がぼぅと眺めながら零す。

 

逝った(還った)……か」

 

――冥界の王(神に近しい存在)でも死ぬんだな。

 

 

 赤き龍と争い続け、何度倒されようとも決して死ぬことがなかった神の如き超常的な存在があっけなくこの世から消えた事実を漠然と受け止める神崎。

 

 

 デュエルの絶対性が如実に現れたと言えるだろう。

 

 

 そんな最中、神崎の意識がどんどん遠くなっていき、身体から力が抜けていくことを止められず、全身に水が沁み込むような喪失感が流れていく。

 

――これは拙いな。懐かしくも嫌な感覚だ……このままだと……

 

 やがてそれ()に危機感を覚えるも、思考は鈍化し続け、身体はピクリとも動かないまま、時間だけがいたずらに過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンクリ~」

 

 そんな間の抜けた鳴き声と共に黒い球体上の身体に黄金のアンクと小さな翼、そして文様が浮かぶクリボー《アンクリボー》が倒れ伏す神崎に向けて光を落とす。

 

「…………アンクリ? ……クリィ」

 

 だが、光を受けても伏したまま動かぬ神崎の周囲を不思議そうに眺めながら一回りした後、何かを悟ったような様子を見せた《アンクリボー》は神崎の背を小さな手で労わるように優しく撫でる。

 

「クリリ……」

 

 やがて沈痛な声を零しながら《アンクリボー》は己が還るべき場所へと煙のように消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして倒れたまま動かぬ神崎を白い腕が貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『神崎、客だ』

 

 頭の中に響いたトラゴエディアの声に神崎の意識が覚醒する。

 

 千年アイテムが散乱する中で倒れる神崎の姿は、何処か酔っ払いがなんか色々拾ってきたままに限界を迎え、爆睡した感が溢れるが、当の本人は未だ意識が覚束ないのか、寝ぼけ眼で周囲を見回すが――

 

「……………………? ――ん!? どういった方ですか」

 

 今、己がいる場所が地下神殿だと理解した途端、現状を一気に把握し、トラゴエディアとの通信へと意識を戻す。

 

――寝ていた? 今度こそダメかと思ったんだが……身体の方は、ダメージが抜け切っていないが、動けるくらいには回復し……た。うん、回復した。

 

『ガキの集まりと言ったところだろう』

 

 頭の中で目まぐるしく己の状態を確認していく神崎だが、トラゴエディアから伝えられた情報にピタリと内外共に動き止めた。

 

「子供……ですか」

 

――此処に所縁があるとすれば墓守の一族だが、子供の集まりはいなかった筈……

 

 なにせ神崎の原作知識の中に「墓守の一族が管理する地下神殿」に関わる「子供の集まり」などいない。

 

 そして、今の今まで墓守の関係の情報をアレコレ調べていた中にも同上である。

 

 まさに正体不明の集団の出現に、己の身体に起こった異変など脇に置かねばならぬ程に神崎の警戒心は一段と跳ね上がる。

 

「彼らはどんな様子ですか?」

 

――ん? カード? 《アンクリボー》……見たことのないカードだが、持っていた覚えは……いや、ないな。今は後にしておこう。

 

 やがて散らばった千年アイテムを一纏めに片付け、1枚の《アンクリボー》のカードを一先ずデッキに仕舞った神崎が、より詳細な情報を求めるが――

 

『今、消えたぞ』

 

「消えた?」

 

 

 それよりも先に神崎の背後にて、突如現れた少年少女の集まりが、地下神殿に並び立つ。

 

 

 その一団の中からエジプト風の白いシャツに緑のベスト風コートを羽織った青年が、歩を進める度に左側に細く纏めた紺の髪を揺らしながら、神崎へと指差し宣言した。

 

「欲に塗れた不届き者め! シン様の千年アイテムから離れろ!!」

 

 その口ぶりから神崎のことを知っている様子が見て取れるが――

 

 

――……………………誰?

 

 神崎からすれば、全く知らない人だった。

 

 

 

 

 






冥界の王、死す(と言うよりは代替わり?)


でも(闘いの儀編は)もうちょっとだけ続くんじゃよ。


そして原作のその後を描いた劇場版 THE() DARKSIDE(ダークサイド) OF(オブ) DIMENSIONS(ディメンションズ)
の時間軸より1年も早く来ちゃったあわてんぼうの○○ィ、お前ホント可愛いなぁ~(百済木軍団感)




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