マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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予告していた本編とは無関係なIF話になります。


アンケート結果を加味しつつ、頂いたリクエストの中から――

「バトルシティ編でのシチュエーションの変化」、

「原作陣 VS アクター」、

「神崎orアクターが全力全開で柵なくデュエルでぶつかり合う」、

「光落ちして欲しい」、

などの、アンケートの条件に合致したものを纏めるだけ、纏めてみました。


デュエルに関しては「遊戯VSアテム」の時のようにドロー描写などを省かせて頂いております。
(にも拘らず、この文章量ェ……)

舞台はバトルシティ編でのIF話となっております。


さぁ、受け取って貰おうか――このとっておきのファンサービスを!!





IF編 第?章 せめて幸せな夢を
第216話 IF話 ぶつかり合う魂


 

 

 時はバトルシティ――予選を終えたものが集うバトルシップにて、アクターは試合前にマリクを仕留める算段で動いていたが、マリクが遊戯たちと常に行動を共にしていた為、断念。

 

 ゆえに一瞬でも離れた隙を狙っていたのだが、まさかの第一試合に組み分けされた為、参加者とデュエルすることとなった。だが――

 

 

「俺はターンエンドだ」

 

 

城之内LP:1700

《時の魔術師》

《デンジャラスマシン TYPE-6》 《ラッキーパンチ》 《宮廷のしきたり》

VS

アクターLP:4000

《墓守の大神官》 《墓守の異能者》

《ネクロバレーの祭殿》 《魔法族の聖域》 伏せ×2

フィールド魔法《王家の眠る谷-ネクロバレー》

 

 

 いつもより目がどんよりした城之内がターンを終える中、互いの盤面差に堪らず本田は悔し気な声を漏らす。

 

「くそっ、《時の魔術師》のコンボでも駄目なのかよ!! 永続魔法《魔法族の聖域》を躱すには、魔法使い族がいるってのに、城之内のデッキには多分もういねぇぞ!?」

 

 永続魔法《魔法族の聖域》の効果で魔法使い族以外は「効果の発動」及び「攻撃」が1ターン遅れる関係上、戦士族・ドラゴン族の多い城之内は思うようなデュエルが出来ていなかった。

 

 《時の魔術師》の破壊効果も、相手の破壊耐性に阻まれ通らない。

 

 そんな本田へ孔雀舞は沈痛な表情で語る。

 

「いいえ、それより永続魔法《ネクロバレーの祭壇》のせいで『墓守モンスター』以外、特殊召喚できないのが痛いわ――今の城之内には逆転をかけたエースモンスターすら呼び出せない……!」

 

 そう、今回のアクターのデッキは徹底したロックデッキ。城之内のデッキのエース格以外の打点が不安定な点を突いたものだ。さらに――

 

「そうだ! 墓地に《ギャラクシー・サイクロン》が落ちてたよな! あれがありゃぁ――」

 

「駄目だぜ、本田くん――フィールド魔法《王家の眠る谷-ネクロバレー》がある限り、墓地のカードを活用することは出来ないんだ」

 

 本田の妙案も闇遊戯によって否定された。手札消費が荒いゆえに除去などの展開以外を墓地のカードに頼りがちな城之内の隙も徹底して突かれている。

 

 

 そんな四面楚歌な現実に、闇遊戯たちと共に立つ最近知り合った褐色肌の青年「ナム」は精一杯の声援を送った。

 

「頑張れー、城之内くーん!」

 

――所詮、あの男程度の実力では、アクターを倒すことなど出来る筈もなかったか。だが……

 

 しかし、そのナムの内心は何やら腹に抱えている様相を見せている。

 

 

「メインフェイズ1を終了し――」

 

「待って貰おうか」

 

 やがてデュエルのフィニッシュブローが贈られんとする中、観客席にて現れたスキンヘッドをローブで隠し、顔の半分に不可思議な文字を彫り込んだ乱入者の声が響いた。

 

「アイツは――マリク!!」

 

 その乱入者に御伽が「友人の仇だ」と睨むが、残念ながらリシドだ。「マリクの振りとしている」との注釈は付くが。

 

「よく聞け、アクターよ。既にその男は我が千年ロッドの力を受けた――この意味が分からぬお前ではあるまい」

 

「急に何言ってんだ、アイツ……?」

 

 そうして告げられるマリクの振りをしたリシド――もう面倒臭いので「リシド」と記すが――の言葉に、本田が首をかしげるが――

 

「待ちな! デュエルを妨害するような真似は、この俺様が許さねぇぜい!」

 

「なに、世間話をしに来ただけだ。あの男はこのデュエルに並々ならぬ決意を以て挑んでいる。それこそ――」

 

 モクバの警告を前に、リシドが堪えた様子はなく、スラスラと己が要件だけを手早く並べていく。

 

 

「――敗北すれば、失意のあまり身投げしかねない程の覚悟を、な」

 

「なっ!?」

 

 最後に聞き逃せぬ言葉を乗せて。

 

 

――フッ、それでいい。リシドよ。

 

 驚きの声を漏らす闇遊戯を見つつ、心中で満足気に嗤うナム。そう、ナムこそが本当の「マリク」であり、今の城之内を千年ロッドの力によって操っているのだ。

 

――裏世界最強だが何だか知らないが、イレギュラーは少ない方が良い。城之内程度の駒でヤツを狩れるのなら、戦果としては十分だ。

 

 そしてマリクたちを狙う邪魔者であるアクターを排除するべく、城之内の命をあげつらう。

 

 このデュエルでアクターが勝てば、城之内は飛行船より飛び降り、海の藻屑と化すだろう。

 

 

 

――まさか、マリクは……!

 

「待て、アクター! ヤツの千年ロッドには人を操る力がある!」

 

 そんな裏側を察した闇遊戯はアクターに向けて叫ぶが、アクターは闇遊戯たちの方すら見ない。

 

「テメェ! マリク! 城之内を解放しやがれ!!」

 

 やがて遅れて事態を把握した本田がリシドへ非難の声を上げるが、此方も聞く耳は持たず。

 

 

「バトルフェイズへ」

 

 そして無慈悲な宣告が響いた。

 

 

 

 一切のためらいも見えぬ声にナムは内心で焦りつつも――

 

――コイツ、正気か!? なら!!

 

「待ってくれ、アクター! 城之内くんを殺さないでくれ!!」

 

「ナムの言う通りよ! デュエルで人が死ぬなんて馬鹿げてるわ!!」

 

 アクターの罪悪感を煽るような発言を飛ばし、それに何も知らない杏子も続いた。

 

 そんな光景にリシドは「己が言えた義理ではないが」と奥歯を噛む。「サレンダーしろ」という選択を強いている訳だが、こうも躊躇なく殺しにいくとは彼も予想外だった。

 

――何故だ、アクター。お前が表の人間を殺すような真似を……何故。

 

「アクターよ、脅しだと思っているのなら浅はかであると言わざ――」

 

「《墓守の大神官》で《時の魔術師》を――」

 

「止めろ、アクター!! お前の実力ならデュエルを長引かせることもできる筈だ! その間に策を――」

 

 リシドと闇遊戯がそれぞれ制止の声を上げるが――

 

 

「――攻撃」

 

 

 無慈悲な決断は降され、《墓守の大神官》の杖から放たれたジャッカルの影が《時の魔術師》を呑み込み――

 

 

「――止めろぉおおおぉおお!!」

 

城之内を穿った。

 

城之内LP:1700 → 0

 

 そしてライフが尽きたと同時に、城之内は常軌を逸した迷いのなさで飛行船より身を投げる。

 

 咄嗟に闇遊戯や本田たちが手を取らんと駆け寄るが、間に合う訳もなく、城之内が消えた夜空に広がる雲海を眺めることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「そんな、お兄ちゃんが……!」

 

「見ちゃ駄目よ、静香ちゃん!」

 

 兄の投身自殺を眼の前で見ることになった静香の顔を己の方に抱きとめて逸らす孔雀舞だが、残酷な結末は変わらない。

 

 

「城之内くん!! 城之内くん!!」

 

「それがお前の選択か」

 

 雲海に向けて友の名を叫ぶ闇遊戯を余所にリシドは瞳を閉じて、マリク役に徹していた。今まで多くの命を奪ってきた身――今更、止まれる筈もない。

 

 

「うぅ……うわぁぁあああぁあああッ!! 俺の、俺のせいだ!! 俺の三千年前の因縁が!! 城之内くんを!!」

 

 膝をついて涙を流す闇遊戯の慟哭が響くが、誰も闇遊戯にかける言葉が見つからない。

 

「そんな、城之内さんが……!」

 

――ククク、予定とは違ったものの名もなきファラオを苦しめる材料には丁度いい。

 

 精々、ナムが内心でほくそ笑みながら嘆いて見せるばかりだ。

 

 

「そうだ! 下は海だろ!? なら城之内のヤツも――」

 

「無理だぜい。この高さじゃ、コンクリに落ちるのと変わりゃしない……」

 

 本田が藁にも縋る思いで可能性を問うが、それはモクバによって断ち切られる中、杏子が堪らず叫んだ。

 

「そんな、嘘よ!! だって……! だって……さっきまで私たちと普通に話してたのよ! それが、どうして……!」

 

 先程まで、バトルシティで目標に向けて切磋琢磨していた城之内が、今はいない。

 

 第三者の悪意によって、その命は驚く程に呆気なく消え去った。

 

 

 その現実に堪え切れぬように涙ながらに嗚咽を漏らし始める杏子を余所に本田が怒声を上げる。

 

「アクター!! テメェ!! なんで、あの時攻撃しちまったんだ!!」

 

 八つ当たりだ。本田とて理解している。

 

 しかし考えてしまうのだ。あの時攻撃しなければ、ひょっとすれば城之内が助かる道があったのではないかと。

 

 アクターがワザと負ければ、城之内は十分に生きられたじゃないか、と。

 

 だが、そんな感情の乗った本田の視線の先には――

 

「……いねぇ? アイツ、どこ行きやがった!! 牛尾! 見てねぇか!!」

 

 いる筈の相手がおらず、「罪悪感ゆえに逃げたのか」と視界に入った牛尾に行き先を問うが――

 

「上だ」

 

「上? こんな時になに訳の分からねぇこと言ってんだ! それに牛尾! お前もなんだよ! 城之内が死んじまったんだぞ! なのに、なに平然としてやがんだ!!」

 

 牛尾が動じることなく訳の分からないことを言う次第に、本田も思わず牛尾の胸倉を掴んで叫ぶ。

 

 過去とのケジメを付け、互いに友だと思っていたゆえに、本田にはこの無反応さが許せなかった。

 

 

 だが、此処でカシャンと金属が引っ掛かるような音と共に、デュエル場に影が落ちる。

 

 その影に吸い寄せられるように、この場の一同が空を見上げれば――

 

「――城之内くん!!」

 

「お兄ちゃん!!」

 

 ワイヤー片手に城之内を担ぎながら空を舞うアクターの姿が、彼らの視界に映った。

 

 

 そして音もなく降り立ったアクターが、グッタリした城之内を闇遊戯たちに託し――

 

「怪我はない。洗脳の有無が不明の為、眠らせた――後は其方で対応しろ」

 

「磯野!!」

 

「ハッ!!」

 

 そうして闇遊戯たちが感動の再会をする中、アクターの機械的な対応にモクバと磯野が応対。ストレッチャーに拘束された城之内が運び出されていき、静香や孔雀舞たちが同行。

 

 やがてアクターは周囲の視線など気にした様子もなく、壁に背を預けて沈黙を守る。

 

「飛び降りて戻ってくるたぁ……随分と派手なことしたねぇ、お前さんも」

 

――無視かよ。

 

 それは牛尾の軽口に対しても、無反応を貫き、

 

「飛び降り……た? 城之内を助ける為に?」

 

 その牛尾の発言から、アクターの行動の真意を理解した本田が、謝罪を告げようとするも――

 

「お、おい、アンタ! さっきはすまねぇ!! 何も知らねぇで、アンタにヒデェこと言っちま――」

 

「海馬 モクバ――大会の進行を」

 

――こっちも無視かよ。相変わらずだねぇ……

 

 それを無視してモクバへ大会進行を急かすアクター。徹底して他者との関わりを排するスタンスが見て取れる。

 

「お、おう、アルティメット・ビンゴ・マシーン! GO!!」

 

 やがてアルティメット・ビンゴ・マシーンによって第二回戦の組み合わせが発表されるが――

 

 

 

「第二試合は、ナムVSマリク!」

 

 

 

――あっ

 

――えっ?

 

――マリク様、私は一体どうすれば……

 

 アクター、マリク、リシドの三名がピタリと固まった。

 

 事情を知る人間からすれば、頭を抱える他ない組み合わせである。確率が低いゆえにマリクたちも除外していた最悪の事態がグールズ一味に襲い掛かる――これが因果応報というべき代物か。

 

「ナム! 棄権しろ! アイツはヤベェ! デュエルしちゃダメだ!!」

 

 やがて無反応なアクターにもう一度頭を下げた後、本田はナムへと駆け寄り、肩を掴んで説得を始める。

 

 本田たちはナムと知り合ったばかりだが、友が死地に向かう様をどうして放って置けようか。

 

 しかし、ナムは「城之内くんの分も、僕が闘うよ!」とデュエルへ望み、数ターンが経過。その結果――

 

 

 

ナムLP:300

《豪雨の結界像》

《補給部隊》×2 《神の恵み》 《ディフェンド・スライム》

VS

マリク(リシド)LP:4000

《聖獣セルケト》 《アポピスの化身》 《カース・オブ・スタチュー》 《苦文様の土蔵》

《ディメンション・ガーディアン》 《王家の神殿》 《宮廷のしきたり》 伏せ×2

 

 

 ナムがフルボッコにされていた。流石はグールズの首領マリク(リシド)――その辺のデュエリスト(ということになっている)であろうナムなど敵ではない。

 

 これこそがグールズを取りまとめる首領としての実力。

 

「やっぱり無茶だったのよ! お願い、ナムくん! これ以上、無理しないで!!」

 

「そうだぜ、ナム! もう十分だ! お前の城之内の仇討にかけた想いは伝わってるからよ! サレンダーしろ! 城之内だって、ダチが死んじまうような結果は望んでねぇ!!」

 

 杏子と本田が「これ以上、友人が傷ついて欲しくない」とナムを説得するも、ナムは頑なにデュエルの続行を決断。

 

 そして、この場の誰もが、「これがマリク(リシド)の実力……! ナムの腕じゃ……」と思っている中、通信機越しのリシドの声が、ナムの通信機へ届く。

 

『マリク様、今からでも私が手を抜きますので――』

 

『余計なことはするな、リシド!! こうなっては仕方がない。僕がグールズの首領である証明を立てる!!』

 

『まさか、神のカードを!?』

 

 そこでは、ナムが「今こそ己の正体を明かす」とリシドに告げていた。

 

 大会を勝ち進み闇遊戯への復讐(逆恨み)を果たす為には、どのみちマリクが勝ち上がらなければならない以上、もはや「マリクの振りをしたリシド」を続けることは叶わないのだ。

 

 

 断じて、周囲が見る双方のデュエルの実力が「リシド > マリク」の図式だったことに苛立ったからではない。墓守の誇りに誓って違うのだ。嘘じゃない。

 

 

「このスタンバイフェイズに2体の《リバイバルスライム》は復活する! 再生しろ、《リバイバルスライム》!!」

 

 やがて、マリクの覚悟に応えるようにフィールドに飛び散っていた水滴が集まっていき、ムンクの叫びのような表情を浮かべるスライムとなって、流体状の身体が浮かぶ。

 

《リバイバルスライム》×2  守備表示

星4 水属性 水族

攻1500 守 500

 

「そして、この2体と《豪雨の結界像》を贄に降臨せよ、『ラーの翼神竜』!! ラーのステータスは贄に捧げたモンスターのそれぞれ数値の合計となる!!」

 

 そうして魚などの水産生物たちを纏めた氷像《豪雨の結界像》と《リバイバルスライム》が炎に呑まれた先から、黄金に輝き太陽の如き球体が現れる。

 

 やがて音を立て展開した黄金の太陽はグリフォンの如き姿を持つ神――三幻神の最高位たる威光をその身の輝きを以て示した。

 

『ラーの翼神竜』 攻撃表示

星10 神属性 幻神獣族

攻 ? 守 ?

攻4000 守2000

 

 

 そんな三幻神の一柱『ラーの翼神竜』の出現にオーディエンスはざわめき立つ。

 

「なんで、ナムの奴が神のカードを……!?」

 

「まさか、貴様――」

 

 呆然と呟く本田を余所に、闇遊戯が瞬時にその意味を理解した様子を見たマリクは満足気に叫んだ。

 

「そうだ、名もなきファラオよ! 僕こそがグールズの首領! 最高位の三幻神を従える者!」

 

「お前が……お前が城之内くんや、パンドラをあんな目に……!!」

 

 そして闇遊戯の怒りが籠った視線に晒される中――

 

「なら、あのマリクは偽物なのかよ?」

 

「つまり、試合の組み合わせでグールズ同士がぶつかっちまった訳だな。しかし、いってぇ何でこんなことを……」

 

 本田と牛尾が、リシドが「マリクの振り」をしていた謎に頭を悩ませる。

 

「…………なんて言うか、運のない人たちね……」

 

「黙れ!!」

 

 しかし、その思案は、杏子の呟きに怒り心頭な反応を見せたマリクの声によって遮られた。

 

「……ここで魔法カード《融合派兵》を発動! エクストラデッキの《轟きの大海蛇》を公開することで、そこに記されたモンスター1体をデッキから特殊召喚! 来い、《ひょうすべ》! そして速攻魔法《地獄の暴走召喚》を発動し、合計3体展開!」

 

 そして赤黒い色をした巨大なウミヘビの影がナムの背後にチラと見えた後、地面から水飛沫と共に、三つの影が現れる。

 

 それは速攻魔法《地獄の暴走召喚》も加味され、呼び出された緑の甲羅に青い体表を持つ河童が、3体同時にロン毛の金髪をファサッとしながらキメ顔を見せた。

 

《ひょうすべ》×3 攻撃表示

星4 水属性 水族

攻1500 守 900

 

「まだだ! 魔法カード《サルベージ》を発動! 攻撃力1500以下の水属性2体――《ヒューマノイド・スライム》と《沼地の魔獣王》を回収! そして魔法カード《融合》発動し、この2体を素材に融合!!」

 

 さらに吊り上げられた2枚のカード――歪な人型のスライムと、緑のヘドロの化け物が空の渦に呑まれれば――

 

「融合召喚!! 《ヒューマノイド・ドレイク》!!」

 

 全身がスライムの流動的な身体で構成された、歪なドラゴンが、声もなく空にて不気味に佇む。

 

《ヒューマノイド・ドレイク》 攻撃表示

星7 水属性 水族

攻2200 守2000

 

「今こそ見るがいい! ラーの力を! 自身以外の自分フィールドのモンスターを全て贄に捧げ、その攻守の数値分、パワーアップ!!」

 

 だが、此処でマリクのフィールドの全てモンスターたちは全て炎に包まれ、『ラーの翼神竜』に吸い込まれて行き、黄金の太陽神の身体に溢れんばかりの威容が宿った。

 

 

『ラーの翼神竜』

攻4500 守2400

攻1万700 守7600

 

「バトル! 神に一切の小細工は無意味だ! 行け、『ラーの翼神竜』! ゴッド・ブレイズ・キャノン!!」

 

 やがて流れるように『ラーの翼神竜』から放たれた球体状の炎がリシドのモンスターを穿ち、その炎を術者へと届けんと猛り狂う。

 

「ぐぅぁぁぁああぁあああッ!!」

 

――馬鹿な!? 衝撃が実体化して……!? 拙い、今、私が倒れれば……マリク様に潜む、あの人格が………………

 

 だが、その神の一撃はリシドの予想に反し、実際のダメージとなって襲い掛かり、その精神ごと焼き尽くす勢いで燃え盛った。

 

 

リシドLP:4000 → 0

 

 

 そうして倒れたリシドを余所に、「良い演技だ」とマリクは己が力を誇り、余裕を見せてみせる。

 

「どうだ、名もなきファラオよ! この絶対なる神の力を! 三幻神の最高位たる威光をぉぐぁおぉうぐぉぁああああ!!」

 

 のだが、速攻でその余裕は崩れた。

 

「今度はなんだ!?」

 

「ナムくんが――じゃなくてマリクが苦しみ始めたわ!?」

 

「一体なにが起こってやがるんだ……!?」

 

 闇遊戯、杏子、本田が突如として苦しみだしたマリクの姿に、戸惑いを見せる中――

 

「フッフッフ……やっと出てこられた。まさかこんな形になるとはな……我が宿主ながら何て間抜けを晒してやがる」

 

 髪が逆立ち血管を浮かばせた顔となったマリクこと、闇マリクが現れた。

 

「貴様は!?」

 

「俺はこいつから生まれたもう一人の人格ってヤツさ――主人格サマの怨み辛みという闇を一心に受けてな。だが、俺はコイツと違って闇が大好きでねぇ」

 

 闇遊戯の疑問に答える闇マリクの言葉通り、この「闇マリク」はマリクの負の部分が詰まったもう一つの人格――いわゆる二重人格だ。

 

 リシドの顔の封印によって封じられていたが、巡り合わせの悪さから、そのリシドをマリクが瀕死に追い込んでしまった為、人格のパワーバランスが崩れ、闇マリクが現れたのである。

 

「まさか貴様がグールズを!!」

 

「いや、そいつは普通に主人格サマの所業さ。言っただろう? 『やっと出てこられた』ってなぁ、ククク……」

 

「なら、さっさとマリクを戻しな! 俺はアイツに友を傷つけられた借りがある!!」

 

 そうして問うた詳細に「グールズの所業はマリクが自発的に行った」と把握した闇遊戯は、「闇マリクに用はない」と叫ぶも――

 

「だったら、俺をデュエルで――『闇のデュエル』で倒して見せな! 出来ればの話だがなァ! アハハハハ!!」

 

「貴様……!」

 

 全く取り合おうとしない闇マリクの嘲笑に怒りを募らせる闇遊戯。

 

 

「待て、遊戯。どのみち大会が進めばデュエルする機会など幾らでもある――もっとも、貴様が勝ち残ればの話だがな。貴様は神の力を見せ過ぎた」

 

「ククク、『見せ過ぎた』だァ? お前たちは知らないようだな、主人格サマすら知らない『ラーの翼神竜』の真の力を!! 今からでも城之内の後を追わせてやっても良いんだぜぇ? アハハハ!」

 

 だが、その闇遊戯の怒りは海馬によって制されるも、闇マリクは嘲笑に嘲笑を重ねるばかり。

 

 

 そうして、闇マリクの出現というイレギュラーがあるも、リシドのガードにアクターが立った為、闇マリクも動きを見せぬまま、後の大会進行がつつがなく行われていく。

 

 

 やがて遊戯VS夜行と海馬VSリッチーが終了し、勝ち抜いた遊戯と海馬を合わせた面々は、日を跨ぎ、新たな舞台はBIG5の《機械軍曹》の人こと大田の愛する工場島――アルカトラズに移った。

 

 

 そして、予選から選りすぐられたその4名のデュエリストの行く末を決めるトーナメントがなされる。

 

 だが、その組み分けを決めるのはクジではなく、デュエルだ。

 

 

 そう、バトルロイヤルルールにて、4名のデュエリスト全員でしのぎを削り合い、負けた者からトーナメントの席が埋まっていくシステム。

 

 

 この場は相手の手の内を探る場でもある――まさに前哨戦に相応しい舞台だった。

 

 

 そして色々あってデュエルが始まり、闇マリク → アクター → 海馬 → 遊戯の順で皆が最初の1ターンを終えた頃――

 

闇マリクLP:4000

(ゴッド)スライム》

《暗黒の扉》 伏せ×2

VS

アクターLP:4000

伏せ×3

VS

海馬LP:4000

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)

伏せ×2

VS

遊戯LP:4000

《ブラック・マジシャン》 《ブラック・マジシャン・ガール》

伏せ×2

 

 こんな具合で、それぞれのエース格モンスターを呼び出した(1人呼び出していないが)ところで、遊戯のエンド宣言が成され、闇マリクが己の手札の1枚をニタニタ眺めながら、最初の獲物を物色するようにデッキに手をかけた。

 

「なら、オレのタ――」

 

「そのエンド時に速攻魔法《破壊剣士融合》を発動。《バスター・ブレイダー》を素材とする融合モンスター1体を融合召喚――その際、相手フィールドのモンスターを融合素材とすることが可能」

 

 すると、遊戯の《ブラック・マジシャン》を何処からともなく飛来した巨大な一振りの大剣が貫き、《ブラック・マジシャン》の身体はアクターの手札へ引きずり込まれて行く。

 

「手札の《バスター・ブレイダー》と武藤 遊戯のフィールドの《ブラック・マジシャン》を融合し、《超魔導剣士ブラック・パラディン》を融合召喚。相手フィールド・墓地のドラゴン族1体につき500攻撃力が上昇」

 

 そうしてアクターのフィールドにて竜殺しの剣士の鎧を組み込まれた黒き魔術師だった魔導剣士は、薙刀状に変質した杖をかつての主に向ける結果となった。

 

 

《超魔導戦士ブラック・パラディン》 攻撃表示

星 闇属性 魔法使い族

攻2900 守2400

攻4900

 

 

「ククク……遊戯ぃ、折角のエースモンスターがいなくなっちまったなぁ、フハハ! なら今度こそオレのターンだ! ドロー!!」

 

 因縁浅からぬ遊戯のエースたる《ブラック・マジシャン》が消えた事実に気分を良くしながら今度こそカードを引いた闇マリク。そして早速――

 

「オレは魔法カード《死者蘇生》を発動! 墓地より呼び出すのは当然、『ラーの翼神竜』!!」

 

 己が神を呼ぶべく、闇マリクの頭上に白きアンクが浮かび上がった。

 

 此度の相手は、デュエリストとして一線級の遊戯と海馬の2人に加え、表のマリクの記憶から「なんか強いらしい」と評判のアクター。

 

 神の遊び相手に相応しいとの判断。

 

 そうして吹き荒れる炎の中から、絶対的な畏怖と言う名のプレッシャーをばら撒きつつ金色の太陽神が現れんとする姿に、闇マリクは悠々と神の力を語る。

 

「そして『ラーの翼神竜』はオレのライフを糧とし、敵全てを焼き尽くし破壊! 更にライフを糧とし、その攻撃力を高める!」

 

「なんだと!?」

 

「まさにワンターンキル……」

 

「さぁ、神の最初の犠牲者は誰になるかなぁ? アハハハハ!!」

 

「チェーンして《超魔導戦士ブラック・パラディン》の効果。手札を1枚捨てることで、魔法カードの発動を無効にし、破壊する」

 

 だが、闇遊戯と海馬のリアクションに満足気な闇マリクを余所に神を呼び覚ます白きアンクは《超魔導戦士ブラック・パラディン》の杖から放たれた波動によって、輝きを失っていくと同時に、ひび割れ始めた。

 

「チッ、うっとうしい小細工を――だが、そいつで防げるのは魔法のみ!」

 

 そんな神の降臨を妨げる者――アクターへ闇マリクは小さく舌打ちするが、すぐさま頬が裂けんばかりに笑みを浮かべ、二の矢を放つ。

 

「チェーンして永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! 神は墓地より舞い戻る――来たれ、『ラーの翼神竜』!!」

 

 そう、闇マリクのデッキは神の高速召喚を突き詰めたデッキ。

 

 どんな状況でも、『ラーの翼神竜』の破壊効果を放ち、己がライフを神の攻撃力に変換してのワンショットキルを以て、獲物がもがく様を味わうのだ。

 

「チェーンして永続罠《王宮のお触れ》を発動。このカードが存在する限り、フィールドの全ての罠カードの効果は無効化される」

 

「ならば、チェーンして2枚目の永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! これで神は――」

 

「チェーンして手札の《D.D.クロウ》を墓地に送り、墓地のカード1枚を除外する――『ラーの翼神竜』を除外」

 

 墓地より、神は舞い戻――――――らない。

 

 《D.D.クロウ》の「カー」とカラス的な声が虚しく木霊する。

 

「ぁ、ぁりぇなぃ……」

 

 その事実に、闇マリクは表情を焦りの様相に歪めながら、喉から絞り出すように声を漏らした。

 

 そう、先程説明した通り、闇マリクのデッキは「神の高速召喚」を主戦術としている。

 

 つまり神を呼べなければ、『ラーの翼神竜』の為のライフ回復ギミックと、自身の嗜虐趣味を反映させた小粒のロックバーンが精々――それに加え、神の復活の為に手札を消費した身では、それらの手も怪しいところだろう。

 

 

「ふぅん、随分と無様を晒しているようだな」

 

――やはりヤツも神封じの策を用意していたか。

 

 そうして呆然自失の様子の闇マリクを海馬は鼻で嗤うが、その意識はアクターへと向けられていた。

 

 

 裏世界最強と言われたデュエリスト――アクター。

 

 だが、その本質は裏世界「限定」の最強なのだと。周到に策と準備を弄し、相手の全てを調べ上げた上で、確実に勝てる機会を用意してから戦いに挑む。

 

 それゆえの無敗。

 

 様々な柵のある表では発揮できぬ強さを持つ者――それが海馬の中のアクターというデュエリストの評価だった。微妙に違うけどな。

 

 

 しかし、その辺りの事情に疎い闇遊戯からすれば、純粋な技量だけがその眼に映る。

 

――アクター……噂では対戦相手に合わせたデッキを扱うデュエリストのことだったが、神のカード相手に、こうも……

 

 

 

 

 

 

――融合素材を二人が揃えてくれて助かった……それにしても、手札を使い過ぎたな……まぁ、闇マリクさえ倒せれば良いか。

 

 とはいえ、当のアクターは、遊戯が《ブラック・マジシャン》を呼び出していなければ、今頃は神の炎に焼かれてイワークしていたことだろう事実に内心でガクブルと震えるが、外面は相変わらずの威圧感タップリな雰囲気である。

 

 

 そんな三者三様の心模様を余所に、闇マリクはやはりと言うべきか荒ぶっていた。

 

――何故だ……何故こうも俺の戦術をピンポイントで対策できる! 主人格サマはおろか、姉上サマすら知らないラーの効果なんだぞ!!

 

 何をどう考えても、初見殺し――なのにタネは全て割れている。原作知識のなんとエゲツのないことか。

 

 マリクが鮮やかな自爆を決めたお陰で折角、表に出て来られたと言うのに周囲には「ヤベェのしかいねぇ」のまさに四面楚歌。

 

 頼みの綱の『ラーの翼神竜』への信頼もつい先ほどぶっ壊れた。

 

「ふぅん、どうした――貴様のターンだぞ。最高神の力とやらを見せるんじゃなかったのか?」

 

「ハッ、ほざいてな! 《(ゴッド)スライム》を守備表示に変更し、ターンエンド!」

 

 やがて海馬の軽口を鼻で嗤い返したマリクは、自身のフィールドの《オベリスクの巨神兵》の形をした巨大なスライムへ指示を出し、己を守らせるように前に立たせた。

 

(ゴッド)スライム》 攻撃表示 → 守備表示

攻3000 → 守3000

 

――焦るな、オレのフィールドには戦闘で破壊されない不死の《(ゴッド)スライム》がいる。なんとかヤツのモンスターを破壊しなければ……

 

 そうして闇マリクは現状を把握し、己を鼓舞していく。自軍はそう悪い訳ではない。

 

 攻守3000の《(ゴッド)スライム》は戦闘では破壊されない、まさに鉄壁の守り。

 

 そしてバトルロイヤルである事実を鑑みれば、アクターの魔法封じは他のプレイヤーにとっても厄介だ――つまり、闇マリクよりも先に遊戯や海馬が処理する公算が高い。

 

――ククク、この屈辱は倍にして返してやらないとなぁ……神の最初の贄はヤツだ!!

 

 やがて、次ターンこそ神を降臨させると息巻く闇マリクを余所に――

 

闇マリクLP:4000

(ゴッド)スライム》

《暗黒の扉》 永続罠《リビングデッドの呼び声》×2

VS

アクターLP:4000

《超魔導戦士ブラック・パラディン》

《王宮のお触れ》 伏せ×1

VS

海馬LP:4000

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)

伏せ×2

VS

遊戯LP:4000

《ブラック・マジシャン・ガール》

伏せ×2

 

「私のターン、ドロー」

 

 カードを引いたアクターは、手札補充を済ませた後、海馬の《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》を指さし、カードを発動させる。

 

「速攻魔法《破壊剣士融合》を発動。手札の《バスター・ブレイダー》と海馬 瀬人の《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》を融合し、《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》を融合召喚。このカードの攻・守は相手フィールド・墓地のドラゴン族1体につき1000上昇」

 

 すると《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》の身体が光となって《バスター・ブレイダー》を包み込んでいき、その全身の黒き鎧が、《青眼の白龍》の白を多分に含んだものと化す。

 

 更にはその愛刀も白き甲殻で補強された姿に、満足気に肩に担いだ。

 

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》 攻撃表示

星8 光属性 戦士族

攻2800 守2500

攻6800 守6500

 

「貴様、俺のアルティメットを……!!」

 

 その己が魂のカードの力が、相手の元に取り込まれた事実に歯噛みする海馬を、闇マリクは内心で嗤う。

 

――ククク、争え争え、その隙にオレは再び神降臨の手筈を整えておくとするぜ。

 

「バトルフェイズへ移行。《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》で《(ゴッド)スライム》を攻撃」

 

 だが、そんなことを考えていたせいか《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》がアクターの声と共に闇マリクの元へと襲来し、大剣を振り上げた。

 

「無駄だ! 《(ゴッド)スライム》は不死のモンスター! バトルでは破壊されない!!」

 

「《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》は守備モンスターを攻撃した際、攻撃力が相手の守備力を上回っていた場合、貫通ダメージを与える」

 

「チッ、3800のダメージか……だが、永続魔法《暗黒の扉》により攻撃できるのは1体だけ――ヘハハ、この痛みは後でしっかりと返させて貰うぜ、ラーの不死鳥の舞がなぁ」

 

 そうして《(ゴッド)スライム》に振り下ろされる《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》の大剣を忌々し気に眺めていた闇マリク。

 

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》

攻6800 守6500

攻1万800 守1万500

 

「――!?」

 

 だが、急に《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》の大剣が巨大化したことで、驚愕に目を見開く羽目になった。

 

「馬鹿な!? 一体なにが――」

 

「ふぅん、俺はヤツの攻撃宣言時に速攻魔法《手札断殺》を発動させて貰った。これで全てのプレイヤーは手札を2枚捨て、2枚ドローする」

 

 状況を把握できぬ闇マリクへ、海馬が発動した1枚のカードをかざし説明する。それは唯の手札交換カード。

 

 そう、全てのプレイヤーの手札の2枚が墓地に送られた。

 

「俺は2枚のドラゴン族カードを墓地に送った。この意味が分かるか?」

 

「ま、まさか、遊戯のヤツも!?」

 

「ああ、俺も手札のドラゴン族《砦を守る翼竜》と《カース・オブ・ドラゴン》を墓地に送らせて貰ったぜ」

 

 遊戯と海馬の手札から2枚のドラゴン族モンスターが墓地に送られた――この意味が理解できぬ程、闇マリクは耄碌してなどいない。

 

「つ、つまり墓地にドラゴン族が4枚増えたことで、4000のパワーアップが果た――」

 

 だが無情にも《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》の大剣は《(ゴッド)スライム》を切り裂き、巨大な衝撃波が闇マリクを打ち抜いた。

 

「――ば、ばかなぁぁあぁぁあ!!」

 

闇マリクLP:4000 → 0

 

 

 早々に1人のデュエリストが脱落したバトルロイヤルだが、勝負は此処からだと海馬は思案する。

 

――これでマリクは次に脱落したものと戦うことになる。当初の予定通り、遊戯の神を狙うのも悪くはないが……みすみすヤツに、アクターに『ラーの翼神竜』を渡すことになるのは面白くない。

 

 そう、バトルロイヤルの駆け引きは此処からが本番。

 

 次に脱落したものが闇マリクとデュエルすることになる。つまり、対戦の組み合わせを操作できる絶好の立ち位置を得たのだ。

 

 遊戯を倒して2体の神を得る道を取るか、それともアクターに神を渡さぬ道を取るかの2択。

 

――ふぅん、我が宿命のライバルである遊戯と、今の今まで表舞台に決して姿を現さなかったレアモノ……どうしたものか。

 

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へ――永続魔法《遮攻カーテン》を発動し、カードを3枚セット。ターンエンド」

 

 

――どうしよう。実質3 VS 1だったとはいえ思ったよりも早くに闇人格のマリクが脱落した……このままサレンダーして、早々に終わらせ……いや、待て。

 

 

 そうして悩む海馬の思惑を余所に、当のアクターは戦う気皆無だった――かに思えば、今の状況を再度考え直した時、奇跡的な状態であることにアクターは気付く。

 

 

――私が負けるか、2人のどちらかのライフが0になる前に、私がサレンダーすれば、このデュエルの途中経過がどうなっても問題ないのでは?

 

 

 原作への配慮をしつつ、夢の舞台へ一時ばかり上がれるまたとない機会が訪れていた。

 

 

 闇遊戯と海馬――この2人の伝説のデュエリストと何の柵もなく、全力でデュエルできる機会。

 

 

 この機会を果たしてアクターは――いや、神崎はどう扱うのか。

 

 

マリクLP:0 脱落

(ゴッド)スライム》

《暗黒の扉》 《リビングデッドの呼び声》×2

VS

アクターLP:4000

《超魔導戦士ブラック・パラディン》 《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》

《王宮のお触れ》 《遮攻カーテン》 伏せ×3

VS

海馬LP:4000

伏せ×1

VS

遊戯LP:4000

《ブラック・マジシャン・ガール》

伏せ×2

 

 

 そんな思惑が絡み合う中、闇遊戯だけは進むべき方向を明確に定めていた。

 

――マリク! 貴様の闇人格を打ち倒した後は、城之内くんたちへの非道を償って貰うぜ!!

 

「海馬、悪いが俺は――」

 

「少し黙れ、遊戯」

 

「海馬?」

 

 それは友の為――だが、その決意を示す前に、海馬が遮った。

 

「どうせ貴様のことだ。あの凡骨の『仇討ち』などとマリクとの勝負に向かいたいのだろうが――」

 

 闇遊戯の感情は海馬も理解できる。もしモクバが同じような状況に陥った場合は何を置いても報復に走るだろう。

 

 しかし、それと同時に理解している。

 

「己から負けに行くようなデュエリストが! デュエルキングに至れるなどと思うな!!」

 

 モクバが「自分が原因で海馬がワザと負ける」ことを知れば、どれだけ傷つくかということを。

 

 ゆえに海馬は叫び、宣言するのだ。

 

「敗れ散って行った者たちの屍を踏み上げ、高みへと至るのが俺たち勝者の義務!!」

 

 デュエリストとしてあるべき姿を。モクバに、遊戯に――そして今はおらぬ城之内に。

 

「くだらん計略は止めだ! 俺は、俺の全力を以て、この場の全員を叩き伏せる!!」

 

 そうして「らしくなかった」と己が策を切り捨てた海馬はデッキに手をかけ――

 

「遊戯! 貴様もデュエリストならば、応えて見せろ!!」

 

「海馬……」

 

「俺のターン! ドロー!!」

 

 カードを引く。そして《超魔導剣士ブラック・パラディン》の魔法封じを墓地の罠カード《ブレイクスルー・スキル》によって永続罠《王宮のお触れ》の罠カード封じを躱しながら無力化し、

 

 ついでに目障りだった闇マリクの置き土産――永続魔法《暗黒の扉》による攻撃制限も破壊した海馬は――

 

 

 低レベルながら5体のモンスターを並べ、()()()とする。

 

「3体の贄を捧げ、現れろ『オベリスクの巨神兵』!!」

 

 そして現れるのは海馬が従える青き巨人の如き神――『オベリスクの巨神兵』が大地を砕きながら現れ、左右の拳を力強く握って見せる姿。

 

『オベリスクの巨神兵』 攻撃表示

星10 神属性 幻神獣族

攻4000 守4000

 

「神の力を見るがいい!! 2体の贄を捧げ、『オベリスクの巨神兵』の効果発動!! ソウル・エナジーMAX!!」

 

 そうしてその両拳で2体の《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》を拳で砕いた『オベリスクの巨神兵』の両手に迸る強大なエネルギーが――

 

「相手モンスターを全て破壊し、プレイヤー1人に4000のダメージを与える!! 狙いは貴様だ、アクター!! ゴッド・ハンド・インパクト!!」

 

「速攻魔法《神秘の中華鍋》発動。《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》をリリースし、その攻撃力分のライフを回復」

 

 フィールドのモンスター諸共、アクターのライフを消し飛ばさんとするが、1万4800もの攻撃力を持つ《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》が光の粒子となってアクターを包み、莫大なライフをもたらした。

 

 

アクターLP:4000 → 1万8800 → 1万4800

 

 

「だが、これで貴様のフィールドはがら空き!! 更にはドラゴン封じも消えた! 魔法カード《融合》を発動!」

 

 ライフは削り切れなかった海馬だが、ブルーアイズ使いとしては極めて厄介な《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》が消えたことで、海馬の背に現れた渦より、ドラゴンの怒りが木霊する。

 

「2体のブルーアイズで融合召喚!! 来たれ、《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》!!」

 

 天を舞う2体の白き竜の体が光の中で交わった後、輝きの中から降り立つのは、2つの首を持ち、身体に青いラインの奔る神秘的な竜と化す。

 

 そしてその2つの頭からシンクロするように咆哮を轟かせれば、身体に奔るラインが光輝いた。

 

青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》 攻撃表示

星10 光属性 ドラゴン族

攻3000 守2500

 

「バトル!! まずはオベリスクの一撃を受けよ! ゴッド・ハンド・クラッシャー!!」

 

 やがて破壊の神の拳が無防備なアクターに迫ったかと思えば、その拳はアクターに直撃する直前でピタリと停止。

 

「なにっ!?」

 

「墓地の罠カード《破壊剣士の追憶》を除外し効果発動。墓地の融合素材モンスターを除外することで、《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》を融合召喚」

 

 その『オベリスクの巨神兵』の拳を受け止めているのは再臨を果たした《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》の大剣。

 

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》 攻撃表示

星8 光属性 戦士族

攻2800 守2500

攻1万6800 守1万6500

 

 やがて振り切られた大剣によって『オベリスクの巨神兵』の巨躯が弾かれる中、ギラリと煌く大剣に宿る竜殺しの力に《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》が戦意を失くしたように身体を丸めた。

 

青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》 攻撃表示 → 守備表示

攻3000 → 守2500

 

「くっ……! 俺のブルーアイズに頭を垂らせるとは……この代償、高くつくぞ!」

 

 そうして相手モンスターの増減があったゆえに再度『オベリスクの巨神兵』の攻撃先を選択できる海馬は忌々し気に《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》を見やるも――

 

「ならば――オベリスクよ! 遊戯に攻撃だ!!」

 

「そいつは通さないぜ、海馬! 墓地の《クリボーン》の効果! 自身を除外し、墓地からクリボーたちを復活させる!!」

 

 遊戯へ神の鉄槌を落とすが、今度は毛玉ことクリボーたちが行く手を遮った。

 

《クリボー》 守備表示

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

 

《クリボール》×3 守備表示

星1 闇属性 悪魔族

攻300 守200

 

「毛玉風情がワラワラと! 《クリボー》を蹴散らせ、オベリスク!!」

 

 やがてその内の1体を『オベリスクの巨神兵』の拳で叩き潰した海馬はバトルを終え、『オベリスクの巨神兵』の効果の為の贄を揃えた後――

 

「俺はカードを1枚セットし、ターンエンドだ!!」

 

 次の布石を打ちターンを終えた。

 

 

アクターLP:1万4800

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》

永続罠《王宮のお触れ》 伏せ×2

VS

海馬LP:4000

《オベリスクの巨神兵》 《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》 《伝説の白石(ホワイト・オブ・レジェンド)》×2

伏せ×1

VS

遊戯LP:4000

《クリボール》×3

伏せ×2

 

 

 かくして闇遊戯のターンになるが、その胸に先程まであった仇討の想いはない。城之内とて、それよりも闇遊戯自身が目一杯デュエルを楽しむことを望んでいる筈だ。

 

「やはり神を繰り出してきたか、海馬――なら、俺も全力で迎え撃つぜ!俺のターン! ドロー!!」

 

 さらに、その障害となり得る闇マリクもこのバトルロイヤルでは脱落した為、彼を縛る鎖は何処にも存在しない。

 

「俺のフィールドには3体のモンスターが存在する! 俺はこの3体の贄に――」

 

「そうはさせん! 『オベリスクの巨神兵』の効果発動! 2体を贄にソウル・エナジーMAX!! ダメージを受けるのは貴様だ、遊戯ッ! ゴッド・ハンド・インパクト!!」

 

 ゆえにクリボーたちを贄に闇遊戯が持つ神――『オシリスの天空竜』を呼び出そうとした闇遊戯の思惑を、海馬の『オベリスクの巨神兵』の両こぶしから放たれる破壊の奔流がその喉元に迫った。

 

「そうはさせないぜ! 俺は罠カード《レインボー・ライフ》を発動! このターン俺が受けるダメージは全て回復に変換される!」

 

「永続罠《王宮のお触れ》の存在を忘れたか遊戯! 罠カードの効果は無効化され――」

 

「焦るなよ、海馬――速攻魔法《サイクロン》発動! こいつでアクターのフィールドの永続罠《王宮のお触れ》を破壊!!」

 

 しかしクリボーたちが吹っ飛ばされるのを横目に発生した竜巻がアクターのカードの1枚を薙ぎ払ったことで、虹色の輝きが遊戯を守り、癒す。

 

遊戯LP:4000 → 8000

 

「くっ、躱したか……だが、これで神を呼ぶ贄は消えた」

 

「そいつはどうかな? 俺のデッキの切り札はオシリスだけじゃないぜ!!」

 

 仕留め損ねがまずまずの成果を得たと海馬が強きな笑みを浮かべる中、闇遊戯は「此処からだ」とフィールドに伏せられた1枚のカードを発動させた。

 

「罠カード《補充要員》発動! 俺の墓地に存在する攻撃力1500以下の通常モンスター3体を手札に加える! 俺が戻すのはこの3枚!!」

 

 それはただの低ステータスの通常モンスター回収カード――だが、回収される通常モンスターが問題だった。その3枚のカードを視界に収めた海馬の瞳は大きく見開かれる。

 

「馬鹿なッ!? エクゾディアパーツだと!?」

 

「俺は此処に封印されし召喚神を呼び覚ます!!」

 

「チェーンして速攻魔法《破壊剣士の宿命》を発動。相手の墓地の同じ種族のカード3枚を除外し、『バスター・ブレイダー』モンスター1体の攻撃力を除外した枚数分×500アップさせる」

 

 しかし此処で今まで完全に空気だったアクターが初めて動いた。

 

「だが、お前のフィールドの《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》はオベリスクの効果で破壊され――」

 

「永続魔法《遮攻カーテン》は自分フィールドのカードが戦闘・効果で破壊される際、身代わりに破壊が可能」

 

 闇遊戯の懸念も、闇遊戯と海馬が二人で盛り上がっている中、粛々と身代わりになったマントの如きカーテンを《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》が身に纏い衝撃を受けたお陰で、その身は健在である。

 

「武藤 遊戯の墓地の魔法使い族――《封印されし者の右腕》、《ブラック・マジシャン》、《ブラック・マジシャン・ガール》を除外し、攻撃力1500ポイントアップ」

 

 やがて大剣の一振りによって切り裂かれた3枚のカードが異次元へと消える中、残りの2枚のエクゾディアパーツを回収した闇遊戯。

 

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》

攻1万6800 → 攻1万8300

 

「くっ!? なら、こうさせて貰うぜ! 魔法カード《手札抹殺》! 全てのプレイヤーは手札を全て墓地へ! そしてその枚数分ドロー!」

 

 だが、1枚除外されてしまった以上、エクゾディアの降臨は叶わないと、手札を一新して新たな手を打ち、以下略させて頂き――

 

「魔法カード《トライワイトゾーン》により、フィールドに並んだ3体の『エクゾディア』パーツたちを生贄に捧げ!! 降臨せよ、天空の神!! 『オシリスの天空竜』!!」

 

 闇遊戯のフィールドに赤き甲殻を持つ長大な竜――いや、神がその巨体でとぐろを巻き、一つの頭に二つある口より、咆哮が轟いた。

 

『オシリスの天空竜』 攻撃表示

星10 神属性 幻神獣族

攻 ? 守 ?

攻8000 守8000

 

――アクターの《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》の攻撃力は強大……ならば此処は!!

 

「バトル! 海馬のオベリスクを攻撃しろ、オシリス! 超伝導波! サンダー・フォース!!」

 

 やがて闇遊戯の手札が潤沢な事も相まって、『オベリスクの巨神兵』へ向けて『オシリスの天空竜』の、その顎よりイカズチが迸る。

 

「甘いぞ、遊戯! 罠カード《威嚇する咆哮》!! このカードの効果で、貴様の神への攻撃宣言は届かない!!」

 

「神を飛び越え、プレイヤーに直接作用するカード……!!」

 

 しかし遠方より響いた咆哮により担い手である闇遊戯の言葉が聞こえなくなったゆえか、『オシリスの天空竜』の口元のイカズチは矛先を失うようにしぼんでいった。

 

「……オベリスクは倒せなかったか――俺はカードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

「ターンの終わりに速攻魔法《破壊剣士の宿命》の効果は消え、攻撃力は元に戻る」

 

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》

攻1万8300  → 攻1万6800

 

 

 やがて『オベリスクの巨神兵』を残した事実に「厄介だ」と歯噛みしつつターンを終えた闇遊戯。

 

 今は『オベリスクの巨神兵』に捧げる贄が1体ゆえに問題ないが、毎ターン放たれる4000の効果ダメージは放っておくには拙い代物だ。

 

 

アクターLP:1万4800

《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》

伏せ×1

VS

海馬LP:4000

『オベリスクの巨神兵』 《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)

伏せ×1

VS

遊戯LP:8000

『オシリスの天空竜』

伏せ×1

 

 

 

 ゆえに次のターンプレイヤーであるアクターの動きを見やる闇遊戯だが、当のアクターは相も変わらず静かに佇むばかり。とはいえ、その内心は――

 

 

――伝説のデュエリストの元に集った三幻神! まごうことなきリアル!! こんな夢のような舞台で神に挑むことになろうとは……なんたる誉!!

 

 

 ミーハー根性丸出しだった。それでいいのか。いや、当人的にはデュエルを全力で楽しんでいるので、きっと良いことなのだろう。

 

「私のターン、ドロー」

 

 そうしてドローしたアクターが手札補充に加え、諸々を済ませた後――

 

「装備魔法《D(ディファレント)D(ディメンション)R(リバイバル)》発動。手札を1枚捨て、除外された《破壊剣の使い手‐バスター・ブレイダー》を特殊召喚。このカードはフィールド・墓地で《バスター・ブレイダー》として扱う」

 

「だが、新たに呼びだされた《バスター・ブレイダー》に、『オシリスの天空竜』の効果が襲う! 召・雷・弾!!」

 

 神殺しを目指すべく、《バスター・ブレイダー》の若かりし頃を思い出させる、軽鎧を纏った戦士が背中に背負った大剣を引き抜き、龍殺しを目指すも――

 

 神のイカヅチの洗礼を受け、苦悶の声を漏らしながら膝をつく。

 

《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》 → 《バスター・ブレイダー》 攻撃表示

星7 地属性 戦士族

攻2600 守2300

攻 600

 

「自身のターンに相手のモンスター効果が発動した時、魔法カード《三戦の才》は発動可能。その3つの効果の内『相手の手札を確認し、1枚戻す』を選択。対象は武藤 遊戯」

 

 しかし、アクターは気にした様子もなくカードパワーに任せて闇遊戯の手札を拝見するも、その内容からドロー力のエグさを実感しつつフルフェイス型の仮面の内の頬が引きつった。

 

「さらに罠カード《マインドクラッシュ》を発動。《クリボー》を宣言」

 

「くっ……俺の2枚の手札が減ったことでオシリスのステータスも下がる」

 

 ついでに発動した罠カードも合わせて闇遊戯の2枚の手札が露と消え、『オシリスの天空竜』を包んでいた強大な力も少々陰りを見せる。

 

『オシリスの天空竜』

攻6000 守6000

攻4000 守4000

 

「モンスターをセットし、バトルフェイズ。《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》で『オシリスの天空竜』を攻撃」

 

 そしてドラゴン族を多々扱う海馬のお陰で圧倒的攻撃力を得ていた《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》が『オシリスの天空竜』に突撃していく。

 

「勝負を焦ったな――罠カード《あまのじゃくの呪い》発動! 攻撃力アップダウンの効果は逆になる!! これで《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》の攻撃力は0!」

 

 だが、大きな力はいつだって逆に利用されるのだ。

 

 フィールドを覆った呪いの力で《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》は狩って来たドラゴンの怨念に苛まれ、黒の外套を纏う赤褐色肌の短い白髪の少年が、奈落へ引き摺り込まんとしていた。

 

「チェーンして速攻魔法《瞬間融合》を発動。《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》とセットした《アルバスの落胤》を融合し、《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》を融合召喚」

 

「しまっ――」

 

「新たにモンスターを特殊召喚した為『オシリスの天空竜』の効果が発動し、罠カード《あまのじゃくの呪い》によって《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》共々攻撃力が2000アップ」

 

 かと思いきや、その白髪の少年《アルバスの落胤》に引き摺り込まれた先で、《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》は混ざり合い獣と化す。

 

 やがて黒い体毛を方々に伸ばす土色の四足の獣と化したかつての戦士は、歪な翼を広げながら、『オシリスの天空竜』の洗礼を浴びながら、神を呪う様に雄叫びを上げた。

 

痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》 攻撃表示

星8 闇属性 獣族

攻2500 守2000

攻4500

 

 そんな怒りの声に触発されるように、力尽きるように膝をついていた《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》も、その身体に紫電を奔らせながら立ち上がる。

 

《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》

攻 600 → 攻4600

 

「《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》で『オシリスの天空竜』を、《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》で『オベリスクの巨神兵』を攻撃」

 

 そして怒りのままに《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》から繰り出される大剣の斬撃が、《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》のブレスが、2体の神を打ち倒し、その余波が遊戯と海馬を苛んだ。

 

遊戯LP:8000 → 7400

 

海馬LP:4000 → 3500

 

「バトルフェイズを終了し、メインフェイズ2へ――カードを1枚セットしターンエンド」

 

 やがて無感情な様子で伏せられたカードを尻目にターンを終えたアクターだが――

 

「このエンド時に速攻魔法《瞬間融合》で融合召喚した《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》は破壊される――が、同時に効果発動。このカードが墓地に送られたターンのエンド時、デッキから《アルバスの落胤》を特殊召喚」

 

 ターンの終わりと共に崩壊するように身体を崩した《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》から、赤褐色肌の少年こと《アルバスの落胤》が現れたと同時に海馬のフィールドへ駆けだし――

 

《アルバスの落胤》 攻撃表示

星4 闇属性 ドラゴン族

攻1800 守 0

 

「そして特殊召喚された《アルバスの落胤》の効果――手札を1枚捨てることで、このカードと相手フィールドのモンスターのみで融合召喚する。《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》と融合」

 

「貴様ッ!!」

 

「2体目の《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》を融合召喚。そして罠カード《あまのじゃくの呪い》の効果も消える」

 

 海馬の《青眼の双爆裂龍(ブルーアイズ・ツイン・バースト・ドラゴン)》へと突撃した《アルバスの落胤》は、今度は白き竜と一体化を果たし、その身は再び獣へと堕ち、

 

痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》 守備表示

星8 闇属性 獣族

攻2500 守2000

 

 《あまのじゃくの呪い》が消えたことで《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》は、神の洗礼によって負った傷が開き、再び膝をつく結果となった。

 

《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》

攻4600 → 攻 600

 

 

アクターLP:1万4800

痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》 《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》

伏せ×1

VS

海馬LP:3500

伏せ×2

VS

遊戯LP:7400

 

 

 

 

「俺たちの神を強引に押し破ったか……だが、神を倒した代償は決して安くはあるまい!」

 

 かくして何とか闇遊戯と海馬の操る2柱の神を打ち倒したアクターだが、海馬の言う様に払った代償は大きい。

 

 シンプルにドラゴン族を扱う海馬がいたお陰で莫大な攻撃力を維持できていた《竜破壊の剣士バスター・ブレイダー》は全て墓地にあり、回収の目途は立っておらず、

 

 更に手札をかなり消費したことも相まって、2体の大型モンスター以外はアクターの盤面は些か頼りないものだ。

 

「俺のターン、ドロー!! ドラゴン封じを失った貴様に俺は止められん!」

 

 ゆえに己の前でそんな隙を晒した愚行を嘆くがいい――な具合に、手札を補充した海馬は1枚のカードを天にかざした。

 

「装備魔法《光の導き》を発動!! ブルーアイズ1体を、効果を無効にし、復活させる!! 舞い戻れ、《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》!!」

 

 さすれば竜破壊の呪いを打ち破った三つ首の白き竜が天より降り立ち、その巨体から成る大翼を広げ、敵対者に向けた怒りの咆哮を轟かせた。

 

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》 攻撃表示

星12 光属性 ドラゴン族

攻4500 守3800

 

 

「装備魔法《光の導き》を装備したモンスターは墓地の『ブルーアイズ』の数まで攻撃が可能!! 俺の墓地の『ブルーアイズ』は5体!!」

 

――遊戯の墓地に《超電磁タートル》がいる以上、此処は!

 

 そして攻撃力4500の5回攻撃と言う破格のパワーを得た海馬が狙うは――

 

「ブルーアイズに与えた屈辱! 万倍にして返してくれる!! 行け、アルティメットよ!! アルティメット・バァアァァストッ! 第一打!!」

 

 《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》の三つ首から放たれた白き極光が、《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》の迎撃の大剣を容易く消し飛ばし、その先のアクターに直撃。

 

 

アクターLP:1万4800 → 1万900

 

 《破壊剣の使い手-バスター・ブレイダー》の攻撃力がたった600にまで落ち込んでいたこともあり、そのダメージはかなりのものだ。

 

「まだだ! 《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》を破壊し、ヤツにとどめを差せ、アルティメットよ!! アルティメット・バァアァァスト! 二連打ァ!!」

 

 そして《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》へ三つ首から放たれる極光が飛来。だが、その白き連撃はアクターの元には届かない。

 

「《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》は戦闘では破壊されない」

 

「ならば、こうするまで! 罠カード《メテオ・レイン》を発動し、貫通ダメージを与える!! 残り三連続の攻撃を受けるがいい、アクター!!」

 

 かと思いきや、《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》を貫き、その身を以て軽減されたとはいえ、アクターの身に《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》から三筋の光が幾度となく打ち付ける度に、そのライフも大きく削られて行く。

 

 

 そして4度目の攻撃を受け、《痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》が膝をつく中――

 

アクターLP:1万900 → → → → 3400

 

 大きくライフを失ったアクターを余所に、海馬は最後の5連撃目を放つ前に、遊戯へと視線を向けた。

 

「最後の一撃は――遊戯! 貴様にくれてやる! 行けっ、アルティメット!!」

 

「クッ……! 俺は墓地の《超電磁タートル》を除外してバトルフェイズを強制終了させる!」

 

 そうして《青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》のブレスが空に飛翔した《超電磁タートル》に吸い込まれて行く光景を余所に海馬は得意気に笑って見せる。

 

「ふぅん……アクター、貴様の莫大なライフは失われ、そして遊戯も最後の盾を失った――俺はカードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

 

 なにせ、アクターの莫大なライフを削り取り、更には闇遊戯のフィールドも今や丸裸。最後の頼みの綱である《超電磁タートル》の守りも使い切らせた。

 

 

 まさに詰めまで後一歩と言ったところだろう。

 

 

アクターLP:3400

痕喰竜(こんじきりゅう)ブリガンド》

伏せ×1

VS

海馬LP:3500

青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)

《光の導き》 伏せ×1

VS

遊戯LP:7400

 

 

 そんな具合に己の有利を確信する海馬を余所に、闇遊戯は負けじとカードを引き、その手がピタリと止まった。だが、その迷いも一瞬で振り切った闇遊戯は引いたカードを余所に動き出す。

 

「俺のターン、ドロー!! …………装備魔法《D(ディファレント)D(ディメンション)R(リバイバル)》を発動! 手札を1枚捨てることで、除外された俺の《ブラック・マジシャン》はフィールドに舞い戻る!!」

 

 そして遊戯がこの窮地に頼るのは無論、三千年前からの縁に結ばれた黒き魔術師――《ブラック・マジシャン》が、遊戯を安心させるように腕を組んで強い視線で二人のデュエリストを見やる。

 

《ブラック・マジシャン》 攻撃表示

星7 闇属性 魔法使い族

攻2500 守2100

 

「此処で魔法カード《黒・魔・導(ブラック・マジック)》発動! 相手フィールドの全ての魔法・罠カードを破壊させて貰うぜ!!」

 

 やがて《ブラック・マジシャン》が杖を回転させながら、相手の魔法・罠ゾーンに向けた後に放った黒き奔流が――

 

 

「くっ、俺のカウンター罠《攻撃の無力化》が……!!」

 

「チェーンして速攻魔法《破壊剣士融合》を発動。武藤 遊戯の《ブラック・マジシャン》と手札の《バスター・ブレイダー》を融合し、《超魔導戦士ブラック・パラディン》を融合召喚。フィールド・墓地のドラゴン族1体につき、攻撃力500アップ」

 

 海馬とアクターの守りが剥がされる中、アクターの手札から飛び出した《バスター・ブレイダー》が《ブラック・マジシャン》に激突。

 

 その衝撃によって生じた渦に呑まれた2体が、渦より戻った暁には《超魔導剣士ブラック・パラディン》の姿となってアクターのフィールドで佇む。

 

《超魔導戦士ブラック・パラディン》 攻撃表示

星 闇属性 魔法使い族

攻2900 守2400

攻1万400

 

 

 闇遊戯が最後の頼りに《ブラック・マジシャン》を呼び出すことを想定した上で切り札封じを仕掛けていたアクター。

 

 

――やはり伏せていたか……だが、今のアクターの手札は0。動くなら、ブラック・パラディンの魔封じの効果が発動できない今!!

 

 

 しかし、それも闇遊戯は織り込み済みだ。そしてその事実は当然アクターも想定していることは明白――ゆえに闇遊戯は相手の想定を超えるべく2枚の手札にて勝負に出る。

 

 

「速攻魔法《異次元からの埋葬》!! 除外されたカード3枚を戻す!!」

 

――またエクゾディアを狙うつもりか!?

 

「そして俺は魔法カード――――」

 

 海馬の推定を余所に異次元より3枚のカードが墓地へ送られて行く中、闇遊戯は最後の1枚の手札に全てを賭ける。

 

 

「――《死者蘇生》を発動!!」

 

 

「馬鹿な!? この状況で一体なにを呼び出――まさか!?」

 

 そうして現れた白きアンクが天に浮かび、そこを起点に()が舞い上がった。

 

「ぁ、ぁりぇなぃ……オレの墓地の――」

 

「墓地より、不死鳥は舞い戻る!! 現れよ――」

 

 やがて今まで一応待機させられていた闇マリクのデュエルディスクから1枚のカードがひとりでに浮かび上がり闇遊戯の手元に収まれば――

 

 

「――『ラーの翼神竜』!!」

 

 

 天に浮かぶ炎より、太陽こと金色の球体が現れ、音を立てて展開を始めた先より、三幻神が最高位『ラーの翼神竜』が王の元に馳せ参じた。

 

『ラーの翼神竜』 攻撃表示

星10 神属性 幻神獣族

攻 ? 守 ?

 

 

「遊戯の手に、二体目の神……だと……!?」

 

――分かる。分かるぜ! このテキストの意味が!!

 

 信じられないものを見るような目で神を見あげる海馬を余所に、ヒエラティックテキストを直感的に把握した闇遊戯は、このデュエルに幕を引くべく神に命ずる。

 

「『ラーの翼神竜』の効果! 俺のライフを1000払い、フィールド上の全てのモンスターを破壊する!!」

 

遊戯LP:7400 → 6400

 

 やがて王の命を受け、その身体を炎で包み、燃え盛る炎の不死鳥と化した『ラーの翼神竜』が空へと飛翔。

 

 そして相手フィールドを焼き尽くす炎はアクターの《超魔導剣士ブラック・パラディン》と海馬の《真青眼の究極竜(ブルーアイズ・アルティメットドラゴン)》を――

 

「させん! 墓地の魔法カード《復活の福音》を除外し、俺のブルーアイズは――」

 

「無駄だ!! ラーの炎はあらゆる障害を無視し、モンスターを焼き尽くす!! ゴッド・フェニックス!!」

 

 

 焼き払った。

 

 

 轟々と燃え盛る炎の中、瞬く間に焼失した2体のモンスター。やがて闇遊戯の元に舞い戻った不死鳥の身体の炎が収まり、元の『ラーの翼神竜』へと戻っていく。

 

 

「そして『ラーの翼神竜』の更なる効果! 俺のライフを100の倍数払うことで、その数値分、攻撃力をアップさせる!! 俺は可能な限り、全てのライフを神へ!!」

 

 さらにフィニッシュを飾るべく、己が命を神に捧げ、『ラーの翼神竜』の全身を王の如きオーラが包んでいった後――

 

遊戯LP:6400 → 100

 

『ラーの翼神竜』

攻 0 → 攻6300

 

「バトル!! 『ラーの翼神竜』で、アクターに攻撃!!」

 

 

 闇遊戯の宣言の元、神の顎が開き、球体上にチャージされた浄化の炎が、迸る。

 

 

「 ゴ ッ ド ・ ブ レ イ ズ ・ キ ャ ノ ン !!」

 

 

 やがて神の炎が何者にもなれなかった男を包んだ。

 

 

アクターLP:3400 → 0

 

 

 

 

 

 

 

 かくしてトーナメントの組み合わせを決めるデュエルは終わりを告げる。だが、それぞれのデュエリストの胸中に燻るは――

 

――ハァ……ハァ……これが裏世界最強の実力。もし俺に神を扱うことが出来なければ……くっ!

 

――もう一人のボク……

 

 

 

 

 

――くっ……何故だ! 何故だ、遊戯! 何故、最後の攻撃を俺に向けなかった!! 貴様の目にはヤツの方が脅威に映ったとでも言うつもりか!!

 

 

――ぁ、ぁりぇない……ラーが俺ではなく、遊戯に従うなど……

 

 

 

 

――いやー、憧れの武藤く……いや、遊戯さんとのデュエル最高!! ……デュエルは楽しいな。うん、やはり私はデュエルが好きなんだな……

 

 

 

 

 そんな3体1の割合で温度差の激しい心中を余所に、アクターの心は不思議と軽くなっていた。

 

 

 

 






光墜ち(無自覚)したアクター(神崎)――達成!!


なお闇マリク戦のアレコレは本編とあんまり変わらない感じになっております。






~バトルロイヤル戦でのアクターのデッキ~

《バスター・ブレイダー》と《アルバスの落胤》にて、相手のモンスターと超 融 合!!(擬き)するデッキ
融合素材は相手に用意して貰うぜ!!(手札事故回避感)

???「ドラゴンは良いぞ、アルバスくん!!」

遊戯と海馬のエースのどちらも狙える二人の夢のタッグだ!! ドラゴンを沢山食べるタイプ。

そこに闇マリクの『ラーの翼神竜』の蘇生カードの妨害も兼ねている。

でも、《アルバスの落胤》って完全耐性持ちと融合できないのね……(裁定見つつ)



~ちょっぴりとだけ出た表マリクのデッキ~

「ボクの戦術は水」とのマリクの言葉から、彼の使用した「スライム」を中心に星4・水属性・水族で固めて見た。

《リバイバルスライム》の自己再生能力や《融合派兵》で《ひょうすべ》などの攻撃力1500以下の融合素材を手早く特殊召喚し、速攻魔法《地獄の暴走召喚》で3体並べ、神の召喚からの速攻を狙うデッキ。


一応の神以外の戦術として、同じステの《極氷獣ブリザード・ウルフ》や《同族感染ウィルス》、《豪雨の結界像》などを採用。
《同胞の絆》などで展開し、《ディフェンド・スライム》で守りながら、神が手札に来るまで粘ろう。


融合体の《ヒューマノイド・ドレイク》や《轟きの大海蛇》の融合は同じステの《沼地の魔獣王》で補うんだ!( ´∀`)bグッ!

とはいえ、神を呼べないと、融合体の2000ラインの火力しか出せない為、パワー不足が凄い目立つデッキ。

リシドの《聖獣セルケト》の打点が超えられない(´;ω;`)ブワッ

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